JP2008172007A - 絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置とその製造方法。 - Google Patents

絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置とその製造方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】静電誘導トランジスタ構造の長所を生かしつつ、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ構造の特徴とするノーマリオフ型の利点が得られるように両者を組み合わせた構造としても、オン抵抗を小さくできる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】SITとMOSFETをモノリシックにSiCに含めたものであり、埋め込まれたゲート領域に接続するようにオーミック電極が形成されており、表面にイオン注入により選択的に形成されたpウエル領域を有するMOSFETが形成されて、SITと横型MOSFETが接続される絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、炭化珪素(SiC)を主たる半導体材料とした、絶縁ゲートで駆動可能な縦型の電力用半導体装置(以下パワーデバイス)の構造およびその製造方法に関する。
従来、大きな電力を扱う、いわゆるパワーデバイスは、主としてシリコン半導体を用いて製造されてきている。パワーデバイスは大電流容量を可能にするため、チップの両主面間の厚さ方向(縦方向)へ電流を流す構造にされることが多い。図6はそのような従来のパワーデバイスのうち、代表的な縦型MOSFETの断面図である。
一方、図7に示す半導体基板の断面図は静電誘導トランジスタ(以降SITと略す)と呼ばれるデバイスの基本構造であり、n型半導体基板1上に堆積されたn型高抵抗ドリフト層3に選択的にp型領域4が埋め込まれたゲートを備えている。このゲートにドレイン6に対して負バイアスを印加すると、ゲートであるp型領域4の間のピンチオフ領域9に空乏層が広がり、ドレイン6からピンチオフ領域9、n型ソース領域7を経てソース8へ至る電流経路が遮断される。このSITデバイスの特徴は基本的にはn型領域のみを電流が通過するモノポーラ構造であるので、理想に近い小さなオン抵抗が得られやすいという点である。既に、シリコン半導体以外でもSiC半導体を用いたSIT構造のデバイスが試作され、優れた特性が得られたとの報告がされている。しかし、前述のSITデバイスの基本構造ではゲートに無バイアスで導通状態(ノーマリオン)であり、ノイズ等によりゲート駆動回路が故障した場合、ゲート電圧が印加されなくなってデバイスが導通状態のままになり、最悪の場合、回路の破壊という重大な事故をもたらす惧れがあるなど、ゲートバイアス条件に注意が必要であり、使いにくい面がある。
一方、前記パワーデバイスとしては、前記図6の断面図に示すような絶縁ゲート駆動デバイスに属する縦型MOSFETが汎用されている。図6ではゲート絶縁膜12とゲート電極11が半導体基板(1+3)の主面上に平面状に形成される通常のプレーナゲート型MOSFETを示している。図6に示す、基板表面のpウエル13間に設けられているn表面領域2は通常は形成されていないことが多いが、ユニットパターンの微細化とともに隣接するユニットパターン間でpウエルにはさまれたゲート直下の領域が狭くなる傾向がある状況では、ドレイン6へのバイアス印加とともに空乏層がひろがり、ピンチオフ抵抗が大きくなってオン抵抗が大きくなることを防止するために、前記高濃度n表面領域2を入れることがある。この濃度(不純物濃度)は最大でも1×1018cm−3未満程度である。それ以上の濃度にすると、表面に空乏層が広がらなくなり、耐圧が低下する。
この縦型MOSFETでは、SITと異なり、素子のオン抵抗がn型半導体領域(特に高抵抗ドリフト領域)の抵抗分以外に、MOSFET部分のチャネル抵抗が加算される。そのため、ユニットパターン毎に設けられるチャネルは、素子全体では等価回路的にチャネルが並列接続となるように構成されるので、チャネル領域の抵抗分はユニットパターンを微細化してチャネル密度を上げることにより、小さくなり、素子全体の抵抗も小さくなる。しかし、シリコンデバイスの製造プロセスでは、LSIの微細加工技術などを駆使することにより、パターンの微細化は既に究極的なレベルと言える程に至っており、その結果、デバイス特性についても、ほぼ材料限界に近づきつつある。そこでSiCやGaNなどのバンドギャップの広い半導体材料によってこの材料限界をブレークスルーしようという試みがなされている。
