JP5477224B2 - 調光フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、調光機能を有する調光フィルムに関する。
光調整懸濁液を含む調光硝子は、エドウィン・ランド(Edwin.Land)により最初に発明されたもので、その形態は、狭い間隔を有する2枚の透明導電性基材の間に、液体状態の光調整懸濁液を注入した構造になっている(例えば、特許文献1参照)。エドウィン・ランドの発明によると、2枚の透明導電性基材の間に注入されている液状の光調整懸濁液は、電界を印加していない状態では懸濁液中に分散されている光調整粒子のブラウン運動により、入射光の大部分が光調整粒子により反射、散乱又は吸収され、ごく一部分だけが透過することになる。
即ち、光調整懸濁液に分散されている光調整粒子の形状、性質、濃度及び照射される光エネルギーの量により、透過、反射、散乱又は吸収の程度が決められる。前記構造の調光硝子を用いた調光窓に電界を印加すると、透明導電性基材を通じて光調整懸濁液に電場が形成され、光調整機能を表す光調整粒子が分極を起こし、電場に対して平行に配列され、光調整粒子と光調整粒子の間を光が透過し、最終的に調光硝子は透明になる。しかし、このような初期の調光装置は、実用上、光調整懸濁液内での光調整粒子の凝集、自重による沈降、熱による色相変化、光学密度の変化、紫外線照射による劣化、基材の間隔維持及びその間隔内への光調整懸濁液の注入が困難等であるために、実用化が難しかった。
これを改善する方法として、液状の光調整懸濁液を硬化性の高分子樹脂の溶液と混合し、重合による相分離法、溶媒揮発による相分離法、又は温度による相分離法等を利用してフィルムを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
米国特許第1,955,923号明細書 特開2002−189123号公報
しかし、硬化して樹脂マトリックスとなる高分子樹脂は、透明導電性樹脂基材との密着性を考慮に入れた分子設計にはなっていないため、表面にITO等の導電性薄膜が成膜されたPETフィルム等の透明導電性樹脂基材と調光層との密着性が不十分で、剥がれが生じる場合があった。
上記課題に対して、これまでの本発明者らの検討により、特定のプライマー層を透明導電性樹脂基材と調光層との間に設けることによって、密着性の向上が図れることを見出した。更なる検討の結果、プライマー層を設けた場合には、プライマー層のタックを小さくする必要があることを新たに見出した。ここで、プライマー層のタックとは、調光フィルムの製造時に使用する金属ロールとプライマー層とのタックをいう。調光フィルムを作製する際、一方のプライマー層付き透明導電性樹脂基材をロール・トゥ・ロールでテンションを掛けつつ、他方の調光材料が塗工されている透明導電性樹脂基材をラミネートする。このとき、両者が正確に重なるように、プライマー層付き透明導電性樹脂基材を幅方向(基材の長尺方向と垂直方向)に微調整する。その際にプライマー層のタックが大きいと、金属ロールとプライマー層とのスベリが悪く、プライマー層付き透明導電性樹脂基材の位置の微調整が困難となり、生産性が低下することが明らかとなった。
したがって、本発明は、調光層および透明導電性樹脂基材間の密着性に優れるとともに、プライマー層のタックが抑制された調光フィルムを提供することを課題とする。
本発明者等は、鋭意検討した結果、調光層および透明導電性樹脂基材の間に特定構成のプライマー層を設けることにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、2つの透明導電性樹脂基材と、前記2つの透明導電性樹脂基材に挟持された、樹脂マトリックス及び前記樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液を含む調光層と、前記透明導電性樹脂基材と前記調光層との間に設けられた、有機バインダー樹脂、及び、アルキル基含有ケイ素化合物により表面処理された金属酸化物粒子を含むプライマー層と、を備える調光フィルムである。
前記金属酸化物粒子は、平均粒径が100nm以下であることが好ましい。また前記金属酸化物粒子は、前記プライマー層中0.5〜95質量%で含有されることが好ましい。
前記プライマー層は、重合性モノマー及び重合性オリゴマーから選ばれる少なくとも1種である重合性化合物と、前記金属酸化物粒子とを含む前駆体層を、熱または光で硬化させてなることが好ましく、また前記有機バインダー樹脂は、(メタ)アクリレートに由来する構成を有するポリマーを含むことが好ましい。
前記金属酸化物粒子が、二酸化ジルコニウム(ZrO)であることが好ましい。
さらに前記プライマー層の膜厚が、500nm以下であることが好ましい。
本発明によれば、調光層および透明導電性基材間の密着性に優れるとともに、プライマー層のタックが抑制された調光フィルムを提供することができる。
本発明にかかる調光フィルムの一態様を示す概略断面図である。 図2(a)は、図1の調光フィルムの電界が印加されていない場合の作動を説明するための概略断面図であり、図2(b)は、電界が印加されていないときの液状の光調整懸濁液の液滴3の様子を示す図である。 図3(a)は、図1の調光フィルムの電界が印加されている場合の作動を説明するための概略断面図であり、図3(b)は、電界が印加されているときの液状の光調整懸濁液の液滴3の様子を示す図である。 本発明にかかる調光フィルムの端部の状態の一例を説明するための概略断面図である。
本発明において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
さらに本明細書において、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方を意味する。
本発明の調光フィルムは、樹脂マトリックス及び樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液を含む調光層が、2つの透明導電性樹脂基材間に挟持された調光フィルムであり、調光層及び透明導電性樹脂基材の間に特定のプライマー層が設けられていることを特徴とする。
これにより、調光層および透明導電性基材間の密着性に優れる。また、プライマー層のタックや転写性が抑制されるため、調光フィルムの製造時における作業性や生産性が向上する。
前記調光層は、一般に、調光材料を用いて形成することが可能である。本発明における調光材料は、エネルギー線を照射することにより硬化する高分子媒体に由来する樹脂マトリックスと、光調整粒子が流動可能な状態で分散媒中に分散した光調整懸濁液と、を含有する。前記光調整懸濁液中の分散媒は、高分子媒体及びその硬化物と相分離しうるものであることが好ましい。
該調光材料を用いて、両方の透明導電性樹脂基材の調光層と接する面にプライマー層を設けた2つの透明導電性樹脂基材間、あるいは一方の透明導電性樹脂基材にのみ、調光層と接する面にプライマー層を設けた2つの透明導電性樹脂基材間に、高分子媒体から形成された樹脂マトリックス中に光調整懸濁液が分散した調光層を挟持させることにより、本発明の調光フィルムが得られる。
すなわち、本発明の調光フィルムの調光層では、液状の光調整懸濁液が、高分子媒体が硬化した固体状の樹脂マトリックス内に微細な液滴の形態で分散されている。光調整懸濁液に含まれる光調整粒子は、棒状又は針状であることが好ましい。
このような調光フィルムに電界を印加すると、樹脂マトリックス中に分散されている光調整懸濁液の液滴中に、浮遊分散されている電気的双極子モーメントをもつ光調整粒子が、電界に対し平行に配列されることにより、液滴が入射光に対して透明な状態に転換され、視野角度による散乱、又は透明性低下が殆どない状態で入射光を透過させる。
本発明においては、特定のプライマー層上に調光層を設けてフィルム化することによって、従来の調光フィルムの問題点、即ち、調光層と透明導電性樹脂基材との密着性が弱く、製造過程あるいはフィルム製造後の加工過程等で調光層が透明導電性樹脂基材から剥がれるといった問題が解決される。
<プライマー層>
本発明におけるプライマー層は、有機バインダー樹脂の少なくとも1種と、アルキル基含有ケイ素化合物により表面処理された金属酸化物粒子の少なくとも1種とを含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。
アルキル基含有ケイ素化合物により表面処理された金属酸化物粒子(以下、「特定金属酸化物粒子」ともいう)を含むことで、調光層と透明導電性樹脂基材の間の密着性に優れ、プライマー層のタック性及び転写性を抑制することができる。また有機バインダー樹脂中での分散安定性に優れ、調光フィルムとしてのヘイズの均一性が向上し、透明導電性樹脂基材の接触抵抗の上昇が抑制される。
またプライマー層が特定金属酸化物粒子を含むことで、高い硬度のプライマー層を得ることが可能となり、調光フィルムと透明導電性樹脂基材との密着性を向上させるだけでなく、調光フィルムを剥がして電極を取り出す際に、下地の透明導電膜に傷が付きにくくなる効果がある。
さらに、特定金属酸化物粒子を用いたプライマー層では、光照射量を多くした場合であっても、調光層と透明導電性樹脂基材との間の密着性の低下が抑えられる。よって、特定金属酸化物粒子を含有するプライマー層は、照射量を高めて硬化し形成することが可能であり、より高い硬度のプライマー層が得られつつ、調光フィルムと透明導電性樹脂基材との密着性が向上する。またプライマー層を形成するための照射量の許容範囲が広くなり、照射量の調整を簡略化することも可能である。更に、調光材料中の高分子媒体を光硬化させる際に、プライマー層付き透明導電性樹脂基材にも光が照射される場合においても、照射量を多くすることが可能となる。よって、プライマー層に特定金属酸化物粒子を用いると、調光層に用いる高分子媒体の選択肢が広がる。
(特定金属酸化物粒子)
前記特定金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子の表面がアルキル基含有ケイ素化合物で処理されている。
前記特定金属酸化物粒子は、その表面上に疎水性のアルキル基を有するため、例えば、プライマー層を構成する有機バインダー樹脂や、その前駆体である重合性化合物との分子間相互作用(例えば、相溶性)により、プライマー層及びその前駆体層における分散安定性が向上すると考えることができる。これにより、プライマー層における特定金属酸化物粒子の分散状態の均一性が向上し、本発明の効果が、より効果的に奏されるものと考えることができる。
前記金属酸化物粒子としては特に制限されないが、例えば、ZrO、SiO、ITO、TiO、ZnO、Al、GZO、コバルトブルー、CeO、BiO、CoO、CuO、Fe(α)、Fe(γ)、Ho、Mn、SnO、Y、AZO、MgO、Co等を挙げることができ、これらから選ばれる、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、密着性とタック性の観点から、ZrO、およびSiOから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ZrOであることがより好ましい。
アルキル基含有ケイ素化合物とは、ポリマー又はオリゴマーであるポリアルキルシロキサンや、低分子化合物であるアルキル基含有シランカップリング剤などをいう。
ポリアルキルシロキサンとは、シロキサン骨格に無置換のアルキル基が導入されているものをいい、側鎖の一部にアルキル基以外の有機基が導入されていてもよく、末端がアルキル基以外の官能基であってもよい。アルキル基以外の有機基としては疎水性基が好ましく、このような疎水性基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基等のアラルキル基などが挙げられ、フェニル基が好ましい。また、シロキサン骨格の末端に導入され得る官能基としては、水酸基、アミノ基、ビニル基、スチリル基、エポキシ基、メルカプト基、などが挙げられる。
ポリアルキルシロキサンとして特に好ましくは、シロキサン骨格に導入される有機基の殆どが無置換のアルキル基の場合である。無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、ノニル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基がより好ましく、メチル基がより好ましい。
