しかしながら、従来の方法で加工した場合、熱可塑性チューブの先端部以外が熱変形しやすいという問題があり、これを防止するためには、金型の温度を比較的低温である80℃程度までしか加熱することができず、2〜3時間という長い加工時間が必要になるという問題があった。
また、従来の方法は、加工後の熱可塑性チューブの表面に金型の割り跡が表われるため、外観が滑らかにならないという問題があった。このため、従来の方法で製造した挿入補助具は、体内に挿入した際に体壁との摩擦が大きくなるという問題があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、短時間で容易に加工することができ、且つ、外表面の滑らかな端部を得ることのできる医療器具用チューブの端部加工方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、チューブ端部を絞られた形状に加工する熱可塑性チューブからなる医療器具用チューブの端部加工方法において、医療器具用チューブに芯材を挿入して該医療器具用チューブの端部に配置し、前記芯材を挿入した前記医療器具用チューブの端部を覆うように熱収縮チューブを被せ、前記医療器具用チューブの端部の位置で前記熱収縮チューブに熱を加えて収縮させることによって、前記熱収縮チューブの収縮力と前記熱収縮チューブからの熱とで前記医療器具用チューブの端部を変形させることを特徴とする。
本発明によれば、熱収縮チューブの収縮力と熱収縮チューブからの熱によって医療器具用チューブの端部を縮径させるので、医療器具用チューブの端部以外には熱が伝わりにくく、チューブの端部のみを短時間で確実に加工することができる。また、本発明によれば、医療器具用チューブの端部には、収縮した熱収縮チューブが接触し、その外表面は滑らかになる。したがって、熱収縮チューブの端部の外表面は摩擦抵抗が小さくなり、医療器具として使用した際に体壁との摩擦が小さくなる。
請求項2に記載の発明は請求項1の発明において、前記芯材は、中空部を有する円筒状に形成されることを特徴とする。請求項2の発明によれば、芯材が円筒状に形成されるので、芯材の熱を中空部から逃がすことができる。したがって、熱収縮チューブからの熱が芯材を伝わって医療器具用チューブの端部以外に伝達することを抑制することができる。
請求項3に記載の発明は請求項1または2の発明において、前記芯材は、前記医療器具用チューブの内径と略同じ外径の芯出し部と、該芯出し部よりも小さい外径で前記医療器具用チューブの端部を変形させた内径と略同じ外径の絞り部とから成り、前記芯出し部が前記医療器具用チューブに挿入されて位置決めされることを特徴とする。請求項3の発明によれば、芯出し部を医療器具用チューブに挿入することによって、芯材を医療器具用チューブの中心に配置することができる。
請求項4に記載の発明は請求項1〜3のいずれか1の発明において、前記芯材の外周面には、凸条部が一周にわたって形成され、該凸条部を前記医療器具用チューブの端部に配置することを特徴とする。請求項4の発明によれば、凸条部を前記医療器具用チューブの端部の位置に配置して、医療器具用チューブの端部を縮径させることによって、医療器具用チューブの端面が凸条部に倣って形成される。したがって、医療器具用チューブの端面形状を精度良く加工することができる。
請求項5に記載の発明は請求項1〜4のいずれか1の発明において、前記熱収縮チューブの加熱は、前記熱収縮チューブの外周面に熱風を当てることによって行うとともに、前記熱風を前記医療器具用チューブの中央部側から端部側に向けて斜めに当てることを特徴とする。請求項5の発明によれば、医療器具用チューブの中央部側から斜めに熱風(すなわち加熱されたエア)を当てるので、医療器具用チューブの端部以外に熱が伝わることを抑制することができる。
