JP2008161542A - ミシンの押え金 - Google Patents
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Abstract
【課題】メスにより切り揃えられた生地の重ね合わせを確実に行なわせ、重ね合わせの不備に伴う縫製不良の発生を有効に防止し得るミシンの押え金を提供する。
【解決手段】針落ち位置11の左右両側から前方に延びる2つの押え足12,13のうち、針板との間に下生地を挾持する押え足12に板ばね8を取り付け、固定メス16及び可動メス17の後側から針落ち位置14の前側までの間において他方の押え足13との間の案内通路内に配設し、この板ばね8が上生地に弾接する構成とする。また上生地を挾持する押え足13に、針落ち位置14の前位置において案内通路内に張り出す当接部材7を取り付け、下生地に重なる上生地が重なり部分に向けて押圧されるように構成する。
【選択図】図1
【解決手段】針落ち位置11の左右両側から前方に延びる2つの押え足12,13のうち、針板との間に下生地を挾持する押え足12に板ばね8を取り付け、固定メス16及び可動メス17の後側から針落ち位置14の前側までの間において他方の押え足13との間の案内通路内に配設し、この板ばね8が上生地に弾接する構成とする。また上生地を挾持する押え足13に、針落ち位置14の前位置において案内通路内に張り出す当接部材7を取り付け、下生地に重なる上生地が重なり部分に向けて押圧されるように構成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、2枚の生地の端縁を所定幅に重ねて縫い合わせる合わせ縫いの実施に用いられるミシンの押え金に関する。
例えば、ブリーフ、ショーツの股下部の合わせ縫いは、細幅の筒型ベッドを備えたミシンを用い、2枚の生地を夫々の端縁から所定幅に亘って上下に重ねた状態で押え金と針板との間に挾持し、押え金の後部に設けた針落ち位置に送り込み、該針落ち位置の降下する針により相互に縫い合わせる手順にて行なわれる。
このような合わせ縫いにおいて良質の縫製品を得るためには、針落ち位置に送り込まれる生地の重ね幅がミシン固有の縫い幅に相当する適正な幅に保たれていることが重要である。生地の重ね幅は、一般的には、縫製作業者の手作業により押え金の前位置において調整されるが、この調整作業に多大の熟練を要するという問題がある。この問題を解消するために従来においては、合わせ縫いの対象となる生地の端縁を切り揃えるメス(固定メス及び可動メス)と、切り揃えられた生地を案内し、上下に重ね合わせるガイド手段(上ガイド及び下ガイド)とを備える特殊な押え金を用いることにより、手作業による重ね幅の調整を不要としたミシンが実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
図6は、メス及びガイド手段を備える従来の押え金を装備したミシンの針落ち位置近傍の斜視図である。図示の如く押え金1は、ミシンアーム2の先端に垂下支持された押え棒10の下端に取り付けた押え本体11の前部に、互いに平行をなして前方に延びる一対の押え足12,13を備えており、押え棒10の下動によりミシンベッド3上の針板4に弾接するように構成されている。縫製対象となる下生地KL及び上生地KUは、夫々の端縁近傍を左右の押え足12,13と針板4との間に挾持した状態にセットされ、針板4上に出没する公知の送り歯(図示せず)の作用により図中に白抜矢符にて示す向きの送りを加えて押え本体11の下部に送り込まれて、該押え本体11の略中央の針落ち位置14に降下する針5,5…により縫い合わされる。
左右の押え足12,13は、前端に開口する案内通路15を形成しており、この案内通路15の中途部には、押え足12に固定した固定メス16と、左右方向の摺動を可能として押え足13に取り付けた可動メス17とが配してある。下生地KL及び上生地KUは、図示の如く、端縁を立てて相互に合わせた状態で案内通路15に導入されており、固定メス16及び可動メス17の配設位置に達して、上下に重なるように摺接する固定メス16及び可動メス17の動作により切り揃えられる。
