JP2008189955A - プラズマ窒化処理システム - Google Patents

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Abstract

【課題】被処理体を効率的に窒化処理できるプラズマ窒化処理システムを提供する。
【解決手段】被処理体2を加熱処理する加熱室S1と、加熱室S1において加熱処理された被処理体2をプラズマを発生させることにより窒化処理する窒化室S2と、窒化室S2において窒化処理された被処理体2を冷却処理する冷却室S3とを、横方向において一列に並べて設けた。また、被処理体2を加熱室S1、窒化室S2、冷却室S3の順に搬送する被処理体搬送機構6を備えた。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば鋼材等の被処理体を窒化処理するプラズマ窒化処理システムに関する。
例えばクランクシャフト等の鋼材品の製造においては、鋼材の耐摩耗性や耐食性等を向上させるため、鋼材の表面に窒化鉄層を形成する窒化処理が行われている。かような窒化処理方法の一例として、プラズマ窒化(イオン窒化)がある(特許文献1、2、3参照)。この方法は、鋼材品である被処理体を装入した処理室に、窒素ガス(N)を含有した処理ガスを供給し、鋼材品である被処理体を陰極とし、処理室を構成する炉体等を陽極として、両極間にグロー放電を発生させ、これによりイオン化した処理ガス(窒素イオン)を被処理体に対して衝突させ、被処理体の表面に浸入させるものである。
上記のような窒化を行う装置には、処理室を減圧する減圧機構(真空ポンプ)、処理室に処理ガスを供給するガス供給機構、処理室内の被処理体に電圧を印加するための電極体等が備えられる(特許文献2、3参照)。かかる装置においては、処理室内に被処理体を搬入し、処理室内を真空引きした後、処理ガスを供給し、処理室内を所定の圧力に調整する。その後、グロー放電による加熱処理を行う。即ち、イオン化した処理ガスを被処理体に衝突させることで、被処理体を加熱させる。また、グロー放電による加熱を行いながら、ヒータ(発熱体)によって放射熱による加熱を行うこともある。こうして被処理体を加熱処理し、窒化が進行する所定温度(約500℃〜600℃程度)に昇温させた後、さらにグロー放電を行うことで、窒化処理を施すようになっている。
特開平7−3340号公報 特開2004−238705号公報 特開2005−2444号公報
しかしながら、従来のプラズマ窒化装置においては、被処理体の加熱処理と窒化処理を効率的に行うことが難しい問題があった。例えば加熱処理においては、処理室内の処理ガスが希薄になっているので、被処理体に対して熱が伝達しにくく、加熱に要する時間を短縮することが難しかった。また、処理室内の処理温度、処理圧力、グロー放電の電圧、処理ガスの供給流量等の調節が複雑であり、自動制御化することが難しかった。そのため、作業員(オペレータ)が監視、手動操作等を行う必要があり、作業員の負担が大きく、非効率的であった。また、手動操作では誤操作が発生しやすいおそれがあり、プラズマ窒化の信頼性向上を図ることが難しかった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、被処理体を効率的に処理することが可能なプラズマ窒化処理システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明によれば、被処理体を窒化処理するプラズマ窒化処理システムであって、被処理体を加熱処理する加熱室と、前記加熱室において加熱処理された被処理体をプラズマを発生させることにより窒化処理する窒化室と、前記窒化室において窒化処理された被処理体を冷却処理する冷却室と、前記被処理体を前記加熱室、前記窒化室、前記冷却室の順に搬送する被処理体搬送機構とを備えることを特徴とする、プラズマ窒化処理システムが提供される。
このプラズマ窒化処理システムにあっては、前記加熱室内の被処理体を加熱する加熱室ヒータを備えても良い。また、前記窒化室内を減圧する窒化室減圧機構と、前記窒化室内に窒素ガスを供給する窒化室ガス供給路と、前記窒化室内の被処理体に対して電圧を印加する電極体とを備えても良い。
さらに、前記電極体を前記窒化室内において昇降させる昇降機と、前記電極体を前記昇降機から絶縁させる絶縁体とを設け、前記電極体によって被処理体を支持することにより、被処理体を前記電極体以外の部分から絶縁させることが可能な構成としても良い。
前記窒化室内の被処理体の周囲には、熱遮蔽体を備えても良い。前記熱遮蔽体に開口を設け、前記開口を開閉させる蓋体を設けても良い。
前記熱遮蔽体は、前記窒化室内の被処理体の側方及び上方を囲む位置に設けても良い。前記開口は、前記窒化室内の被処理体の上方に設けても良い。
前記熱遮蔽体の内側には、被処理体を加熱する窒化室ヒータを備えても良い。さらに、前記熱遮蔽体の入口側を開閉する入口側熱遮蔽扉と、前記熱遮蔽体の出口側を開閉する出口側熱遮蔽扉を備えても良い。
前記加熱室、前記窒化室、前記冷却室は、横方向において一列に並べて設けても良い。
本発明によれば、加熱室、窒化室、冷却室を個別に設けることにより、被処理体を効率的に処理することができる。処理温度、処理圧力等の処理条件を調節し易く、自動制御化を図りやすくなる。また、加熱処理、窒化処理、冷却処理を並行して行い、複数の被処理体を連続的に処理することができる。従って、複数の被処理体を効率的に処理することができる。
