JP2008189341A - 電子レンジ用紙容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】
その目的は、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を含む樹脂層でも、紙への成膜加工適性がよく低コストで大量製造でき、油分を含む内容物を電子レンジ調理しても紙容器が着色したり、ユズ肌状に変形したりしない、加熱時の耐油性に優れる電子レンジ用紙容器を提供する。
【解決手段】
紙基材21の少なくとも片面にイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層23を有する積層体を用いて成形してなることを特徴とし、上記樹脂層23のバイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50〜75:50〜25であり、上記バイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂であり、上記樹脂層23が押出ラミネション法で紙基材21へ積層されてなることも特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子レンジ用紙容器に関し、さらに詳しくは、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化などのために、バイオマス樹脂を用いた電子レンジ用紙容器に関するものである。
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「バイオマス」は「生物由来」、「バイオマス樹脂」は「植物由来の樹脂」、「LDPE」は「低密度ポリエチレン」、「EMAA」は「エチレン−メタクリル酸共重合体」、「PEI」は「ポリエチレンイミン」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
(主なる用途)本発明の電子レンジ用紙容器の主なる用途としては、2450MHz程度の高周波を利用して加熱及び/又は調理する電子レンジ食品などを包装する紙容器であって、カレー、シチュー、グラタン、ピザなどの液状、粘調状、固形分を含む液状や固形食品の紙容器で、使用後は環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化なども標榜したものである。しかしながら、電子レンジで加熱及び/又は調理する紙容器であれば、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化などを必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
(背景技術)液状、粘調状、固形分を含む液状や固形食品の容器などの用いる紙容器は、防水性や浸透防止性を要し、紙容器の内面に樹脂層、通常ポリエチレン、ポリプロピレンやワックスが積層されている。耐熱性が低い樹脂層を有する紙容器であれば、電子レンジで加熱及び/又は調理した場合に、軟化した樹脂層を透して内容物が紙容器へ浸透して変形する。特に液状、粘調状、固形分を含む液状食品を電子レンジで加熱すると、液面側と胴周面(容器の側壁)側の加熱が促進されやすく、また、水と油のマイクロ波に対する誘電率の差によって、更に加熱ムラが大きくなることが避けられない。すなわち、紙容器の樹脂層は、より加熱された内容物の油分に接することとなる。耐熱性のある樹脂層を有する紙容器であっても、特に調理済みカレーなどのように油分を含む内容物であれば、加熱された油分が接している紙容器の内壁部分へ浸透して、着色したり、ユズ肌状に変形したりする。このようにして外観が著しく低下し、食する際に見た目の美味しさを減じさせてしまう。また、紙容器は通常1回限りの使い捨て廃棄されるので、ゴミの量が増し、殆ど分解されないので残留し、環境への負荷が大きい、また投棄された樹脂類により、景観が損なわれ、生物系の生活環境が破壊されるなどの問題もある。よって、使用後でも環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化なども標榜される。
そこで、生物資源を利用したバイオマス材料の使用が好ましい。本明細書では特に植物由来の樹脂をバイオマス樹脂と呼称する。該バイオマス樹脂であれば、使用後に焼却されても炭酸ガスを経て植物へ、また、コンポスト処理などを経て再び植物へ、該植物からバイオマス樹脂へと循環型社会へ近づき、炭酸ガスの排出を抑制し地球温暖化防止、農業の活性化などにも効果的であり、石油資源を使用しないので省資源でもある。しかしながら、バイオマス樹脂を用いて紙容器へ容器化する際には、バイオマス樹脂の成膜加工適性や容器加工適性などの加工適性が悪いので、容易に製造できないという問題点がある。