固定メス16及び可動メス17の後位置には、左右の押え足12,13の上面間に上ガイド18が横架してあり、また押え足12の下面に沿って案内通路15内に張り出すように下ガイド19 (図7参照)が設けてあり、固定メス16及び可動メス17により端縁を切り揃えられた下生地KL及び上生地KUは、上ガイド18及び下ガイド19の作用により上下に重ねられて針落ち位置14に送り込まれる。
図7は、押え金の動作説明図であり、下生地KL及び上生地KUの送り方向と直交する方向の押え金1の断面が略示されており、図7(a)は、押え金1の前端部近傍、図7(b)は、固定メス16と可動メス17とによる切断位置、図7(c),(d)は、切断位置と針落ち位置14との間、図7(e)は、針落ち位置14における下生地KL及び上生地KUの状態を夫々示している。
図7(c),(d)に示すように上ガイド18は、押え足12の側を高くし、押え足13の側を低くしたアーチ形に湾曲する下面を有しており、また後方に向けて厚さを増して針落ち位置14の前位置にて押え本体11の下面に連続するように設けてある。また下ガイド19は、押え足12の下面に固定された板であり、図7(b)〜(d)に示すように、固定メス16と可動メス17とによる切断位置の直後から案内通路15内に張り出し,後側に向けて張り出し長さを増して、針落ち位置14の前位置に達するガイド縁を備えている。
下生地KL及び上生地KUは、図7(a)に示すように、夫々の端縁から適宜の幅分を重ね合わせ、この合わせ部を針板4上に立てた状態で案内通路15に導入される。この導入を容易に行なわせるため、針板4の上面に立ち上がり、下生地KL及び上生地KUの重なり部分を起立状態に保つ補助作用をなす補助板P(仮想線により示す)が用いられる。
このように導入された下生地KL及び上生地KUは、図7(b)に示す如く、固定メス16と可動メス17との摺接位置に達し、その端縁を切り揃えられ、図7(c),(d)に示す如く後方に送られる。
この間、左側の押え足12により挾持された下生地KLは、案内通路15内に突出する下ガイド19のガイド縁により左側から押されて針板4の上に倒される。一方右側の押え足13により挾持された上生地KUは、アーチ形に湾曲する上ガイド18により案内され、これの下部に重なり合う下ガイド19の上に倒れ、該下ガイド19の末端において針板4上の下生地KLの上部に重なり合い、この状態で針落ち位置14に送り込まれて、図7(e)に示す如く、針落ち位置14に降下する針5,5…により縫い合わされる。
このように下生地KL及び上生地KUは、夫々の端縁近傍を適宜に重ね、針板4上に立てた状態で押え金1に送り込むことにより、固定メス16及び可動メス17の動作により端縁を切り揃え、上ガイド18と下ガイド19との作用により上下に重ね合わされて針落ち位置14に送り込まれることとなり、略一定の重ね幅での下生地KL及び上生地KUの合わせ縫いを、手作業による重ね幅の調整を必要とせずに実現することができる。
実公昭59−34457号公報
さて以上の如き押え金1を備えるミシンにおいて、下生地KL及び上生地KUの合わせ縫いを良好に行わせるには、固定メス16及び可動メス17により端縁を切り揃えられた下生地KL及び上生地KUが、押え本体11に設けた針落ち位置14に達するまでの間に上下に確実に重ね合わされる必要がある。
この重ね合わせは、固定メス16及び可動メス17の後側に設けた上ガイド18及び下ガイド19の前述した作用によりなされるが、薄い下生地KL及び上生地KU、特に、薄く柔らかい下生地KL及び上生地KUを縫製対象とする場合、上ガイド18の作用により下ガイド19との間に案内される上生地KUの端縁が、上ガイド18との間のスペース内にて折れ曲がり、この状態で針落ち位置14に送り込まれて、図8に示す如く、表生地(上生地KU)の端縁の一部が折り返された状態で裏生地(下生地KL)に縫い合わされ、折り返し部Aが残る不良な縫製品が得られる虞れがあった。
この問題は、上ガイド18の厚さを大とし、下ガイド19との間のスペースを狭くすることにより解消されるが、厚い下生地KL及び上生地KUを縫製対象とする場合、上ガイド18と下ガイド19との間での上生地KUの通過が阻害され、縫製の実施に支障を来す虞れがある。