以下、本発明にかかる実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1及び図2に示すように、プラズマ窒化処理システム1は、3つの処理室、即ち、被処理体2を加熱処理(予熱処理)する加熱室S1、加熱室S1において加熱処理された被処理体2をプラズマを発生させることにより窒化処理する窒化室S2、窒化室S2において窒化処理された被処理体2を冷却処理する冷却室S3を備えている。加熱室S1、窒化室S2、冷却室S3は、加熱炉3、窒化炉4、冷却部5にそれぞれ設けられており、横方向(略水平方向、搬送方向D)において一列に、入口側からこの順に並べて設けられている。また、プラズマ窒化処理システム1には、被処理体2を所定の搬送方向Dに移動させ、加熱室S1、窒化室S2、冷却室S3の順に搬送する被処理体搬送機構6が備えられている(図2参照)。さらに、加熱炉3の入口側には、被処理体2を加熱室S1に搬入する搬入機11が設けられている。冷却部5の出口側には、冷却室S3から搬出された被処理体2を受け取る搬出機12が設けられている。また、加熱炉3と窒化炉4の間には、シャッター室15が設けられている。窒化炉4と冷却部5の間には、シャッター室16がそれぞれ設けられている。加熱炉3、窒化炉4、冷却部5の外部には、プラズマ窒化処理システム1の各部の動作を制御する制御部17、プラズマ窒化処理システム1の各部に電圧を供給する電源ユニット18が設けられている(図1参照)。
本実施形態において、被処理体2は、例えばクランクシャフトあるいはカムシャフト等の複数の金属製品であり、金属等の導電性を有する支持部材2a(トレー等)によって保持された状態で、支持部材2aと一体的に搬送されるようになっている。被処理体2の材質は、クランクシャフトの場合は例えば炭素鋼あるいは合金鋼等の鋼材であり、カムシャフトの場合は例えば鋳鉄等である。
図3及び図4に示すように、加熱炉3は、例えば長さ方向を搬送方向Dに向け高さ方向を略鉛直方向に向けた略立方体状をなす炉体21を備えており、この炉体21の内部空間が加熱室S1となっている。炉体21の入口側には、被処理体2の搬入口22と、搬入口22を開閉するシャッター23が設けられている。炉体21の出口側には、被処理体2の搬出口25と、搬出口25を開閉するシャッター26が設けられている。なお、シャッター26は、シャッター室15内において移動するようになっている(図2参照)。
加熱室S1には、被処理体2を加熱室S1において搬送するチェーンコンベア31、加熱室S1内の被処理体2を放射熱によって加熱するヒータ32(加熱室ヒータ)が設けられている。さらに、ヒータ32の発熱が拡散して炉体21等に奪われることを抑制する熱遮蔽体33(加熱室熱遮蔽体)、加熱室S1内の雰囲気を攪拌する送風機構34(ファン)が設けられている。炉体21には、炉体21を冷却する冷却水を通過させる冷却水路35が内蔵されている。
ヒータ32は、熱遮蔽体33の内面に沿って、被処理体2の側方(被処理体2の幅方向(搬送方向Dに対して直交する方向)において被処理体2を挟んで互いに対向する位置)にそれぞれ配置されるように設けられており、被処理体2を両側全体から加熱するようになっている。なお、ヒータ32としては、例えば電気ヒータ等を用いても良い。また、図示の例では、ヒータ32は被処理体2の両側にそれぞれ複数ずつ設けられ、被処理体2の周囲を複数のゾーンに分割して温調できるようになっている。即ち、各ヒータ32の発熱量をそれぞれ調節することで、熱遮蔽体33の内側の温度分布(加熱処理時の処理温度分布)を制御できる構成になっている。
熱遮蔽体33は、加熱室S1内の被処理体2の周囲に、即ち、被処理体2及びチェーンコンベア31の下方、側方及び上方を囲むように設けられている。なお、熱遮蔽体33は、断熱性の高い材質(断熱材)によって形成しても良い。送風機構34は、加熱室S1の天井部に設けられ、被処理体2の上方の雰囲気を攪拌するように配置されている。
また、加熱室S1には、加熱室S1内を減圧(真空引き)する加熱室減圧路41が接続されている(図3参照)。加熱室減圧路41は、加熱室S1の外部において、例えば真空ポンプ等を備えた減圧機構42(加熱室減圧機構)に接続されている。さらに、加熱室S1内に加熱用ガス又はパージ用ガスとして例えば窒素ガス(N)を供給する加熱室ガス供給路43が設けられている。加熱室ガス供給路43は、加熱室S1の外部において、加熱用ガス供給源44に接続されている。
窒化炉4は、いわゆる横型炉の構造になっており、図5及び図6に示すように、例えば長さ方向(軸方向)を搬送方向Dに向けた略円筒状をなす炉体51を備え、この炉体51の内部空間が窒化室S2となっている。炉体51は、金属(導体)によって構成されている。炉体51の入口側には、被処理体2の搬入口52と、搬入口52を開閉するシャッター53が設けられている。シャッター53は、シャッター室15内において移動するようになっている(図2参照)。炉体51の出口側には、被処理体2の搬出口55と、搬出口55を開閉するシャッター56が設けられている。シャッター56は、シャッター室16内において移動するようになっている(図2参照)。
窒化室S2には、被処理体2を窒化室S2において搬送するチェーンコンベア61、被処理体2を放射熱によって加熱するヒータ62(窒化室ヒータ)が設けられている。さらに、ヒータ62の発熱が拡散して炉体51等に奪われることを抑制する熱遮蔽体63(窒化室熱遮蔽体)、熱遮蔽体63の入口側の開口部分を開閉する入口側熱遮蔽扉64、熱遮蔽体63の出口側の開口部分を開閉する出口側熱遮蔽扉65が設けられている。また、被処理体2を窒化室S2内でチェーンコンベア61に対して昇降移動させる被処理体昇降機構66が備えられている。被処理体昇降機構66には、電極体67が設けられている。炉体51には、炉体51を冷却する冷却水を通過させる冷却水路68が内蔵されている。
