本発明のコイル内蔵基板(以下、基板ともいう。)を添付図面を参照しつつ以下に詳細に説明する。図1は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す図であり、図1(a)は本発明のコイル内蔵基板の断面図、図1(b)は図1(a)をA‐A’線で切断した断面図である。これらの図において、1は絶縁層、2はフェライト磁性体層、3は平面コイル導体、4は伝熱用導体層、5は放熱用導体層、6は配線層である。
図1に示す例においては、配線層6として、絶縁層1の外表面にはIC等の半導体チップやチップ部品が搭載される搭載用電極6bおよび外部電気回路と電気的に接続される電極パッド6dが形成され、絶縁層1の内部には内部配線層6aが形成されている。そして、内部配線層6a,搭載用電極6b,電極パッド6dおよび平面コイル導体3は、貫通導体6cを介して互いに接続されている。
本発明のコイル内蔵基板は、配線層6が形成された一対の絶縁層1・1と、この一対の絶縁層1・1に挟持されたフェライト磁性体層2と、このフェライト磁性体層2内に形成された平面コイル導体3とを具備するコイル内蔵基板であって、フェライト磁性体層2に、平面視で平面コイル導体3と重なるとともに基板の側面に引き出された伝熱用導体層4が形成され、基板の側面に伝熱用導体層4が接続された放熱用導体層5が形成されていることを特徴とするものである。
本発明のコイル内蔵基板によれば、このような構成により、平面コイル導体3において発生した熱は伝熱用導体層4を介して放熱用導体層5から外部へ放熱することができる。その結果、搭載したICなどの電子部品が平面コイル導体3から発生する熱によって誤動作してしまうことを防止することができる。
このときの平面コイル導体3は、1層で構成してもよいが、図1(a)に示すように上下に複数設けると、大きなインダクタンスを得るためのコイルの巻き数を確保しつつ平面方向の大きさを小型にすることができるので好ましい。
また、本発明のコイル内蔵基板は、平面コイル導体3が間にフェライト磁性体層2を介して上下に複数設けられる場合は、伝熱用導体層4は上下に位置する平面コイル導体3間に形成されていることが好ましい。
このような構成とした場合には、平面コイル導体3から発生した熱は、伝熱用導体層4が形成されたコイル内蔵基板の厚み方向における内部に誘導された後に、放熱用導体層5が形成されたコイル内蔵基板の側面から基板の外部へと放熱することができる。したがって、絶縁層1の方向すなわちICなどの電子部品が搭載されたコイル内蔵基板の主面方向への伝熱を抑制することができるため、コイル内蔵基板に搭載されたICなどの電子部品が平面コイル導体3から発生する熱によって誤動作してしまうことをより効果的に防止することができる。
伝熱用導体層4は、上下に位置する平面コイル導体3間に形成される場合は、平面コイル導体3の周囲に発生する磁束が通過する領域を設ける必要があるので、平面視で平面コイル導体3の中心および平面コイル導体3の外周部には伝熱用導体層4を設けない領域が必要となる。
伝熱用導体層4は、図1(b)に示すように、少なくともその一部が平面視で平面コイル導体3と重なるとともに基板の側面に引き出されていればよいが、図2〜図4に図1(b)と同様の断面図で示すように、平面コイル導体3の形成領域の全域に平面視で重なるような形状の中央部分と、この外周領域に中央部分から基板の側面に形成された放熱用導体層5へと伝熱する部分とを設けるようにするのが好ましい。このような形状とすることにより、平面コイル導体3で発生した熱を効率よく受け取って外部へ放出することができるとともに、磁束の通過領域を確保することで内蔵コイルの特性の低下を抑えることができる。
伝熱用導体層4に平面コイル導体3の形成領域の全域に平面視で重なるような形状の中央部分を設けると、この部分によって上下に複数設けられた平面コイル導体間3に発生する漏れ磁束をシールドすることができるので、磁束の乱れを抑えることができ、電流を負荷した際の磁気飽和が起きにくくなり、高い重畳特性を得ることができる。
伝熱用導体層4の中央部分は、平面コイル導体3の形成領域より、平面視で内側および外側に平面コイル導体3から伝熱用導体層4までの距離程度拡がった形状とするのが好ましい。平面コイル導体3からの熱は平面コイル導体3から伝熱用導体層4への方向に対して45°拡がった範囲で伝熱量の9割以上が伝わるので、このような形状とすれば、平面コイル導体3から伝熱用導体層4の方向への熱のほとんどが伝熱用導体層4へ伝わることとなる。
伝熱用導体層4の中央部分から放熱用導体層5へと伝熱する部分の形状は、平面コイル導体3による磁束の通過領域をできるだけ小さくしないためには図2に示すような細長い形状のものがよいが、図3に示すように放熱用導体層5に向けてその幅が広くなるような形状とすると、放熱用導体層5への伝熱がより効率よく行なわれるので好ましい。このとき、磁束の密度は平面視で基板の内部より外周部の方が粗になるので、放熱用導体層5の幅を広げることによる磁束の通過領域の減少への影響は小さくてすむ。この場合の広がりは、最大でも両側に45°の角度で広がるようにすれば、磁束の通過領域の減少を抑えつつ十分な熱伝導の向上が得られるので好ましい。
本発明のコイル内蔵基板を作製する場合に、矩形状のコイル内蔵基板を縦横に複数列配置して、いわゆる多数個取り配線基板の形態にして多数のコイル内蔵基板を効率よく容易に作製しようとする場合は、平面コイル導体3は平面視で最外周がフェライト磁性体層2の形状(基板の外形)に沿った矩形状で形成されるのが好ましい。このようにすることで、コイル内蔵基板の外寸を変えずに平面コイル導体3の長さを最大限長く形成することができるため、平面コイル導体3の長さに比例するインダクタンス値を大きいものとすることができる。