ポリアルキルシロキサンとして具体的には、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられ、ポリジメチルシロキサンが好ましい。なお、ポリアルキルシロキサンは直鎖状に限らず、シルセスキオキサンのように3次元網目状を含んでいてもよい。
アルキル基含有のシランカップリング剤は、分子内にアルキル基と、金属酸化物表面との反応に寄与する官能基とを有し、金属酸化物表面にアルキル基を導入することができるシランカップリング剤であれば特に制限されない。金属酸化物表面との反応に寄与する官能基としては、メトキシ基やエトキシ基等のアルコキシ基やクロロ基などが挙げられる。
シランカップリング剤のアルキル基は、無置換のアルキル基であり、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、ノニル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基がより好ましく、メチル基がより好ましい。
本発明におけるアルキル基含有のシランカップリング剤は、少なくとも1つのアルキル基と、金属酸化物表面との反応に寄与する官能基を2〜3個有するシリル基と、を有していればよく、少なくとも1つのアルキル基と、炭素数1〜4のアルコキシ基を2〜3個有するアルコキシシリル基とを有する化合物であることが好ましい。
具体的には、例えば、メチルアルコキシシラン(例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなど)、メチルクロロシラン(例えば、ジメチルジクロロシシラン、メチルトリクロロシランなど)等を挙げることができる。
前記金属酸化物粒子をアルキル基含有ケイ素化合物により表面処理する方法としては特に制限されず、通常用いられる表面処理方法を適宜選択することができる。例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)の開環反応による方法、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を噴霧し乾燥する方法、メチルアルコキシシランやメチルクロロシラン等のシランカップリング剤による表面処理法、などを挙げることができる。
金属酸化物粒子の表面は、アルキル基含有ケイ素化合物によって全面に処理されていることが好ましく、全面が処理されているのであればアルキル基含有ケイ素化合物の処理量は特に制限されず適宜調整することができ、例えば金属酸化物粒子に対して0.1質量%以上10質量%以下とすることができる。
前記特定金属酸化物粒子の粒子径は特に制限されないが、調光フィルムのヘイズを増加させないために、平均粒径が100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、平均粒径とはBET法による比表面積測定装置より測定した比表面積より、下記式を用いて算出された粒径を意味する。
平均粒径(nm)=6000/(密度[g/cm]×比表面積[m/g])
上記範囲の平均粒径を有する特定金属酸化物粒子は、上記のようにして調製したものであっても、市販品から適宜選択したものであってもよい。
前記プライマー層における特定金属酸化物の含有率は特に制限されず、所望の特性に応じて適宜選択することができる。例えば、調光フィルムのヘイズ上昇抑制の観点から、プライマー層の全固形分中に0.5〜95質量%とすることができ、0.5〜75質量%であることが好ましく、0.5〜50質量%であることがさらに好ましい。
尚、プライマー層の全固形分とはプライマー層を構成する成分から、揮発性の成分を除去した残分を意味する。
(有機バインダー樹脂)
前記有機バインダー樹脂としては、前記特定金属酸化物粒子とともにプライマー層を構成し得るものであれば特に制限されないが、成膜性が良好なものであることが好ましい。ここで成膜性が良好であるとは、プライマー層から前記特定金属酸化物粒子が析出したり、相分離が発生したりし難いことを意味する。すなわち、特定金属酸化物粒子との相互作用により、特定金属酸化物の分散安定性が良好である樹脂であることが好ましい。
本発明においてプライマー層は、密着性とタック性の観点から、重合性モノマー及び重合性オリゴマーから選ばれる少なくとも1種である重合性化合物と、前記特定金属酸化物粒子とを含む前駆体層を、熱または光で硬化させてなるものであることが好ましく、前記重合性化合物は(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記重合性モノマー及び重合性オリゴマーとしては、以下のような(メタ)アクリレート(以下、「第1の(メタ)アクリレート」ともいう)を挙げることができる。
例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、テトラデカエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ノナエチレングリコールジアクリレート、テトラデカエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチルロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。これらは、1種単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。なお、本発明における第1の(メタ)アクリレートはこれらの例に限定されるものではない。
これらの(メタ)アクリレートの市販品としては、ライトエステルEG、ライトエステル2EG、ライトエステル3EG、ライトエステル4EG、ライトエステル9EG、ライトエステル14EG、ライトエステル1,4BG、ライトエステルNP、ライトエステル1,6HX、ライトエステル1,9ND、ライトエステル1.10DC、ライトエステルDCP−M、ライトエステルBP−2EMK、ライトエステルBP−4EM、ライトエステルBP−6EM、ライトエステルTMP、ライトアクリレート3EG−A、ライトアクリレート4EG−A、ライトアクリレート9EG−A、ライトアクリレート14EG−A、ライトアクリレートPTMGA−250、ライトアクリレートNP−A、ライトアクリレートMPD−A、ライトアクリレート1,6HX−A、ライトアクリレートBEPG−A、ライトアクリレート1,9ND−A、ライトアクリレートMOD−A、ライトアクリレートDCP−A、ライトアクリレートBP−4EA、ライトアクリレートBP−4PA、ライトアクリレートBA−134、ライトアクリレートBP−10EA、ライトアクリレートHPP−A、ライトアクリレートTMP−A、ライトアクリレートTMP−3EO−A、ライトアクリレートTMP−6EO−3A、ライトアクリレートPE−4A、ライトアクリレートDPE−6A、AT−600、AH−600(以上、共栄社化学(株)製)、アロニックスM−215、アロニックスM−220、アロニックスM−225、アロニックスM−270、アロニックスM−240、アロニックスM−310、アロニックスM−321、アロニックスM−350、アロニックスM−360、アロニックスM−370、アロニックスM−315、アロニックスM−325、アロニックスM−327(以上、東亞合成(株)製)、等が挙げられる。
前記重合性化合物を、熱または光で硬化させる方法としては特に制限はなく、通常用いられる熱硬化方法及び光硬化方法を適宜選択して適用することができる。具体的には、熱重合開始剤あるいは光重合開始剤を用いて硬化させる方法を挙げることができる。
本発明に用いられる熱重合開始剤としては、熱により分解してラジカルを生成して重合性化合物の重合を開始し得るものであれば特に制限されない。例えば、有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
有機過酸化物には、アルキルパーオキシド、アリールパーオキシド、アシルパーオキシド、アロイルパーオキシド、ケトンパーオキシド、パーオキシカボネート、パーオキシカーボキシレート等が含まれる。
アルキルパーオキシドとしては、ジイソプロピルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシド、ジターシャリーアミルパーオキシド、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーアミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルヒドロ−パーオキシド等が挙げられる。アリールパーオキシドとしては、ジクミルパーオキシド、クミルヒドロパーオキシド等が挙げられ、アシルパーオキシドとしては、ジラウロイルパーオキシド等が挙げられる。アロイルパーオキシドとしては、ジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。ケトンパーオキシドとしては、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等を挙げることができる。
また、アゾニトリルとしては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピルニトリル等が挙げられる。
光重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始し得るものであれば特に制限されない。例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記有機バインダー樹脂を構成する重合性化合物として、前記第1の(メタ)アクリレートに代えて、またはそれらと組み合わせて、以下に示す(a)〜(c)の前記第1の(メタ)アクリレートとは異なる材料を用いることも可能である。
(a)分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートを含有する材料。
(b)ペンタエリスリトール骨格を有するウレタンアクリレートを含有する材料。
(c)分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルを含有する材料。
(a)分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートを含有する材料
プライマー層形成に用いる分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートの具体的な例としては、(式1)〜(式8)で表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。尚、(式1)〜(式8)にはアクリロイル基を有する化合物のみを挙げるが、アクリロイル基に代えてメタクリロイル基を有する化合物も同様に挙げることができる。
水酸基を有する(メタ)アクリレートは、さらには水酸基とペンタエリスリトール骨格とを有する(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、「水酸基とペンタエリスリトール骨格とを有する(メタ)アクリレート」とは、(メタ)アクリレート分子内に水酸基があればペンタエリスリトールの水酸基は全て置換されていても構わないが、好ましくはペンタエリスリトールの少なくとも一つの水酸基が無置換であるものを示す。
尚、ペンタエリスリトール骨格については、下記(b)材料の段落で説明する。
本発明において用いられる分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートは、公知の方法で合成することが出来る。例えば、エポキシエステルの場合、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを不活性ガス中でエステル化触媒と重合禁止剤の存在下に反応させることにより得ることができる。
不活性ガスとしては窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられる。これらは単独又は併用して使用することができる。
エステル化触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン誘導体、イミダゾール誘導体等の三級窒素を含有する化合物、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、又はテトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミン等のアミン塩等が用いられる。エステル化触媒の添加量は例えば、0.000001〜20質量%、好ましくは0.001〜1質量%である。
