JP2008218298A - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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有希子 藤野
Hiroe Nakagawa
裕江 中川
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徳雄 稲益
Sadahiro Katayama
禎弘 片山
Toshiyuki Onda
敏之 温田
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Abstract

【課題】負極での不可逆反応を抑制し、高温で充放電サイクルを行っても電池の内部抵抗が増加しない非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】非水電解液二次電池において、電解液中に飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体を含有する。また、飽和スルホカルボン酸無水物が、スルホプロピオン酸無水物またはその誘導体で、電解液中に0.01〜10mM含まれている非水電解液二次電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体を含有した非水電解液を用いた非水電解液二次電池に関するものである。
負極にリチウムを吸蔵、放出できる炭素材料などを用い、正極にリチウム含有遷移金属酸化物などを用いた非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を実現できることから携帯電話、ノートパソコンなどの民生用電子機器の電源として広く用いられるようになってきた。
このようなリチウムを活物質とする非水電解質二次電池の負極に用いられる炭素材料の中で、黒鉛などの高結晶炭素は、電位の平坦性や、真密度が高く充填性に優れるなどの特長を有している。さらに炭素材料として、難黒鉛化炭素や易黒鉛化炭素の低温焼成炭素も高出入力を要求される電池の負極として用いられるようになってきた。
電解液としては、常温で液体の有機溶媒にリチウム塩を溶解させた溶液が用いられている。電解液に用いる有機溶媒としては、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートのような環状カーボネート化合物、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートのような鎖状カーボネート化合物の混合物が一般的である。また、リチウム塩としては、LiPF、リチウムイミド塩、LiBFなどが一般的である。
ところが、炭素材料を負極に用いる場合、炭素材料表面で電解液の還元分解反応が起こるという課題を抑制する必要がある。例えば、黒鉛などの高結晶性炭素材料を負極に用いた場合、非特許文献1に記載されているように、電解液の溶媒にプロピレンカーボネートを使用すると、初回充電時に溶媒の分解が激しく起こり、黒鉛へのリチウムイオンの挿入が進行しないことが知られている。
この課題を解決する試みとして、電解液の還元分解を抑制する化合物を電解液に添加することが数多く報告されている。例えば、ビニレンカーボネートを含有させることで、黒鉛負極が使用できることが、非特許文献2に報告されている。
また、ビニレンカーボネートは電解液の還元分解を抑制することで、電池の貯蔵性やサイクル特性を向上させることも、特許文献1〜4に報告されている。
電解液の分解を抑制する効果は、ビニレンカーボネート以外の例として、硫黄含有化合物を添加することが報告されている。例えば特許文献5や特許文献6には、エチレンサルファイト、ジメチルサルファイト、スルフォラン、スルフォレン、不飽和スルトンなどを用い、電解液が接触する部分の正極集電体および外缶の材質をアルミニウム、チタンなどの弁金属とすることにより、サイクル特性を向上させた非水系電解液電池が報告されている。
特開平05−013088号公報 特開平06−052887号公報 特開平07−122296号公報 特開平11−185806号公報 WO99/16144号公報 特開2002−329528号公報 G.Chang,S.Jun,K.Lee,and M.Kim,J.Electrochem.Soc.,146,1664(1999) 10th International Meeting on Lithium Batteries Ab.No.289(2000)
このように、電極表面に保護膜、SEI(Solid Electrolyte Interphase)または皮膜などの表面膜を形成することが行われている。かかる表面膜は充放電効率、サイクル寿命、安全性に大きな影響を及ぼすことから、電池の高性能化にはその制御が不可欠である。
すなわち、リチウムを吸蔵、放出できる炭素質物や酸化物を含有する材料で形成された負極においては、表面膜によりその不可逆容量の低減を抑制することが必要であり、リチウム金属やリチウム合金を含有する材料で形成された負極においては、表面膜により充放電効率の低下の抑制や安全性の問題を解決する必要がある。さらに高温サイクル時の電池の内部抵抗増加を抑えるため、界面抵抗が低く高温においても安定な表面膜を形成させることが要求されている。
本発明は、このような要求に応えるため、負極での不可逆反応を抑制し、高温で充放電サイクルを行っても電池の内部抵抗が増加しない非水電解液二次電池を提供することを目的としている。
請求項1の発明は、非水電解液二次電池において、電解液中に飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体を含有することを特徴とする。
請求項2の発明は、上記非水電解液二次電池において、飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体が化学式(1)で表されることを特徴とする。
