JP2008189199A - 車両の運転支援装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】現在の車両挙動のみならず、今後予想される車両挙動をも考慮して、直進状態からカーブ走行に至るまで、走行路の過渡状態における走行状況においても、車両の加減速度を適切に抑制し、先行車追従に際して円滑で違和感の無い快適な制御を可能とする。
【解決手段】追従走行制御の追従加減速制御において、自車速V0と自車両1に対する先行車の相対位置とに基づき自車両1が先行車に追従するのに必要な目標ヨーレートγtを演算する。また、目標ヨーレートγtに応じて第1の制限値Lmγ1を演算し、目標ヨーレートγtの単位時間あたりの変化量(γt−γtold)/Δtに応じて第2の制限値Lmγ2を演算し、目標ヨーレートγtと実ヨーレートγrとの偏差Δγ(=γt−γr)に応じて第3の制限値Lmγ3を演算し、これら第1,第2,第3の制限値の絶対値の最小のものを制限値Lmに設定して、目標加減速度aを制限値Lmで制限する。
【選択図】図4

Description

本発明は、先行車に追従して加減速制御を行う車両の運転支援装置に関する。
近年、車両においては、カメラやレーザレーダ等を用いた前方認識装置により先行車を認識し、この認識した先行車に追従走行する様々な車両運転支援装置が開発され、実用化されている。
例えば、特開2000−355231号広報には、自車速を、車間距離と自車速に基づいて算出した目標車速に一致させる先行車追従制御装置において、自車速が低車速領域であるときに大きな値となり、高車速領域であるときに小さな値となるオフセット量を、横加速度センサで検出した横加速度から減算して横加速度補正値を算出する。そして、この横加速度補正値を基にこれが小さいときに小さい値となり、大きいときに大きい値となる車速減算値を算出し、この車速減算値に基づいて目標車速を抑制することで、コーナー走行時の減速制御を最適に行って運転者に与える違和感を解消する技術が開示されている。
特開2000−355231号広報
しかしながら、上述の特許文献1に開示される目標車速を抑制する技術では、現在の車両挙動を基に目標車速の抑制が行われるため、実際に車両挙動が発生してからの加減速の抑制となり、実際の感覚に対して遅れが生じ、追従する先行車の動きに対してずれた車両挙動となって、ドライバが不自然な感覚を抱くという問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、現在の車両挙動のみならず、今後予想される車両挙動をも考慮して、直進状態からカーブ走行に至るまで、たとえ、これら走行路の過渡状態における走行状況においても、車両の加減速度を適切に抑制し、先行車追従に際して円滑で違和感の無い快適な制御が行える車両の運転支援装置を提供することを目的とする。
本発明は、自車両の走行情報を検出する自車走行情報検出手段と、先行車を認識し、この先行車情報を検出する先行車情報検出手段と、上記自車両の走行情報と上記先行車情報とに基づき上記自車両が上記先行車に追従走行を実行するのに必要な目標加減速度を演算する目標加減速度演算手段と、上記自車両の走行情報と上記先行車情報とに基づき上記自車両が上記先行車に追従するのに必要な目標パラメータを推定し、該目標パラメータに応じて演算した上記目標加減速度を制限する制限値と、上記目標パラメータの単位時間あたりの変化量に応じて演算した上記目標加減速度を制限する制限値と、上記目標パラメータと現在の実際のパラメータの値との差分に応じて演算した上記目標加減速度を制限する制限値の少なくとも一つの制限値により、上記目標加減速度を制限する目標加減速度制限手段とを備えたことを特徴としている。
