JP4940971B2 - 紙カップ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、紙カップの製造方法に関し、さらに詳しくは、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化などのために、バイオマス樹脂を用いた紙カップ及びその製造方法に関するものである。
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「バイオマス」は「生物由来」、「バイオマス樹脂」は「植物由来の樹脂」、「PLA」は「ポリ乳酸」、「LDPE」は「低密度ポリエチレン」、「EMAA」は「エチレン−メタクリル酸共重合体」、「PEI」は「ポリエチレンイミン」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
(主なる用途)本発明の紙カップの製造方法で製造されてなる紙カップの主なる用途としては、ジュース、清涼飲料及びアルコールなどの飲料、アイスクリーム、冷菓及びヨーグルトなどの液状、粘調状、固形分を含む液状食品の容器などで、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化なども標榜したものである。しかしながら、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化などを必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
(背景技術)液状、粘調状、固形分を含む液状食品の容器などの用いる紙カップは、防水性を要し、紙カップの内面に樹脂層、通常ポリエチレンやワックスが積層されている。紙カップは通常1回限りの使い捨て廃棄されるので、ゴミの量が増し、殆ど分解されないので残留し、環境への負荷が大きい、また投棄された樹脂類により、景観が損なわれ、生物系の生活環境が破壊されるなどの問題もある。そこで、生物資源を利用したバイオマス材料の使用が好ましい。本明細書では特に植物由来の樹脂をバイオマス樹脂と呼称する。該バイオマス樹脂であれば、使用後に焼却されても炭酸ガスを経て植物へ、また、コンポスト処理などを経て再び植物へ、該植物からバイオマス樹脂へと循環型社会へ近づき、炭酸ガスの排出を抑制し地球温暖化防止、農業の活性化などにも効果的であり、石油資源を使用しないので省資源でもある。しかしながら、バイオマス樹脂を用いて紙カップへ容器化する際には、バイオマス樹脂の成膜加工適性や容器加工適性などの加工適性が悪いので、容易に製造できないという問題点がある。
従って、バイオマス樹脂を用いた紙カップの製造方法としては、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を用いても、該バイオマス樹脂を含む層の成膜加工適性がよく積層体とすることができ、また紙カップの製造では従来設備で、容易に低コストで、大量製造できることが求められている。
(先行技術)従来、バイオマス樹脂の1つである生分解性材料として、ポリ乳酸又はその誘導体のみを用いた生分解性複合材料が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、生分解性複合材料自身に関するものであり、生分解性複合材料の製造は塗布して熱プレスで大量量産には不向きであり、また、生分解性複合材料を容器などの実使用形態への加工方法については記載も示唆もされていない。
また、生分解性の微生物産生ポリエステル又は脂肪族ポリエステルを用いた紙カップで、ホットエアーで接着のための媒体を用いないシール方式が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、ホットエアー方式では、シール条件が狭い範囲に限られ、充分なシール強度が得られないという欠点がある。
さらに、紙に生分解性を有するプラスチックを積層した紙からなる紙容器、一軸ないし二軸方向に延伸した熱接着性を有する生分解性プラスチックを内面に備えた紙基材からなる紙容器が知られている(例えば、特許文献3、4参照。)。しかしながら、積層紙から紙容器への製造方法は公知の方法(一般論)が記載されているのみで、具体的な製造方法については記載も示唆もされていない。
特開平4−334448号公報 特開平6−62944号公報 特開平6−64111号公報 特開2003−26143号公報
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を用いても、該バイオマス樹脂を含む層の加工性がよく積層体とすることができ、また紙カップの製造では、従来設備で、容易に製造できる紙カップの製造方法及び紙カップを提供することである。
上記の課題を解決するために、
