JP2013182112A - 調光フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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仁 山崎
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Abstract

【課題】耐熱性、応答性、及びフィルム形成性に優れる調光フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】調光フィルムは、2つの透明導電性樹脂基材と、前記2つの透明導電性樹脂基材に挟持され、樹脂マトリックス及び前記樹脂マトリックス中に分散され且つ光調整粒子を1質量%〜5質量%の濃度で含有する光調整懸濁液を含み、平均膜厚が50μm〜150μmである調光層とを有する。調光フィルムは第一の透明導電性樹脂基材上に、エネルギー線照射により硬化可能な高分子媒体、及び光調整粒子を1質量%〜5質量%の濃度で含有する光調整懸濁液を含む調光材料を塗布して、平均膜厚が50μm〜150μmである塗布層を形成する工程と、前記塗布層上に第二の透明導電性樹脂基材を積層して積層体を得る工程と、前記積層体にエネルギー線を照射して、前記高分子媒体を硬化させて樹脂マトリックスを形成する工程と、を有する製造方法で製造される。
【選択図】図1

Description

本発明は、調光フィルム及びその製造方法に関する。
電界を印加していない状態では、懸濁液中に分散されている光調整粒子のブラウン運動により、入射光の大部分が光調整粒子により反射、散乱又は吸収され、ごく一部分だけが透過し、一方、電界を印加した状態では、光調整粒子が分極を起こし、電場に対して平行に配列され、光調整粒子と光調整粒子の間を光が透過するライトバルブすなわち調光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。ロバート・エル・サックス(Robert.L.Saxe)らは、実用上の使用が可能な調光フィルムを提案している(例えば、特許文献2、3参照)
米国特許第1,955,923号明細書 米国特許第6,114,405号明細書 米国特許第6,900,923号明細書
しかしながら、特許文献2、3に記載された調光フィルムでは、耐久性、透過率変化の速さ(すなわち応答性)、及びフィルム形成性などに課題があった。
本発明は、耐熱性、応答性、及びフィルム形成性に優れる調光フィルム及びその製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 2つの透明導電性樹脂基材と、前記2つの透明導電性樹脂基材に挟持され、樹脂マトリックス及び前記樹脂マトリックス中に分散され且つ光調整粒子を1質量%〜5質量%の濃度で含有する光調整懸濁液を含み、平均膜厚が50μm〜150μmである調光層と、を有する調光フィルムである。
<2> 第一の透明導電性樹脂基材上に、エネルギー線照射により硬化可能な高分子媒体、及び光調整粒子を1質量%〜5質量%の濃度で含有する光調整懸濁液を含む調光材料を塗布して、平均膜厚が50μm〜150μmである塗布層を形成する工程と、前記塗布層上に第二の透明導電性樹脂基材を積層して積層体を得る工程と、前記積層体にエネルギー線を照射して、前記高分子媒体を硬化させて樹脂マトリックスを形成する工程と、を有する前記<1>に記載の調光フィルムの製造方法である。
<3> 前記調光層が形成された調光フィルムを巻き取ってロール体を得る工程を更に含む前記<2>に記載の調光フィルムの製造方法である。
本発明によれば、耐熱性、応答性、及びフィルム形成性に優れる調光フィルム及びその製造方法を提供することができる。
本発明にかかる調光フィルムの一態様を示す概略断面図である。 図2(a)は、図1の調光フィルムの電界が印加されていない場合の状態を説明するための概略断面図であり、図2(b)は、電界が印加されていないときの光調整懸濁液の液滴3の様子を示す概略断面図である。 図3(a)は、図1の調光フィルムの電界が印加されている場合の状態を説明するための概略断面図であり、図3(b)は、電界が印加されているときの光調整懸濁液の液滴3の様子を示す概略断面図である。 本発明にかかる調光フィルムの端部の状態の一例を示す概略断面図である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<調光フィルム>
本発明の調光フィルムは、2つの透明導電性樹脂基材と、前記2つの透明導電性樹脂基材に挟持され、樹脂マトリックス及び前記樹脂マトリックス中に分散され且つ光調整粒子を1質量%〜5質量%の濃度で含有する光調整懸濁液を含み、平均膜厚が50μm〜150μmである調光層とを有する。前記調光フィルムは、さらに必要に応じてその他の構成要素を有していてもよい。
調光層の平均膜厚が特定の範囲であって、前記調光層に含まれる光調整懸濁液中の光調整粒子の濃度が特定の範囲であることで、耐熱性及び応答性に優れ、製造時におけるフィルム形成性に優れる。ここで耐熱性に優れるとは、高温環境下に晒された場合に、電界が印加されている状態(未着色状態)における調光層の光透過率と印加されてない状態(着色状態)における調光層の光透過率との差(以下、単に「光透過率差」ともいう)が低下することを抑制できることを意味する。また応答性に優れるとは着色状態から未着色状態に変化するのに要する時間及び未着色状態から着色状態に変化するのに要する時間が充分に短いことを意味する。
[調光層]
本発明における調光層は、樹脂マトリックスと該樹脂マトリックス中に分散した前記光調整懸濁液とを含み、平均膜厚が50μm〜150μmである。前記調光層の平均膜厚は60μm〜120μmであることが好ましく、65μm〜100μmであることがより好ましい。
平均膜厚が50μm未満では、厚みが均一な調光層の形成が困難になる場合がある。また平均膜厚が150μmを超えると製造時におけるフィルム形成性、すなわち高分子媒体の硬化性が低下し、フィルム形成が困難になる場合がある。さらに応答性が低下する場合がある。
なお、調光層の平均膜厚は、3箇所について調光フィルムの厚みをマイクロメーターを用いて測定し、その値から2つの透明導電性樹脂基材の厚みをそれぞれ減じることで、調光層の膜厚を求め、その算術平均値として求められる。
また前記調光層に含まれる光調整懸濁液中の光調整粒子の濃度は1質量%〜5質量%でる。硬化性、耐久性、及び応答性の観点から、前記光調整粒子の濃度は1.2質量%〜4.5質量%であることが好ましく、1.3質量%〜4.2質量%であることがより好ましい。光調整粒子の濃度が1質量%未満では、充分な光透過率差が得られない場合があり、さらに応答性が低下する場合がある。また光調整粒子の濃度が5質量%を超えると、充分な光透過率差が得られない場合があり、さらに製造時におけるフィルム形成性、すなわち高分子媒体の硬化性が低下し、フィルム形成が困難になる場合がある。
なお、光調整懸濁液中における光調整粒子の濃度の測定方法については後述する。
前記調光層は、例えば、エネルギー線照射により硬化可能な高分子媒体と、分散媒及び光調整粒子を含み、前記高分子媒体中に分散された光調整懸濁液とを含む調光材料を用いて形成することができる。調光材料及び調光層の形成方法の詳細は後述する。
[透明導電性樹脂基材]
前記調光層を挟持する透明導電性樹脂基材としては、一般的に、透明樹脂基材に、光透過率が80%以上の透明導電膜(ITO、SnO、In、有機導電膜等の膜)がコーティングされている表面抵抗値が3Ω/□〜3000Ω/□の透明導電性樹脂基材を使用することができる。透明樹脂基材の光透過率はJIS K7105の全光線透過率の測定法に準拠して測定することができる。
透明樹脂基材にコーティングされる透明導電膜の厚みは特に制限されない。例えば10nm〜5,000nmであることが好ましく、15nm〜1000nmであることがより好ましい。
前記透明樹脂基材としては、例えば、高分子フィルム等を使用することができる。
前記高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂系のフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等の樹脂フィルムが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートフィルムが、透明性に優れ、成形性、接着性、加工性等に優れるので好ましい。
透明樹脂基材の厚みは特に制限はない。例えば、高分子フィルムの場合には10μm〜200μmが好ましく、50μm〜150μmであることがより好ましい。
前記透明導電性樹脂基材として、透明導電膜の上に数nm〜1μm程度の厚さの透明絶縁層が更に形成されている透明樹脂導電性基材を使用してもよい。透明絶縁層を有することで、2つの透明導電性樹脂基材の間隔が狭い場合でも、異物質の混入等により発生する短絡現象を防止することができる。
また本発明の調光フィルムを反射型の調光窓に利用する場合(例えば、自動車用リアビューミラー等)は、前記透明導電性樹脂基材の代わりに、反射体であるアルミニウム、金、又は銀のような導電性金属の薄膜を電極として直接用いてもよい。
前記調光フィルムにおいては、前記調光層が、調光層との密着性を向上させるためのプライマー層を有する2枚の透明導電性樹脂基材に挟持されているか、あるいはプライマー層を有する透明導電性樹脂基材とプライマー層を有さない透明導電性樹脂基材の2枚の透明導電性樹脂基材に挟持されていてもよい。
前記プライマー層は、ペンタエリスリトール骨格を有するウレタンアクリレートを含有する材料、分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートを含有する材料、金属酸化物微粒子を有機バインダー樹脂に分散させた材料、分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステル、アミノ基を有するシランカップリング剤等からなる薄膜で形成されるのが好ましい。
透明導電性樹脂基材のプライマー処理(プライマー層の形成)は、例えば、プライマー層を形成する材料を、バーコーター法、マイヤーバーコーター法、アプリケーター法、ドクターブレード法、ロールコーター法、ダイコーター法、コンマコーター法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独又は組み合わせて用いて、透明導電性樹脂基材上に塗布することにより行うことができる。