図示の例では、チェーンコンベア61は、駆動側ローラ71、従動側ローラ72、及び、被処理体2の下部両側をそれぞれ保持する2本の無端ベルト状のチェーンベルト73、74を備えている。駆動側ローラ71は窒化室S2の入口側に、従動側ローラ72は窒化室S2の出口側に備えられている。チェーンベルト73、74は、駆動側ローラ71と従動側ローラ72に巻回されており、駆動側ローラ71と従動側ローラ72の上方においては、搬送方向Dに沿って架け渡された状態で、互いに同じ高さに略平行に保持されている。即ち、駆動側ローラ71の駆動により、従動側ローラ72を回転させながら、上面側においては搬送方向Dに沿って周動するように構成されている。なお、チェーンベルト73、74は、一般的には金属製のベルト等、導体によって構成されている。
ヒータ62は、熱遮蔽体63(後述する側壁部63a、63b)の内側に設けられている。図示の例では、熱遮蔽体63の内面に沿って、被処理体2の側方にそれぞれ配置されるように設けられており、被処理体2を両側全体から加熱するようになっている。なお、ヒータ62としては、例えば電気ヒータ等を用いても良く、その場合、ヒータ62には、電源ユニット18から交流電源が供給される。また、図示の例では、ヒータ62は被処理体2の両側にそれぞれ複数ずつ設けられ、被処理体2の周囲を複数のゾーンに分割して温調できるようになっている。即ち、各ヒータ62の発熱量をそれぞれ調節することで、熱遮蔽体63の内側の温度分布(窒化処理時の処理温度分布)を制御できる構成になっている。
熱遮蔽体63は、図6及び図7に示すように、搬送方向Dからみて略コの字状をなし、被処理体2及びチェーンベルト73、74の側方(被処理体2の幅方向において両側)にそれぞれ備えられた側壁部63a、63bと、被処理体2及びチェーンベルト73、74の上方に備えられた上板部63cとを備えている。即ち、窒化室S2内の被処理体2の周囲において、被処理体2の側方及び上方を囲むように設けられている。なお、熱遮蔽体63は、断熱性の高い材質(断熱材)によって形成しても良い。
側壁部63a、63bは、略鉛直に向けられた平板状をなしている。図6に示す例では、側壁部63a、63bは、チェーンベルト73、74の上面よりも上方に設けられている。
上板部63cは、略水平に向けられた平板状をなしている。上板部63cの中央部(即ち、窒化室S2内の被処理体2の上方)には、開口81が設けられている。図示の例では、開口81は、略方形状に形成されており、また、上方からみた平面視において、チェーンコンベア61によって保持された被処理体2(窒化処理を行う際の所定位置に配置された被処理体2)の上部中央に重なるような位置に設けられている。
開口81の周縁部には、開口壁体82が備えられている。開口壁体82は、開口81の周縁部から外側(上板部63cの上方)に向かって立設され、また、開口81の周縁部全体に沿って、方形の枠状に設けられている。
開口81と開口壁体82の上方には、開口81(開口壁体82の上部開口)を開閉する蓋体83が設けられている。図示の例では、蓋体83は、略方形の平板状をなし、略水平に向けられている。また、炉体51の天井部に取り付けられている蓋体昇降機構84の下端部によって支持されており、蓋体昇降機構84の作動により、略鉛直方向に沿って昇降するようになっている。即ち、開口壁体82に近接して開口81を閉塞する閉塞位置と、閉塞位置の上方に移動して開口81を開口させる開口位置との間で、昇降移動可能になっている。これにより、開口81の開度(開口壁体82と蓋体83との間の距離)を調節できるように構成されている。なお、蓋体83は、断熱性の高い材質によって構成してもよい。蓋体昇降機構84としては、例えばシリンダ機構を用いても良い。
入口側熱遮蔽扉64(図5参照)は、炉体51の天井部に取り付けられている図示しない入口側扉昇降機構(例えばシリンダ機構等)によって支持されており、入口側扉昇降機構の作動により、略鉛直方向に沿って昇降するようになっている。即ち、側壁部63a、63b、上板部63cの入口側の縁部に近接して熱遮蔽体63の入口側を閉塞する閉塞位置と、閉塞位置の上方に移動して熱遮蔽体63の入口側を開口させる開口位置との間で、昇降移動可能になっている。なお、閉塞位置に移動した状態では、入口側熱遮蔽扉64の下縁部は、チェーンベルト73、74の上面よりも上方に位置するようになっている。
出口側熱遮蔽扉65は、炉体51の天井部に取り付けられている図示しない出口側扉昇降機構(例えばシリンダ機構等)によって支持されており、出口側扉昇降機構の作動により、略鉛直方向に沿って昇降するようになっている。即ち、側壁部63a、63b、上板部63cの出口側の縁部に近接して熱遮蔽体63の出口側を閉塞する閉塞位置と、閉塞位置の上方に移動して熱遮蔽体63の出口側を開口させる開口位置との間で、昇降移動可能になっている。なお、閉塞位置に移動した状態では、出口側熱遮蔽扉65の下縁部は、チェーンベルト73、74の上面よりも上方に位置するようになっている。
図8及び図9に示すように、被処理体昇降機構66は、被処理体2に対して電圧を印加するための電極体67と、電極体67を窒化室S2内において昇降させる昇降機112と、電極体67を昇降機112から絶縁させる絶縁体113とを備えている。
電極体67は、窒化室S2内においてチェーンベルト73、74の間に設けられている(図8参照)。また、搬送方向Dにおいて2つ並べて設けられている。さらに、平面視において入口側熱遮蔽扉64と出口側熱遮蔽扉65の間に配置されている(図5参照)。各電極体67は導体からなり、図9に示すように、側面視においては薄板状、平面視においては例えば略方形の枠状に形成されており、内側に方形の開口部が形成されている。即ち、この電極体67に形成された開口部を通じて、被処理体2の下部にも処理ガスが円滑に供給されるように構成されている。
