JP2008158042A - 調光フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】様々な周波数においても、コントラストが高く、安定した調光機能を発揮する調光フィルムを提供する。
【解決手段】分散媒中に流動可能な状態で分散した光調整粒子を含む光調整懸濁液を高分子媒体より形成される樹脂マトリックス中に分散してなる調光層を有し、該調光層が透明導電性基板に挟持されてなる調光フィルムであって、電圧30〜100Vから選択される一定電圧で、周波数30〜1000Hzでの光透過率の変動が10以下である調光フィルム。
【選択図】図1

Description

本発明は、調光フィルムに関する。詳しくは、窓ガラス、各種平面表示素子、各種液晶表示素子の代替品、光シャッター、広告及び案内表示板、眼鏡、サングラス等に好適に用いられる調光フィルムに関する。
調光フィルムは、電界の印加の有無により光透過率が変化し、入射光量の調整を可能とするものである。例えば、電界に対して応答可能な光調整粒子を分散した光調整懸濁液を樹脂マトリックス中に分散した調光層を透明導電性基板上で挟持した調光フィルムが知られている。この調光フィルムは、光調整粒子を分散した光調整懸濁液の微細な液滴が紫外線照射によって硬化した樹脂マトリックス中に分散したフィルムである。この調光フィルム中で光調整粒子は、電界を印加していない状態では、ブラウン運動により光を吸収、散乱又は反射するため、フィルムへの入射光は透過できない。電界を印加した場合、光調整粒子の分極により、電界につれて平行な方向に配列するため、フィルムに入射した光を透過させる。このように、光調整粒子の電界への応答により、光の透過量を調整している(特許文献1参照)。
同様の調光フィルムにおいて、光調整粒子のアスペクト比を調整することにより、全体入射光量の調節が可能で、光調整粒子の凝集、沈降がなく、安定した調光機能を発揮する調光フィルムの検討がなされている(特許文献2参照)。また、固体マトリックス樹脂中に分散した光調整懸濁液の液滴のサイズを調整することにより、電界を印加した状態における光透過率との差であるコントラストが高く、電界を印加した状態のヘーズが低く、さらに、スイッチ速度が速い調光フィルムの検討がなされている(特許文献3参照)。
特開平11−218789号公報 特開2002−214653号公報 特開2006―064832号公報
調光フィルムは、航空機、船舶、建材、自動車、電車等のガラス、広告及び案内表示板など様々な用途に使用可能であるが、これら用途によって使用される周波数が異なる。このため、様々な周波数においても、安定した調光機能を発揮することができる調光フィルムが求められる。また、使用地域等の変更による周波数の切り替え時にも対応可能な調光フィルムが求められる。本発明は、様々な周波数においても、コントラストが高く、安定した調光機能を発揮する調光フィルムを提供することを目的とするものである。
本発明は、下記[1]〜[3]に記載の事項をその特徴とするものである。
[1]分散媒中に流動可能な状態で分散した光調整粒子を含む光調整懸濁液を高分子媒体より形成される樹脂マトリックス中に分散してなる調光層を有し、該調光層が透明導電性基板に挟持されてなる調光フィルムであって、電圧30〜100Vから選択される一定電圧で、周波数30〜1000Hzでの光透過率の変動が10以下である調光フィルム。
[2]調光層の厚みが10〜500μmである[1]記載の調光フィルム。
[3]光調整粒子のアスペクト比が6〜15である[1]又は[2]記載の調光フィルム。
本発明によれば、様々な周波数においても、コントラストが高く、安定した調光機能を発揮する調光フィルムを得ることが可能である。
本発明の調光フィルムは、分散媒中に流動可能な状態で分散した光調整粒子を含む光調整懸濁液を高分子媒体より形成される樹脂マトリックス中に分散してなる調光層を有し、該調光層が透明導電性基板に挟持されてなる調光フィルムであって、電圧30〜100Vから選択される一定電圧で、周波数30〜1000Hzにおける光透過率の変動割合が10以下であることを特徴とする。
調光フィルムの調光層では、液状の光調整懸濁液が、固体状の高分子媒体内に微細な液滴の形態で分散されている。このような調光フィルムは、電界を印加していない状態では、上記液滴中に流動状態で浮遊分散されている光調整粒子のブラウン運動により光を吸収、散乱又は反射するため、フィルムに入射した光はほとんど透過できない。しかし、調光フィルムに電界を印加すると、上記光調整粒子が電気的双極子モーメント持つことから、光調整粒子が電界につれて平行な方向に配列するため、フィルムに入射した光を透過させる。このように、光調整粒子が印加された電界に対して応答することにより、光の透過量を調整することが可能となる。