また必要に応じて塗布後に硬化処理を行ってもよい。
前記プライマー層の平均膜厚は目的に応じて適宜選択することができる。例えば10nm〜200nmであることが好ましい。なお、プライマー層の平均膜厚は、光学式膜厚計を用いて測定することができる。
なお、塗布する際は必要に応じて適当な溶剤で希釈し、プライマー層を形成する材料の溶液を用いてもよい。溶剤を用いた場合には、透明導電性樹脂基材上に塗布した後乾燥を要する。尚、プライマー層となる塗膜は必要に応じて透明導電性樹脂基材の片面のみ(透明導電膜側)に形成してもよいし、含浸法やディップコート法によって両面に形成してもよい。
プライマー層形成に用いる溶剤としては、プライマー層を形成する材料を溶解あるいは分散し、プライマー層形成後に乾燥等により除去できるものであればよい。イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエタノール、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、アニソール、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチルジグリコール、ジメチルジグリコール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができ、これらの混合溶媒でもよい。
[調光材料]
前記調光層を形成する調光材料は、例えば、エネルギー線照射により硬化可能な高分子媒体と、分散媒及び光調整粒子を含み、前記高分子媒体中に分散された光調整懸濁液とを含む。さらに必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。前記高分子媒体及び分散媒(光調整懸濁液中の樹脂分散剤および可塑剤等の分散媒)としては、前記高分子媒体及びその硬化物と分散媒とが、少なくとも調光層を形成(フィルム化)したときに互いに相分離しうるものを用いる。互いに非相溶又は部分相溶性の前記高分子媒体と分散媒とを組み合わせて用いることが好ましい。
前記光調整懸濁液は、分散媒と光調整粒子の少なくとも1種とを含む。さらに光調整粒子懸濁液は必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。前記分散媒は樹脂分散剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
(樹脂分散剤)
前記樹脂分散剤は、光調整粒子が分散した光調整懸濁液を構成する流動可能な分散媒として用いられる。かかる樹脂分散剤としては、後述する高分子媒体及びその硬化物である樹脂マトリックスと完全に相分離するもの、もしくは部分的に相分離可能なものであることが好ましい。より好ましくは、光調整粒子を流動可能な状態で分散させる役割を果たすとともに、光調整粒子に選択的に付着被覆し、高分子媒体との相分離の際に光調整粒子が相分離された液滴相に移動するように作用し、電気導電性が小さく、高分子媒体との親和性が小さく、調光層とした際に高分子媒体から形成される樹脂マトリックスとの屈折率が近似した液状共重合体を使用することが好ましい。
前記樹脂分散剤としては、特に制限されない。例えば(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む重合体であることが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体であることがより好ましく、炭素数4〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体であることがさらに好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの少なくとも一方を意味する。
また前記樹脂分散剤は、分散安定性と耐熱性の観点から、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含み、ヒドロキシ基を有する重合体であることが好ましい。このような重合体においては、ヒドロキシ基が光調整粒子に親和性を示し、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位は、高分子媒体中で光調整懸濁液が液滴として安定に維持するために作用すると考えられることから、光調整粒子が光調整懸濁液中で凝集したり、沈降したりすることなく安定的に分散される。また相分離の際には光調整粒子を相分離される液滴内に効率的に誘導することができる。
前記樹脂分散剤は、β位およびγ位の少なくとも一方にヒドロキシ基を有するアルキルスルフィド構造を有する重合体であることもまた好ましい。このようなアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーとしては、(メタ)アクリル酸ブチル重合体、(メタ)アクリル酸ヘキシル重合体、(メタ)アクリル酸オクチル重合体、(メタ)アクリル酸デシル重合体、(メタ)アクリル酸ウンデシル重合体、(メタ)アクリル酸ドデシル重合体、(メタ)アクリル酸トリデシル重合体、(メタ)アクリル酸テトラデシル重合体、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル重合体、(メタ)アクリル酸オクタデシル重合体等が挙げられる。また、これらの重合体の原料として用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステルを2種以上用いて合成される共重合体を、β位およびγ位の少なくとも一方にヒドロキシ基を有するアルキルスルフィド構造を有する重合体として用いることもできる。
前記β位およびγ位の少なくとも一方にヒドロキシ基を有するアルキルスルフィド構造を有する重合体の製造方法は、例えば、β位およびγ位の少なくとも一方にヒドロキシ基を有するアルキルメルカプタン誘導体を連鎖移動剤として用いる通常のラジカル重合法等を挙げることができる。β位およびγ位の少なくとも一方にヒドロキシ基を有するアルキルメルカプタン誘導体を連鎖移動剤として用いて、(メタ)アクリル酸エステルのラジカル重合反応を行う場合、一般に連鎖移動剤は、(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの高分子鎖末端の位置に導入されるため、ヒドロキシ基が高分子鎖末端近傍の位置に存在する可能性が高くなる。またこのような連鎖移動剤を用いた場合、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いなくともヒドロキシ基を樹脂分散剤に効率的に導入することができる。
β位およびγ位にヒドロキシ基を有するアルキルメルカプタン誘導体の具体例としては、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等を挙げることができる。
前記樹脂分散剤において、後述する光調整粒子と親和性がある官能基(好ましくは、ヒドロキシ基)は、樹脂分散剤を構成する重合体の中で近隣に嵩高い官能基が少ないほど、また重合体の高分子鎖末端に近いほど、その親和性による相互作用が強くなり、光調整粒子の凝集や沈降防止に効果的と考えられる。一般に、樹脂分散剤を2種類以上のモノマーからラジカル共重合で合成する場合、光調整粒子と親和性がある官能基(以下、「親和性官能基」ともいう)をもつモノマーを、高分子鎖中のどの位置に導入するかという位置制御することは難しい。嵩高い置換基をもつモノマーや反応性の低いモノマーを用いることで、ある程度の選択性は期待できるものの、モノマーの比率や重合条件によっては、高分子鎖中に親和性官能基がひとつもない樹脂分散剤が生成したり、親和性官能基が高分子鎖の中央付近に位置したりする可能性がある。
またこのような光調整粒子の凝集抑制及び沈降抑制に優れた効果を有する樹脂分散剤は、より少ない添加量でも光調整粒子を安定に分散させることが可能となり、樹脂分散剤添加量の裕度を広くすることができる。また光調整粒子を安定に分散させることができれば、調光フィルムを構成した場合の透過率も優れたものとなる。
上述のように、β位およびγ位の少なくとも一方にヒドロキシ基を有するアルキルメルカプタン誘導体を連鎖移動剤として用いると、高分子末端にヒドロキシ基を効率的に導入することができる。
前記樹脂分散剤は、側鎖にヒドロキシ基を有していてもよい。例えば、ヒドロキシ基をもつ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを樹脂分散剤の合成時に併用することで側鎖にヒドロキシ基を導入することができる。ヒドロキシ基を側鎖に有する樹脂分散剤としては例えば、メタクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ヘキシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸オクチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸デシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ウンデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ドデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸トリデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸テトラデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ヘキサデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸オクタデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体等が挙げられる。
側鎖にヒドロキシ基を有する樹脂分散剤の製造方法としては、例えば、アルキルメルカプタンを連鎖移動剤として用いる通常のラジカル重合法等を挙げることができる。アルキルメルカプタンの具体例としてはn−オクチルメルカプトプロピオネートや2−エチルヘキシルメルカプトプロピオネート等、ブタンチオール、ヘキサンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール等を挙げることができる。
