JP2008185727A - 円筒成形品、レンズ鏡筒、カメラおよび射出成形用金型 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】円筒成形品としての駆動枠34は、駆動枠本体34aと、3つの第1カム溝34cと、3つの第2カム溝34dと、3つの第1ゲート部84bと、3つの高密度領域Hと、を備えている。第1ゲート部は、円筒部の端部に形成され、射出成形時におけるゲートの痕跡である。高密度領域Hは、駆動枠本体34aの軸方向寸法に対する第1カム溝34cおよび第2カム溝34dが占める軸方向寸法の割合が最も高い領域である。第1ゲート部84bは、隣り合う2つの高密度領域Hの円周方向間において、隣り合う2つの高密度領域Hの一方よりも他方に近い位置に配置されている。
【選択図】図4
Description
一般的に、円筒部材の内周側にカム溝を加工するのは困難である。このため、レンズ鏡筒を構成する円筒部材は射出成形により成形されている。射出成形装置は主に、射出成形用金型と、金型内に溶融された成形材料を射出する射出装置と、から構成されている。射出装置は成形材料の射出圧力および射出速度を調節可能である。
射出成形用金型には、キャビティと、スプルーと、複数のランナーと、複数のゲートと、が設けられている。キャビティは成形品を成形するための空洞である。スプルーは射出装置から射出される成形材料が通る流路である。ランナーは成形材料をスプルーからキャビティへ導く。ゲートは、キャビティからランナーへ成形材料が逆流するのを防止するための絞り部であり、ランナーとキャビティとの間に配置されている。円筒成形品の場合、成形材料が均等に流れるように、複数のランナーは円周方向に等ピッチで配置される。それに伴い、複数のゲートも円周方向に等ピッチで配置される。
しかし、カム溝により円筒成形品の肉厚は不均一となる。このため、保圧冷却工程において厚肉部と薄肉部とで冷却速度に差が生じ、部分ごとで熱収縮率が変化する。この結果、円筒成形品の真円度が低下し、設計値通りの円筒成形品を得ることができない。保圧冷却工程で圧力が保持されていても、カム溝の形状によっては成形品の変形を抑制できない場合がある。
レンズ鏡筒を構成する円筒成形品の真円度が低下すると、カム溝の半径方向の位置が設計値に対してずれる。この結果、複数の円筒成形品に保持されるレンズ群の位置がずれ、撮像光学系の光学性能が劣化する。また、カム溝の半径方向の位置が設計値に対してずれると、カム溝とカムピンとの摺動抵抗が増大し、スムーズなズーミング動作が妨げられる。この結果、余分な駆動力が必要となり、消費電力が増大する。
設計値と測定値との誤差が大きい場合は、金型の加工量が大きくなり、金型補正に要する時間が長くなる。また、設計値と測定値との誤差が大きい場合は、初期の金型により成形された試作品に比べて、補正後の金型により成形された試作品における各部の寸法変化量が大きくなる。このため、1回目の金型補正で設計値通りの成形品が得られる可能性が低くなり、金型補正の回数が増加する。
以上に述べたように、射出成形用金型においては、成形品の設計値からの誤差がなるべく小さくなることが好ましい。
しかし、特許文献1、2に記載の従来技術では、寸法誤差の測定方法、あるいは寸法誤差をシミュレーションにより予測し金型設計に取り入れる方法が提案されているだけに過ぎない。
カム溝を有する円筒成形品を射出成形する場合には、カム溝の形状と真円度との間には何らかの関係があると考えられるが、その関係は未だ解明されていない。このため、従来の射出成形用金型では、様々なカム溝の形状に対応できたとしても、金型補正の回数が増大するおそれがある。
実験結果によれば、円筒成形品においてカム溝が密集する領域(以下、高密度領域)は、熱収縮により半径方向内側へ入り込む傾向にある。高密度領域は周辺領域に比べて肉厚が薄く、高密度領域では射出成形時における成形材料の流動抵抗が大きい。このため、高密度領域では周辺領域に比べて成形材料の圧力損失が大きくなり、保圧冷却工程において高密度領域へ成形材料が流れ込みにくい。この結果、保圧冷却工程において、高密度領域が熱収縮しても、熱収縮した分の成形材料が補充されにくく、従来の円筒成形品では、高密度領域の熱収縮による変形が抑制されにくい。これにより、高密度領域は熱収縮により半径方向内側へ入り込む。