各電極体67には、窒化室S2の外部に設けられているプラズマ用電源115(直流電源)の陰極が、配線等を介して接続されている。一方、プラズマ用電源115の陽極は、例えば炉体51に対して配線等を介して接続されている。なお、直流電源115の陰極(電極体67)と陽極(炉体51等)は、絶縁体113によって絶縁されている。即ち、絶縁体113を設けることで、直流電源115の陰極と陽極が短絡して電圧が低下すること、アーク放電等の異常放電が生じて処理効率が低下すること等を防止するようになっている。また、電極体67によって被処理体2を支持し、昇降機112によって絶縁体113及び電極体67を上昇させると、被処理体2をチェーンコンベア61から持ち上げ、電極体67以外の部分から絶縁した状態にすることが可能な構成になっている。
昇降機112は、炉体51の下方に設けられた昇降駆動部121、炉体51の底部を貫通するように備えられた昇降支持棒122、昇降支持棒122の上端部によって支持された昇降板123とを備えている。昇降駆動部121には、例えばシザーリフト等を用いても良い。昇降支持棒122は、図示の例では窒化室S2の入口側と出口側にそれぞれ2本ずつ、即ち、合計で4本設けられており、それぞれ長さ方向を略鉛直方向(昇降方向)に向けて備えられている。昇降板123は、電極体67の下方において、チェーンベルト73、74の間に沿って略水平に設けられている。
絶縁体113は、耐熱性、電気絶縁性等が高い材質、例えばセラミックス等の絶縁物によって形成されており、図示の例では、昇降板123の上面に8個取り付けられている。即ち、各チェーンベルト73、74側の縁部に4個ずつ、2列に並べて設けられている。これらの絶縁体113の上端部によって、前述した各電極体67は、昇降板123から上方に離隔した位置に支持されている。2つの電極体67のうち、一方は入口側の4個の絶縁体113によって支持され、他方は出口側の4個の絶縁体113によって支持されている。
また、窒化室S2には、図5に示すように、窒化室S2内を減圧(真空引き)する窒化室減圧路131が接続されている。窒化室減圧路131は、窒化室S2の外部において、例えば真空ポンプ等を備えた減圧機構132(窒化室減圧機構)に接続されている。さらに、窒化室S2内に例えば窒素ガス(N)、水素ガス(H)、プロパンガス(C)等の炭化水素系のガス、アンモニアガス(NH)等を処理ガス又はパージ用ガスとして供給する窒化室ガス供給路133が設けられている。窒化室ガス供給路133は、窒化室S2の外部において、窒化室ガス供給源ユニット134に接続されている。
窒化室ガス供給源ユニット134には、窒素ガス供給源141から窒化室ガス供給路133に窒素ガスを導入する窒素ガス導入路141a、窒素ガス導入路141aを開閉する開閉弁141b、窒素ガスの供給流量を調節する流量調節部141c(マスフローコントローラ)、水素ガス供給源142から窒化室ガス供給路133に水素ガスを導入する水素ガス導入路142a、水素ガス導入路142aを開閉する開閉弁142b、水素ガスの供給流量を調節する流量調節部142c、プロパンガス供給源143から窒化室ガス供給路133にプロパンガスを導入するプロパンガス導入路143a、プロパンガス導入路143aを開閉する開閉弁143b、プロパンガスの供給流量を調節する流量調節部143c、アンモニアガス供給源144から窒化室ガス供給路133にアンモニアガスを導入するアンモニアガス導入路144a、アンモニアガス導入路144aを開閉する開閉弁144b、アンモニアガスの供給流量を調節する流量調節部144cが設けられている。
冷却部5は、図10及び図11に示すように、例えば長さ方向を搬送方向Dに向け高さ方向を略鉛直方向に向けた略立方体状をなす筐体151を備えており、この筐体151の内部空間が冷却室S3となっている。筐体151の入口側には、被処理体2の搬入口152と、搬入口152を開閉するシャッター153が設けられている。シャッター153は、シャッター室16内において移動するようになっている(図2参照)。筐体151の出口側には、被処理体2の搬出口155と、搬出口155を開閉するシャッター156が設けられている。
冷却室S3には、被処理体2を冷却室S3において搬送するチェーンコンベア161、熱交換部材162(フィン)が設けられている。さらに、冷却室S3内の雰囲気を攪拌する送風機構164(ファン)が設けられている。筐体151には、筐体151を冷却する冷却水を通過させる冷却水路165が内蔵されている。
熱交換部材162は、筐体151の内側面に複数枚取り付けられている。各熱交換部材162は、例えば略鉛直方向に沿って細長く形成された平板状をなし、筐体151から冷却室S3の内側に向かって突出するように、また、搬送方向Dにおいて複数枚並べて設けられている。かかる熱交換部材162は、冷却水路165を通過する冷却水と熱交換し、冷却室S3内の冷却を促進する機能を有する。送風機構164は、冷却室S3の天井部に設けられ、被処理体2の上方の雰囲気を攪拌するように配置されている。
また、冷却室S3には、冷却室S3内を減圧(真空引き)する冷却室減圧路171が接続されている。冷却室減圧路171は、冷却室S3の外部において、例えば真空ポンプ等を備えた減圧機構172(冷却室減圧機構)に接続されている。さらに、冷却室S3内に冷却用ガス又はパージ用ガスとして例えば窒素ガス(N)を供給する冷却室ガス供給路173が設けられている。冷却室ガス供給路173は、冷却室S3の外部において、冷却用ガス供給源174に接続されている。
被処理体搬送機構6は、図2に示すように、前述した加熱室S1のチェーンコンベア31、窒化室S2のチェーンコンベア61、冷却室S3のチェーンコンベア161、シャッター室15に設けられているローラ181、シャッター室16に設けられているローラ182を備えている。
