JP2008210992A - 窒化物半導体レーザ素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】窒化物半導体のクラックの発生を抑制し、かつ端面において保護膜の剥がれが生じず、良好な特性及び高寿命を実現する窒化物半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
【解決手段】第1窒化物半導体層、活性層、第2窒化物半導体層を含む窒化物半導体層と、該窒化物半導体層の共振器面に接触する保護膜とを有する窒化物半導体レーザ素子であって、少なくとも共振器面の活性層に接触する保護膜が、前記保護膜の最大膜厚よりも薄い領域を有する窒化物半導体レーザ素子。
【選択図】図2

Description

本発明は、窒化物半導体レーザ素子に関し、より詳細には、共振器面に保護膜を有する窒化物半導体レーザ素子に関する。
窒化物半導体レーザ素子では、RIE(反応性イオンエッチング)又はへき開によって形成された共振器面はバンドギャップエネルギーが小さくなるため、出射光の吸収が端面で起こり、この吸収により端面に熱が発生し、高出力半導体レーザを実現するには寿命特性等に問題があった。このため、例えば、高出力半導体レーザの共振器面の保護膜として、Siの酸化膜や窒化膜を用いて、共振器面に窓構造を形成し、共振器面での光吸収を抑制している(例えば、特許文献1)。
一方、従来から、特定波長に対応した周期的屈折率変動を設けるために、共振器内部にストライプ構造を採用し、単峰性を実現するなどの工夫がなされており、その保護膜としてSiO2膜を用い、ストライプごとに保護膜の厚みを変動させるものが提案されている(例えば、特許文献2及び3等)。
特開平10−70338 特開平4−79279号公報 特開昭63−164286号公報
窒化物半導体レーザ素子においては、共振器面での光吸収を抑制できる構造を採用したり、その性能等に応じた種々の保護膜の形態が試行されているが、高出力レーザを実現するために、未だ光吸収及び発熱の十分な防止を図ることができず、また、窒化物半導体における格子定数の違いに起因する窒化物半導体層にクラックが発生したり、あるいは保護膜に剥がれが生じ、所望の機能を果たすことができなくなるという問題が、依然として存在する。
つまり、窒化物半導体レーザ素子は、光密度が大きいため、放熱性を向上させる必要があるが、発振した光を好適に反射・透過できるような保護膜を形成する際、放熱性を向上させるために膜厚を厚くすると、その保護膜にクラックが発生しやすいという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、窒化物半導体のクラックの発生を抑制し、かつ端面において保護膜の剥がれが生じず、良好な特性及び高寿命を実現する窒化物半導体レーザ素子を提供するこ
とを目的とする。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、第1窒化物半導体層、活性層、第2窒化物半導体層を含む窒化物半導体層と、該窒化物半導体層の共振器面に接触する保護膜とを有する窒化物半導体レーザ素子であって、
少なくとも共振器面の活性層に接触する保護膜が、該保護膜の最大膜厚よりも薄い領域を有することを特徴とする。
この窒化物半導体レーザ素子では、前記保護膜の最大膜厚よりも薄い領域は、共振器面の光導波路領域であることが好ましい。
また、前記第2窒化物半導体層の表面にリッジが形成されており、前記光導波路領域に接触する保護膜のうち、リッジの下方及びその近傍領域において、前記保護膜の最大膜厚よりも薄い領域を有することが好ましい。
さらに、前記保護膜は、六方晶系の結晶構造を有する材料又は窒化物膜で形成されていることが好ましい。
また、前記保護膜の最大膜厚は、50Å〜1000Åの膜厚であることが好ましい。
さらに、前記共振器面の光導波路領域以外の領域に接触する保護膜は、共振器面と同軸配向の結晶構造を有することが好ましい。
前記共振器面が、M面(1−100)、A面(11−20)、C面(0001)又はR面(1−102)からなる群から選ばれる面であることが好ましい。
前記共振器面がM面(1−100)であり、かつ、共振器面の光導波路領域以外の領域に接触する保護膜は、共振器面と同軸配向であるM軸配向の結晶構造を有していることが好ましい。
前記共振器面に接触する保護膜上に、第2保護膜がさらに積層されてなることが好ましい。
前記保護膜の最大膜厚よりも薄い領域の保護膜の膜厚が、最大膜厚に対して5%以上薄いことが好ましい。
前記保護膜の最大膜厚よりも薄い領域は、共振器面において横長の楕円形状であることが好ましい。
本発明によれば、共振器面において、窒化物半導体層に密着性の良好な保護膜を接触させて形成することにより、放熱性を最大限に発揮させることができるとともに、特に、全体として比較的厚膜の保護膜を形成した場合においても、少なくとも共振器面の活性層において、保護膜を薄膜状に形成することにより、保護膜との密着性に起因する窒化物半導体層と保護膜との間の応力の緩和を図り、保護膜の剥がれ又は窒化物半導体層へのクラックの発生を確実に防止することができる。これにより、信頼性が高く、CODレベルを向上させた高出力の窒化物半導体レーザ素子を提供することができる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、例えば、典型的には図1に示すように、主として、第1窒化物半導体層11、活性層12及び第2窒化物半導体層13からなる窒化物半導体層を含み、窒化物半導体層の対向する端面に共振器面が設けられて、共振器が形成されている。
このような窒化物半導体レーザ素子は、通常、窒化物半導体層が基板10上に形成されており、第2窒化物半導体層13の表面にリッジ14が形成され、共振器面の全面に保護膜(図2(a)〜(c)中、25参照)が形成され、さらに、埋込膜15、p電極16、第3保護膜17、pパッド電極、n電極19等が適宜形成されている。