ただし、化学式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、Cの数が4以下のアルキル基、水素の少なくとも一部がハロゲンで置換されたCの数が4以下のアルキル基のいずれかを表す。
請求項3の発明は、上記非水電解液二次電池において、電解液溶媒中に飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体が0.01〜10mM含まれていることを特徴とする。
本発明によれば、飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体を含有する非水電解液を用いることにより、飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体が分子内にSOの部分とCOの部分を併せ持つことで、それそれの部分が電解液の分解抑制、界面抵抗の上昇抑制、高温における表面膜の安定性向上の役割を果たすものと推定され、高いエネルギー密度、起電力など優れた電池特性を有するとともに、サイクル寿命、安全性に優れ、さらに高温サイクル時における界面抵抗の上昇を抑制可能な非水電解液二次電池を得ることができる。
本発明は、非水電解液二次電池において、電解液中に飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体を含有することを特徴とする。飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体は、化学式(2)で表される。
ただし、化学式(2)において、R〜Rは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、Cの数が4以下のアルキル基、水素の少なくとも一部がハロゲンで置換されたCの数が4以下のアルキル基のいずれかを表し、Xは飽和アルキル基または水素の少なくとも一部がハロゲンで置換された飽和アルキル基を表し、Xはなくてもよく、その場合は化学式(1)となる。
そして、化学式(2)において、R〜RがすべてHで、Xが飽和アルキル基の場合に2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン(2,2−Dioxo−2λ−[1,2]oxathiolan−5−one)となる。
飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体が化学式(1)で表される場合に、負極での溶媒の分解反応を抑制し、高温で充放電サイクルを行っても界面抵抗の増加が抑制される。
ただし、化学式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、Cの数が4以下のアルキル基、水素の少なくとも一部がハロゲンで置換されたCの数が4以下のアルキル基のいずれかを表す。
本発明の非水電解液二次電池の電解液中に含有させる飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体は、特に限定されるものではなく、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン(2,2−Dioxo−2λ−[1,2]oxathiolan−5−one)、3−フルオロ−2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン(3−Fluoro−2,2−Dioxo−2λ−[1,2]oxathiolan−5−one)、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチアン−6−オン(2,2−Dioxo−2λ−[1,2]oxathian−6−one)などを挙げることができる。
これらの飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体は公知の方法により製造することができ、例えば、M.S.Kharasch,T.H.Chao and H.C.Brown,J.Am.Chem.Soc.,62,2393(1940)またはM.S.Kharasch and H.C.Brown,J.Am.Chem.Soc.,62,925(1940)に記載された方法などにより合成することができる。
本発明の非水電解液中に飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体を含有した非水電解液二次電池では、顕著な充放電効率の低減抑制効果、充放電サイクル寿命の長期化をもたらす。このような飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体の電解液中の濃度は特に限定されないが、非水電解液中に0.01〜10mMの濃度という極めて少ない量を含有することで、電極表面全体に添加剤の効果を行きわたらせることができ、充放電に伴い電極表面に安定な皮膜形成がなされ、副反応を抑制することができ、高温サイクル後の界面抵抗の増加を抑制し、非水電解液二次電池の高温サイクル後の内部抵抗上昇を抑制することが可能となる。
一方、飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体が電解液中に10mMより多く含まれている場合、電解液の性能に悪影響をおよぼすおそれがある。電解液中に飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体が0.1〜5mMの範囲で含まれている場合には、上記効果が顕著に得られるためより好ましく、更に顕著な効果が得られる範囲は0.5〜4mMである。
電解液中に飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体を含有させた場合のメカニズムの詳細については不明であるが、飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体がSOの部分とCOの部分を併せ持つことで、それそれの部分が電解液の分解抑制、界面抵抗の上昇抑制、高温における表面膜の安定性向上の役割を果たし、特性改善に結びつくものと推定される。