本発明の調光フィルムは、電圧30〜100Vから選択される一定電圧で、周波数30〜1000Hzにおける光透過率の変動を10以下とすることで、電界を印加していない状態における光透過率と、電界を印加した状態における光透過率との差であるコントラストに優れるものとなる。また、本発明の調光フィルムは、電圧30〜100Vから選択される一定電圧で、周波数30〜1000Hzにおける光透過率の変動が5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、周波数30〜1000Hzにおける光透過率の変動がないことが最も好ましい。
なお、本発明における電圧30〜100Vから選択される一定電圧で、周波数30〜1000Hzにおける調光フィルムの光透過率の変動とは、一定電圧を印加した際、周波数30〜1000Hzにおける調光フィルムの光透過率を測定し、最大の光透過率の値から最小の光透過率の値を引いた値とする。また、光透過率は、分光式色差計(例えば、日本電色工業(株)製SZ−Σ90等)を使用し、A光源、視野角2度で測定したY値(%)とする。
本発明の調光フィルム中の光調整粒子のアスペクト比は良好なコントラストを得られる点から、6〜15であることが好ましく、7超12以下であることがより好ましく、7.5〜11であることがさらに好ましい。また、光調整粒子のアスペクト比が15を超えると、視覚的にヘーズ(濁度)が大きくなる傾向があり、フィルムにざらつき感がでる傾向がある。また、光調整粒子の電界に対する応答性が低下し、電界印加時の光透過率が低くなる傾向があり、電界印加時のフィルムの透明感が低下する傾向がある。一方、アスペクト比が6未満であると、コントラストが低下する傾向がある。また、低周波数に電界において、光調整粒子の電界に対する応答性が低下する傾向がある。
本発明におけるアスペクト比は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡で光調整粒子を撮影し、撮影した画像より任意に50個の光調整粒子を抽出し、各光調整粒子の長径と短径の比(長径/短径)の平均値として算出することができる。ここで、長径とは、上記撮影した画像により二次元視野内に投影された光調整粒子について、最も長い部分の長さとする。また、短径とは、上記長径に直交する最も長い部分の長さとする。
本発明において、光調整粒子の長径は、200〜500nmが好ましく250〜450nmがより好ましく、300〜400nmがさらに好ましい。また、光調整粒子の短径は30〜90nmが好ましく、40〜70nmがより好ましく、50〜70nmがさらに好ましい。
光調整粒子のアスペクト比は、例えば、粉砕、分級等の機械的な処理による粒子径調整、遠心分離による微粒、粗粒等の除去による粒子径分布調整などを適宜行うことで調整することが可能である。また、光調整粒子の製造条件を適宜調整したり、光調整粒子の原料の粒子径、粒子径分布等を適宜調整することなどによっても調整することが可能である。
本発明における光調整粒子としては、例えば、ポリ過ヨウ化物、炭素繊維、カーボンナノファイバー等の無機繊維、カーボンナノチューブ、無金属フタロシアニン、銅、ニッケル、鉄、コバルト、クロム、チタン、ベリリウム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、クロム等を中心金属とする金属フタロシアニン等が挙げられる。中でも、ポリ過ヨウ化物を用いることが好ましい。
ポリ過ヨウ化物としては、ピラジン−2,3−ジカルボン酸・2水和物、ピラジン−2,5−ジカルボン酸・2水和物、ピリジン−2,5−ジカルボン酸・1水和物からなる群の中から選ばれた1つの物質とヨウ素及びヨウ化物を反応させて作製したポリ過ヨウ化物が挙げられる。このようにして得られるポリ過ヨウ化物としては、例えば、下記一般式
CaI(C)・XHO (X:1〜2)
CaI(C)b・cHO (a:3〜7、b:1〜2、c:1〜3)
で表されるものが挙げられる。これらのポリ過ヨウ化物は針状結晶であることが好ましい。