請求項1の発明に係わる紙カップの製造方法は、胴部として紙基材の片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層を有する胴部材を用い、底部として紙基材の少なくとも片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層を有する底部材を用いた紙カップの製造方法において、前記胴部材の樹脂層を内側にして筒状とし、該胴部材の両側端部の1部を重ね合わせた胴貼部分の熱接着法が加熱バーによる加熱加圧方式であるように、したものである。
請求項2の発明に係わる紙カップは、請求項1に記載紙カップの製造方法で製造されてなるように、したものである。
請求項3の発明に係わる紙カップは、請求項2において、上記樹脂層のバイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50〜75:50〜25であるように、したものである。
請求項4の発明に係わる紙カップは、請求項2〜3のいずれかにおいて、上記バイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂であるように、したものである。
請求項5の発明に係わる紙カップは、請求項2〜4のいずれかにおいて、上記樹脂層が押出ラミネション法で紙基材へ積層されてなるように、したものである。
請求項1の本発明によれば、バイオマス樹脂を含む層の加工性がよく積層体とすることができ、また紙カップの製造では、従来設備で、容易に製造できる紙カップの製造方法が提供される。
請求項2〜4の本発明によれば、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を用いた紙カップが提供される。
請求項5の本発明によれば、請求項2〜4の効果に加えて、バイオマス樹脂を含む樹脂層の加工性がよく樹脂層の厚薄差が少なく、ロールツーロール方式で安定して、低コストで生産できる紙カップが提供される。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す紙カップの斜視図である。
図2は、図1のAA‘断面図である。
図3は、図1のBB‘断面図である。
本発明の紙カップの製造方法は、胴部11として紙基材21の片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層23を有する胴部材41を用い、底部13として紙基材21の少なくとも片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層23を有する底部材43を用いた紙カップ10の製造方法において、前記胴部材43の樹脂層23を内側にして筒状とし、両側端部の1部を重ね合わせた胴貼部分31の熱接着法が加熱バーによる加熱加圧方式とする。また、本発明の紙カップの製造方法で製造される本発明の紙カップ10は、好ましくは樹脂層23のバイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50〜75:50〜25で、また、バイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂であり、さらに、樹脂層23が押出ラミネション法で紙基材21へ積層するようにする。
(紙基材)紙基材21としては、具体的には、賦型性、耐屈曲性、剛性等を持たせるものであり、例えば、晒または未晒の紙、板紙、加工紙等の紙基材などがあるが、伸縮性があり紙カップ製造適性のよいカップ原紙が好ましい。また、該紙基材には各種の添加剤など含有していてもよい。紙基材としては、坪量約80〜600g/m2位のもの、好ましくは、坪量約100〜450g/m2位のものを使用することが望ましい。該紙基材は胴部材及び底部材に使用でき、胴部材と底部材の紙基材は同じでも異なって用いてもよい。胴部材は紙基材の片面に樹脂層を有し、底部材は紙基材の少なくとも片面に樹脂層があればよく、両面に樹脂層を有していてもよい。
(樹脂層)樹脂層23としてはバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂組成物からなり、バイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50〜75:50〜25である。また、樹脂層には、着色剤、顔料、体質顔料、充填剤、滑剤、可塑剤、界面活性剤、増量剤などの添加剤を加えてもよい。
(バイオマス樹脂)バイオマス樹脂としては、澱粉、ポリ乳酸系樹脂、微生物産生ポリエステル、脂肪族又は芳香族ポリエステルなどがある。バイオマス樹脂には生分解するもの、生分解しないものなどがあるが、いずれでもよく、好ましくは生分解性の樹脂であり、特に好ましくは生分解性や強度の点でポリ乳酸系樹脂である。