このように平面コイル導体3が矩形状の基板の外形に沿って矩形状に形成される場合は、図4に示すように、伝熱用導体層4の中央部分から放熱用導体層5へと伝熱する部分を、平面コイル導体3の形成領域の形状に合わせて矩形状とした伝熱用導体層4の中央部分の角部から放熱用導体層5へと引き出すように設けるのが好ましい。平面コイル導体3の角部の外周における磁束密度は他の領域に比較して粗となるので、この部分によって磁束の通過領域を減少させることの影響は小さくてすむ。また上述した理由で、図4に示すように、放熱用導体層5に向けてその幅が広くなるような形状とするのがより好ましい。
伝熱用導体層4が上下に位置する平面コイル導体3間に形成される場合は、伝熱用導体層4と平面コイル導体3との距離は、平面コイル導体3からの発熱をより効率よく放熱させるために、また、平面コイル導体3の導体間に発生する漏れ磁束をより効果的にシールドするためにはできるだけ小さい方がよい。具体例には、上下の平面コイル導体3間の絶縁性を考慮すると、伝熱用導体層4と平面コイル導体3との距離は15μm程度が好ましい。
また、伝熱用導体層4は、図5および図6に示すように平面コイル導体3と一対の絶縁層1・1の少なくとも一方との間に形成されている場合には、平面コイル導体3から絶縁層1への伝熱経路の途中に伝熱用導体層4が配置されることから、平面コイル導体3で発生した熱が絶縁層1へ伝わる前に確実に伝熱用導体層4へ伝わるので好ましい。図5および図6は、本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す図であり、それぞれ(a)は本発明のコイル内蔵基板の断面図であり、(b)は(a)をA‐A’線で切断した断面図である。
また、図7に示すように上下の平面コイル導体3・3間の伝熱用導体層4に加えて平面コイル導体3と絶縁層1との間にも伝熱用導体層4を形成した場合には、放熱用導体層5へ伝熱するための径路が大きくなるので、搭載したICなどの電子部品が平面コイル導体3で発生する熱によって誤動作してしまうことをより一層防止することができる。図7は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す図であり、図7は本発明のコイル内蔵基板の断面図である。
さらに、平面コイル導体3からノイズが放射されたとしても、伝熱用導体層4が平面コイル導体3と配線層6が形成された絶縁層1との間において平面視で平面コイル導体3と重なるように配置されていることから、伝熱用導体層4がシールド層として機能してノイズを吸収することとなるので、放射されたノイズによる配線層6への影響が抑えられ、搭載されるICをより安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることができる。
また、このような構成において、平面コイル導体3と一対の絶縁層1・1の少なくとも一方との間に形成された伝熱用導体層4が、接地導体層を兼ねていることが好ましい。この場合には、伝熱用導体層4(接地導体層)がノイズを吸収した後、ノイズにより発生した電位が接地導体層に流れる電流とともに外部へ放出されるので、平面コイル導体3から放射されたノイズをシールドする効果がより大きくなり、放射されたノイズによる配線層6への影響がより抑えられ、搭載されるICをより安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることができる。そして、1つの層で接地導体層と伝熱用導体層4との機能を有することから、これらを別々に2層形成する場合に比較して、搭載されるICをより安定して動作させることが可能な、より薄型のコイル内蔵基板を得ることができる。
このように、搭載したICなどの電子部品への熱の影響や、電子部品が搭載される配線層6へのノイズの影響を防止するようにするためであるので、少なくとも一方の絶縁層1とは、ICなどの電子部品の搭載される主面側の絶縁層1である。基板の両主面に電子部品が搭載される場合は、両方の平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成される。電子部品が搭載されるのが一方主面側のみである場合でも、放熱の効率を向上させるために両方に形成してもよいことはいうまでもない。
また、平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成される伝熱用導体層4は、図5に示すような、いわゆるベタ層として全面にわたる形状で形成されるのが好ましい。これにより平面コイル導体3から絶縁層1への伝熱経路の全てを覆うように伝熱用導体層4が形成され、またシールド用導体層としても、ノイズの発生源である平面コイル導体3を覆うことになる。
平面コイル導体3と一対の絶縁層1・1の少なくとも一方との間に形成された伝熱用導体層4が、接地導体層を兼ねている場合は、さらに図6に示すように、伝熱用導体層4(接地導体層)の平面視で平面コイル導体3と重なる部分に開口部4aを設けるのが好ましい。これにより、接地導体層4の平面コイル導体3に対向する部分の面積が小さくなり、平面コイル導体3と接地導体層4との間の容量が小さくなるので、基板の厚みを厚くすることなく、コイルのインダクタンスとキャパシタンスによって生じる共振周波数を高くすることができる。その結果として、より高い周波数においても高インダクタンス値を得ることができるので、内蔵コイルをより小さくすることができ、小型のコイル内蔵基板を得ることができる。