即ち、シャッター室15には、回転可能に設けられた複数のローラ181が備えられており、これら複数のローラ181上において被処理体2を移動させることによって、加熱室S1のチェーンコンベア31から窒化室S2のチェーンコンベア61に対して被処理体2を円滑に受け渡せるようになっている。シャッター室16には、回転可能に設けられた複数のローラ182が備えられており、これら複数のローラ182上において被処理体2を移動させることによって、窒化室S2のチェーンコンベア61から冷却室S3のチェーンコンベア161に対して被処理体2を円滑に受け渡せるようになっている。
なお、加熱炉3、窒化炉4、冷却部5を横型炉(横方向に搬入出する構成)とし、加熱室S1、窒化室S2、冷却室S3を横方向において一列に並べて設ける構成にすると、被処理体2を横方向に直線的に搬送するだけで、加熱室S1、窒化室S2、冷却室S3に対して被処理体2の搬入出を効率的に行うことができる。従って、被処理体搬送機構6の構成を簡単にすることができ、また、各加熱室S1、窒化室S2、冷却室S3に対する被処理体2の搬入出に要する移動時間を短縮できる。
上述したプラズマ窒化処理システム1の各部の機能要素は、制御部17(図1参照)の命令によって制御される。制御部17は、例えば汎用コンピュータ等を備え、所定の処理レシピに従って被処理体2を自動的に処理する制御を行うように構成されている。即ち、制御部17の制御により、後述する加熱処理、窒化処理、冷却処理を自動的に行わせることができる。なお、図示はしないが、プラズマ窒化処理システム1には、加熱室S1の温度、圧力、窒化室S2の温度、圧力、冷却室S3内の温度、圧力等をそれぞれ検出する温度計、圧力計等の検出センサが設けられており、その検出値が制御部17に送信されるように構成されている。即ち、制御部17は、各検出センサの検出値に基づいて、プラズマ窒化処理システム1の各部を制御するようになっている。
次に、以上のように構成されたプラズマ窒化処理システム1を用いたプラズマ窒化(イオン窒化)処理方法について説明する。なお、図12は、プラズマ窒化処理における被処理体2の温度と処理圧力の変化を示したものである。
先ず、加熱室S1に被処理体2が搬入される。即ち、搬入機11の上面に被処理体2が載置され、シャッター23の移動によって加熱室S1の搬入口22が開かれ、被処理体2が搬送方向Dに沿って移動させられ、搬入機11から搬入口22を通じて加熱室S1に搬送され、チェーンコンベア31上に受け渡される。加熱室S1に被処理体2が搬入されると、シャッター23によって搬入口22が閉じられる。なお、加熱室S1の搬出口25は、シャッター26によって閉じられており、加熱室S1内は、シャッター23、26によって密閉された状態になる。被処理体2は、チェーンコンベア31の駆動により、加熱室S1内(熱遮蔽体33の内側)の所定位置に搬送され、静止させられる。
搬入口22が閉じられて加熱室S1内が密閉されると、減圧機構42の作動により、加熱室減圧路41を通じて、加熱室S1内の雰囲気が吸引され、加熱室S1内が減圧される(図12参照)。これにより、処理圧力(加熱室S1の圧力)は略真空状態(例えば約0.1Torr程度(約13.3Pa程度))にされる。その後、加熱室ガス供給路43を通じて加熱室S1内に窒素ガスが供給される。これにより、加熱室S1内から酸化性雰囲気(O)が排出され、加熱室S1内が窒素ガスによってパージされる。処理圧力は、例えば約500Torr程度(約66.7kPa程度)にされる。このように、処理圧力を略真空状態よりも高くすることで、被処理体2に対してヒータ32からの熱が処理雰囲気を介して伝達しやすくなり、被処理体2の加熱を効率的に行えるようになる。
こうして窒素ガスによってパージした加熱室S1内において、被処理体2の加熱処理が行われる。即ち、ヒータ32の発熱によって、チェーンコンベア31上の被処理体2が加熱される。また、冷却水路35には冷却水が適宜供給され、炉体21の冷却が行われる。即ち、加熱室S1内の温度は、ヒータ32の発熱量と冷却水路35の冷却水の流量を調節することによって、所定の処理温度(例えば約500℃程度)に制御される。また、加熱室S1内の雰囲気は、送風機構34によって攪拌される。これにより、加熱室S1内の温度分布が調節され、被処理体2を均一かつ効率的に昇温させやすくなる。以上のような加熱処理によって、被処理体2は、例えば約500℃程度まで加熱される。
一方、窒化室S2においては、窒化室S2の搬入口52、搬出口55がそれぞれシャッター53、56によって閉じられ、窒化室S2が密閉状態にされた状態で、減圧機構132の作動により、窒化室減圧路131内の雰囲気が吸引され、窒化室S2内が減圧された状態(例えば約1Torr程度(約133.3Pa程度))になっている。また、窒化室ガス供給路133を通じて窒化室S2内に窒素ガスが供給された状態になっている。即ち、窒化室S2内は窒素ガスによってパージされている。さらに、窒化室S2内の温度は、ヒータ62の発熱によって所定温度(例えば約500℃〜550℃程度)に昇温されている。また、冷却水路68には、冷却水が適宜供給される。即ち、窒化室S2内の温度は、ヒータ62の発熱量と冷却水路68の冷却水の流量を調節することによって、所定の温度に制御されている。
加熱室S1における加熱処理が終了すると、再び減圧機構42が作動させられ、加熱室S1内が窒化室S2の圧力と同程度(例えば約1Torr程度)に減圧される。その後、搬出口25、搬入口52がそれぞれ開かれ、加熱室S1と窒化室S2が、シャッター室15を通じて互いに連通させられる。窒化室S2では、入口側熱遮蔽扉64が移動させられ、熱遮蔽体63の入口側が開かれる。なお、このとき、電極体67は、昇降駆動部121の作動により、チェーンベルト73、74の上面よりも低い位置に下降させられている。直流電源115による電圧の供給は停止されており、放電が発生しない状態になっている。