特に、飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体はこれらの重要な機能を兼ね備えて持つことから、電極内の活性点に効果的に働き、極めて少ない添加量で十分な効果が得られていると考えられる。さらに極めて少ない添加量で十分な効果が得られるため、非水電解液のコスト低減も期待される。
本発明の非水電解液二次電池の電解液に用いる溶媒は、常温で液体のものであれば使用することができるが、具体的には、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート類等の炭酸エステル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類;ブチロラクトンなどのラクトン類;エチルエーテル、1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、トリメトキシメタン、エチルモノグライムなどの鎖状エーテル類や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル類等のエーテル類;フッ素化カルボン酸エステルなどこれらのフッ化誘導体等;ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、リン酸トリエステル、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、アニソール、N−メチルピロリドンを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、また、電解質の種類や、電極の種類などに応じて適宜組み合わせて使用することができる。
本発明の非水電解液二次電池の電解液に用いる電解質としては、リチウム塩が好ましく、具体的には、一般式LiN(C2k+1SO)(C2m+1SO)(ただし、k、mは独立して1〜4の整数)で表されるリチウムイミド塩、LiPF、LiAsF、LiAlCl、LiClO、LiBF、LiSbFなどは安全性などの点で好ましいものとして挙げることができる。
これらの電解質は溶媒、負極、正極の材質などとの関係において適宜選択することができ、単独で用いることも、また、2種以上を組み合わせて用いることもできる。電解質の濃度としては、例えば、0.5〜1.5mol/Lの範囲であれば適切な電気伝導率を得ることができるため好ましく、1.0mol/L前後であることがかかる効果をより顕著に得ることができ、より好ましい。
本発明の非水電解質二次電池に用いる電解液は、飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体およびリチウム化合物などの電解質を、あらかじめ非水溶媒に添加・溶解することにより調製することができる。
本発明の非水電解質二次電池は、電解液中に飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体を含むものであれば特に制限されるものではなく、例えばリチウム含有遷移金属酸化物を正極活物質として含む正極と、リチウムを吸蔵、放出可能な負極活物質を含む負極と、正極と負極の間に配置された絶縁体としてのセパレータとを備え、正極と負極が非水電解液に浸った状態となるように、これらが電池ケースの中に密閉された形態をとることができる。
そして、正極と負極に電圧を印加することにより、正極活物質がリチウムイオンを放出し、負極活物質がリチウムイオンを吸蔵し、電池は充電状態となり、充電状態と逆反応が進行して放電状態となる。
本発明の非水電解液二次電池の負極は、リチウムを吸蔵・放出可能な負極活物質を含むものを用いる。リチウムを吸蔵・放出可能な負極活物質としては、充電時にリチウムイオンを吸蔵でき、放電時にリチウムイオンを放出できるものであればよく、具体的には、金属リチウム、リチウム合金、リチウムを吸蔵・放出可能な炭素質物、リチウムを吸蔵・放出可能な酸化物、リチウムを吸蔵・放出可能な金属、またはこれらの複合物を挙げることができる。
リチウムを吸蔵・放出可能な炭素質物としては、黒鉛、非晶質炭素、ダイアモンド状炭素、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどを挙げることができ、リチウムを吸蔵・放出可能な酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸アKリチウム、リン酸、ホウ酸や、これらの複合酸化物を挙げることができる。これら酸化物のうち、特に酸化シリコンは安定で、他の化合物との反応を起こさないため、好ましい。
また、リチウム合金としては、リチウムと合金形成可能な金属の1種または2種以上とリチウムとの2元または3元以上の合金を用いることができる。リチウムと合金形成可能な金属としては、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどを挙げることができる。
さらに、リチウムを吸蔵・放出可能な金属としては、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどから選ばれる元素の1種または2種以上を含む混合物または合金を用いることができる。これらの金属のうち、Si、Ge、In、Sn、Ag、Al、Pbなどから選ばれる1種または2種以上を含む混合物または合金が特に好ましい。
これらの金属リチウム、リチウム合金、リチウムを吸蔵・放出可能な酸化物、リチウムを吸蔵・放出可能な金属の構造としては、アモルファス状態であることが好ましい。アモルファス構造であれば、結晶粒界、欠陥といった結晶構造に特有の不均一性に起因する劣化が起きにくいためである。
負極活物質を金属リチウム、リチウム合金、リチウムを吸蔵・放出可能な酸化物や、その複合物を含有する材質で形成する場合は、融液冷却方式、液体急冷方式、アトマイズ方式、ゾル−ゲル方式などの方式により形成することができる。