本発明による車両の運転支援装置によれば、現在の車両挙動のみならず、今後予想される車両挙動をも考慮して、直進状態からカーブ走行に至るまで、たとえ、これら走行路の過渡状態における走行状況においても、車両の加減速度を適切に抑制し、先行車追従に際して円滑で違和感の無い快適な制御が可能となる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図10は本発明の実施の形態を示し、図1は車両に搭載した運転支援装置の概略構成図、図2は追従加減速制御プログラムのフローチャート、図3は目標加減速度a演算処理ルーチンのフローチャート、図4は目標加減速度a制限処理ルーチンのフローチャート、図5は先行車加減速度−先行車速の目標加減速度演算式の領域マップの説明図、図6は目標加減速度演算式において用いるパラメータの説明図、図7は自車両と先行車の座標位置と関係を示す説明図、図8は制限値の一例を示す説明図、図9は直進路からカーブ走行に移行する一例の説明図、図10は図9に示す走行路を走行する際に設定される制限値の一例を示すタイムチャートである。
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)で、この車両1には、運転支援装置の一例としてのクルーズコントロールシステム(ACC(Adaptive Cruise Control)システム)2が搭載されている。
このACCシステム2は、ステレオカメラ3、ステレオ画像認識装置4、制御ユニット5等を有して主要に構成されている。そして、このACCシステム2では、基本的に、先行車が存在しない定速走行制御状態のときにはドライバが設定した車速を保持した状態で走行し、先行車が存在する場合には、追従加減速制御と追従操舵制御の自動追従制御を実行するものである。
また、自車両1には、自車走行情報検出手段としての自車速V0を検出する車速センサ6、ステアリング角Srを検出するハンドル角センサ7、及び、ヨーレートγrを検出するヨーレートセンサ8が設けられており、自車速V0はステレオ画像認識装置4と制御ユニット5に入力され、ステアリング角Srとヨーレートγrは制御ユニット5に入力される。更に、制御ユニット5には図示しないブレーキスイッチからのブレーキペダルのON−OFF信号等が入力される。
また、ステアリングコラムの側部等に設けられた定速走行操作レバーに連結される複数のスイッチ類で構成された定速走行スイッチ9からの各種スイッチによる信号が制御ユニット5に入力される。この定速走行スイッチ9は、定速走行時の目標車速を設定する車速セットスイッチ、主に目標車速を下降側へ変更設定するコーストスイッチ、主に目標車速を上昇側へ変更設定するリジュームスイッチ等で構成されている。更に、この定速走行操作レバーの近傍には、定速走行制御及び自動追従制御のON/OFFを行うメインスイッチ(図示せず)が配設されている。
ステレオカメラ3は、ステレオ光学系として例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた1組の(左右の)CCDカメラで構成される。これら左右のCCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔をもって取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、画像データをステレオ画像認識装置4に出力する。
ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3からの画像データ、車速センサ6からの自車速V0が入力され、ステレオカメラ3からの画像データに基づき自車両1前方の立体物データと白線データの前方情報を検出し、自車両1の進行路(自車進行路)を推定する。そして、自車両1前方の先行車を抽出して、先行車位置(例えば、図7に示すように、自車両1を原点とするX−Z座標系上の座標位置)、先行車距離(車間距離)L、先行車速((車間距離Lの変化量)+(自車速V0))Vf、先行車加減速度(先行車速Vfの微分値)af、先行車以外の静止物位置、白線座標、白線認識距離、自車進行路座標等の各データを制御ユニット5に出力する。
ここで、ステレオ画像認識装置4における、ステレオカメラ3からの画像データの処理は、例えば以下のように行われる。まず、ステレオカメラ3のCCDカメラで撮像した自車両1の進行方向の環境の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって距離情報を求める処理を行って、三次元の距離分布を表す距離画像を生成する。そして、このデータを基に、周知のグルーピング処理や、予め記憶しておいた三次元的な道路形状データ、立体物データ等と比較し、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両等の立体物データを抽出する。