かかる状態において、チェーンコンベア31、61の駆動により、被処理体2が搬送方向Dに沿って移動させられ、加熱室S1から搬出口25、シャッター室15、搬入口52を通じて、窒化室S2に搬送される。即ち、被処理体2がチェーンコンベア31上からチェーンコンベア61上に受け渡される。被処理体2は、チェーンベルト73の上面とチェーンベルト74の上面に被処理体2の下部(支持部材2aの下面両縁部)をそれぞれ載せた状態で保持される。被処理体2が窒化室S2に搬入されると、窒化室S2の搬入口52が閉じられ、窒化室S2内は、再び密閉状態にされる。
なお、窒化室S2の搬入口52を開く際は、加熱室S1の搬入口22をシャッター23によって閉じ、加熱室S1と窒化室S2をプラズマ窒化処理システム1の外部雰囲気から遮断した状態にすることが好ましい。そうすれば、窒化室S2内の雰囲気がプラズマ窒化処理システム1の外部雰囲気の影響を受けること、即ち、窒化室S2内の温度、圧力等が大きく変動すること、窒化室S2に酸化性雰囲気が流入することを防止できる。従って、窒化室S2内の雰囲気を制御しやすくなり、ひいては、窒化処理を効率的に行うことができる。
被処理体2が窒化室S2に搬入され、搬入口52が閉じられて窒化室S2内が密閉されると、窒化室ガス供給路133を通じて窒化室S2内に窒素ガスを含む処理ガス(例えば窒素ガス、水素ガス、プロパンガス、アンモニアガス等の混合流体)が供給される。これにより、窒化室S2内の圧力が、所定の処理圧力(例えば約3Torr〜8Torr程度(約400Pa〜1067Pa程度)に昇圧される。
また、被処理体2は、チェーンコンベア61の駆動により、窒化室S2内(熱遮蔽体63の内側)の所定位置に搬送された後、静止させられる。熱遮蔽体63の入口側と出口側は、入口側熱遮蔽扉64、出口側熱遮蔽扉65によってそれぞれ閉じられる。チェーンコンベア61上の被処理体2は、熱遮蔽体63、入口側熱遮蔽扉64、出口側熱遮蔽扉65によって囲まれた状態になる。さらに、昇降駆動部121の駆動により、昇降支持棒122が上昇させられ、昇降板123、絶縁体113、電極体67が昇降支持棒122と一体的に上昇させられる。すると、チェーンベルト73、74上に保持されている被処理体2の下面に対して電極体67が当接し、電極体67によって被処理体2が押し上げられる。即ち、電極体67がチェーンコンベア61の上方に移動し、被処理体2は電極体67上に載せられ、チェーンコンベア61から上方に離隔した所定の高さに支持された状態になる。
このように、被処理体2と電極体67がチェーンコンベア61の上方に移動した状態では、電極体67は、絶縁体113によって昇降機112、炉体51(陽極)、チェーンベルト73、74等から電気的に絶縁された状態になる。電極体67によって支持された被処理体2は、電極体67のみに接触し、電極体67以外の部分(昇降機112、炉体51、チェーンベルト73、74等)からは電気的に絶縁された状態になる。
こうして、窒化室S2内に処理ガスが供給され、被処理体2が電極体67によって支持された状態において、直流電源115によって電圧が印加され、窒化処理が行われる。即ち、電極体67及び被処理体2が陰極となり、炉体5が陽極となって、両極間にグロー放電が起こり、プラズマが発生する。即ち、窒化室S2内の処理ガスがイオン化される。イオン化した処理ガス(窒素イオン)は、被処理体2に対して衝突し、被処理体2の表面に浸入する。これにより、被処理体2の表面に、窒化鉄層が形成される。
なお、窒化処理が行われる間も、窒化室S2内の処理温度は、ヒータ62の発熱、グロー放電による加熱(イオン化した処理ガスが被処理体2に衝突することによる加熱)、冷却水路68による冷却を制御することで、所定温度(例えば約500℃〜550℃程度)に調節される。
さらに、熱遮蔽体63の内側の温度分布は、開口81の開度を制御することで、好適に調節することが可能である。即ち、この窒化炉4のような横型の処理炉では、一般的に竪型の処理炉と比較して処理室内の温度分布が悪くなりやすい傾向があり、被処理体2の上部(特に開口81の真下付近に位置する上部中央部分)が高温になりやすいが、本実施形態のように開口81を設けると、開口81を開いた状態にすることで、開口81を通じて熱遮蔽体63内の熱が放出され、炉体51に吸収されやすくなる。従って、開口81を開くことで、被処理体2の上部中央の温度が高温になりすぎることを防止できる。これにより、窒化処理における被処理体2の温度分布の均一性を向上させ、ひいては、処理むらが発生することを防止できる。なお、被処理体2の上部の放熱量は、開口81の開度(開口壁体82と蓋体83との間の距離)を小さくするほど減少し、大きくするほど増加する。従って、開口81の開度を調節することで、熱遮蔽体63内の温度分布、被処理体2の温度分布を制御することができる。
以上のようにして、窒化室S2における窒化処理が終了すると、直流電源115による電圧の供給が停止され、グロー放電が停止される。また、昇降駆動部121の駆動により、昇降支持棒122が下降させられ、昇降板123、絶縁体113、電極体67、被処理体2が昇降支持棒122と一体的に下降させられる。すると、電極体67上に保持されていた被処理体2の下面に対してチェーンベルト73、74の上面が当接し、被処理体2が電極体67からチェーンベルト73、74に受け渡される。電極体67は、チェーンベルト73、74の上面及び被処理体2の下方に下降させられる。また、出口側熱遮蔽扉65が移動させられ、熱遮蔽体63の出口側が開かれる。さらに、搬出口55、搬入口152それぞれ開かれ、窒化室S2と冷却室S3が、シャッター室16を通じて互いに連通させられる。
かかる状態において、チェーンコンベア61、161の駆動により、被処理体2が搬送方向Dに沿って移動させられ、窒化室S2から搬出口55、シャッター室16、搬入口152を通じて、冷却室S3に搬送される。即ち、被処理体2がチェーンコンベア61上からチェーンコンベア161上に受け渡される。被処理体2が冷却室S3に搬入されると、冷却室S3の搬入口152が閉じられ、冷却室S3内が密閉状態にされる。