従って、バイオマス樹脂を用いた電子レンジ用紙容器としては、加熱時の耐油性に優れる樹脂層を有し、油分を含む内容物であっても紙容器が着色したり、ユズ肌状に変形したりせず、従って外観が低下しないので、見た目の美味しさも維持される。また、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を用いても、該バイオマス樹脂を含む層の成膜加工適性がよく積層体とすることができ、また紙容器の製造では従来設備で、容易に低コストで、大量製造できることが求められている。
(先行技術)従来、天然多糖類または蛋白質、或はその多糖類または蛋白質を生分解性を有する範囲内において化学修飾したものよりなる生分解性容器本体表面を疎水性の生分解性プラスチック薄膜で被覆してなる生分解性容器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、容器の形態や生分解性プラスチック薄膜の被覆方法は全く記載されてなく、電子レンジ適性や耐油性についても記載も示唆もされていない。
また、長期保存性および電子レンジ適正に優れ、しかも焼却廃棄も可能なガスバリア性を有する容器が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、紙またはパルプと熱可塑性樹脂(ポリオレフィン系樹脂およびポリ乳酸系生分解性樹脂のいずれか)を混合し、これをペレット化した成形材料より、射出成形、圧縮成形、真空成形、真空圧空成形および中空成形のいずれかで成形された容体の外表面に、ガスバリア塗膜層が形成されているガスバリア性を有する容器であって、予め紙と樹脂層の積層体とし、該積層体を成形したものではなく、電子レンジ適性や耐油性についても記載も示唆もされていない。
さらに、デンプンまたはその誘導体を主成分とし、これに水を混合して得られるスラリー状またはドウ状の成形用原料を水蒸気発泡させることによって、所定形状に成形された生分解性発泡成形物の容器本体の開口の周縁部に、生分解性プラスチックを主成分とし、少なくとも疎水性を有した被覆フィルム(蓋)が熱シールされている密封容器、及び生分解性成形物の製造方法が知られている(例えば、特許文献3〜4参照。)。しかしながら、一旦スラリー状またはドウ状の成形用原料を水蒸気発泡成形してから所定形状に成形する成形工程であり、予め紙と樹脂層の積層体とし、該積層体を成形したものではない。
さらにまた、電子レンジ調理に使用できる、防湿性、耐油性に優れ、生分解性を有し、廃棄時の処理処分に問題がない生分解性素材を用いた紙容器として、カップ原紙を主材とする外容器へ、内側には耐油性、耐水性を有する樹脂層が形成されたパルプモールド製の内容器が嵌め込まれ、内容器と外容器の間には断熱空間層が形成されている生分解性素材を用いた防湿性紙容器、及び、内面側に耐水性や熱融着性などを有する生分解性の内面保護層を設けた逆円錐台カップ状や直方体トレー状などのパルプモウルド紙容器が知られている(例えば、特許文献5〜6参照。)。しかしながら、いずれもパルプモウルド成形であり、特別な型を必要とするいう欠点があり、予め紙と樹脂層の積層体とし、該積層体を成形したものではない。
以上で説明したように、いずれの先行技術でも、予め紙と樹脂層の積層体とし、該積層体を成形したものではなく、生産効率のよいロールツーロール方式の巻取加工ができない。
特開平5−278738号公報 特開2005−225494号公報 WO2003−070592号公報 WO2002−022353号公報 特開2003−165528号公報 特開2005−96790号公報
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、加熱時の耐油性に優れる樹脂層を有し、油分を含む内容物であっても紙容器が着色したり、ユズ肌状に変形したりせず、従って外観が低下しないので、見た目の美味しさも維持される。また、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を用いても、該バイオマス樹脂を含む層の成膜加工適性がよく積層体とすることができ、また紙容器の製造では従来設備で、容易に低コストで、大量製造できるバイオマス樹脂を用いた電子レンジ用紙容器を提供する。
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる電子レンジ用紙容器は、紙基材の少なくとも片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層を有する積層体を用いて成形してなるように、したものである。