(ポリ乳酸系樹脂)ポリ乳酸系樹脂とは、モノマーの質量に換算して、乳酸成分を50重量%以上含めばよく、例えば、ポリ乳酸、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体、乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多塩基酸との共重合体、前記いずれかの組み合わせによる混合物などが例示できる。乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの混合物、又は、乳酸の環状2量体であるラクタイドなどがある。具体的には、三井化学社により製造されるポリ乳酸樹脂「レイシア」(商品名)が例示でき、その銘柄としては、例えば、H−100、H−400、H−440、H−360、H−280、100J、H−100E、M−151S Q04、M151S Q52などがある。
(合成樹脂)バイオマス樹脂に混合する合成樹脂としては限定されないが、ヒートシール性のあるポリオレフィン系樹脂、又はその変性体が好ましい。例えば、LDPE、L―LDPE、PP、PS、オレフィンと他のモノマーとの共重合体であるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、酸変性ポリオレフィン、アイオノマーが含まれるが、その中で、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、酸変性ポリオレフィン、アイオノマーのいずれか又はその組み合わせがより好ましい。それぞれの詳細について以下に記す。
(エチレンー不飽和カルボン酸共重合体)エチレン−不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)があり、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中の不飽和カルボン酸単位含有量としては、2〜25重量%、特に5〜20重量%が好ましい。
(エチレンー不飽和カルボン酸エステル共重合体)エチレン−不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)などがある。
(酸変性ポリオレフィン)酸変性ポリオレフィンとしてはポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などがある。
(アイオノマー)アイオノマーとしては、側鎖イオン基が存在するもの、両末端のカルボン酸基が金属イオンで中和したもの、主鎖に陽イオンに陰イオンが結合したものなどがあるが、特に限定されない。例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、プロピレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、プロピレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、ブチレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−ビニルスルホン酸共重合体アイオノマーなどが例示でき、1種のみ又は必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。アイオノマー中の不飽和カルボン酸単位含有量としては、2〜25重量%、特に5〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは、エチレン−メタアクリル酸共重合体アイオノマーである。
(配合比)樹脂層23の配合割合としては、質量基準でバイオマス樹脂:他の樹脂=10〜90:90〜10程度が好ましく、さらに好ましくは50〜75:50〜25である。この範囲未満では環境負荷の低減、省資源、循環型社会の形成に効果が少なく、この範囲を越えると積層体への加工時に加工適性が悪く均一な膜が得られず、また、紙への接着力も弱い。樹脂層23の、JIS K−7210に準拠して、190℃、2160g荷重の条件において測定したメルトフローレート(MFR)としては、0.5〜20g/10分程度、好ましくは1〜15g/10分、さらに好ましくは4〜6g/10分である。この範囲未満ではEC加工時に加工適性が悪く、Tダイスから出た樹脂の流れが悪く、膜切れもしやすく、この範囲を越えるとTダイスから出た樹脂の流れが早過ぎて乱れたり、厚薄ムラが大きく、均一な膜が得られない。
(配合方法)バイオマス樹脂と合成樹脂(混合樹脂ともいう)とを配合し混練して樹脂組成物とする方法としては、特に限定されないが、例えば、1軸或いは多軸の押出し機、ミキサーなどの公知の方法でよく、溶融混錬が好ましい。