ここで、第1ゲート部は射出成形におけるゲートの痕跡であり、第1ゲートの位置は射出成形用金型のゲートの位置に対応している。ゲートは、射出成形において成形材料がランナーからキャビティへ流入する部分であり、保圧冷却工程において成形材料がランナーへ逆流しないように流路が絞られている部分である。
この円筒成形品では、第1ゲート部が高密度領域の他方に近い位置に配置されている。すなわち、第1ゲート部は高密度領域の周辺に配置されている。このため、射出成形において、高密度領域に成形材料が流れ込みやすくなり、保圧冷却工程において従来よりも熱収縮による円筒成形品の変形が抑制されやすくなる。これにより、金型設計段階で第1ゲート部の配置を工夫することで、初期の金型で成形された円筒成形品の変形量が従来よりも減少し、金型補正の回数を増加させることなく寸法精度の向上を実現できる。すなわち、この円筒成形品では、製造コストの低減を図りつつ寸法精度の向上を実現できる。
この場合、高密度領域の周辺に第1ゲート部および第2ゲート部が配置されている。このため、高密度領域に成形材料がより確実に流れ込みやすくなり、保圧冷却工程において従来よりも熱収縮による円筒成形品の変形がさらに抑制されやすくなる。
ここで、第2ゲート部は射出成形におけるゲートの痕跡であり、第2ゲートの位置は射出成形用金型のゲートの位置に対応している。
第3の発明に係る円筒成形品は、第2の発明に係る円筒成形品において、第1ゲート部が、隣り合う2つの第2ゲート部の円周方向間において、隣り合う2つの第2ゲート部の一方よりも他方に近い位置に配置されている。
第4の発明に係る円筒成形品は、第2または第3の発明に係る円筒成形品において、高密度領域が、第1ゲート部と、隣り合う2つの第2ゲート部のうち他方と、の円周方向間に配置されている。
この場合、第1ゲート部と第2ゲート部との間の距離が短い領域に、高密度領域が配置されている。このため、高密度領域に成形材料が流れ込みやすくなる。
第5の発明に係る円筒成形品は、第1から第4のいずれかの発明に係る円筒成形品において、3つの低密度領域をさらに備えている。低密度領域は、カム溝が形成されている面において、円筒部の軸方向寸法に対する少なくとも3つのカム溝が占める軸方向寸法の割合が最も低い領域である。第1ゲート部は、隣り合う高密度領域と低密度領域との円周方向間において、低密度領域よりも高密度領域に近い位置に配置されている。
第6の発明に係るレンズ鏡筒は、撮像光学系を保持するためのレンズ鏡筒であって、第1から第5のいずれかの発明に係る円筒成形品と、レンズ枠と、を備えている。レンズ枠は、撮像光学系に含まれるレンズ群が固定され、カム溝に係合する少なくとも3つのカムピンを有している。
このレンズ鏡筒では、寸法精度が向上した円筒成形品が用いられているため、レンズ群の位置精度が向上し、撮像光学系の光学性能が向上する。
第7の発明に係るカメラは、第6の発明に係るレンズ鏡筒と、レンズ鏡筒に保持される撮像光学系と、撮像光学系により形成された被写体の光学像を撮像する撮像部と、レンズ鏡筒を保持する外装部と、を備えている。
第8の発明に係る射出成形用金型は、少なくとも3つのカム溝を有する円筒成形品を、成形材料により射出成形するための金型である。この射出成形用金型は、第1部分と、第2部分と、第3部分と、第4部分と、を備えている。第1部分は円筒成形品を成形するためのキャビティを有している。第2部分は成形材料が注入されるスプルーを有している。第3部分はスプルーと接続される3つの第1ランナーを有している。第4部分は3つの第1ランナーとキャビティとを接続する3つの第1ゲートを有している。第1部分は3つの高密度領域を有している。高密度領域は、キャビティの軸方向寸法に対する、少なくとも3つのカム溝に対応する部分が占める軸方向寸法の割合が、最も高い領域である。第1ゲートは、隣り合う2つの高密度領域の円周方向間において、隣り合う2つの高密度領域の一方よりも他方に近い位置に配置されている。
この射出成形用金型では、第1ゲートが高密度領域の他方に近い位置に配置されている。すなわち、第1ゲートは高密度領域の周辺に配置されている。このため、射出成形において、高密度領域に成形材料が流れ込みやすくなり、保圧冷却工程において従来よりも熱収縮による円筒成形品の変形が抑制されやすくなる。これにより、金型設計段階で第1ゲートの配置を工夫することで、初期の金型で成形された円筒成形品の変形量が従来よりも減少し、金型補正の回数を増加させることなく寸法精度の向上を実現できる。すなわち、この射出成形用金型では、製造コストの低減を図りつつ寸法精度の向上を実現できる。