上記のようにして得られる樹脂分散剤を構成する重合体は、合成後に精製工程に付することが好ましい。精製方法としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールを用いた分液精製、分子蒸留と呼ばれる10Pa以下の高真空下で蒸留して低分子成分を除去する方法等を挙げることができる。
これらの樹脂分散剤を構成する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜20,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましい。
さらにこれらの樹脂分散剤を構成する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーは、粘度計で測定した粘度が25℃の条件で、300mPa・s〜5,000mPa・sであることが好ましく、500mPa・s〜4500mPa・sであることがさらに好ましい。
前記光調整懸濁液中における樹脂分散剤の含有量は、後述する光調整粒子の含有率等に応じて適宜選択することができる。例えば、耐熱性の観点から、光調整粒子100質量部に対して0.1質量部〜20質量部であることが好ましく、0.2質量部〜10質量部であることがより好ましい。
特に樹脂分散剤がヒドロキシ基を有する共重合体である場合、樹脂分散剤の含有量が前記範囲内であっても、より優れた分散安定性と耐熱性を示すことができる。
(光調整粒子)
前記光調整懸濁液は。光調整粒子の少なくとも1種を含む。光調整粒子としては、前駆体であるピラジン−2,3−ジカルボン酸・2水和物、ピラジン−2,5−ジカルボン酸・2水和物、ピリジン−2,5−ジカルボン酸・1水和物からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質とヨウ素及びヨウ化物とニトロセルロースとを反応させて得られるポリヨウ化物の針状小結晶が、好ましく用いられる。
ヨウ化物としては、ヨウ化カルシウム等が挙げられる。このようにして得られるポリヨウ化物としては、例えば、下記一般式で表されるものが挙げられる。
CaI(C)・xHO (x:1〜2)
CaI(C・rHO (p:3〜7、q:1〜2、r:1〜3)
これらのポリヨウ化物は針状結晶であることが好ましい。
また、調光フィルム用光調整懸濁液に用いる光調整粒子として、米国特許第2,041,138号明細書(E.H.Land)、米国特許第2,306,108号明細書(Landら)、米国特許第2,375,963号明細書(Thomas)、米国特許第4,270,841号明細書(R.L.Saxe)及び英国特許第433,455号明細書に開示されている光調整粒子も、使用することができる。これらの特許によって公知とされたポリヨウ化物の結晶は、ピラジンカルボン酸、及びピリジンカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を、ヨウ素、塩素又は臭素と反応させることにより、ポリヨウ化物、ポリ塩化物又はポリ臭化物等のポリハロゲン化物とすることによって作製されている。これらのポリハロゲン化物は、ハロゲン原子が無機質又は有機質と反応した錯化合物で、これらの詳しい製法は、例えば、サックスの米国特許第4,422,963号明細書に開示されている。
前記光調整粒子の粒子サイズは、調光フィルムとしたときの印加電圧に対する応答時間と、光調整懸濁液中の凝集及び沈殿との関係から、以下のサイズが好ましいと考えられる。光調整粒子の長径は、225nm〜625nmが好ましく、250nm〜550nmがより好ましく、300nm〜500nmがさらに好ましい。また、光調整粒子の短径に対する長径の比率、すなわちアスペクト比は3〜8が好ましく、3.3〜7がより好ましく、3.6〜6がさらに好ましい。
前記光調整粒子の長径と短径は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡で光調整粒子を観察し、撮影した画像より任意に50個の光調整粒子を抽出し、各光調整粒子の長径と短径を平均値として算出することができる。ここで、長径とは、上記観察した画像の二次元視野内に投影されたそれぞれの光調整粒子について、最も長い部分の長さとする。また、短径とは、上記長径に直交する最も長い部分の長さとする。
また、本発明における光調整粒子の粒子径を評価する方法として、光子相関法や動的光散乱法の原理を用いた粒度分布計を用いることができる。この方法では直接粒子の大きさや形状を計測するのではなく、粒子を球状と仮定して相当径を評価することになり、SEM観察とは異なる値となる。特に、シスメックス株式会社製ゼータサイザーナノシリーズを用い、Z averageとして出力される相当径を粒子径とした場合に、光調整粒子の粒子径(以下、「粒度分布測定により求められる粒子径」ともいう)は135nm〜220nmが好ましく、140nm〜210nmがより好ましく、145nm〜205nmがさらに好ましい。
このZ average値は、例えば光相関法や動的光散乱法に基づいた、違う粒度分布計の測定値、具体的には上述の透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡で測定される光調整粒子の長径、短径とよい相関を示すことが知られおり、粒子径を評価する指標として適当である。
製造された光調整粒子は、未反応物や副生成物、またサイズが小さい粒子や大きい粒子、アスペクト比が小さい粒子や大きい粒子が含まれる場合がある。通常は精製して用いることが好ましい。この精製方法としては例えば遠心分離を行う方法がある。遠心分離の条件は処理する量にもよるが、3000G〜20000Gが好ましい。また処理回数は2回以上が好ましい。遠心後は上澄みを傾斜して廃棄し、粒子が凝集せずに分散可能な有機溶剤を加えるとよい。このとき、加える有機溶剤に制限はないが、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルケトン等が挙げられる。中でも、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、及び酢酸ヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。これら溶媒は1種のみでもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、遠心分離処理を2回以上行う場合、最初の遠心分離処理にはニトロセルロースを溶解させた溶剤を用いてもよい。このとき、ニトロセルロースの濃度は3質量%〜20質量%、このましくは5質量%〜15質量%がよい。また、溶剤を加えた後は、光調整粒子が溶剤中で分散できるように、ホモジナイザーや超音波で処理するとよい。
以上のようにして光調整粒子分散液を得ることができる。
光調整粒子分散液における光調整粒子の濃度を求める方法として、この光調整粒子分散液を少量サンプリングし、加熱乾燥して残存する固形重量をもって粒子量とし、濃度を計算する方法がある。
さらに正確な濃度決定方法としては、例えば、光調整粒子分散液の密度を測定し、この密度の値から濃度を求める方法が挙げられる。具体的には、光調整懸濁液の製造方法においては、光調整粒子分散液の密度を測定する工程と、測定した前記密度に基づいて、前記光調整粒子分散液の濃度を算出する工程とを設けることができる。このような粒子と媒体である溶剤の密度に差があれば、粒子の濃度と分散液の密度には相関関係があると考えられる。溶剤、分散液の密度を測定する装置は特に制限されないが、例えば、アントンパール社製の振動式デジタル密度計を用いると、小数点以下第4位から6位までの密度を求めることが可能である。
また、光調整粒子分散液の密度と粒子濃度の関係を表す式は、それぞれの、光調整粒子の密度、溶剤の密度、分散液の密度をそれぞれDp、Ds、Dsusとし、分散液中の粒子濃度をCpとすると、単位重量当たりの光調整粒子分散液の体積が、粒子と溶剤の体積の和になるとすれば求めることができる。単位重量の光調整粒子分散液に含まれる光調整粒子、溶剤の重量はそれぞれ、Cp/100、(100−Cp)/100となる。それぞれの体積は密度で除してCp/(100・Dp)、(100−Cp)/(100Ds)となる。従って式(1)のとおりになる。
上記式(1)を展開すると、光調整分散液の粒子濃度を求める式(2)なる。
このとき、Dsus、Dsは密度計を用いて測定することが可能であるが、固体の密度であるDpは測定することが困難である。ただし、式(2)を展開した下記式(3)のような光調整粒子密度を求める式において、適当な基準となる光調整粒子分散液の濃度を任意に決めるならば、基準となる光調整粒子密度が求まり、その値を式(2)に代入すると、粒子濃度が求められる。ここで求められる粒子濃度は、基準を決めた時の相対値であり、真の値とは言えないが、相対的な比較は可能であることから、事実上問題はない。また、基準となる光調整粒子分散液の濃度としては、例えば、光調整粒子分散液における不揮発分比であるNV値(乾燥後の光調整粒子分散液の質量/乾燥前の光調整粒子分散液の質量)を採用すればよい。
(可塑剤)
前記光調整粒子が分散した光調整懸濁液は、流動可能な分散媒として上述の樹脂分散剤を含むが、必要に応じて可塑剤の少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。これにより光調整懸濁液の粘度をより低減することができる。
可塑剤は上述の樹脂分散剤と同様に流動可能な状態で、光調整粒子を分散させる役割を果たすものであればよい。例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルオクチル等のフタル酸アルキルエステル類、イソフタル酸ジオクチル等のイソフタル酸アルキルエステル類、オレイン酸ブチル、オレイン酸−n−プロピル等のオレイン酸アルキルエステル類、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸アルキルエステル類、ジ安息香酸ジエチレングリコール等の安息香酸アルキルエステル、トリメリット酸オクチル、トリメリット酸ドデシル、トリメリット酸イソデシル等を挙げることができる。
光調整懸濁液中の分散媒として樹脂分散剤と可塑剤の割合に特に制限はなく、必要に応じて適宜選択できる。例えば、樹脂分散剤と可塑剤の総量中における樹脂分散剤の割合が3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