保護膜25は、図2(a)の活性層での断面図、図2(b)の正面図及び図2(c)の縦断面図に示すように、少なくとも共振器面の活性層に接触して形成されている膜であり、活性層12(任意にその近傍領域に接触する領域において、保護膜の最大膜厚よりも薄膜に形成されている(図2(a)、25a参照、以下、この薄膜で形成された領域を「薄膜の領域」と記すことがある)。
ここで、薄膜の領域25aは、窒化物半導体層における共振器面のうち、いわゆる光導波路領域と呼ばれる領域であり、少なくとも活性層12を含み、SCH構造を採用した場合、活性層12と、その上下に位置するガイド層の一部又は全部とを含む領域である。なお、光導波路領域をコア領域と呼ぶ場合もある。
また、薄膜の領域25aは、リッジ14の下方の領域、通常、リッジ14の下方の領域とその近傍領域、つまり、NFPに対応する領域、あるいはリッジ下方の領域とリッジの左右に拡がる領域とを含み、全幅がリッジ幅の1.5倍程度以下の幅を有する領域であることが適している。この薄膜の領域25aは、例えば、幅Wが、0.5μm〜3.0μm程度、好ましくは1.0μm〜2.0μm程度が挙げられる。高さHは、活性層と同程度〜4000Å程度であればよく、好ましくは活性層と同程度〜2000Å程度であり、より好ましくは活性層と同程度〜1000Å程度が挙げられる。
さらに、薄膜の領域25aの共振器面における平面形状は、通常、楕円又は円形状であるが、保護膜の膜質、保護膜の形成方法、保護膜の薄膜化方法等によって、四角形又は丸みを帯びた四角形としてもよい。なかでも、横長の楕円形状であることが好ましい。光導波路領域の形状に対応した薄膜の領域を形成することで、より効率よく、CODレベルを高く保ったまま放熱性を向上させることができる。
薄膜の領域25aの薄膜の程度は、最大膜厚よりも薄ければよく、例えば、薄膜の領域の膜厚が、最大膜厚に対して5%程度以上、好ましくは10%程度以上薄いことが適しており、最大膜厚の40%程度以上あるものが好ましい。また、別の観点から、薄膜の領域25aは、10Å程度以上薄く形成されていることが適しており、20Å程度以上、好ましくは30Å程度以上の膜厚を有するものが好ましい。この程度の膜厚を有する薄膜の領域であれば、他の領域よりも薄膜であっても、強度不足による劣化等を抑制し、安定した端面保護膜とすることができる。
なお、この薄膜の程度は、測定誤差又はばらつき等と区別するために、例えば、それぞれの領域における十点平均粗さ又は算術平均粗さ等を考慮するなどして、それぞれの領域の膜厚を測定/決定することが適している。ただし、薄膜の領域が、後述するように傾斜的に薄膜となっている場合には、最も薄い領域と最大膜厚の領域との膜厚が、上述のような関係を有していることが好ましい。保護膜をこのように薄膜とすることにより、その領域における窒化物半導体層との応力を低減することができ、窒化物半導体層にクラックが生じることを防止することができる。
薄膜の領域における保護膜は、その膜厚は必ずしも均一でなくてもよく、例えば、碗状又はドーム状に、傾斜的に薄膜の領域が形成されていてもよいし、光導波路領域又はNFPに対応する領域のみ段状に窪んでいてもよいし、薄膜の領域の保護膜表面が凹凸状に形成されていてもよい。
保護膜は、窒化物半導体層に形成された共振器面を被覆するものであるが、必ずしも共振器面の全面を被覆する必要はなく、少なくとも、共振器面の光導波路領域を被覆するものであればよい。また、後述するように、保護膜は、共振器面以外の面を、部分的に被覆していてもよい(後述する第2膜及び第2保護膜も同様である)。
保護膜は、例えば、Si、Mg、Al、Hf、Nb、Zr、Sc、Ta、Ga、Zn、Y、B、Ti等の酸化物、窒化物(例えば、AlN、AlGaN、GaN、BN等)又はフッ化物等が挙げられる。
保護膜の結晶構造としては、六方晶系、立方晶系、斜方晶系のものなどが挙げられる。また、窒化物半導体と格子定数が近い(例えば、窒化物半導体との格子定数の差が15%以下)ものであれば、結晶性の良好な保護膜を形成することができ好ましい。なかでも、六方晶系の結晶構造を有する材料による膜であることが好ましく、さらに、窒化物であることがより好ましい。また、別の観点では、レーザ素子の発振波長に対して吸収端のない材料により形成されることが好ましい。
保護膜の膜厚、つまり、最大膜厚の領域における膜厚は、特に限定されるものではなく、例えば、50Å〜1000Å、さらに、50〜500Åであることが好ましい。
保護膜が形成される窒化物半導体層における共振器面は、例えば、M軸、A軸、C軸及びR軸配向が挙げられ、つまり、M面(1−100)、A面(11−20)、C面(0001)又はR面(1−102)からなる群から選ばれる面、特にM軸配向であることが好ましい。ここでの共振器面とは、通常、上述したような光導波路領域又はNFPに対応する領域を含む領域を意味するが、このような特定の配向をしている共振器面は、少なくとも、光導波路領域又はNFPに対応する領域以外の領域であればよい。また、このような領域のみならず、光導波路領域又はNFPに対応する領域が上述した配向を有していてもよい。従って、このような配向を有する端面(共振器面)に対して、保護膜(主として光導波路領域以外の領域における保護膜)は、M軸〈1−100〉、A軸〈11−20〉、C軸〈0001〉及びR軸〈1−102〉配向と、この端面と同軸で配向された膜であることが好ましい。
これにより、保護膜の膜質がより良好となり、半導体レーザ素子の駆動時においても、薄膜の領域を維持し又は増強しながら、窒化物半導体層へのクラックを防止すべく、応力を緩和させることができ、確実にCODレベルを向上させることができる。なかでも、保護膜(主として光導波路領域以外の領域における保護膜)は、M軸配向であることがより好ましい。