これらのバンドギャップの広い半導体材料は最大破壊電界がシリコンと比較して一桁近く大きいことから、パワーデバイスにこれを利用すると、素子の抵抗が100分の1以下になることが期待されている。SiC半導体については、前述のように、シリコン半導体と同様にMOSFETやSITデバイスの試作が行われており、優れた特性が得られたとの報告が既にされている。
SiC半導体については、図8のMOSFETの半導体基板の断面図に示すように、SiC基板1上に積層されたn型エピタキシャル層2aの露出表面部からp型ベース領域3a、3bの表面部にかけて堆積形成されるn型チャネル層5aと、p型ベース領域3a、3b内の表面部分に形成されるnソース領域4a、4bと、このnソース領域4a、4bと前記n型チャネル層5aとにより挟まれた、イオン注入によるp型チャネル層5bと、このチャネル層5bと前記n型チャネル層5a上にゲート絶縁膜7を介して形成されるゲート電極8などによって構成されるMOSFETデバイスが報告されている。このSiC半導体装置はノーマリオフ機能を有するMOSFETのチャネル構造を有すると共に、オン時にp型ベース領域3a、3b間に空乏層が広がってもn型チャネル層5aを高濃度にすることにより、オン抵抗の低減を図ることができる機能を有する(特許文献1)。
さらに、SiC基板上に積層されたn型ドリフト層上に形成されるMOSチャネル領域を低濃度のp型堆積膜とすることにより、オン抵抗を低減する構造のSiC−MOSFETにおいては、このp型堆積膜をイオン注入により選択的にn型ベース領域に変換して電流通路を形成することが必要であるが、このn型領域の厚さが制限されることによりゲート絶縁膜に高電界がかかり、オフ電圧の向上を図ることができないという課題を解決するために、前記低濃度p型堆積膜と高濃度ゲート層の間に低濃度のn型堆積層を介在させ、かつ、イオン注入によってn型に変換したベース領域を前記低濃度p型堆積膜内に選択的に形成して、前記高濃度ゲート層と前記低濃度p型堆積膜(チャネル領域)との間のn型堆積膜の厚さを大きくする構造とするSiC−MOSFETが発表されている(特許文献2)。
特開2001−94097号公報(要約) 特開2006−147789号公報(要約)
しかしながら、前述のようにSiC半導体はシリコン半導体より絶縁破壊電界が大きいので、優れた耐圧特性が期待されるものの、シリコン半導体と同様に、チャネルの高密度化に有効なトレンチゲート型MOSデバイスを形成する場合、トレンチ形成プロセスにおいて、トレンチに曲率半径の小さいコーナー部分ができ易いため、このコーナー部分の表面を覆うゲート酸化膜にかかる電界が過大となり易くなり、その結果、SiC半導体として本来得られるはずの優れた耐圧が得られないという問題が発生する。
従って、SiC半導体では、この問題を回避するために、前述したトレンチゲート型構造ではなく、プレーナゲート型構造を選択してMOSデバイスを製造していた。ところが、SiC半導体ではシリコン半導体よりもMOSチャネル中のキャリア移動度が低いことに加えて、元来、プレーナゲート型はトレンチゲート型に比べるとチャネルの高密度化レベルに限界があって低いので、SiC−MOSデバイスの低オン抵抗化が思うようには進まなかった。
一方、SITデバイスはゲート絶縁膜を使用しない構造であることから、そもそも、前述のような低耐圧でのゲート絶縁膜の絶縁破壊は発生しないが、ゲートに電圧を印加しない、無バイアス状態においてソースドレイン間が導通するという、いわゆるノーマリオンデバイスであることが、実際に回路への適用の際に大きな障害になる。言い換えると、ゲート回路が何らかのトラブルにより、破壊された場合にはパワーデバイスは電流を遮断する状態となるノーマリオフのデバイスの方が安全上好ましいのである。SITデバイス構造を使用しつつ、前記ノーマリオンに起因する障害を回避する方法として、図5の等価回路に示すようなデバイス構成が提案されている。これはSIT24と直列に低耐圧のノーマリオフデバイスであるMOSFET23を接続して使用する構成である。ゲートにオフ信号が印加されると、MOSFET23は遮断状態となりSIT24のソース領域の電位が上昇し、ゲートに負バイアスが印加されて、SITがオフ状態となる。しかしながら、この構成では、SITにMOSFETが追加になり、小さなオン抵抗で面積を小さくできるというSiC半導体装置本来の利点が損なわれてしまう。
