JP2008144255A - 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔とその製造方法、電解コンデンサ用電極材の製造方法、アルミニウム電解コンデンサ用電極材およびアルミニウム電解コンデンサ - Google Patents

電解コンデンサ電極用アルミニウム箔とその製造方法、電解コンデンサ用電極材の製造方法、アルミニウム電解コンデンサ用電極材およびアルミニウム電解コンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】高純度アルミニウム材コイル内での高レベルの(100)方位密度の実現とエッチングピットの分散密度の均一化をはかり、一部の直流電解エッチング条件によって生じる場合があった局部的かつ圧延方向に展伸した未エッチング部の発生を解消した、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とその製造方法等を提供する。
【解決手段】 Al純度99.95%以上のアルミニウム鋳塊に均熱、熱間圧延および冷間圧延を施すことによって製造される電解コンデンサー電極用アルミニウム箔であって、箔表面において見出されるアルミ酸化物にからなる欠陥を極めて低い頻度に抑制せしめる。さらに立方体方位結晶粒の占有率を示す(100)方位密度の平均値が98%以上で、かつ、その標準偏差σが1%以内である。これにより、エッチング処理による高く、均一な静電容量を得ることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔、特に中高圧用の電極材として用いられる高性能のアルミニウム箔とその製造方法、電解コンデンサ用電極材の製造方法、アルミニウム電解コンデンサ用電極材およびアルミニウム電解コンデンサに関するものである。
中高圧電極コンデンサ用の電極材として一般に用いられるアルミニウム箔には、その実効面積を拡大して単位面積あたりの静電容量を増大するため、通常、電気化学的もしくは化学的エッチング処理が施される。とりわけ、化成電圧が高くたとえば200V以上の電圧で化成処理される電解コンデンサ用のアルミニウム箔は、箔表面の面積拡大エッチング処理に直流電解法が用いられている。この方法は、一次直流電解エッチング法でアルミニウム箔表面に初期のトンネル状ピットを多数穿孔し、次いで処理条件を変えて二次直流電解エッチング法で初期トンネルピットの径を拡大してトンネル状に穿孔するものである。
このエッチング方法に供されるアルミニウム材には、十分な静電容量が得るためにアルミニウム箔上面の結晶方位で(100)面(立方体方位、Cube方位とも呼ぶ)を多く有する集合組織とすることが求められる。この様な高い(100)方位密度を得るため、種々の方法が実施されている。
このような直流電解法が用いられる電解コンデンサー電極用アルミニウム箔の一般的な製法としては、DC鋳造したアルミニウム合金鋳魂を均質化処理した後、熱間粗圧延、熱間仕上げ圧延、冷間圧延、中間焼鈍を順次行ない、更には低圧下率の冷延またはスキンパスを行なってから、500℃程度以上で高温焼鈍する方法が採用されている(特許文献1、特許文献2など)。
この他、アルミニウム箔表面に形成される酸化膜のエッチングにおける耐電圧の均一性を向上させる技術が、特許文献3及び特許文献4に開示されている。
このように、電解コンデンサーの小型化および高静電容量化の要求が高まってくるにつれて、高純度アルミニウム材を用いた電解コンデンサ用エッチング箔に対するピット分散の均一性、高レベルの(100)方位密度(99%レベル)が求められると共に、さらに高純度アルミニウム箔コイル内での品質変動の抑制への要求が強くなっている。
しかし、これら(100)方位密度が求められると共に、より高い電圧域での静電容量の向上を目的とした種々の直流電解エッチング条件によっては、局部的に、かつ圧延方向に展伸した光沢の不均一な欠陥(略称:未エッチング部)が生じることが判明してきた。
この未エッチング部の発生防止に関しては、特許文献5において有機溶剤で洗浄した純度99.98重量%以上のアルミニウム箔に対し、前述のスキンパス圧延の後特定の焼鈍を施すことにより均一な耐電圧を有する酸化皮膜を形成する技術が開示されている。また、表面の酸化皮膜中に結晶化したγ−Al2 3および鉛または鉛酸化物の箔表面で露出状態を制御することにより均一なエッチング特性を確保する技術が開示されている。
一方で、局部的に圧延方向に展伸した未エッチング部は、前述の開示された技術では十分には解消されていない。本発明者は展伸した未エッチング部の基点を精査した結果、熱間圧延におけるワークロール表面に形成したと想定されるアルミ酸化物からなるロールコーティングが表面に付着し、展伸していることを見出した。
熱間圧延におけるワークロール表面に形成したロールコーティングに起因する酸化物に関して、エッチングでのトンネル状ピットの均一形成に活用する技術が、特許文献6に開示されている。圧延段階でロール上にロールコーティングを均一に形成し箔の表面に転写させる場合、箔コイル全体での均一性の確保には困難となる場合がある。