また一方、上ガイド18の作用により倒される上生地KUは、下ガイド19の上に倒れ、この下ガイド19の後端を超えた位置にて下生地KLに重なるため、両者の間に下ガイド19の厚さ相当分の緩みが生じた状態で針落ち位置14に送り込まれ、特に、薄く柔らかい下生地KL及び上生地KUを縫製対象とする場合、図9に示すように、下生地KLと重なる上生地KUの表面に、前記緩みに起因する皺Bが生じた不良な縫製品が得られる虞れがあった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、端縁切断用のメスにより切り揃えられた生地の重ね合わせを、簡単な部品を追加することにより、対象生地の種類によらず確実に行なわせることを可能とし、重ね合わせの不備に伴う縫製不良の発生を有効に防止し得るミシンの押え金を提供することを目的とする。
本発明の第1発明に係るミシンの押え金は、針落ち位置の左右両側から互いに略平行をなして前方に延びる2つの押え足と、これらの押え足の間に形成された案内通路の中途に配したメスとを備え、前記押え足の夫々と針板との間に挟持した上生地及び下生地を、夫々の端部を合わせて前記針板上に立ち上げた状態で前記案内通路に導入し、前記メスにより端縁を切り揃え、上下に重ねて前記針落ち位置に送り込むようにしたミシンの押え金において、前記メスの後上位置から前記上生地を挾持する押え足に向けて前記案内通路内に延設してあり、前記メスにより切断された上生地に弾接する板ばねを備えることを特徴とする。
本発明の第2発明に係るミシンの押え金は、針落ち位置の左右両側から互いに略平行をなして前方に延びる2つの押え足と、これらの押え足の間に形成された案内通路の中途に配したメスとを備え、前記押え足の夫々と針板との間に挟持した上生地及び下生地を、夫々の端部を合わせて前記針板上に立ち上げた状態で前記案内通路に導入し、前記メスにより端縁を切り揃え、上下に重ねて前記針落ち位置に送り込むようにしたミシンの押え金において、前記上生地を挾持する押え足に取り付けてあり、前記メスよりも後位置の前記案内通路の内側に前記針板に沿って張り出して前記上生地に当接する当接部材を備えることを特徴とする。
本発明の第3発明に係るミシンの押え金は、針落ち位置の左右両側から互いに略平行をなして前方に延びる2つの押え足と、これらの押え足の間に形成された案内通路の中途に配したメスとを備え、前記押え足の夫々と針板との間に挟持した上生地及び下生地を、夫々の端部を合わせて前記針板上に立ち上げた状態で前記案内通路に導入し、前記メスにより端縁を切り揃え、上下に重ねて前記針落ち位置に送り込むようにしたミシンの押え金において、前記下生地を挾持する押え足に取り付けられ、前記メスの後上位置から前記上生地を挾持する押え足に向けて前記案内通路内に延設してあり、前記メスにより切断された上生地に弾接する板ばねと、前記上生地を挾持する押え足に取り付けてあり、前記メスよりも後位置の前記案内通路の内側に前記針板に沿って張り出して前記上生地に当接する当接部材とを備えることを特徴とする。
また第4発明に係るミシンの押え金は、第1又は第3発明における板ばねが、前記下生地を挾持する押え足に取り付けてあることを特徴とする。
また第5発明に係るミシンの押え金は、第4発明における板ばねが、下生地を挾持する押え足の側が高く、上生地を挾持する押え足の側が低い左右の高さ分布と、前部が高く、後部が低い前後の高さ分布とを有し、上向きに凸となる湾曲形状を有していることを特徴とする。
また第6発明に係るミシンの押え金は、第2〜第5発明における当接部材が、左右方向の位置調節により、前記案内通路内への張り出し長さを変更可能に取り付けてあることを特徴とし、また第7発明に係るミシンの押え金は、第6発明における当接部材が、前記押え足の上方からの操作が可能な止めねじにより取り付けてあることを特徴とする。
更に第8発明に係るミシンの押え金は、第2〜第7発明における当接部材が、前記案内通路の幅方向の弾性変位が可能に構成してあることを特徴とする。
本発明の第1発明に係るミシンの押え金においては、左右の押え足間の案内通路内にメスの後側に位置して板ばねを配し、メスにより切り揃えられた上生地に弾接させる構成としたから、厚薄、硬軟等の種別の如何に拘らず上生地を良好に案内することができ、下生地との重ね合わせの不備に伴う縫製不良の発生を有効に防止することができる。