請求項6に記載の発明は前記目的を達成するために、熱可塑性チューブから成り、チューブ周壁内に軸方向の管路が形成された医療器具用チューブを、チューブ端部が絞られた形状に加工するとともに前記管路を前記チューブ端部で閉塞する加工を行う医療器具用チューブの端部加工方法において、前記医療器具用チューブに芯材を挿入して該医療器具用チューブの端部に配置し、前記芯材を挿入した前記医療器具用チューブの端部を覆うように熱収縮チューブを被せ、前記医療器具用チューブの端部の位置で前記熱収縮チューブに熱を加えて収縮させることによって、前記熱収縮チューブの収縮力と前記熱収縮チューブからの熱とで前記医療器具用チューブの端部を変形させるとともに、前記管路の端部を閉塞させることを特徴とする。
本発明によれば、熱収縮チューブの収縮力と熱収縮チューブからの熱によって医療器具用チューブの端部を縮径させると同時に、管路の端部を閉塞させることができる。
本発明によれば、熱収縮チューブの収縮力と熱収縮チューブからの熱によって医療器具用チューブの端部を縮径させるので、端部のみを短時間で確実に加工することができるとともに、滑らかな外表面の先端を得ることができる。
以下添付図面に従って本発明に係る医療器具用チューブの端部加工方法の好ましい実施の形態について詳述する。
図1は、本発明に係る医療器具用チューブの端部加工方法を用いて製造した挿入補助具を示す斜視図である。また、図2は、内視鏡の挿入部を挿通させた状態の挿入補助具の先端部を示す断面図である。
図1に示すように、挿入補助具10は、可撓性を有する熱可塑性の医療器具用チューブ(以下、チューブ)12と、このチューブ12の基端に設けられた硬質の把持部14とによって構成される。把持部14は、樹脂材によって筒状に形成されており、この把持部14にチューブ12の基端が固定されている。この把持部14を術者が把持することによって、挿入補助具10が操作される。
チューブ12は、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂材によって筒状に形成されており、このチューブ12に内視鏡の挿入部16(図2参照)が挿通される。チューブ12の内径D1は、内視鏡の挿入部16の外径D3よりも片側で0.5〜2mm大きく形成されており、チューブ12に対して内視鏡の挿入部16をスムーズに挿脱できるようになっている。
チューブ12は、先端12Aの径が絞られた先細形状になっている。先端12Aの内径D2は、内視鏡の挿入部16の外径D3と略等しい寸法で形成されている。したがって、挿入部16をチューブ12に挿入すると、挿入部16の外周面とチューブ12の先端12Aとの間には、隙間が殆どできないようになっている。したがって、内視鏡の挿入部16を挿入補助具10に対して押し引き操作した際に、体壁(たとえば腸壁)が挿入部16と挿入補助具10との隙間に巻き込まれることを防止することができる。また、挿入補助具10の内部に潤滑剤(たとえば水)を供給した場合には、挿入補助具10と挿入部16との間の潤滑剤が挿入補助具10の先端12Aから流出することを抑制することができる。
次にチューブ12の先端を加工する方法について説明する。図3は、加工前のチューブ12の先端12Aと、加工具である芯材20及び熱収縮チューブ22を示す斜視図である。同図に示すように、加工前のチューブ12は一定径で形成されている。
芯材20は、樹脂などの熱伝達の低い材質で構成されている。なお、芯材20の材質は断熱材であってもよい。また、芯材20は、全体が円筒状に形成されており、その中空部20Cから放熱できるようになっている。したがって、芯材20は、後述の熱収縮チューブ22から熱が伝わった場合にも温度が上昇しにくくなっている。
さらに、芯材20は、外径の小さい絞り部20Aと、その絞り部20Aの端部に設けられた大径の芯出し部20Bで構成される。絞り部20Aの外径DA(図4(A)参照)は、チューブ12の先端12Aの加工目標内径寸法(すなわち図2のD2)に設定される。一方、芯出し部20Bの外径DB(図4(A)参照)は、チューブ12の内径D1と略同じ寸法で形成される。したがって、芯出し部20Bをチューブ12に挿入すると、芯出し部20Bの中心軸とチューブ12の中心軸が重なった状態で配置されることになり、芯材20がチューブ12の中心に正確に配置される。