この発明に類似する製造方法としては、特許文献7にも、熱延温度を規定した発明が開示されている。しかしながら、この発明においては、箔の表面溶解の均一化を目的としている点では一致する点はあるものの、Fe、Siの含有量が高い条件下での表面溶解を均一化するための発明であり、熱間圧延でのロールコーティングに起因するアルミ酸化物の箔表面の残存の制御に関する知見は開示されていない。また、単に熱延開始温度を低減する場合、箔表面の酸化物も減少する傾向にはあるものの、最終焼鈍において(100)方位密度の変動が大きくなり、高電圧における静電容量の増大が期待できないという技術的な課題が解消されない。
この他、非特許文献1には、ロールコーティングの低減に関してブラシロールの効果について開示がなされているが、最終焼鈍後の方位密度に影響を及ぼす板厚8mm以上の熱間粗圧延における圧延条件に関しては開示がなされていない。
特公昭54−11242号 特公昭60−59982号 特開2000−309836号 特開2004―71688号 特開2000-216064号 特開2002-57076号 特開平11-199993号 軽金属学会研究員会発行の研究部会報告書No.24「アルミニウム熱間圧延時のロールコーティング」1991年6月
このように、近年の電解コンデンサの小型化および高静電容量化の要求の高まりに鑑み、高純度アルミニウム箔コイル内での高レベルの(100)方位密度(99%レベル)の実現とエッチングピットの分散密度の均一化をはかり、しかも一部の直流電解エッチング条件によって生じる場合があった局部的かつ圧延方向に展伸した未エッチング部の発生を解消することが求められている。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高純度アルミニウム材コイル内での高レベルの(100)方位密度の実現とエッチングピットの分散密度の均一化をはかり、しかも一部の直流電解エッチング条件によって生じる場合があった局部的かつ圧延方向に展伸した未エッチング部の発生を解消した、電解コンデンサ電極用アルミニウム材とその製造方法、電解コンデンサ用電極材の製造方法、アルミニウム電解コンデンサ用電極材およびアルミニウム電解コンデンサを提供することを課題とする。
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1)化学組成においてAl純度が99.95質量%以上であり、Si:5〜50質量ppm、Fe:5〜40質量ppm、Cu:10〜80質量ppmおよびPb:0.3〜1.0質量ppmを含み、残部が不純物からなるアルミニウム箔で構成され、表面において立方体方位結晶粒の占有率を示す(100)方位密度とエッチング後のアルミニウム材コイルから検出されるアルミ酸化物からなる欠陥が、下記の条件を満足することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
〔(100)方位密度〕
70〜150μmの範囲の任意の厚さで、幅500mm、長さ2000mのアルミニウム箔コイルの全長から無作為に抽出される長さ200mmの10個の検体において、各々圧延方向と直交するコイル幅方向の両端〜60mmおよび中央部の3箇所から抽出した30箇所を測定点とする。これらの測定点に対し、35%HCl:60%HNO3:48%HFを容積比75:25:1で混合した30℃の処理液中に30秒浸漬した後、水洗、乾燥して、(100)方位の結晶粒と他方位の結晶粒の光沢を変化させ、画像処理により(100)方位の結晶粒の面積率を測定したときの方位密度平均値が98%以上で、かつ、その標準偏差σが1%以内であること。
〔アルミ酸化物からなる欠陥〕
70〜150μmの範囲の任意の厚さで、幅500mm、長さ2000mのアルミニウム箔コイルの全長から無作為に抽出される長さ200mmの10個の検体において、各々圧延方向と直交するコイル幅方向の両端〜60mmおよび中央部の3箇所から合計30個の試料を抽出する。これらの試料において抽出される、2個以上の微小欠陥が500μm以内の間隔で圧延方向に連なった形態の、圧延直交方向に0.05mm以上かつ圧延方向に0.5mm以上の集合欠陥の平均密度が50個/100cm2以下、最大密度が100個/100cm2以下であること。
(2)化学組成においてAl純度が99.95質量%以上であり、Si:5〜50質量ppm、Fe:5〜40質量ppm、Cu:10〜80質量ppmおよびPb:0.3〜1.0質量ppmを含み、残部が不純物からなるアルミニウム箔で構成され、表面において立方体方位結晶粒の占有率を示す(100)方位密度とエッチング後のアルミニウム材コイルから検出されるアルミ酸化物からなる欠陥が、下記の条件を満足することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
〔(100)方位密度〕
70〜150μmの範囲の任意の厚さで、幅500mm、長さ2000mのアルミニウム箔コイルの全長から無作為に抽出される長さ200mmの10個の検体において、各々圧延方向と直交するコイル幅方向の両端〜60mmおよび中央部の3箇所から抽出した30箇所を測定点とする。これらの測定点に対し、35%HCl:60%HNO3:48%HFを容積比75:25:1で混合した30℃の処理液中に30秒浸漬した後、水洗、乾燥して、(100)方位の結晶粒と他方位の結晶粒の光沢を変化させ、画像処理により(100)方位の結晶粒の面積率を測定したときの方位密度平均値が98%以上で、かつ、その標準偏差σが1%以内であること。
