JP5151457B2 - 紙カップ - Google Patents

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Description

本発明は、紙カップに関し、さらに詳しくは、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化などのために、バイオマス樹脂を用い、保香性に優れる紙カップに関するものである。
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「バイオマス」は「生物由来」、「バイオマス樹脂」は「生物由来の樹脂」、「PE」は「ポリエチレン」、「LDPE」は「低密度ポリエチレン」、「EMAA」は「エチレン−メタクリル酸共重合体」、「樹脂層」は「ヒートシール層」、「HS層」、「シーラント」又は「シーラントフィルム」、「PET」は「2軸延伸ポリエチレンテレフタレート」、「ON」は「2軸延伸ポリアミド」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
(主なる用途)本発明の紙カップの主なる用途としては、ジュース、清涼飲料及びアルコールなどの飲料、アイスクリーム、冷菓及びヨーグルトなどの液状、粘調状、固形分を含む液状食品の容器などで、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化なども標榜したものである。しかしながら、保香性に優れ、かつ、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化などを必要とし、ポリオレフィン系樹脂と同程度のヒートシール性も必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
(背景技術)液状、粘調状、固形分を含む液状食品の容器などの用いる紙カップは、防水性を要し、紙カップの内面に樹脂層、通常ポリエチレンやワックスが積層されている。紙カップは通常1回限りの使い捨て廃棄されるので、ゴミの量が増し、殆ど分解されないので残留し、環境への負荷が大きい、また投棄された樹脂類により、景観が損なわれ、生物系の生活環境が破壊されるなどの問題もある。そこで、生物資源を利用したバイオマス材料の使用が好ましい。本明細書では特に植物由来の樹脂をバイオマス樹脂と呼称する。該バイオマス樹脂であれば、使用後に焼却されても炭酸ガスを経て植物へ、また、コンポスト処理などを経て再び植物へ、該植物からバイオマス樹脂へと循環型社会へ近づき、炭酸ガスの排出を抑制し地球温暖化防止、農業の活性化などにも効果的であり、石油資源を使用しないので省資源でもある。しかしながら、バイオマス樹脂を用いて紙カップへ容器化する際には、バイオマス樹脂の成膜加工適性や容器加工適性などの加工適性が悪いので、容易に製造できないという問題点がある。
従って、バイオマス樹脂を用いた紙カップとしては、保香性に優れ、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を用いても、該バイオマス樹脂を含む層の成膜加工適性がよく積層体とすることができ、また紙カップの製造ではポリオレフィン系樹脂と同程度のヒートシール性を有し、従来設備で、容易に低コストで、大量製造でき、従来設備で、容易に低コストで、大量製造できることが求められている。
(先行技術)従来、バイオマス樹脂の1つである生分解性材料として、ポリ乳酸又はその誘導体のみを用いた生分解性複合材料が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、生分解性複合材料自身に関するものであり、生分解性複合材料の製造は塗布して熱プレスで大量量産には不向きであり、また、生分解性複合材料を容器などの実使用形態での保香性などの性能については記載も示唆もされていない。
また、生分解性の微生物産生ポリエステル又は脂肪族ポリエステルを用いた紙カップ(例えば、特許文献2参照。)や、紙に生分解性を有するプラスチックを積層した紙からなる紙容器、一軸ないし二軸方向に延伸した熱接着性を有する生分解性プラスチックを内面に備えた紙基材からなる紙容器が知られている(例えば、特許文献3、4参照。)。
しかしながら、耐湯性や、生分解性について記載されているのみで、実使用形態での保香性などの性能については記載も示唆もされていない。
特開平4−334448号公報 特開平6−62944号公報 特開平6−64111号公報 特開2003−26143号公報
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、保香性に優れ、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を用いても、該バイオマス樹脂を含む層の成膜加工適性がよく積層体とすることができ、また紙カップの製造ではポリオレフィン系樹脂と同程度のヒートシール性を有し、従来設備で大量製造でき、低コストで製造できる紙カップを提供することである。