また、光調整粒子としては、例えば、米国特許第2,041,138号明細書(E.H.Land)、米国特許第2,306,108号明細書(Landら)、米国特許第2,375,963号明細書(Thomas)、米国特許第4,270,841号明細書(R.L.Saxe)及び英国特許第433,455号明細書等に開示されている化合物も用いることができる。これらに開示されている化合物は、ピラジンカルボン酸、ピリジンカルボン酸の内の1つを選択して、ヨウ素と反応させることにより、ポリヨウ化物、ポリ塩化物又はポリ臭化物等のポリハロゲン化物とすることによって作製されている。これらのポリハロゲン化物は、ハロゲン原子が無機質又は有機質と反応した錯化合物で、これらの詳しい製法は、例えば、サックスの米国特許第4,422,963号明細書に開示されている。
ここで光調整粒子を合成する過程において、均一な大きさの粒子を形成させるため、及び、光調整懸濁液内での粒子の分散性を向上させるため、ニトロセルロース等の高分子物質を使用することが好ましい。ニトロセルロース等の高分子分子物質を用いることにより、光調整懸濁液が固体状の高分子媒体内に微細な液滴の形態で分散された際に、光調整粒子が微細な液滴内へ容易に分散、浮遊し、電界に対する応答性が向上する傾向にある。
本発明における樹脂マトリックスを形成する高分子媒体としては、例えば、光重合開始剤及び、紫外線、可視光線、電子線等のエネルギー線により硬化する高分子化合物を含む高分子組成物が挙げられる。上記高分子組成物としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する置換基をもつ高分子化合物シリコーン樹脂及び光重合開始剤を含む高分子組成物が挙げられる。
上記エチレン性不飽和結合を有する置換基をもつ高分子化合物としては、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が合成容易性、調光性能、耐久性等の点から好ましい。これらの樹脂は、置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を有することが、調光性能、耐久性等の点から好ましい。
シリコーン系樹脂として、具体的には、例えば、特公昭53−36515号公報、特公昭57−52371号公報、特公昭58−53656号公報、特公昭61−17863号公報等に記載の高分子化合物を挙げることができる。
また、上記シリコーン系樹脂としては、例えば、両末端シラノールポリジメチルシロキサン、両末端シラノールポリジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン等の両末端シラノールシロキサンポリマー、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン等のエチレン性不飽和結合含有シラン化合物などを、有機錫系触媒である2−エチルヘキサン錫の存在下で、脱水素縮合反応及び脱アルコール反応させて合成される。樹脂の形態としては、無溶剤型が好ましい。すなわち、樹脂の合成に溶剤を用いた場合には、合成反応後に溶剤を除去することが好ましい。(3−アクリロキシプロピル)メトキシシラン等のエチレン性不飽和結合含有シラン化合物の使用量は、原料シロキサン及びシラン化合物総量の2〜30重量%とすることが好ましく、5〜18重量%とすることがより好ましい。
前記アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン等の主鎖形成モノマーと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエチレン性不飽和結合導入用官能基含有モノマーなどを共重合して、プレポリマーを一旦合成し、次いで、このプレポリマーの官能基と反応させるべく(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸等のモノマーを前記プレポリマーに付加反応させることにより得ることができる。
前記ポリエステル樹脂は、公知の方法で容易に製造できる。
これらエチレン性不飽和結合を有する置換基をもつ高分子化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって得られるポリスチレン換算の重量平均分子量は、20,000〜100,000であることが好ましく、30,000〜80,000であることがより好ましい。
上記エチレン性不飽和結合を有する置換基をもつ高分子化合物を用いる場合、エネルギー線に露光するとラジカル重合を活性化する光重合開始剤を用いることができる。具体的には2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、(1−ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン等を用いることができる。