立体物データでは、立体物までの距離と、この距離の時間的変化(自車両1に対する相対速度)が求められ、特に自車進行路上にある最も近い車両で、自車両1と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行するものが先行車として抽出される。尚、先行車の中で速度Vfが略0km/hである車両は、停止した先行車として認識される。また、立体物情報、及び、先行車情報は、後面の左端点と右端点の位置情報が記憶され、更に、この後面の左端点と右端点との略中央が立体物又は先行車の重心位置として記憶される。このように、ステレオカメラ3及びステレオ画像認識装置4は、先行車情報検出手段としての機能を有して設けられている。
制御ユニット5は、ドライバの操作入力によって設定される走行速度を維持するよう定速走行制御を行う定速走行制御の機能、及び、自動追従制御(追従加減速制御、及び、追従操舵制御)の機能を実現するもので、ドライバが図示しないメインスイッチをONし、定速走行操作レバーにより、希望する車速をセットすると、定速走行スイッチ9からの信号が制御ユニット5に入力される。そして、車速センサ6で検出した車速が、ドライバのセットした設定車速に収束するように、スロットル弁制御装置10に信号出力してスロットル弁11の開度をフィードバック制御し、自車両1を自動的に定速状態で走行させ、或いは、自動ブレーキ制御装置12に減速信号を出力して自動ブレーキを作動させる。
また、制御ユニット5は、定速走行制御を行っている際に、ステレオ画像認識装置4にて先行車を認識した場合には、後述する自動追従制御へ自動的に切り換えられる。尚、定速走行制御の機能、及び、自動追従制御の機能は、ドライバがブレーキを踏んだ場合やメインスイッチがOFFされた場合には、解除されるようになっている。
車両の走行制御が追従走行制御へ移行すると、本実施の形態の追従加減速制御の例では、詳細は後述するが、予め設定した2つの領域からなる先行車加減速度af−先行車速Vfの目標加減速度演算式の領域マップを参照し、現在の先行車の加減速度afと速度Vfが属する領域の目標加減速度演算式を選択し、この選択した目標加減速度演算式により目標加減速度aを演算する。
更に、自車速V0と自車両1に対する先行車の相対位置とに基づき自車両1が先行車に追従するのに必要な目標パラメータとしての目標ヨーレートγtを演算する。
また、目標ヨーレートγtに応じて制限値(第1の制限値Lmγ1)を演算し、目標ヨーレートγtの単位時間あたりの変化量(γt−γtold)/Δtに応じて制限値(第2の制限値Lmγ2)を演算し、目標ヨーレートγtと現在の実際のヨーレートγrとの偏差Δγ(=γt−γr)に応じて制限値(第3の制限値Lmγ3)を演算し、これら第1,第2,第3の制限値の絶対値の最小のものを制限値Lmに設定する。
そして、目標加減速度aを制限値Lmで制限し、自動ブレーキ制御装置12に信号出力して自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)を行わせ、或いは、スロットル弁制御装置10に信号出力して自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行う。このように、本実施の形態において、制御ユニット5は、目標加減速度演算手段、及び、目標加減速度制限手段としての機能を有して構成される。