また第2発明に係るミシンの押え金においては、上生地を挾持する押え足に取り付けた当接部材がメスの後方位置にて案内通路内に張り出し、上生地に当接する構成としたから、下生地への上生地の重ね合わせを、前記下生地に向かう押圧力を加えた状態で行わせることができ、緩みのない確実な重ね合わせを実現して、下生地との重ね合わせの不備に伴う縫製不良の発生を有効に防止することができる。
また第3発明に係るミシンの押え金においては、前記板ばね及び当接部材を併せて備える構成としたから、上生地と下生地との重ね合わせを確実に実施し、重ね合わせの不備に伴う縫製不良の発生をより有効に防止することができる。
また第4発明に係るミシンの押え金においては、前記板ばねを下生地を挾持する押え足に取り付けたから、上生地側からの作用力による追従変位を確実に行わせることができ、また第5発明に係るミシンの押え金においては、前記板ばねを案内対象となる上生地に対応する左右方向の高さ分布と、針落ち位置に向けて下がる前後方向の高さ分布を有する湾曲形状としたから、メスの直後から針落ち位置の直前まで上生地を良好に案内することが可能となって、下生地との重ね合わせの不備に伴う縫製不良の発生をより確実に防止することができる。
また第6発明に係るミシンの押え金においては、左右方向の位置調節により案内通路内への張り出し量を変更可能として当接部材を取り付けたから、厚薄、硬軟等の生地の種別に応じて当接程度を加減することができ、対象生地の種別によらずに重ね合わせの不備を防止することができ、また第7発明に係るミシンの押え金においては、上方からの止めねじの操作により当接部材の張り出し量を変更可能としたから、生地の種別に応じた当接程度の適正化を簡易に実施することができる。
更に第8発明に係るミシンの押え金においては、案内通路の幅方向の弾性変位が可能な当接部材を設けたから、縫いの進行方向に厚さが変化する生地を取り扱う場合においても当接部材の追随変位により当接程度を適正に保つことができ、重ね合わせの不備に伴う縫製不良の発生を緩和することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る押え金の分解斜視図である。
本発明に係る押え金1は、図6に示す従来の押え金1と同様、略中央に針落ち位置14が設けられた押え本体11と、この押え本体11の前部に延設され、互いに平行をなして前方に延びる一対の押え足12,13を備えている。押え本体11は、後部に立設された支持脚 11aを有しており、この支持脚 11aの上端に開口を有する差し込み孔 11bを、図中に2点鎖線により示す押え棒10の下端に差し込み固定し、図6に示す如くミシンアーム2の先端下部に垂下支持されている。
このような押え金1は、図6に示すように、押え棒10と共にミシンベッド3上に降下させ、該ミシンベッド3上に横架された針板4の上面に、押え本体11及び左右一対の押え足12,13を弾接させて使用する。押え足12,13の下面には、滑り板 12a,13aが装着されている。滑り板 12a,13aは、そり形に湾曲成形された板ばねであり、前後端を屈曲させて設けた係合部を押え足12,13の前縁及び押え本体11の後縁に引っ掛け、押え足12,13の前縁に止めねじ 12b,13bにより固定して、押え足12,13及び押え本体11の全長に沿うように取り付けてある。
押え本体11の下部には、針落ち位置14の後側に、滑り板 12a,13aの間に位置するように小押え9が取り付けてある。小押え9は、一体に設けた支持筒90を前記支持脚 11aに設けた装着孔(図示せず)に下から通し、支持筒90内に保持したコイルばね91により下向きに付勢して取り付けてある。押え本体11及び左右一対の押え足12,13の針板4への弾接は、実際には、小押え9及び滑り板 12a,13aを介して生じる。
押え足12,13の中途部には、側面を幅方向に貫通する矩形断面の保持孔が設けてある。一側(左側)の押え足12の保持孔には、板状をなす固定メス16が、他側(右側)の押え足13との間の案内通路15(図3、4参照)内に刃面を臨ませて固定保持されており、また他側(右側)の押え足13の保持孔には、案内通路15内に臨ませた刃面を前記固定メス16の刃面に重ねて、左右方向への摺動可能に可動メス17が保持されている。