前記光調整懸濁液は、溶剤を含む光調整粒子分散液と、前記樹脂分散剤と、必要に応じて前記可塑剤とを通常用いられる方法で混合した後、光調整粒子が所望の濃度となるように溶剤の少なくとも一部を除去することで調製することができる。溶剤の除去方法として具体的には、所定の濃度の光調整粒子分散液と分散高分子を混合した後、加熱しながら溶剤を減圧留去する方法が好ましい。ロータリーエバポレータにアスピーレータやダイヤフラム式もしくは油回転式ポンプを接続し、減圧すると効率的に溶剤を留去できる。また光調整粒子分散液の濃度は上述のようにして算出することができる。
(高分子媒体)
前記調光材料はエネルギー線照射により硬化可能な高分子媒体の少なくとも1種を含むことが好ましい。エネルギー線を照射することにより硬化する高分子媒体としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線等のエネルギー線により硬化する高分子化合物、及び光重合開始剤を含む高分子組成物が挙げられる。
前記高分子組成物としては、例えば、エチレン性不飽和基を有する高分子化合物及び光重合開始剤を含む高分子組成物が挙げられる。前記エチレン性不飽和基を有する高分子化合物としては、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が合成容易性、調光性能、耐久性等の点から好ましい。
これらの樹脂は、置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基を有することが、調光性能、耐久性等の点から好ましい。
シリコーン系樹脂として、具体的には、例えば、特公昭53−36515号公報、特公昭57−52371号公報、特公昭58−53656号公報、特公昭61−17863号公報等に記載の高分子化合物を挙げることができる。また、上記シリコーン系樹脂は、例えば、両末端シラノールポリジメチルシロキサン、両末端シラノールポリジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン等の両末端シラノールシロキサンポリマー、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン等のエチレン性不飽和結合含有シラン化合物などを、有機スズ系触媒である2−エチルヘキサン錫の存在下で、脱水素縮合反応及び脱アルコール反応させて合成される。シリコーン系樹脂の形態としては、無溶剤型が好ましい。すなわち、樹脂の合成に溶剤を用いた場合には、合成反応後に溶剤を除去することが好ましい。
シリコーン系樹脂の調製における(3−アクリロキシプロピル)メトキシシラン等のエチレン性不飽和結合含有シラン化合物の使用量は、原料シロキサン及びシラン化合物総量中に2質量%〜30質量%とすることが好ましく、5質量%〜18質量%とすることがより好ましい。
前記アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン等の主鎖形成モノマーと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸イソシアナートエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエチレン性不飽和基導入用官能基含有モノマーなどを共重合して、プレポリマーを合成する。次いで、このプレポリマーのエチレン性不飽和基導入用官能基に応じて選択されるエチレン性不飽和基含有モノマーを前記プレポリマーに付加反応させることにより得ることができる。前記エチレン性不飽和基含有モノマーとしては例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸イソシアナートエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
これらエチレン性不飽和基を有する高分子化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって得られるポリスチレン換算の重量平均分子量は、20,000〜100,000であることが好ましく、30,000〜80,000であることがより好ましい。
本発明の調光材料が高分子媒体として、前記エチレン性不飽和基を有する高分子化合物を含む場合、エネルギー線に露光するとラジカル重合を活性化する光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。光重合開始剤として具体的には、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、(1−ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン等を挙げることができる。
これらの光重合開始剤の使用量は、上記エチレン性不飽和基を有する高分子化合物100質量部に対して0.05〜20質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
また前記高分子媒体は、上記エチレン性不飽和基を有する高分子化合物に加えて、エチレン性不飽和基をもたない有機溶剤可溶型樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくとも1種を含んでもよい。具体的には例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜100,000のポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等も併用することができる。
さらに高分子媒体中には、ジブチル錫ジラウレート等の着色防止剤等の添加物を必要に応じて添加してもよく、必要に応じて溶剤が含まれていてもよい。
本発明の調光材料は、前記光調整懸濁液と、前記高分子媒体とを混合することで調製することができる。前記光調整懸濁液及び高分子媒体の混合比率は、目的に応じて適宜選択できる。また前記光調整懸濁液と高分子媒体とを混合する方法は特に制限されず、通常の液体混合方法から適宜選択して適用することができる。
本発明において、前記調光材料中の光調整懸濁液の粒子濃度は1質量%〜5質量%であるが、硬化性、耐久性、及び応答性の観点から、1.2質量%〜4.5質量%が好ましく、1.3質量%〜4.2質量%がより好ましい。尚、調光材料中の光調整懸濁液の粒子濃度は、調光材料中に有機溶媒が含まれる場合おいて、有機溶媒を除いて計算したものとする。
調光層が前記調光材料から形成されることで、高温環境におかれた後であっても光透過性の変化が抑制される耐熱性に優れた調光フィルムを構成することができる。また調光層における光調整粒子濃度のバラつきが抑えられ、透過率のバラつきや外観差が抑えられた調光フィルムを構成することができる。
また前記調光材料は、液状の光調整懸濁液の屈折率と、樹脂マトリックスの屈折率がほぼ一致するように構成することが好ましい。これにより、透明な状態においての光透過率向上と、着色された状態における鮮明度を向上させることができる。
(調光層の形成方法)
前記調光層は、樹脂マトリックスと該樹脂マトリックス中に分散した前記光調整懸濁液とを含む。樹脂マトリックスは、調光材料に含まれるエネルギー線照射により硬化可能な高分子媒体(好ましくは、エチレン性不飽和基含有高分子化合物)を硬化して形成されるものである。このような調光層は例えば以下のようにして形成できる。
まず、液状の前記光調整懸濁液を、前記高分子媒体と均質に混合し、光調整懸濁液が高分子媒体中に液滴状態で分散した混合液からなる調光材料を得る。光調整懸濁液と高分子媒体とを混合する方法は特に制限されず、通常の液体混合方法から適宜選択して適用することができる。調光材料を構成する成分の詳細は既述の通りである。
得られた調光材料を、前記透明導電性樹脂基材上に所望の平均厚さとなるように塗布する。必要に応じて調光材料に含まれる溶剤を乾燥除去した後、高圧水銀灯等を用いて紫外線を照射し高分子媒体を硬化させる。その結果、硬化した高分子媒体からなる樹脂マトリックス中に、光調整懸濁液が液滴状に分散されている調光層が形成される。高分子媒体と光調整懸濁液との混合比率を様々に変えることにより、調光層の光透過率を調節することができる。このようにして形成された調光層の上にもう一方の透明導電性樹脂基材を密着させることにより、調光フィルムが得られる。
あるいは、得られた調光材料を、透明導電性樹脂基材上に所望の平均厚さとなるように塗布する。必要に応じて調光材料に含まれる溶剤を乾燥除去した後、もう一方の透明導電性樹脂基材でラミネートした後に紫外線を照射し高分子媒体を硬化させて調光層を形成してもよい。
更に、2枚の透明導電性樹脂基材の両方の上にそれぞれ調光層を形成する。次いでそれぞれの透明導電性樹脂基材上に形成された調光層同士が対向するように積層し、調光層を密着して2枚の透明導電性樹脂基材に挟持された調光層を形成してもよい。
樹脂マトリックス中に分散されている光調整懸濁液の液滴の大きさ(平均液滴径)は特に制限されない。通常0.5μm〜100μmであり、好ましくは0.5μm〜20μmであり、より好ましくは1μm〜5μmである。液滴の大きさは、光調整懸濁液を構成している各成分の濃度、光調整懸濁液及び高分子媒体の粘度、光調整懸濁液中の分散媒の高分子媒体に対する相溶性等を適宜調整することで制御することができる。
また平均液滴径は、例えば、SEMを用いて、調光フィルムの一方の面方向から写真等の画像を撮影し、任意に選択した複数の液滴の直径をそれぞれ測定し、その平均値として算出することができる。また、調光フィルムの光学顕微鏡での視野画像をデジタルデータとしてコンピュータに取り込み、画像処理インテグレーションソフトウェアを使用し算出することも可能である。
調光層となる調光材料の塗布には、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等の公知の塗工手段を用いることができる。調光材料を、透明導電性樹脂基材上に設けたプライマー層面に塗布し、あるいは、一方にプライマー層を有さない透明導電性樹脂基材を用いる場合には、透明導電性樹脂基材に直接塗布することもできる。なお、塗布する際は、必要に応じて、適当な溶剤で希釈してもよい。溶剤を用いた場合には、透明導電性樹脂基材上に塗布した後に、乾燥処理により溶剤の少なくとも一部を除去することが好ましい。