伝熱用導体層4に設ける開口部4aは、平面コイル導体3と重なる部分が全て開口した平面コイル導体3に沿った形状としてもよいが、図6に示すように分割されて複数形成されていることが好ましい。開口部4aが分割されて複数形成されている、すなわち複数の開口部4aが間隔をあけて配置されていることから、この開口部4a間が、電流が接地導体層4内を平面コイル導体3に沿って形成された開口部4aと交差する方向に流れるための経路となるので、開口部4aによる電源インダクタンスの上昇やそれに伴う電源ノイズの増大が抑えられ、コイル内蔵基板に搭載されるICを高周波で安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることできる。
このような開口部4aにするためには、開口部4aの大きさは平面コイル導体3より一回り大きいものがよく、積層の位置ずれを考慮すると平面コイル導体3の幅に対して0.1mm程度大きい幅のものとすればよい。また、複数の開口部4a間の間隔は、電源インダクタンスの上昇やそれに伴う電源ノイズの増大が抑えられるような電流経路とするには、0.1mm以上の幅があればよい。開口部4aの面積は要求される共振周波数に応じて決定すればよい。また、形状も特に限定されるものではなく、図6に示す例のような四角形以外の多角形や円形等の形状でもよい。
また、平面コイル導体3が矩形状の基板の外形に沿って矩形状に形成される場合は、平面コイル導体3の角部に特に電界が集中することによって起きるノイズを抑えるために、図6に示すように、平面コイル導体3の角部とは重ならないような開口部4aとするのが好ましい。
また、平面コイル導体3の角部を、曲線状に曲がっている形状、または、複数の屈曲部を有する形状とすると、平面コイル導体3に対向する接地導体層の面積が小さくなり、平面コイル導体3と接地導体層との間のキャパシタンスが小さくなることで、より高周波までインダクタンス値が得られ、また、角部が電流の集中しにくい形状となることで電界の集中が低減し、ノイズ放射そのものを削減することができるので好ましい。
伝熱用導体層4が接地導体層を兼ねない場合は、図8に図7と同様の断面図で示すように、接地導体層6eを別に設けてもよいことはいうまでもない。この場合は、平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成された伝熱用導体層4により、接地導体層6eと平面コイル導体3との間の電磁気的結合が妨げられるので、接地導体層6eの平面コイル導体3と重なる部分に開口部4aを設けなくても平面コイル導体3と接地導体層4との間の容量が小さくなるので、基板の厚みを厚くすることなく、コイルのインダクタンスとキャパシタンスによって生じる共振周波数を高くすることができる。なお、接地導体層6eは、図面では省略されているが、図1に示すように伝熱用導体層4が平面コイル導体3の間に形成される場合や、図5〜図7に示すような形態で伝熱用導体層4が接地導体層を兼ねない場合においても必要に応じて形成されるものである。
伝熱用導体層4が平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成されている場合には、伝熱用導体層4と平面コイル導体3との距離は、平面コイル導体3の周囲に発生する磁束の量に応じて設定され、発生した磁束が通過できるような距離(フェライト磁性体層2の厚み)が必要である。同様の理由で、伝熱用導体層4が平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成されない場合においても、平面コイル導体3と絶縁層1との間には同程度の厚みのフェライト磁性体層2が形成される。この距離は、平面コイル導体3の寸法、平面コイル導体に流れる電流の周波数や電流値、あるいはフェライト磁性体層2の透磁率により異なるが、例えば、フェライト磁性体層2の透磁率が500の場合は0.1mm以上とすればよい。
図9は、本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の他の一例を示す図であり、図9(a)は本発明のコイル内蔵基板の断面図(図9(b)をB−B’線で切断した縦断面図)、図9(b)は図9(a)をA−A’線で切断した断面図(横断面図)であり、5aは主面側放熱用導体層、7は伝熱用貫通導体である。図9に示すように、上記構成において、平面視で平面コイル導体3の内側の領域に、フェライト磁性体層2から基板の主面にかけてフェライト磁性体層2および絶縁層1を貫通する伝熱用貫通導体7が形成され、基板の主面に伝熱用貫通導体7が接続された主面側放熱用導体層5aが形成されていることが好ましい。これにより、平面コイル導体3において発生した熱を伝熱用貫通導体7を介して主面側放熱用導体層5aへ伝えることができるので、より効率よく平面コイル導体3において発生した熱を外部へ放熱することができる。
このとき、伝熱用貫通導体7は、図9に示すように、平面コイル導体3の周りに発生した磁束が平面コイル導体3の内側の領域を通過するための領域を設けるように、間隔を設けて配置される。
また、伝熱用貫通導体7と平面コイル導体3との距離はできるだけ近い方が平面コイル導体3の内側に領域における磁束の通過領域を狭めないので好ましいが、両者の間の電気的絶縁性を考慮すると、具体的には、伝熱用貫通導体7と平面コイル導体3との距離は50μm程度以上であることが好ましい。
また、図10に図9と同様の断面図で示すように、上記構成において、複数の伝熱用貫通導体7が、平面コイル導体3の内側に沿って配置されていることが好ましい。これにより、平面コイル導体3の内側の領域において、伝熱用貫通導体7が平面コイル導体3の周りに発生した磁束が平面コイル導体3の内側の領域を通過するのを妨げることがないので、インダクタンスを低下させることなく平面コイル導体3において発生した熱を伝熱用貫通導体7を介して主面側放熱用導体層5aから外部へ放熱することができる。