重合禁止剤としてはハイドロキノン、ターシャリーブチルハイドロキノン等のそれ自体公知の重合禁止剤が用いられる。重合禁止剤の使用量は例えば、0.000001〜0.1質量%の範囲から選択される。
エポキシエステルの例としては、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(商品名:アロニックスM−5700、東亞合成(株)製、あるいは、商品名:エポキシエステルM−600A、共栄社化学(株)製)、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート(商品名:ライトエステルG−201P、共栄社化学(株)製)、グリセリンジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(商品名:エポキシエステル80MFA、共栄社化学(株)製)等が挙げられる。
また、水酸基と、ペンタエリスリトール骨格と、を有する(メタ)アクリレートの場合、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトール等と、アクリル酸又はメタクリル酸を空気中でエステル化触媒とを、重合禁止剤の存在下に反応させることにより得られる。ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールに対してアクリル酸あるいはメタクリル酸を縮合させる反応方法としては、特公平5−86972号公報、特開昭63−68642号公報に記載された公知のものが適用できる。
分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートの市販品としては、特にライトエステルHOP、ライトエステルHOA、ライトエステルHOP−A、ライトエステルHOB、ライトエステルHO−MPP、ライトエステルP−1M、ライトエステルP−2M、ライトエステルG−101P、ライトエステルG−201P、ライトエステルHOB−A、エポキシエステルM−600A、ライトエステルHO−HH、ライトアクリレートHOA−HH、HOA−MPL、HOA−MPE、ライトアクリレートP−1A、ライトアクリレートPE−3A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル3000MK、エポキシエステル3000A(以上、共栄社化学(株)製)、アロニックスM−215、アロニックスM−305、アロニックスM−306、アロニックスM−451、アロニックスM−403、アロニックスM−400、アロニックスM402、アロニックスM−404、アロニックスM−406(以上、東亞合成(株)製)、PM−21(日本化薬(株)製)、ホスマーPP、ホスマーPE、ホスマーM(以上、ユニケミカル(株)製)等が挙げられる。
(b)ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタンアクリレートを含有する材料
ここで、「ペンタエリスリトール骨格」とは、下記式(I)に示す部分構造を意味する。尚、式(I)中の「*」は、他の基との結合部位を意味する。
「ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタンアクリレート」とは、具体的には、ウレタンアクリレート分子内に存在するペンタエリスリトールの水酸基の少なくとも1つの水素がカルバモイル基で置換され、且つ少なくとも1つの水酸基が(メタ)アクリル酸でエステル化された構造を有する。このとき、カルバモイル基および(メタ)アクリロイル基は置換基をさらに有していてもよい。なお、カルバモイル基で置換される水酸基と、(メタ)アクリル酸でエステル化される水酸基とが、下記式(I)で示される同一のペンタエリスリトール骨格に結合する水酸基である必要はない。
また、本発明におけるペンタエリスリトール骨格を含有するウレタンアクリレートは、2つのペンタエリスリトール骨格が酸素を介して連結したジペンタエリスリトール骨格を有することも好ましい。その場合も、ペンタエリスリトールの水酸基の少なくとも1つの水素がカルバモイル基で置換され、且つ少なくとも1つの水酸基が(メタ)アクリル酸でエステル化されたものである。このとき、カルバモイル基および(メタ)アクリロイル基は置換基をさらに有していてもよい。
ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタンアクリレートはさらには、IPDI(イソホロンジイソシアネート、すなわち、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート)骨格も同時に有することがより好ましい。また、このウレタンアクリレートはさらに分子内に水酸基をさらに有することが好ましい。
ここで、「IPDI骨格」とは、下記式(II)に示す構造を示す。
尚、式(II)中の「*」は、他の基との結合部位を意味する。
以下に、ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタンアクリレートの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。尚、(式9)〜(式12)にはアクリロイル基を有する化合物のみを挙げるが、アクリロイル基に代えてメタクリロイル基を有する化合物も同様に挙げることができる。
なお、(式13)〜(式15)においてそれぞれのRは、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、アクリロイル基、またはメタクリロイル基を表すが、Rのうち少なくとも1つは水素原子であることが好ましい。
ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタンアクリレートは公知の方法で合成することが出来る。例えば、一般的にウレタンアクリレートは、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基とを公知の方法で反応させて得られることから、ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタンアクリレートも同様に、例えば、以下の製法1〜製法4のいずれかで製造することが可能である。
(製法1):ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及びペンタエリスリトール骨格含有(メタ)アクリレートを一括して仕込んで反応させる方法。
(製法2):ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を反応させ、次いでペンタエリスリトール骨格含有(メタ)アクリレートを反応させる方法。
(製法3):ポリイソシアネート化合物及びペンタエリスリトール骨格含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオール化合物を反応させる方法。
(製法4):ポリイソシアネート化合物及びペンタエリスリトール骨格含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオール化合物を反応させ、最後にまたペンタエリスリトール骨格含有(メタ)アクリレートを反応させる方法。
これらの反応には触媒を用いてもよく、例えば、ラウリル酸ジブチル錫等の錫系の触媒、三級アミン系触媒等が用いられる。
上記製法1〜製法4において用いられるペンタエリスリトール骨格含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記製法1〜製法4において用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート[すなわち、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート]、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタンアクリレートは、ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタンアクリレートを含む市販品を用いることもでき、例えば、UA−306H、UA−306I、UA−306T、UA−510H(共栄社化学(株)製)等が挙げられる。
ペンタエリスリトール骨格とIPDI骨格の両方を含有するウレタンアクリレートは、上記製法1〜製法4のうち、ポリイソシアネート化合物としてイソホロンジイソシアネートを用いることにより得ることができる。
また、市販品を用いることもでき、ペンタエリスリトール骨格とIPDI骨格の両方を含有するウレタンアクリレートを含む市販品として、具体的には下記を例示できる。
AY42−151(フィラーとしてSiO粒子含有、東レ・ダウコーニング(株)製)、UVHC3000(フィラー非含有、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製)、UVHC7000(フィラー非含有、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製)等が挙げられる。
(c)分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルを含有する材料
分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルとしては、好ましくは分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸モノエステルあるいはリン酸ジエステルが挙げられる。分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルは、通常、エステル部分に重合性基を有し、好ましくは1つのエステル部分に1つの重合性基を有する。分子内の重合性基の数は1個又は2個であることが好ましい。また、リン酸エステルは、好ましくは、分子内に(ポリ)エチレンオキサイド、(ポリ)プロピレンオキサイド等の(ポリ)アルキレンオキサイド構造を有する。
重合性基として、熱、エネルギー線の照射等により重合する基が好ましく、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基等のエチレン性不飽和二重結合を有する基が挙げられる。
より具体的には、分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルは、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するリン酸モノエステルあるいはリン酸ジエステルであることが好ましい。
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するリン酸モノエステルあるいはリン酸ジエステルの例としては、下記(式16)又は(式17)で表される化合物が挙げられる。
式16中、Rは炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキレン基を示す。mは1以上の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数である。nは1又は2である。Xはアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を示す。2以上のRまたはXが含まれる場合、それぞれのRまたはXは同一でも異なっていてもよい。
式17中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜6個の直鎖もしくは分岐アルキレン基を示す。l及びmはそれぞれ独立に1以上の整数である。nは1又は2である。Xはアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を示す。2以上のR、RまたはXが含まれる場合、それぞれのR、RまたはXは同一でも異なっていてもよい。
式17で表される化合物において、lは好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜5の整数である。mは好ましくは1〜5の整数であり、より好ましくは1〜2の整数である。