この場合、高密度領域の周辺に第1ゲートおよび第2ゲートが配置されている。このため、高密度領域に成形材料がより確実に流れ込みやすくなり、保圧冷却工程において従来よりも熱収縮による円筒成形品の変形がさらに抑制されやすくなる。
第10の発明に係る円筒成形品は、第9の発明に係る射出成形用金型において、第1ゲートが、隣り合う2つの第2ゲートの円周方向間において、隣り合う2つの第2ゲートの一方よりも他方に近い位置に配置されている。
第11の発明に係る円筒成形品は、第9または第10の発明に係る射出成形用金型において、高密度領域が、第1ゲートと、隣り合う2つの第2ゲートのうち他方と、の円周方向間に配置されている。
この場合、第1ゲートと第2ゲートとの間の距離が短い領域に、高密度領域が配置されている。このため、高密度領域に成形材料が流れ込みやすくなる。
第12の発明に係る射出成形用金型は、第8から第11のいずれかの発明に係る射出成形用金型において、第1部分が3つの低密度領域をさらに有している。低密度領域は、キャビティの軸方向寸法に対する、少なくとも3つのカム溝に対応する部分が占める軸方向寸法の割合が、最も低い領域である。第1ゲートは、隣り合う高密度領域と低密度領域との円周方向間において、低密度領域よりも高密度領域に近い位置に配置されている。
〔1:デジタルカメラの概要〕
図1〜図2を用いて本発明に係る円筒成形品が用いられるデジタルカメラ1について説明する。図1および図2にデジタルカメラ1の概略斜視図を示す。図1はレンズ鏡筒3が撮影状態である場合を示している。
デジタルカメラ1は被写体の画像を取得するためのカメラである。デジタルカメラ1には、高倍率化および小型化のために、多段沈胴式のレンズ鏡筒3が搭載されている。
なお、以下の説明では、デジタルカメラ1の6面を以下のように定義する。
デジタルカメラ1による撮影時に被写体側を向く面を前面、その反対側の面を背面とする。被写体の鉛直方向上下とデジタルカメラ1で撮像される長方形の像(一般には、アスペクト比(長辺対短辺の比)が3:2、4:3、16:9など)の短辺方向上下とが一致するように撮影を行う場合に、鉛直方向上側に向く面を上面、その反対側の面を底面とする。さらに、被写体の鉛直方向上下とデジタルカメラ1で撮像される長方形の像の短辺方向上下とが一致するように撮影を行う場合に、被写体側から見て左側にくる面を左側面、その反対側の面を右側面とする。なお、以上の定義は、デジタルカメラ1の使用姿勢を限定するものではない。
なお、デジタルカメラ1の6面だけでなく、デジタルカメラ1に配置される各構成部材の6面も同様に定義する。すなわち、デジタルカメラ1に配置された状態の各構成部材の6面に対して、上述の定義が適用される。
また、図1に示すように、撮像光学系O(後述)の光軸Aに平行なY軸を有する3次元直交座標系(右手系)を定義する。この定義によれば、光軸Aに沿って背面側から前面側に向かう方向がY軸正方向であり、光軸Aに直交し右側面側から左側面側に向かう方向がX軸正方向であり、X軸およびY軸に直交し底面側から上面側に向かう方向がZ軸正方向となる。
〔2:デジタルカメラの全体構成〕
図1および図2に示すように、デジタルカメラ1は主に、各ユニットを収容する外装部2と、被写体の光学像を形成する撮像光学系Oと、撮像光学系Oを移動可能に保持するレンズ鏡筒3と、から構成されている。
撮像光学系Oは複数のレンズ群から構成されており、複数のレンズ群がY軸方向に並んだ状態で配置されている。レンズ鏡筒3は、多段沈胴式であり、外装部2に支持されている。複数のレンズ群は、レンズ鏡筒3によりY軸方向に相対的に移動可能なように保持されている。レンズ鏡筒3の構成の詳細については後述する。
外装部2の上面には、撮影者が撮像動作などの操作を行えるように、レリーズボタン11と、操作ダイアル12と、電源スイッチ13と、ズーム調節レバー14と、が設けられている。レリーズボタン11は撮影者が露光のタイミングを入力するためのボタンである。操作ダイアル12は撮影者が撮影動作に関する各種設定を行うためのダイアルである。電源スイッチ13は撮影者がデジタルカメラ1のONおよびOFFを操作するためのスイッチである。ズーム調節レバー14は、撮影者がズーム倍率を調節するためのレバーであり、レリーズボタン11を中心として所定の角度の範囲内で回転可能である。
〔3:レンズ鏡筒の構成〕
図3を用いて、レンズ鏡筒3の全体構成ついて説明する。図3にレンズ鏡筒3の分解斜視図を示す。