ここで、M軸配向であるとは、単結晶で、精密にM軸に配向した状態(単結晶)のみならず、多結晶の状態、多結晶が混在するが、M軸に配向する部位を均一に含む状態、均一に分布して含む状態であってもよい。このように、多結晶状態である場合には、共振器面との格子定数の差異が厳格に表れず、その差異を緩和することができる。
また、保護膜がM軸配向の膜として形成された膜は、特に、後述するように、任意の薄膜化のための処理を、時間の制御によって容易に調節することができる。半導体レーザ素子の駆動時においても、より薄膜の領域における窒化物半導体層への応力を緩和することができる。
上述したように、共振器面と同軸配向の保護膜とすることによりCODレベルを向上させることができるが、通常、窒化物半導体レーザ素子においては、共振器面と同軸配向の保護膜を結晶性良く形成することが困難である。また、結晶性の良い保護膜を形成した場合でも、保護膜と窒化物半導体層との格子定数の差から、保護膜にクラックが生じやすい。さらに、クラックが生じない程度の薄膜の保護膜では、光密度の大きい窒化物半導体レーザにおいては十分に放熱することができない。
そこで、本発明のように、光出力領域に対応して薄膜の領域を形成することにより、CODレベルを高く保ったまま、放熱性を向上させることができる。すなわち、薄膜の領域においては、同軸配向の保護膜となっていることでウィンドウ効果が得られ、CODレベルを向上させることができる。また、薄膜となっているので、特定の結晶配向を有する結晶性の良い膜であっても保護膜にクラックが発生することを抑制することができる。さらに、素子駆動において活性した熱は、薄膜の領域以外の領域から好適に放熱することが可能となる。この領域からは光が出力されないので、薄膜の領域と比較して多少のクラックが発生したとしても素子特性への影響が少なく、結果として高出力の窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
保護膜は、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、ECRプラズマスパッタ法、マグネトロンスパッタ法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、CVD法、スプレー法、スピンコート法、ディップ法又はこれらの方法の2種以上を組み合わせる方法、あるいはこれらの方法と、全体又は部分的な酸化処理(熱処理)又は露光処理とを組み合わせる方法等、種々の方法を利用することができる。なお、組み合わせの方法では、必ずしも同時又は連続的に成膜及び/又は処理しなくてもよく、成膜した後に、処理等を行ってもよいし、その逆でもよい。なかでも、ECRプラズマスパッタ法及びその後の熱処理の組み合わせが好ましい。
特に、保護膜として、上述したように、共振器面と同軸配向の膜を得るためには、その成膜方法にもよるが、成膜前に、共振器面の表面を窒素プラズマで処理する、成膜速度を比較的遅いレートに調整する、成膜時の雰囲気を、例えば、窒素雰囲気に制御する、成膜圧力を比較的低く調整するなどのいずれか1つ又は2以上を組み合わせて成膜を制御することが好ましい。
各方法での成膜時に窒素分圧、成膜圧力等の条件を変動させてもよい。
例えば、スパッタ法で成膜する際、ターゲットとして保護膜材料を用い、成膜レートを徐々に又は急激に増大させるか、RF電力を徐々に又は急激に増大(増大させる範囲が50〜500W程度)させるか、あるいはターゲットと基板との距離を徐々に又は急激に変化させる(変化させる範囲が元の距離の0.2〜3倍程度)方法、ターゲットとして保護膜材料を用いて成膜する際に圧力を徐々に又は急激に低下させる(低下させる圧力範囲が0.1〜2.0pa程度)方法等が挙げられる。
具体的には、成膜速度を調整する際に、5Å/min〜100Å/minの範囲で成膜し、その後、これ以上の成膜速度で成膜することが好ましい。また、RF電力は、100W〜600Wで成膜し、その後(例えば、成膜速度の変更時に)これ以上のRF電力で成膜することが好ましい。なお、この後、任意に熱処理又は露光処理を行ってもよい。
さらに、スパッタ法で成膜する際、基板の温度を徐々に又は急激に上昇または低下させる(変化させる温度範囲が50〜500℃程度)方法が挙げられる。
また、保護膜に薄膜の領域を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、一旦、共振器面全面に所定の膜厚の保護膜を形成し、その後、公知のフォトリソグラフィ(例えば、レジスト塗布、プリベーク、露光、現像及びポストベーク等)及びエッチング工程(アルカリ現像液によるウェットエッチング、塩素系ガスを用いるドライエッチング等)を利用して、あるいは、局所的に薄膜の領域に露光又は熱処理などを付し、保護膜の膜厚方向において部分的に薄膜化してもよい。露光等により保護膜の膜厚を薄膜化させる場合には、保護膜の酸化を防ぐために、その上に後述する第2保護膜を形成してから行うことが好ましい。この際、素子を駆動させることにより、光導波路領域の保護膜に局所的にレーザ光を露光してもよいし、外部からの露光によって薄膜領域を形成してもよい。公知のフォトリソグラフィ及びエッチング工程を利用して、共振器面における他の領域にのみ所定膜厚の保護膜を形成し、続いて、共振器面全面に同じ材料の保護膜を積層して、薄膜の領域を形成してもよい。また、共振器端面に保護膜を形成する前に、得られる保護膜の膜質、膜厚等を局所的に変化させることができるように、局所的に前処理等を施してもよい。さらに、これらの方法を任意に組み合わせてもよい。なお、露光、熱処理、前処理等を行う場合には、共振器面の局所的な劣化、変質等を防止するために、特に活性層及びその近傍領域を構成する窒化物半導体層に悪影響を与えない温度、例えば、900℃程度以下とすることが好ましい。