請求項2の発明に係わる電子レンジ用紙容器は、上記樹脂層のバイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50〜75:50〜25であるように、したものである。
請求項3の発明に係わる電子レンジ用紙容器は、上記バイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂であるように、したものである。
請求項4の発明に係わる電子レンジ用紙容器は、上記樹脂層が押出ラミネション法で紙基材へ積層されてなるように、したものである。
請求項5の発明に係わる電子レンジ用紙容器は、上記紙容器の形状が紙絞りトレーであるように、したものである。
請求項6の発明に係わる電子レンジ用紙容器は、上記紙容器の形状が紙カップであるように、したものである。
請求項7の発明に係わる電子レンジ用紙容器は、胴部として紙基材の片面にバイオマス樹脂を含む樹脂層を有する胴部材を用い、底部として紙基材の少なくとも片面にバイオマス樹脂を含む樹脂層を有する底部材を用いた紙カップ状の紙容器であって、前記胴部材の樹脂層を内側にして筒状とし、両側端部の1部を重ね合わせた胴貼部分の熱接着法が超音波方式、又は加熱バーによる加熱加圧方式であるように、したものである。
請求項1〜3の本発明によれば、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を含む樹脂層でも、紙への成膜加工適性がよく、低コストで大量製造でき、油分を含む内容物を電子レンジ調理しても紙容器が着色したり、ユズ肌状に変形したりしない、加熱時の耐油性に優れる電子レンジ用紙容器が提供される。
請求項4の本発明によれば、バイオマス樹脂を含む樹脂層でも、紙への成膜加工適性がよく低コストで大量製造でき、加熱時の耐油性に優れる電子レンジ用紙容器が提供される。
請求項5〜6の本発明によれば、使い勝手のよい紙絞りトレー又は紙カップ状の電子レンジ用紙容器が提供される。
請求項7の本発明によれば、製造では従来設備で低コストで大量製造でき、油分を含む内容物を電子レンジ調理しても紙容器が着色したり、ユズ肌状に変形したりしない、加熱時の耐油性に優れる紙カップ状の電子レンジ用紙容器が提供される。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す紙カップの斜視図である。
図2は、図1のAA‘断面図である。
図3は、図1のBB‘断面図である。
図4は、本発明の1実施例を示す紙絞りトレーの断面及び平面図である。
本発明の電子レンジ用紙容器は、電子レンジで加熱する容器として使用でき、例えば、紙絞りトレーや紙カップ形態の紙容器である。例えば、紙カップとしては、図1に示すように、胴部11として紙基材21の片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層23を有する胴部材41を用い、底部13として紙基材21の少なくとも片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層23を有する底部材43を用いた紙カップ10の製造方法において、前記胴部材43の樹脂層23を内側にして筒状とし、両側端部の1部を重ね合わせた胴貼部分31の熱接着法が加熱バーによる加熱加圧方式である。
また、紙絞りトレーとしては、図4に示すように、絞り成形してなり、上部が開口し、底面111と該底面111から側壁面113を経て開口部周縁に外向きのフランジ部115を備え、角部117は罫線で折り畳まれてフランジ部へ立ち上がり、トレー状、皿状となっている。図4では長方形であるが、三角形などの多角形、円形、楕円形など任意でよく、深さやフランジ形状も用途に応じて任意でよい。また、該紙絞りトレーを単独で使用しても、また、図示していないが、蓋材を紙絞りトレー110の上部を覆い、フランジ部115へヒートシールして密閉し包装体として使用してもよい。但し、電子レンジで加熱する際には、穴を空けたり、1部開封したり、予め開封窓を設けるなどしておくのが好ましい。本発明の電子レンジ用紙容器は、好ましくは樹脂層23のバイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50〜75:50〜25で、また、バイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂であり、さらに、樹脂層23が押出ラミネション法で紙基材21へ積層されていることである。