分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルとして、具体的には、日本化薬(株)製のPM−21(下記式c−1)、共栄社(株)製のP−2M(下記式c−2)、P−1M(下記式c−3)、ユニケミカル(株)製のホスマーPE(下記式c−4)、ホスマーPP(下記式c−5)等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリロイルオキシ基を有するリン酸モノエステルあるいはリン酸ジエステルは1種単独でも2種以上を混合して用いられてもよく、他の(メタ)アクリレート等と混合して用いられても良い。
本発明において、プライマー層の膜厚は、500nm以下であることが好ましく、1nm〜500nmであることがより好ましく、10nm〜500nmがより好ましく、10nm〜200nmであることがさらに好ましく、40nm〜100nmであることが特に好ましい。
膜厚が500nm以下であることで、ヘイズの上昇を抑制できる。また膜厚が1nm以上であると充分な密着強度が得られる。
尚、プライマー層の膜厚は紫外・可視光線の反射率分光法、X線反射率測定、エリプソメトリー等によって測定可能である。
前記プライマー層は、透明導電性樹脂基材と調光層の間に設けられる。前記プライマー層は、2つの透明導電性樹脂基材に挟持された調光層の一方の面側のみに設けられていても、両方の面上に設けられていてもよい。本発明においては調光層の両方の面上に設けられていることが好ましい。
尚、プライマー層の形成方法については後述する。
<調光層>
本発明における調光層は、樹脂マトリックスと該樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とを含む調光材料からなる。なお、樹脂マトリックスは、高分子媒体からなり、光調整懸濁液は、光調整粒子が流動可能な状態で分散媒中に分散したものである。高分子媒体及び分散媒(光調整懸濁液中の分散媒)としては、高分子媒体及びその硬化物と分散媒とが、少なくともフィルム化したときに互いに相分離しうるものを用いることが好ましい。すなわち互いに非相溶又は部分相溶性の高分子媒体と分散媒とを組み合わせて用いることが好ましい。
(高分子媒体)
本発明において用いられる高分子媒体としては、(A)(メタ)アクリロイル基を有する樹脂及び(B)光重合開始剤を含み、紫外線、可視光線、電子線等のエネルギー線を照射することにより硬化するものが挙げられる。
(A)(メタ)アクリロイル基を有する樹脂としては、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が合成容易性、調光性能、耐久性等の点から好ましい。これらの樹脂は、置換基として、(メタ)アクリロイル基に加えて、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を有することが、調光性能、耐久性等の点から好ましい。
前記ポリシロキサン系樹脂の具体例としては、例えば、特公昭53−36515号公報、特公昭57−52371号公報、特公昭58−53656号公報、特公昭61−17863号公報等に記載の樹脂を挙げることができる。
前記ポリシロキサン系樹脂は、例えば、両末端シラノールポリジメチルシロキサン、両末端シラノールポリジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン等の両末端シラノールシロキサンポリマー、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シラン化合物等を、2−エチルヘキサン錫等の有機錫系触媒の存在下で、脱水素縮合反応及び脱アルコール反応させて合成される。またポリシロキサン系樹脂の形態としては、無溶剤型が好ましく用いられる。すなわち、ポリシロキサン系樹脂の合成に溶剤を用いた場合には、合成反応後に溶剤を除去することが好ましい。
本発明における(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサン系樹脂中の(メタ)アクリロイル基を含有する繰り返し単位数は、繰り返し単位数全体の1.3〜5.0%であることが好ましく、1.5〜4.5%であることがより好ましい。
本発明の(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサン系樹脂中の(メタ)アクリロイル基を含有する繰り返し単位数を、繰り返し単位数全体の1.3〜5.0%とするためには、ポリシロキサン系樹脂の製造方法において、(メタ)アクリロイル基含有シラノール化合物をポリシロキサン系樹脂の縮合原料の総量(シラノール基含有シロキサン系モノマー及び/又はオリゴマー、(メタ)アクリロイル基含有シラノール化合物及び必要により添加するエンドキャップ剤の合計総量)の2.3〜6.9質量%とすることにより達成可能である。
前記(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサン樹脂の重量平均分子量は、35,000〜60,000であることが好ましく、37,000〜58,000であることがさらに好ましく、40,000〜55,000であることがより好ましい。
(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサン樹脂の重量平均分子量を上記範囲とするには、例えば、重合工程においてGPCで分子量の測定を行いながら35,000〜60,000になった時点で反応を停止すればよい。
前記アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン等の主鎖形成用モノマーと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸イソシアネートエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリロイル基導入用官能基含有モノマー等とを共重合して、プレポリマーを一旦合成し、次いで、このプレポリマーの(メタ)アクリロイル基導入用官能基と反応させるべく(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸イソシアネートエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸等のモノマーを前記プレポリマーに付加反応させることにより得ることができる。
また、前記ポリエステル樹脂は、特に制限はなく、公知の方法で容易に製造できるものが挙げられる。
尚、(A)(メタ)アクリロイル基を有する樹脂の(メタ)アクリロイル基濃度は、NMRの水素の積分強度比から求められる。また、仕込み原料の樹脂への転化率がわかる場合は、計算によっても求められる。
高分子媒体に用いる、(B)光重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始し得るものであればよい。具体的には、既述のプライマー層における光重合開始剤と同様のものを挙げることができる。
(B)光重合開始剤の使用量は、上記の(A)樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。
また、上記の(A)(メタ)アクリロイル基を有する樹脂の他に、有機溶剤可溶型樹脂又は熱可塑性樹脂、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜100,000のポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等も高分子媒体の構成材料として併用することができる。
また、高分子媒体中には、ジブチル錫ジラウレート等の着色防止剤等の添加物を必要に応じて添加してもよい。さらに、高分子媒体には、溶剤が含まれていてもよく、溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができる。
(光調整懸濁液)
光調整懸濁液中の分散媒としては、光調整懸濁液中で分散媒の役割を果たし、また光調整粒子に選択的に付着被覆し、高分子媒体との相分離の際に光調整粒子が相分離された液滴相に移動するように作用し、電気導電性がなく、高分子媒体とは親和性がない液状共重合体を使用することが好ましい。
前記液状共重合体としては例えば、フルオロ基及び水酸基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーが好ましく、フルオロ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーがより好ましい。このような液状共重合体を使用すると、フルオロ基を有する繰り返し単位、および、水酸基を有する繰り返し単位のどちらか一方が光調整粒子に向き、他方の繰り返し単位は高分子媒体中で光調整懸濁液が液滴として安定に維持されるために働くことから、光調整懸濁液内に光調整粒子が非常に均質に分散され、相分離の際に光調整粒子が相分離される液滴内に効率的に誘導される。
このようなフルオロ基及び水酸基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーとしては、フルオロ基含有モノマー及び水酸基含有モノマーの少なくとも一方を用いて共重合させたものが挙げられる。
具体的には、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸3,5,5−トリメチルヘキシル/アクリル酸2−ヒドロキシプロピル/フマール酸共重合体、アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,5H−パーフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,5H−パーフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーは、フルオロ基及び水酸基の両方を有することがより好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜20,000であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーを構成するフルオロ基含有モノマーの使用量は、原料であるモノマー総量の6〜12モル%であることが好ましく、より効果的には7〜8モル%である。フルオロ基含有モノマーの使用量が12モル%以下であることで、屈折率が大きくなりすぎることを抑制し、光透過率が向上する傾向がある。
また、これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーを構成する水酸基含有モノマーの使用量は0.5〜22.0モル%であることが好ましく、より効果的には1〜8モル%である。水酸基含有モノマーの使用量が22.0モル%以下であることで、屈折率が大きくなりすぎることを抑制し、光透過性が向上する傾向がある。
本発明に使用される光調整懸濁液は、分散媒中に光調整粒子が流動可能に分散したものである。光調整粒子としては、例えば、高分子媒体、又は高分子媒体中の樹脂成分、即ち上記の(A)(メタ)アクリロイル基を有する置換基をもつ樹脂等と親和力がなく、また光調整粒子の分散性を高めることができる高分子分散剤の存在下で、光調整粒子の前駆体であるピラジン−2,3−ジカルボン酸・2水和物、ピラジン−2,5−ジカルボン酸・2水和物、ピリジン−2,5−ジカルボン酸・1水和物からなる群の中から選ばれた1つの物質と沃素及び沃化物を反応させて作ったポリヨウ化物の針状小結晶が、好ましく用いられる。
使用しうる高分子分散剤としては、例えば、ニトロセルロース等が挙げられる。
また沃化物としては、沃化カルシウム等が挙げられる。このようにして得られるポリヨウ化物としては、例えば、下記一般式
CaI(C)・xHO (x:1〜2)
CaI(C・cHO (a:3〜7、b:1〜2、c:1〜3)
のいずれかで表されるものが挙げられる。また、これらのポリヨウ化物は針状結晶であることが好ましい。