なお、窒化室S2の搬出口52を開く際は、冷却室S3の搬出口155をシャッター156によって閉じ、冷却室S3と窒化室S2をプラズマ窒化処理システム1の外部雰囲気から遮断した状態にすることが好ましい。そうすれば、窒化室S2内の雰囲気がプラズマ窒化処理システム1の外部雰囲気の影響を受けること、即ち、窒化室S2内の温度、圧力等が大きく変動すること、窒化室S2に酸化性雰囲気が流入することを防止できる。従って、窒化室S2内の雰囲気を制御しやすくなり、ひいては、次に窒化室S2に搬入される被処理体2の窒化処理を、効率的に行うことができる。
また、窒化室S2と冷却室S3を連通させる際は、冷却室S3内を窒素ガスによってパージしておくことが好ましい。そうすれば、冷却室S3から窒化室S2に酸化性雰囲気が流入することを防止できる。冷却室S3のパージは、減圧機構172の作動により冷却室S3を減圧し、冷却室ガス供給路173を通じて窒素ガスを供給することで行うことができる。
冷却室S3に搬入された被処理体2は、チェーンコンベア161の駆動により、冷却室S3の所定位置に搬送され、静止させられる。また、冷却室S3に冷却室ガス供給路173を通じて窒素ガスが供給され、冷却室S3内が所定の処理圧力(例えば約500Torr程度)に昇圧され、冷却処理が行われる。なお、このように冷却室S3の処理圧力を略真空状態よりも高くすると、被処理体2の熱が処理雰囲気を介して熱交換部材162、筐体151等に伝達しやすくなり、被処理体2の冷却を効率的に行えるようになる。
冷却処理においては、冷却水路165に供給される冷却水によって、冷却室S3内の雰囲気が冷却される。被処理体2から放熱される熱は、冷却室S3内の窒素ガス、熱交換部材162、筐体151等を介して冷却水に伝達し、冷却水と共に冷却部5から排熱される。また、冷却室S3内の雰囲気は、送風機構164によって攪拌される。これにより、冷却室S3内の温度分布が調節され、被処理体2を均一かつ効率的に冷却させることができる。かかる冷却処理により、被処理体2の温度は、約500℃〜550℃程度から約100℃〜150℃程度まで下げられる。
冷却処理が終了すると、搬出口155か開かれ、チェーンコンベア161の駆動により、被処理体2が搬送方向Dに沿って移動させられ、冷却室S3から搬出口155を通じて搬出機12上に受け渡される。以上のようにして、プラズマ窒化処理システム1における一連の処理工程が終了する。
なお、プラズマ窒化処理システム1では、複数の被処理体2を連続的に並行して処理できる。例えば加熱室S1において加熱処理が終了し、被処理体2を加熱室S1から窒化室S2に移動させた後は、次の未処理の被処理体2を加熱室S1に搬入し、加熱処理することができる。即ち、窒化室S2搬入された被処理体2の窒化処理を行いながら、加熱室S1においては次に搬入された被処理体2の加熱処理を並行して行うことができる。同様に、冷却室S1に搬入された被処理体2の冷却処理を行いながら、窒化室S2においては次に搬入された被処理体2の窒化処理を並行して行うことができる。こうして、加熱室S1においては加熱処理、窒化室S2においては窒化処理、冷却室S1において冷却処理をそれぞれ行いながら、複数の被処理体2を連続的に処理することができる。
また、窒化室S2では、グロー放電を生じさせる際、異常放電(アーク放電等)が発生するおそれがある。異常放電が発生すると、被処理体2に損傷(放電キズ)が生じるおそれがあるので、異常放電が観測された場合は、電圧の供給を停止させることが望ましい。
異常放電が発生した場合は、例えば図13に示すように、プラズマ用電源115から供給される電流の検出値が、正常値に対して増減するように観測される。このような場合は、プラズマ用電源115をOFF状態とし、電流の供給を停止させ、その後、所定の時間(OFF時間T1)が経過したら、プラズマ用電源115をON状態とし、電流の供給を再開させる。その際は、電流を時間に比例させて次第に増加させるようにし、電流供給再開から所定時間T2経過後に、正常値に戻すようにしても良い。これにより、異常放電が再発することを防止できる。
また、例えば図14に示すように、OFF時間T1経過後、電流の供給を再開させる際、電流を次第に増加させ、所定時間T1経過後、正常値よりも低い復旧設定値になるようにしても良い。そして、復旧設定値を所定時間T3の間維持した後、さらに電流を次第に増加させ、所定時間T4経過後、正常値に戻すようにしても良い。このように、電流を段階的に上昇させてから、正常値に戻すようにすれば、異常放電の再発をより確実に防止できる。
以上説明したように、かかるプラズマ窒化処理システム1によれば、加熱処理を行う加熱室S1、窒化処理を行う窒化室S2、冷却処理を行う冷却室S3を個別に設けたことにより、被処理体2を効率的に処理することができる。例えば加熱室S1においては、ヒータ32を用いた加熱を行うことで、グロー放電を利用して被処理体2を加熱する場合よりも、被処理体2を効率的に加熱できる。窒化室S2においては、プラズマ窒化処理システム1の外部雰囲気の影響を受けること(窒化室S2内の温度の低下、圧力の上昇等)を防止でき、窒化室S2内の処理条件を効率的に制御できる。従って、加熱処理に要する電力消費量、窒化処理に要する電力消費量等を抑制でき、また、加熱処理に要する処理時間、窒化処理に要する処理時間の短縮、さらには、加熱処理、窒化処理、冷却処理を含めたプラズマ窒化処理全体の処理時間の短縮を図ることができる。
特に、加熱処理と窒化処理を互いに異なる処理室で行う構成としたことにより、例えば加熱処理と窒化処理を一つの処理室内で行う構成(バッチ型の装置)と比較して、処理温度や処理圧力等の処理条件を迅速に調節し易くなり、制御部17による自動制御化を図りやすくなる。この場合、手動操作が不要になり、作業員の負担を軽減できる。さらに、プラズマ窒化処理の信頼性を向上させることができる。