可動メス17を保持する押え足13の保持孔は前部に延長され、適長に亘って段落ちされた保持溝60が設けてあり、この保持溝60には補助案内部材6が取り付けてある。補助案内部材6は、図示の如く、弓形の湾曲形状を有する部材であり、湾曲面の逆側に保持溝60への嵌め込みが可能な矩形の固定ブロック61が突設されている。
この補助案内部材6は、図中に矢符により示す如く、押え足13の内側面の側から固定ブロック61を保持溝60に嵌め込み、押え足13の上面に開口する円孔から止めねじ62を通し、固定ブロック61に設けた長孔63を経て保持溝60の底面に設けたねじ孔に締め付けることにより固定してある。
固定ブロック61の長孔63は、図示の如く左右に長くしてあり、補助案内部材6の固定位置は、止めねじ62を緩めることにより長孔63の長さ範囲内にて左右方向に調節することができる。止めねじ62は、押え足13の上面の円孔を経て上方から緩め操作することが可能であり、補助案内部材6の位置は、押え棒10の下端に押え金1を取り付けた使用状態において容易に調節することができる。
また押え足13の下面には、可動メス17の保持孔の後位置に適長に亘って凹所70が設けてあり、この凹所70に平板状をなす当接部材7が嵌め込み固定してある。前記凹所70の上部には、押え足13の上面及び外側面に開口し左右方向に延びる切欠き溝71が設けてある。
当接部材7は、図中に矢符により示す如く、凹所70に下位置から嵌め込み、切欠き溝71の底面に設けた長孔に通した止めねじ72を当接部材7に設けたねじ孔に締め付けることにより固定してある。
切欠き溝71の底面の長孔は、切欠き溝71の長手方向、即ち、左右方向に長くしてあり当接部材7の固定位置は、止めねじ72を緩めることにより前記長孔の長さ範囲内にて左右方向に調節することができる。止めねじ72は、切欠き溝71の上部の開口を経て上方から緩め操作することが可能であり、当接部材7の位置は、押え棒10の下端に押え金1を取り付けた使用状態において容易に調節することができる。
他側(左側)の押え足12の下面には、従来の押え金1におけると同様の下ガイド19が取り付けてある。下ガイド19は、前述の如く、止めねじ80により押え足13の下面に締め付け固定される矩形の固定板の一縁に、後方に向けて案内通路15内への突出長さを増すガイド縁を備えた図示の形状を有している。
また押え足12の下面には、板ばね8が取り付けてある。図示の如く板ばね8は、下ガイド19の固定板に対応する矩形形状を有する固定片81の一縁に連設されており、固定片81の連設縁から略垂直に立ち上がり、この立ち上がり部の上端から他側に向けて低くなり、前部から後部に向けて徐々に低くなる上向きに凸の湾曲形状を有している。
図2は、板ばね8の三面図であり、固定片81を含めた板ばね8の形状は本図に明らかである。本図に示すように板ばね8は、固定片81が連設された前半部と、該前半部の後側に連なる後半部との間に、左右両側の側縁から延び、上部を適幅余して形成されたスリット状の切欠き82,82を備えている。これらの切欠き82,82は、後述する上生地KUとの当接下にて生じる後半部の上下方向への撓み程度を適正化すべく幅及び長さを定めて設けられている。なお図中の83は、止めねじ80の挿通孔である。
図2に示す形状を有する板ばね8は、例えば、ばね用ステンレス綱(SUS304−CSP:JIS)等の弾性の富む金属材料製の薄板により、固定片81を含めて一体形成されており、図1に示す如く、下ガイド19の上部に固定片81を重ね、前記止めねじ80により押え足13の下面に共締め固定されている。
図3は、本発明に係る押え金1の上面図、図4は、同じく底面図であり、前述の如く取り付けられた補助案内部材6、当接部材7及び板ばね8の平面的な位置関係が示されている。なおこれらの図には、固定メス16及び可動メス17を2点鎖線により示してある。可動メス17は、図示しない駆動機構からの伝動により図中に白抜矢符により示す如く進退動作し、固定メス16の上面に摺接して、後述の如く、案内通路15内に導入される上生地KU及び下生地KLの立ち上がり端縁を切断する動作をなす。