調光材料の塗布に用いる溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができる。液状の光調整懸濁液が、固体の樹脂マトリックス中に微細な液滴形態で分散されているフィルムを形成するためには、調光材料をホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等で混合してシロキサン樹脂等の高分子媒体中に光調整懸濁液を微細に分散させる方法、シロキサン樹脂等の高分子媒体中の樹脂成分の重合による相分離法、溶媒揮発による相分離法、又は温度による相分離法等を利用することができる。
<調光フィルムの製造方法>
本発明の調光フィルムの製造方法は、(a)第一の透明導電性樹脂基材上に、エネルギー線照射により硬化可能な高分子媒体、及び光調整粒子を1質量%〜5質量%の濃度で含有する光調整懸濁液を含む調光材料を塗布して、平均膜厚が50μm〜150μmである塗布層を形成する塗布工程と、(b)前記塗布層上に第二の透明導電性樹脂基材を積層して積層体を得る積層工程と、(c)前記積層体にエネルギー線を照射して、前記高分子媒体を硬化させて樹脂マトリックスを形成し調光層が形成された調光フィルムを得る硬化工程とを有する。さらに必要に応じてその他の工程を含んでいてもよい。
第一の透明導電性樹脂基材に調光材料を塗布して塗布層を形成し、塗布層を硬化させる前に、塗布層を介して第二の透明導電性樹脂基材を貼り合わせて積層体を形成する。得られた積層体にエネルギー線を照射することで。調光材料から形成された塗布層中に含まれる樹脂マトリックスを形成する高分子媒体が、エネルギー線により硬化する際の阻害要因となる酸素を遮断することが可能である。これによって、エネルギー線を照射し、調光材料から形成された塗布層中に含まれる高分子媒体を硬化させる際に、真空下又は不活性雰囲気下で照射を行わなくても、酸素による重合阻害を防ぐことが可能となる。さらに調光材料を硬化させる前に、調光材料を介して、第一の透明導電性樹脂基材と第二の透明導電性樹脂基材とを貼り合わせることで、調光層と2つの透明導電性樹脂基材との密着性がより優れるものとなる。
(a)塗布工程
塗布工程では、第一の透明導電性樹脂基材上に、エネルギー線照射により硬化可能な高分子媒体、及び光調整粒子を1質量%〜5質量%の濃度で含有する光調整懸濁液を含む調光材料を塗布して、平均膜厚が50μm〜150μmである塗布層を形成する。
前記調光材料は、エネルギー線照射により硬化可能な高分子媒体、及び光調整粒子を1質量%〜5質量%の濃度で含有する光調整懸濁液を含んでいれば、特に制限されない。例えば上述した光調整懸濁液及び高分子媒体を用いて調製されたものであることが好ましい。
前記塗布工程においては、第一の透明導電性樹脂基材上に塗布層を形成するが、(b)積層工程で積層する第二の透明導電性樹脂基材上に塗布層を形成し、第一の透明導電性樹脂基材上の塗布層と第二の透明導電性樹脂基材上の塗布層とが対向するように積層して積層体を得てもよい。その場合、第一及び第二の透明導電性樹脂基材上に形成された塗布層の総厚みが所望の平均膜厚となるようにそれぞれの塗布層の厚みを調整すればよい。
上記(a)塗布工程において、上記調光材料を透明導電性樹脂基材上に塗布する方法としては、一定な厚さで塗布することができる方法であれば特に制限はない。バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等の塗工手段を用いて、透明導電性樹脂基材に塗布することが可能である。
なお、調光材料を塗布する際は、必要に応じて、適当な溶剤で希釈してもよい。溶剤を用いた場合には、透明導電性樹脂基材上に塗布した後に乾燥処理を行うことが好ましい。溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができる。
(b)積層工程
積層工程では、第一の透明導電性樹脂基材上に形成された塗布層上に第二の透明導電性樹脂基材を積層して積層体を得る。前記積層工程では、第1の透明導電性樹脂基材及び第2の透明導電性樹脂基材のいずれか一方側から、又は両側から押圧する工程を有することが好ましい。この押圧する工程により、調光層と透明導電性樹脂基材との密着性をより高めることができ、また、調光材料から形成された塗布層に透明導電性樹脂基材を貼り合わせる際にボイドの巻き込み等を回避できる。
前記押圧する方法としては、押圧する領域に均一に力を加えることができる方法であれば特に制限はない。例えば、第1の透明導電性樹脂基材上調光材料から形成された塗布層上へ第2の透明導電性樹脂基材を貼り合わせる際に、塗布層を介して第1の透明導電性樹脂基材と第2の透明導電性樹脂基材とを貼り合わせる起点(以下、「第1の透明導電性樹脂基材と第2の透明導電性樹脂基材との貼り合わせ部分」ともいう)において、第2の透明導電性樹脂基材の表面(塗布層と接している面とは反対の面)側で押圧用ロールが接するように押圧用ロールを設置して、調光フィルムとなる積層体の厚み方向に対して押圧する方法が挙げられる。
この場合、調光フィルムとなる積層体の厚み方向に対して、具体的には第2の透明導電性樹脂基材、塗布層、第1の透明導電性樹脂基材を貼り合わせた面に対して垂直方向に、第2の透明導電性樹脂基材の表面(塗布層と接している面とは反対の面)側から第1の透明導電性樹脂基材方向へ押圧することで、押しムラなく均一に力を加えることが可能となり、より色むらなく外観に優れた調光フィルムを製造することが可能となる。また、調光フィルムとなる積層体の厚み方向に対して、第1の透明導電性樹脂基材の表面(調光材料と接している面とは反対の面)側から第2の透明導電性樹脂基材方向へ押圧する場合は、第1の透明導電性樹脂基材の表面(調光材料と接している面とは反対の面)側で押圧用ロールが接するように押圧用ロールを設置すればよい。
さらに調光フィルムの製造方法の積層工程において、第1の透明導電性樹脂基材側及び第2の透明導電性樹脂基材側の両側から押圧してもよい。両側から押圧する方法としては、押圧する領域に均一に力を加えることができる方法であれば特に制限はない。例えば、第1の透明導電性樹脂基材と第2の透明導電性樹脂基材との貼り合わせ部分において、第1の透明導電性樹脂基材の表面(調光材料と接している面とは反対の面)側及び第2の透明導電性樹脂基材の表面(調光材料と接している面とは反対の面)側で、それぞれ押圧用ロールが接するように、少なくとも2つの押圧用ロールを設置することで両側から押圧することが可能となる。この場合、第1の透明導電性樹脂基材の表面側及び第2の透明導電性樹脂基材の表面側の双方から押圧することができるため、調光材料中に空気が混入しづらく、また、第2の透明導電性樹脂基材の貼り合わせ時に混入した空気を押し出しやすい傾向がある。このように積層工程における押圧により、調光フィルム中のボイド発生を抑制することが可能となり、色むらなく外観に優れた調光フィルムを製造することが可能となる。
積層工程で押圧する際の押圧用ロールの材質は特に制限されない。例えば、ロール表面がポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂であるような押圧用ロールを挙げることができる。また押圧する圧力としては、例えば、0.5kPa〜80kPaであることが好ましく、1kPa〜60kPaであることがより好ましい。
(c)硬化工程
硬化工程では、積層工程で形成された積層体にエネルギー線を照射して、前記高分子媒体を硬化させて樹脂マトリックスを形成し調光層が形成された調光フィルムを得る。硬化工程において積層体にエネルギー線を照射する方向は特に制限されず、積層体の一方の面側からのみであっても両側からであってもよい。硬化工程においては、エネルギー線を第1の透明導電性樹脂基材側及び第2の透明導電性樹脂基材側の両側から照射することが好ましい。積層体の両側からエネルギー線を照射する方法により、調光材料から形成された塗布層中の樹脂マトリックスを形成する高分子媒体が充分に硬化する。また形成される調光層と透明導電性樹脂基材との界面における光調整懸濁液の凝集を防ぐことができ、調光層と透明導電性樹脂基材との密着性が向上する傾向にある。
エネルギー線源としては、前記高分子媒体を硬化可能であれば特に制限されない。例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯等を用いることができる。エネルギー線として、例えば、UV−A(波長320nm〜390nm程度)の波長領域の紫外線を使用する場合、積算光量としては、上記両側からの積算光量の合計で500mJ/cm〜4000mJ/cmであることが好ましく、500mJ/cm〜2000mJ/cmであることがより好ましい。また、照度としては、100mW/cm〜400mW/cmであることが好ましく、250mW/cm〜300mW/cmであることがより好ましい。
前記調光フィルムの製造方法においては、調光層が形成された調光フィルムを巻き取ってロール体を得る巻き取り工程をさらに有することが好ましい。巻き取り工程を有することで均質で均一な膜厚の調光層を有する調光フィルムを連続的に製造することが可能である。
巻き取り工程において調光フィルムを巻き取る巻き芯の径は特に制限されず、製造する調光フィルムの使用目的等に応じて適宜設定することができる。例えば、取り扱い性の観点からは、10cm〜30cmであることが好ましい。
さらに前記調光フィルムの製造方法は、(a)塗布工程が、第一の透明導電性樹脂基材をロールから巻出して、巻き出された第一の透明導電性樹脂基材に調光材料を塗布して塗布層を形成する工程であり、(b)積層工程が、第二の透明導電性樹脂基材をロールから巻き出して、第一の透明導電性樹脂基材上に形成された塗布層上に積層する工程であり、(c)硬化工程で得られた調光フィルムをロールで巻き取る工程をさらに有することが好ましい(以下、この製造方法を「ロール・ツー・ロール」という場合がある)。
このようなロール・ツー・ロールの製造方法によれば、均質で均一な膜厚の調光層を有する調光フィルムを連続的に製造することが可能となる。また、この製造方法によれば、第一の透明導電性樹脂基材及び第二の透明導電性樹脂基材の巻だし、第一の透明導電性樹脂基材への調光材料の塗布、第二の透明導電性樹脂基材の積層、エネルギー線の照射、調光フィルムの巻き取り等の調光フィルム製造工程を連続的に一貫して行うことができる。従って、製造工程が複雑化することもなく、不活性雰囲気下、真空下でのエネルギー線照射の必要がないため大がかりな装置を用いることなく、全体として均一な外観と、調光層と透明導電性樹脂基材との密着性に優れた調光フィルムを連続的に製造することが可能である。