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる紙カップは、胴部材及び底部材として積層体を用いる紙カップにおいて、前記積層体が紙基材と、該紙基材の少なくとも片面にバイオマス樹脂と合成樹脂を含む樹脂層を有し、前記樹脂層のバイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50〜80:50〜20であり、かつ前記バイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂であり、前記合成樹脂がポリオレフィン系樹脂であるものである。
請求項1の本発明によれば、保香性に優れ、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を用いても、該バイオマス樹脂を含む層の成膜加工適性がよく積層体とすることができ、また紙カップの製造ではポリオレフィン系樹脂と同程度のヒートシール性を有し、従来設備で、容易に低コストで、大量製造でき、従来設備で、容易に低コストで、大量製造できる紙カップが提供される。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、上記樹脂層へオレンジジュースが接していても、香りと風味を著しく損ないにくく、保香性に優れる紙カップが提供される。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す紙カップの斜視図である。
図2は、図1のAA‘断面図である。
図3は、図1のBB‘断面図である。
本発明の紙カップ10は、図1に示すように、胴部材41及び底部材43として積層体を用いる紙カップであって、前記積層体が紙基材21と、該紙基材21の少なくとも片面にバイオマス樹脂と合成樹脂を含む樹脂層23を有し、前記バイオマス樹脂が微生物産生系ポリエステル及び/又は脂肪族ポリエステルであり、前記樹脂層23のバイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50〜80:50〜20である。樹脂層23を内容物に接するようにし、保香性に優れる。また、本発明の紙カップ10は、好ましくはバイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂、合成樹脂がポリオレフィン系樹脂とすることで、前記積層体の樹脂層23へオレンジジュースが接していても、香りと風味を著しく損ないにくく、保香性に優れる。図2は胴部のAA‘断面図であり、胴部材41は片面に樹脂層23を有しているが、両面でもよい。図3はBB‘断面図であり、胴部材41は片面に樹脂層23を有し、底部材43は両面に樹脂層23を有しているが、胴部材41及び底部材43の両面が樹脂層23でも、片面が樹脂層23でもよく、要は内容物に接する側を樹脂層23とすればよい。
(紙基材)紙基材21としては、具体的には、賦型性、耐屈曲性、剛性等を持たせるものであり、例えば、晒または未晒の紙、板紙、加工紙等の紙基材などがあるが、伸縮性があり紙カップ製造適性のよいカップ原紙が好ましい。また、該紙基材には各種の添加剤など含有していてもよい。紙基材としては、坪量約80〜600g/m2位のもの、好ましくは、坪量約100〜450g/m2位のものを使用することが望ましい。該紙基材は胴部材及び底部材に使用でき、胴部材と底部材の紙基材は同じでも異なって用いてもよい。胴部材は紙基材の片面に樹脂層を有し、底部材は紙基材の少なくとも片面に樹脂層があればよく、両面に樹脂層を有していてもよい。また、紙基材21として、紙基材21を含む積層体を用いてもよく、例えば、紙基材/接着剤層13(ドライラミネーション用)/Al箔7μm、紙基材/LDPE(エクストルージョンコーティング用)/Al箔7μm、紙基材/LDPE(エクストルージョンコーティング用)/アルミ蒸着PETフィルム、シリカ蒸着PLAフィルムなどが例示できる。要するに、内容物に接する面に樹脂層23を構成すればよい。
(樹脂層)樹脂層23としてはバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂組成物であり、質量基準でバイオマス樹脂:合成樹脂=50〜80:50〜20とする。合成樹脂成分としては特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、該ポリオレフィン系樹脂としてはLDPE、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体やカルボン酸をグラフト重合した酸変性ポリオレフィン、アイオノマーなどが混練性のよい点で好ましい。さらに好ましくは安価でヒートシール性のよいLDPEである。生分解性や強度に優れるポリ乳酸系樹脂と安価でヒートシール性に優れるポリオレフィン系樹脂の組み合わせである。また、樹脂層を構成するバイオマス樹脂と合成樹脂からなる樹脂組成物に加えて、着色剤、顔料、体質顔料、充填剤、滑剤、可塑剤、界面活性剤、増量剤などの添加剤を加えてもよい。