図3に示すように、レンズ鏡筒3は主に、外装部2に固定されるベースプレート31と、ベースプレート31に固定される駆動源としてのズームモータ32と、各枠体をベースプレート31との間に収容する固定枠33と、ズームモータ32の駆動力が入力される駆動枠34と、固定枠33によりY軸方向に移動可能に支持される直進枠35と、から構成されている。ベースプレート31にはCCDユニット21のCCD22が取り付けられている。ズームモータ32としては、例えばステッピングモータなどが挙げられる。
(3.1:固定枠)
固定枠33は、駆動枠34を案内するための部材であり、ベースプレート31とともにレンズ鏡筒3の固定側の部材を構成している。固定枠33はベースプレート31にねじにより固定されている。固定枠33は主に、主要部を構成する略筒状の固定枠本体33aと、固定枠本体33aに回転可能に支持される駆動ギア33bと、から構成されている。
(3.2:駆動枠)
駆動枠34は、第1レンズ枠36および第2レンズ枠37を案内するための部材であり、固定枠33の内周側に配置されている。駆動枠34は主に、固定枠本体33aの内周側に配置される円筒部としての駆動枠本体34aと、駆動枠本体34aの端部に嵌め込まれたリング部材34bと、から構成されている。
駆動枠本体34aの外周側にはギア部34eが形成されている。ギア部34eは固定枠33の駆動ギア33bと噛み合っている。これにより、ズームモータ32の駆動力が駆動ギア33bを介して駆動枠34に伝達される。
このように、カム溝33cの形状に応じて、駆動枠34は固定枠33に対して回転しながらY軸方向に移動可能である。
(3.3:直進枠)
直進枠35は、第1レンズ枠36が固定枠33に対して回転するのを防止するための部材であり、駆動枠34の内周側に配置されている。直進枠35は主に、筒状の直進枠本体35aと、直進枠本体35aの外周側に形成された3本の直進ピン35bと、から構成されている。
また、直進枠本体35aの外周側には、バヨネット溝35eが形成されている。バヨネット溝35eには、駆動枠34の内周側に形成されたバヨネット(図示せず)が係合している。これにより、直進枠35は、駆動枠34に対して回転可能かつY軸方向に一体で移動可能である。
すなわち、駆動枠34が固定枠33に対して回転すると、直進枠35は、固定枠33に対して回転することなく(駆動枠34に対して回転しながら)、駆動枠34とともにY軸方向へ移動する。
(3.4:第1レンズ枠)
第1レンズ枠36は、第1レンズ群G1をY軸方向に移動可能に保持するための部材であり、直進枠35の内周側に配置されている。第1レンズ枠36は主に、第1レンズ群G1を内部に収容する第1レンズ枠本体36aと、第1レンズ枠本体36aの外周側に設けられた3本のカムピン36bと、から構成されている。カムピン36bは、第1ガイド溝35cを貫通した状態で、駆動枠34の第1カム溝34cに係合している。
(3.5:第2レンズ枠)
第2レンズ枠37は、第2レンズ群G2をY軸方向に移動可能に保持するための部材であり、直進枠35の内周側であって第1レンズ枠36のY軸方向負側に配置されている。第2レンズ枠37は主に、第2レンズ群G2を内部に収容する第1枠50および第2枠59と、第1枠50の外周側に設けられた3本のカムピン37bと、から構成されている。カムピン37bは、第2ガイド溝35dを貫通した状態で、駆動枠34の第2カム溝34dに係合している。
このように、第2レンズ枠37は、固定枠33に対して回転することなく、第2カム溝34dの形状に応じて駆動枠34に対してY軸方向に移動可能である。
(3.6:第3レンズ枠)
第3レンズ枠38は、第3レンズ群G3をY軸方向に移動可能に保持するための部材であり、ベースプレート31のフォーカスシャフト31a、31bによりY軸方向に移動可能に支持されている。第3レンズ枠38の駆動は、ベースプレート31に固定されたフォーカスモータ39により行われる。フォーカスモータ39により、第3レンズ枠38はベースプレート31に対してY軸方向に移動する。
以上の構成をまとめると、固定枠33、駆動枠34および直進枠35を介して、ズームモータ32により第1レンズ枠36および第2レンズ枠37は光軸Aに沿った方向に移動可能である。フォーカスモータ39により第3レンズ枠38は光軸Aに沿った方向に移動可能である。
したがって、これらの構成により、撮像光学系Oのズーム倍率およびフォーカスを調節可能な沈胴式のレンズ鏡筒3が実現される。
〔4.円筒成形品および射出成形用金型〕
