JP2017088229A - 包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 被シール体である包装体の底材または蓋材のヒートシール樹脂がポリ乳酸樹脂であっても、ヒートシール性に優れ、良好な易開封性と、手や指による加圧圧着のみで良好な再封性とを併有する、再封可能な包装体を提供する。【解決する手段】 表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、ヒートシール樹脂層(C)が順次に積層されてなる多層フィルムにおいて、粘着樹脂層(B)が動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上であるスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として構成され、ヒートシール樹脂層(C)がポリ乳酸系樹脂を主成分として構成され、包装体のヒートシール部において粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)とが層間剥離したときに、両層が再封可能な状態で露出することを特徴とする包装体。【選択図】 図2

Description

本発明は、多層フィルムを蓋材または底材とする包装体に関し、さらに詳細には、食品や医薬品などの包装に好適に用いられる、再封可能な包装体に関するものである。
使用する度に開封と再封を繰り返す化粧品や生理用品、あるいは一度では消費しきれない量の食品や医薬品などの包装手段としては、従来、再封機能を有する各種の包装体が用いられていた。この包装体は、開封後に残存する内容物の酸化劣化、あるいは吸湿、乾燥などによる変敗を防ぐことができ、例えば、プラスチック製のジッパーをラミネートしたジッパータイプの包装体が知られている。しかし、この包装体は繰り返し開封可能であり、優れた耐久性を有するものの、ジッパーなどの付属物を包装体に取り付けるための専用装置が必要であり、またそれに伴う加工工程も必要であるため、製造コストが嵩み、生産効率も低下するなどの問題点がある。
一方、ジッパーなどの付属物を取り付けることなく包装体自体に再封機能を付与させることのできる多層フィルムも開発されている。例えば、特許文献1および2には、表面樹脂層と、スチレン−ジエン系ゴム質ブロック共重合体の水素添加物と粘着付与剤とを含有してなる粘着樹脂層と、ヒートシール樹脂層とからなる多層フィルムであって、包装体の底材から蓋材として用いられた前記多層フィルムを剥がす際に粘着樹脂層がヒートシール部分において再封可能な粘着状態で露出可能な多層フィルムが開示されている。
しかし、これらの多層フィルムは、粘着樹脂層に必須成分としてゴム質ブロック共重合体の水素添加物と、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、石油炭化水素樹脂などの粘着付与樹脂とを必須成分として多量に含有している。この多層フィルムを食品用包装体に用いた場合、前記粘着付与樹脂が油脂性食品の疑似溶媒であるn−ヘプタンを用いた溶出試験において抽出量が増加する傾向にあるため、食品衛生面からはできるだけ粘着樹脂層に粘着付与樹脂を混合しない方が好ましい。
また、特許文献3には、基材の少なくとも一面に粘着樹脂層(粘着剤層)とヒートシール剤層とがこの順に形成されたヒートシール用の包装材料であって、前記粘着樹脂層と前記ヒートシール剤層の間の接着強度がヒートシール剤層とヒートシールの対象となる層の間のヒートシール強度よりも小さい包装材料が開示されている。
具体的には、実施例として、ポリエステルと二軸延伸ポリプロピレンとからなるラミネートフィルム(厚さ50μm)基材の二軸延伸ポリプロピレン面上に、スチレン10質量%とジエン系炭化水素90質量%からなるランダム共重合体の水素添加物をTダイによる押出しラミネートにより25μmの厚さにした粘着樹脂層をラミネートし、さらにこの粘着樹脂層上に溶剤可溶型のアクリル系ヒートシールラッカーをコーティングしたヒートシール剤層を積層した包装材料が例示されている。この包装材料をタブ付の円形に切り抜き、蓋材としてポリスチレン容器にヒートシールした包装体の場合、タブをつまんで引っ張ると、粘着樹脂層とヒートシール剤層との界面で剥離が生じ、剥離した蓋を容器に被せて指等で圧着すると粘着樹脂層がフランジ部に再粘着し、再度封をすることが記載されている。
しかしながら、上記の構成を有する包装体は、ヒートシール剤をコーティングする前段階で、粘着樹脂が外部に露出する工程が発生し、大気中に浮遊している塵、埃などが粘着樹脂に付着し、再封性が低下してしまう場合があり、さらにコーティングのためのコーターや乾燥設備などの特別な設備も必要となり、製造コストがアップするなどの問題がある。
本出願人においては、特定の粘弾性特性を有するスチレン系熱可塑性エラストマーを粘着樹脂層の主成分として用い、粘着樹脂層とヒートシール樹脂層との層間に剥離樹脂層を配することにより上記課題を解決できることを見出し、商業化することに成功した(特許文献4〜8)。
特許文献4〜8において、ヒートシール樹脂層(D)は、オレフィン系樹脂(エチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、スチレン系樹脂、スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーをそれぞれ主成分とする樹脂が好適に用いられることが記載されている。