また、制御ユニット5は、車両の走行制御が追従走行制御へ移行すると、本実施の形態の追従操舵制御の例では、自車速V0が、例えば35km/h未満の領域で実行され、この車速領域内においての予め設定する高速側の車速領域の場合には、自車速V0と自車両1に対する先行車の相対位置とに基づき自車両1が先行車に追従するのに必要な目標ヨーレートγtを演算し、この目標ヨーレートγtに基づき先行車に追従するパワーステアリング指示電流値icを演算して電動パワーステアリング制御装置13に出力する。一方、この車速領域内においての予め設定する低速側の車速領域の場合には、自車両1に対する先行車の相対位置に基づき自車両1が先行車に追従するのに必要な目標ステアリング角Stを演算し、この目標ステアリング角Stに基づき先行車に追従するパワーステアリング指示電流値icを演算して電動パワーステアリング制御装置13に出力する。
尚、符号14は、ACCシステム2の各作動状態を表示する液晶モニタであり、例えば、車載のナビゲーションシステムと共用される。
次に、追従走行制御の追従加減速制御について、図2のフローチャートで説明する。この追従加減速制御プログラムは、ACCシステム2のメインスイッチがONされて、先行車が存在する追従走行制御に移行すると所定時間毎に実行されるものであり、まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で必要なパラメータの読み込みが行われる。次いで、S102に進み、目標加減速度aの演算処理が実行され、S103に進んで、S102で演算した目標加減速度aの制限処理を実行し、S104に進んで、S103にて必要に応じて制限処理された目標加減速度aを、自動ブレーキ制御装置12、或いは、スロットル弁制御装置10に信号出力してプログラムを抜ける。
ここでは、まず、S102にて実行される目標加減速度aの演算処理について、図3のフローチャートで説明する。
まず、S201では、演算式選択フラグFaを参照する。この演算式選択フラグFaは、前回、先行車の走行状態(加減速度af、車速Vf)によって後述する第1の演算式が選択されている場合には「1」がセットされ、後述する第2の演算式が選択されている場合には「2」がセットされるフラグである。
ここで、本実施の形態において、予め設定した2つの領域からなる先行車加減速度af−先行車速Vfの目標加減速度演算式の領域マップと、それぞれの領域に設定される演算式(第1の演算式及び第2の演算式)について説明する。
先行車加減速度af−先行車速Vfの目標加減速度演算式の領域とは、例えば、図5(a)に示すように、先行車の加減速度の絶対値|af|と速度の絶対値|Vf|との関係において、Vf=1.0・afを境界線Tthとし、上側の領域(先行車の車速の絶対値|Vf|が高いが加減速度の絶対値|af|が小さい領域)が第1の演算式を選択する第1の領域として設定され、下側の領域(先行車の車速の絶対値|Vf|が低いが加減速度の絶対値|af|が高い領域)が第2の演算式を選択する第2の領域として予め設定されている。尚、本実施の形態においては、加減速度の符号は、減速方向を正、加速方向を負とする。
そして、第1の演算式とは、先行車が走行を継続することを前提に自車両1が予め設定した車間距離を先行車に対し維持して追従走行するための演算式であり、自車両1と先行車とが、図6に示すような関係、すなわち、現在、自車速V0、自車加減速度a0、先行車速Vf、先行車加減速度af、車間距離Lである状態が、t秒後に、自車両1が距離Ls前進し、先行車が先行車予測位置まで距離Lf前進し、自車両1との車間距離が目標車間距離Dtgt(マップ或いは演算により設定される距離)となるとすると、自車両1の目標加減速度aは、以下の(1)式より求められる。
a=af+((V0−Vf)/(L−Dtgt)) …(1)
従って、この(1)式が、第1の領域における第1の演算式として定められている。
同様に、第2の演算式とは、先行車が停止することを前提に自車両1が予め設定する車間距離で先行車に対して追従停止するための演算式であり、図6に示すような関係、すなわち、現在、自車速V0、自車加減速度a0、先行車速Vf、先行車加減速度af、車間距離Lである状態が、t秒後に、自車両1が距離Ls前進し、先行車が先行車予測位置まで距離Lf前進し、自車両1との車間距離が目標停止車間距離Dstop(一定値:例えば5m)となって停車すると仮定すると、以下の(2)式が成立する。
L+Lf=Ls+Dstop …(2)
ここで、
Lf=Vf/(2・af) …(3)
Ls=V0/(2・a0) …(4)