本実施の形態に係る円筒成形品および射出成形用金型について説明する。ここでは、成形品として駆動枠34を例に説明する。図4に成形品80および射出成形用金型70の概略図を示す。図4(a)は成形品80および射出成形用金型70の概略斜視図であり、図4(b)は成形品80の軸方向から見た平面図である。
図4に示すように、成形品80は、射出成形後に金型70から取り出された合成樹脂製の成形品である。合成樹脂としては、例えばポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。成形品80は主に、円筒成形品としての駆動枠34と、流路部81と、から構成されている。流路部81は射出成形後に駆動枠34から切り離される。前述のように、駆動枠34の内周側には合計6本のカム溝(第1カム溝34c、第2カム溝34d)が形成されている。
流路部81は、射出成形時に金型70内の流路により成形される部分であり、スプルー部82と、スプルー部82に連結される3本の第1ランナー部84aと、3つの第1ゲート部84bと、スプルー部82に連結される3本の第2ランナー部85aと、3つの第2ゲート部85bと、から構成されている。第1ゲート部84bおよび第2ゲート部85bは、駆動枠34の軸方向を向く環状の端面に配置されている。流路部81は6つのゲート部(第1ゲート部84bおよび第2ゲート部85b)を有している。
射出成形用金型70は、射出成形に用いられる金型であり、主に、第1部分71と、第2部分72と、第3部分73と、第4部分79と、から構成されている。金型70は複数の部品から構成されているが、第1部分71〜第4部分79は異なる機能を有する部分という意味で分けられている。したがって、各部分71〜73、79が異なる部品で構成されている、ということを限定するものではない。
第1部分71には、駆動枠34を成形するためのキャビティ71aが形成されている。キャビティ71aは、例えば2つの金型部品(図示せず)を組み合わせることで形成される。キャビティ71aにより駆動枠34が成形される。
第2部分72には、溶融された成形材料が射出装置(図示せず)から注入されるスプルー72aが形成されている。例えば、スプルー72aは筒状のスプルーブッシュ(図示せず)により形成される。スプルー72aによりスプルー部82が成形される。
(4.3:ゲート部)
図5を用いて第1ゲート部84bおよび第2ゲート部85bについて説明する。図5にゲート部周辺の詳細図を示す。
なお、流路部81の切り離し方法によっては、第1突起84dおよび第2突起85dが残らない場合もある。この場合、第1ゲート部84bは第1凹部84cにより構成され、第2ゲート部85bは第2凹部85cにより構成される。
この駆動枠34は、第1ゲート部84bおよび第2ゲート部85bの配置に特徴を有している。図6を用いて第1ゲート部84bおよび第2ゲート部85bの配置について説明する。図6に駆動枠34の内周側展開図を示す。なお、ここでは成形品80の構成を用いて配置を説明するが、成形品80の構成と金型70の構成とは対応しているため、以下の説明は成形品80だけでなく金型70にも対応していると言える。
図4および図6に示すように、3つの第1ゲート部84bは円周方向に等ピッチで配置されており、3つの第2ゲート部85bは円周方向に等ピッチで配置されている。しかし、第1ゲート部84bと第2ゲート部85bとは不等ピッチで配置されている。具体的には、第1ゲート部84bは、R1側の第2ゲート部85b(一方の第2ゲート部)よりもR2側の第2ゲート部85b(他方の第2ゲート部)に近い位置に配置されている。より詳細には、円周方向における第1ゲート部84bとR1側の第2ゲート部85b(他方の第2ゲート部)との間の距離L1は、第1ゲート部84bとR2側の第2ゲート部85b(一方の第2ゲート部)との間の距離L2よりも短い。図4(b)に示すように、第1ゲート部84bとR1側の第2ゲート部85bとの間の角度θ1は、第1ゲート部84bとR2側の第2ゲート部85bとの間の角度θ2よりも小さい。ここで、距離L1、L2および角度θ1、θ2は、円周方向における各部の中心を基準としている。
第1カム溝34cは、第1カム溝本体C2と、第1カム溝本体C2の一方の端部に形成された第1導入溝C3と、から構成されている。第1導入溝C3は軸方向に延びており、駆動枠本体34aの端部を貫通している。第1カム溝本体C2の他方の端部C1は軸方向に貫通していない。