また他方では、化石資源等の枯渇性資源の有効活用が重要視され、再生可能資源の利用が、環境配慮の点で重要な課題となっている。
その中で、植物原料プラスチックは、非枯渇性資源を利用し、プラスチック製造時における枯渇性資源の節約を図ることができるだけでなく、二酸化炭素の排出抑制が可能となり、また、優れたリサイクル性を備えていることから、特に注目が高まり、包装容器材料への使用検討が広まって来ている。
植物原料プラスチックの中でも、澱粉の発酵により得られる乳酸を原料とするポリ乳酸(PLA)系樹脂は、化学工学的に量産可能であり、かつ透明性、剛性等の物性が優れるという特徴を有する。
しかしながら、従来の再封可能なフィルムでは、被シール体の構成樹脂がポリ乳酸系樹脂の場合は、十分な密封が出来ないという問題がある。
特開2003−175567号公報 特開2004−75181号公報 特開2005−41539号公報 特許第4749119号公報 特許第4902237号公報 特許第5106795号公報 特許第5121244号公報 特許第5117225号公報
本発明は、従来の再封可能な包装体用の多層フィルムの課題を解決するためになされたものであり、その解決課題は、被シール体である包装体の底材または蓋材のヒートシール樹脂がポリ乳酸樹脂であっても、ヒートシール性に優れ、良好な易開封性と、手や指による加圧圧着のみで良好な再封性とを併有する、再封可能な包装体を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の粘弾性特性を有するスチレン系熱可塑性エラストマーを粘着樹脂層の主成分として用い、ヒートシール樹脂層にポリ乳酸樹脂を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、ヒートシール樹脂層(C)が順次に積層されてなる多層フィルムを包装体の蓋材または底材の一方に用い、多層フィルムのヒートシール樹脂層(C)を被シール体である包装体の底材または蓋材にヒートシールしてなる包装体であって、粘着樹脂層(B)が、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上であるスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として構成され、ヒートシール樹脂層(C)がポリ乳酸系樹脂を主成分として構成され、包装体のヒートシール部において粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)とが層間剥離したときに、両層が再封可能な状態で露出することを特徴とする包装体に存する。
本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂をヒートシール層とする底材または蓋材に使用する容器であっても、良好な易開封性と、手や指による加圧圧着のみで良好な再封性とを併有する再封可能な包装体を提供することができ、資源利用や環境配慮の点で大きな貢献できる。
本発明で規定する多層フィルムを蓋材に用いた場合の包装体の部分断面図 図1で示す包装体において、蓋材の一部を容器から剥離した状態の包装体の部分断面図 図1で示す包装体において、蓋材と底材とを再封した状態を示す部分断面図
以下、本発明の包装体を構成する、再封機能付き多層フィルム、蓋材、および包装体について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「主成分として構成される」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の70質量%以上100質量%以下、好ましくは85質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下を占めることを意味する。
本発明の包装体を構成するフィルムは、表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、ヒートシール樹脂層(C)が順次に積層されている多層フィルムであって、粘着樹脂層(B)が動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上のスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として構成される層からなり、ヒートシール樹脂層(C)が、ポリ乳酸(PLA)系樹脂を主成分として構成される多層フィルムである。
本発明のフィルムは次の機能を有する。即ち、多層フィルムを包装体の蓋材または底材の一方に用い、多層フィルムのヒートシール樹脂層(C)を、被シール体である包装体の底材または蓋材のヒートシール部でヒートシールさせ、次いでヒートシール部から多層フィルムを剥離したときに、ヒートシール部において、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)とが層間剥離し、かつ粘着樹脂層(B)がヒートシール樹脂層(C)と再封可能な状態で露出する再封機能を有する。
以下に、各層および層を構成する原材料について説明する。
<表面樹脂層>
本発明のフィルムの表面樹脂層(A)は、熱可塑性樹脂(a)を主成分として構成される層であり、剥離時に表面樹脂層(A)と粘着樹脂層(B)との間の層間剥離強度が、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)との間の層間剥離強度よりも大きくなる層構成であれば特に制限されるものではなく、単層であっても多層であってもよい。