であるから、これら(3)式、(4)式を、上述の(2)式に代入し、a0について解き、このa0を自車両1の目標加減速度aとすると、以下の(5)式を得る。
a=(af・V0)/(Vf+2・af・(L−Dstop)) …(5)
従って、この(5)式が、第2の領域における第2の演算式として定められている。尚、上述の全ての加減速度は、減速方向の符号を正とする。
尚、上述の2つの領域からなる先行車加減速度af−先行車速Vfの目標加減速度演算式の領域マップは、これに限るものではなく、複数の境界により区分されるようなものであっても良い。
図3のフローチャートのS201の判定の結果、演算式選択フラグFaが「1」であって、前回、第1の演算式が選択されている場合には、S202に進み、第1の領域から第2の領域に遷移するのにヒステリシス特性を持たせるため第1の領域を広げるようにS1だけ境界Tthを下方に移動させて補正設定する。例えば、図5(a)のように補正する。
逆に、S201の判定の結果、演算式選択フラグFaが「2」であって、前回、第2の演算式が選択されている場合には、S203に進み、第2の領域から第1の領域に遷移するのにヒステリシス特性を持たせるため第2の領域を広げるようにS2だけ境界Tthを上方に移動させて補正設定する。例えば、図5(b)のように補正する。ここで、ヒステリシスを設ける幅は、S1>S2であり、第1の演算式から第2の演算式への遷移の方が、第2の演算式から第1の演算式への遷移より、し難い特性に設定されている。
S202、或いは、S203でヒステリシスを考慮した領域補正を行った後は、S204に進み、現在の先行車の走行状態(先行車加減速度af−先行車速Vf)が第1の領域内か否か判定する。
このS204の判定の結果、現在の先行車の走行状態(先行車加減速度af−先行車速Vf)が第1の領域内の場合は、S205に進み、第1の演算式(上述の(1)式)により目標加減速度aを演算し、S206に進んで、演算式選択フラグFaを「1」とし、ルーチンを抜ける。
また、S204の判定の結果、現在の先行車の走行状態(先行車加減速度af−先行車速Vf)が第2の領域内の場合は、S207に進み、第2の演算式(上述の(5)式)により目標加減速度aを演算し、S208に進んで、演算式選択フラグFaを「2」とし、ルーチンを抜ける。
このように、本発明の実施の形態によれば、先行車の走行状態に応じて追従走行するための式を切り替えて追従走行制御(追従加減速制御)させるようになっているので、制御が連続的に行われ、円滑な制御によりドライバが自然な感覚で利用することが可能となる。また、領域の設定も、境界線がヒステリシスを考慮して設定されるため、制御がハンチングすることもなく、安定した制御が行えるようになっている。
次に、S103にて実行される目標加減速度aの制限処理について、図4のフローチャートで説明する。
まず、S301では、自車両1が先行車に到達するまでの予測時間(接触予測時間)TTCを、例えば、以下の(6)式により演算する。
TTC=L/(V0−Vf) …(6)
その後、S302に進み、S301で演算した接触予測時間TTCが、予め設定しておいた時間TT1(例えば5秒)より短いか否か判定し、TT1より短い場合(TTC<TT1の場合)は、安全性を優先して、目標加減速度aの制限は実行せず、そのままルーチンを抜ける。
逆に、接触予測時間TTCが、予め設定しておいた時間TT1以上の場合(TTC≧TT1の場合)は、S303に進み、以下の(7)式により、現在の自車両1の位置と先行車の位置を基に目標走行半径Rtを演算する。すなわち、図7に示す、自車両1を原点Oとする座標系において、先行車の重心位置の座標を(xt,zt)とすると、
Rt=(xt+zt)/(2・xt) …(7)
次いで、S304へと進み、以下の(8)式により目標ヨーレートγtを演算する。
γt=V0/Rt …(8)
S304で目標ヨーレートγtを演算した後は、S305へと進み、以下の(9)式により、目標ヨーレートγtに基づいて第1の制限値Lmγ1を演算する。
|Lmγ1|=Lmc1−K1・|γt| …(9)