〔アルミ酸化物からなる欠陥〕
70〜150μmの範囲の任意の厚さで、幅500mm、長さ2000mのアルミニウム箔コイルの全長から無作為に抽出される長さ200mmの10個の検体において、各々圧延方向と直交するコイル幅方向の両端〜60mmおよび中央部の3箇所から合計30個の試料を抽出する。これらの試料において抽出される、2個以上の微小欠陥が200μm以内の間隔で圧延方向に連なった形態の、圧延直交方向に0.02mm以上かつ圧延方向に0.2mm以上の集合欠陥の平均密度が200個/100cm2以下、最大密度が500個/100cm2以下であること。
(3)アルミニウム箔は、さらに化学組成においてZn:2〜20質量ppm、Ga:2〜20質量ppm、Zr:10〜40質量ppmのうち1種以上を含む前項1または2に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
(4)化学組成においてAl純度が99.95質量%以上であり、Si:5〜50質量ppm、Fe:5〜40質量ppm、Cu:10〜80質量ppmおよびPb:0.3〜1.0質量ppmを含み、残部が不純物からなるアルミニウム箔に対して、両面を片面あたり8mm以上面削し、面削後の600℃以上で1時間以上加熱する均質化熱処理を施し、その後500℃以下まで冷却して熱間圧延を開始し、粗圧延スタンドで圧下率95%以上で圧延し、連続して仕上圧延スタンドにおいて350℃以下で圧下率30%以上で熱延を行い、その後、冷間圧延、中間焼鈍、仕上冷間圧延、洗浄、最終焼鈍を順に施すことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
(5)アルミニウム箔は、さらに化学組成においてZn:2〜20質量ppm、Ga:2〜20質量ppm、Zr:10〜40質量ppmのうち1種以上を含む前項4に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
(6)前記アルミニウム箔を均質化熱処理後480℃以下まで冷却する前項4または5に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
(7)前記粗圧延スタンドにおいては、熱間圧延の開始温度以下350℃以上の温度範囲で、40%以上の任意の圧下率から95%以上までの圧下率の間に、ブラシロールをワークロール上に接触回転させ、連続する仕上圧延スタンドでの熱間圧延においてもブラシロールをワークロール上に接触回転させる前項4ないし6のいずれかに記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
(8)熱間圧延の粗圧延の複数パスの内、ブラシロールを適用する前の各パスの圧下率を2〜30%と規定し、このとき各パスの平均変形速度εmが1)式の条件に該当するとともに、ブラシロールを適用するパスにおいては、各パスの圧下率を20〜55%と規定し、このとき平均変形速度εmが2)式の条件に該当するものである前項7に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
3.5≦εm≦5.0・・・1)
2.5≦εm≦4.0・・・2)
(9)前項1〜4のいずれか1項に記載されたアルミニウム箔に、エッチングを実施する工程を含むことを特徴とする電解コンデンサ用電極材の製造方法。
(10)エッチングの少なくとも一部が直流電解エッチングである前項9に記載の電解コンデンサ用電極材の製造方法。
(11)前項9または10に記載された製造方法によって製造されたアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
(12)陽極材として用いられる前項11に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
(13)電極材として前項9または10に記載の製造方法によって製造された電解コンデンサ用電極材が用いられていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
前項(1)または(2)に記載の発明によれば、局部的に圧延方向に展伸した未エッチングの原因と想定される熱間圧延のワークロールからのロールコーティングに起因する箔表面のアルミニウム酸化物からなる欠陥が極力抑制されているため、高純度アルミニウム箔コイル内での高レベルの(100)方位密度とエッチングピットの分散密度の均一化をはかることができ、かつ、一部の直流電解エッチング条件によって生じる場合のある局部的、かつ圧延方向に展伸した未エッチング部の発生を解消することができる。この結果、微弱な電気量によるエッチング条件、高い定格電圧においても均一で大きな静電容量を得ることができる。
前項(3)に記載の発明によれば、アルミニウム箔には、さらに化学組成においてZn:2〜20質量ppm、Ga:2〜20質量ppm、Zr:10〜40質量ppmのうち1種以上が含まれているから、より大きな静電容量を得ることができる。