表面樹脂層(A)の主成分として用いられる熱可塑性樹脂(a)は、粘着樹脂層(B)、およびヒートシール樹脂層(C)の主成分として用いられる樹脂の種類を考慮して適宜選択することが好ましい。熱可塑性樹脂(a)は、溶融押出温度が概ね180℃以上300℃以下の範囲であることから、この範囲内で溶融押出可能な熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
具体的に熱可塑性樹脂(a)としては、オレフィン系樹脂(エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等)、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、カーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独あるいは2種以上の混合樹脂組成物として用いることができ、単層構成または多層構成を形成できる。
本発明では、成型加工性、製造コスト、透明性などを考慮すると、熱可塑性樹脂(a)としては、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エステル系樹脂、およびスチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
前記エチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(E−GMA)、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(E−VA−GMA)、エチレン−無水マレイン酸共重合体(E−MAH)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、等のエチレン系共重合体;さらにはエチレン−アクリル酸共重合体の金属中和物、エチレン−メタクリル酸共重合体の金属中和物等が挙げられる。これらは、一種のみを単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
前記プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン等との共重合体が挙げられ、共重合体としてはランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれもが使用できる。また、立体規則性については、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造、アタクチック構造、ステレオブロック構造などいずれであってもよい。これらは、一種のみを単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
前記アミド系樹脂としては、まず、脂肪族ポリアミド重合体として、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられる。具体的には、6ナイロンと称されるε−カプロラクタムの単独重合体や66ナイロンと称されるポリヘキサメチレンアジパミド、あるいは、これらの共重合体である6−66ナイロン等が挙げられる。また、芳香族ポリアミド重合体として、キシリレンジアミンと炭素数が6以上12以下のα,ω脂肪族ジカルボン酸とからなるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上含有している樹脂等が使用できる。具体的には、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンデカナミドなどの単独重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセパカミド共重合体などの共重合体が挙げられる。これらは、一種のみを単独で、2種以上を混合して使用してもよい。
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物としては、エチレン含有率が29%以上好ましくは32%以上であり、かつ47モル%以下、好ましくは44モル%以下であり、またケン化度が90%以上、好ましくは95%以上のものが好適に用いられる。エチレン含有量とケン化度が上記範囲のグレードを選択することにより、フィルムのガスバリア性や力学強度等を良好なものとすることができる。これらは、一種のみを単独で、2種以上を混合して使用してもよい。
前記エステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンイソフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合樹脂、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を全グリコール単量体単位中に15モル%以上50モル%以下含有する低結晶性あるいは非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン/ネオペンチルテレフタレート共重合樹脂、ポリ乳酸系樹脂に代表される脂肪族ポリエステル樹脂類などが挙げられる。
また、前記エステル系樹脂にハードセグメントとして高融点高結晶性の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントとして非晶性ポリエステルや非晶性ポリエーテルなどを有する熱可塑性ポリエステル系エラストマーも適宜混合してもかまわない。これらのエラストマーは、一種のみを単独で、または2種以上を適宜混合して使用してもよい。