(紙基材)紙基材としては、具体的には、賦型性、耐屈曲性、剛性等を持たせるものであり、例えば、晒または未晒の紙、板紙、加工紙等の紙基材などがあるが、伸縮性があり紙カップ製造適性がよいカップ原紙が好ましい。また、該紙基材には各種の添加剤など含有していてもよい。紙基材としては、坪量約80〜600g/m2位のもの、好ましくは、坪量約100〜450g/m2位のものを使用することが望ましい。該紙基材は胴部材及び底部材に使用でき、胴部材と底部材の紙基材は同じでも異なって用いてもよい。胴部材は紙基材の片面に樹脂層を有し、底部材は紙基材の少なくとも片面に樹脂層があればよく、両面に樹脂層を有していてもよい。
紙基材としては、クラフトパルプと、ロジン及び/又はアルキルケテンダイマーのサイズ剤を含みことが、紙カップに強度を与え、高サイズ度で好ましく、内容物などが滲み込みにくい点で好ましい。その配合割合は質量基準でクラフトパルプ:サイズ剤=100:0.15〜1.5程度である、この範囲未満ではサイズ度が不足し内容物などが滲み込みやすく、この範囲を超えるとサイズ度が高過ぎてバイオマス樹脂を含む樹脂層との接着性が低下する。
(樹脂層)樹脂層としてはバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂組成物で、特に指定はないが、質量基準でバイオマス樹脂:他の樹脂=10〜90:90〜10程度が好ましく、さらに好ましくは50〜75:50〜25である。合成樹脂成分としては特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、該ポリオレフィン系樹脂としてはLDPE、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体やカルボン酸をグラフト重合した酸変性ポリオレフィン、アイオノマーなどが混練性のよい点で好ましい。また、樹脂層を構成するバイオマス樹脂と合成樹脂からなる樹脂組成物に加えて、着色剤、顔料、体質顔料、充填剤、滑剤、可塑剤、界面活性剤、増量剤などの添加剤を加えてもよい。
(バイオマス樹脂)バイオマス樹脂としては、澱粉、ポリ乳酸系樹脂、微生物産生ポリエステル、脂肪族又は芳香族ポリエステルなどがある。バイオマス樹脂には生分解するもの、生分解しないものなどがあるが、いずれでもよく、好ましくは生分解性の樹脂であり、特に好ましくは生分解性や強度の点でポリ乳酸系樹脂である。
(ポリ乳酸系樹脂)ポリ乳酸系樹脂とは、モノマーの質量に換算して、乳酸成分を50重量%以上含めばよく、例えば、ポリ乳酸、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体、乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多塩基酸との共重合体、前記いずれかの組み合わせによる混合物などが例示できる。乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの混合物、又は、乳酸の環状2量体であるラクタイドなどがある。具体的には、三井化学社により製造されるポリ乳酸樹脂「レイシア」(商品名)が例示でき、その銘柄としては、例えば、H−100、H−400、H−440、H−360、H−280、100J、H−100E、M−151S Q04、M151S Q52などがある。
(合成樹脂)バイオマス樹脂に混合する合成樹脂としては限定されないが、ヒートシール性のあるポリオレフィン系樹脂、又はその変性体が好ましい。例えば、LDPE、L―LDPE、PP、PS、オレフィンと他のモノマーとの共重合体であるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、酸変性ポリオレフィン、アイオノマーが含まれるが、その中で、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、酸変性ポリオレフィン、アイオノマーのいずれか又はその組み合わせがより好ましい。それぞれの詳細について以下に記す。
(エチレンー不飽和カルボン酸共重合体)エチレン−不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)があり、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中の不飽和カルボン酸単位含有量としては、2〜25重量%、特に5〜20重量%が好ましい。
(エチレンー不飽和カルボン酸エステル共重合体)エチレン−不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)などがある。