右側の押え足13の前端部に取り付けられた補助案内部材6は、弓形に湾曲する一面を内向きとし、押え足13の前端部から固定メス16及び可動メス17の摺接部までの間において、押え足12との間の案内通路15内に張り出すように取り付けてある。補助案内部材6は、左右方向への位置調節が可能であり、この調節により案内通路15の内側への張り出し量を変更することができる。
また押え足13の下面に取り付けられた当接部材7は、図4に示す如く、固定メス16及び可動メス17の後方から、押え本体11に設けた針落ち位置14までの間に位置している。当接部材7は、押え足13と押え足12との間の案内通路15の内側に突出するガイド縁を備えている。このガイド縁は、後方(図における下方)に向けて突出長さを増すように設けられており、このガイド縁の後端は、針落ち位置14の直前に位置している。
左側の押え足12の下面に固定された下ガイド19は、押え足13との間の案内通路15の内側に突出するガイド縁を備えている。このガイド縁は、図示の如く、固定メス16及び可動メス17の摺接部の下位置から、前記当接部材7のガイド縁の突出部よりも前位置の間において、後方に向かうに従って突出長さを増すように配してある。
また、前記下ガイド19との共締めにより押え足12に固定された板ばね8は、図4に示すように、固定メス16及び可動メス17の摺接部の上位置に前端が位置し、前述した湾曲形状を有して延びる後端が押え本体11に設けた針落ち位置14の直前に位置しており、この間において案内通路15の略全幅を占めるように配してある。
図3に示す如く押え金1の上部には、固定メス16及び可動メス17の摺接部の後側において左右の押え足12,13間に架け渡された上ガイド18が設けてあり、案内通路15内に前述の如く配された板ばね8の上部は、この上ガイド18により覆われている。上ガイド18の上面には、前縁から斜め後方に向かい、押え本体11の左側(押え足12の側)の外縁に連続するガイド溝 18aが形成されている。このガイド溝 18aは、固定メス16と可動メス17とにより切断される生地端を左側に案内して排出させる作用をなすべく設けてある。
以上の如く構成された押え金1を備えるミシンによる合わせ縫いは、従来と同様に、縫製対象となる下生地KL及び上生地KUを、夫々の端部を立てた状態で合わせて左右の押え足12,13間の案内通路15に導入し、固定メス16と可動メス17との摺接部において端縁を切り揃え、上下に重ねて針落ち位置14に送り込むことにより実現される。
図5は、本発明に係るミシンの押え金の動作説明図である。本図は、従来の押え金の場合の図7と同様、下生地KL及び上生地KUの送り方向と直交する方向の押え金1の略示断面図であり、図5(a)は、押え金1の前端部近傍、図5(b)は、固定メス16と可動メス17とによる切断位置の近傍、図5(c),(d)は、切断位置と針落ち位置14との間、図5(e)は、針落ち位置14における下生地KL及び上生地KUの状態を夫々示している。
図5(c)、(d)に示すように上ガイド18の下面は、下生地KLを挾持する押え足12の側を高くし、上生地KUを挾持する押え足13の側を低くしたアーチ形の湾曲形状を有しており、後方に向けて徐々に高さを減じて針落ち位置14の前位置に連続している。押え足12に取り付けた板ばね8の前述した湾曲形状は、以上の如き上ガイド18の下面の形状に対応させてあり、該板ばね8は、上ガイド18の下面に適宜の隙間を隔てて対向するように位置決めされている。
図5(a)に示す如く下生地KL及び上生地KUは、押え足12,13と針板4との間に夫々の端部近傍を挾圧され、端縁から所定幅の部分を重ね合わせ、この合わせ部を針板4上に立てた状態で案内通路15に送り込まれる。このように送り込まれる下生地KL及び上生地KUは、図5(b)に示す如く、固定メス16と可動メス17との摺接位置に達し、その上縁を切り揃えられる。なお図5(a)中のPは、下生地KL及び上生地KUの重なり部分を起立状態に保つべく設けられた補助板である。
案内通路15の前端部には、上生地KUを挾持する押え足13に取り付けた補助案内部材6が張り出している。この補助案内部材6は、針板4から立ち上がる上生地KUに当接し、この上生地KUの立ち上がり姿勢を拘束し、他方の押え足12との当接により拘束される下生地KLと共に、針板4上にて安定した立ち上がり姿勢に保つ作用をなす。