前記スチレン系樹脂としては、汎用ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレンン(HIPS)、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステルからなるスチレン系共重合体の連続相に分散粒子としてゴム状弾性体を1質量%以上20質量%以下含有した樹脂などが挙げられる。これらは、一種のみを単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。
多層フィルムにガスバリア性、耐ピンホール性などの機能を付与するためには、表面樹脂層(A)を2層以上の層構成とし、かつエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主成分とする層および/またはアミド系樹脂等を主成分とする層を少なくとも1層有することが好ましい。ただし、表面樹脂層(A)を多層構成とした場合には、多層を構成する各樹脂層間の層間剥離強度は、粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との間の層間剥離強度よりも大きくなるような接着性樹脂を適宜選択し使用することも重要である。
前記接着性樹脂としては、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのエチレン系樹脂や、プロピレン単独重合体、およびプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体などのプロピレン系樹脂に、アクリル酸、あるいは、メタアクリル酸などの一塩基性不飽和脂肪酸、またはメチルアクリレート、メチルメタアクリレート、若しくはグリシジルメタアクリレートなどの一塩基性不飽和脂肪酸のエステル化合物、またはマレイン酸、フマル酸若しくはイタコン酸などの二塩基性脂肪酸の無水物などを化学的に結合させたオレフィン系接着性樹脂が好適に用いられる。このような接着性樹脂の具体例としては、三井化学(株)製の商品名「アドマー」や三菱化学(株)製の商品名「モディック」等を例示することができる。
表面樹脂層(A)には、本発明の主旨を損なわない範囲でその他の成分を適宜添加しても構わない。具体的には、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤等の成分が挙げられる。表面樹脂層(A)が多層構成である場合には、特定の層にのみ添加しても、あるいは、全ての層に添加しても構わない。
<粘着樹脂層>
本発明のフィルムの粘着樹脂層(B)は、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上であるスチレン系熱可塑性エラストマー(b)を主成分として構成される層であることが重要である。
ここで、前記損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上にあれば、剥離時に露出した粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)を手や指による加圧圧着のみで実用性のある再封性が発現するため好ましい。
この再封性には、常温での粘弾性特性、特に、損失正接(tanδ)の値も影響しているものと推察され、常温での損失正接(tanδ)の値が0.1以上(上限値は、通常、0.6程度)であることがさらに好ましい。 また、スチレン系熱可塑性エラストマー(b)の損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度の上限値は、エラストマーとしての特性から、通常、10℃以下である。
さらに、本発明の包装体は、冷蔵庫に代表される冷蔵設備などの低温での環境下でも使用されることがあるため、これらのことを考慮すると、損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度の好ましい範囲は、−35℃以上、より好ましくは−25℃以上であり、5℃以下、より好ましくは0℃以下の範囲である。
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(b)としては、スチレン、あるいはα−メチルスチレンなどのスチレン同族体と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体であることが好ましい。ここで、共役ジエン部分を構成する共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、これらは共重合体中に単独または2種以上が混合された状態で含まれていてもよい。ただし、この共役ジエン部分のビニル結合を主とした二重結合が残った場合の熱安定性や耐候性は極めて悪いので、これを改良するため、二重結合の80%以上、好ましくは95%以上に水素を添加したものを用いることが好ましい。