前項(4)に記載の発明によれば、局部的に圧延方向に展伸した未エッチングの原因と想定される熱間圧延のワークロールからのロールコーティングに起因する箔表面のアルミニウム酸化物からなる欠陥が極力抑制され、高純度アルミニウム箔コイル内での高レベルの(100)方位密度とエッチングピットの分散密度の均一化が図られた電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を製造することができる。
前項(5)に記載の発明によれば、さらに大きな静電容量を有する電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を製造することができる。
前項(6)〜(8)に記載の発明によれば、アルミニウム酸化物からなる欠陥をより安定的に抑制することができる。
前項(9)の発明に係る電解コンデンサ用電極材の製造方法によれば、前項1〜4のいずれか1項に記載されたアルミニウム材に、エッチングを実施する工程を含むことにより、大きな静電容量を有する電解コンデンサ用電極材を製造することができる。
前項(10)の発明に係る電解コンデンサ用電極材の製造方法によれば、エッチングの少なくとも一部が直流電解エッチングであるから、さらに大きな静電容量を有する電解コンデンサ用電極材を製造することができる。
前項(11)の発明に係るアルミニウム電解コンデンサ電極用電極材は、前項9または10に記載の製造方法によって製造されたものであるから、大きな静電容量を有するものとなしうる。
前項(12)の発明に係るアルミニウム電解コンデンサ電極用電極材は、大きな静電容量を有する陽極材として用いることができる。
前項(13)の発明に係るアルミニウム電解コンデンサは、電極材として前項9または10に記載の製造方法によって製造された電解コンデンサ用電極材が用いられていることから、大きな静電容量を有するものととなし得る。
本発明者らは前述した様な課題の解決を期して鋭意研究を重ねた結果、該当するアルミニウム材には、下記に開示する条件を規定することとした。
まず、Al純度は99.95質量%以上とする。これ以下の純度においては、エッチングにおける表面溶解が不均一となる。
次に、各元素の含有意義と組成範囲の限定理由について説明する。
Siの含有量は5〜50質量ppmとする。Siは最終焼鈍における結晶粒の粗大化を抑える効果があるが、50質量ppmを超えるとエッチング時の表面溶解が不均一となる。一方、5質量ppmを下回るには精製コストが増大し、経済的なメリットがなくなる。Siの特に好ましい含有量は、8〜40質量ppmである。
Feの含有量は5〜40質量ppmとする。FeはAl−Fe系の析出物を形成し、エッチングピットの分散を不均一とするため、極力低減することが有効であり、40質量ppm以下とする。40質量ppmを超えるとエッチング時の表面溶解が不均一となる。一方、5質量ppmを下回るには精製コストが増大し、経済的なメリットがなくなる。Feの特に好ましい含有量は、8〜35質量ppmである。
Cuの含有量は10〜80質量ppmとする。Cuはエッチング性の向上に寄与するが、80質量ppmを超えるとエッチング時の表面に未エッチング欠陥が発生しやすくなる。一方、10質量ppmを下回ると、エッチング時の表面溶解が不均一となる上に、精製コストが増大し、経済的なメリットがなくなる。Cuの特に好ましい含有量は、12〜60質量ppmである。
Pbの含有量は0.3〜1.0質量ppmとする。Pbはエッチング初期のエッチングピットの発生の均一化に寄与するが、1.0質量ppmを超えるとエッチング時の表面溶解が不均一となる。一方、0.3質量ppmを下回るとエッチング時の表面に未エッチング欠陥が発生しやすくなる。Pbの特に好ましい含有量は、0.4〜1.0質量ppmである。
上記の各元素に加えて、エッチング時のトンネルピットの均一分散を得るために、任意元素としてZn、Ga、Zrの1種以上を含有しても良い。
Znの含有量は2〜20質量ppmとする。20質量ppmを超えると、エッチング時の表面溶解が不均一となり、却ってトンネルピットの均一分散を得ることができなくなる。一方、下限を下回るには精製コストが増大し、経済的なメリットがなくなる恐れがある。
Gaの含有量は2〜20質量ppmとする。20質量ppmを超えると、エッチング時の表面溶解が不均一となり、却ってトンネルピットの均一分散を得ることができなくなる。一方、下限を下回るには精製コストが増大し、経済的なメリットがなくなる恐れがある。
Zrの含有量は10〜40質量ppmmとする。40質量ppmを超えると、エッチング時の表面溶解が不均一となり、却ってトンネルピットの均一分散を得ることができなくなる。10質量ppmmを下回るとエッチング時のトンネルピットの分散の均一性は相対的に低下する。
次に、(100)方位密度について説明する。
(100)方位密度の測定試料は、70〜150μmの範囲の任意の厚さとする。本発明に係るアルミニウム箔は、望ましくは中高圧電解コンデンサの電極箔に用いられるのが良く、その対象となる箔厚は70〜150μmの範囲に限定される。70μmを下回るとコンデンサとしての静電容量が十分得られず、一方、150μmを超えると(100)方位が十分得られないなどの弊害が生じるため、本発明の特性を限定する箔厚の範囲を70〜150μmと限定する。