一方、熱収縮チューブ22は、加熱すると収縮する性質のチューブであり、たとえば、ポリオリフィン、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、FEPなどの材質で構成される。熱収縮チューブ22は、チューブ12に被せることのできる大きさ、すなわち、チューブ12の外径よりも大きい内径を有する筒状に形成されている。熱収縮チューブ22の大きさは、チューブ12の外周面に対して若干の隙間S(図4(C)参照)が形成されることが好ましい。ここで、隙間Sは、ハサミの刃先などを挿入できる大きさ、たとえば片側3mm程度であることが好ましい。
図4(A)〜図4(D)は、チューブ12の先端12Aの加工手順を説明する説明図である。
まず、図4(A)に示すように、芯材20を芯出し部20Bからチューブ12に挿入し、図4(B)に示す如く、芯材20の絞り部20Aをチューブ12の先端12Aの位置に配置する。これにより、芯材20は、芯出し部20Bによって、チューブ12の中心軸上に配置される。
次に、チューブ12に熱収縮チューブ22を被せる。熱収縮チューブ22は、図4(C)に示すように、その中央部がチューブ12の先端12Aの位置に配置されるようにする。
次いで熱収縮チューブ22の中央部を加熱する。加熱方法は特に限定するものではないが、たとえば、ドライヤ(不図示)によって熱収縮チューブ22の外周面に熱風を一周にわたって吹きかける。その際、チューブ12の中央部側から先端側に向けて斜めに送風することが好ましい。これにより、熱風は、熱収縮チューブ22に当たった後に外側(図4の右側)に流れるので、熱収縮チューブ22の中央部側が熱収縮することを防止できる。
加熱された熱収縮チューブ22は、図4(D)に示すように収縮される。これにより、チューブ12の先端12Aは、熱収縮チューブ22によって外側から押圧されるとともに、熱収縮チューブ22の熱がチューブ12の先端12Aに伝達されるので、熱変形により縮径される。縮径されたチューブ12は、芯材20の絞り部20Aの外周面に当接し、その形状が決定される。
熱収縮チューブ22が十分に収縮した後、加熱操作を停止する。次いで、熱収縮チューブ22を破断する。その際、熱収縮チューブ22とチューブ12との間に若干の隙間Sがあるので、ハサミの刃先などを挿入して熱収縮チューブ22を破断することができる。
次いで、芯材20をチューブ12から引き抜く。その際、芯材20をチューブ12の基端側から引き抜いてもよいし、先端12Aを弾性変形させながら先端側から引き抜いてもよい。以上の操作によって、先端12Aが絞り加工されたチューブ12が製造される。
上記の如く加工されたチューブ12の先端12Aは、熱収縮チューブ22に押圧されて縮径されるので、加工後の先端12Aの外表面は熱収縮チューブ22の内表面と同様に滑らかになる。したがって、本実施の形態によれば、先端12Aの外表面が滑らかなチューブ12を得ることができる。このように先端12Aの外表面が滑らかなチューブ12は、体内に挿入した際に体壁との摩擦が小さいので、医療器具として適している。
また、本実施の形態によれば、熱収縮チューブ22の収縮部分がチューブ12の先端12Aのみに接触して熱が伝わるので、熱収縮チューブ22に接触しない部分には、熱が殆ど伝達されない。したがって、熱収縮チューブ22の加熱を100℃以上の高温で行うことができ、チューブ12の先端12Aの加工を15分程度の短時間で行うことができる。
なお、上述した実施形態は、芯材20を円筒状に形成したが、芯材20の形状はこれに限定するものではなく、円柱状であってもよい。
また、芯材20は、図5に示すように、絞り部20Aの外周面に凸条部20Cを設けてもよい。図5の凸条部20Cは、絞り部20Aの外周面に一周にわたって形成されている。この芯材20を用いて加工を行う場合、チューブ12の先端12Aのすぐ外側に凸条部20Cが配置されるようにする。これにより、熱収縮チューブ22を収縮させた際にチューブ12の先端12Aの長手方向の伸び量が凸条部22Cによって規制されるので、チューブ12の先端12Aを精度良く加工することができる。