(酸変性ポリオレフィン)酸変性ポリオレフィンとしてはポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などがある。
(アイオノマー)アイオノマーとしては、側鎖イオン基が存在するもの、両末端のカルボン酸基が金属イオンで中和したもの、主鎖に陽イオンに陰イオンが結合したものなどがあるが、特に限定されない。例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、プロピレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、プロピレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、ブチレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−ビニルスルホン酸共重合体アイオノマーなどが例示でき、1種のみ又は必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
アイオノマー中の不飽和カルボン酸単位含有量としては、2〜25重量%、特に5〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは、エチレン−メタアクリル酸共重合体アイオノマーである。
(配合比)樹脂層23の配合割合としては、質量基準でバイオマス樹脂:他の樹脂=10〜90:90〜10程度が好ましく、さらに好ましくは50〜75:50〜25である。この範囲未満では環境負荷の低減、省資源、循環型社会の形成に効果が少なく、この範囲を越えると積層体への加工時に加工適性が悪く均一な膜が得られず、また、紙への接着力も弱い。
樹脂層23の、JIS K−7210に準拠して、190℃、2160g荷重の条件において測定したメルトフローレート(MFR)としては、0.5〜20g/10分程度、好ましくは1〜15g/10分、さらに好ましくは4〜6g/10分である。この範囲未満ではEC加工時に加工適性が悪く、Tダイスから出た樹脂の流れが悪く、膜切れもしやすく、この範囲を越えるとTダイスから出た樹脂の流れが早過ぎて乱れたり、厚薄ムラが大きく、均一な膜が得られない。
(配合方法)バイオマス樹脂と合成樹脂(混合樹脂ともいう)とを配合し混練して樹脂組成物とする方法としては、特に限定されないが、例えば、1軸或いは多軸の押出し機、ミキサーなどの公知の方法でよく、溶融混錬が好ましい。
(EC)混練された樹脂組成物を押出ラミネション法で樹脂層とし、紙基材へ積層する。押出ラミネーション法は、所謂、当業者がエクストルージョンコーティング(EC)と呼ぶ方法である。まず、押出機で、押出樹脂を加熱し溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押し出す。該溶融樹脂を紙基材へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、押出樹脂層の形成と、基材フィルムへの接着と積層が同時に行われ、またロールツーロールの巻取状で加工ができ極めて生産効率がよい方法である。しかしながら、バイオマス樹脂、特にポリ乳酸系樹脂は溶融時の張力が低く、押出ラミネーション法ではTダイスから出た樹脂のネックインが大きく、特に両端部が厚くなり巻取りにくくなり、さらに樹脂層の厚薄ムラが大きく、また膜切れもしやすいので薄膜の樹脂層は成膜し難くかった。EC方式を用いて、押出機でバイオマス樹脂を含む押出樹脂を加熱し溶融させTダイスからカーテン状に押し出す際の、該溶融樹脂の温度は180〜300℃程度、好ましくは210〜280℃、さらに好ましくは230〜270℃程度である。この範囲未満ではTダイスから出た樹脂のネックインが大きく、特に両端部が厚くなり巻取りにくくなり、さらに樹脂層の厚薄ムラが大きく、また膜切れもしやすい。また、この範囲を超えては樹脂の分解温度に近づくので、Tダイスから出た樹脂の流れが乱れたり、着色したりする。
成膜と積層体が同時にできるEC方式では、高速加工が低コスト化できるメリットであり、紙基材へより80m/分以上、好ましくは100m/分以上、より好ましくは120m/分以上の高速で樹脂層を押出ラミネション法で積層することができる。また、1回のEC法での樹脂層23の厚さとしては、20〜100μm程度である。この範囲未満では、EC加工時にTダイスから流下した樹脂の樹脂温度が低下しやすく、また熱容量が少なく紙基材との接着性が悪く、この範囲を越えると紙基材との接着性は良くなるが、Tダイスから出た樹脂の溶融粘度が高いためか、膜切れしやすく、EC加工性が著しく低下する。厚さが必要な場合には、複数回のEC加工を繰り返せばよい。