本発明で得られる電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の幅(圧延方向と直交する方向の長さ)は、コイルのスリット工程を経て、500mm幅に精整される。そこで、特性を評価するアルミニウム箔コイルの幅は、既存工程に準拠して500mmとした。
実際の量産におけるコイルの長さは任意に指定される。そこで、この実施形態に係るコイルにおいて、発明の特性を評価するアルミニウム箔コイルの長さの範囲を2000mとした。これよりも短い長さの場合、統計的に標準偏差の変動が大きくなる。また、これを上回る長さとしても、評価工数が煩雑となる。このため、測定範囲の長さは2000mとする。
長さ2000mの範囲から無作為に抽出する長さを200mmとした。この長さは、(100)方位密度の測定に供する試験片の長さに準拠して規定したものである。また、抽出する検体の個数は10個とした。10個未満であれば、標準偏差の変動が大きくなり、10個を超えても、変動幅が減少する一方で測定に要する時間が増大し、経済的でない。このため、抽出する検体は10個とした。
また、各検体からの試料は各々の圧延に対角(圧延方向と直交する方向)の幅方向の両端、および中央部の3箇所から抽出し、合計30個の試料とする。抽出位置を限定する理由は、コイルから抽出する検体において、両端、および中央部において、方位密度の差が大きいためである。
このとき、各々抽出した試料は幅60mm、長さは前述のように200mmとする。この規定理由は後述する方位密度の測定試料の既存寸法に準拠したものである。
前述の理由により抽出した試料に対し、結晶方位の判定方法を以下に規定した。
即ち、液組成は、35%HCl:60%HNO3:48%HFを容積比75:25:1で混合したものとする。この配合比率は、汎用的に用いられているものであり、本実施形態で比率を限定する論拠はない。また、処理液の保持温度は30℃とし、処理液への浸漬時間を30秒と規定したが、この条件も汎用的に用いられているものであり、本実施形態で条件を限定する論拠はない。
この処理の後、水洗、乾燥して、(100)方位の結晶粒と、他方位の結晶粒の光沢を変化させて、画像処理により得られる(100)方位の結晶粒の面積率を方位密度とする。この方位密度の平均値の下限を98%とする。平均値が98%を下回ると、静電容量は、相対的に低下する。望ましくは、方位密度平均値は99%以上がよい。また、標準偏差σを1%以内とする。1%を超えると局部的に静電容量が相対的に低下する。望ましくは、標準偏差σを0.6%以内とするのが良い。
次に、アルミニウム酸化物からなる欠陥について説明する。
コイル表面から検出される欠陥において、圧延直交方向に0.2mm以上、圧延方向に断続的に0.8mm以上連なる欠陥は、直流電解エッチング後に顕著な線状の光沢を示す未エッチング欠陥となることが判明した。このため、静電容量の変動の抑制、品質の安定化のために該欠陥の発生頻度に上限を規定する。
その条件として、70〜150μmの範囲の任意の厚さで、幅500mm、長さ2000mのアルミニウム箔コイルの全長から無作為に抽出される長さ200mmの10個の検体において、各々の圧延に対角(圧延方向と直交する方向)の幅方向の両端〜60mmおよび中央部の幅60mmの部位の3箇所から抽出した合計30個の試料を母数とする。アルミニウム箔コイルからの試料の抽出に際しての限定理由は、方位密度の限定において記述した論拠と同じである。
この測定点において抽出される集合欠陥の大きさと密度(個数)を規定した。ここで、集合欠陥とは、図1に示すように、2個以上の微小欠陥1が500μm以内または200μ以内の間隔Tで圧延方向Xに連なった形態の欠陥2をいう。なお、図1では微小欠陥1が2個連なった形態の集合欠陥2を示しているが、500μm以内または200μ以内の間隔Tで3個以上が連なった形態の欠陥2も含まれる。
このような集合欠陥2の数は、微小欠陥1が500μm以内の間隔Tで圧延方向Xに連なった形態の集合欠陥2については、圧延直交方向に0.05mm以上の幅Wでかつ圧延方向Xに0.5mm以上の長さLの集合欠陥2の平均密度が50個/100cm2以下、最大密度が100個/100cm2以下とした。
酸化物からなる微小欠陥1が500μm以内の間隔Tで圧延方向Xに連なった形態の集合欠陥の幅Wが0.05mmを、長さLが0.5mmを下回ると、直流電解エッチング処理の前後で比較した結果、直流電解エッチング処理した後の表面の光沢斑として顕在化しない。また、該当する大きさの酸化物からなる集合欠陥2の分布の密度が、平均値で50個/100cm2以下で最大値で100個/100cm2以下であれば、相対的な静電容量の低下は見られない。望ましい平均密度は40個/100cm2以下、望ましい最大密度は80個/100cm2以下である。
また、微小欠陥1が500μmを超える間隔Tの場合にも、表面の光沢斑として顕在化しない。
ただし、1次エッチングの電気量が微弱な条件では、前述の欠陥より微小な欠陥においても直流電解エッチング処理した後の表面の光沢斑が顕在化する欠陥となる。