補助案内部材6の張り出し量は、左右方向の位置調節により増減することができ、この調節により下生地KL及び上生地KUが導入される案内通路15の通路幅を適宜に変更することができ、下生地KL及び上生地KUを、夫々の厚薄、硬軟の如何に拘らず安定した立ち上がり姿勢に保って送り込むことができる。従って、固定メス16及び可動メス17による上縁の切り揃えを良好に行わせることが可能となる。
固定メス16と可動メス17とにより上縁を切り揃えられた下生地KL及び上生地KUは、更なる送りに伴って、図5(c)〜(d)に示す如く針落ち位置14に近づく。固定メス16及び可動メス17の後上部付近には、板ばね8の前端が位置しており、下部には下ガイド19が位置しており、固定メス16及び可動メス17により切断された下生地KLの下部に下ガイド19のガイド縁が当接し、同じく上生地KUの上部に板ばね8が弾接する。なお切断された生地端は、前述の如く、上ガイド18の上面のガイド溝 18aに案内されて送り本体11の左側に排出される。
下ガイド19のガイド縁は、後方に向けて案内通路15内への突出長さを増しており、このガイド縁により左側から押される下生地KLは、下ガイド19の後端に至るまでの間に下部の針板4上に倒される。また上生地KUの上部に弾接する板ばね8は、上生地KUを挾持する押え足13の側が低く、後方に向けて低くなる湾曲形状を有しており、上生地KUは、板ばね8の作用により右側下方に押されて下ガイド19の上に倒れ、下ガイド19の後端を超えた図5(d)の送り位置において下生地KLの上面に重なる。
板ばね8は、針落ち位置14の直前にまで延設されて上生地KUに弾接しており、上生地KUは、板ばね8の作用により倒されて下生地KLの上面に重ねられる。前述した形状を有する板ばね8は、上生地KUの厚薄に追従して、上ガイド18の下面との間の隙間範囲内にて上下に弾性変位することができ、夫々の変位状態下にて上生地KUに作用する。従って上生地KUは、厚薄、硬軟等の種別の如何に拘らず上面全域に弾接する板ばね8の案内作用により下生地KLの上面に確実に重ねられ、前記図8に示すように、上生地KUの端縁の一部に折り返し部Aが残った状態で下生地KLに縫い合わされた不良な縫い形態が生じる虞れを回避することができる。
なお、下生地KLのガイド作用をなす下ガイド19にも板ばねを付設し、下ガイド19の前述した作用により倒される下生地KLの端縁に前記板ばねを作用させ、針板4に押し付ける構成とすることができる。この構成によれば、下生地KLの端縁が折り返された状態で上生地KUに縫い合わされた不良な縫い形態が生じる虞れを回避することができる。
板ばね8は、上生地KUを挾持するための押え足13に取り付け、案内通路15内に同様に配設することも可能である。実施の形態に示すように押え足12に取り付けた場合、板ばね8は、押え足12に固定された固定片81から離れた側にて上生地KUに弾接することから、該上生地KUに対する追従変位が良好となり、より確実な案内作用を行わせることができる。
板ばね8は、図示のような左右方向(案内通路15の幅方向)の湾曲形状を有するのが望ましいが、上生地KUに弾接して前述した案内作用をなし得る限りにおいて適宜の形状を採用することができる。
このように重ねられた下生地KL及び上生地KUは、更なる送りにより、図5(e)に示す針落ち位置14に達し、該針落ち位置14に降下する針5,5…により縫い合わされる。針落ち位置14の前位置には、押え足13の下面に取り付けた当接部材7が配してあり、当接部材7は、後方に向けて突出長さを増すガイド縁を有している。このガイド縁は、図5(d)に示すように上生地KUに当接し、下生地KLの端縁に向けて押圧する作用をなすから、針落ち位置14の直前に達した上生地KUは、図5(e)に示すように下生地KLの上面に緩みなく重なる。従って、図9に示すように、下生地KLと重なる上生地KUの表面に、緩みに起因する皺Bが生じた縫製品が得られる虞れを回避することができる。
当接部材7は、前述の如く左右方向の位置調節が可能であり、この調節により案内経路15内へのガイド縁の突出量を増減することができる。従って、当接部材7の位置調節を、例えば、上生地KUの厚薄、硬軟に応じて実施し、上生地KUへのガイド縁の当接程度を変えることにより、生地の種別の如何に拘らず確実な重なり状態を得ることができ、縫製不良の発生をより確実に防止することができる。