第2カム溝34dは、第2カム溝本体D2と、第2カム溝本体D2における一方の端部に形成された第2導入溝D1と、第2カム溝本体D2における他方の端部に形成された第3導入溝D3と、から構成されている。第2導入溝D1および第3導入溝D3は軸方向に延びており、駆動枠本体34aの端部を貫通している。
駆動枠34は、第1カム溝34cおよび第2カム溝34dにより肉厚が不均一である。具体的には、駆動枠34の内周面には、カム溝の占める割合が高い3つの高密度領域Hと、カム溝の占める割合が最も低い3つの低密度領域Lと、が存在する。3つの高密度領域Hは円周方向に等ピッチで配置されている。3つの低密度領域Lは円周方向に等ピッチで配置されている。
高密度領域Hは、駆動枠34の内周面において、駆動枠34の軸方向寸法に対する第1カム溝34cおよび第2カム溝34dが占める軸方向寸法の割合が最も高い領域である。低密度領域Lは、駆動枠34の内周面において、駆動枠34の軸方向寸法に対する第1カム溝34cおよび第2カム溝34dが占める軸方向寸法の割合が最も低い領域である。図6に示すように、高密度領域Hは、第1導入溝C3が軸方向に延びる部分と一致している。低密度領域Lは、第1カム溝34cと第2カム溝34dとが円周方向に延びている部分と一致している。
ここで、ゲート部とカム溝との配置について詳細に説明する。
図6に示すように、第1ゲート部84bおよび第2ゲート部85bは高密度領域Hの周辺に配置されている。具体的には、第1ゲート部84bは高密度領域Hと低密度領域Lとの円周方向間に配置されている。第1ゲート部84bは低密度領域Lよりも高密度領域Hに近い位置に配置されている。第2ゲート部85bは高密度領域Hと低密度領域Lとの円周方向間に配置されている。第2ゲート部85bは低密度領域Lよりも高密度領域Hに近い位置に配置されている。
また図6に示すように、第1ゲート部84bは、第1カム溝34cの端部C1と、第2カム溝本体D2と、の円周方向間に形成される厚肉部E1に対応する位置に配置されている。これにより、第1ゲート部84b(詳細には第1ゲート74b)から流れる成形材料が端部C1と第2カム溝本体D2との間を通過して、成形材料の流動性が向上する。
〔5:デジタルカメラの動作〕
図1〜図3を用いて、デジタルカメラ1の動作について説明する。
(5.1:電源OFF時の状態)
電源スイッチ13がOFFの状態では、レンズ鏡筒3が外装部2のY軸方向の外形寸法内に収まるように、レンズ鏡筒3は沈胴状態(レンズ鏡筒3のY軸方向の寸法が最も短い状態)で停止している。
(5.2:電源ON時の動作)
電源スイッチ13がONに切り換えられると、各部に電源が供給され、レンズ鏡筒3が沈胴状態から撮影状態に駆動される。具体的には、ズームモータ32により駆動枠34が固定枠33に対して所定角度だけR1側に駆動される。この結果、駆動枠34は、固定枠33に対して回転しながら、カム溝33cの形状に応じて固定枠33に対してY軸方向正側に移動する。
第1レンズ枠36および第2レンズ枠37は、駆動枠34とともにY軸方向正側へ移動しながら、第1カム溝34cおよび第2カム溝34dの形状に応じて、駆動枠34に対してY軸方向へ移動する。このとき、第1レンズ枠36および第2レンズ枠37はY軸方向に相対的に移動する。すなわち、第1レンズ枠36および第2レンズ枠37は、駆動枠34のY軸方向への移動量よりも大きい(あるいは小さい)移動量だけ、固定枠33に対してY軸方向に移動する。
駆動枠34の回転が停止すると、第1レンズ枠36および第2レンズ枠37のY軸方向への移動も停止し、レンズ鏡筒3は撮影状態になる。
ズーム調節レバー14が望遠側に操作されると、ズーム調節レバー14の回転角度および操作時間に応じて、ズームモータ32により駆動枠34が固定枠33に対してR1側に駆動される。この結果、駆動枠34、第1レンズ枠36および第2レンズ枠37が、全体として固定枠33に対してY軸方向正側に移動し、撮像光学系Oのズーム倍率が大きくなる。
ズーム調節レバー14が広角側に操作されると、ズーム調節レバー14の回転角度および操作時間に応じて、ズームモータ32により駆動枠34が固定枠33に対してR2側に駆動される。この結果、駆動枠34、第1レンズ枠36および第2レンズ枠37が、全体として固定枠33に対してY軸方向負側に移動し、撮像光学系Oのズーム倍率が小さくなる。
〔6:効果〕
成形品80、レンズ鏡筒3、デジタルカメラ1および射出成形用金型70の効果は以下の通りである。