ここで、Lmγ1を絶対値としたのは、加速方向、減速方向の両方において本(9)式を適用させるためである。また、K1は定数、Lmc1は定数(例えば、0.5・g)である。そして、(9)式で演算した第1の制限値|Lmγ1|が、|Lmγ1|>Lmc2(例えば、0.3・g)の場合は、|Lmγ1|はLmc2で制限(|Lmγ1|=Lmc2)する。この制限値Lmγ1の特性は図8に示す。尚、本実施の形態では、加速方向と減速方向の制限値Lmγ1を同じ特性としているが、それぞれ異なった特性としても良い。
次に、S306に進み、目標ヨーレートγtの単位時間あたりの変化量(γt−γtold)/Δtを演算する。ここで、Δtは単位時間(例えば、前回から今回までの時間)であり、γtoldは単位時間Δt前(例えば、前回)の目標ヨーレートである。
S306で目標ヨーレートγtの単位時間あたりの変化量(γt−γtold)/Δtを演算した後は、S307へと進み、以下の(10)式により、目標ヨーレートγtの単位時間あたりの変化量(γt−γtold)/Δtに基づいて第2の制限値Lmγ2を演算する。
|Lmγ2|=Lmc3−K2・|(γt−γtold)/Δt| …(10)
ここで、Lmγ2を絶対値としたのは、加速方向、減速方向の両方において本(10)式を適用させるためである。また、K2は定数、Lmc3は定数(例えば、0.5・g)である。そして、(10)式で演算した第2の制限値|Lmγ2|が、|Lmγ2|>Lmc4(例えば、0.3・g)の場合は、|Lmγ2|はLmc4で制限(|Lmγ2|=Lmc4)する。この第2の制限値Lmγ2の特性は、図8のLmγ1の特性図において、γtを(γt−γtold)/Δtに、Lmγ1をLmγ2に、Lmc1をLmc3に、Lmc2をLmc4に読み替えることで示される。尚、本実施の形態では、加速方向と減速方向の第2の制限値Lmγ2を同じ特性としているが、それぞれ異なった特性としても良い。
次に、S308に進み、目標ヨーレートγtと現在の実際のヨーレートγrとの偏差(ヨーレート偏差)Δγ(=γt−γr)を演算する。
次いで、S309に進み、以下の(11)式により、ヨーレート偏差Δγに基づいて第3の制限値Lmγ3を演算する。
|Lmγ3|=Lmc5−K3・|Δγ| …(11)
ここで、Lmγ3を絶対値としたのは、加速方向、減速方向の両方において本(11)式を適用させるためである。また、K3は定数、Lmc5は定数(例えば、0.5・g)である。そして、(11)式で演算した第3の制限値|Lmγ3|が、|Lmγ3|>Lmc6(例えば、0.3・g)の場合は、|Lmγ3|はLmc6で制限(|Lmγ3|=Lmc6)する。この第3の制限値Lmγ3の特性は、図8のLmγ1の特性図において、γtをΔγに、Lmγ1をLmγ3に、Lmc1をLmc5に、Lmc2をLmc6に読み替えることで示される。尚、本実施の形態では、加速方向と減速方向の第3の制限値Lmγ3を同じ特性としているが、それぞれ異なった特性としても良い。
次いで、S310に進み、第1,第2,第3の制限値の絶対値の最小のものを制限値Lmに設定し、S311に進んで、S102で演算した目標加減速度aを制限値Lmで制限、すなわち、目標加減速度の絶対値|a|が制限値の絶対値|Lm|以上となる場合には、目標加減速度の絶対値|a|を制限値の絶対値|Lm|として制限し、ルーチンを抜ける。
すなわち、例えば、図9に示すような、直進路からカーブ走行に移行する場合には、目標ヨーレートγtは、図10(a)に示すように、先行車がカーブに差し掛かった状況では略0であり、このときに演算される第1の制限値の絶対値|Lmγ1|は、大きな値をとる。また、図10(c)に示すように、ヨーレート偏差Δγも、先行車がカーブに差し掛かった状況では、小さいままであり、やはり、第3の制限値の絶対値|Lmγ3|は、大きな値をとる。このような状況では、図10(b)に示すように、目標ヨーレートγtの単位時間あたりの変化量の絶対値|(γt−γtold)/Δt|が先行車の挙動に応じて最も大きく変化して、第2の制限値の絶対値|Lmγ2|を小さくすることができる。そして、第1,第2,第3の制限値の絶対値の最小のものを制限値Lmに設定し、第2の制限値の絶対値|Lmγ2|を制限値Lmとすることにより(図10(c)参照)、直進路からカーブ走行に移行する際の追従制御をスムーズなものとし、違和感の無い快適な制御が行えるようになっている。