これらの光重合開始剤の使用量は、上記エチレン性不飽和結合を有する置換基をもつ高分子化合物100重量部に対して0.05〜20重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
また、上記エチレン性不飽和結合を有する置換基をもつ高分子化合物の他に、有機溶剤可溶型樹脂又は熱可塑性樹脂、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜100,000のポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等も併用することができる。また、高分子媒体中には、ジブチル錫ジラウレート等の着色防止剤等の添加物を必要に応じて添加してもよい。
本発明において、光調整懸濁液中の分散媒としては、光調整粒子を流動可能な状態で分散させる役割を果たし、また、光調整粒子に選択的に付着被覆し、高分子媒体との相分離の際に粒子が相分離された液滴相に移動するように作用し、電気導電性がなく、高分子媒体とは親和性がなく、調光フィルムとした際に高分子媒体から形成される樹脂マトリックスとの屈折率が近似した液状共重合体を使用することが好ましい。例えば、フルオロ基及び/又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーが好ましく、フルオロ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーがより好ましい。このような共重合体を使用すると、フルオロ基、水酸基のどちらか1つのモノマー単位は光調整粒子に向き、残りのモノマー単位は高分子媒体中で光調整懸濁液が液滴として安定に維持するために働くことから、光調整懸濁液内に光調整粒子が分散しやすく、相分離の際に光調整粒子が相分離される液滴内に誘導されやすい。このようなフルオロ基及び/又は水酸基を有するアクリル酸エステルオリゴマーとしては、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸3,5,5−トリメチルヘキシル/アクリル酸2−ヒドロキシプロピル/フマール酸共重合体、アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体等が挙げられる。また、これらのアクリル酸エステルオリゴマーはフルオロ基及び水酸基の両方を有することがより好ましい。
これらのアクリル酸エステルオリゴマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜20,000であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましい。これらのアクリル酸エステルオリゴマーの原料となるフルオロ基含有モノマーの使用量は、原料であるモノマー総量の6〜12モル%であることが好ましく、7〜8モル%であることがより好ましい。フルオロ基含有モノマーの使用量が12モル%を超えると、屈折率が大きくなり、光透過率が低下する傾向がある。また、これらのアクリル酸エステルオリゴマーの原料となる、水酸基含有モノマーの使用量は0.5〜22モル%であることが好ましく、1〜8モル%であることがより好ましい。水酸基含有モノマーの使用量が22モル%を超えると、屈折率が大きくなり、光透過性が低下する傾向がある。
本発明における光調整懸濁液は、光調整粒子を1〜70重量%含有することが好ましく、4〜50重量%含有することがより好ましい。また、分散媒を30〜99重量%含有することが好ましく、50〜96重量%含有することがより好ましい。また、光調整懸濁液は、高分子媒体に100重量部に対して、1〜100重量部含有することが好ましく、4〜70重量部含有することがより好ましく、6〜60重量部含有することがさらに好ましく、8〜50重量部含有することが特に好ましい。
本発明の調光フィルムは、高分子媒体から形成された樹脂マトリックスと、樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液を含む調光層を有してなることが好ましい。また、本発明の調光フィルムは、前記調光層が、透明導電性基板間に挟持されてなることによって形成される。
本発明の調光フィルムは、例えば、本発明の調光材料を透明導電性基板の上に塗布し、エネルギー線を照射して高分子媒体を硬化させて調光層を形成し、調光層上に透明導電性基板を密着せしめることによって製造することができる。