この成形品80では、第1ゲート部84bおよび第2ゲート部85bが高密度領域Hに近くなるように、第1ゲート部84bと第2ゲート部85bとが不等ピッチで配置されている。このため、射出成形において、高密度領域Hの周辺における成形材料の圧力を従来よりも高めることができ、射出成形において、高密度領域Hに成形材料が流れ込みやすくなる。この結果、保圧冷却工程において従来よりも熱収縮による成形品80(より詳細には、円筒成形品としての駆動枠34)の変形が抑制されやすくなる。
ここで、成形品80の寸法精度について説明する。図8(a)に真円度の比較図、図8(b)に真円度の最大ずれ量の比較図を示す。従来の成形品とは、6つのゲートが等ピッチで配置されている成形品を意味している。このデータは、実際の成形品の寸法を測定した結果である。
一方、成形品80では、高密度領域Hの変形が従来に比べて抑制されており、真円度が高い。真円度の最大ずれ量は約17〔μm〕である。
つまり、ゲート位置を高密度領域H周辺に重点的に配置することで、真円度の最大ずれ量を約1/3程度に低減でき、真円度が高くなる。以上の結果より、成形品80および射出成形用金型70で採用されているゲート位置が有効であることが分かる。
以上のように、この成形品80では、初期の金型70で成形された円筒成形品の変形量が従来よりも減少し、金型補正の回数を増加させることなく寸法精度の向上を実現できる。すなわち、この成形品80では、製造コストの低減を図りつつ寸法精度の向上を実現できる。
この成形品80および射出成形用金型70では、第1ゲート部84bおよび第2ゲート部85bが低密度領域Lよりも高密度領域Hに近い位置に配置されている。このため、高密度領域Hに成形材料がさらに流れ込みやすくなる。
(6.3)
以上に述べたように、このレンズ鏡筒3には寸法精度が向上した駆動枠34などの成形品80が用いられている。このため、レンズ群の位置精度が向上し、撮像光学系Oの光学性能が向上する。また、このデジタルカメラ1では、撮像光学系Oの光学性能が向上するため、取得された像の画質が向上する。
〔7:他の実施形態〕
本発明に係る円筒成形品、レンズ鏡筒、カメラおよび射出成形用金型は、前述の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の修正および変更が可能である。
前述の実施形態では、第1ゲート部84bおよび第2ゲート部85bが合計6カ所設けられているが、ゲート部の数量はこれに限定されない。ゲート部が6カ所以外の場合でも、本発明は適用可能である。
(7.2)
前述の実施形態では、駆動枠34の内周側にカム溝が形成されているが、外周側にカム溝が形成されている場合や、あるいは、内周側および外周側の両方にカム溝が形成されている場合でも、本発明は適用可能である。また、カム溝の数量、形状および配置などは前述の実施形態に限定されない。
(7.3)
前述の実施形態では、ゲート部が駆動枠34の軸方向の端面に形成されているが、ゲート部の配置はこれに限定されない。例えば、駆動枠34の内周側あるいは外周側にゲート部が設けられていてもよい。
前述の実施形態では、高密度領域Hおよび低密度領域Lは、ある一定の面積を持つ領域であるが、これに限定されない。例えば、高密度領域Hおよび低密度領域Lが軸方向に延びる線であってもよい。
(7.5)
前述のレンズ鏡筒3が搭載される装置としては、動画や静止画を撮影可能なデジタルカメラや、銀塩フィルムを用いたフィルムカメラなどが考えられる。いずれの場合であっても、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
2 外装部
3 レンズ鏡筒
11 レリーズボタン
12 操作ダイアル
13 電源スイッチ
14 ズーム調節レバー
15 液晶モニタ
16 画像記録部
21 CCDユニット(撮像部)
33 固定枠
34 駆動枠(円筒成形品)
34a 駆動枠本体
34b リング部材
34c 第1カム溝(カム溝)
34d 第2カム溝(カム溝)
34e ギア部
34f 環状部
35 直進枠
36 第1レンズ枠
37 第2レンズ枠
38 第3レンズ枠
70 射出成形用金型
71 第1部分
71a キャビティ
72 第2部分
72a スプルー
73 第3部分
74a 第1ランナー
74b 第1ゲート
75a 第2ランナー
75b 第2ゲート
79 第4部分
80 成形品
81 流路部
82 スプルー部
84a 第1ランナー部
84b 第1ゲート部
85a 第2ランナー部
85b 第2ゲート部
H 高密度領域
L 低密度領域
A 光軸