本発明は、以上述べた点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、静電誘導トランジスタ構造の長所を生かしつつ、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ構造の特徴とするノーマリオフ型の利点が得られるように両者を組み合わせた構造としても、オン抵抗を小さくできる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置およびその製造方法を提供することである。
特許請求の範囲の請求項1記載の発明によれば、一導電型高濃度炭化珪素半導体基板と、該基板の一表面上に堆積され、前記基板の不純物濃度より低濃度である一導電型炭化珪素半導体のドリフト層と、該ドリフト層中に前記基板表面に平行な方向に所定の間隔を有して埋め込み形成される他導電型ベース領域と、前記ドリフト層表面から前記他導電型ベース領域上に至るいずれかの深さにイオン注入により選択的に形成されると共に、前記他導電型ベース領域の前記所定の間隔に沿って離間形成される他導電型ウエル領域と、前記他導電型ウエル領域内の表面層に形成される一導電型高濃度第一ソース領域と、前記他導電型ウエル領域の離間部を含む表面に、該離間部を挟んで隣接する前記他導電型ウエル領域を相互に接続し、かつ前記第一ソース領域とは離間して形成される一導電型高濃度第二ソース領域と、前記第一ソース領域と前記第二ソース領域とに挟まれる前記他導電型ウエル領域表面にゲート絶縁膜を介して形成されるゲート電極と、前記第一ソース領域表面から前記他導電型ベース領域に達するトレンチと、該トレンチ内面に形成されるソース電極とを備える絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置とすることにより、前記本発明の目的は達成される。
要するに本発明は、上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置では、SIT構造とMOSFET構造をモノリシックにSiCに含めたものであり、埋め込まれたゲート領域に接続するようにオーミック電極が形成されており、表面にイオン注入により選択的に形成されたpウエル領域を有するMOSFETが形成されて、SITと横型MOSFETが接続される構成を有している。
特許請求の範囲の請求項2記載の発明によれば、前記一導電型第一ソース領域の不純物濃度が電圧印加時にも全体が空乏化しない1×1018cm−3以上である特許請求の範囲の請求項1記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置とすることが好ましい。
特許請求の範囲の請求項3記載の発明によれば、前記他導電型ベース領域の所定の間隔が2μm以下である請求項2記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置とすることがより好ましい。
特許請求の範囲の請求項4記載の発明によれば、前記一導電型の第一ソース領域と前記他導電型ベース領域とが前記基板表面に垂直な方向からみて相互に均等にオーバーラップしている特許請求の範囲の請求項3記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置とすることもできる。
特許請求の範囲の請求項5記載の発明によれば、前記第一ソース領域と前記第二ソース領域とに挟まれる前記他導電型ウエル領域表面にゲート絶縁膜を介して形成されるゲート電極が、前記第一ソース領域中央の主要部に対応するゲート絶縁膜上には設けられていない特許請求の範囲の請求項3記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置とすることがより好ましい。
特許請求の範囲の請求項6記載の発明によれば、前記他導電型ウエル領域が前記他導電型ベース領域に接する深さに形成されている特許請求の範囲の請求項5記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置とすることが望ましい。
特許請求の範囲の請求項7記載の発明によれば、前記他導電型ウエル領域の深さが前記他導電型ベース領域の最上部よりも浅くされると共に、前記トレンチ側壁に露出する前記他導電型ウエル領域と他導電型ベース領域に挟まれる前記一導電型ドリフト層表面に他導電型を備えるか、または前記一導電型ドリフト層とショットキー接合を構成する金属電極を備える特許請求の範囲の請求項5記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置とすることが好適である。