具体的には、まず、光調整懸濁液、光重合開始剤及びエネルギー線により硬化する高分子化合物を含む高分子組成物を混合し、光偏調整濁液が光重合開始剤及びエネルギー線により硬化する高分子化合物を含む高分子組成物又はその溶液中に液滴状態で分散した混合液とする。この混合液を透明導電性基板上に一定な厚さで塗布し、必要に応じて溶剤を乾燥除去した後、メタルハライドランプ、低圧水銀灯,高圧水銀灯,キセノンランプ等を用いてエネルギー線を照射し、上記高分子化合物を硬化させる。その結果、硬化した上記高分子化合物を含む樹脂マトリックス中に、液状光調整懸濁液が液滴状に分散されているフィルムが得られる。この際、高分子組成物と光調整懸濁液との混合比率を様々に変えることにより、フィルムの光透過率を調節することができる。このようにして形成された調光層の上に他の透明導電性基板を密着せしめることにより、調光フィルムが得られる。他の透明導電性基板は、エネルギー線照射前に調光層に密着してもよいし、エネルギー線照射時に調光層に密着させてもよい。また、2枚の透明導電性基板の両方の上に調光層を形成し、それを調光層同士が密着するようにして積層してもよい。調光層の厚みは、10〜500μmが好ましく、10〜300μmがより好ましく、20〜100μmが特に好ましい。調光層の厚みが10μm未満になると、ショートを引きおこしやすい傾向があり、また、透明導電性基板とのラミネートがしにくくなる傾向にある。一方、調光層の厚みが500μmを超えると、エネルギー線により硬化がしにくくなる傾向がある。
上記光偏調整濁液が光重合開始剤及びエネルギー線により硬化する高分子化合物を含む高分子組成物又はその溶液中に液滴状態で分散した混合液を得る方法としては、例えば、それらをホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等で混合して光調整懸濁液を微細に分散させる方法、高分子媒体中の樹脂成分の重合による相分離法、溶媒揮発による相分離法、温度による相分離法等を利用することができる。
また、上記混合液を透明導電性基板上に一定な厚さで塗布する方法としては、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等の塗工手段を用いて、透明導電性基板等の基材に塗布することができる。なお、塗布する際は、必要に応じて、適当な溶剤で希釈してもよい。溶剤を用いた場合には、基材上に塗布した後に乾燥を要する。溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができる。
上記透明導電性基板としては、例えば、ITO、SnO、In等の透明導電膜がコーティングされている透明基板を用いることができる。透明導電膜の光透過率は80%以上であることが好ましく、透明導電膜の厚みは、10〜5,000nmであることが好ましい。なお、光透過率はJISK7105の全光線透過率の測定法に準拠して測定することができる。また、透明基板としては、例えば、ガラス、高分子フィルム等を使用することができる。
上記ガラスとしては、可視光線等に透明な基板を意味し、二酸化ケイ素を主成分とする一般的なガラスの他、種々の組成の無機材料のガラス、透明なアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機材料を用いた樹脂ガラスも用いることができる。
上記高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂系のフィルム,ポリエーテルサルフォンフィルム,ポリアリレートフィルム,ポリカーボネートフィルムなどの樹脂フィルムが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、透明性に優れ、成形性、接着性、加工性等に優れるので好ましい。透明基板の厚さに特に制限はないが、例えば、ガラスの場合には1〜15mmが好ましく、高分子フィルムの場合には10〜200μmが好ましい。
上記透明導電性基板の表面抵抗値は3〜600Ωであることが好ましい。また、透明導電性基板同士の間隔を狭くして調光フィルムを作製する際は、異物質の混入等により発生する短絡現象を防止するために、透明導電膜の上に200〜1,000Åの厚さの透明絶縁層が形成されている基板を使用してもよい。また、自動車用リアビューミラー等の反射型の調光窓を作製する場合、反射体であるアルミニウム、金、又は銀のような導電性金属の薄膜を電極として直接用いてもよい。