また、調光フィルム用光調整懸濁液に用いる光調整粒子として、米国特許第2,041,138号明細書(E.H.Land)、米国特許第2,306,108号明細書(Landら)、米国特許第2,375,963号明細書(Thomas)、米国特許第4,270,841号明細書(R.L.Saxe)及び英国特許第433,455号明細書に開示されている光調整粒子も、使用することができる。これらの特許によって公知とされたポリヨウ化物の結晶は、ピラジンカルボン酸、又はピリジンカルボン酸の1つを選択して、沃素、塩素又は臭素と反応させることにより、ポリヨウ化物、ポリ塩化物又はポリ臭化物等のポリハロゲン化物とすることによって作製されている。これらのポリハロゲン化物は、ハロゲン原子が無機質又は有機質と反応した錯化合物で、これらの詳しい製法は、例えば、サックスの米国特許第4,422,963号明細書に開示されている。
サックスが開示しているように、光調整粒子を合成する過程において、均一な大きさの光調整粒子を形成させるため、及び、特定の分散媒内での光調整粒子の分散性を向上させるため、上述したように高分子分散剤としてニトロセルロースのような高分子物質を使用することが好ましい。しかしながら、ニトロセルロースを用いると、ニトロセルロースで被覆された結晶が得られ、このような結晶を光調整粒子として用いる場合、光調整粒子は相分離の時に分離される液滴内に浮遊せず、樹脂マトリックス内に残存することがある。これを防ぐためには、高分子媒体の(A)(メタ)アクリロイル基を有する樹脂として、(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン系樹脂を用いることが好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン系樹脂を用いた場合には、フィルム製造の際に光調整粒子が相分離により形成された微細な液滴内へ容易に分散、浮遊し、その結果、より優れた可変能力を得ることができる。
本発明において、光調整粒子の粒子サイズとしては、調光フィルムとしたときの印加電圧に対する応答時間と、光調整懸濁液中の凝集及び沈殿との関係から、以下の態様であることが好ましい。
光調整粒子の長径は、225〜625nmであることが好ましく、250〜550nmであることがより好ましく、300〜500nmであることがさらに好ましい。
また、光調整粒子の短径に対する長径の比率、すなわちアスペクト比は3.0〜8.0であることが好ましく、3.3〜7.0であることがより好ましく、3.6〜6.0であることがさらに好ましい。
本発明における光調整粒子の長径と短径は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡で光調整粒子を撮影し、撮影した画像より任意に50個の光調整粒子を抽出し、各光調整粒子の長径と短径を平均値として算出することができる。ここで、長径とは、上記撮影した画像により二次元視野内に投影された光調整粒子について、最も長い部分の長さとする。また、短径とは、上記長径に直交する最も長い部分の長さとする。
また、本発明における光調整粒子の粒子径を評価する方法として、光子相関法や動的光散乱法の原理を用いた粒度分布計を用いることができる。この方法では直接粒子の大きさや形状を計測するのではなく、粒子を球状と仮定して相当径を評価することになり、SEM観察とは異なる値となる。例えば、シスメックス株式会社製ゼータサイザーナノシリーズを用い、Z averageとして出力される相当径を粒子径とした場合に、光調整粒子の粒子径(以下、「粒度分布測定により求められる粒子径」ともいう)は135〜220nmが好ましく、140〜210nmがより好ましく、145〜205nmがさらに好ましい。
このZ average値は例えば光相関法や動的光散乱法に基づいた、異なる粒度分布計の測定値、具体的には上述の透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡で測定される光調整粒子の長径、短径とよい相関を示すことが知られおり、粒子径を評価する指標として適当である。
本発明に使用される光調整懸濁液は、光調整懸濁液の全質量に対し、光調整粒子を1〜15質量%含有することが好ましく、2〜10質量%含有することがより好ましい。また、光調整懸濁液の全質量に対し、分散媒を30〜99質量%含有することが好ましく、50〜96質量%含有することがより好ましい。
また、調光材料は、光調整懸濁液を、高分子媒体100質量部に対して、1〜100質量部含有することが好ましく、4〜70質量部含有することがより好ましく、6〜60質量部含有することがさらに好ましく、8〜50質量部含有することが特に好ましい。
本発明における高分子媒体の屈折率と、分散媒の屈折率とは近似していることが好ましい。具体的には、本発明における高分子媒体と分散媒との屈折率の差は、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.003以下である。
<透明導電性樹脂基材>
本発明による調光材料を利用して調光フィルムを製造するときに使用される透明導電性樹脂基材としては、一般的に、透明樹脂基材に透明導電膜(ITO、SnO、In、有機導電膜等の膜)がコーティングされており、透明樹脂基材と透明導電層を合わせた光透過率が80%以上であり、表面抵抗値が3〜3000Ωの透明導電性樹脂基材を使用することができる。なお、透明導電性樹脂基材の光透過率はJIS K7105の全光線透過率の測定法に準拠して測定することができる。
また、透明樹脂基材としては、例えば、高分子フィルム等を使用することができる。前記高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂系のフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等の樹脂フィルムが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、透明性に優れ、成形性、接着性、加工性等に優れるので好ましい。
透明樹脂基材にコーティングされる透明導電膜の厚みは、10〜5,000nmであることが好ましい。尚、透明樹脂基材の厚みは特に制限はない。例えば、高分子フィルムの場合には10〜200μmが好ましい。透明樹脂基材の間隔が狭く、異物質の混入等により発生する短絡現象を防止するために、透明導電膜の上に数nm〜1μm程度の厚さの透明絶縁層が形成されている透明樹脂導電性基材を使用してもよい。また、本発明の調光フィルムを反射型の調光窓に利用する場合(例えば、自動車用リアビューミラー等)は、反射体であるアルミニウム、金、又は銀のような導電性金属の薄膜を電極として直接用いてもよい。
<調光フィルム>
本発明の調光フィルムは、前記調光材料を用いて形成することが可能であり、調光材料は、高分子媒体から形成された樹脂マトリックスと、樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とからなる調光層を形成する。
調光層は、調光層との密着性を向上させるためのプライマー層を有する2枚の透明導電性樹脂基材に挟持されているか、あるいはプライマー層を有する透明導電性樹脂基材とプライマー層を有さない透明導電性樹脂基材との2枚の透明導電性樹脂基材に挟持されていることが好ましい。
調光フィルムを得るためには、まず、液状の光調整懸濁液を、高分子媒体と均質に混合し、光調整懸濁液が高分子媒体中に液滴状態で分散した混合液からなる調光材料を得る。
具体的には、以下の通りである。光調整粒子を溶媒に分散した液と光調整懸濁液の分散媒とを混合し、ロータリーエバポレーター等で溶媒を留去し、光調整懸濁液を作製する。
次いで、光調整懸濁液及び高分子媒体を混合し、光調整懸濁液が高分子媒体中に液滴状態で分散した混合液(調光材料)とする。
この調光材料を、プライマー層を有する透明導電性樹脂基材上に一定な厚さで塗布し、必要に応じて調光材料に含まれる溶剤を乾燥除去した後、高圧水銀灯等を用いて紫外線を照射し高分子媒体を硬化させる。その結果、硬化高分子媒体からなる樹脂マトリックス中に、光調整懸濁液が液滴状に分散されている調光層が形成される。高分子媒体と光調整懸濁液との混合比率を様々に変えることにより、調光層の光透過率を調節することができる。このようにして形成された調光層の上にもう一方のプライマー層を有する透明導電性樹脂基材を密着させることにより、調光フィルムが得られる。
あるいは、前記調光材料を、プライマー層を有する透明導電性樹脂基材上に一定な厚さで塗布し、必要に応じて調光材料に含まれる溶剤を乾燥除去した後、もう一方のプライマー層を有する透明導電性樹脂基材でラミネートした後に紫外線を照射し、高分子媒体を硬化させてもよい。
ここでプライマー層を有する透明導電性樹脂基材は、一方の透明導電性樹脂基材のみでもよい。また、2枚の透明導電性樹脂基材の両方の上に調光層をそれぞれ形成し、それらを調光層同士が密着するようにして積層してもよい。調光層の厚みは、5〜1,000μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
樹脂マトリックス中に分散されている光調整懸濁液の液滴の大きさ(平均液滴径)は、通常0.5〜100μm、好ましくは0.5〜20μm、より好ましいくは1〜5μmである。液滴の大きさは、光調整懸濁液を構成している各成分の濃度、光調整懸濁液及び高分子媒体の粘度、光調整懸濁液中の分散媒の高分子媒体に対する相溶性等により決められる。
平均液滴径は、例えば、SEMを用いて、調光フィルムの一方の面方向から写真等の画像を撮影し、任意に選択した複数の液滴直径を測定し、その平均値として算出することができる。また、調光フィルムの光学顕微鏡での視野画像をデジタルデータとしてコンピュータに取り込み、画像処理インテグレーションソフトウェアを使用し算出することも可能である。
調光層となる調光材料の塗布には、例えば、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等の公知の塗布手段を用いることができる。調光材料は、透明導電性樹脂基材上に設けたプライマー層面に塗布することができる。あるいは、2つの透明導電性樹脂基材の一方にプライマー層を有さない透明導電性樹脂基材を用いる場合には、透明導電性樹脂基材に直接塗布することもできる。
なお、塗布する際は、調光材料を必要に応じて、適当な溶剤で希釈してもよい。溶剤を用いた場合には、透明導電性樹脂基材上に塗布した後に乾燥して溶剤を除去することが好ましい。
調光材料の塗布に用いる溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができる。
液状の光調整懸濁液が、固体の樹脂マトリックス中に微細な液滴形態で分散されている調光層を形成するためには、調光材料をホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等で混合して高分子媒体中に光調整懸濁液を微細に分散させる方法、高分子媒体中の樹脂成分の重合による相分離法、調光材料に含まれる溶剤揮発による相分離法、又は温度による相分離法等を利用することができる。
プライマー層を有する透明導電性樹脂基材は、透明導電性樹脂基材のプライマー処理(プライマー層の形成)ことで得ることができる。
透明導電性樹脂基材のプライマー処理は、例えば、プライマー層を形成する材料を、バーコーター法、マイヤーバーコーター法、アプリケーター法、ドクターブレード法、ロールコーター法、ダイコーター法、コンマコーター法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独又は組み合わせて用いて、透明導電性樹脂基材に塗布することにより行うことができる。なお、塗布する際はプライマー層を形成する材料を必要に応じて適当な溶剤で希釈し、プライマー層を形成する材料の溶液を用いてもよい。
溶剤を用いた場合には、透明導電性樹脂基材上に塗布した後、乾燥して溶剤を除去することが好ましい。尚、プライマー層となる塗膜は必要に応じて透明導電性樹脂基材の片面のみ(透明導電膜側)に形成してもよいし、含浸法やディップコート法によって両面に形成してもよい。
プライマー層形成に用いる溶剤としては、プライマー層を形成する材料を溶解あるいは分散可能で、プライマー層形成後に乾燥等により除去できるものであればよい。例えば、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエタノール、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、アニソール、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチルジグリコール、ジメチルジグリコール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができ、これらの混合溶剤でも良い。