(バイオマス樹脂)バイオマス樹脂としては、澱粉、ポリ乳酸系樹脂、微生物産生ポリエステル、脂肪族又は芳香族ポリエステルなどがあるが、微生物産生ポリエステル及び/又は脂肪族ポリエステルを用い、微生物産生系ポリエステル若しくは脂肪族ポリエステルの単独、又はそれらの混合物でもよい。バイオマス樹脂には生分解するもの、生分解しないものなどがあるが、いずれでもよく、好ましくは生分解性の樹脂であり、特に好ましくは生分解性や強度の点でポリ乳酸系樹脂である。
(ポリ乳酸系樹脂)ポリ乳酸系樹脂とは、モノマーの質量に換算して、乳酸成分を50重量%以上含めばよく、例えば、ポリ乳酸、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体、乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多塩基酸との共重合体、前記いずれかの組み合わせによる混合物などが例示できる。乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの混合物、又は、乳酸の環状2量体であるラクタイドなどがある。具体的には、三井化学社により製造されるポリ乳酸樹脂「レイシア」(商品名)が例示でき、その銘柄としては、例えば、H−100、H−400、H−440、H−360、H−280、100J、H−100E、M−151S Q04、M151S Q52などがある。
(合成樹脂)バイオマス樹脂に混合する合成樹脂としては限定されないが、ヒートシール性のあるポリオレフィン系樹脂、又はその変性体が好ましい。例えば、PE、PP、PS、オレフィンと他のモノマーとの共重合体であるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、酸変性ポリオレフィン、アイオノマーが含まれるが、その中で、LDPE、リニア低密度ポリエチレン(L―LDPE)、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、酸変性ポリオレフィン、アイオノマーのいずれか又はその組み合わせがより好ましい。
(配合比)樹脂層23の配合割合としては、質量基準でバイオマス樹脂:他の合成樹脂=50〜80:50〜20である。この範囲未満では環境負荷の低減、省資源、循環型社会の形成に効果が少なく、この範囲を越えるとフィルムへの加工時に加工適性が悪く均一な膜が得られにくい。また、バイオマス樹脂の割合が50%以上であり、より、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会への寄与が大きい。
(配合方法)バイオマス樹脂と合成樹脂(混合樹脂ともいう)とを配合し混練して樹脂組成物とする方法としては、特に限定されないが、例えば、1軸或いは多軸の押出し機、ミキサーなどの公知の方法でよく、溶融混錬が好ましい。
(EC)混練された樹脂組成物を押出ラミネション法で樹脂層とし、紙基材へ積層する。押出コーティング法は、所謂、当業者がエクストルージョンコーティング(EC)と呼ぶ方法である。また、これを応用した共押出コーティング(コエクストルージョンコーティング、Co‐EC)、又はサンドラミネーション(ポリサンドともいう)と呼ぶ方法でもよい。まず、押出機で、押出樹脂を加熱し溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押し出す。該溶融樹脂を紙基材へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、押出樹脂層の形成と、基材フィルムへの接着と積層が同時に行われ、またロールツーロールの巻取状で加工ができ極めて生産効率がよい方法である。しかしながら、バイオマス樹脂、特にポリ乳酸系樹脂は溶融時の張力が低く、押出ラミネーション法ではTダイスから出た樹脂のネックインが大きく、特に両端部が厚くなり巻取りにくくなり、さらに樹脂層の厚薄ムラが大きく、また膜切れもしやすいので薄膜の樹脂層は成膜し難くかった。EC方式を用いて、押出機でバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる押出樹脂を加熱し溶融させTダイスからカーテン状に押し出す際の、該溶融樹脂の温度は180〜300℃程度、好ましくは210〜280℃、さらに好ましくは230〜270℃程度である。この範囲未満ではTダイスから出た樹脂のネックインが大きく、特に両端部が厚くなり巻取りにくくなり、さらに樹脂層の厚薄ムラが大きく、また膜切れもしやすい。また、この範囲を超えては樹脂の分解温度に近づくので、Tダイスから出た樹脂の流れが乱れたり、着色したりする。
(サンドラミネーション、Co−EC)サンドラミネーション方法は、ゴムロールと金属ロールとで挟持する場合に、溶融樹脂面へ別のフィルム状基材を供給し共に挟持させると、紙基材ム21/押出樹脂層(例えば、EMAA)/別フィルム状基材(例えば、樹脂層23)の3層が、接着し積層されて、1回の加工工程で3層構成にできる。