ロールの巻出し及び巻き取りの速度としては、特に制限はない。例えば、0.5m/分〜100m/分であることが好ましく、1m/分〜10m/分であることがより好ましく、1.5m/分〜5m/分であることが特に好ましい。ロールの巻出し及び巻き取りの速度を適切に設定することで、均一で外観よく密着性に優れた調光フィルムを連続的に製造することができる。
さらに前記調光フィルムにおける調光層の平均膜厚が50μm〜150μmであってロールの巻出し及び巻き取りの速度が0.5m/分〜100m/分であることが好ましく、調光層の平均膜厚が60μm〜120μmであってロールの巻出し及び巻き取りの速度が1m/分〜10m/分であることがより好ましく、調光層の平均膜厚が65μm〜100μmであってロールの巻出し及び巻き取りの速度が1.5m/分〜5m/分であることが特に好ましい。これにより調光フィルムをロール・ツー・ロールで製造する場合に、調光層の厚みをより均一に形成することができ、さらにフィルム形成性と透明導電性基材と調光層の密着性により優れた調光フィルム得ることができる。
上記の製造方法によれば、電場の形成により任意に光透過率が調節できる調光フィルムが提供される。この調光フィルムは、電場が形成されていない場合にも、光の散乱が抑制された鮮明な着色状態を維持し、電場が形成されると透明な状態に転換される。この能力は、20万回以上の可逆的反復特性を示す。
前記調光フィルムを作動させるための使用電源は交流で、10ボルト〜100ボルト(実効値)、30Hz〜500kHzの周波数範囲とすることができる。前記調光フィルムは、電界に対する応答時間を、消色時には1秒〜50秒以内、着色時には1秒〜100秒以内とすることができる。また、紫外線耐久性は、750W紫外線等を利用した紫外線照射試験の結果、250時間が経過した後にも安定な可変特性を示し、−50℃〜90℃で長時間放置した場合にも、初期の可変特性を維持することが可能である。
従来技術である液晶を使用した調光フィルムのように水を用いたエマルションによる方法で調光フィルムを製造すると、液晶が水分と反応して光調整特性を失うことが多く、また同一の特性のフィルムを製造しにくいという問題がある。
しかし本発明の調光フィルムにおいては、液晶ではなく、光調整粒子が光調整懸濁液内に分散されている液状の光調整懸濁液を使用するため、液晶を利用した調光フィルムとは異なり、電界が印加されていない場合にも光が散乱せず、鮮明度が優れて視野角の制限のない着色状態を表す。そして、光調整粒子の含有量、液滴形態、調光層の膜厚を調節したり、又は電界強度を調節したりすることにより、光透過率を任意に調節できる。また本発明の調光フィルムは、液晶を用いないことから、紫外線露光による色調変化及び可変能力の低下、大型製品特有の透明導電性樹脂基材の周辺部と中央部間に生ずる電圧降下に伴う応答時間差も解消される。
液晶を利用した従来技術による調光フィルムの場合には、液晶が紫外線に容易に劣化する傾向がある。またネマチック液晶の熱的特性によりその使用温度の範囲も狭い傾向がある。更に、光学特性面においても、電界が印加されていない場合には光散乱による乳白色の半透明な状態を示し、電界が印加される場合にも、完全には鮮明化せず、乳濁状態が残存する課題がある。従って、このような調光窓では、既存の液晶表示素子で動作原理として利用されている光の遮断及び透過による表示機能が困難である。しかし、本発明による調光フィルムであれば、このような課題が解決できる。
本発明の調光フィルムは、例えば、室内外の仕切り(パーティッション)、建築物用の窓硝子/天窓、電子産業及び映像機器に使用される各種平面表示素子、各種計器板と既存の液晶表示素子の代替品、光シャッター、各種室内外広告及び案内標示板、航空機/鉄道車両/船舶用の窓硝子、自動車用の窓硝子/バックミラー/サンルーフ、眼鏡、サングラス、サンバイザー等の用途に好適に使用することができる。
適用法としては、本発明の調光フィルムを直接使用することも可能であるが、用途によっては、例えば、本発明の調光フィルムを2枚の基材に挟持させて使用したり、基材の片面に貼り付けて使用したりしてもよい。前記基材としては、例えば、ガラスや、上記透明樹脂基材と同様の高分子フィルム等を使用することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の調光フィルムの構造および動作について説明する。
図1に、本発明の調光フィルムの一態様の構造を概略断面図として示す。図1に示す調光フィルムでは、透明導電膜5aがコーティングされた透明樹脂基材5bからなる透明導電性樹脂基材4の2枚の間に、調光層1が挟持されている。調光層1と透明導電性樹脂基材4の間にはプライマー層6が設けられている。調光層1は、高分子媒体としての前記エチレン性不飽和基を有する高分子化合物を紫外線硬化させたフィルム状の樹脂マトリックス2と、樹脂マトリックス2内に液滴3の形態で分散されている液状の光調整懸濁液と、を含む。光調整懸濁液の液滴3には、光調整粒子10が分散媒9の中に分散されている(図2(b)参照)。調光フィルムにおいては、スイッチ8の切り換えにより、電源7と2枚の透明導電膜5aの接続、非接続を行う。
図2(a)は、図1に示した調光フィルムの作動を説明するための概略断面図であり、スイッチ8が切られ、電界が印加されていない状態を示す。この状態では、液滴3中に分散している光調整粒子10は、図2(b)に示すようにブラウン運動により、それぞれランダムな方向を向いている。そのため、入射光11は光調整粒子10に吸収、散乱又は反射され、透過できない。
一方、図3(a)は、図1の調光フィルムの電界が印加されている状態の作動を説明するための概略断面図である。図3(a)に示すように、スイッチ8を接続して電界を印加すると、図3(b)に示すように、電気的双極子モーメントをもつ光調整粒子10が、印加された電界によって形成される電場と平行に配列する。そのため入射光11は配列した光調整粒子10間を通過するようになる。このようにして、液滴3が入射光に対して透明な状態に転換され、視野角度による散乱、又は透明性低下が殆どない状態で入射光を透過させる。
図4は透明導電膜5aに電圧印加するための導線13を接続する方法の一例を示す模式図である。調光フィルムの端部には、透明樹脂基材5bと透明導電膜5aからなり、透明導電膜5bが露出したタップ領域12が設けられている。タップ領域12には導線13が電気的に接続されている。この導線13に、スイッチと電源(図示せず)を接続することで調光フィルムを動作させることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<参考例>
(基準粒子密度決定のための光調整粒子分散液の調製)
ヨウ素(JIS試薬特級、和光純薬工業(株)製)と酢酸イソアミル(試薬特級、和光純薬工業(株)製)から8.5質量%ヨウ素の酢酸イソアミル溶液を調製した。またニトロセルロース1/4LIG(商品名:ベルジュラックNC社製)と酢酸イソアミルから20.0質量%ニトロセルロースの酢酸イソアミル溶液を調製した。ヨウ化カルシウム水和物(化学用、和光純薬工業(株)製)を加熱乾燥して無水化して酢酸イソアミルに溶解させ、20.9質量%ヨウ化カルシウム溶液を調製した。撹拌機と冷却管を備えた20Lフラスコに、ヨウ素溶液を6905g、ニトロセルロース溶液を8723g加え、水浴温度を35℃〜40℃としてフラスコを加熱した。ニトロセルロース溶液中の水分比率(質量%)を平沼水分測定装置AQ−7(平沼産業(株)製、発生液:ハイドラナールアクアライトRS、対極液:アクアライトCN)を用いて測定したところ、0.61質量%であり、加えた溶液質量からニトロセルロース溶液中の水分量は53.2gであった。フラスコ内容物の温度が35℃〜40℃となった後、脱水メタノール(試薬特級、和光純薬工業(株)製)を260g、精製水(和光純薬工業(株)製)を55.6g加えて撹拌した。ヨウ化カルシウム溶液を1643g、次いでピラジン−2,5−ジカルボン酸(日化テクノサービス(株)製)を390g加えた。水浴温度を42℃〜44℃として4時間撹拌した後、放冷した。
得られた合成液を9260Gで5時間遠心分離後、傾斜して上澄み液を除き、底部に残存した沈殿に、この沈殿の質量の5倍に相当する酢酸イソアミルを加え超音波で沈殿を分散し、次に710Gで10分間遠心分離後、上澄みを9260Gで3時間遠心分離した。傾斜して上澄みを除き、底部に残存した沈殿に、この沈殿の質量の5倍に相当する酢酸イソアミルを加え超音波で沈殿を分散して光調整粒子分散液を調製した。
得られた光調整粒子は、シスメックス株式会社製ゼータサイザーナノシリーズを用い、Z averageとして出力される相当径を粒子径とした場合の粒子径が185nm、SEM観察による平均長径は350nm、平均アスペクト比は7.0であった。なお、SEMによる観察では、300個の光調整粒子から、長径及びアスペクト比の平均値を求めた。
(基準粒子密度の決定)
上述の光調整分散液の密度を、振動式デジタル密度計(アントンパール社製)を用いて25.00℃で測定したところ、0.92854g/cmだった。この分散した液を1g金属プレートに秤量し、120℃1時間で乾燥後、再び質量を測定し、光調整分散液における不揮発成分の質量比である不揮発分比NV値を求めたところ、6.98質量%であった。この不揮発分比NV値を粒子濃度とし、密度の値とともに既述の式(3)に代入して得られた密度2.9722g/cmを基準粒子密度とした。以下、密度から粒子濃度を求めるときはすべてこの値を用いた。
<実施例1>
(光調整粒子分散液の調製)
水分比率が0.82質量%のニトロセルロース溶液を用いたこと、及び脱水メタノールと一緒に加える精製水を40.1gとしたこと以外は上記参考例と同様にして光調整粒子分散液を調製した。調製した光調整粒子分散液の密度は0.90244g/cm、粒子濃度は5.3605質量%となった。
(樹脂分散剤の合成)
トルエン(試薬特級、和光純薬工業(株)製)164g、メタクリル酸ドデシル231.4g(共栄社化学)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4.78g(試薬特級、和光純薬工業(株)製)、n−ヘキシルメルカプタン(東京化成)14.7gを釜に加え窒素雰囲気下で撹拌しながら60℃に加熱した。1時間後、アゾイソブチロニトリル(試薬特級、和光純薬工業(株)製)1.84gをトルエン80gに溶解させた後、全量滴下した。そのまま21時間加熱した後、115℃に加熱して2時間撹拌した。その後、減圧して溶剤を留去した。これを200℃1Paの条件で分子蒸留して低分子成分を除去して分散高分子である樹脂分散剤を調製した。
(光調整粒子懸濁液の調製)