上記の方法によれば、電場の形成により任意に光透過率が調節できる調光フィルムが提供される。この調光フィルムは、電場が形成されていない場合には、光の散乱のない鮮明な着色状態を維持し、電場が形成されると透明な状態に転換される。この能力は、20万回以上の可逆的反復特性を示す。透明な状態においての光透過率増進と、着色された状態における鮮明度の向上のためには、液状の光調整懸濁液の屈折率と、樹脂マトリックスの屈折率をできるだけ一致させることが好ましい。
調光フィルムを作動させるための使用電源は交流で、10〜100ボルト(実効値)、30Hz〜500kHzの周波数範囲とすることができる。本発明の調光フィルムは、電界に対する応答時間を、消色時には1〜50秒以内、着色時には1〜100秒以内とすることができる。また、紫外線耐久性は、750W紫外線等を利用した紫外線照射試験の結果、250時間が経過した後にも安定な可変特性を示し、−50℃〜90℃で長時間放置した場合にも、初期の可変特性を維持することが可能である。
従来技術である液晶を使用した調光フィルムの製造における、水を用いたエマルジョンによる方法を使用すると、液晶が水分と反応して光調整特性を失うことが多く、同一の特性のフィルムを製造しにくいという問題がある。本発明においては、液晶ではなく、光調整粒子が光調整懸濁液内に分散されている液状の光調整懸濁液を使用するため、液晶を利用した調光フィルムとは異なり、電界が印加されていない場合にも光が散乱せず、鮮明度が優れて視野角の制限のない着色状態を表す。そして、光調整粒子の含有量、液滴形態や調光層の膜厚を調節したり、又は電界強度を調節したりすることにより、光可変度を任意に調節できる。また、本発明の調光フィルムは、液晶を用いないことから、紫外線露光による色調変化及び可変能力の低下、大型製品特有の透明導電性樹脂基材の周辺部と中央部間に生ずる電圧降下に伴う応答時間差も解消される。
本発明による調光フィルムに電界が印加されていないときには、光調整懸濁液内の光調整粒子のブラウン運動のため、光調整粒子の光吸収、2色性効果による鮮明な着色状態を示す。しかし、電界が印加されると、液滴又は液滴連結体の中の光調整粒子が電場に平行に配列され、透明な状態に転換される。また、フィルム状態であるがため、液状の光調整懸濁液をそのまま使用する従来技術による調光硝子の問題点、即ち、2枚の透明導電性樹脂基材の間への液状の懸濁液の注入の困難性、製品の上下間の水圧差による下部の膨張現象、風圧等の外部環境による基材間隔の変化による局部的な色相変化、透明導電性樹脂基材の間の密封材の破壊による調光材料の漏洩が解決される。
また、液晶を利用した従来技術による調光窓の場合には、液晶が紫外線により容易に劣化し、またネマチック液晶の熱的特性によりその使用温度の範囲も狭い。更に、光学特性面においても、電界が印加されていない場合には光散乱による乳白色の半透明な状態を示し、電界が印加される場合にも、完全には鮮明化せず、乳濁状態が残存する問題点がある。従って、このような調光窓では、既存の液晶表示素子で動作原理として利用されている光の遮断及び透過による表示機能が不可能である。しかし、本発明による調光フィルムを使用すれば、このような問題点が解決できる。
本発明の調光フィルムは、調光層と透明導電性樹脂基材との密着性が強く、またタック性に優れる。従って製造過程あるいはフィルム製造後の加工過程等で調光層が透明導電性樹脂基材から剥がれるといった問題が生じることのない優れた調光フィルムである。
本発明の調光フィルムは、例えば、室内外の仕切り(パーティッション)、建築物用の窓硝子/天窓、電子産業及び映像機器に使用される各種平面表示素子、各種計器板と既存の液晶表示素子の代替品、光シャッター、各種室内外広告及び案内標示板、航空機/鉄道車両/船舶用の窓硝子、自動車用の窓硝子/バックミラー/サンルーフ、眼鏡、サングラス、サンバイザー等の用途に好適に使用することができる。
適用法としては、本発明の調光フィルムを直接使用することも可能であるが、用途によっては、例えば、本発明の調光フィルムをさらに2枚の基材に挟持させて使用したり、基材の片面に貼り付けて使用したりしてもよい。前記基材としては、例えば、ガラスや、上記透明樹脂基材と同様の高分子フィルム等を使用することができる。
本発明による調光フィルムの構造及び動作を図面により更に詳しく説明すると、下記の通りである。
図1は、本発明の一態様の調光フィルムの構造概略図で、調光層1が、透明導電膜5aがコーティングされている2枚の透明樹脂基材5bからなる透明導電性樹脂基材4の間に挟まれている。調光層1と透明導電性樹脂基材4の間にはプライマー層6が設けられている。スイッチ8の切り換えにより、電源7と2枚の透明導電膜5aの接続、非接続を行う。調光層1は、高分子媒体としての前記(A)(メタ)アクリロイル基を有する置換基をもつ樹脂を紫外線硬化させたフィルム状の樹脂マトリックス2と、樹脂マトリックス2内に液滴3の形態で分散されている液状の光調整懸濁液からなる。
図2(a)は、図1に示した調光フィルムの作動を説明するための図面で、スイッチ8が切られ、電界が印加されていない場合を示す。この場合には、液状の光調整懸濁液の液滴3を構成している分散媒9の中に分散している光調整粒子10は、図2(b)に示すようにブラウン運動により、それぞれランダムな方向を向いている。そのため、入射光11は光調整粒子10に吸収、散乱又は反射され、透過できない。
しかし、図3(a)に示すように、スイッチ8を接続して電界を印加すると、図3(b)に示すように光調整粒子10が印加された電界によって形成される電場と平行に配列する。そのため入射光11は配列した光調整粒子10間を通過するようになる。このようにして、散乱及び透明性の低下のない光透過機能が付与される。
図4は透明導電膜5aに電圧印加するための導線13を接続する方法の一例を示す模式図である。調光フィルムの端部には、透明樹脂基材5bと透明導電膜5aからなり、透明導電膜5bが露出したタップ領域12が設けられている。タップ領域12には導線13が電気的に接続されている。この導線13に、スイッチと電源(図示せず)を接続することで調光フィルムを動作させることができる。
以下、本発明の実施例及びその比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(光調整粒子の製造例)
撹拌機及び冷却管を装着した500mlの四つ口フラスコに、ニトロセルロース1/4LIG(商品名、ベルジュラックNC社製)15質量%の酢酸イソアミル(試薬特級、和光純薬工業(株)製)希釈溶液87.54g、酢酸イソアミル44.96g、脱水CaI(化学用、和光純薬工業(株)製)4.5g、無水エタノール(有機合成用、和光純薬工業(株)製)2.0g、精製水(精製水、和光純薬工業(株)製)0.6gの溶液に、沃素(JIS試薬特級、和光純薬工業(株)製)4.5gを溶解し、光調整粒子の基盤形成物質であるピラジン−2,5−ジカルボン酸2水和物(PolyCarbon Industries製)3gを添加した。45℃で3時間撹拌して反応を終了させた後、超音波分散機で2時間分散させた。このとき、混合液の色相は、茶色から暗紺色に変化した。
次に、混合液から所定の大きさの光調整粒子を取り出すために、遠心分離機を用いて光調整粒子を分離した。混合液を750Gの速度で10分間遠心分離して沈殿物を取り除き、更に7390Gで2時間遠心分離して、浮遊物を取り除き、沈殿物粒子を回収した。この沈殿物粒子は、サブミクロン粒子アナライザ(製品名:N4MD、ベックマン・コールタ社製)で測定した平均粒径が0.36μmを有する針状結晶であった。この沈殿物粒子を光調整粒子とした。
(光調整懸濁液の製造例)
前記の(光調整粒子の製造例)で得た光調整粒子45.5gを、光調整懸濁液の分散媒としてのアクリル酸ブチル(和光特級、和光純薬工業(株)製)/メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(工業用、共栄社化学工業(株)製)/アクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光1級、和光純薬工業(株)製)共重合体(モノマーモル比:18/1.5/0.5、重量平均分子量:2,000、屈折率1.4719)50gに加え、撹拌機により30分間混合した。次いで酢酸イソアミルを、ロータリーエバポレーターを用いて133Paの真空で80℃、3時間減圧除去し、光調整粒子の沈降及び凝集現象のない安定な液状の光調整懸濁液を製造した。
(エネルギー線硬化型シリコーン系樹脂の製造例)
ディーンスタークトラップ、冷却管、撹拌機、加熱装置を備えた四つ口フラスコに、両末端シラノールポリジメチルシロキサン(試薬、チッソ(株)製)17.8g、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン(試薬、チッソ(株)製)62.2g、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン(試薬、チッソ(株)製)20g、2−エチルヘキサン錫(和光純薬工業(株)製)0.1gを仕込み、外温を100℃としたヘプタン中で3時間還流し、反応を行った。
次いで、トリメチルエトキシシラン(試薬、チッソ(株)製)25gを添加し、更に2時間還流し、脱アルコール反応させた後、ヘプタンをロータリーエバポレーターを用いて100Paの真空で80℃、4時間減圧除去し、重量平均分子量35000、屈折率1.4745のエネルギー線硬化型シリコーン系樹脂を得た。
(調光材料の製造例)
上記(エネルギー線硬化型シリコーン系樹脂の製造例)で得たエネルギー線硬化型シリコーン系樹脂10g、光重合開始剤としてのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製)0.2g、着色防止剤としてのジブチル錫ジラウレート0.3gに、前記(光調整懸濁液の製造例)で得た光調整懸濁液2.5gを添加し、1分間機械的に混合し、調光材料を製造した。
[実施例1]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:ライトアクリレート1,6HX−A、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、ポリメチルシロキサンにより表面処理されたZrO粒子(商品名:ZRPGM15WT%−N10、CIKナノテック(株)製)、ポリメチルシロキサンはジメチルジメトキシシランを加水分解・縮合したもの、平均粒径:20nm)を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調製した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をライトアクリレート1,6HX−Aに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたZrO粒子の含有量は9.1質量%である。
(プライマー層付き透明導電性樹脂基材の製造)
ITO(インジウム錫の酸化物)の透明導電膜(厚み30nm)がコーティングされている表面抵抗率200〜700Ω/□のPETフィルム(300R、東洋紡績(株)製、厚み125μm)からなる透明導電性樹脂基材を準備した。この透明導電性樹脂基材の透明導電膜上に、前記プライマー層形成用塗布液を、マイクログラビア法(メッシュ#150)を用いて、全面塗布して、50℃/30秒、60℃/30秒、70℃/1分乾燥した後、UV照射4000mJ/cm(メタルハライドランプ)で光硬化してプライマー層を形成した。得られたプライマー層の厚みは、80nmであった。このプライマー層付き透明導電性樹脂基材を2枚作製した。なお、プライマー層の厚みは、瞬間分光光度計F−20(フィルメトリクス(株)製)を用いて測定した。
(調光フィルムの製造)
前記(プライマー層付き透明導電性樹脂基材の製造)で得たプライマー層付き透明導電性樹脂基材の上に、前記(調整材料の製造例)で得た調光材料を全面塗布して塗布層を形成した。次いでその塗布層上に、もう一枚のプライマー層付き透明導電性樹脂基材をプライマー層が調光材料の塗布層に対向するように積層して密着させた。
次いでメタルハライドランプを用いて4000mJ/cmの紫外線を前記積層した透明導電性樹脂基材のポリエステルフィルム側から照射して、塗布層を紫外線硬化させた。これにより、紫外線硬化した樹脂マトリックス内に光調整懸濁液が球形の液滴として分散形成された調光層が形成された。光調整懸濁液の液滴の大きさ(平均液滴径)は、3μmであった。光調整懸濁液の液滴の大きさは以下の方法で測定した。