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(b)の損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は、主に、スチレン含有量と共役ジエン部分のビニル結合量(例えば、ブタジエンの場合は1,2結合、イソプレンの場合は1,2結合と3,4結合の結合量)に依存する。本発明においては、スチレン含有量が1質量%以上、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、25質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であり、共役ジエン部分のビニル結合量が40モル%以上、好ましくは50モル%以上であるスチレン系熱可塑性エラストマーが好適に用いられる。
このようなスチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、(株)クラレ製の商品名「ハイブラー7311」、旭化成(株)製の商品名「タフテックH1221」、JSR(株)製の商品名「ダイナロン1320P」等を例示することができる。
前記粘着樹脂層(B)には、本発明の主旨を損なわない範囲でその他の樹脂や成分を適宜添加しても構わない。具体的には、低結晶性あるいは非晶性のオレフィン系樹脂、軟化剤、オイル(鉱物油)、安定剤(酸化防止剤等)、流動パラフィン等が挙げられる。
<ヒートシール樹脂>
本発明のフィルムのヒートシール樹脂層(C)は、前記の被シール体のヒートシール部でヒートシールさせ、次いで前記ヒートシール部から多層フィルムを剥離するときに、ヒートシール樹脂層(C)と被シール体との接着強度が、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)の間の層間剥離強度よりも大きくなるような層構成であれば特に制限されるものではなく、所望により単層構成の樹脂層であっても、多層構成の樹脂層であってもよい。
また、ヒートシール樹脂のヒートシール部を構成する樹脂としては、被シール体のポリ乳酸系樹脂に対してヒートシール性の良好なポリ乳酸系樹脂を主成分と構成することが好ましい。
本発明に用いられるポリ乳酸系樹脂とは、D−乳酸またはL−乳酸の単独重合体またはそれらの共重合体をいい、具体的には、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造体がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)があり、またこれらの混合体も含まれる。
D−乳酸の単独重合体およびL−乳酸の単独重合体は、結晶性樹脂となり、融点が高く、耐熱性、機械物性に優れる傾向となる。一方、DL−乳酸の共重合体の場合、その光学異性体の割合が増えるにしたがって結晶性が低下することが知られており、シール性に優れる傾向となる。そのため、D−乳酸とL−乳酸の共重合組成比率の調整により結晶性を制御するによって、良好なシール性と耐熱性とを兼備することができる。
また、D−乳酸とL−乳酸との共重合組成比が異なるポリ乳酸系樹脂を2種類以上混合して用いて、シール性と耐熱性やその他の特性とのバランスをとるができる。
良好なヒートシール性を得るには、ポリ乳酸系樹脂およびヒートシール層(C)の融点は200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
また、ポリ乳酸系樹脂としては、この発明の効果を損なわない範囲において、乳酸と、α―ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸との共重合体であってもよい。
前記α―ヒドロキシカルボン酸単位としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ-n-酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪酸族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等ラクトン類が挙げられる。
また、前記脂肪族ジオール単位としては、エチレングリコール、1.4−ブタンジオール、1.4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂の重合法としては、縮合重合法、開環重合法など、公知の方法を採用することが可能である。例えば縮合重合法であれば、D−乳酸、L−乳酸、または、これらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。
<各層厚み>
表面樹脂層(A)は、単層あるいは多層構成の樹脂層であり、通常、その厚みは1μm以上、好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上であり、かつ1000μm以下、好ましくは600μm以下、更に好ましくは500μm以下である。ここで、表面樹脂層(A)の厚みが1μm以上であれば、ガスバリア性や耐ピンホール性などの特瑛を付与する層や接着性樹脂層を配することが容易であり、またその厚みが1000μm以下であれば、ヒートシール時に熱がヒートシール樹脂層(C)に伝わり易く被シール体のシール部と容易にヒートシールができるため好ましい。
粘着樹脂層(B)は、通常、単層構成の樹脂層であり、その厚みは、特に制限されるものではないが、易開封性と再封性とのバランス、成形加工性、製造コストなどから、0.5μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上であって100μm以下、好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下が好適に採用される。