この場合においても、伝熱用貫通導体7は磁束が通過できるような間隔を設けて配置される。この間隔は、平面コイル導体3の寸法、平面コイル導体3に流れる電流の周波数や電流値、あるいはフェライト磁性体層2の透磁率により異なるが、例えば、フェライト磁性体層2の透磁率が500の場合は0.1mm以上とすればよい。
上述したように平面コイル導体3が矩形状の基板の外形に沿って矩形状に形成される場合は、伝熱用貫通導体7は平面コイル導体3の内側の領域における角部に配置されることが好ましい。角部における磁束密度は他の領域に比較して粗となるので、この部分に形成された伝熱用貫通導体7によって磁束の通過領域を減少させることの影響は小さくてすむ。また、平面コイル導体3の内側の領域において角部の温度が高くなりやすいので、より効率よく放熱することができる。
また、このようなことから、角部に配置される伝熱用貫通導体7の横断面積を他の部分よりも大きいものとすると、インダクタンスを低下させることなくより効率よく放熱することができるので好ましい。
伝熱用貫通導体7の横断面形状は、図面に示したような円形だけでなく、三角形や四角形またはそれ以上の多角形および楕円形状等であってもよく、特に制限はない。複数の伝熱用貫通導体7を平面コイル導体3の内側に沿って配置する場合は、伝熱用貫通導体7の横断面形状を、平面コイル導体3の内側の領域の中心に向かって細長い形状、例えば長方形や楕円形にするのが好ましい。このような形状とすることにより、伝熱用貫通導体7の間隔を狭めて磁束の通過を妨げることなく、横断面積を大きくして効率よく放熱することができる。
また、図11に図9と同様の断面図で示すように、上記構成において、伝熱用貫通導体7が伝熱用導体層4に接続されていることが好ましい。これにより、平面コイル導体3において発生した熱は、面積が広く熱を受け取りやすい伝熱用導体層4へその多くが伝わった後に、伝熱用導体層4が接続された伝熱用貫通導体7に直接伝わり、伝熱用貫通導体4が接続された主面側放熱用導体層5aを介してコイル内蔵基板の主面から外部へより効率よく放熱することができる。この場合、図11に示すように伝熱用導体層4の一部を内側へ延ばして伝熱用貫通導体7と接続してもよいし、図13に図9と同様の断面図で示すように、伝熱用導体層4の内周の全域にわたって内側へ延ばして伝熱用貫通導体7と接続してもよい。
また、図12〜図14に図9と同様の断面図で示すように、上記構成において、伝熱用貫通導体7が、平面視で平面コイル導体3の内側に沿った環状部7aを有することが好ましい。これにより、面積の広い環状部7aがより効率よく平面コイル導体3において発生した熱を受け取ることができ、より効率よく伝熱用貫通導体7へ熱を伝えることができるので、搭載されるICをより安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることができる。
また、平面コイル導体3に近い位置に伝熱用貫通導体7の環状部7aが形成されるので、上下の平面コイル導体3・3のそれぞれにおいて最内周の導体周りに沿った磁束が発生しにくく、上下の平面コイル導体3・3の最外周から最内周(環状部7aの内側)にかけて、平面コイル導体3の全体の周囲に磁束が発生することとなり、平面コイル導体3の内周と外周との間に磁束が集中することにより生じる磁束の部分飽和を抑制し、重畳特性の低下を抑制することができる。
環状部7aは、フェライト磁性体層2および絶縁層1を貫通する伝熱用貫通導体7を横方向に互いに接続するように形成され、平面視で環状となった部分である。図12に示すように1つのフェライト磁性体層2上に形成して完全な環状としてもよいが、図13および図14に示すようにフェライト磁性体層2を貫通して厚み(フェライト磁性体層2の厚み方向の高さ)を厚くして形成してもよく、その場合には完全な環状でなくてもよい。フェライト磁性体層2を貫通して厚みを厚くすると板状になり、平面コイル導体3で発生した熱を受ける面積がより大きくなるので、より効率よく伝熱用貫通導体7へ熱を伝えることができる。この場合、図13(a)および図14(a)に示すように、上下の平面コイル導体3・3の間において環状となるようにすると、磁束の通過を妨げることがないのでよい。図12に示すような完全な環状の場合は、上の絶縁層1とフェライト磁性体層2との層間から主面側放熱用導体層5aが形成された下の絶縁層1内の間のどこでも形成することができる。また、図12に示すように平面コイル導体3と同一面に形成すると平面コイル導体3に最も近いのでより効率よく熱を受け取ることができるので好ましく、さらに上下にも形成するとより効率よく熱を受け取ることができるのでより好ましい。
また、例えば図15および図16に図9と同様の断面図で示すように、上記構成において、伝熱用貫通導体7は、その横断面積がフェライト磁性体層2側より基板の主面側の方が大きいことが好ましい。これにより、伝熱用貫通導体7中におけるフェライト磁性体層2側から基板の主面側へ向かう伝熱の熱抵抗がより小さいものとなるので、伝熱用貫通導体7に伝わった熱は、より効率よく主面側放熱用導体層5aへと伝えられ、主面側放熱用導体層5aを介してより効率よく外部へ放熱される。
伝熱用貫通導体7の横断面積は、図15に示すようにフェライト磁性体層2から基板の主面にかけての途中から大きくなるものでもよいし、図16に示すように段階的に大きくなるものでもよい。また、段差なしにフェライト磁性体2から基板の主面にかけて連続的に徐々に大きくなるものでもよい。