本発明の窒化物半導体レーザ素子においては、保護膜の上に、さらに膜質、材料又は組成の異なる第2保護膜(例えば、図6(b)又は(c)中、26参照)が形成されていることが好ましい。このような第2保護膜を形成することにより、保護膜をより強固に共振器面に密着させることができる。第2保護膜としては、Si、Mg、Al、Hf、Nb、Zr、Sc、Ta、Ga、Zn、Y、B、Ti等の酸化物が挙げられる。また、第2保護膜は、単層構造、積層構造のどちらでもよい。例えば、Siの酸化物の単層、Alの酸化物の単層、Siの酸化物とAlの酸化物の積層構造等が挙げられる。
第2保護膜の膜厚は、特に限定されることなく、保護膜として機能し得る膜厚とすることが適しており、例えば、保護膜と第2保護膜との総膜厚が、2μm程度以下となるものが好ましい。
また、保護膜及び第2保護膜は、共振器面の出射側のみならず、反射側に形成されていてもよく、両者において、材料、膜厚等を異ならせてもよい。反射側の第2保護膜としては、Siの酸化物とZrの酸化物との積層構造、Alの酸化物とZrの酸化物との積層構造、Siの酸化物とTiの酸化物との積層構造、Alの酸化物とSiの酸化物とZrの酸化物との積層構造、Siの酸化物とTaの酸化物とAlの酸化物の積層構造等が挙げられる。所望の反射率に合わせて適宜その積層周期等を調整することができる。
第2保護膜は、上述した保護膜と同様、例示した公知の方法等を利用して形成することができる。特に、第2保護膜は、アモルファスの膜として形成することが好ましく、そのために、その成膜方法にもよるが、成膜速度をより早いレートに調整する、成膜時の雰囲気を、例えば、酸素雰囲気に制御する、成膜圧力をより高く調整するなどのいずれか1つ又は2以上を組み合わせて成膜を制御することが好ましい。酸素雰囲気に制御する場合、吸収をもたない程度に酸素を導入することが好ましい。具体的には、スパッタ装置でSiターゲットを用いて成膜し、酸素の流量は、3〜20sccm、RF電力は、300〜800W程度で成膜することが挙げられる。
また、上述した保護膜と第2保護膜との間に、任意に第2膜を形成してもよい(例えば、図6(a)及び(c)中、25’参照)。第2膜は、保護膜(以下、第1膜と称する場合がある)と同じ結晶構造を有する材料、例えば六方晶系の材料で形成されることが好ましい。また、第2膜の材料及び結晶配向性については、第1膜と同様にして形成することができる。例えば、第1膜と第2膜で、同一材料で異軸配向、異なる材料で同軸配向、異なる材料で異軸配向、同一材料で同軸配向のいずれの結晶構造を有するものでもよい。なかでも、異なる材料で同軸配向の結晶構造を有するものが好ましい。例えば、第1膜をAlNで形成し、第2膜をGaNで形成し、いずれもM軸配向性を有するものが挙げられる。これにより結晶性のよい保護膜とし、保護膜同士の剥がれを抑制することができる。また、上述した保護膜(第1膜)と同様の薄膜の領域を有しているものが好ましい。全体において同一膜厚、つまり、先に形成された保護膜の薄膜の領域を引き継いで、光導波路領域(コア領域)周辺が窪んでいる形状とすることが好ましい。このときに、第1膜と同程度の膜厚とすることで、このような形状とすることができる。
第2膜は、上述した保護膜と同様に形成することができる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子を形成するために用いる基板は、絶縁性基板であってもよいし、導電性基板であってもよい。基板としては、例えば、第1主面及び/又は第2主面に0°以上10°以下のオフ角を有する窒化物半導体基板であることが好ましい。その膜厚は、例えば、50μm以上、10mm以下が挙げられる。なお、例えば、特開2006−24703号公報に例示されている種々の基板等の公知の基板、市販の基板等を用いてもよい。
窒化物半導体基板は、MOCVD法、HVPE法、MBE法等の気相成長法、超臨界流体中で結晶育成させる水熱合成法、高圧法、フラックス法、溶融法等により形成することができる。
窒化物半導体層としては、一般式InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)のものを用いることができる。また、これに加えて、III族元素としてBが一部に置換されたものを用いてもよいし、V族元素としてNの一部をP、Asで置換されたものを用いてもよい。n側半導体層は、n型不純物として、Si、Ge、Sn、S、O、Ti、Zr、CdなどのIV族元素又はVI族元素等のいずれか1つ以上を含有していてもよい。また、p側半導体層は、p型不純物として、Mg、Zn、Be、Mn、Ca、Sr等を含有していてもよい。不純物は、例えば、5×1016/cm3〜1×1021/cm3程度の濃度範囲で含有されていることが好ましい。
活性層は、多重量子井戸構造又は単一量子井戸構造のいずれでもよく、特に、一般式InxAlyGa1-x-yN(0<x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)のものを用いることが好ましい。
また、活性層は、保護膜よりバンドギャップエネルギーが小さいものであることが好ましい。本発明において、保護膜のバンドギャップエネルギーを活性層より大きいもので形成すことにより、端面のバンドギャップエネルギーを広げ、言い換えると、共振器面付近の不純物準位を広げ、ウィンドウ構造を形成することにより、CODレベルをより向上させることができる。
また、本発明では、特に発振波長が220nm〜500nmのものにおいて、保護膜の剥がれを防止し、CODレベルを向上させることができる。
窒化物半導体層は、n側半導体層とp側半導体層に光の光導波路を構成する光ガイド層を有することで、活性層を挟んだ分離光閉じ込め型構造であるSCH(Separate Confinement Heterostructure)構造とすることが好ましい。但し、本発明は、これらの構造に限定されるものではない。