(EC)混練された樹脂組成物を押出ラミネション法で樹脂層とし、紙基材へ積層する。押出ラミネーション法は、所謂、当業者がエクストルージョンコーティング(EC)と呼ぶ方法である。まず、押出機で、押出樹脂を加熱し溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押し出す。該溶融樹脂を紙基材へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、押出樹脂層の形成と、基材フィルムへの接着と積層が同時に行われ、またロールツーロールの巻取状で加工ができ極めて生産効率がよい方法である。しかしながら、バイオマス樹脂、特にポリ乳酸系樹脂は溶融時の張力が低く、押出ラミネーション法ではTダイスから出た樹脂のネックインが大きく、特に両端部が厚くなり巻取りにくくなり、さらに樹脂層の厚薄ムラが大きく、また膜切れもしやすいので薄膜の樹脂層は成膜し難くかった。EC方式を用いて、押出機でバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる押出樹脂を加熱し溶融させTダイスからカーテン状に押し出す際の、該溶融樹脂の温度は180〜300℃程度、好ましくは210〜280℃、さらに好ましくは230〜270℃程度である。この範囲未満ではTダイスから出た樹脂のネックインが大きく、特に両端部が厚くなり巻取りにくくなり、さらに樹脂層の厚薄ムラが大きく、また膜切れもしやすい。また、この範囲を超えては樹脂の分解温度に近づくので、Tダイスから出た樹脂の流れが乱れたり、着色したりする。
本発明では、押出樹脂として、前述のバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層組成物を用いることで、幅方向の厚薄ムラが少なく、既存の従来設備で、ロールツーロールの巻取状で加工ができ極めて生産効率がよく容易に、大量生産ができる。押出ラミネーションでのバイオマス樹脂を含む樹脂層の厚さは、5〜200μm程度、さらに好ましくは20〜100μmである。この範囲未満ではシール強度が不足し液漏れなどが発生しやすく、この範囲を越えると性能が過剰となって無駄である。
(AC)なお、押出樹脂を、紙基材へ強固に接着させるために、通常、アンカーコート剤(AC剤)と呼ぶ接着促進剤などを塗布してもよく、また、アンカーコート剤の代わりに、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、オゾンガス処理などの易接着処理を施しても良い。アンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネートなどの有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、ポリウレタン系アンカーコート剤などがある。該アンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング法で塗布し乾燥すれば良い。該アンカーコート剤の厚さは、通常、0.01〜10.0μm程度、好ましくは、0.1〜5.0μmである。
このように押出ラミネション法で積層した、紙基材21の少なくとも片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層23を有する積層体は、使用後焼却されても炭酸ガスを経て植物へ、また、コンポスト処理などを経て再び植物へ、該植物からバイオマス樹脂へと循環型社会へ近づき、炭酸ガスの排出を抑制し地球温暖化防止、農業の活性化などにも効果的である。また、石油資源を使用しないか、又は少ない使用量で済むので省資源でもある。
(PEI、PLA)紙基材21にはポリエチレンイミン(PEI)やポリ乳酸系樹脂を含有させてもよく、含有方法としては、紙基材へ抄き込んだり、塗布すればよく、好ましくはポリエチレンイミン(PEI)である。紙基材面へ塗布する方法としては、水、アルコール又は/及び有機溶媒などの溶液として、紙基材への含浸、スタンプコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティングなどで塗布し乾燥させればよい。含有は熱接着する部分が必須で、もちろん全面でもよい。このようにすることで、円錐台形に打ち抜いたブランク(胴部材)を樹脂層を内側に筒状に巻いて、その側端部を部分的に重ね合せてシールして筒状の胴を形成する際に、バイオマス樹脂を含む樹脂層面と紙基材面との異質材料のシールでも接着性が向上し、より低い条件でも充分な接着性が得られるようになる。ポリエチレンイミン(PEI)の塗布量としては、通常0.001g/m2〜5g/m2程度、好ましくは0.01g/m2〜1g/m2である。この範囲未満では接着性向上の効果が低く、この範囲を超えても、効果が飽和して無駄である。