ヒートシール樹脂層(C)の厚みは特に制限されるものではないが、1μm以上、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、30μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは15μm以下であることが望ましい。ここで、合計厚みが1μm以上であれば、ヒートシール時にヒートシール熱板による加圧等により変形し、これらの各層の機能が低下してしまうなどの不具合が防止できるため好ましく、またその厚みが30μm以下であれば、粘着樹脂層(B)とヒートシール層(C)を剥離させる際に、ヒートシール層(C)を容易に破断させることができ、粘着樹脂層(B)を再封可能な状態で露出することが可能になるため好ましい。
<製造方法>
本発明のフィルムの製造方法としては、特に制限されるものではないが、粘着樹脂層(B)の保護や生産性および衛生性等に優れている共押出法を好適に用いることができる。すなわち、上述した表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、およびヒートシール樹脂層(C)に用いる各樹脂組成物をそれぞれ別の押出機で加熱溶融させ、マルチマニホールド法やフィードブロック法等の公知の方法で溶融状態において(A)/(B)/(C)の順で積層した後、Tダイ・チルロール法やインフレーション法等により多層フィルムに成形することができる。
ここで、印刷適性やラミネート適性を向上させるために、得られた多層フィルムの表面樹脂層(A)の最外層の表面に表面処理を施すことが好ましい。表面処理の方法としては、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の方法が挙げられるが、本発明においては、表面処理の効果や生産性および製造コストの観点からコロナ処理が好適に用いられる。
本発明の多層フィルムは、粘着樹脂層(B)が積層される面と反対側の表面樹脂層(A)上に、ドライラミネーション法や押出ラミネーション法などの公知の方法により、必要に応じて、接着性樹脂や接着剤などを介してラミネート基材を積層させ、ラミネートフィルムやラミネートシートとすることができる。
ここで、ラミネート基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、無延伸ポリプロピレンシート、無延伸ポリエチレンテレフタレートシート、アルミニウム箔、紙、不織布等が挙げられる。
本発明においては、ドライラミネーション法が好適に用いられ、その際に用いられる接着剤としては、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤、ポリエーテル−ポリウレタン系接着剤等が例示できる。
本発明において、フィルム自体、あるいはフィルムとラミネート基材とを積層したラミネートフィルムやラミネートシートは、それぞれ各種の包装体の蓋材や底材として用いることができる。例えば、ラミネートフィルムを包装体(容器)の蓋材として使用した場合、この蓋材のヒートシール樹脂層(C)と、食品等の内容物が充填された包装体(容器)(被シール体)のヒートシール樹脂層とを重ね合わせてヒートシールすることにより、気密性や実用的な初期剥離強度および再封機能を有する包装体(容器)とすることができる。この包装体(容器)は、開封後の剥離面に粘着樹脂層(B)が再封可能な状態で露出し、手や指による加圧圧着のみで再封が可能となる。また、各種の包装体(容器)の底材としては、深絞り成形などを行うことにより同様に再封機能を有する包装体(容器)を得ることが可能である。
<深絞り包装体の再封性発現機構>
本発明のフィルムを、蓋材または底材として用いた深絞り包装体における再封機能について説明する。
図1は、本発明のフィルムを蓋材として用いた深絞り包装体の部分断面図であり、図2は、図1で示す深絞り包装体において、蓋材の一部を底材から剥離した状態の包装体の部分断面図であり、図3は、図2で示す深絞り包装体において、蓋材と底材とを再封した状態を示す部分断面図である。
ここで、図1〜3における符号1は蓋材、符号2は底材(被シール体)、符号3は蓋材の表面樹脂層、符号4は蓋材の粘着樹脂層、符号5は蓋材のヒートシール樹脂層、符号6は底材の表面樹脂層、符号7は底材のヒートシール樹脂層、符号8はヒートシール部、符号9はタブ部、符号10は剥離時における粘着樹脂層4の露出部である。
本発明の包装体は、図1に示すように、蓋材1は、表面樹脂層3、粘着樹脂層4、ヒートシール樹脂層5がこの順で構成される。蓋材1のヒートシール樹脂層5は、被シール体である底材2のヒートシール樹脂層7とヒートシールされている。つまり、蓋材1と底材2とは、ヒートシールによって形成されたヒートシール部8で接着されている。
蓋材1に設けられたタブ部9を摘んで引っ張ると、図2に示すように、ヒートシール部9において、先ずタブ部10側のヒートシール樹脂層5が蓋材1から破断されるとともに、蓋材1における粘着樹脂層4とヒートシール樹脂層5との層間で剥離が開始される。粘着樹脂層4とヒートシール樹脂層5との剥離が、タブ部9側と反対側のヒートシール部8に到達すると、蓋材1のヒートシール樹脂層5が破断される。破断された蓋材1のヒートシール樹脂層5は、被シート体である底材2側に移行し、粘着樹脂層4の露出部10とヒートシール樹脂層5の露出部11が形成される。
再封する場合には、図3に示すように、剥離した蓋材1を底材2に被せて、表面樹脂層3を手や指で加圧圧着し、蓋材1の粘着樹脂層4の露出部10と、底材2へ移行した蓋材1のヒートシール樹脂層5の露出部11と重ね合わせることにより蓋材1と底材2とを再封することができる。