放熱用導体層5は、図1〜図16に示すように、基板の側面に伝熱用導体層4に接続されて形成される。その大きさは特に制限されるものではく、図1に示すようにフェライト磁性体層2の側面だけでなく、図5や図6に示すように絶縁層1の側面にかけて、さらには図7や図8に示すように基板の主面(下面)にかけて形成してもよい。平面コイル導体3に対するシールド性の観点からは、少なくとも基板を側面視して平面コイル導体3と重なるように、例えばフェライト磁性体層2の側面の全面に形成されるのが好ましい。放熱性の観点からは、その面積が大きいほど効率よく放熱できるので、できるだけ大きい方が好ましい。また、下方の絶縁層1の側面やさらに下面にかけて形成すると、基板を外部回路基板に半田等の接合材を用いて接合することが可能となるので、熱容量の大きい外部回路基板へ伝熱して放熱することにより放熱効率を向上させることができ、また外部回路基板との接合面積が大きくなり、接合強度および信頼性も向上させることができるので好ましい。
主面側放熱用導体層5aは、図9〜図16に示すように、基板の側面に伝熱用貫通導体7に接続されて形成される。その大きさは特に制限されるものではないが、放熱性の観点からは、その面積が大きいほど効率よく放熱できるので、できるだけ大きい方が好ましい。また、基板を外部回路基板に半田等の接合材を用いて接合する際には、主面側放熱用導体層5aと外部回路基板に形成した接続パッドとの間にも接合材を用いて接合すると、熱容量の大きい外部回路基板へ伝熱して放熱することにより放熱効率を向上させることができ、また外部回路基板との接合面積が大きくなり、接合強度および信頼性も向上させることができるので好ましい。
また、放熱用導体層5および主面側放熱用導体層5aは、その厚みを配線層6や平面コイル導体3に比較して厚くすることで、より放熱性を向上させることができる。例えば、配線層6や平面コイル導体3の厚みが通常10μm程度で形成されるのに対して、より厚く20μm以上の厚みにするとよい。
さらに、放熱用導体層5および主面側放熱用導体層5aは、その表面粗さを搭載用電極6bや電極パッド6dに比較して大きくすることで、表面積を大きくして放熱性を向上させることができる。例えば、搭載用電極6bや電極パッド6dの表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が通常1〜5μm程度であるのに対して、20μm程度以上の表面粗さに、またはそれ以上のレベルの凹凸のある形状するとよい。
絶縁層1は、その表面や内部に形成される配線層6や絶縁層1に挟持されて形成されるフェライト磁性体層2および平面コイル導体3とともに800〜1000℃の温度で同時焼成された絶縁体粉末の焼結体から成るものであり、配線層6のインダクタンスが高くなることを抑制するという観点からは、非磁性フェライトやガラスセラミックス等の非磁性絶縁体から成るものが好ましい。絶縁層1は、絶縁体粉末および有機バインダーを主成分とする絶縁層1用グリーンシートを製作し、この絶縁層1用グリーンシートを必要な配線展開ができるだけの枚数積層した後、800〜1000℃の温度で焼成することにより作製される。
絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、Zn系フェライトやCu系フェライトを用いればよい。中でも、X−Fe2O4(XはCu,Zn)として示される正スピネル構造の固溶体であるCu−Zn系フェライトが好適である。
Cu−Zn系フェライトの場合であれば、その組成比は焼結体としてFe2O3を50〜70質量%,CuOを5〜20質量%,ZnOを20〜35質量%とすると、1000℃以下の低温で焼結密度5.0g/cm3以上の高密度焼成が可能であり、かつ、焼成後の非磁性フェライト層は低温度域でも非磁性であるので好ましい。Fe2O3はフェライトの主成分であり、その割合が50質量%未満であると磁性が発生する傾向があり、70質量%より多いと焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向がある。CuOは焼結温度の低温化のために重要な要素であり、CuOが低温で液相を形成することにより焼結を促進させる効果を用いて、磁気特性を損なわずに800〜1000℃の低温で焼成することができる。このことからその割合が5質量%未満であると、配線層6と同時に800〜1000℃で焼成を行なうと焼結密度が不十分になり、機械強度が不足する傾向があり、20質量%より多いとキュリー温度が上がり、低温領域で磁性が発生する傾向がある。ZnOは非磁性フェライトを非磁性にするために重要な要素であり、その割合が20質量%未満であると焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向があり、35質量%より多いと磁性が発生する傾向がある。
また、絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、非磁性フェライトの粉末に軟化点の低いガラスを加えて低温焼成したものであってもよい。このときのガラスとしては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1及びM2は同じまたは異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1及びM2は上記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等を用いることができ、ガラスの軟化点が600℃以下であることがフェライトの焼結を阻害しないうえで望ましい。
絶縁層1がガラスセラミックスから成る場合は、絶縁体粉末は上記のようなガラスの粉末とフィラー粉末との混合物の焼結体から成り、フィラー粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
配線層6は、Cu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末の焼結体であるメタライズ金属からなるものであり、絶縁層1用グリーンシートに配線層6用導体ペーストを印刷することにより配線パターンを形成しておき、絶縁層1用グリーンシートと同時焼成することにより形成される。