本発明の非水電解液二次電池の負極には、負極活物質のほかに、必要に応じて負極活物質の作用を促進させる導電材や、またその作用を抑制しない範囲で結着材などを含有してもよい。結着材としては、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂バインダーを用いることができ、結着材の含有量は、負極全体の1〜10質量%などとすることができる。また、導電材としては、カーボンブラックなどの炭素材料や気相成長炭素(VGCF)、導電性酸化物の粉末などを用いることができ、導電材の含有量は負極全体の1〜10質量%などとすることができる。
本発明の非水電解液二次電池の負極は、上記の方法により形成された負極活物質と、必要ならば結着材や導電材とを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒などに分散させ、混練した混合物を用いて、基体上に成膜して膜状構造体としたり、また、粒子状やペラット上に成形したものの集合体としたものを用いることができる。
負極活物質を含む混合物を膜状構造体に形成するには、基体である銅などの金属箔を用いた集電体上に上記混合物を塗布したり、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、光CVD、熱CVDなどの方法のよることができる。
また、負極活物質を含む混合物を粒子状に形成するには、上記負極活物質を含む混合物を膜状構造体に成形した後、粉砕または分級をおこなうことにより成形することができる。また、これらを結着材などと混練し、圧縮成形してペレット状に成形することができる。
本発明の非水電解液二次電池に用いる正極活物質は、特に制限されるものではないが、リチウム含有複合酸化物、有機イオウ化合物、導電性高分子、および有機ラジカル化合物から選ばれた1種または2種以上の物質を含むことができる。
リチウム含有複合酸化物としては、一般式LiZO(ただし、Zは少なくとも1種の遷移金属である)で表される化合物、例えばLiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiNiMnCo1−d−e(ここで、0<b、0<d<1、0<e<1、d+e<1である)を挙げることができる。
また、高い作動電圧を有する高電位の非水電解液二次電池に対しては、正極活物質として、リチウム対極電位で4.5V以上にプラトーを有するリチウム含有複合酸化物を用いることもできる。このようなリチウム含有複合酸化物としては、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物、オリビン型リチウム含有複合酸化物、逆スピネル型リチウム含有複合酸化物などを用いることができ、リチウム含有複合酸化物としては、例えば、Li(AMn2−x)O(ここで、AはNi、Co、Fe、Ti、CrまたはCuを示し、0<x<2、0<a<1.2である)で示される化合物を例示することができる。
このようなリチウム含有複合酸化物を正極活物質に用いることにより、正極の活性な界面が減少して、電解液溶媒の分解が抑制され、充放電特性が改善されるものと考えられる。その際、電解液に含有させる飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体が、これらの正極活物質の作用と相俟って、充放電特性、特に高温充放電サイクル時の界面抵抗上昇が大きく改善されるものと考えられる。
特にこの改善は、リチウム含有複合酸化物中にマンガンを含む場合に顕著であった。その理由は不明であるが、飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体が分解したときに生じるSOとCOが、マンガンとの反応を制御しているものと推定される。
正極活物質としての有機イオウ化合物としては、例えば、有機ジスルフィド化合物、有機ポリスルフィド化合物などを挙げることができ、正極活物質としての導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリアセンなどを挙げることができ、正極活物質としての有機ラジカル化合物としては2,2,6,6−テトラメチルピペリノジノキシメタクリレート(PTMA)などを挙げることができる。
本発明の非水電解液二次電池の正極には、正極活物質のほかに、必要に応じて正極活物質の作用を促進させる導電材や、またその作用を抑制しない範囲で結着材などを含有してもよい。結着材としては、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂バインダーを用いることができ、結着材の含有量は、負極全体の1〜10質量%などとすることができる。また、導電材としては、カーボンブラックなどの炭素材料や、導電性酸化物の粉末などを用いることができ、導電材の含有量は負極全体の1〜10質量%などとすることができる。
本発明の非水電解液二次電池の正極は、上記の正極活物質と、必要ならば結着材や導電材とを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒などに分散させ、混練した混合物を用いて、基体上に成膜して膜状構造体としたり、また、粒子状やペレット上に成形したものの集合体としたものを用いることができる。
正極活物質を含む混合物を膜状構造体に形成するには、基体であるアルミニウムなどの金属箔を用いた集電体上に上記混合物を塗布するなどの方法のよることができる。
本発明の非水電解液二次電池のセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンや、フッ素樹脂などの不織布や微多孔性フィルムを用いることができる。
本発明の非水電解液二次電池は、乾燥空気または不活性ガス雰囲気において、負極および正極をセパレータを介して積層あるいは積層したものを捲回した後に、電池缶に収納したり、合成樹脂と金属箔との積層体からなる可撓性フィルムなどによって封口することによって、電池を製造することができる。
本発明の非水電解液二次電池の形状としては、特に制限はなく、例えば、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型などを挙げることができる。