共押出コーティング(コエクストルージョンコーティング、Co‐EC方法は、複数の層を押出して複数の樹脂層とすることができる。まず、複数の押し出し機で、それぞれ別の押し出し樹脂を加熱し溶融させて、共押出用のTダイスへ導いて合流させてから、必要な幅方向に拡大伸張させて複数樹脂が重なったカーテン状に押し出す。または、共押出用のTダイスで、それぞれの押し出し樹脂層を必要な幅方向に拡大伸張させてから、カーテン状に押し出す際に複数を樹脂を重ねる手法もある。複数樹脂層は、2種2層、3種3層、2種3層、3種5層などの種々の構成がとれる。例えば、紙基材ム21/押出樹脂層(例えば、EMAA)/押出樹脂層(例えば、樹脂層23)の3層構成にできる。また、2回のEC加工で成形してもよく、紙基材ム21へEMAAをECし、さらに、この面へ、樹脂層23をECしても3層構成にでき、紙基材ム21/押出樹脂層(EMAA)/押出樹脂層(樹脂層23)の3層構成となる。
本発明では、押出樹脂として、前述のバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層組成物を用いることで、幅方向の厚薄ムラが少なく、既存の従来設備で、ロールツーロールの巻取状で加工ができ極めて生産効率がよく容易に、大量生産ができる。押出ラミネーションでのバイオマス樹脂を含む樹脂層の厚さは、5〜200μm程度、さらに好ましくは20〜100μmである。この範囲未満ではシール強度が不足し液漏れなどが発生しやすく、この範囲を越えると性能が過剰となって無駄である。
(AC)なお、押出樹脂を、紙基材へ強固に接着させるために、通常、アンカーコート剤(AC剤)と呼ぶ接着促進剤などを塗布してもよく、また、アンカーコート剤の代わりに、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、オゾンガス処理などの易接着処理を施しても良い。アンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネートなどの有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、ポリウレタン系アンカーコート剤などがある。該アンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング法で塗布し乾燥すれば良い。該アンカーコート剤の厚さは、通常、0.01〜10.0μm程度、好ましくは、0.1〜5.0μmである。
このように押出ラミネション法で積層した、紙基材21の少なくとも片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層23を有する積層体は、使用後焼却されても炭酸ガスを経て植物へ、また、コンポスト処理などを経て再び植物へ、該植物からバイオマス樹脂へと循環型社会へ近づき、炭酸ガスの排出を抑制し地球温暖化防止、農業の活性化などにも効果的である。また、石油資源を使用しないか、又は少ない使用量で済むので省資源でもある。
(PEI、PLA)紙基材21にはポリエチレンイミン(PEI)やポリ乳酸系樹脂を含有させてもよく、含有方法としては、紙基材へ抄き込んだり、塗布すればよく、好ましくはポリエチレンイミン(PEI)である。紙基材面へ塗布する方法としては、水、アルコール又は/及び有機溶媒などの溶液として、紙基材への含浸、スタンプコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティングなどで塗布し乾燥させればよい。含有は熱接着する部分が必須で、もちろん全面でもよい。このようにすることで、円錐台形に打ち抜いたブランク(胴部材)を樹脂層を内側に筒状に巻いて、その側端部を部分的に重ね合せてシールして筒状の胴を形成する際に、バイオマス樹脂を含む樹脂層面と紙基材面との異質材料のシールでも接着性が向上し、より低い条件でも充分な接着性が得られるようになる。ポリエチレンイミン(PEI)の塗布量としては、通常0.001g/m2〜5g/m2程度、好ましくは0.01g/m2〜1g/m2である。この範囲未満では接着性向上の効果が低く、この範囲を超えても、効果が飽和して無駄である。
(紙カップ製造)紙カップ10の製造方法としては公知の製造方法でよく、(1)胴部材41を準備し、(2)底部材43を準備し、(3)胴部材41を円錐台形に打ち抜いて胴部ブランクとし、(4)底部材43を円形に打ち抜いて底材ブランクとし、(5)胴部ブランク板を樹脂層23を内側に筒状に巻いて、その側端部を部分的に重ね合せて胴貼部分31とし、該胴貼部分31を加熱処理を行い押圧して筒状の胴部11とし、(6)該筒状の胴部11の底端部へ、底板ブランクの外周を筒状に起立成形させて起立成形部33とした底部材を挿入し、底部材が挿入された胴部の底端部とを、その接合する部分へ熱風などを吹き付けて、その接合する部分に存在する樹脂層23を加熱溶融し、次いで、カール用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立形成部33にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部33との胴貼部分を内径側からローレットによりローレットがけすることにより、カップ胴部11と底部13とを密接着させて接合部をシールし、(7)胴部11の上端部を外側にカールしてカール15とする。シール方式としては、通常ホットエアー方式が用いられるが、その他一般的に用いられる方法を使用しても良い。