そこで、2個以上の微小欠陥1が200μm以内の間隔Tで圧延方向Xに連なった形態の集合欠陥2については、圧延直交方向に0.02mm以上の幅Wでかつ圧延方向Xに0.2mm以上の長さLの集合欠陥2の平均密度が200個/100cm2以下、最大密度が500個/100cm2以下であることとした。
酸化物からなる微小欠陥1が200μm以内の間隔Tで圧延方向Xに連なった形態の集合欠陥2の幅Wが0.02mmを、長さLが0.2mmを下回ると、直流電解エッチング処理した後の表面の光沢斑として顕在化しない。また、該当する大きさの酸化物からなる集合欠陥2の分布密度が、平均値で200個/100cm2以下、最大値で500個/100cm2以下であれば、相対的な静電容量低下は見られない。望ましい平均密度は150個/100cm2以下、望ましい最大密度は400個/100cm2以下である。
次に、本実施形態に係る電解コンデンサ用アルミニウム箔について、前述したような特性を顕現させるための製造方法の限定理由について詳述する。
まず、スラブの面削について、片面あたりの面削量を8mm以上とする。8mm以上に面削すると、ブローホールを十分に除去するため、アルミニウム箔コイルの表面の欠陥が少なくなり、特に望ましくは12〜16mmの面削量が推奨される。
面削後の均質化熱処理条件は、600℃以上で1時間以上加熱することとする。鋳造時の粗大晶出物がエッチング時に不均一なピット形成、表面の異常溶解をもたらすことを抑止するためで、晶出物を直径約1μm以下に分断する。このためには、面削後、均質化熱処理を600℃以上の温度で1時間以上加熱する。温度が600℃未満、保持が1時間未満のいずれか一方でも条件が合致すると粗大晶出物が直流エッチングにおいてピット形成、表面の溶解が不均一となる。
その後、熱間圧延開始温度を500℃以下とし、該温度まで炉内で冷却する。
熱間圧延開始温度が500℃を超えると、スラブ表面が軟質になりロールコーティングが顕著に形成される。このため、開始温度を500℃以下とした。望ましくは480℃以下とするのがよい。
また、粗圧延スタンドにおいて圧下率95%以上で圧延することとする。粗圧延スタンドでの圧下率が95%未満であれば、熱間圧延板厚が増大し、仕上圧延スタンドおよび冷延工程での圧下率負荷が高まり、経済的な負担が大きくなる。このため圧下率95%以上で圧延することとする。望ましくは97%以上の圧下率が、効率的である。
粗圧延に連続して仕上圧延スタンドにおいて350℃以下にて圧下率30%以上で熱間圧延を行う。このとき、仕上スタンドでの圧延温度が350℃を超えるとAl−Feの金属間化合物の析出が生じ、エッチング時のピットの分布や、方位の制御に弊害を生じる。このため、仕上熱延温度は350℃以下とした。また、圧下率が30%を下回ると、次工程の冷間圧延での経済的な負荷が増大する。このため、圧下率は30%以上とする。
前記粗圧延スタンドにおいては、熱間圧延の開始温度以下350℃以上の温度範囲で、40%以上の任意の圧下率から95%以上までの圧下率の間に、ブラシロールをワークロール上に接触回転させ、連続する仕上圧延スタンドでの熱間圧延においてもブラシロールをワークロール上に接触回転させるのが良い。この理由は、粗圧延−仕上圧延間で表面に生成される薄いロールコーティングでも、仕上ロールに付着・蓄積し、仕上圧延時に板表面に再付着し、欠陥となる場合があるためである。
熱間圧延の粗圧延において、複数パスの内、ブラシロールを適用する前の各パスの圧下率を0.02〜0.30(2〜30%)と規定するのが良い。各パスの圧下率が0.02を下回るとパス回数が増大し、温度条件が本発明範囲に適合できない恐れがある。また、圧下率が0.30を超えると、熱延板の組織に変化が生じ、箔圧延焼鈍後の箔の方位密度が変動する恐れがある。各パスの圧下率は、望ましくは、0.03〜0.25(3〜25%)とするのがよい。
ブラシロールを適用する前の各パスの平均変形速度εmは、下記1)式の条件に該当するのが望ましい。
3.5≦εm≦5.0・・・1)
ブラシロールを適用する前の各パスの平均変形速度εmが3.5を下回ると、圧延中のアルミ酸化物の付着が増大し、箔表面の欠陥が増大し、エッチング時の表面光沢欠陥が顕在化する恐れがある。一方5.0を超えると、結晶方位の変動が顕在化し局部的な静電容量の低下が生じる恐れがある。望ましくは3.8≦εm≦4.8とするのがよい。
また、ブラシロールを適用する際の各パスの平均変形速度εmは、下記2)式の条件に該当することが望ましい。
2.5≦εm≦4.0・・・2)
ブラシロールを適用する際の各パスの平均変形速度εmが2.5を下回ると、圧延中の温度低下が生じ、結晶方位の変動が顕在化し局部的な静電容量の低下が生じる恐れがある。一方4.0を超えると、圧延中にロールへの付着するアルミ酸化物が十分除去されず、箔表面の欠陥が増大し、エッチング時の表面光沢欠陥が顕在化するおそれがある。望ましくは2.8≦εm≦3.8とするのがよい。
熱間圧延後に施される冷間圧延、中間焼鈍、仕上冷間圧延、洗浄、最終焼鈍については、アルミニウム電解箔の汎用的な製造工程を適用し、特に製法条件は規定しない。
本発明に係る電解コンデンサ電極用アルミニウム材は、拡面率向上のためのエッチングが施されて、電解コンデンサ用電極材として使用される。エッチング処理条件は特に限定されないが、エッチングの少なくとも一部が直流電解エッチングであることが好ましい。