つぎに、本発明の好適な実施例について説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜7および比較例1、2]
[実施例1]
正極活物質にはLiNi1/3Mn1/3Co1/3を用いた。この正極活物質は、特開2004−6267に記載の方法と同様にして、三酸化二ニッケルと四三酸化コバルトと二酸化マンガンと水酸化リチウムとを、を各元素のモル比がLi:Ni:Mn:Co=1.04:0.33:0.33:0.33となるように秤取し、乳鉢で混合し、得られた混合粉体を空気中、1000℃で15時間焼成することによって合成した。
この正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/385質量%と、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着材としてのポリビニリデンフルオライド(PVdF)10質量%とを混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えて混練して正極合剤ペーストとし、集電体としての厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布した。その後、これを120℃で12時間乾燥し、ローラープレスで加圧成形した後、打ち抜いて、直径17mm、正極合剤層の厚さ50μmの正極を作製した。
負極活物質にはハードカーボン(カーボトロンP、呉羽化学製)を用いた。このハードカーボン88質量%と、導電材としての気相成長炭素2質量%と、結着材としてのPVdF10質量%とを混合し、NMPを加えて混練して負極合剤ペーストとし、集電体としての厚さ14μmの銅箔の片面に塗布した。その後、これを100℃で12時間乾燥し、ローラープレスで加圧成形した後、打ち抜いて、直径18mm、負極合剤層の厚さ50μmの負極を作製した。
ベース電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との体積比1:1:1の混合溶媒に、1mol/lのLiPFを溶解させた。このベース電解液に、化学式(1)で表される飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体において、R〜RがすべてHである、化学式(3)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン(2,2−Dioxo−2λ−[1,2]oxathiolan−5−one)を1mM添加した。
セパレータとしては、厚さ27μm、多孔度50%の微多孔性ポリエチレン膜を用いた。そして、正極と負極とのそれぞれの合剤層が対向するようにし、正極と負極との間にセパレータを挟んで積層し、電池缶に入れ、電解液を注液後、電池蓋をとりつけ、直径20mm、厚さ3.2mm、設計容量4mAhの、実施例1のコイン型非水電解液二次電池Aを作製した。
得られたコイン型非水電解液二次電池Aの断面構造を図1に示す。図1において、1は正極集電体、2は正極合剤層、3はセパレータ、4は負極集電体、5は負極合剤層、6は電池缶、7は電池蓋、8はガスケットである。図1では示していないが、電解液は正極合剤層2とセパレータ3と負極合剤層5に保持されている。
[実施例2]
2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンに代えて、化学式(4)で表される3−フルオロ−2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン(3−Fluoro−2,2−Dioxo−2λ−[1,2]oxathiolan−5−one)を、ベース電解液に1mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のコイン型非水電解液二次電池Bを作製した。
[実施例3]
2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンに代えて、化学式(5)で表される3−メチル−2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン(3−Metyl−2,2−Dioxo−2λ−[1,2]oxathiolan−5−one)を、ベース電解液に1mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のコイン型非水電解液二次電池Cを作製した。
[実施例4]
2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンに代えて、化学式(6)で表される3−ヘキシル−2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン(3−Hexyl−2,2−Dioxo−2λ−[1,2]oxathiolan−5−one)を、ベース電解液に1mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のコイン型非水電解液二次電池Dを作製した。
[実施例5]
2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンに代えて、化学式(7)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチアン−6−オン(2,2−Dioxo−2λ−[1,2]oxathian−6−one)を、ベース電解液に1mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のコイン型非水電解液二次電池Eを作製した。
[実施例6]
ベース電解液に、化学式(3)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン0.5mMと化学式(4)で表される3−フルオロ−2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン0.5mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例6のコイン型非水電解液二次電池Fを作製した。