(紙カップ製造)紙カップ10の製造方法としては公知の製造方法であり、(1)胴部材41を準備し、(2)底部材43を準備し、(3)胴部材41を円錐台形に打ち抜いて胴部ブランクとし、(4)底部材43を円形に打ち抜いて底材ブランクとし、(5)胴部ブランク板を樹脂層23を内側に筒状に巻いて、その側端部を部分的に重ね合せて胴貼部分31とし、該胴貼部分31を加熱処理を行い押圧して筒状の胴部11とし、(6)該筒状の胴部11の底端部へ、底板ブランクの外周を筒状に起立成形させて起立成形部33とした底部材を挿入し、底部材が挿入された胴部の底端部とを、その接合する部分へ熱風などを吹き付けて、その接合する部分に存在する樹脂層23を加熱溶融し、次いで、カール用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立形成部33にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部33との胴貼部分を内径側からローレットによりローレットがけすることにより、カップ胴部11と底部13とを密接着させて接合部をシールし、(7)胴部11の上端部を外側にカールしてカール15とする。このような紙カップの成型方法では使用材料に自ら制約があって使用材料が特定されてしまうのが現状である。
(ホットエアー)シール方式としては、通常ホットエアー方式が用いられる。一般的な紙カップの樹脂層はワックス、ポリエチレン又はポリプロピレンであり、この場合には極めて効率がよい。しかしながら、バイオマス樹脂含む樹脂層を用いた場合には、該樹脂層と紙基材との接着性が充分ではなく、液のにじみ、液漏れが発生する恐れがあった。
(加熱バー)特許文献2の先行技術による低温のホットエアーでは熱容量が少ないので狭い条件でしか充分なシールができず、またシールの接着状況も安定しない。そこで、バイオマス樹脂含む樹脂層23と紙基材21との接着性を向上させるために、ホットエアー方式ではなく、胴部材を筒状に巻いて、両側端部を部分的に重ね合せて胴貼部分31とし、該胴貼部分31を加熱バーによる加熱加圧方式とすることで、樹脂層にバイオマス樹脂を含んでいても良好にシールできることを見出した。即ち、バイオマス樹脂を含んでいる樹脂層でも、前述の押出ラミネーションでの良加工性と胴部の良シール性を兼ね備えさせることができる。また、筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部33とのシールは樹脂層同士の部分があるので方法は問わない。
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
(実施例1)紙カップ10の胴部材としては、紙基材21として坪量255g/m2のカップ原紙を用いて、その片面へインラインでコロナ処理を施しながら、次の樹脂層組成物を260℃で押出ラミネーション法で、厚さ30μmの樹脂層23を形成して、紙基材21/樹脂層23からなる積層体を用いた。
樹脂層組成物としては、レイシアH−100(三井化学社製、ポリ乳酸商品名)60質量部に、ハイミラン1652(三井ポリケミカル社製、アイオノマー商品名)40質量部を加えて加熱混練したもの(MFR3.5g/10分)を用いた。
紙カップの底部材としては、紙基材として坪量255g/m2のカップ原紙を用いて、その片面へインラインでコロナ処理を施しながら、前記樹脂層組成物を260℃で押出ラミネーション法で厚さ30μmの樹脂層を形成し、さらに、反対面へもインラインでコロナ処理を施しながら、前記樹脂層組成物を245℃で押出ラミネーション法で厚さ30μmの樹脂層を形成して、樹脂層23/紙基材21/樹脂層23からなる両面樹脂層の積層体を用いた。
上記の胴部材を円錐台形に打ち抜きブランク板とし、該ブランク板を樹脂層を内側に筒状に巻いて、その側端部を部分的に重ね合せて胴貼部分31とし、該胴貼部分を工具鋼製の所定の温度の加熱バーで2回加圧して筒状の胴を形成した。
該筒状の胴部の底端部へ、底板ブランクの外周を筒状に起立成形させた底部材を挿入し、底部が挿入された胴の底端部とを、その接合する部分へ熱風などを吹き付けて、その接合する部分に存在する樹脂層を加熱溶融し、次いで、カール用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立形成部にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部との胴貼部分を内径側からローレットによりローレットがけすることにより、カップ胴部と底部とを密接着させて接合部をシールした。
胴部の上端部を外側にカールさせて、容量500mlの実施例1の紙カップ10を得た。
(実施例2)樹脂層組成物としては、レイシアH−100(三井化学社製、ポリ乳酸商品名)75質量部に、ハイミラン1652(三井ポリケミカル社製、アイオノマー商品名)25質量部を加えて加熱混練したもの(MFR5.0g/10分)を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2の紙カップ10を得た。