当接部材7の位置調節は、押え足13の上部からの止めねじ72の操作により実施することができ、種々に異なる上生地KUを取り扱う場合においても迅速に対応することが可能である。
また当接部材7を、例えば、左右方向に弾性を有する板ばねにより構成し、案内通路15の幅方向の弾性変位を可能とすることができる。この構成によれば、縫いの進行方向に厚さが変化する生地を取り扱う場合、厚さの変化部において当接部材7が追従変位することにより厚さ変化を吸収し、上生地KUへの当接程度を適正に保ち、針落ち位置14における下生地KLとの重ね合わせを良好に維持することができる。
1 押え金
4 針板
7 当接部材
8 板ばね
12 押え足
13 押え足
14 針落ち位置
15 案内通路
16 固定メス
17 可動メス
72 止めねじ
KL 下生地
KU 上生地
4 針板
7 当接部材
8 板ばね
12 押え足
13 押え足
14 針落ち位置
15 案内通路
16 固定メス
17 可動メス
72 止めねじ
KL 下生地
KU 上生地
Claims (8)
- 針落ち位置の左右両側から互いに略平行をなして前方に延びる2つの押え足と、これらの押え足の間に形成された案内通路の中途に配したメスとを備え、前記押え足の夫々と針板との間に挟持した上生地及び下生地を、夫々の端部を合わせて前記針板上に立ち上げた状態で前記案内通路に導入し、前記メスにより端縁を切り揃え、上下に重ねて前記針落ち位置に送り込むようにしたミシンの押え金において、
前記メスの後上位置から前記上生地を挾持する押え足に向けて前記案内通路内に延設してあり、前記メスにより切断された上生地に弾接する板ばねを備えることを特徴とするミシンの押え金。 - 針落ち位置の左右両側から互いに略平行をなして前方に延びる2つの押え足と、これらの押え足の間に形成された案内通路の中途に配したメスとを備え、前記押え足の夫々と針板との間に挟持した上生地及び下生地を、夫々の端部を合わせて前記針板上に立ち上げた状態で前記案内通路に導入し、前記メスにより端縁を切り揃え、上下に重ねて前記針落ち位置に送り込むようにしたミシンの押え金において、
前記上生地を挾持する押え足に取り付けてあり、前記メスよりも後位置の前記案内通路の内側に前記針板に沿って張り出して前記上生地に当接する当接部材を備えることを特徴とするミシンの押え金。 - 針落ち位置の左右両側から互いに略平行をなして前方に延びる2つの押え足と、これらの押え足の間に形成された案内通路の中途に配したメスとを備え、前記押え足の夫々と針板との間に挟持した上生地及び下生地を、夫々の端部を合わせて前記針板上に立ち上げた状態で前記案内通路に導入し、前記メスにより端縁を切り揃え、上下に重ねて前記針落ち位置に送り込むようにしたミシンの押え金において、
前記下生地を挾持する押え足に取り付けられ、前記メスの後上位置から前記上生地を挾持する押え足に向けて前記案内通路内に延設してあり、前記メスにより切断された上生地に弾接する板ばねと、
前記上生地を挾持する押え足に取り付けてあり、前記メスよりも後位置の前記案内通路の内側に前記針板に沿って張り出して前記上生地に当接する当接部材と
を備えることを特徴とするミシンの押え金。 - 前記板ばねは、前記下生地を挾持する押え足に取り付けてある請求項1又は3記載のミシンの押え金。
- 前記板ばねは、下生地を挾持する押え足の側が高く、上生地を挾持する押え足の側が低い左右の高さ分布と、前部が高く、後部が低い前後の高さ分布とを有し、上向きに凸となる湾曲形状を有している請求項4記載のミシンの押え金。
- 前記当接部材は、左右方向の位置調節により、前記案内通路内への張り出し長さを変更可能に取り付けてある請求項2乃至請求項5のいずれかに記載のミシンの押え金。
- 前記当接部材は、前記押え足の上方からの操作が可能な止めねじにより取り付けてある請求項6記載のミシンの押え金。
- 前記当接部材は、前記案内通路の幅方向の弾性変位が可能に構成してある請求項2乃至請求項7のいずれかに記載のミシンの押え金。
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