窒化物半導体層の成長方法は、特に限定されないが、MOVPE(有機金属気相成長法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)など、窒化物半導体の成長方法として知られている全ての方法を好適に用いることができる。特に、MOCVDは結晶性良く成長させることができるので好ましい。
窒化物半導体層、つまり、p側半導体層の表面には、リッジが形成されている。リッジは、光導波路領域として機能するものであり、その幅は1.0μm〜30.0μm程度、さらに、1.0μm〜3.0μm程度が好ましい。その高さ(エッチングの深さ)は、例えば、0.1〜2μmが挙げられる。また、p側半導体層を構成する層の膜厚、材料等を調整することにより、光閉じ込めの程度を適宜調整することができる。リッジは、共振器方向の長さが200μm〜5000μm程度になるように設定することが好ましい。また、共振器方向においてすべて同じ幅でなくてもよいし、その側面が垂直であっても、テーパー状であってもよい。この場合のテーパー角は45°〜90°程度が適当である。
通常、窒化物半導体層の表面及びリッジの側面にわたって、埋込膜が形成されている。つまり、埋込膜は、窒化物半導体層上であって、窒化物半導体層と、後述する電極とが直接接触して、電気的な接続をとる領域以外の領域に形成されている。なお、窒化物半導体層と電極との接続領域としては、特にその位置、大きさ、形状等は限定されず、窒化物半導体層の表面の一部、例えば、窒化物半導体層の表面に形成されるストライプ状のリッジ上面のほぼ全面が例示される。
埋込膜は、一般に、窒化物半導体層よりも屈折率が小さな絶縁材料によって形成されている。屈折率は、エリプソメトリーを利用した分光エリプソメータ、具体的には、J.A.WOOLLAM社製のHS−190等を用いて測定することができる。例えば、埋込膜は、Zr、Si、V、Nb、Hf、Ta、Al、Ce、In、Sb、Zn等の酸化物、窒化物、酸化窒化物等の絶縁膜又は誘電体膜の単層又は積層構造が挙げられる。また、埋込膜は、単結晶であってもよいし、多結晶又はアモルファスであってもよい。このように、リッジの側面から、リッジの両側の窒化物半導体表面にわたって保護膜が形成されていることにより、窒化物半導体層、特にp側半導体層に対する屈折率差を確保して、活性層からの光の漏れを制御することができ、リッジ内に効率的に光閉じ込めができるとともに、リッジ基底部近傍における絶縁性をより確保することができ、リーク電流の発生を回避することができる。
埋込膜は、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、ECRプラズマスパッタ法、マグネトロンスパッタ法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、CVD法、スプレー法、スピンコート法、ディップ法又はこれらの方法の2種以上を組み合わせる方法、あるいはこれらの方法と酸化処理(熱処理)とを組み合わせる方法等、種々の方法を利用することができる。
p電極は、窒化物半導体層及び埋込膜上に形成されることが好ましい。p電極が最上層の窒化物半導体層及び保護膜上に連続して形成されていることにより、保護膜の剥がれを防止することができる。特に、リッジ側面までp電極を形成することにより、リッジ側面に形成された埋込膜について有効に剥がれを防止することができる。
p電極及びn電極は、例えば、パラジウム、白金、ニッケル、金、チタン、タングステン、銅、銀、亜鉛、錫、インジウム、アルミニウム、イリジウム、ロジウム、ITO等の金属又は合金の単層膜又は積層膜により形成することができる。p電極の膜厚は、用いる材料等により適宜調整することができ、例えば、500〜5000Å程度が適当である。電極は、少なくとも第1及び第2半導体層又は基板上にそれぞれ形成していればよく、さらにこの電極上にパッド電極等、単数又は複数の導電層を形成してもよい。
なお、p電極及びn電極は、図3に示したように、基板に対して同じ面側に形成されていてもよい。
また、埋込膜上には、第3保護膜が形成されていることが好ましい。このような第3保護膜は、少なくとも窒化物半導体層表面において埋込膜上に配置していればよく、埋込膜を介して又は介さないで、窒化物半導体層の側面及び/又は基板の側面又は表面等をさらに被覆していることが好ましい。第3保護膜は、埋込膜で例示したものと同様の材料で形成することができる。これにより、絶縁性のみならず、露出した側面又は表面等を確実に保護することができる。
なお、窒化物半導体層の側面から、埋込膜、p電極及び第3保護膜の上面には、pパッド電極が形成されていることが好ましい。
また、保護膜(第1膜、第2膜及び第2保護膜)は、共振器面から第2窒化物半導体層表面にかけて連続して形成されていてもよい。半導体層表面に形成された保護膜とp電極、埋込膜及びp側パッド電極とは離間していてもよいし、接していてもよいし、被覆していてもよい。好ましくは、保護膜が埋込膜及びp電極を被覆するものである。これにより、埋込膜やp電極の剥がれを防止することができる。
また、第2窒化物半導体層表面に形成された保護膜の膜厚は、共振器面に形成された保護膜の膜厚よりも薄いものが好ましい。半導体層表面の保護膜の膜厚が共振器面の保護膜の膜厚と同程度の厚さやそれ以上に形成すると保護膜にクラックが発生することがあるが、それを防止することができるためである。
第2窒化物半導体層表面に形成された保護膜は、窒化物半導体層の結晶面と同軸配向であることが好ましく、特にC軸配向であることが好ましい。これにより半導体層表面と保護膜との密着性を良好なものとすることができる。
保護膜が共振器面から半導体層表面にかけて形成される場合、その角部において、共振器面及び半導体層表面と異なる結晶面を有するように形成することが好ましい。これにより、保護膜の剥がれが起こりやすい角部において、局所的に応力がかかるのを抑制し、共振器面と保護膜の間の応力が緩和されることで保護膜の剥がれを防止することができる。また、保護膜が共振器面から基板の裏面(窒化物半導体層が形成される面と逆の面)にわたるように形成されていてもよい。その場合にも、上述した場合と同様に、共振器面と基板裏面の間に異なる結晶面を有していてもよい。