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
Claims (12)
- 射出成形により成形される円筒成形品であって、
円筒部と、
前記円筒部の内周面および外周面のうち一方に形成された少なくとも3つのカム溝と、
前記円筒部の端部に形成され、射出成形におけるゲートの痕跡としての3つの第1ゲート部と、
前記カム溝が形成されている面において、前記円筒部の軸方向寸法に対する前記少なくとも3つのカム溝が占める軸方向寸法の割合が最も高い3つの高密度領域と、を備え、
前記第1ゲート部は、隣り合う2つの前記高密度領域の円周方向間において、前記隣り合う2つの高密度領域の一方よりも他方に近い位置に配置されている、
円筒成形品。 - 前記円筒部の端部に形成され、射出成形におけるゲートの痕跡としての3つの第2ゲート部をさらに備え、
前記第2ゲート部は、隣り合う2つの前記高密度領域の円周方向間において、前記隣り合う2つの高密度領域の一方よりも他方に近い位置に配置されている、
請求項1に記載の円筒成形品。 - 前記第1ゲート部は、隣り合う2つの前記第2ゲート部の円周方向間において、前記隣り合う2つの第2ゲート部の一方よりも他方に近い位置に配置されている、
請求項2に記載の円筒成形品。 - 前記高密度領域は、前記第1ゲート部と、前記隣り合う2つの第2ゲート部のうち他方と、の円周方向間に配置されている、
請求項2または3に記載の円筒成形品。 - 前記カム溝が形成されている面において、前記円筒部の軸方向寸法に対する前記少なくとも3つのカム溝が占める軸方向寸法の割合が最も低い3つの低密度領域をさらに備え、
前記第1ゲート部は、隣り合う前記高密度領域と前記低密度領域との円周方向間において、前記低密度領域よりも前記高密度領域に近い位置に配置されている、
請求項1から4のいずれかに記載の円筒成形品。 - 撮像光学系を保持するためのレンズ鏡筒であって、
請求項1から5のいずれかに記載の円筒成形品と、
前記撮像光学系に含まれるレンズ群が固定され、前記カム溝に係合する少なくとも3つのカムピンを有するレンズ枠と、
を備えたレンズ鏡筒。 - 請求項6に記載のレンズ鏡筒と、
前記レンズ鏡筒に保持される撮像光学系と、
前記撮像光学系により形成された被写体の光学像を撮像する撮像部と、
前記レンズ鏡筒を保持する外装部と、
を備えたカメラ。 - 少なくとも3つのカム溝を有する円筒成形品を、成形材料により射出成形するための金型であって、
前記円筒成形品を成形するためのキャビティを有する第1部分と、
前記成形材料が注入される流路としてのスプルーを有する第2部分と、
前記スプルーと接続される3つの第1ランナーを有する第3部分と、
前記3つの第1ランナーと前記キャビティとを接続する3つの第1ゲートを有する第4部分と、を備え、
前記第1部分は、前記キャビティの軸方向寸法に対する前記少なくとも3つのカム溝に対応する部分が占める軸方向寸法の割合が最も高い3つの高密度領域を有しており、
前記第1ゲートは、隣り合う2つの前記高密度領域の円周方向間において、前記隣り合う2つの高密度領域の一方よりも他方に近い位置に配置されている、
射出成形用金型。 - 前記第3部分は、前記スプルーと接続される3つの第2ランナーをさらに有しており、
前記第4部分は、前記第2ランナーと前記キャビティとを接続する3つの第2ゲートをさらに有しており、
前記第2ゲートは、隣り合う2つの前記高密度領域の円周方向間において、前記隣り合う2つの高密度領域の一方よりも他方に近い位置に配置されている、
請求項8に記載の射出成形用金型。 - 前記第1ゲートは、隣り合う2つの前記第2ゲートの円周方向間において、前記隣り合う2つの第2ゲートの一方よりも他方に近い位置に配置されている、
請求項9に記載の射出成形用金型。 - 前記高密度領域は、前記第1ゲートと、前記隣り合う2つの第2ゲートのうち他方と、の円周方向間に配置されている、
請求項9または10に記載の射出成形用金型。 - 前記第1部分は、前記キャビティの軸方向寸法に対する前記少なくとも3つのカム溝に対応する部分が占める軸方向寸法の割合が最も低い3つの低密度領域をさらに有しており、
前記第1ゲートは、隣り合う前記高密度領域と前記低密度領域との円周方向間において、前記低密度領域よりも前記高密度領域に近い位置に配置されている、
請求項8から11のいずれかに記載の射出成形用金型。
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