<用途例>
本発明の包装体は、各種容器の蓋材や底材等として用いることができ、その用途が特に限定されるものではないが、例えば、ウェットティッシュ、汗取り紙、芳香剤、使い捨ておしめ等のように数個単位で包装した容器として用いたり、その都度開封して使用する化粧品や生理用品、シップ薬、救急絆創膏、のど飴等の医薬品を包装した容器として用いたりすることができる。特に、開封後に残存する内容物が酸化劣化、吸湿や乾燥などの変敗の影響を受けやすいものを収納するための包装体として好適に使用することができる。
以下に実施例で本発明をさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向と呼ぶ。
(1)損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度
試料を縦4mm、横60mmに切り出し、粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティ計測(株)製)を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間25mmの条件で、横方向について−100℃から測定し、得られたデータから損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度(℃)を求めた。
(2)初期剥離強度
得られた深絞り包装体の底材と蓋材のヒートシール部を15mm幅の短冊状に切り出し試験片とした。この試験片を万能試験機(インテスコ(株)製)を用い、温度23℃、引張速度200mm/min、引張角度180度の条件で測定し、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)との層間剥離強度(N/15mm幅)を初期剥離強度とした。また、下記の基準も併記した。
A:初期剥離強度が3N/15mm幅以上、10N/15mm未満の場合
B:初期剥離強度が3N/15mm幅未満、または10N/15mm以上の場合
(3)層の残り方
得られた深絞り包装体の底材と蓋材のヒートシール部から手で剥離する場合の状況を下記の基準で目視により評価した。
A:粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)が、多層フィルムからきれいに破断し、毛羽立ち立ちがない場合
B:粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)が、多層フィルムから破断できない場合、及び/又は、破断しても毛羽立ちがある場合
(4)再封剥離強度
得られた深絞り包装体の底材と蓋材のヒートシール部を15mm幅の短冊状に切り出し試験片とした。そのヒートシール部を開封し、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)との間で剥離した箇所を、指で加圧圧着して再封することを5回繰り返す。そして、万能試験機(インテスコ(株)製)を用い、温度23℃、引張速度200mm/min、引張角度180度の条件で測定した剥離強度(N/15mm幅)を再封剥離強度とした。また、下記の基準も併記した。
A:再封剥離強度が0.5N/15mm幅以上の場合
B:再封剥離強度が0.5N/15mm幅未満の場合
[蓋材の原材料]
(A1): エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物(エチレン共重合比44モル%)
(A2): 6−66ナイロン樹脂
(A3): 変性ポリエチレン系樹脂
(B1): スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂(tanδのピーク温度−25℃、20℃のtanδ値0.12)
(B2): (B1)と、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂(tanδのピーク温度−44℃、20℃のtanδ値0.23)とを質量比60:40で混合した樹脂組成物
(C1): ポリ乳酸系樹脂(Nature Works製「Ingeo 4032D」、密度1.24、融点155〜170℃)に、滑剤としてエルカ酸アミドを500ppm、アンチブロッキング剤として天然シリカを1000ppm添加混合した樹脂組成物
(C2): グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(SKケミカル製「SKYPET S2008」、密度1.27、ガラス転移温度78〜81℃)に、滑剤としてエルカ酸アミドを500ppm、アンチブロッキング剤として天然シリカを1000ppm添加混合した樹脂組成物
(C3): 変性ポリエチレン系接着性樹脂(ビカット軟化点温度77℃)
実施例1:
[蓋材]
表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、ヒートシール樹脂層(C)に上記の原材料を用い、口径50mmの各層単軸押出機にそれぞれ供給して、Tダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置を用い、押出機温度190〜230℃、Tダイ設定温度235℃の条件で共押出し、(A1)/(A2)/(A3)/(B1)/(C1)の5層構成、各層平均厚みが10μm/20μm/10μm/25μm/5μm、総厚70μm の多層フィルムを得た。