更に、上述の直進路からカーブ走行に移行する場合以外の、例えば、複数のカーブが連続する場合においても、同様に、第1,第2,第3の制限値の絶対値の最小のものを制限値Lmに設定し、この制限値Lmで目標加減速度の絶対値aを制限することにより、直進状態からカーブ走行に至るまで、たとえ、これら走行路の過渡状態における走行状況においても、車両の加減速度を適切に抑制し、先行車追従に際して円滑で違和感の無い快適な制御が行えるようになっている。
また、第1,第2,第3の制限値を演算する際に用いる目標ヨーレートγtは、自車速V0と自車両1に対する先行車の相対位置とに基づき自車両1が先行車に追従するのに必要な値として演算されるものであるため、現在の車両挙動のみならず、今後予想される車両挙動をも考慮して車両の加減速度を適切に抑制されるので、先行車追従に際して円滑で違和感の無い快適な制御が可能となる。
更に、本実施の形態における制限値Lmの演算は、(9)式、(10)式、(11)式のように単純な一次関数により演算されるので、複雑なアルゴリズムを必要とせず、高速に設定でき、レスポンスに優れた制御が可能となる。
尚、本実施の形態では、第1,第2,第3の3つの制限値を用いて制限値Lmを設定するようにしているか、車両によっては、第1,第2,第3の何れか一つの制限値のみ用いて制限するようにしても良く、或いは、第1,第2,第3の何れか2つの制限値を用いて制限値Lmを設定するようにしても良い。
また、本実施の形態では、目標パラメータとして目標ヨーレートγtを用いる例を示したが、目標ヨーレートγt以外に、目標ステアリング角St(=(Lw・Ns)/Rt:Lwはホイールベース、Nsはステアリングギヤ比)や目標曲率ρt(=1/γt)を用いるものであっても良い。
目標パラメータとして目標ステアリング角Stを用いる場合、上述の(9)式、(10)式、(11)式に対応した第1,第2,第3の制限値Lms1,Lms2,Lms3は、それぞれ以下の(12)式、(13)式、(14)式により演算される。
|Lms1|=Lmc11−K11・|St| …(12)
|Lms2|=Lmc13−K12・|(St−Stold)/Δt| …(13)
|Lms3|=Lmc15−K13・|ΔS| …(14)
ここで、Stoldは単位時間Δt前(例えば、前回)の目標ステアリング角、ΔSは目標ステアリング角Stと現在の実際のステアリング角Srとの偏差(ステアリング角偏差)(=St−Sr)、K11、K12、K13は定数、Lmc11、Lmc13、Lmc15は、例えば、0.5・g等の定数である。そして、前述の(9)式、(10)式、(11)式と同様に、(12)式で演算した第1の制限値|Lms1|が、|Lms1|>Lmc12(例えば、0.3・g)の場合は、|Lms1|はLmc12で制限(|Lms1|=Lmc12)し、(13)式で演算した第2の制限値|Lms2|が、|Lms2|>Lmc14(例えば、0.3・g)の場合は、|Lms2|はLmc14で制限(|Lms2|=Lmc14)し、(14)式で演算した第3の制限値|Lms3|が、|Lms3|>Lmc16(例えば、0.3・g)の場合は、|Lms3|はLmc16で制限(|Lms3|=Lmc16)する。
また、目標パラメータとして目標曲率ρtを用いる場合、上述の(9)式、(10)式、(11)式に対応した第1,第2,第3の制限値Lmρ1,Lmρ2,Lmρ3は、それぞれ以下の(15)式、(16)式、(17)式により演算される。
|Lmρ1|=Lmc21−K21・|ρt| …(15)
|Lmρ2|=Lmc23−K22・|(ρt−ρtold)/Δt| …(16)
|Lmρ3|=Lmc25−K23・|Δρ| …(17)