フェライト磁性体層2は、強磁性フェライトであるNi−Zn系フェライト,Mn−Zn系フェライト,Mg−Zn系フェライト,Ni−Co系フェライト等の磁性フェライト粉末の焼結体であるが、X−Fe2O4(XはCu,Ni,Zn)として示される逆スピネル構造の固溶体であるNi−Zn系フェライトが高周波帯域で十分に高い透磁率を得るのに好ましい。
Ni−Zn系フェライトの場合であれば、その組成比は焼結体としてFe2O3を63〜73質量%,CuOを5〜10質量%,NiOを5〜12質量%,ZnOを10〜23質量%とすると、1000℃以下の低温で焼結密度5.0g/cm3以上の高密度焼成が可能であり、かつ高周波帯域で十分に高い透磁率を得ることができるので好ましい。Fe2O3はフェライトの主成分であり、その割合が63質量%未満であると十分な透磁率が得られない傾向があり、73質量%より多いと焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向がある。CuOは焼結温度の低温化のために重要な要素であり、CuOが低温で液層を形成することにより焼結を促進させる効果を用いて、磁気特性を損なわずに800〜1000℃の低温で焼成することができる。このことからその割合が5質量%未満であると、配線層6や平面コイル導体3と同時に800〜1000℃で焼成を行なうと焼結密度が不十分になり、機械強度が不足する傾向があり、10質量%より多いと磁気特性の低いCuFe2O4の割合が多くなるため磁気特性を損ないやすくなる傾向がある。NiOはフェライト磁性体層2の高周波域における透磁率を確保するために含有させる。NiFe2O4は高周波域まで共振による透磁率の減衰を起こさず、高周波域での透磁率を比較的高い値に維持することができるが、初期透磁率は低いという特性をもつため、5質量%未満であると10MHz乃至それ以上の高周波域での透磁率が低下する傾向があり、12質量%より多いと初期透磁率が低下する傾向にある。ZnOはフェライト磁性体層2の透磁率向上のために重要な要素であり、フェライト組成のうち10質量%未満であると透磁率が低くなり、逆に23質量%より多くても磁気特性が悪くなる傾向がある。
フェライト磁性体層2は、絶縁層1に用いられる絶縁層用グリーンシートと同様の手法で形成されたフェライト磁性体層2用グリーンシートを用いることで作製される。
平面コイル導体3は、配線層6と同様に金属粉末の焼結体であるメタライズ金属層からなるものであり、フェライト磁性体層2用グリーンシートの表面に平面コイル導体3用導体ペーストを印刷することによりコイルパターンを形成し、さらにその上にフェライト磁性体層2用グリーンシートを積層して同時焼成することにより、フェライト磁性体層2に埋設されて形成される。平面コイル導体3が上下に複数重ねて形成される場合は、コイルパターンおよび貫通導体パターンが形成されたフェライト磁性体層2用グリーンシートを複数積層した上にさらにフェライト磁性体層2用グリーンシートを積層すればよい。
平面コイル導体3の作製に用いられる金属粉末は、配線層6と同様のCu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末を用いる。これにより、平面コイル導体3の電気抵抗が小さくなり、平面コイル導体3の発熱そのものを抑えることができる。
絶縁層1用グリーンシートまたはフェライト磁性体層2用グリーンシートは、絶縁体粉末または磁性フェライト粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤や可塑剤等を混合してスラリーを得て、これからドクターブレード法,圧延法,カレンダーロール法,押し出し成形法等によってシート状に塗布し、乾燥して成形することにより作製される。
絶縁層1用グリーンシートに用いられる絶縁体粉末は、絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、Fe2O3とCuOやZnOの粉体を所定の割合で混合して仮焼したものを粉砕し、原料粉末とすることができる。
フェライト磁性体層2用グリーンシートに用いられる強磁性フェライト粉末は、Fe2O3とCuO,ZnO,またはNiOとを予め仮焼することにより作製されたフェライト粉末であり、平均粒径が0.1μm〜0.9μmの範囲で均一であり、粒形状は球形状に近いものが望ましい。これは、平均粒径が0.1μmより小さいと、フェライト磁性体層2用グリーンシートの製作においてフェライト粉末の均一な分散が困難であり、平均粒径が0.9μmより大きいとフェライト磁性体層2用グリーンシートの焼結温度が高くなりやすくなるからである。また、粒径が均一で球状に近いことにより均一な焼結状態を得ることができる。例えばフェライト粉末で部分的に小さい粒径が存在した場合は、その部分のみ結晶粒の成長が低下し、焼結後に得られるフェライト磁性体層2の透磁率が安定しにくい傾向がある。
有機バインダーは、従来よりセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解性や揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
グリーンシートの有機溶剤は、絶縁体粉末やフェライト粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、トルエン,ケトン類,アルコール類の有機溶媒や水等が挙げられる。これらの中で、トルエン,メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール等の蒸発係数の高い溶剤はスラリー塗布後の乾燥工程が短時間で実施できるので好ましい。