特許請求の範囲の請求項8記載の発明によれば、前記一導電型の第一と第二のソース領域を同一イオン注入工程にて作成する特許請求の範囲の請求項1記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置の製造方法とすることもできる。
本発明によれば、静電誘導トランジスタ構造の長所を生かしつつ、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ構造の特徴とするノーマリオフ型の利点が得られるように両者を組み合わせた構造としても、オン抵抗を小さくできる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置およびその製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えないかぎり、以下説明する実施例の記載に限定されるものではない。
図1、2,3は本発明にかかるそれぞれ異なる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置の断面図である。図4は本発明にかかる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置の製造方法を主要な製造プロセスで示した断面図である。図5は本発明にかかる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置の等価回路図である。
図1は、本発明にかかる第一の実施例を示したものである。この図において、SIT構造はn領域(一導電型第一ソース領域)41、p領域(他導電型ベース領域)39、nエピタキシャル層(一導電型ドリフト領域)38およびnSiC半導体基板(一導電型高濃度炭化珪素半導体基板)37によって構成され、SIT構造のゲートはp領域(他導電型ベース領域)39に対応している。図1では、SIT構造のソース領域に対応するn領域(一導電型第一ソース領域)41は、金属電極と直接には接続されずに、n領域41と、pウエル領域(他導電型ウエル領域)40の表面チャネル領域、ゲート酸化膜36、ゲート電極35、nソース領域(一導電型第二ソース領域)42などからなる横型MOSFET構造のドレイン領域を兼ねている。ゲート電極35に負バイアスが印加されることにより、pウエル40の表面のチャネルに反転層が形成される。SIT構造のソース領域であるn第一ソース領域41は前記横型MOSFETのドレインとなって直列に接続され、横型MOSFETのソース領域(n第二ソース領域42)からソース電極34を経てソース32によって外部に電流が取り出されることになり、このn第二ソース領域42が素子全体のソース領域となる。高耐圧を維持する基本構造はSITと共通であり、ピンチオフ領域9(p領域39間隔)を2μm以下と狭くすることによってSIT構造を低耐圧でオフすることができる。
図1に示す絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置の構造は、第一ソース領域41をpウエル領域40より浅くした構造を備えている。この構造にするために、まず、pウエル領域40を選択的イオン注入により形成し、その後、pウエル領域40より浅くn領域となるようにイオン注入することにより第一ソース領域41を形成する構成にされている。このように第一ソース領域41を浅くすると共に、前述のようにピンチオフ領域9を2μm以下にすることにより、ピンチオフ電圧が低くなるため、前記第一ソース領域41にかかる電界を低く抑制できるので、ゲート絶縁膜36の信頼性が高くなる。また、この第一ソース領域の深さを深くすると、その分、ピンチオフ電圧が高くなり、ゲート絶縁膜36の信頼性が低くなる。ピンチオフ領域9が2μmを超えると、ピンチオフし難くなる。
また、実施例1では第一ソース領域41の不純物濃度が1×1018cm−3以上の高濃度にされていることによって空乏層が広がり難くなるので、第一ソース領域41の抵抗を低くすることができる。さらに、第一ソース領域41を第二ソース領域42と同程度に高濃度にする場合は、イオン注入を同時にできることと、前記横型MOSFETのチャネル長をセルフアラインで形成でき、そのためのマスク合わせが不要というプロセス上のメリットも得られる。従って、本発明の実施例1では、第一ソース領域41の不純物濃度を1×1018cm−3以上の高濃度にすることと前記ピンチオフ領域9を2μm以下に狭くする条件は共に備えることが望ましい。