前記光調整粒子分散液26.83g、前記樹脂分散剤70.45gを500mLナス型フラスコに加えロータリーエバポレータにセットし、80℃で加熱しながら油回転ポンプでゆっくり減圧を開始し、約45分間で溶媒を留去した後、そのまま減圧を継続した。減圧開始から1時間経過後に真空度1000Pa以下であることを確認し、3時間後に減圧と加熱を停止して脱溶処理した。次に、フラスコに内容物重量と同量の酢酸イソアミルを加え、再び同じ手順で脱溶処理の2回目を実施して光調整粒子懸濁原液を得た。上記の光調整粒子懸濁原液14.10g、トリメリット酸イソデシル6.42gをポリカップに量り取り、攪拌して光調整懸濁液を得た。光調整懸濁液中の光調整粒子濃度は1.37質量%であった。
(高分子媒体の製造)
ディーンスタークトラップ、冷却管、撹拌機、加熱装置を備えた四つ口フラスコに、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン(商品名:KBM−5102、信越化学工業(株)製)150.0g、蒸留水19.0g、酢酸(和光純薬工業(株)製)375.0g、質量比でエタノール/メタノール=9/1の混合溶媒89gを仕込み、65℃に昇温して5時間反応させた。反応溶液を40℃以下まで冷却した後、300Pa以下に減圧して70℃まで昇温して2時間、脱溶処理を行った。その後、室温まで冷却してアルコキシシランの一部をシラノールへ変換した化合物140gを得た。また、シラノールへの変換率は54.5%であった。
この変換反応を繰り返し行い、アルコキシシランの一部をシラノールへ変換した化合物14.0gを得た。変換率は54.5%であった。
ディーンスタークトラップ、冷却管、撹拌機、加熱装置を備えた四つ口フラスコに、両末端シラノールポリジメチルシロキサン(商品名:X−21−3114、信越化学工業(株)製)44.0g、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン(商品名:X−21−3193B、信越化学工業(株)製)156.0g、前記KBM−5102のメトキシ基をシラノールに変換したもの22.0g、ビス(2−エチルヘキサン酸)錫(商品名:KCS−405T、城北化学工業(株)製)0.01gを仕込み、ヘプタン中100℃で5時間還流して反応を行った。温度を50℃まで冷却し、トリメチルエメトキシシラン(商品名:KBM−31、信越化学工業(株)製)168.0gを添加し、再び85℃において2時間還流してエンドキャップ反応させた。次いで温度を75℃に冷却してリン酸ジエチル(別名:エチルアシッドホスフェート、商品名:JP−502、城北化学工業(株)製)0.01g(脱水縮合触媒ビス(2−エチルヘキサン酸)錫に対して100質量部に対して100質量部)を添加し、20分攪拌した後30℃まで冷却した。次いでメタノールを210g、エタノールを90g添加し20分攪拌した。12時間静置した後にアルコール層を除去し、100Pa以下に減圧して、115℃に昇温した。そのまま5時間、脱溶処理を行い、高分子媒体である重量平均分子量49,000のポリシロキサン樹脂188.3gを得た。NMRの水素積分比からこの樹脂に含まれる3−アクリロキシプロピルメチルシロキサン繰り返し単位数は、3.5質量%であった。
(調光材料の調製)
上記の高分子媒体31.3g、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製)とテトラヒドロフラン(和光純薬、特級)を各0.2g、上記で調製した光調整粒子懸濁液18.7gをポリカップに量り取り、攪拌して調光材料を得た。
(調光フィルムの作製)
ITO(インジウム錫の酸化物)の透明導電膜(厚み30nm)がコーティングされている表面電気抵抗値が200〜700ΩのPETフィルム(300R、東洋紡績(株)製、厚み125μm)からなる透明導電性樹脂基材の透明導電膜上に、AY42−151(東レ・ダウコーニング(株)製)をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した混合液を7〜10g/m塗布し、溶剤乾燥し、更にUV照射してプライマー層を形成した。
(a)塗布工程
プライマー層が形成された第一の透明導電性基材を2m/分の速度で巻き出しつつ、プライマー層上に前記調光材料を、ダイコーターを用いて全面塗布して平均膜厚が65μmである塗布層を形成した。
(b)積層工程
次いで、その上に同様にプライマー層を形成した第二の透明導電性樹脂基材を同じ速度で巻き出しつつ、透明導電膜側が調光材料から形成された塗布層に向くようにして積層して密着し、積層体を形成した。このとき第二の透明導電性基材の表面側から積層体の厚み方向に、押圧ロールを用いて、1kPa以上60kPa以下の圧力で押圧して第二の透明導電性基材が塗布層に密着するようにした。
(c)硬化工程
最後に、積層体の両面の透明導電性樹脂基材のポリエステルフィルム側から、メタルハライドランプを用いて3000mJ/cmの紫外線を照射して、高分子媒体を硬化した。これにより紫外線硬化した樹脂マトリックス内に光調整懸濁液が球形の液滴として分散形成されたフィルム状の平均膜厚65μmの調光層が、2つの透明導電性樹脂基材に挟まれた構造を有する平均膜厚315μm調光フィルムを製造した。
硬化工程後に、得られた調光フィルムを2m/分の速度で直径6インチ(15.24cm)の巻芯に巻き取って、調光フィルムのロール体を得た。
(調光フィルムの透過率測定)
分光式色差計SZ−Σ90(日本電色工業(株)製)を使用し、A光源、視野角2度で測定したY値(%)を光透過率とした。なお、電界印加時と未印加時の光透過率をそれぞれ測定した。なお、電界印加時には400Hzの実効値100Vの交流電圧を印加した。
電界印加時の透過率をTon(%)、電圧印加がないときをToff(%)、透過率差をΔT(%)=Ton(%)−Toff(%)とし、印加後60秒後のΔT(%)として値を測定したところ、それぞれTon(%)=80.1%、Toff(%)=19.1%、ΔT(%)=60.9%であった。この調光フィルムを115℃で2時間保管した後に同様にして透過率差ΔT(%)値を測定したところ56.2%であった。
(耐熱性評価)
耐熱性の目安として、加熱後の透過率差(ΔT)を加熱後前の透過率差(ΔT)で除した値をΔT保持率として算出し、これを評価した。このフィルムの115℃、2時間でのΔT保持率は92.3%であった。
(応答性評価)
モリテック製ハロゲン光源MHAAをフィルムに照射し、受光センサとして浜松ホトニクス製SiフォトダイオードS2281−01を用いて透過率を測定して応答性を評価した。実効値100V、50Hzの交流電圧を印加してから、透過率測定で得られた透過率差の80%になるまでに要する時間としてΔTup、印加をやめてから透過率差の20%になるまでに要する時間としてΔTdownを測定したところ、それぞれ0.8秒、13.2秒になった。
<実施例2>
(光調整粒子懸濁液の調製)
実施例1で調製した光調整粒子分散液75.50g、実施例1で調製した分散高分子76.89gを用いた以外は実施例1と同様にして光調整粒子懸濁原液を得た。前記の光調整粒子懸濁原液14.10g、トリメリット酸イソデシル6.42gをポリカップに量り取り、攪拌して光調整懸濁液を得た。光調整懸濁液中の光調整粒子濃度は3.43質量%であった。
(調光材料の調製)
上記光調整懸濁液を用いた以外は実施例1と同様にして調光材料を調製した。
(調光フィルムの作製)
上記で得られた調光材料を用いた以外は実施例1と同様にして、平均膜厚65μmの調光層が透明導電性樹脂基材に挟まれた平均膜厚315μm調光フィルムを製造した。
(調光フィルムの透過率測定)
実施例1と同様にしてΔTon(%)、Toff(%)、ΔT(%)値を測定したところ、それぞれΔTon(%)=67.9%、Toff(%)=1.5%、ΔT(%)=66.4%であった。この調光フィルムを115℃で2時間保管した後に同様にして透過率差ΔT(%)値を測定したところ58.4%であった。
(耐熱性評価)
ΔT保持率を評価したところ、このフィルムの115℃、2時間でのΔT保持率は88.0%であった。
(応答性評価)
ΔTup、ΔTdownを測定したところ、それぞれΔTup=1.1秒、ΔTdown=5.9秒になった。
<実施例3>
(光調整粒子懸濁液の調製)
実施例1で調製した光調整粒子分散液90.11g、実施例1で調製した分散高分子75.61gを用いた以外は実施例1と同様にして光調整粒子懸濁原液を得た。上記の光調整粒子懸濁液14.10g、トリメリット酸イソデシル6.42gをポリカップに量り取り、攪拌して光調整懸濁液を得た。光調整懸濁液中の光調整粒子濃度は4.12質量%であった。
(調光材料の調製)
上記光調整懸濁液を用いた以外は実施例1と同様にして調光材料を調製した。
(調光フィルムの作製)
上記調光剤を用いた以外は実施例1と同様にして平均膜厚65μmの調光層が透明導電性樹脂基材に挟まれた平均膜厚315μm調光フィルムを製造した。
(調光フィルムの透過率測定)
実施例1と同様にしてΔTon(%)、Toff(%)、ΔT(%)値を測定したところ、それぞれΔTon(%)=62.8%、Toff(%)=0.8%、ΔT(%)=62.0%であった。この調光フィルムを115℃で2時間保管した後に同様にして透過率差ΔT(%)値を測定したところ48.7%であった。
(耐熱性評価)
ΔT保持率を評価したところ、このフィルムの115℃、2時間でのΔT保持率は78.6%であった。
(応答性評価)
ΔTup、ΔTdownを測定したところ、それぞれΔTup=1.4秒、ΔTdown=4.2秒になった。
<実施例4>
(光調整粒子懸濁液の調製)
実施例1で調製した光調整粒子分散液26.83g、実施例1で調製した分散高分子70.45gを用いた以外は実施例1と同様にして光調整粒子懸濁原液を得た。前記の光調整粒子懸濁原液14.10g、トリメリット酸イソデシル6.42gをポリカップに量り取り、攪拌して光調整懸濁液を得た。光調整懸濁液中の光調整粒子濃度は1.37質量%であった。
(調光材料の調製)
上記光調整懸濁液を用いた以外は実施例1と同様にして調光材料を調製した。
(調光フィルムの作製)
上記調光剤を用いた以外は実施例1と同様にして平均膜厚100μmの調光層が透明導電性樹脂基材に挟まれた平均膜厚350μm調光フィルムを製造した。
(調光フィルムの透過率測定)
実施例1と同様にしてΔTon(%)、Toff(%)、ΔT(%)値を測定したところ、それぞれΔTon(%)=75.2%、Toff(%)=9.8%、ΔT(%)=65.3%であった。この調光フィルムを115℃で2時間保管した後に同様にして透過率差ΔT(%)値を測定したところ56.1%であった。