本発明では、押出樹脂として、前述のバイオマス樹脂を含む樹脂層組成物を用いることで、幅方向の厚薄ムラが少なく、既存の従来設備で、ロールツーロールの巻取状で加工ができ極めて生産効率がよく容易に、大量生産ができる。押出ラミネーションでのバイオマス樹脂を含む樹脂層の厚さは、5〜200μm程度、さらに好ましくは20〜100μmである。この範囲未満ではシール強度が不足し液漏れなどが発生しやすく、この範囲を越えると性能が過剰となって無駄である。
(AC)なお、押出樹脂を、紙基材へ強固に接着させるために、通常、アンカーコート剤(AC剤)と呼ぶ接着促進剤などを塗布してもよく、また、アンカーコート剤の代わりに、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、オゾンガス処理などの易接着処理を施しても良い。アンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネートなどの有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、ポリウレタン系アンカーコート剤などがある。該アンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング法で塗布し乾燥すれば良い。該アンカーコート剤の厚さは、通常、0.01〜10.0μm程度、好ましくは、0.1〜5.0μmである。
このように押出ラミネション法で積層した、紙基材の少なくとも片面にイオマス樹脂を含む樹脂層を有する積層体は、使用後コンポスト処理などを経て再び植物へ、該植物からバイオマス樹脂へと循環型社会へ近づき、炭酸ガスの排出を抑制し地球温暖化防止、農業の活性化などにも効果的である。また、石油資源を使用しないか、又は少ない使用量で済むので省資源でもある。
(PEI)紙基材21にはポリエチレンイミン(PEI)やポリ乳酸系樹脂を含有させてもよく、含有方法としては、紙基材へ抄き込んだり、塗布すればよい。紙基材面へ塗布する方法としては、水、アルコール又は/及び有機溶媒などの溶液として、紙基材への含浸、スタンプコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティングなどで塗布し乾燥させればよい。含有は熱接着する部分が必須で、もちろん全面でもよい。このようにすることで、円錐台形に打ち抜いたブランク(胴部材)を樹脂層を内側に筒状に巻いて、その側端部を部分的に重ね合せてシールして筒状の胴を形成する際に、バイオマス樹脂を含む樹脂層面と紙基材面との異質材料のシールでも接着性が向上し、より低い条件でも充分な接着性が得られるようになる。ポリエチレンイミン(PEI)の塗布量としては、通常0.001g/m2〜5g/m2程度、好ましくは0.01g/m2〜1g/m2である。
(紙カップ製造)紙カップ10の製造方法としては公知の製造方法であり、(1)胴部材41を準備し、(2)底部材43を準備し、(3)胴部材41を円錐台形に打ち抜いて胴部ブランクとし、(4)底部材43を円形に打ち抜いて底材ブランクとし、(5)胴部ブランク板を樹脂層23を内側に筒状に巻いて、その側端部を部分的に重ね合せて胴貼部分31とし、該胴貼部分31を加熱処理を行い押圧して筒状の胴部11とし、(6)該筒状の胴部11の底端部へ、底板ブランクの外周を筒状に起立成形させて起立成形部33とした底部材を挿入し、底部材が挿入された胴部の底端部とを、その接合する部分へ熱風などを吹き付けて、その接合する部分に存在する樹脂層23を加熱溶融し、次いで、カール用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立形成部33にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部33との胴貼部分を内径側からローレットによりローレットがけすることにより、カップ胴部11と底部13とを密接着させて接合部をシールし、(7)胴部11の上端部を外側にカールしてカール15とする。このような紙カップの成型方法では使用材料に自ら制約があって使用材料が特定されてしまうのが現状である。
(ホットエアー)シール方式としては、通常ホットエアー方式が用いられる。一般的な紙カップの樹脂層はワックス、ポリエチレン又はポリプロピレンであり、この場合には極めて効率がよい。しかしながら、バイオマス樹脂含む樹脂層を用いた場合には、該樹脂層と紙基材との接着性が充分ではなく、液のにじみ、液漏れが発生する恐れがあった。