(保香性)プラスチックフイルムを主体とする包装材料では、僅かであるが酸素などのガスや水蒸気を透過し、また、食品の香気成分も透過してしまう。香気成分の透過によって、保存中に香りが逸散したり、外部の臭気を吸着したり、逆に包装材料から材料の極1部や、材料によっては材料中の低分子量物や不純物が溶出したりして、香りや風味が劣化する問題がある。保香性は、ガスバリア性の数字とある程度比例するが、完全に一致せず、フイルムの種類と香気成分によって透過速度が大きく異なっている。保香性や風味の測定は官能テストによる評価が一般的である。特に樹脂層23は内容物と接するので、保香性や風味に影響する。
(紙カップ)本発明の紙カップ10は、上記の積層体体を胴部材41及び底部材43としたもので、各種内容物の包装に使用される。本発明の紙カップ10は、樹脂層23が最内面となり、内容物に接するようになるが、樹脂層23の樹脂はバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物であり、ヒートシール性と保香性に優れている。即ち、樹脂層23はバイオマス樹脂と合成樹脂を含み、バイオマス樹脂は微生物産生系ポリエステル及び/又は脂肪族ポリエステルで、バイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合を質量基準で50〜80:50〜20とすることで、ヒートシール性と保香性を両立させることができる。また、好ましくは、バイオマス樹脂をポリ乳酸系樹脂とし、合成樹脂をポリオレフィン系樹脂とすることで、ポリオレフィン系樹脂と同程度のヒートシール性を付与させ、液体包装ができ、かつ、樹脂層23へオレンジジュースなどの香りや風味の変化し易い内容物が接していても、著しく香りと風味を損ないにくく、より保香性に優れる。ヒートシール性と保香性については実施例で述べる。
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
(実施例1)紙カップ10の胴部材としては、紙基材21として坪量240g/m2のカップ原紙を用いて、その片面へインラインでコロナ処理を施しながら、次のバイオマス樹脂を含む樹脂を加熱混練した樹脂層組成物を260℃で押出ラミネーション法で、厚さ20μmの樹脂層23を形成して、樹脂層23/紙基材21からなる積層体を得た。
・<樹脂層組成物>
レイシアH−100(三井化学社製、ポリ乳酸系樹脂商品名) 60質量部
ノバテックLC520(日本ポリエチレン社製、LDPE商品名) 40質量部
次に、樹脂層23が形成されていない紙基材21面に、ノバテックLC520(日本ポリエチレン社製、LDPE商品名)を15μmの厚さで押出し、同時に厚さ7μmのAl箔を重ねて、サンドラミネーション法で積層し、樹脂層23/紙基材21/LDPE/Al箔からなる積層体を得た。
該積層体体のAl箔面へ、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製、商品名NUC8007C)を300℃で押出してECし、さらにこのEC面へ、前記バイオマス樹脂を含む樹脂組成物をECして、それぞれの厚さが15μm、20μmとなるように積層して、厚さ20μmの樹脂層23/坪量240g/m2のカップ原紙(紙基材21)/厚さ15μmのLDPE/厚さ7μmのAl箔/厚さ15μmのEMAA/厚さ20μmの樹脂層23からなる積層体(胴部材、底材)を得た。
該積層体から紙カップの胴部を作る円錐台形のブランク板を打抜き加工した。該ブランク板を樹脂層を内側に筒状に巻いて、その側端部を部分的に重ね合せて、その胴貼部分を工具鋼製の所定の温度の加熱バーで2回加圧して筒状の胴を形成した。
一方、ブランク材と同一材料の連続帯材から円板を打抜き、該円板の外周部を筒状に起立成形して、起立成形部を有する底部を形成した。
次いで、上記で製造した筒状のカップ胴部に、同じく上記で製造した底部を挿入し、底部が挿入された胴の底端部とを、その接合する部分へ熱風などを吹き付けて、その接合する部分に存在する樹脂層を加熱溶融し、次いで、カール用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立形成部にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部との胴貼部分を内径側からローレットによりローレットがけすることにより、カップ胴部と底部とを密接着させて接合部をシールした。胴部の上端部を外側にカールさせて、容量133mlの実施例1の紙カップ10を得た。