上記の方法によれば、電場の形成により任意に光透過率が調節できる調光フィルムを作製することができる。上記調光フィルムにおいて、樹脂マトリックス中に分散されている光調整懸濁液の液滴の大きさ(平均液滴径)は、光調整粒子の凝集と沈積を防止する観点で、0.5〜50μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。平均液滴径は、例えば、光学顕微鏡を用いて、調光フィルムの一方の面方向から写真等の画像を撮影し、任意に選択した複数の液滴直径を測定し、その平均値として算出することができる。また、上記調光フィルムの光学顕微鏡での視野画像をデジタルデータとしてコンピュータに取り込み、画像処理インテグレーションソフトウェアを使用し算出することも可能である。液滴の大きさは、光調整懸濁液を構成している各成分の濃度、光調整懸濁液及び高分子媒体の粘度、光調整懸濁液中の分散媒の高分子媒体に対する相溶性等により決められる。
また、液状の光調整懸濁液の屈折率と、エネルギー線を照射することにより硬化する高分子媒体の屈折率は近似していることが透明状態における光透過率の向上と、着色状態における鮮明度の向上の点で好ましい。調光性能を発揮させる条件は特に制限はないが、通常、使用電源は交流で、10〜220ボルト(実効値)、30Hz〜500kHzの周波数の範囲で作動させることができる。
本発明の調光フィルムは、例えば、室内外の仕切り(パーティッション)、建築物用の窓硝子/天窓、電子産業および映像機器に使用される各種平面表示素子、各種計器板と既存の液晶表示素子の代替品、光シャッター、各種室内外広告および案内標示板、航空機/鉄道車両/船舶用の窓硝子、自動車用の窓硝子/バックミラー/サンルーフ、眼鏡、サングラス、サンバイザー等の用途に好適に使用することができる。
適用法としては、本発明の調光フィルムを直接使用することも可能であるが、用途によっては、例えば、本発明の調光フィルムを2枚の基材に挟持させて使用したり、基材の片面に貼り付けて使用したりしてもよい。前記基材としては、上記透明基板と同様に、例えば、ガラス、高分子フィルム等を使用することができる。
本発明の調光フィルムの構造及び動作を図面により更に詳しく説明する。
図1は、本発明の一態様の調光フィルムの構造概略図で、調光層1が、透明導電膜5がコーティングされている2枚の透明基板6からなる透明導電性基板4の間に挟まれている。スイッチ8の切り換えにより、電源7と2枚の透明導電膜5の接続、非接続を行う。調光層1は、エネルギー線を照射することにより硬化する高分子媒体を硬化させたフィルム状の樹脂マトリックス2と、樹脂マトリックス2内に液滴3の形態で分散されている液状の光調整懸濁液からなる。
図2は、図1に示した調光フィルムの作動を説明するための図面で、スイッチ8が切られ、電界が印加されていない場合を示す。この場合には、液状の光調整懸濁液の液滴3を構成している分散媒9の中に分散している光調整粒子10のブラウン運動により、入射光11は光調整粒子10に吸収、散乱又は反射され、透過できない。しかし、図3に示すように、スイッチ8を接続して電界を印加すると、光調整粒子10が印加された電界によって形成される電場と平行に配列するため、入射光11は配列した光調整粒子10間を通過するようになる。このようにして、散乱及び透明性の低下のない光透過機能が付与される。
以下、本発明の実施例及びその比較例によって本発明を更に具体的に説明する。
(光調整粒子の製造例1)
光調整粒子を製造するために、攪拌機及び冷却管を装着した500mlの四つ口フラスコに、ニトロセルロース1/4LIG(商品名、ベルジュラックNC社製)15重量%の酢酸イソアミル(試薬特級、和光純薬工業(株)製)希釈溶液87.54g、酢酸イソアミル44.96g、脱水CaI(水分量0.3%)(化学用、和光純薬工業(株)製)4.5g、無水メタノール(有機合成用、和光純薬工業(株)製)2.0g及び精製水(精製水、和光純薬工業(株)製)を0.50g添加量した溶液に、沃素(JIS試薬特級、和光純薬工業(株)製)4.5gを溶解し、光調整粒子の基板形成物質であるピラジン−2,5−ジカルボン酸2水和物(日化テクノサービス(株)製)3gを添加した。45℃で3時間撹拌して反応を終了させた後、超音波分散機で2時間分散させた。
次に、反応溶液から一定な大きさの光調整粒子を取り出すために、遠心分離機を用いて粒子を分離した。反応溶液を750Gの速度で10分間遠心分離して沈殿物を取り除き、更に7390Gで2時間遠心分離して、浮遊物を取り除き、沈殿物粒子を回収し光調整粒子とした。この光調整粒子は長径340nm,短径41nmであり、アスペクト比が8.3であった。なお、光調整粒子の長径、短径及びアスペクト比は下記の方法により算出した。