[実施例7]
ベース電解液に、化学式(3)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン0.5Mmとに代えて、化学式(5)で表される3−メチル−2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン0.5mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7のコイン型非水電解液二次電池Gを作製した。
[比較例1]
3−フルオロ−2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンを添加せず、ベース電解液のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のコイン型非水電解液二次電池Hを作製した。
[比較例2]
ベース電解液に、3−フルオロ−2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンに代えて、ビニレンカーボネートを1mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のコイン型非水電解液二次電池Iを作製した。
実施例1〜7および比較例1、2の非水電解液二次電池(A〜I)の電解液添加剤を表1にまとめた。
[貯蔵試験]
実施例1〜7および比較例1、2の非水電解液二次電池(A〜JIを、25℃において、0.2CmAの定電流で4.25Vまで充電し、続いて4.25Vの定電圧で2時間充電した後、0.2CmAの定電流で2.25Vまで放電して1サイクル目の放電容量を測定し、これを「初期放電容量」とした。また、放電後の内部抵抗を1KHzの交流法で測定し「初期内部抵抗」とした。
つぎに、同じ充電条件で充電した後、60℃で30日間貯蔵した。その後、25℃で5hr保持した後、0.2CmAの定電流で2.25Vまで放電した。この時の放電容量を「60℃貯蔵後放電容量」とし、放電後の内部抵抗を1KHzの交流法で測定し「60℃貯蔵後内部抵抗」とした。なお、「初期放電容量」に対する「60℃貯蔵後放電容量」の割合を「容量保持率(%)」とし、「初期内部抵抗」に対する「60℃貯蔵後内部抵抗」の割合を「内部抵抗増加率(%)」とした。これらの測定結果を表2にまとめた。
表1の結果より、電解液中に、化学式(3)〜(7)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンまたはその誘導体を添加した実施例1〜5の非水電解質二次電池A〜Eの場合、電解液中に2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンまたはその誘導体を添加しなかった比較例1の非水電解質二次電池Hの場合、および電解液中にビニレンカーボネートを添加した比較例2の非水電解質二次電池Iの場合と比べて、内部抵抗増加率が小さく、また、容量保持率は大きくなっていることがわかった。
また、電解液中に2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンとその誘導体を同時に添加した実施例6および7の非水電解質二次電池FおよびGの場合の内部抵抗増加率および容量保持率は、1種類の2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンまたはその誘導体を添加した実施例1〜5の非水電解質二次電池A〜Eと同程度であった。
実施例1〜7非水電解液電池では、電解液中に分子内にSOの部分とCOの部分を併せ持つ2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンまたはその誘導体が存在することで、それそれの部分が電解液の分解抑制、界面抵抗の上昇抑制、高温における表面膜の安定性向上の役割を果たすものと推定される。
[実施例8〜14]
[実施例8]
ベース電解液に、化学式(3)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンを0.005mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例8のコイン型非水電解液二次電池Jを作製した。
[実施例9]
ベース電解液に、化学式(3)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンを0.01mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例9のコイン型非水電解液二次電池Kを作製した。
[実施例10]
ベース電解液に、化学式(3)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンを0.1mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例10のコイン型非水電解液二次電池Lを作製した。
[実施例11]
ベース電解液に、化学式(3)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンを4.0mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例11のコイン型非水電解液二次電池Mを作製した。
[実施例12]
ベース電解液に、化学式(3)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンを5.0mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例12のコイン型非水電解液二次電池Nを作製した。
[実施例13]