(耐熱性評価)
ΔT保持率を評価したところ、このフィルムの115℃、2時間でのΔT保持率は85.8%であった。
(応答性評価)
ΔTup、ΔTdownを測定したところ、それぞれΔTup=1.1秒、ΔTdown=25.4秒になった。
<実施例5>
(光調整粒子懸濁液の調製)
実施例1で調製した光調整粒子分散液75.50g、実施例1で調製した分散高分子76.89gを用いた以外は実施例1と同様にして光調整粒子懸濁原液を得た。前記の光調整粒子懸濁原液14.10g、トリメリット酸イソデシル6.42gをポリカップに量り取り、攪拌して光調整懸濁液を得た。光調整懸濁液中の光調整粒子濃度は3.43質量%であった。
(調光材料の調製)
上記光調整懸濁液を用いた以外は実施例1と同様にして調光材料を調製した。
(調光フィルムの作製)
上記調光剤を用いた以外は実施例1と同様にして平均膜厚100μmの調光層が透明導電性樹脂基材に挟まれた平均膜厚350μm調光フィルムを製造した。
(調光フィルムの透過率測定)
実施例1と同様にしてΔTon(%)、Toff(%)、ΔT(%)値を測定したところ、それぞれΔTon(%)=56.3%、Toff(%)=0.3%、ΔT(%)=56.0%であった。この調光フィルムを115℃で2時間保管した後に同様にして透過率差ΔT(%)値を測定したところ48.4%であった。
(耐熱性評価)
ΔT保持率を評価したところ、このフィルムの115℃、2時間でのΔT保持率は86.4%であった。
(応答性評価)
ΔTup、ΔTdownを測定したところ、それぞれΔTup=2.9秒、ΔTdown=2.8秒になった。
<実施例6>
(光調整粒子懸濁液の調製)
実施例1で調製した光調整粒子分散液90.11g、実施例1で調製した分散高分子75.61gを用いた以外は実施例1と同様にして光調整粒子懸濁原液を得た。前記の光調整粒子懸濁原液14.10g、トリメリット酸イソデシル6.42gをポリカップに量り取り、攪拌して光調整懸濁液を得た。光調整懸濁液中の光調整粒子濃度は4.12質量%であった。
(調光材料の調製)
上記光調整懸濁液を用いた以外は実施例1と同様にして調光材料を調製した。
(調光フィルムの作製)
上記調光剤を用いた以外は実施例1と同様にして平均膜厚100μmの調光層が透明導電性樹脂基材に挟まれた平均膜厚350μm調光フィルムを製造した。
(調光フィルムの透過率測定)
実施例1と同様にしてΔTon(%)、Toff(%)、ΔT(%)値を測定したところ、それぞれΔTon(%)=49.5%、Toff(%)=0.1%、ΔT(%)=49.4%であった。この調光フィルムを115℃で2時間保管した後に同様にして透過率差ΔT(%)値を測定したところ38.1%であった。
(耐熱性評価)
ΔT保持率を評価したところ、このフィルムの115℃、2時間でのΔT保持率は77.2%であった。
(応答性評価)
ΔTup、ΔTdownを測定したところ、それぞれΔTup=4.1秒、ΔTdown=2.4秒になった。
<比較例1>
(光調整粒子懸濁液の調製)
実施例1で調製した光調整粒子分散液13.47g、実施例1で調製した分散高分子71.44gを用いた以外は実施例1と同様にして光調整粒子懸濁原液を得た。前記の光調整粒子懸濁原液14.10g、トリメリット酸イソデシル6.42gをポリカップに量り取り、攪拌して光調整懸濁液を得た。光調整懸濁液中の光調整粒子濃度は0.69質量%であった。
(調光材料の調製)
上記光調整懸濁液を用いた以外は実施例1と同様にして調光材料を調製した。
(調光フィルムの作製)
上記調光剤を用いた以外は実施例1と同様にして平均膜厚65μmの調光層が透明導電性樹脂基材に挟まれた平均膜厚315μm調光フィルムを製造した。
(調光フィルムの透過率測定)
実施例1と同様にしてΔTon(%)、Toff(%)、ΔT(%)値を測定したところ、それぞれΔTon(%)=82.9%、Toff(%)=41.5%、ΔT(%)=41.4%であった。この調光フィルムを115℃で2時間保管した後に同様にして透過率差ΔT(%)値を測定したところ37.6%であった。
(耐熱性評価)
ΔT保持率を評価したところ、このフィルムの115℃、2時間でのΔT保持率は90.8%であった。
(応答性評価)
ΔTup、ΔTdownを測定したところ、それぞれΔTup=0.6秒、ΔTdown=193.6秒になった。
<比較例2>
(光調整粒子懸濁液の調製)
実施例1で調製した光調整粒子分散液26.43g、実施例1で調製した分散高分子16.25gを用いた以外は実施例1と同様にして光調整粒子懸濁原液を得た。前記の光調整粒子懸濁原液14.10g、トリメリット酸イソデシル6.42gをポリカップに量り取り、攪拌して光調整懸濁液を得た。光調整懸濁液中の光調整粒子濃度は5.51質量%であった。
(調光材料の調製)
上記光調整懸濁液を用いた以外は実施例1と同様にして調光材料を調製した。
(調光フィルムの作製)
上記調光剤を用いた以外は実施例1と同様にして平均膜厚65μmの調光層が透明導電性樹脂基材に挟まれた平均膜厚315μm調光フィルムを製造した。
(調光フィルムの透過率測定)
実施例1と同様にしてΔTon(%)、Toff(%)、ΔT(%)値を測定したところ、それぞれΔTon(%)=55.8%、Toff(%)=0.3%、ΔT(%)=55.5%であった。この調光フィルムを115℃で2時間保管した後に同様にして透過率差ΔT(%)値を測定したところ39.3%であった。
(耐熱性評価)
ΔT保持率を評価したところ、このフィルムの115℃、2時間でのΔT保持率は70.8%であった。
(応答性評価)
ΔTup、ΔTdownを測定したところ、それぞれΔTup=1.8秒、ΔTdown=3.5秒になった。
<比較例3>
(調光フィルムの作製)
比較例1の調光剤を用いた以外は実施例1と同様にして平均膜厚100μmの調光層が透明導電性樹脂基材に挟まれた平均膜厚315μm調光フィルムを製造した。
(調光フィルムの透過率測定)
実施例1と同様にしてΔTon(%)、Toff(%)、ΔT(%)値を測定したところ、それぞれΔTon(%)=80.0%、Toff(%)=30.9%、ΔT(%)=49.1%であった。この調光フィルムを115℃で2時間保管した後に同様にして透過率差ΔT(%)値を測定したところ33.7%であった。
(耐熱性評価)
ΔT保持率を評価したところ、このフィルムの115℃、2時間でのΔT保持率は68.5%であった。
(応答性評価)
ΔTup、ΔTdownを測定したところ、それぞれΔTup=0.2秒、ΔTdown=132.3秒になった。
<比較例4>
(調光フィルムの作製)
比較例2の調光剤を用いた以外は実施例1と同様にして平均膜厚100μmの調光層の調光フィルムの作製を試みたが、調光層が硬化せずフィルム形成できなかった。
<比較例5>
(光調整粒子懸濁液の調製)
実施例1で調製した光調整粒子分散液75.50g、実施例1で調製した分散高分子76.89gを用いた以外は実施例1と同様にして光調整粒子懸濁原液を得た。前記の光調整粒子懸濁液14.10g、トリメリット酸イソデシル6.42gをポリカップに量り取り、攪拌して光調整懸濁液を得た。光調整懸濁液中の光調整粒子濃度は3.43質量%であった。
(調光材料の調製)
上記光調整懸濁液を用いた以外は実施例1と同様にして調光材料を調製した。
(調光フィルムの作製)
上記調光剤を用いた以外は実施例1と同様にして平均膜厚160μmの調光層の調光フィルムの作製を試みたが、調光層が硬化せずフィルム形成できなかった。
実施例1〜6、及び比較例1〜5の評価結果を表1にまとめて示す。なお、硬化性、耐熱性及び応答性については以下の評価基準に従ってそれぞれ評価した結果を併せて示す。また、表中の「−」は未評価であることを示す。
[硬化性評価]
得られた調光フィルムの硬化性について、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
A:紫外線量3000mJ/cmで十分に硬化して、強い力でフィルムを引き剥がすと調光層での凝集破壊がおきた。
B:紫外線量3000mJ/cmで硬化して、フィルムを引き剥がすと調光層での凝集破壊がおきた。
C:紫外線量3000mJ/cmでは硬化が不十分であった。
[耐熱性評価]
得られた調光フィルムの耐熱性について、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
A:ΔT保持率が85%以上であり、耐熱性に優れていた。
B:ΔT保持率が75%以上85%未満であり、耐熱性が良好であった。
C:ΔT保持率が75%未満であり、耐熱性が不十分であった。
[応答性評価]
得られた調光フィルムの応答性について、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
A:ΔTup、ΔTdownともに10秒未満であり、応答性に優れていた。
B:ΔTup、ΔTdownともに10秒以上30秒未満であり、応答性が良好であった。
C:ΔTup、ΔTdownの少なくとも一方が30秒以上であり、応答性が不十分であった。
表1から、本発明の調光フィルムは、耐熱性、応答性、及びフィルム形成性(硬化性)に優れることが分かる。
1 調光層
2 樹脂マトリックス
3 液滴
4 透明導電性樹脂基材
5a 透明導電膜
5b 透明樹脂基材
6 プライマー層
7 電源
8 スイッチ
9 分散媒
10 光調整粒子
11 入射光
12 タップ領域
13 導線

Claims (3)

  1. 2つの透明導電性樹脂基材と、
    前記2つの透明導電性樹脂基材に挟持され、樹脂マトリックス及び前記樹脂マトリックス中に分散され且つ光調整粒子を1質量%〜5質量%の濃度で含有する光調整懸濁液を含み、平均膜厚が50μm〜150μmである調光層と、
    を有する調光フィルム。
  2. 第一の透明導電性樹脂基材上に、エネルギー線照射により硬化可能な高分子媒体、及び光調整粒子を1質量%〜5質量%の濃度で含有する光調整懸濁液を含む調光材料を塗布して、平均膜厚が50μm〜150μmである塗布層を形成する工程と、
    前記塗布層上に第二の透明導電性樹脂基材を積層して積層体を得る工程と、
    前記積層体にエネルギー線を照射して、前記高分子媒体を硬化させて樹脂マトリックスを形成する工程と、
    を有する請求項1に記載の調光フィルムの製造方法。
  3. 前記調光層が形成された調光フィルムを巻き取ってロール体を得る工程を更に含む請求項2に記載の調光フィルムの製造方法。
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