−光調整懸濁液の液滴の大きさの測定方法−
調光フィルムの一方の面方向からSEM写真を撮影し、任意に選択した複数の液滴直径を測定し、その平均値として算出した。
また、形成された調光層の厚みは90μmであった。2つの透明導電性樹脂基材に調光層が挟まれた調光フィルムの総厚みは340μmであった。
(試験体の作製)
図4に示すように、透明導電膜の一部を露出させるために、前記得られた調光フィルムの端部から調光層の一部を除去し、露出した透明導電膜から電圧印加用の通電をとった試験体を作製した。
<評価方法>
−調光性能の評価−
分光式色差計SZ−Σ90(日本電色工業(株)製)を使用し、A光源、視野角2度で測定したY値(%)を光透過率とした。なお、試験体の電界印加時と未印加時の光透過率を測定した。
前記試験体の光透過率は、交流電圧を印加しない場合(未印加時)は1.1%であった。また、50Hzの交流電圧100V(実効値)の電圧を印加したときの調光フィルムの光透過率は48%であった。電界印加時と電界未印加時の光透過率の比が44と大きく、良好な調光性能を示した。
−調光層の粘着強度の測定方法−
小型卓上試験器(精密万能試験器)、EZ−S((株)島津製作所製)を使用し、試験体の調光層から透明導電性樹脂基材を、90°ピール、ロード加重50N、引き上げスピード50mm/minで引き剥がすように行い、粘着強度を測定した。
−転写性の評価方法−
プライマー層とITO/PETのPET面を重ね合わせて約1kgの重りを乗せた状態で1週間保管し、プライマー層がITO/PETのPET面に転写しているかを、目視で確認し、下記基準により評価した。
○:転写の割合がプライマー塗工面積全体の5%以下
△:転写の割合がプライマー塗工面積全体の5〜30%
×:転写の割合がプライマー塗工面積全体の30%以上
−タックの評価方法−
上記同様の方法で、プライマー層付き透明導電性樹脂基材を2枚準備し、一方の透明導電性樹脂基材のプライマー層の上に上記調光材料を塗工し、調光材料の塗布層を形成した。そして、他の一方の透明導電性樹脂基材のプライマー層が前記塗布層に対向するように配置して、ロール・トゥ・ロールにより張力をかけながらラミネートした。このとき金属ロール(SUS製、ハードクロムめっき)がプライマー層に接した状態において、2枚の透明導電性樹脂基材の配置位置が正確に重なるように、プライマー層付き透明導電性樹脂基材の位置を幅方向に微調整した。この微調整の難易をタックの評価として下記基準により評価した。
◎:2m/min以上のフィルム搬送速度でも容易に位置合わせ可能
○:1m/min以上、2m/min未満の搬送速度で位置合わせ可能
△:1m/min以上、2m/min未満の搬送速度でも位置合わせには困難を伴った。
×:搬送速度に関わらず位置合わせ困難
−剥離モードの評価方法−
上記粘着強度の測定後の調光フィルムにおいて、透明導電性樹脂基材を引き剥がした。このとき、調光フィルムからの透明導電性樹脂基材の剥離の様子を観察し、以下の基準により評価した。
◎:引き剥がしたときに調光層内部で破壊が起き、2枚の透明導電性樹脂基材の両方に調光層が残っている(凝集破壊)。
○:上記凝集破壊と下記界面剥離が混在している。
×:引き剥がしたときに調光層自体は破壊されず、片方の透明導電性樹脂基材のみに調光層が残り、他方の透明導電性樹脂基材は調光層から剥がれる(界面剥離)。
[実施例2]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(商品名:アロニックスM−315、東亞合成(株)製)を2.0質量%、ポリメチルシロキサンにより表面処理されたZrO粒子(商品名:ZRPGM15WT%−N10、CIKナノテック(株)製、ポリメチルシロキサンはジメチルジメトキシシランを加水分解・縮合したもの、平均粒径:20nm)を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をアロニックスM−315に対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたZrO粒子の含有量は9.1質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、77nmであった。
[比較例1]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:ライトアクリレート1,6HX−A、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3の混合溶媒を98質量%で混合した溶液を調整した。この溶液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をライトアクリレート1,6HX−Aに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、78nmであった。
[比較例2]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(商品名:アロニックスM−315、東亞合成(株)製)を2.0質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3の混合溶媒を98質量%で混合した溶液を調整した。この溶液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をアロニックスM−315に対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、75nmであった。
[比較例3]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:ライトアクリレート1,6HX−A、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、TiO粒子(商品名:RTIMIBK15WT%−G0、CIKナノテック(株)製)、表面処理なし、平均粒径:20nm)を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をライトアクリレート1,6HX−Aに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたTiO粒子の含有量は9.1質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、82nmであった。
[比較例4]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(商品名:アロニックスM−315、東亞合成(株)製)を2.0質量%、TiO粒子(商品名:RTIMIBK15WT%−G0、CIKナノテック(株)製、表面処理なし、平均粒径:20nm)を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をアロニックスM−315に対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたTiO粒子の含有量は9.1質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、76nmであった。
表1に示すとおり、プライマー層が金属酸化物粒子を含有しない比較例1及び2ではプライマー層の粘着強度が著しく小さく、剥離モードの評価でも界面剥離で剥離しており、タック及び転写性も劣っていた。
また、表面処理されていないTiOを金属酸化物粒子として用いた比較例3及び4は、プライマー層の粘着強度は向上するものの、タックと転写性に劣っていた。また、目視において面内のヘイズに偏りが見られた。
これに対し、ポリメチルシロキサンにより表面処理された金属酸化物粒子を含有する実施例1及び2では、プライマー層の粘着強度が大幅に向上し、剥離モードの評価でも凝集破壊で剥離しており、タックと転写性も良好であった。なお、実施例1及び2を比較例3及び4と比べると明らかなように、金属酸化物粒子の表面処理によって、タック性及び転写性のみならず、粘着強度においても向上していることが分かる。
また、比較例と実施例とにおいて印加時及び未印加時の光透過率の点では殆ど差がないことから、実施例1及び2のように金属酸化物粒子を含有しても調光性に阻害的な影響を与えていないことが分かる。むしろ、実施例1と比較例1及び3との比較や、実施例2と比較例2及び4との比較のように、同じ樹脂を用いた場合を比較すると明らかなように
実施例の方がプライマー層の密着性、タック性などに優れる総合的な観点から、電圧の未印加時には透明性が高く、印加時には遮蔽性が高まっている。
[実施例3]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(商品名:UA−306H、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、ポリメチルシロキサンにより表面処理されたZrO粒子(商品名:ZRPGM15WT%−N10、CIKナノテック(株)製、ポリメチルシロキサンはジメチルジメトキシシランを加水分解・縮合したもの、平均粒径:20nm)を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をUA−306Hに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたZrO粒子の含有量は9.1質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、79nmであった。
[実施例4]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(商品名:UA−510H、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、ポリメチルシロキサンにより表面処理されたZrO粒子(商品名:ZRPGM15WT%−N10、CIKナノテック(株)製、ポリメチルシロキサンはジメチルジメトキシシランを加水分解・縮合したもの、平均粒径:20nm)を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をUA−510Hに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたZrO粒子の含有量は9.1質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、83nmであった。
[実施例5]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ペンタエリスリトール骨格を有するUVHC3000(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製)を2.0質量%、ポリメチルシロキサンにより表面処理されたZrO粒子(商品名:ZRPGM15WT%−N10、CIKナノテック(株)製、ポリメチルシロキサンはジメチルジメトキシシランを加水分解・縮合したもの、平均粒径:20nm)を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調整し、これをプライマー層形成用塗布液とした。なお、UVHC3000には光重合開始剤が含有されている。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたZrO粒子の含有量は9.1質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、93nmであった。
[実施例6]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ペンタエリスリトール骨格を有するUVHC7000(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製)を2.0質量%、ポリメチルシロキサンにより表面処理されたZrO粒子(商品名:ZRPGM15WT%−N10、CIKナノテック(株)製、ポリメチルシロキサンはジメチルジメトキシシランを加水分解・縮合したもの、平均粒径:20nm)を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をUVHC7000に対して3.5質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたZrO粒子の含有量は9.1質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、96nmであった。