また、例えば、窒化物半導体レーザ素子をサブマウント、ステム等の支持部材に実装し、支持部材にキャップ部材が接合されることによって、窒化物半導体レーザ装置が得られる。キャップ部材が接合されて封止される際の雰囲気は、窒素雰囲気、大気雰囲気、希ガス元素又は酸素を含有するもの(含有割合が0〜20%)等が挙げられる。なお、キャップ封止した後、薄膜の領域を形成する場合にも封止雰囲気は特に限定されない。
以下に、本発明の窒化物半導体レーザ素子の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
実施例1
この実施例の窒化物半導体レーザ素子は、図1及び図2(a)〜(c)に示すように、基板10上に、第1窒化物半導体層(例えば、n側)11、活性層12及び表面にリッジ14が形成された第2窒化物半導体層(例えば、p側)14をこの順に積層しており、共振器が形成されて構成されている。
このような窒化物半導体レーザ素子は、共振器面に保護膜(図2(c)中、25参照)、さらに、埋込膜15、p電極16、n電極19、第3保護膜17、pパッド電極18等が形成されている。
共振器面は、主としてM軸配向を有する窒化物半導体層により形成されており、保護膜25は、図2に示すように、なくとも一方の共振器面において、その共振器面と同軸、つまり、M軸配向しており、さらにその上に、第2保護膜(図6(b)参照))26が形成されている。保護膜25はAlNからなり、膜厚が100Å程度である。第2保護膜26はSiO2からなり、膜厚が2500Å程度である。保護膜25は、活性層12と、その上下の第1窒化物半導体層11及び第2窒化物半導体層14にわたる領域に、さらにリッジ14の下方及びその左右にわたる領域に、薄膜の領域25aを有している。この薄膜の領域25aは、例えば、保護膜25の薄膜の領域の膜厚D1が70Å程度、最大膜厚D2が100Å程度、すなわち、薄膜の領域において30Å程度の窪みを有する。また、薄膜の領域25aの幅Wは2.0μm程度、高さHは500Å程度である。
この窒化物半導体レーザ素子は、以下のように製造することができる。
まず、窒化ガリウム基板を準備する。この窒化ガリウム基板上に、1160℃でTMA(トリメチルアルミニウム)、TMG、アンモニア、シランガスを用い、Siを4×1018/cm3ドープしたAl0.03Ga0.97Nよりなる層を膜厚2μmで成長させる。なお、このn側クラッド層は超格子構造とすることもできる。
続いて、シランガスを止め、1000℃でアンドープGaNよりなるn側光ガイド層を0.175μmの膜厚で成長させる。このn側光ガイド層にn型不純物をドープしてもよい。
次に、温度を900℃にして、SiドープIn0.02Ga0.98Nよりなる障壁層を140Åの膜厚で成長させ、続いて同一温度で、アンドープIn0.07Ga0.93Nよりなる井戸層を70Åの膜厚で成長させる。障壁層と井戸層とを2回交互に積層し、最後に障壁層で終わり、総膜厚560Åの多重量子井戸構造(MQW)の活性層を成長させる。
温度を1000℃に上げ、TMG、TMA、アンモニア、Cp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、p側光ガイド層よりもバンドギャップエネルギーが大きい、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.25Ga0.75Nよりなるp側キャップ層を100Åの膜厚で成長させる。なお、このp側キャップ層は省略可能である。
続いて、Cp2Mg、TMAを止め、1000℃で、バンドギャップエネルギーがp側キャップ層10よりも小さい、アンドープGaNよりなるp側光ガイド層を0.145μmの膜厚で成長させる。
次に、1000℃でアンドープAl0.10Ga0.90Nよりなる層を25Åの膜厚で成長させ、続いてCp2Mg、TMAを止め、アンドープGaNよりなる層を25Åの膜厚で成長させ、総膜厚0.45μmの超格子層よりなるp側クラッド層を成長させる。
最後に、1000℃で、p側クラッド層の上に、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層を150Åの膜厚で成長させる。
このようにして窒化物半導体を成長させたウェハを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層の表面にSiO2よりなる保護膜を形成して、共振器面に平行な方向における幅が800μmのストライプ状の構造を形成する。この部分がレーザ素子の共振器本体となる。共振器長は、200μm〜5000μm程度の範囲であることが好ましい。
次に、p側コンタクト層の表面にストライプ状のSiO2よりなる保護膜を形成して、RIE(反応性イオンエッチング)を用いてSiCl4ガスによりエッチングし、ストライプ状の光導波路領域であるリッジ部を形成する。
このリッジ部の側面をZrO2からなる絶縁層で保護する。
次いで、p側コンタクト層及び絶縁層の上の表面にNi(100Å)/Au(1000Å)/Pt(1000Å)よりなるp電極を形成する。p電極を形成した後、Si酸化膜(SiO2)からなる保護膜240をp電極の上及び埋込膜の上及び半導体層の側面に0.5μmの膜厚で、スパッタリングにより成膜する。p電極を形成した後、600℃でオーミックアニールを行う。
次に、保護膜で覆われていない露出しているp電極上に連続して、Ni(80Å)/Pd(2000Å)/Au(8000Å)で形成し、pパッド電極を形成する。
その後、基板厚みが80μmになるように窒化物半導体層の成長面と反対側の面から研磨を行う。