ベース電解液に、化学式(3)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンを10.0mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例13のコイン型非水電解液二次電池Oを作製した。
[実施例14]
ベース電解液に、化学式(3)で表される2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンを20.0m添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例14のコイン型非水電解液二次電池Pを作製した。
[貯蔵試験]
実施例8〜14の非水電解液二次電池(J〜P)について、実施例1と同様の条件で、初期放電容量、初期内部抵抗、60℃貯蔵後放電容量、60℃貯蔵後内部抵抗を測定し、容量保持率および内部抵抗増加率を求めた。これらの結果を表3にまとめた。なお、表3には、比較のため、実施例1の結果も示した。
表3の結果から、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンの添加量が0.01〜10mMの実施例1、実施例9〜13の非水電解質電池A、K〜Oは、添加量が0.005mMの実施例8の非水電解質電池Jや添加量が20mMの実施例14の非水電解質電池Pと比べて内部抵抗増加率が小さくなり、また、添加量が0.005mMの実施例8の非水電解質電池Jと比べて容量保持率は大きくなっていることがわかった。
この結果から、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンの電解液中の濃度は、非水電解液中に0.01〜10mM添加した場合に、非水電解液二次電池の高温サイクル後の内部抵抗上昇を抑制することができることがわかった。
なお、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンが0.1〜5mMの範囲で含まれている場合には、上記効果が顕著に得られるためより好ましく、さらに1.0〜4mMの範囲の場合により顕著な効果が得られることがわかった。
[実施例15、16および比較例3]
[実施例15]
ベース電解液に、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン1.0Mmとビニレンカーボネート1.0mMを添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例15のコイン型非水電解液二次電池Qを作製した。
[実施例16]
ベース電解液に、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オン1.0mMとプロパンスルトン1.0mMを添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例16のコイン型非水電解液二次電池Rを作製した。
[比較例3]
ベース電解液に、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンに代えて、プロパンスルトンを1.0mM添加したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3のコイン型非水電解液二次電池Sを作製した。
実施例15、16および比較例3と、実施例1、比較例1、2の、電解液への添加物の種類と添加量を表4にまとめた。
[貯蔵試験]
実施例15、16および比較例3の非水電解液二次電池(Q〜S)について、実施例1と同様の条件で、初期放電容量、初期内部抵抗、60℃貯蔵後放電容量、60℃貯蔵後内部抵抗を測定し、容量保持率および内部抵抗増加率を求めた。実施例15、16および比較例3と、実施例1、比較例1、2の結果を表5にまとめた。
表4および表5の結果から、電解液中に、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンと、ビニレンカーボネートまたはプロパンスルトンを同時に添加した実施例15、16の非水電解液二次電池Q、Rは、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンのみを添加した実施例1の非水電解質電池Aと比べて、内部抵抗増加率が小さく、また、容量保持率は大きくなっていることがわかった。
この結果から、電解液中に、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンを単独で添加するよりも、2,2−ジオキソ−2λ−[1,2]オキサチオラン−5−オンとビニレンカーボネートまたはプロパンスルトンを同時に添加した場合に、内部抵抗増加率がより小さくなり、容量保持率はより大きくなることがわかった。
コイン型非水電解液二次電池の断面構造を示す図。
符号の説明
1 正極集電体
2 正極合剤層
3 セパレータ
4 負極集電体
5 負極合剤層
6 電池缶
7 電池蓋
8 ガスケット

Claims (3)

  1. 電解液中に飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体を含有することを特徴とする非水電解液二次電池。
  2. 飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体が化学式(1)で表されることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池。
    ただし、化学式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、Cの数が4以下のアルキル基、水素の少なくとも一部がハロゲンで置換されたCの数が4以下のアルキル基のいずれかを表す。
  3. 電解液中に飽和スルホカルボン酸無水物またはその誘導体が0.01〜10mM含まれていることを特徴とする請求項1または2記載の非水電解液二次電池。
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