次いで、得られた多層フィルムの表面樹脂層(A)の外側に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ16μmを、ウレタン系2液硬化型接着剤を用い、ドライラミネーション法により貼り合わせてラミネートフィルムを得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
総厚200μmの無延伸ポリ乳酸シート(東レ(株)製「エコディア」、融点170℃)を使用した。
[深絞り包装体]
深絞り包装機(ムルチバック社製、型番R−530)を使用して、上記の底材を深絞り成形することにより、縦130mm、横170mm、フランジ部幅6mmの略直方形の形状の容器に加工し、ヒートシール部において、深絞りされた底材に設けられたフランジ部分に上記の蓋材を、ヒートシール温度180℃、シール時間2秒、シール圧力4kg/cmの条件でヒートシールすることにより深絞り包装体を作製した。
実施例2:
実施例1において、蓋材の(B1)を(B2)に代えた他は同様にして深絞り包装体を作製した。
実施例3:
実施例1において、各層平均厚みを10μm/20μm/10μm/20μm/10μmに変更した他は同様にして深絞り包装体を作製した。
比較例1:
実施例1において、蓋材の(C1)を(C2)に代えた他は同様にして深絞り包装体を作製した。
比較例2:
実施例1において、(C1)を(C3)に代えた他は同様にして深絞り包装体を作製した。
Figure 2017088229
表1より、実施例1〜3は、初期剥離強度、層の残り方および再封剥離強度のすべての特性に問題がなく実用性に優れていることを確認できた。
実施例2は、粘着樹脂層(B)に損失正接(tanδ)のピーク値が−35℃より低いスチレン系熱可塑性エラストマーを混合したため、粘着樹脂層(B)/ヒートシール樹脂層(C)の間の初期剥離強度が比較的低く、シール幅やシール面積の広い包装体に好適に使用できる。
これに対して、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂や変性ポリエチレン樹脂をヒートシール樹脂層(C)に用いた比較例1、2は、ポリ乳酸系シートと十分なヒートシールを行うことが出来ず、初期剥離強度が非常に弱くなった。また、蓋材の剥離の際に、多層フィルムからのヒートシール層の破断および粘着樹脂層の露出が起きず、再封することができなかった。
1 蓋材
2 底材
3 蓋材の表面樹脂層
4 蓋材の粘着樹脂層
5 蓋材のヒートシール樹脂層
6 底材の表面樹脂層
7 底材のヒートシール樹脂層
8 底材のヒートシール部
9 蓋材のタブ部
10 剥離時における粘着樹脂層の露出部
11 剥離時におけるヒートシール樹脂層の露出部
本発明のフィルムによって、植物原料プラスチックを用いた再封可能包装体を作製できることから、包装内容物の品質および衛生性を保ち、食品および包材の廃棄量を大幅に削減できると共に、枯渇性資源の使用量削減、二酸化炭素の排出削減といった環境配慮の包装を提供できる。

Claims (5)

  1. 表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、ヒートシール樹脂層(C)が順次に積層されてなる多層フィルムを包装体の蓋材または底材の一方に用い、多層フィルムのヒートシール樹脂層(C)を被シール体である包装体の底材または蓋材にヒートシールしてなる包装体であって、粘着樹脂層(B)が、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上であるスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として構成され、ヒートシール樹脂層(C)が、ポリ乳酸系樹脂を主成分として構成され、包装体のヒートシール部において粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)とが層間剥離したときに、両層が再封可能な状態で露出することを特徴とする包装体。
  2. 前記包装体のヒートシール部における粘着樹脂層(B)の露出が、ヒートシール樹脂層(C)の多層フィルムからの破断と、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)との層間剥離と、ヒートシール樹脂層(C)の被シール体側への移行とにより行われる請求項1に記載の包装体。
  3. 表面樹脂層(A)が、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エステル系樹脂、およびスチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を主成分として構成される請求項1又は2に記載の包装体。
  4. 表面樹脂層(A)が2層以上で構成され、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主成分とする層および/またはポリアミド系樹脂を主成分とする層を有する多層フィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の包装体。
  5. ヒートシール樹脂層(C)の厚みが1μm以上30μm以下である多層フィルムを用いる請求項1〜4のいずれかに記載の包装体。
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