研磨した面に、Ti(150Å)/Pt(2000Å)/Au(3000Å)よりなるn電極を形成する。
n電極とp電極及びpパッド電極とを形成したウェハー状の窒化物半導体基板の第1の主面側に凹部溝をけがきによって形成する。この凹部溝は、例えば、深さを10μmとする。また、共振器面と平行方向に、側面から50μm、垂直方向に15μmの幅とする。次に、この凹部溝を劈開補助線として窒化物半導体基板のn電極の形成面側からバー状に劈開し、劈開面(1−100面、六角柱状の結晶の側面に相当する面=M面)を共振器面とする。共振器長は800μmとし、その後、p電極に平行な方向で、バーをチップ化することで半導体レーザ素子とする。
共振器面には、AlNからなる保護膜を形成する。
まず、共振器面を、窒素プラズマを用いて表面処理し、続いて、ECRスパッタ装置を用いて、Arの流量が30sccm、N2の流量が10sccm、マイクロ波電力500W、RF電力250W、成膜速度50Å/minの条件で、AlNからなる保護膜(100Å)を形成する。
続いて、AlN保護膜の上に、例えば、出射側の端面にスパッタ装置でSiターゲットを用いて、酸素の流量が5sccm、RF電力500Wの条件でSiO2からなる第2保護膜を2500Å成膜する。
また、反射側には、出射側と同様の成膜条件で、SiO2を2500Å成膜し、その上に(SiO2/ZrO2)を(670Å/440Å)で6周期成膜してもよい。
次に、レーザ素子に電圧を印加し、動作電圧、動作電流等を調整しながら形成されたAlNからなる保護膜のいわゆる光導波路領域に局所的にレーザ光を露光する。これにより、光導波路領域がレーザ光により発熱し、その上に形成された保護膜が薄膜化される。
得られた半導体レーザ素子について、Tc=80℃、Po=320mW、発振波長406nmで連続発振した後の光出力を測定した。
また、比較のために、薄膜の領域が形成されたAlNからなる保護膜(100Å)に代えて、薄膜の領域が形成されていないAlNからなる保護膜を形成する以外は、実質的に上述した半導体レーザ素子と同様の製造方法でレーザ素子を形成し、同様の条件で、連続発振後の光出力を測定した。それらの結果を図4に示す。
図4においては、実線で示したデータが本発明の薄膜の領域を有するレーザ素子のI−L特性を示し、点線で示したデータが比較例の薄膜の領域を有さないレーザ素子のI−L特性を示すものである。
図4によれば、薄膜の領域を有する本発明の保護膜を備えるレーザ素子において、CODレベルが、薄膜の領域を有さないAlNからなる保護膜を備えるレーザ素子に対して、著しく高いことが分かった。
さらに、別の比較のために、AlNからなる保護膜及びSiO2からなる第2保護膜に代えて、共振器面に薄膜の領域が形成されていないAl23膜(膜厚:1500Å)を、ECRスパッタ法により、このAl23膜において薄膜の領域を有さない膜として形成する以外は、実質的に上述した半導体レーザ素子と同様の製造方法でレーザ素子を形成し、同様の条件で、連続発振後の光出力を測定した。
その結果、上述したAlNからなる保護膜を備えるレーザ素子よりもCODレベルの低下がさらに大きく、薄膜の領域を有する本発明の保護膜を備えるレーザ素子は、このような薄膜の領域を有さないAl23からなる保護膜を備えるレーザ素子に対しても、CODレベルが著しく向上していることが分かった。
このように、共振器面に対して、薄膜の領域を有する保護膜を形成することにより、共振器面を構成する窒化物半導体層の発光部分に対して、応力を生じさせることなく、窒化物半導体にクラックが生じず、共振器面との密着性が良好で、剥がれを防止し、ひいては、CODレベルを向上させることができる。
また、得られた窒化物半導体レーザ素子の保護膜を検証するために、n−GaN基板(M軸配向:M面)上に、上記と同様の材料及び実質的に同様の成膜方法で、具体的には、前処理したGaN基板上に、ECRスパッタ装置を用いて、Arの流量が30sccm、N2の流量が10sccm、マイクロ波電力500W、RF電力250Wの条件で、AlNからなる保護膜を100Å成膜し、この膜の軸配向性を、XRD装置(使用X線:CuKα線(λ=0.154nm)、モノクロメータ:Ge(220)、測定方法:ωスキャン、ステップ幅:0.01°、スキャンスピード:0.4秒/ステップ)を用いて測定した。このとき、16〜17°付近が、M軸配向性を示すAlNに由来するピークに対応し、18°付近がC軸配向性を有するAlNに由来するピークに対応する。その測定結果を図5に示す。
図5では、強度の高いM軸配向性を示すAlNに由来するピークが現れており、18°付近のC軸配向性を有するAlNに由来するピークはほとんど見られなかった。このことから、本発明の保護膜は、M軸配向性を有することが分かる。
実施例2
この実施例では、AlNからなる保護膜にレーザ光を露光するのに代えて、AlNからなる保護膜を形成した後、公知の方法、例えば、レジストを共振器面上のAlN膜上全面に塗布し、90℃にて30分間大気中でプリベークし、いわゆる光導波路領域にのみ開口するマスクを用いて露光し、現像及びポストベークを行うことにより、レジストの光導波路領域に開口を形成し、ドライエッチングを利用して、光導波路領域のAlN膜を薄膜化し、レジストを除去した後、薄膜の領域を有する保護膜上にSiO2膜を2500Å成膜する以外は、実施例1と同様にレーザ素子を作製する。
得られたレーザ素子は、実施例1と同様の効果が得られる。
実施例3
実施例3では、第2保護膜26をAl23(膜厚1100Å)で形成する以外、実施例1と同様にレーザ素子を形成する。
実施例1と同様の条件でAlN保護膜を形成し、続いて、例えば、出射側の端面に、Alターゲットを用いて、酸素の流量が5sccm、マイクロ波電力500W、RF電力500Wの条件でAl23からなる第2保護膜を1100Å成膜する。
得られたレーザ素子においては、実施例1と同様の効果が得られる。
実施例4
実施例4では、図6(c)で示すような窒化物半導体レーザ素子を形成する。