[アスペクト比の測定方法]
ポリ瓶に5mlの酢酸イソペンチル及び光調整粒子の分散液(光調整粒子9gを酢酸イソアミル88gに分散した分散液)を0.1ml入れ5分間超音波分散した。その後、超音波分散をしながら5x10mmのアルミ断片を液中に10秒間浸し光調整粒子をアルミ断片上にコーティングし、取り出し、風乾燥した。この光調整粒子がコーティングされたアルミ断片表面を走査型電子顕微鏡で撮影し、撮影した画像より任意に50個の光調整粒子を抽出し、各光調整粒子の長径と短径を測定し、(長径/短径)の平均値からアスペクト比を算出した。
(光調整粒子の製造例2)
光調整粒子を製造するために、攪拌機及び冷却管を装着した500mlの四つ口フラスコに、ニトロセルロース1/4LIG(商品名、旭化成製)15重量%の酢酸イソアミル(試薬特級、和光純薬工業(株)製)希釈溶液87.54g、酢酸イソアミル44.96g、脱水CaI(水分量0.31%)(和光純薬工業(株)製)4.5g、無水メタノール(有機合成用、和光純薬工業(株)製)2.0g及び精製水(精製水、和光純薬工業(株)製)を0.79g添加量した溶液に、沃素(JIS試薬特級、和光純薬工業(株)製)4.5gを溶解し、光調整粒子の基板形成物質であるピラジン−2,5−ジカルボン酸2水和物3gを添加した。45℃で3時間撹拌して反応を終了させた後、超音波分散機で2時間分散させた。
次に、反応溶液から一定な大きさの光調整粒子を取り出すために、遠心分離機を用いて粒子を分離した。反応溶液を750Gの速度で10分間遠心分離して沈殿物を取り除き、更に7390Gで2時間遠心分離して、浮遊物を取り除き、沈殿物粒子を回収し光調整粒子とした。この光調整粒子は長径340nm,短径110nmであり、アスペクト比が3.1であった。なお、光調整粒子の長径、短径及びアスペクト比は上記[アスペクト比の測定方法]と同様に行った。
(紫外線硬化型シリコーン樹脂の製造例)
ディーンスタークトラップ、冷却管、攪拌機、加熱装置を備えた四つ口フラスコに、両末端シラノールポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製)11.75g、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン(信越化学工業(株)製)31g、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製)4g、2−エチルヘキサン錫(和光純薬工業(株)製)0.6gを仕込み、ヘプタン中で100℃で3時間リフラックスし、反応を行った。
次いで、トリメチルエトキシシラン(信越化学工業(株)製)10.6gを添加し、2時間リフラックスし、脱アルコール反応させ、ヘプタンをロータリーエバポレーターを用いて60Paの真空で80℃、3時間減圧除去し、重量平均分子量40,000、屈折率1.468の紫外線硬化型シリコーン樹脂(エチレン性不飽和結合を有する置換基をもつシリコーン樹脂)を得た。
(光調整懸濁液の製造例1)
前記の(光調整粒子の製造例1)で得た光調整粒子の酢酸イソアミル分散液97g(光調整粒子9gを酢酸イソアミル88gに分散した分散液)を、光調整懸濁液の分散媒としてのアクリル酸ブチル(和光特級、和光純薬工業(株)製)/メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(工業用、共栄社化学工業(株)製)/アクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光1級、和光純薬工業(株)製)共重合体(モノマーモル比:18/1.5/0.5、重量平均分子量:2,200、屈折率1.468)59gに加え、攪拌機により30分間混合した。次いでロータリーエバポレーターを用いて80℃で60Paの真空下で3時間減圧し酢酸イソアミルを除去した。これにトリメリット酸デシル29.5g(花王(株)製),ジメチルドデカスベレート(Exfluor社製)を添加し,粒子沈降及び凝集現象のない安定な液状の光調整懸濁液を製造した。
(光調整懸濁液の製造例2)
光調整粒子を(光調整粒子の製造例2)で得た光調整粒子に変更した以外は(光調整懸濁液の製造例1)と同様に製造した。
(実施例1)