たとえば、実施例1で、耐圧1200Vの半導体装置とするには、n型ドリフト領域38の不純物濃度は約1×1016cm−3程度、その厚さは約10μm程度にする必要がある。この場合、第一ソース領域41の不純物濃度を1×1018cm−3以上の高濃度にして、ピンチオフ領域9の幅を2μmにすると、第一ソース領域41には100V程度の電圧が印加される。第一ソース領域41の不純物濃度が1×1018cm−3未満の場合は、印加される電圧も100V以下になるので好ましいが、第一ソース領域41の抵抗が大きくなるので好ましくない。特に不純物濃度を1×1017cm−3程度にまで低くすると、第一ソース領域41の抵抗がMOSチャネルと同程度の高抵抗になるので、よくない。前述した第一ソース領域41の不純物濃度が1×1018cm−3以上、ピンチオフ領域9の幅が2μm以下という範囲は、耐圧1200V以上の半導体装置で、第一ソース領域41の抵抗を高くしないで、かつ100V以上の電圧がかからない条件で選ばれる範囲である。耐圧1200V以上の場合は前記n型ドリフト領域38の不純物濃度が1×1016cm−3より、さらに低濃度になって第一ソース領域41にかかる電圧が低くなるので、前記第一ソース領域41とピンチオフ領域の条件を満たせば、問題ない。
さらに、実施例1では、前記ピンチオフ領域9が2μm以下である場合、前記第一ソース領域の幅(基板面に平行な方向の幅)を前記ピンチオフ領域9より幅を広くして、p領域39とオーバーラップさせると、第一ソース領域41の幅が小さく成りすぎることがないのでプロセス的に好ましい。
等価回路は図5のようになり、MOSFETのゲート21(図1では符号31)へのゲート電圧印加により、オンオフ制御することが可能である。従って、この図1に示すデバイスはSIT構造にMOSFET構造を直列に接続させる構成を基本構造とすることで、SIT構造にもかかわらず、ノーマリオフとすることが可能である。また、ゲート絶縁膜のコーナー部分(またはエッジ部分)には電界が印加されないことから、十分に大きな電圧がソース32―ドレイン30間に印加されても、ゲート絶縁膜の耐圧によって、素子全体の耐圧が制約されることがない。さらに、SITと同様に、表面に高濃度のSIT構造のnソース領域41(第一ソース領域)が存在することから、ピンチオフ領域9を微細化することが可能であり、このことからSIT構造に横型MOSFETが直列に入っていても、素子全体の抵抗を小さく抑えることが可能となる。このことによって、SITとMOSFETの欠点を補い、両者の優れた特性を生かしたデバイスを提供することができるのである。たとえば、前記特許文献1中に記載の図1(本明細書に添付の図8に相当)に示すMOSFETには、本明細書に添付の従来のMOSFETにかかる図6と同様な構造が示されている。この図6または図8とのMOSFET構造と本発明の実施例1にかかる図1の構造とを比較すると、本発明の図1にかかる構成ではSIT構造のソース領域にあたるn領域41(第一ソース領域)の濃度は、SIT構造としてのソースとしての役割を果たすため1×1018cm−3以上とされ、前記図6のn表面領域2または図8のnチャネル領域5aより高濃度に設定される。
一方、図6のn表面領域2の不純物濃度は1×1018cm−3未満であり、耐圧の電圧が印加された際に空乏化する程度の濃度にされる。図6のn表面領域2の不純物濃度を1×1018cm−3以上にすると、この領域のすべてが空乏化しなくなり、耐圧が低下するからである。一方、図1の構造では、耐圧の電圧が印加された場合、n領域41全体が空乏化しないように1×1018cm−3以上の高濃度にする必要があるという点が異なっている。またSIT構造に基づくピンチオフ特性を得るため、図1ではゲートのp領域39の間隔を2μm以下に狭くすると共に、SIT構造のn領域41とゲートのp領域39との位置関係について、n領域41の基板面に平行な方向の幅をゲートのp領域39の間隔より大きくし、基板面に垂直な方向から見て、互いに重なるように配置することがプロセス上好ましい。
図2ではゲートの入力容量をできるかぎり最小とするため、SIT構造のソース領域41直上に位置するゲート電極35部分を除去した構造である。このようにゲート電極を図2に示すゲート電極35aのように小さくすることにより、ゲート面積が小さくなって入力容量が小さくなる分、高速動作が可能となる。従来技術にかかる前記図6においては、同様にn表面領域2の上に相当するゲート電極11を除去すると、n表面領域2が空乏化しにくくなることから耐圧が得にくくなり、またゲートに正バイアスした場合、表面の電子濃度の増加が期待できないため、オン抵抗が高くなる。本発明の図2ではn領域41はもともと高濃度で低抵抗領域のため、このような影響は実質的に無い。