なお、上述した実施形態において、挿入補助具10の構成や用途は特に限定するものではなく、たとえば、チューブ12の先端外周面にバルーン(不図示)を装着して使用してもよい。また、バルーン付きの挿入補助具10を、挿入部16の先端外周面にバルーン(不図示)を装着した内視鏡とともにダブルバルーン式内視鏡装置として使用してもよい。特に、ダブルバルーン式内視鏡装置の場合は、内視鏡の挿入部16を挿入補助具10に対して繰り返し挿脱操作するので、挿入補助具10の先端12Aの加工精度が重要であり、本発明を適用することが好ましい。
次に、ダブルバルーン式内視鏡に用いられる挿入補助具30の加工方法について図7〜図9に従って説明する。これらの図に示すように、ダブルバルーン式の挿入補助具30は、可撓性を有する熱可塑性のチューブ32と、このチューブ32の基端に設けられた硬質の把持部34と、チューブ32の先端外周面に取り付けられたバルーン36とによって構成される。把持部34は、樹脂材によって筒状に形成されており、この把持部34にチューブ32の基端が固定されている。
チューブ32は、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂材によって筒状に形成されている。チューブ32の周壁は軸方向に沿って肉厚部32Bを有し、その肉厚部32Bの内部に管路32Cが軸方向に沿って形成されている。管路32Cの基端には送気チューブ38が連結され、この送気チューブ38の先端に送気口40が設けられる。送気口40は不図示のバルーン制御装置に接続され、このバルーン制御装置によってエアの供給、吸引が行われる。
チューブ32の外周面には、バルーン36の内側となる位置に通気孔32Dが形成されており、この通気孔32Dが管路32Cに連通されている。したがって、送気口40からエアを供給、吸引することによって、バルーン36の内部にエアが供給、吸引され、バルーン36が膨張、収縮される。
ところで、加工前のチューブ32は、図9に示すように、その軸に直交する断面が全て同じ形状に形成されている。したがって、管路32Cの先端は、チューブ32の端面に連通されている。しかし、このままでは、管路32Cの先端からエアが漏れてバルーン36を膨張、収縮させることができないので、図8に示すように管路32Cの先端を閉塞させる必要がある。
そこで、本実施の形態では、管路32Cの先端の閉塞加工を、チューブ32の絞り加工と同時に行う。その加工は、図4(A)〜図4(D)で説明した方法で行うことができる。すなわち、芯材20を芯出し部20Bからチューブ12に挿入し、芯材20の絞り部20Aをチューブ32の先端32Aの位置に配置する。次いで、チューブ32に熱収縮チューブ22を被せ、その中央部がチューブ32の先端32Aの位置に配置されるようにする。次に熱収縮チューブ22の中央部を加熱し、収縮させる。これにより、チューブ12の先端32Aは、熱収縮チューブ22によって外側から押圧されるとともに、熱収縮チューブ22の熱がチューブ32の先端32Aに伝達されるので、熱変形により縮径される。同時に、管路32Cの先端周辺部分は、管路32Cの先端を閉塞するように熱変形される。熱収縮チューブ22が十分に収縮した後、加熱操作を停止し、熱収縮チューブ22を破断する。次いで、芯材20をチューブ32から引き抜く。以上の操作によって、管路32Cの先端が閉塞され、且つ、先端32Aが絞り加工されたチューブ32が製造される。
このように本発明の加工方法を用いることによって、チューブ32の先端の絞り加工と、管路32Cの先端の閉塞加工とを同時に行うことができる。
なお、上述した実施形態は、挿入補助具10、30を加工する例で説明したが、加工する医療器具用チューブはこれに限定するものではなく、たとえば、薬液を体内に注入するチューブの先端加工などにも適用することができる。
10…挿入補助具、12…チューブ、14…把持部、16…挿入部、20…芯材、20A…絞り部、20B…芯出し部、22…熱収縮チューブ、30…挿入補助具、32…チューブ、32B…肉厚部、32C…管路、32D…通気孔、34…基端部、36…バルーン