[実施例7]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ペンタエリスリトール骨格を有するウレタンアクリレートを含むHA7903−11(商品名、日立化成工業(株)製)を2.0質量%、ポリメチルシロキサンにより表面処理されたZrO粒子(商品名:ZRPGM15WT%−N10、CIKナノテック(株)製、ポリメチルシロキサンはジメチルジメトキシシランを加水分解・縮合したもの、平均粒径:20nm)を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をHA7903−11に対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたZrO粒子の含有量は9.1質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、82nmであった。
[実施例8]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(商品名:UA−306H、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、表面処理なしのSiO粒子(商品名:SIRPGM15WT%−E24、CIKナノテック(株)製、平均粒径:20nm)をジメチルジメトキシシランにより表面処理したSiO粒子を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をUA−306Hに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたSiO粒子の含有量は9.1質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、80nmであった。
[比較例5]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(商品名:UA−306H、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を98質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をUA−306Hに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、87nmであった。
[比較例6]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(商品名:UA−510H、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を98質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をUA−510Hに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、85nmであった。
[比較例7]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ペンタエリスリトール骨格を有するUVHC3000(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製)を2.0質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を98質量%で混合した分散液を調整し、これをプライマー層形成用塗布液とした。なお、UVHC3000には光重合開始剤が含有されている。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、95nmであった。
[比較例8]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ペンタエリスリトール骨格を有するUVHC7000(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製)を2.0質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を98質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をUVHC7000に対して3.5質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、98nmであった。
[比較例9]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ペンタエリスリトール骨格を有するウレタンアクリレートを含むHA7903−11(商品名、日立化成工業(株)製)を2.0質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を98質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をHA7903−11に対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、80nmであった。
[比較例10]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(商品名、UA−306H、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、ZrO粒子(商品名:ZRAP15WT%−N08、CIKナノテック(株)製、表面処理なし、平均粒径:20nm)を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をUA−306Hに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたZrO粒子の含有量は9.1質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、85nmであった。
[比較例11]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(商品名、UA−306H、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、SiO粒子(商品名:SIRPGM15WT%−E24、CIKナノテック(株)製、表面処理なし、平均粒径:20nm)を0.2質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.8質量%で混合した分散液を調整した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をUA−306Hに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたSiO粒子の含有量は9.1質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、79nmであった。
表2に示すとおり、ポリメチルシロキサンにより表面処理された金属酸化物粒子を含有する実施例3〜8では、プライマー層の粘着強度に優れ、剥離モードの評価でも凝集破壊で剥離しており、タックと転写性も良好であった。なお、実施例3〜8を比較例5〜11と比べると明らかなように、ペンタエリスリトール骨格を含有する樹脂をプライマー層に用いた場合であっても、ペンタエリスリトール骨格を含有する樹脂の利点である粘着強度を低下させることなく、タック性及び転写性が向上していることが分かる。
また、比較例5〜11と実施例3〜8とにおいて印加時及び未印加時の光透過率の点では殆ど差がないことから、実施例3〜8のように金属酸化物粒子を含有しても調光性に影響を与えていないことが分かる。
一方、比較例5〜9では、プライマー層は金属酸化物粒子を含有しないが、ペンタエリスリトール骨格を含有する樹脂を含むため、プライマー層の粘着強度が確保されているものの、タックと転写性が充分ではなかった。
また、表面処理されていないZrO又はSiOを金属酸化物粒子として用いた比較例10及び11は、タックと転写性が向上していたが、実施例3〜8ほどに充分には向上していなかった。また、比較例10及び11では、目視において面内のヘイズに偏りが見られた。
[実施例9]
(プライマー層形成用塗布液の調製)
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:ライトアクリレート1,6HX−A、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、ポリメチルシロキサンにより表面処理されたZrO粒子(商品名:ZRPGM15WT%−N10、CIKナノテック(株)製)、ポリメチルシロキサンはジメチルジメトキシシランを加水分解・縮合したもの、平均粒径:20nm)を0.1質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を97.9質量%で混合した分散液を調製した。この分散液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をライトアクリレート1,6HX−Aに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。プライマー層形成用塗布液の固形分量(溶剤と光重合開始剤を除く総量)に対する表面処理されたZrO粒子の含有量は4.8質量%である。
(試験体の作製及び評価)
実施例1と同様にして、但し、プライマー層形成用塗布液を上記のものに代えて試験体を作製し、得られた試験体の評価を実施例1と同様の方法で行った。調光フィルムのプライマー層の厚みは、82nmであった。
表3に示すとおり、アルキル基含有珪素化合物により表面処理された金属酸化物粒子の添加量を変えても、プライマー層の粘着強度に優れ、剥離モードの評価でも凝集破壊で剥離しており、タックと転写性も良好であった。
1 調光層
2 樹脂マトリックス
3 液滴
4 透明導電性樹脂基材
5a 透明導電膜
5b 透明樹脂基材
6 プライマー層
7 電源
8 スイッチ
9 分散媒
10 光調整粒子
11 入射光
12 タップ領域
13 導線

Claims (7)

  1. 2つの透明導電性樹脂基材と、
    前記2つの透明導電性樹脂基材に挟持された、樹脂マトリックス及び前記樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液を含む調光層と、
    前記透明導電性樹脂基材と前記調光層との間に設けられた、有機バインダー樹脂、及びアルキル基含有ケイ素化合物により表面処理された金属酸化物粒子を含有するプライマー層と、
    を備える調光フィルム。
  2. 前記金属酸化物粒子は、平均粒径が100nm以下である請求項1に記載の調光フィルム。
  3. 前記金属酸化物粒子は、前記プライマー層中0.5〜95質量%で含有される請求項1又は請求項2に記載の調光フィルム。
  4. 前記プライマー層は、重合性モノマー及び重合性オリゴマーから選ばれる少なくとも1種である重合性化合物と、前記金属酸化物粒子とを含む前駆体層を、熱または光で硬化させてなる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の調光フィルム。
  5. 前記プライマー層の有機バインダー樹脂は、(メタ)アクリレートに由来する構成を有するポリマーを含む請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の調光フィルム。
  6. 前記金属酸化物粒子が、ZrOである請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の調光フィルム。
  7. 前記プライマー層の膜厚が、500nm以下である請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の調光フィルム。
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