図3では、MOSFETのpウエル領域40aがSIT構造のゲート39よりも浅く形成されており、直接には接触していない。基本的な動作において図1との違いは見られないが、製造上イオン注入などをつかって浅くpウエルを作りたい場合に有利となる。さらに、ゲート電極の構造を図2のようにSIT構造のソースに相当するn領域41直上には設けない構造とすることもできる。
図4では本発明の製造方法の一例を主要な製造ステップ毎の断面図により示す。イオン注入直後の領域を鎖線で示し、活性化処理後の領域を実線で示す。高濃度nSiC単結晶サブストレート37上に、厚さと濃度の制御されたnドリフト領域38をSiCエピタキシャル成長により積層した基板9を用いる。SIT構造のゲートとなる埋め込み領域を形成するため、図4(a)に示すように、nドリフト領域38の表面にp型不純物となる、たとえばボロンやアルミをイオン注入する。このp注入領域51はSIT構造のゲート領域39となるため、できるだけ高濃度が好ましく、望むらくは1×1019cm−3以上が好ましい。このとき、500℃前後の高温にてイオン注入すると、その後の熱処理において活性化が容易となるため、イオン注入マスク52は高温に耐えるSiO膜などが好ましく用いられる。図4(b)において、その後の活性化熱処理に引き続き、ドリフト領域38と同程度の不純物濃度のn型エピタキシャル層38aを0.5〜3μm程度形成する。図4(c)に示すように、横型MOSFETのpウエル領域40の形成のためのイオン注入を行う。不純物濃度は5×1016〜5×1017cm−3程度である。図4(a)と同様にボロンやアルミをイオン注入して形成される注入領域55は、同図ではpゲート領域39に到達するように描かれているが、必ずしもその必要はなく、到達しなくてもよい。図4(d)にて高温熱処理にて活性化を行い、pウエル領域40とする。図4(e)で横型MOSFETのnソース領域42(第二ソース領域)とSIT構造のソースn領域41(第一ソース領域)となるそれぞれイオン注入領域59と57を同時に矢印58で示すイオン注入にて形成する。このイオン注入の際にもn型不純物である窒素やリンのイオン注入を、前述と同様にSiO膜マスク60を用いて高温にて行う方が後の熱処理での活性化が容易になる。このときの不純物濃度は、共に低抵抗であって電極金属とオーミック接触が容易に形成され、ほとんど内部に空乏層の広がらないような不純物高濃度の条件として、1×1018cm−3以上、1×1021cm−3程度以下とする。図4(f)では活性化熱処理を行って横型MOSFETのソース領域42(第二ソース領域)とSIT構造のソース領域41(第一ソース領域)とする。図4(g)では、熱酸化やCVD膜形成によりゲートを構成するSiO膜などからなるゲート絶縁膜36を形成し、その上にゲート電極35を形成する。図4(h)ではSIT構造のゲートp領域39を露出させるためにウエハ表面からトレンチ65を掘ってその凹部内表面にオーミック性を示すソース電極34(図1)を形成する。以下、その他の電極形成の工程は従来技術と同様であるので省いた。なお、図4(c)において、pウエル用注入領域55の形成深さを、SIT構造のゲートp領域39と接触しない程度に浅く設定した場合、図4(h)以降の電極形成において、相互に接触するソース電極34とn型領域38とがオーッミック接触となることを回避するために、ソース電極34を構成する金属とn型領域38を構成するn型炭化珪素半導体との接触がショットキー接合になるようなソース電極34の金属を選択するか、または、図4(h)に示すようにソース電極34形成用トレンチ65の形成後に、このトレンチ65の側壁にp型不純物を注入して熱処理し活性化して、図3に破線で示すようなp型領域26を形成する方法をとることができる。この場合にはトレンチ65の形成工程は、ゲート絶縁膜63にとって好ましくない活性化熱処理履歴を与えないようにするため、ゲート絶縁膜36の形成前、すなわち図4の(g)と(f)の間に実施する必要がある。前述の条件を満足するショットキー金属としては、具体的にはNiやTi、Au、Ptなどが好ましい。さらに図示しないが、前記高濃度nSiC単結晶サブストレート37の裏面にはドレイン電極33が形成される。
以上のように、本発明にかかる縦型半導体装置は、インバータや電力変換装置に利用されており、近年では自動車などのモーター駆動へも利用される。