(紫外線硬化型シリコーン樹脂の製造例)で得た紫外線硬化型シリコーン樹脂10g、光重合開始剤としてのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルス(株)製)0.2g、着色防止剤としてのジブチル錫ジラウレート0.3gに、前記(光調整懸濁液の製造例1)で得た光調整懸濁液2.5gを添加し、1分間機械的に混合し、調光材料を製造した。
この調光材料をITO(インジウム錫の酸化物)の透明導電膜(厚み300Å)がコーティングされている表面電気抵抗値が200〜300Ω/Sqのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名300R,東洋紡績(株)製,厚み125μm)ロールから引き出し、その上に乾燥膜厚が45μmになるように自動塗工機(テスタ工業(株)製)を用い,ベーカ式アプリケータ(目盛8)で塗布し、反対側に前記と同じポリエステルフィルムをラミネートした。ついで、照度160W/cmのメタルハライドランプを用いてUV−Aで4,000mJ/cmの紫外線を照射し、光調整懸濁液が球形の液滴として紫外線硬化したシリコーン樹脂内に分散形成された調光層を持つ調光フィルムを製造した。
(実施例2)
調光材料の乾燥膜厚が90μmになるように自動塗工機(テスタ工業(株)製)を用い、ベーカ式アプリケーターの目盛を14に変更した以外は実施例1と同様にして調光フィルムを製造した。
(比較例1)
光調整懸濁液を(光調整懸濁液の製造例2)で得た光調整懸濁液に変更した以外は実施例1と同様にして調光フィルムを製造した。
(各実施例、比較例で得られた調光フィルムの評価)
実施例1、実施例2及び比較例1で製造した調光フィルムの評価を行った。それぞれで得られた調光フィルムにおいて、交流電圧30V、50V及び100Vの印加電圧で、周波数30〜1000Hzにおける光透過率(%)の最小値、及び最大値を測定し、周波数30〜1000Hzにおける光透過率の変動を算出した。結果を表1に示した。なお、調光フィルムの光透過率は、分光式色差計(SZ−Σ90、日本電色工業(株)製)を使用し、A光源、視野角2度で測定したY値(%)を光透過率とした。
Figure 2008158042
表2は、実施例1、実施例2及び比較例1で製造した調光フィルムの電界未印加時及び電界印加時の光透過率及びコントラストの評価結果である。電界印加時は50Hzの交流電圧(実効値)100Vの電界印加時である。また、コントラストは、電界印加時の光透過率から電界未印加時の光透過率を引いた値として算出した。
Figure 2008158042
以上のように、電圧30〜100Vから選択される一定電圧で、周波数30〜1000Hzにおける光透過率の変動が10以下である実施例1及び実施例2の調光フィルムは、通常、家庭用電源として用いられる交流電圧100V、50Hzの電界印加において、良好なコントラストを示した。しかし、上記変動が10を超える比較例の調光フィルムはコントラストが低下した。
本発明の調光フィルムの一態様の断面構造概略図である。 図1の調光フィルムの電界が印加されていない場合の作動を説明するための概略図である。 図1の調光フィルムの電界が印加されている場合の作動を説明するための概略図である。 実施例1で製造した調光フィルムの、電圧30V、50V、100Vの印加電圧で、周波数30〜1000Hzにおける光透過率(%)変化を示した図である。 実施例2で製造した調光フィルムの、電圧30V、50V、100Vの印加電圧で、周波数30〜1000Hzにおける光透過率(%)変化を示した図である。 比較例1で製造した調光フィルムの、電圧30V、50V、100Vの印加電圧で、周波数30〜1000Hzにおける光透過率(%)変化を示した図である。
符号の説明
1 調光層
2 樹脂マトリックス
3 液滴
4 透明導電性基板
5 導電性薄膜(透明導電膜)
6 透明基板
7 電源
8 スイッチ
9 分散媒
10 粒子(光調整粒子)
11 入射光

Claims (3)

  1. 分散媒中に流動可能な状態で分散した光調整粒子を含む光調整懸濁液を高分子媒体より形成される樹脂マトリックス中に分散してなる調光層を有し、該調光層が透明導電性基板に挟持されてなる調光フィルムであって、電圧30〜100Vから選択される一定電圧で、周波数30〜1000Hzでの光透過率の変動が10以下である調光フィルム。
  2. 調光層の厚みが10〜500μmである請求項1記載の調光フィルム。
  3. 光調整粒子のアスペクト比が6〜15である請求項1又は2記載の調光フィルム。
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