本発明によって製造されたアルミニウム材は、陰極材としても陽極材としても用いることができるが、特にエッチング後の化成処理によって耐電圧性皮膜を形成させても大きい実効面積を有する点で陽極材に適している。さらに、陽極材のうちでも、中圧用及び高圧用電解コンデンサ電極材に適している。
また、この電極材を用いた電解コンデンサは大きな静電容量を実現できる。電解コンデンサの種類や製造方法は特に限定されることはないが、例えば、それぞれリードタブが電気的に接続された陽極材と陰極材とをセパレータを介して巻回または積層したコンデンサ素子に、駆動用電解液を含浸して、アルミニウム電解コンデンサとする製造方法を挙げることができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
〔試験1〕
表1に示す素材No1の化学組成の重量2トンアルミニウムスラブを用意した。常法に従ってこのスラブを両面面削し、面削後均質化熱処理を施し、本実施形態で開示した条件の熱間圧延と冷間圧延、中間焼鈍を行い、仕上冷間圧延で厚さ80μm、115μm、140μm、幅1000mmの箔とした。この箔を常法に従って溶剤で洗浄した後、一部はスリット工程を経て、80μm、115μm、140μmの各厚さ、500mm幅、2000m長さのコイルとした。さらに、常法による最終焼鈍の後、特性を評価した。
上記により得られた各厚さの箔に対して、コイル全長から無作為に抽出される長さ200mmの10個の検体において、各々の圧延に直交する幅方向の両端〜60mmおよび中央部の3箇所から抽出した合計30個の試料を試験に供した。その結果を表1に示す。
なお、表1において、アルミニウム酸化物の密度は、2個以上のアルミニウム酸化物からなる、微小欠陥1が500μm以内の間隔Tで圧延方向Xに連なった形態の、圧延直交方向に0.05mm以上の幅Wでかつ圧延方向Xに0.5mm以上の長さLの集合欠陥2の密度である。
また、表2には、表1の実施例のうち、試料No.1−2の30箇所の測定点の立方体方位密度と、酸化物の密度を代表例として示す。
ここで、測定点Aは、幅1000mmの圧延箔の幅端部から60mmの部位、測定点Bは、幅500mmのスリット箔の中央部、測定点Cは、幅1000mmの圧延箔の幅中央部で、幅500mmの端部に該当するものである。表1に示す各試料Noの測定点の数値は、表2に示す手法で30箇所を測定した平均値、標準偏差、最大値、最小値を示す。
箔表面の酸化物による欠陥は、観察は株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−100F型を用いて箔表面を200倍に拡大して行った。また、該当する表面欠陥の酸化物としての組成は、島津製作所製EPMA−1610型分析電子顕微鏡で分析し、表面欠陥が酸化物からなるものであることを確認した。
立法体方位の結晶粒の面積率の評価・測定方法としては、液組成(35%HCl:60%HNO3:48%HFを容積比75:25:1で混合)の処理液を用いた。この処理液を30℃に保持し、アルミニウム箔を30秒浸漬した後、水洗、乾燥して、(100)方位の結晶粒と、他方位の結晶粒の光沢を変化させて、画像処理により(100)方位の結晶粒の面積率を測定した。
静電容量の評価・測定方法としては、該アルミニウム箔を、2mol/lのリン酸水溶液を50℃に保持し、30秒浸漬して前処理とした。
次いで一次エッチングとして、液組成HCl:1mol/l+H2SO4:3mol/lを含む液温75℃の混合水溶液に電流密度:直流0.2A/cm2で100秒間浸漬した。
引き続き二次エッチングとして、液組成HCl:1.5mol/l+(COOH)2:1/200mol/lを含む液温90℃の混合水溶液に10分間浸漬した。
これらエッチング処理後、洗浄、乾燥を行い、化成電圧500Vで、EIAJ規格に準拠して100g/lのホウ酸にて、88〜95℃で0.05A/cm2の直流電流で化成処理し、30℃中で40000μF以上の白金板を対極として120Hzで静電容量を測定した。
表面光沢の判定については、該当アルミニウム箔を75℃の2mol/lのリン酸水溶液に60秒浸漬する前処理を行い、エッチング液組成を、HCl:0.7mol/l+H2SO4:7.3mol/lを含む液温75℃の混合水溶液に浸漬した後、電流密度:直流0.2A/cm2で、時間100秒で実施した。この処理の後、水洗、乾燥させたサンプルを、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−100F型を用いて50倍に拡大観察し、10視野観察し、相対比較で判定した。
表1において、試料No.1−1、1−5は、100cm2単位面積のアルミニウム酸化物密度(集合欠陥の密度)が、平均値で50個を超え、かつ最大値で100個を超えるため、静電容量比の最小値、エッチング後の表面光沢が相対的に劣る。また、試料No.1−4、1−9は、(100)立方体方位密度の標準偏差が大きく、静電容量の最小値が相対的に低い。
Figure 2008144255
Figure 2008144255
〔試験2〕