本発明にかかる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置の断面図である(その1)。 本発明にかかる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置の断面図である(その2)。 本発明にかかる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置の断面図である(その3)。 本発明にかかる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置の製造方法を主要な製造プロセスで示した断面図である。 本発明にかかる絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置の等価回路図である。。 従来の電界効果トランジスタ(MOSFET)を示す断面図である。 従来の静電誘導トランジスタ(SIT)を示す断面図である。 従来の異なる電界効果トランジスタ(MOSFET)を示す断面図である。
符号の説明
30 ドレイン
31 ゲート
32 ソース
ドレイン電極
34 ソース電極
35、35a ゲート電極
36 ゲート絶縁膜
37 SiC半導体基板
38、38a SICドリフト層
39 pゲート領域
40、40a pウエル領域
41 第一ソース領域
42 第二ソース領域
50、54、58 イオン注入
51、55、57、59 イオン注入領域
52、56、60 マスク
65 トレンチ。

Claims (8)

  1. 一導電型高濃度炭化珪素半導体基板と、該基板の一表面上に堆積され、前記基板の不純物濃度より低濃度である一導電型炭化珪素半導体のドリフト層と、該ドリフト層中に前記基板表面に平行な方向に所定の間隔を有して埋め込み形成される他導電型ベース領域と、前記ドリフト層表面から前記他導電型ベース領域上に至るいずれかの深さにイオン注入により選択的に形成されると共に、前記他導電型ベース領域の前記所定の間隔に沿って離間形成される他導電型ウエル領域と、前記他導電型ウエル領域内の表面層に形成される一導電型高濃度第一ソース領域と、前記他導電型ウエル領域の離間部を含む表面に、該離間部を挟んで隣接する前記他導電型ウエル領域を相互に接続し、かつ前記第一ソース領域とは離間して形成される一導電型高濃度第二ソース領域と、前記第一ソース領域と前記第二ソース領域とに挟まれる前記他導電型ウエル領域表面にゲート絶縁膜を介して形成されるゲート電極と、前記第一ソース領域表面から前記他導電型ベース領域に達するトレンチと、該トレンチ内面に形成されるソース電極とを備えることを特徴とする絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置。
  2. 前記一導電型第一ソース領域の不純物濃度が1×1018cm−3以上であることを特徴とする請求項1記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置。
  3. 前記他導電型ベース領域の所定の間隔が2μm以下であることを特徴とする請求項2記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置。
  4. 前記一導電型の第一ソース領域と前記他導電型ベース領域とが前記基板表面に垂直な方向からみて相互に均等にオーバラップしていることを特徴とする請求項3記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置。
  5. 前記第一ソース領域と前記第二ソース領域とに挟まれる前記他導電型ウエル領域の表面部分にゲート絶縁膜を介して形成されるゲート電極が、前記第一ソース領域中央の主要部に対向するゲート絶縁膜上には設けられていないことを特徴とする請求項3記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置。
  6. 前記他導電型ウエル領域が前記他導電型ベース領域に接する深さに形成されていることを特徴とする請求項5記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置。
  7. 前記他導電型ウエル領域の深さが前記他導電型ベース領域の最上部よりも浅くされると共に、前記トレンチ側壁に露出する前記他導電型ウエル領域と他導電型ベース領域に挟まれる前記一導電型ドリフト層表面に他導電型を備えるか、または前記一導電型ドリフト層とショットキー接合を構成する金属電極を備えることを特徴とする請求項5記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置。
  8. 前記一導電型の第一と第二のソース領域を同一イオン注入工程にて作成することを特徴とする請求項1記載の絶縁ゲート型炭化珪素半導体装置の製造方法。
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