グリーンシートを作製するためのスラリーは絶縁体粉末やフェライト粉末100質量部に対して有機バインダーを5〜20質量部、有機溶剤を15〜50質量部加え、ボールミル等の混合手段により混合することにより3〜100cpsの粘度となるように調製される。
配線層6の内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンは、絶縁層1用グリーンシートの表面に配線層6用導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法で所定パターンに印刷して形成される。貫通導体6cとなる配線パターンは、内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンの形成に先立って絶縁層1用グリーンシートにパンチング加工やレーザ加工等により貫通孔を形成し、この貫通孔に印刷やプレス充填等の埋め込み手段によって配線層6用導体ペーストを充填することで形成される。
平面コイル導体3となるコイルパターンも同様に、フェライト磁性体層2用グリーンシートの表面に平面コイル導体3用導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法で所定パターンに印刷して形成され、フェライト磁性体層2内の貫通導体となる配線パターンも上記貫通導体6cとなる配線パターンと同様にして形成される。平面コイル導体3用導体ペーストは配線層6用導体ペーストと同じものを用いればよい。
平面コイル導体3となるコイルパターンは、要求されるインダクタンス値やサイズにもよるが、上記のように印刷により形成する場合は線幅および隣接する外周と内周の導体間距離が0.1mm程度以上であれば容易に形成できる。できるだけ小さい面積でコイルの巻き数を多くするためには、線幅を0.1〜1mm程度にし、導体間距離を0.1〜0.2mm程度にすればよい。
配線層6用導体ペーストおよび平面コイル導体3用導体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで作製される。
導体ペーストの有機バインダーは、従来より導体ペーストに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系、アルキド系の有機バインダーがより好ましい。
導体ペーストの有機溶剤は、上記した金属粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテートおよびフタル酸等が使用可能である。
配線層6の内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンを形成するための配線層6用導体ペーストや平面コイル導体3用導体ペーストは、金属導体粉末100質量部に対して有機バインダーを3〜15質量部、有機溶剤を10〜30質量部加えて混練することにより、印刷により導体ペーストの滲みやかすれ等の不具合が発生せず良好に所定形状のパターン形成ができる程度の粘度となるようにすることが望ましい。
貫通導体6cとなる配線パターンを形成するための導体ペーストは、溶剤量や有機バインダー量により、内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンを形成するための配線層6用導体ペーストや平面コイル導体3用導体ペーストに対して比較的流動性の低いペースト状に調整し、貫通孔への充填を容易にし、かつ加温硬化するようにするとよい。また、焼結挙動の調整のために金属導体粉末にガラスやセラミックスの粉末を加えた無機成分としてもよい。
絶縁層1を非磁性フェライトで形成する場合には、搭載用電極6bや電極パッド6dのような絶縁層1の外表面に形成される配線層6を形成するための配線層6用導体ペーストには、ZnO,CuO,MgO,CoO,NiO,MnO,FeO等の2価の金属酸化物の粉末を添加することが望ましい。2価の金属酸化物を添加することで、外表面の配線層6を非磁性フェライトを主成分とする絶縁層1に強固に接合させることができる。
コイルパターンが形成されたものを含む所定枚数のフェライト磁性体層2用グリーンシートの上下にそれぞれ配線パターンが形成された所定枚数の絶縁層1用グリーンシートを配置して積層体を作製し、この積層体を焼成することによりコイル内蔵基板は作製される。
伝熱用導体層4,放熱用導体層5および主面側放熱用導体層5aは、配線層6と同様にCu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末の焼結体であるメタライズ金属からなるものである。伝熱用導体層4は、内部配線層6a等の形成に用いる配線層6用導体ペーストを、スクリーン印刷法やグラビア印刷法等により絶縁層1用グリーンシートまたはフェライト磁性体層2用グリーンシートの表面に所定パターン形状に塗布し、これらとともに同時焼成されて形成される。放熱用導体層5は、後述するようにして絶縁層1用グリーンシートとフェライト磁性体層2用グリーンシートとの積層体を作製した後に、搭載用電極6bや電極パッド6dのような絶縁層1の外表面に形成される配線層6用導体ペーストと同様の導体ペーストを、スクリーン印刷法やグラビア印刷法等により積層体の側面に所定パターン形状に塗布し、これらとともに同時焼成されて形成される。多数個取りの形態で作製する場合は、各基板の境界に貫通もしくは貫通しない孔部を形成した積層体を作製し、基板の側面となる孔部内面に導体ペーストを塗布するか、充填して同時焼成した後に分割してもよいし、多数個取りの積層体を焼成して分割した後に露出した側面に導体ペーストを塗布して焼き付けてもよい。主面側放熱用導体層5aは、伝熱用導体層4と同様の導体ペーストを同様にして絶縁層1用グリーンシートの表面に所定パターン形状に塗布し、これとともに同時焼成されて形成される。