(加熱バー)特許文献2の先行技術による低温のホットエアーでは熱容量が少ないので狭い条件でしか充分なシールができず、またシールの接着状況も安定しない。そこで、バイオマス樹脂含む樹脂層と紙基材との接着性を向上させるために、ホットエアー方式ではなく、胴部材を筒状に巻いて、両側端部を部分的に重ね合せて胴貼部分31とし、該胴貼部分31を超音波方式、又は加熱バーによる加熱加圧方式とすることで、樹脂層にバイオマス樹脂を含んでいても良好にシールできることを見出した。即ち、バイオマス樹脂を含んでいる樹脂層でも、前述の押出ラミネーションでの良加工性と胴部の良シール性を兼ね備えさせることができる。また、筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部33とのシールは樹脂層同士の部分があるので方法は問わない。
(超音波)そこで、比較的簡単に、しかも安定した接着性を有する接層を施すものであって、筒状の胴部材の内側となっているバイオマス樹脂を含んでいる樹脂層へ受け台を接触させて、該接触部分に対応する胴部材の外側から超音波ホーンを当てがいホーンに超音波振動を発生させることにより胴貼部分をシールし接着させる。このような超音波方式のシールであれば、超音波振動方向とシール面が同一となり、紙の振動吸収がなく均一なシール性が得られる。超音波方式のシールは、装置も簡単で安全にシールでき、接着力も安定して得ることができる。また、胴部材の外側に受け台を当てがい、胴部材の内側から超音波ホーンを当てがってホーンに超音波振動を発生させながらシールし接着させてもよい。超音波ホーンは別の成型部分を介して当てがってもよい。
(紙絞りトレー)本発明の紙絞りトレー110は、図4に示すように、公知の方法で絞り成形してなり、上部が開口し、底面111と該底面111から側壁面113を経て開口部周縁に外向きのフランジ部115を備え、角部117は罫線で折り畳まれてフランジ部へ立ち上がり、トレー状、皿状となっている。図4では長方形であるが、三角形などの多角形、円形、楕円形など任意でよく、深さやフランジ形状も用途に応じて任意でよい。また、該紙絞りトレーを単独で使用しても、また、図示していないが、蓋材を紙絞りトレー110の上部を覆い、フランジ部115へヒートシールして密閉し包装体として使用してもよい。
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
(実施例1)紙カップ10の胴部材としては、紙基材21として坪量255g/m2のカップ原紙を用いて、その片面へインラインでコロナ処理を施しながら、次の樹脂層組成物を260℃で押出ラミネーション法で、厚さ30μmの樹脂層23を形成して、紙基材21/樹脂層23からなる積層体を用いた。
樹脂層組成物としては、レイシアH−100(三井化学社製、ポリ乳酸商品名)60質量部に、ハイミラン1652(三井ポリケミカル社製、アイオノマー商品名)40質量部を加えて加熱混練したもの(MFR3.5g/10分)を用いた。
紙カップの底部材としては、紙基材として坪量255g/m2のカップ原紙を用いて、その片面へインラインでコロナ処理を施しながら、前記樹脂層組成物を260℃で押出ラミネーション法で厚さ30μmの樹脂層を形成し、さらに、反対面へもインラインでコロナ処理を施しながら、前記樹脂層組成物を245℃で押出ラミネーション法で厚さ30μmの樹脂層を形成して、樹脂層23/紙基材21/樹脂層23からなる両面樹脂層の積層体を用いた。
上記の胴部材を円錐台形に打ち抜きブランク板とし、該ブランク板を樹脂層を内側に筒状に巻いて、その側端部を部分的に重ね合せて、その胴貼部分を工具鋼製の所定の温度の加熱バーで2回加圧して筒状の胴を形成した。
該筒状の胴の底端部へ、底板ブランクの外周を筒状に起立成形させた底板を挿入し、底部が挿入された胴の底端部とを、その接合する部分へ熱風などを吹き付けて、その接合する部分に存在する樹脂層を加熱溶融し、次いで、カール用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立形成部にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部との胴貼部分を内径側からローレットによりローレットがけすることにより、カップ胴部と底部とを密接着させて接合部をシールした。
胴部の上端部を外側にカールさせて、容量500mlの実施例1の紙カップ10を得た。
(実施例2)樹脂層組成物としては、レイシアH−100(三井化学社製、ポリ乳酸商品名)75質量部に、ハイミラン1652(三井ポリケミカル社製、アイオノマー商品名)25質量部を加えて加熱混練したもの(MFR5.0g/10分)を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2の紙カップ10を得た。