また、かかるプラズマ窒化処理システム1は、加熱処理、窒化処理、冷却処理を各処理室において並行して行うことができる。即ち、複数の被処理体2を連続的に処理する連続処理システムとして構成することができる。従って、複数の被処理体2を効率的に処理することができ、プラズマ窒化処理の生産性を高めることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば以上の実施形態では、被処理体2として鉄系合金からなるクランクシャフト、カムシャフト等を例示したが、被処理体2とはかかるものに限定されず、本実施形態は、様々な材質に対するプラズマ窒化に適用できる。また、本実施形態は、プラズマ窒化処理以外にも、例えばプラズマ浸炭処理、プラズマ浸炭窒化処理等、プラズマを利用した様々な処理に適用することも可能である。
窒化炉4に設けるヒータ62、熱遮蔽体63、開口81等の形状や配置等も、以上の実施形態には限定されない。例えばヒータ62は、窒化室S2内の被処理体2の側方だけでなく、上方に設けても良い。
電極体67、絶縁体113、昇降支持棒122の形状、個数、配置等も、以上の実施形態には限定されない。例えば電極体67の個数は、1個あるいは3個以上であっても良い。
被処理体搬送機構6は、チェーンコンベア31、61、161を備えるとしたが、これらに代えて、例えば複数のローラを備えたローラコンベア等の搬送手段を設けても良い。ただし、窒化室S2においては、搬送手段と被処理体昇降機構66との干渉を回避する必要があるため、チェーンコンベアを使用するほうが良いと考えられる。
本発明は、金属製品等の表面処理を行うプラズマ窒化処理システムに適用できる。
本実施形態にかかるプラズマ窒化処理システムの概略平面図である。 プラズマ窒化処理システムの概略縦断面図である。 加熱炉の縦断面図である。 加熱炉の縦断面図(図3におけるI−I線による概略断面図)である。 窒化炉の縦断面図である。 窒化炉の縦断面図(図5におけるII−II線による概略断面図)である。 熱遮蔽体、開口及び蓋体の構成を説明する斜視図である。 熱遮蔽体、被処理体昇降機構の構成を拡大して示した説明図である。 被処理体昇降機構の斜視図である。 冷却部の縦断面図である。 冷却部の縦断面図(図10におけるIII−III線による概略断面図)である。 処理圧力の変化及び被処理体の温度変化を示したグラフである。 異常放電発生時の電流の変化と操作の関係を示したグラフである。 異常放電発生時の電流の変化と他の操作例を示したグラフである。
符号の説明
D 搬送方向
S1 加熱室
S2 窒化室
S3 冷却室
1 プラズマ窒化処理システム
2 被処理体
3 加熱炉
4 窒化炉
5 冷却部
6 被処理体搬送機構
32 ヒータ(加熱室ヒータ)
62 ヒータ(窒化室ヒータ)
63 熱遮蔽体
67 電極体
81 開口
83 蓋体
112 昇降機
113 絶縁体
132 減圧機構(窒化室減圧機構)
133 窒化室ガス供給路

Claims (9)

  1. 被処理体を窒化処理するプラズマ窒化処理システムであって、
    被処理体を加熱処理する加熱室と、
    前記加熱室において加熱処理された被処理体をプラズマを発生させることにより窒化処理する窒化室と、
    前記窒化室において窒化処理された被処理体を冷却処理する冷却室と、
    前記被処理体を前記加熱室、前記窒化室、前記冷却室の順に搬送する被処理体搬送機構とを備えることを特徴とする、プラズマ窒化処理システム。
  2. 前記加熱室内の被処理体を加熱する加熱室ヒータを備えることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ窒化処理システム。
  3. 前記窒化室内を減圧する窒化室減圧機構と、
    前記窒化室内に窒素ガスを供給する窒化室ガス供給路と、
    前記窒化室内の被処理体に対して電圧を印加する電極体とを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプラズマ窒化処理システム。
  4. 前記電極体を前記窒化室内において昇降させる昇降機と、前記電極体を前記昇降機から絶縁させる絶縁体とを設け、
    前記電極体によって被処理体を支持することにより、被処理体を前記電極体以外の部分から絶縁させることが可能な構成としたことを特徴とする、請求項3に記載のプラズマ窒化処理システム。
  5. 前記窒化室内の被処理体の周囲に熱遮蔽体を備え、
    前記熱遮蔽体に開口を設け、
    前記開口を開閉させる蓋体を設けたことを特徴とする、請求項3又は4に記載のプラズマ窒化処理システム。
  6. 前記熱遮蔽体は、前記窒化室内の被処理体の側方及び上方を囲む位置に設けられ、
    前記開口は、前記窒化室内の被処理体の上方に設けられていることを特徴とする、請求項5に記載のプラズマ窒化処理システム。
  7. 前記熱遮蔽体の内側に、被処理体を加熱する窒化室ヒータを備えることを特徴とする、請求項5又は6に記載のプラズマ窒化処理システム。
  8. 前記熱遮蔽体の入口側を開閉する入口側熱遮蔽扉と、前記熱遮蔽体の出口側を開閉する出口側熱遮蔽扉とを備えることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載のプラズマ窒化処理システム。
  9. 前記加熱室、前記窒化室、前記冷却室は、横方向において一列に並べて設けられていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のプラズマ窒化処理システム。
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