放熱用導体層5および主面側放熱用導体層5aの表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)を配線層6(搭載用電極6bや電極パッド6d)より大きくするには、導体ペーストに用いる金属粉末を粒径の大きいものを用いて形成すればよい。例えば、配線層6,平面コイル導体3または伝熱用導体層4の形成に用いる導体ペーストに5μm程度の金属粉末を用いるのに対して、放熱用導体層5および主面側放熱用導体層5aの形成に用いる導体ペーストには10μm程度以上の金属粉末を用いればよい。
また、放熱用導体層5および主面側放熱用導体層5aの表面に凹凸のある形状とするには、例えば導体ペーストを塗布した後に型を押し付けるなどして、溝の列あるいは多数の点状の凸部または凹部といった形状の凹凸を形成すればよい。
伝熱用貫通導体7は、表層の配線パターンおよび主面側放熱用導体層5aとなる放熱用導体層パターンの形成に先立って絶縁層1用グリーンシートおよびフェライト磁性体層2用グリーンシートにパンチング加工やレーザ加工等により貫通孔を形成しておき、この貫通孔に印刷やプレス充填等の埋め込み手段によって貫通導体6c用の導体ペーストを充填し、これらと同時焼成することで形成される。貫通導体6cと伝熱用貫通導体4とが同一の層に形成される場合は、同時に貫通孔の形成およびペーストの充填を行なえばよい。
伝熱用貫通導体7の環状部7aは、図12に示すような、フェライト磁性体層2や絶縁層1を貫通しない形状の場合は、フェライト磁性体層2用グリーンシートやフェライト磁性体層2用グリーンシートに貫通導体6cや伝熱用貫通導体7となるパターンを形成した後に、伝熱用貫通導体7となるパターンの露出した部分と重なるようにフェライト磁性体層2用グリーンシートやフェライト磁性体層2用グリーンシート上に、配線層6のパターンと同様にして環状のパターンを形成すればよい。形成する位置が平面コイル導体3と同一平面上の場合は、環状のパターンは平面コイル導体3となるコイルパターンと同時に印刷形成すればよい。また、図13および図14に示すような、フェライト磁性体層2や絶縁層1を貫通する形状の場合は、伝熱用貫通導体4の形成時に同様にして同時に形成すればよい。環状部4aを完全な環状とするとグリーンシートに貫通孔を形成することができないので、図13および図14に示すような複数に分割した形状とすればよく、分割の数や形状については特に制限されるものではない。基板を矩形状とし、環状部4aも平面視で矩形の環状となるような場合は、図13に示すように平面視で折れ曲がっていない形状のものを組み合わせて環状部4aを設けると、貫通孔を形成した後にグリーンシートが変形しにくいので好ましい。
伝熱用貫通導体7の横断面積をフェライト磁性体層2側より基板の主面側の方を大きくするには、主面側のグリーンシートに形成する貫通孔を大きいものにすればよい。また、段差なしにフェライト磁性体2から基板の主面にかけて徐々に大きい形状とする場合は、上下で径の異なる貫通穴を形成すればよく、グリーンシートを打抜く金型のクリアランスを大きめにしたり、レーザの出力等を調節したりすることで可能である。
積層体を作製する方法は、積み重ねた絶縁層1用グリーンシートとフェライト磁性体層2用グリーンシートとに熱と圧力とを加えて熱圧着する方法や、有機バインダー,可塑剤,溶剤等からなる密着剤をシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。積層の際の加熱加圧の条件は、用いる有機バインダー等の種類や量により異なるが、概ね30〜100℃および2〜20MPaである。
積層体の焼成は、300〜600℃の温度で脱バインダーした後、800〜1000℃の温度で焼成することにより行なわれる。焼成雰囲気としては、平面コイル導体3やその他の配線がAg等の酸化しにくい材料から成る場合は大気中にて行なわれ、Cu等の酸化しやすい材料から成る場合は、窒素雰囲気が用いられ、脱バインダーしやすいように加湿したものを用いる。
焼成後のコイル内蔵基板の表面に形成された搭載用電極6b,電極パッド6dおよび放熱用導体層5には、半導体チップやチップ部品、または外部電気回路との半田等による接合を強固なものにするために、その表面にニッケル層および金層をめっき法により順次被着するとよい。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、伝熱用導体層4が上下の平面コイル導体3間に形成される場合においても、伝熱用導体層4を接地導体層に接続することにより平面コイル導体3間のシールド性を向上させたり、この場合には、基板の側面に形成された放熱用導体層5を介して接地導体層に接続することにより、平面コイル導体3に対するシールド性を向上させてもよい。
本発明の実施例1との比較のために、従来構成として実施例1の試料に対して図9に示すような、伝熱用導体層4および放熱用導体層5を有さないものとした以外は、実施例1と同様にしてコイル内蔵基板を作製した。
実施例1および比較例について、平面コイル導体3に電気的に接続された基板の表面の通電用表層配線層にプローブを当て、直流電源装置(菊水電子工業製「PMC18−3A」)により平面コイル導体3に5Vで1Aの電流を10秒間通電した後に、基板表面の温度測定用の表層配線層上の温度を測定した。温度の測定は、非接触式の放射温度計(キーエンス製「FT−H10」)を用いて測定した。
その結果、実施例1の基板の表層配線層上の温度は40℃であったのに対して、比較例の基板の表層配線層上の温度は80℃であった。これにより、比較例に対して実施例のコイル内蔵基板は、平面コイル導体3に発生した熱を基板の側面から放熱することのできるコイル内蔵基板とすることができることが確認できた。