ここで、ρtoldは単位時間Δt前(例えば、前回)の目標曲率、Δρは目標曲率ρtと現在の実際の曲率との偏差(曲率偏差)(=ρt−ρ)、K21、K22、K23は定数、Lmc21、Lmc23、Lmc25は、例えば、0.5・g等の定数である。そして、前述の(9)式、(10)式、(11)式と同様に、(15)式で演算した第1の制限値|Lmρ1|が、|Lmρ1|>Lmc22(例えば、0.3・g)の場合は、|Lmρ1|はLmc22で制限(|Lmρ1|=Lmc22)し、(16)式で演算した第2の制限値|Lmρ2|が、|Lmρ2|>Lmc24(例えば、0.3・g)の場合は、|Lmρ2|はLmc24で制限(|Lmρ2|=Lmc24)し、(17)式で演算した第3の制限値|Lmρ3|が、|Lmρ3|>Lmc26(例えば、0.3・g)の場合は、|Lmρ3|はLmc26で制限(|Lmρ3|=Lmc26)する。
また、本実施の形態では、目標加減速度aを、予め設定した2つの領域からなる先行車加減速度af−先行車速Vfの目標加減速度演算式の領域マップから演算式を選択して演算するようになっているが、他の方法で求めるものであっても本発明が適用できることは云うまでもない。例えば、目標車間時間を自車速V0に基づいて演算設定し、先行車との車間距離Lと先行車速Vfと自車速V0と目標車間時間とに基づき目標加減速度aを演算するもの等にも適用できる。
また、本実施の形態では、先行車の認識をステレオカメラからの画像を基に行うようになっているが、他の技術、例えば、ミリ波レーダと単眼カメラからの情報を基に認識するものであっても良い。
車両に搭載した運転支援装置の概略構成図 追従加減速制御プログラムのフローチャート 目標加減速度a演算処理ルーチンのフローチャート 目標加減速度a制限処理ルーチンのフローチャート 先行車加減速度−先行車速の目標加減速度演算式の領域マップの説明図 目標加減速度演算式において用いるパラメータの説明図 自車両と先行車の座標位置と関係を示す説明図 制限値の一例を示す説明図 直進路からカーブ走行に移行する一例の説明図 図9に示す走行路を走行する際に設定される制限値の一例を示すタイムチャート
符号の説明
1 自車両
2 ACCシステム(運転支援装置)
3 ステレオカメラ(先行車情報検出手段)
4 ステレオ画像認識装置(先行車情報検出手段)
5 制御ユニット(目標加減速度演算手段、目標加減速度制限手段)
6 車速センサ(自車走行情報検出手段)
10 スロットル弁制御装置
11 スロットル弁
12 自動ブレーキ制御装置

Claims (4)

  1. 自車両の走行情報を検出する自車走行情報検出手段と、
    先行車を認識し、この先行車情報を検出する先行車情報検出手段と、
    上記自車両の走行情報と上記先行車情報とに基づき上記自車両が上記先行車に追従走行を実行するのに必要な目標加減速度を演算する目標加減速度演算手段と、
    上記自車両の走行情報と上記先行車情報とに基づき上記自車両が上記先行車に追従するのに必要な目標パラメータを推定し、該目標パラメータに応じて演算した上記目標加減速度を制限する制限値と、上記目標パラメータの単位時間あたりの変化量に応じて演算した上記目標加減速度を制限する制限値と、上記目標パラメータと現在の実際のパラメータの値との差分に応じて演算した上記目標加減速度を制限する制限値の少なくとも一つの制限値により、上記目標加減速度を制限する目標加減速度制限手段と、
    を備えたことを特徴とする車両の運転支援装置。
  2. 上記目標加減速度制限手段は、複数の制限値により上記目標加減速度を制限する場合、上記複数の制限値の中で絶対値の最も小さな制限値を用いて上記目標加減速度を制限することを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。
  3. 上記目標パラメータは、目標ヨーレートと目標ステアリング角と目標曲率の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の運転支援装置。
  4. 上記目標加減速度制限手段は、上記自車両が上記先行車に到達するまでの予測時間が予め設定しておいた値より短い場合は、上記目標加減速度の制限を行わないことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の車両の運転支援装置。
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