(実施例3)樹脂層組成物としては、レイシアH−100(三井化学社製、ポリ乳酸商品名)80質量部に、ハイミラン1652(三井ポリケミカル社製、アイオノマー商品名)20質量部を加えて加熱混練したもの(MFR6.0g/10分)を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例3の紙カップ10を得た。
(実施例4)樹脂層組成物としては、レイシアH−100(三井化学社製、ポリ乳酸商品名)30質量部に、LDPE(三井化学社製、ミラソン16P)70質量部を加えて加熱混練したもの(MFR5.2g/10分)を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例4の紙カップ10を得た。
(実施例5)胴貼部分のシール方法を下記の超音波方式とする以外は、実施例1と同様にして、実施例2の紙カップ10を得た。胴貼部分31の内側を受け台で受けながら、胴貼部分の外側から、超音波ホーンより出力97%(MAX4000W)で0.158秒間の超音波を照射する超音波方式で筒状の胴を形成した。
(実施例6)実施例1の積層体を用いて、樹脂層23を内側にして上下の金型で加圧する公知の紙絞り成形法で、図4の形状で短辺100mm×長辺150mm×深さ35mm×フランジ幅7mmの紙絞りトレーを成形して、実施例6の紙絞りトレーを得た。
(比較例1)樹脂層組成物としては、LDPEのみを用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1の紙カップを得た。
(評価方法)紙カップ又は紙絞りトレーへ、カレーを充填し、電子レンジで加熱する試験方法で、紙容器内面の樹脂層への油の染み込み具合を観察して、評価した。
(試験方法)紙カップ又は紙絞りトレーの上端部の開口部からカレー300gを充填し、電子レンジで500Wで3分間加熱した後に、カレーを注ぎ出した空カップ又は紙絞りトレーを水で洗浄し、内面の樹脂層を目視で観察した。油の染み込みなしのものを合格とし、油の染み込みあるものを不合格とした。
(評価結果)実施例1〜6ではすべてに油の染み込みがなく合格であり、また、カレーと接触していた樹脂層に着色やユズ肌状の変形もなかった。比較例1では油が染み込み不合格であり、また、カレーと接触していた樹脂層は黄色に着色し、ユズ肌状の変形も見られた。
本発明の1実施例を示す紙カップの斜視図である。 図1のAA‘断面図である。 図1のBB‘断面図である。 本発明の1実施例を示す紙絞りトレーの断面及び平面図である。
符号の説明
10:紙カップ
11:胴部
13:底部
15:カール
21:紙基材
23:樹脂層
31:胴貼部分
33:起立成形部
41:胴部材
43:底部材
110:紙絞りトレー
111:底部
113:側壁部
115:フランジ部
117:角部

Claims (7)

  1. 紙基材の少なくとも片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層を有する積層体を用いて成形してなることを特徴とする電子レンジ用紙容器。
  2. 上記樹脂層のバイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50〜75:50〜25であることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ用紙容器。
  3. 上記バイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の電子レンジ用紙容器。
  4. 上記樹脂層が押出ラミネション法で紙基材へ積層されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子レンジ用紙容器。
  5. 上記紙容器の形状が紙絞りトレーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子レンジ用紙容器。
  6. 上記紙容器の形状が紙カップであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子レンジ用紙容器。
  7. 胴部として紙基材の片面にバイオマス樹脂を含む樹脂層を有する胴部材を用い、底部として紙基材の少なくとも片面にバイオマス樹脂を含む樹脂層を有する底部材を用いた紙カップ状の紙容器であって、前記胴部材の樹脂層を内側にして筒状とし、両側端部の1部を重ね合わせた胴貼部分の熱接着法が超音波方式、又は加熱バーによる加熱加圧方式であることを特徴とする請求項6記載の電子レンジ用紙容器。
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