具体的には、保護膜25(第1膜)は、AlNからなり、膜厚100Å程度である。第2膜25’は、GaNからなり、膜厚100Å程度である。第2保護膜は、Al23からなり、膜厚1100Å程度である。また、保護膜25に形成された薄膜の領域の膜厚が70Å程度、最大膜厚が100Å程度、すなわち薄膜の領域において30Å程度の窪みを有する。また、薄膜の領域の幅が2.0μm程度、高さが500Å程度で形成される。さらに、第2膜25’にも、同様の大きさの薄膜の領域を有する。それ以外は、実施例1と同様にレーザ素子を形成する。
実施例1と同様の条件で、AlN保護膜を形成し、続いて、Arの流量が30sccm、N2の流量が10sccm、マイクロ波電力500W、RF電力500W、成膜速度100Å/minの条件で、GaNからなる第2膜25’(100Å)を形成する。
次に、第2膜の上に、例えば、出射側の端面にAlターゲットを用いて、酸素の流量が5sccm、マイクロ波電力500W、RF電力500Wの条件でAl23からなる第2保護膜を1100Å成膜する。
得られたレーザ素子においては、実施例1と同様の効果が得られる。
本発明は、レーザダイオード素子(LD)のみならず、発光ダイオード素子(LED)、スーパーフォトルミネセンスダイオード等の発光素子、太陽電池、光センサ等の受光素子、あるいはトランジスタ、パワーデバイス等の電子デバイスに用いられるような、保護膜と半導体層との密着性を確保する必要がある窒化物半導体素子に広く適用することができる。特に、光ディスク用途、光通信システム、印刷機、露光用途、測定、バイオ関連の励起用光源等における窒化物半導体レーザ素子に利用することができる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子の構造を説明するための要部の概略断面図である。 本発明の窒化物半導体レーザ素子の保護膜を説明するための要部の活性層での断面図(a)、正面図(b)及び縦断面図(c)である。 本発明の別の窒化物半導体レーザ素子の保護膜を説明するための要部の概略断面図である。 本発明の窒化物半導体レーザ素子のCODレベルを示すグラフである。 本発明の窒化物半導体レーザ素子の保護膜の配向性を検証するための配向強度を示すグラフである。 本発明の窒化物半導体レーザ素子の保護膜を説明するための要部の概略縦断面図である。
符号の説明
10 基板
11 第1窒化物半導体層
12 活性層
13 第2窒化物半導体層
14 リッジ
15 埋込膜
16 p電極
17 第3保護膜
18 p側パッド電極
19 n電極
25 保護膜(第1膜)
25’第2膜
25a 薄膜の領域
26 第2保護膜

Claims (12)

  1. 第1窒化物半導体層、活性層、第2窒化物半導体層を含む窒化物半導体層と、該窒化物半導体層の共振器面に接触する保護膜とを有する窒化物半導体レーザ素子であって、
    少なくとも共振器面の活性層に接触する保護膜が、前記保護膜の最大膜厚よりも薄い領域を有する窒化物半導体レーザ素子。
  2. 前記保護膜の最大膜厚よりも薄い領域は、共振器面の光導波路領域である請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  3. 前記第2窒化物半導体層の表面にリッジが形成されており、前記光導波路領域に接触する保護膜のうち、リッジの下方及びその近傍領域において、前記保護膜の最大膜厚よりも薄い領域を有する請求項2に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  4. 前記保護膜は、六方晶系の結晶構造を有する材料で形成されてなる請求項1〜3のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  5. 前記保護膜は、窒化物膜で形成されてなる請求項1〜4のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  6. 前記保護膜の最大膜厚は、50Å〜1000Åの膜厚である請求項1〜5のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  7. 前記共振器面の光導波路領域以外の領域に接触する保護膜は、共振器面と同軸配向の結晶構造を有する請求項1〜6のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  8. 前記共振器面が、M面(1−100)、A面(11−20)、C面(0001)又はR面(1−102)からなる群から選ばれる面である請求項1〜7のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  9. 前記共振器面がM面(1−100)であり、かつ、共振器面の光導波路領域以外の領域に接触する保護膜は、共振器面と同軸配向であるM軸配向の結晶構造を有している請求項1〜8のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  10. 前記共振器面に接触する保護膜上に、第2保護膜がさらに積層されてなる請求項1〜9のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  11. 前記保護膜の最大膜厚よりも薄い領域の保護膜の膜厚が、最大膜厚に対して5%以上薄い請求項1〜10のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ。
  12. 前記保護膜の最大膜厚よりも薄い領域は、共振器面において横長の楕円形状である請求項1〜11のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
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