(実施例3)樹脂層組成物としては、レイシアH−100(三井化学社製、ポリ乳酸商品名)80質量部に、ハイミラン1652(三井ポリケミカル社製、アイオノマー商品名)20質量部を加えて加熱混練したもの(MFR6.0g/10分)を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例3の紙カップ10を得た。
(実施例4)樹脂層組成物としては、レイシアH−100(三井化学社製、ポリ乳酸商品名)30質量部に、LDPE(三井化学社製、ミラソン16P)70質量部を加えて加熱混練したもの(MFR5.2g/10分)を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例4の紙カップ10を得た。
(評価方法)実施例の胴部材を用いて、各々の胴部材の紙基材面と、胴部材の樹脂層面とを重ね合わせて、加熱バーによる加熱加圧方式、及び/又はホットエアー方式でシールした後に剥離する試験方法で、シール強度、及び接着状況を目視で観察した。接着状況は胴部材同士を剥離した際に、シール部の80〜100%紙剥けするものを「◎印」で、シール部の50〜79%紙剥けするものを「○印」で、49%以下紙剥けするものを「△印」で、紙剥けしないものを「×印」で示す。「◎印」及び「○印」は合格とし、「△印」及び「×印」は不合格とした。なお、紙剥け現象は紙面と樹脂層面との接着がよいときに、最も弱い部分である紙基材が凝集破壊して起きる現象で、良接着の指標である。
(試験方法)加熱バーによる加熱加圧方式の条件は、工具鋼製の加熱バーを所定の温度(230、250、270℃)に加熱して、500Nの荷重下で0.3秒の加圧を2回繰返して行った。ホットエアー方式の条件は、所定温度(200、500、600℃)のホットエアーを圧力150kPaで0.3秒の吹きつけを2回繰返して行った後に、加熱していない工具鋼製のバーを500Nの荷重下で0.3秒の加圧を1回行った。その結果を表1に示す。
Figure 0004940971
(評価結果)加熱バーによる加熱加圧方式の結果は、実施例1〜4が○印で合格であった。しかしながら、ホットエアー方式の結果は、実施例1〜4でも200℃では×印、500及び600℃でも△印と不合格であった。なお、実施例1〜5の紙カップ10へ、中性界面活性剤0.3%、赤インキ0.5%(漏れを見やすくするため)をを含む水を注ぎ入れて、蓋を嵌合して、常温で10分間放置したが漏れもなく、紙カップも着色せず、変形などの異常は認められなかった。また、内容物を廃棄した紙カップの胴部の胴貼部を破壊したところ、すべてがシール部分の50%以上が紙剥け状態と良好であった。
本発明の1実施例を示す紙カップの斜視図である。 図1のAA‘断面図である。 図1のBB‘断面図である。
符号の説明
10:紙カップ
11:胴部
13:底部
15:カール
21:紙基材
23:樹脂層
31:胴貼部分
33:起立成形部
41:胴部材
43:底部材

Claims (5)

  1. 胴部として紙基材の片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層を有する胴部材を用い、底部として紙基材の少なくとも片面にバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂層を有する底部材を用いた紙カップの製造方法において、
    前記胴部材の樹脂層を内側にして筒状とし、該胴部材の両側端部の1部を重ね合わせた胴貼部分の熱接着法が加熱バーによる加熱加圧方式であり、
    前記樹脂層のバイオマス樹脂と合成樹脂との配合割合が質量基準で50〜75:50〜25であり、
    前記合成樹脂が、オレフィン系樹脂、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、酸変性ポリオレフィン、アイオノマーのいずれか又はその組み合わせであることを特徴とする紙カップの製造方法。
  2. 請求項1に記載紙カップの製造方法で製造されてなることを特徴とする紙カップ。
  3. 前記バイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂であることを特徴とする請求項に記載の紙カップ。
  4. 前記樹脂層が押出ラミネション法で紙基材へ積層されてなることを特徴とする請求項2または3に記載の紙カップ。
  5. 前記紙基材が、ポリエチレンイミンまたはポリ乳酸系樹脂を含有する、請求項2〜4のいずれかに記載の紙カップ。
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