(実施例2)樹脂層23として、以下の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2の紙カップ10を得た。
・<樹脂組成物>
ポリ乳酸樹脂(三井化学社製、レイシアH−100) 80部
LDPE樹脂(日本ポリエチレン社製、ノバテックLC520) 20部
(実施例3)樹脂層23として、以下の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例3の紙カップ10を得た。
・<樹脂組成物>
ポリ乳酸樹脂(三井化学社製、レイシアH−100) 50部
LDPE樹脂(日本ポリエチレン社製、ノバテックLC520) 50部
(比較例1)樹脂層23として、以下の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1の紙カップ10を得た。
・<樹脂組成物>
LDPE樹脂(日本ポリエチレン社製、ノバテックLC520) 100部
(比較例2)樹脂層23として、以下の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例2の紙カップ10を得たが、製膜が不安定で厚薄ムラが大きく、ヒートシール強度の差が大きいので、評価はしなかった。
・<樹脂組成物>
ポリ乳酸樹脂(三井化学社製、レイシアH−100) 100部
(評価方法)保香性、ヒートシール性で評価した。
(保香性)まず、実施例用と比較例用の蓋材を作成する。
<実施例1用の蓋材の作成>実施例1で用いた樹脂層23の樹脂組成物を用いて、185℃でインフレーション法で製膜し、厚さ50μmのシーラント層(樹脂層23)を得た。次に、PET12μm(東洋紡、E5100)にウレタン系接着剤を乾燥後4g/m2になるように塗布し、厚さ7μmのAl箔をドライラミネートし、該Al箔面へウレタン系接着剤を乾燥後4g/m2になるように塗布し、上記シーラント層をドライラミネートし積層体を得た。該積層体を40℃の恒温室で3日エージングし、実施例1用の蓋材を作成した。
<実施例2用の蓋材の作成>実施例2で用いた樹脂層23の樹脂組成物を用いる以外は、上記のようにして、実施例2用の蓋材を作成した。
<実施例3用の蓋材の作成>実施例3で用いた樹脂層23の樹脂組成物を用いる以外は、上記のようにして、実施例3用の蓋材を作成した。
<比較例1用の蓋材の作成>比較例1で用いた樹脂層23の樹脂組成物を用いる以外は、上記のようにして、比較例1用の蓋材を作成した。
<比較例2用の蓋材の作成>比較例2で用いた樹脂層23の樹脂組成物を用いる以外は、上記のようにして、比較例2用の蓋材を作成した。
(評価方法)実施例1〜3、比較例1〜2の紙カップ10へ、オレンジジュース50mlを充填し、蓋材として実施例1〜3、比較例1〜2に対応するそれぞれの蓋材をヒートシールして紙カップ容器を得た。該紙カップ容器を、3℃の恒温槽中で1、2、3週間保存し、保存後にこれを開封し、内容物であるオレンジジュースの風味の官能テストした。評価は、ほとんど差がない(○印)、若干の差ある(×印)、大きく差がある(××印)、著しい差がある(×××印)とした。評価結果を表1に示す。
Figure 0005151457
(ヒートシール性)ヒートシール強度は、実施例1〜3及び比較例1、2の胴部材に用いた積層体から15mm幅の2片を切り出して、2片の表面と裏面の樹脂層19面同士を重ねて、温度を変えた加熱シールバーと加熱していない受け台との間で、0.3MPaで1秒間加熱加圧してヒートシールした。該2片の幅15mmの積層体10を剥離角度90°(Tピール)、剥離速度300mm/分で剥離するヒートシール強度を測定した。評価結果を表2に示す。
Figure 0005151457
(評価結果)保香性は、実施例1〜3では3週間後でも○印であったが、比較例1では1週間でも×印と悪かった。比較例2は前述の理由で評価に値しなかった。ヒートシール性、実施例1〜3では問題なく良好であった。比較例1も問題なく良好であったが、比較例2では前述の理由で評価をしなかった。
本発明の1実施例を示す紙カップの斜視図である。 図1のAA‘断面図である。 図1のBB‘断面図である。
符号の説明
10:紙カップ
11:胴部
13:底部
15:カール
21:紙基材
23:樹脂層
31:胴貼部分
33:起立成形部
41:胴部材
43:底部材

Claims (1)

  1. 胴部材及び底部材として積層体を用いる紙カップにおいて、前記積層体が紙基材と、該紙基材の少なくとも片面にバイオマス樹脂と合成樹脂を含む樹脂層を有し、前記樹脂層のバイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50〜80:50〜20であり、かつ前記バイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂であり、前記合成樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする紙カップ
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