表3に示す素材No2の化学組成の重量1.2トンのアルミニウムスラブを用意した。常法に従ってこのスラブを両面面削し、面削後均質化熱処理を施し、本実施形態で開示した条件の熱間圧延と冷間圧延、中間焼鈍を行い、仕上冷間圧延で厚さ95μm、110μm、幅1000mmの箔とした。この箔を常法に従って溶剤で洗浄した後、一部はスリット工程において95μm、110μm厚さ、500mm幅、2000m長さのコイルとした。さらに、常法による最終焼鈍の後、特性を評価した。
この試験2において、サンプルの抽出条件は試験1と同条件とした。表4には、表3の実施例のうち、試料No.2−6の30箇所の測定点の立方体方位密度と、酸化物密度の平均値及び最大値を代表例として示す。また、表の測定点A、B、Cは、試験1と同じ位置情報を示す。
箔表面の酸化物による欠陥は、試験1と同様に株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−100F型を用いて同じ条件で観察判定した。判定の条件は、試験1に述べた島津製作所製EPMA−1610型分析電子顕微鏡で分析した結果に準拠した。
立法体方位の結晶粒の面積率の評価・測定方法は、試験1と同じ条件とした。静電容量の評価・測定も、試験1と同じ方法を用いた。
表面光沢の判定は、試験1と同様に該当アルミニウム箔を75℃の2mol/lのリン酸水溶液に60秒浸漬する前処理を行い、エッチング液組成を、HCl:0.7mol/l+H2SO4:7.3mol/lを含む液温75℃の混合水溶液に浸漬した後、電流密度:直流0.2A/cm2で、時間30秒で実施した。この処理の後、水洗、乾燥させたサンプルを、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−100F型を用いて50倍に拡大観察し、10視野観察し、表面の白色光沢形態を相対比較で判定した。その結果を表3に示す。
表3では、箔表面のアルミニウム酸化物からなる、2個以上の微小欠陥1が200μm以内の間隔Tで圧延方向Xに連なった形態の、圧延直交方向に0.02mm以上の幅Wでかつ圧延方向Xに0.2mm以上の長さLの集合欠陥2の密度を、判定し比較した。
試料No.2−1、2−5は、100cm2単位面積のアルミニウム酸化物密度が、平均値で200個を超え、かつ最大値で500個を超えるため、静電容量比の最小値、エッチング後の表面光沢が相対的に劣る。試料No.2−4、2−8は、(100)立方体方位密度の標準偏差が大きく、静電容量の最小値が相対的に低い。
Figure 2008144255
Figure 2008144255
〔試験3〕
表5に示す素材No.3〜11の化学組成の重量1.2トンアルミニウムスラブを用意した。常法に従ってこのスラブを両面面削し、面削後均質化熱処理を施し、本実施形態で開示した条件の熱間圧延と冷間圧延、中間焼鈍を行い、仕上冷間圧延で厚さ115μm、幅1000mmの箔とした。この箔を常法に従って溶剤で洗浄した後、一部はスリット工程において115μm厚さ、500mm幅、2000m長さのコイルとした。さらに、常法による最終焼鈍の後、(100)立方体方位密度、静電容量、箔表面のアルミニウム酸化物からなる、2個以上の微小欠陥1が500μm以内の間隔Tで圧延方向Xに連なった形態の、圧延直交方向に0.05mm以上の幅Wでかつ圧延方向Xに0.5mm以上の長さLの集合欠陥2について、試験1に準拠して判定した。その結果を表5に示す。
このうちで試料No.3−2はPb含有量が本発明範囲を下回り、静電容量比が相対的に低い上、表面の光沢欠陥が相対的に劣る。実施No.3−5はSi、Fe、Cuが本発明範囲を超えており、静電容量が相対的に低い。一方、No.3−1は、本発明範囲よりも純度は高いが、単に純度を高めても容量の増大効果が飽和するため、相対的に2%を超えて高い静電容量は得られていない。
Figure 2008144255
〔試験4〕
表6に示す素材No.12〜20の化学組成の重量1.2トンのアルミニウムスラブを用意した。常法に従ってこのスラブを両面面削し、面削後均質化熱処理を施し、本実施形態で開示した条件の熱間圧延と冷間圧延、中間焼鈍を行い、仕上冷間圧延で厚さ115μm、幅1000mmの箔とした。この箔を常法に従って溶剤で洗浄した後、一部はスリット工程において115μm厚さ、500mm幅、2000m長さのコイルとした。さらに、常法による最終焼鈍の後、(100)立方体方位密度、静電容量、箔表面のアルミ酸化物からなる、2個以上の微小欠陥1が200μm以内の間隔Tで圧延方向に連なった形態の、圧延直交方向に0.02mm以上の幅Wでかつ圧延方向Xに0.2mm以上の長さLの集合欠陥2について、試験2に準拠して判定した。その結果を表6に示す。
このうちで実施No.4−2はPb含有量が本発明範囲を下回り、静電容量比が相対的に低い上、表面の光沢欠陥が相対的に劣る。実施No.4−5はSi、Fe、Cuが本発明範囲を超えており、静電容量が相対的に低い。一方、No.4−1は、本発明範囲よりも純度は高いが、単に純度を高めても容量の増大効果が飽和するため、相対的に3%を超えて高い静電容量は得られていない。なお、試験4のサンプルの抽出条件は、試験2と同じである。
Figure 2008144255
〔試験5〕
表7に示す素材No.1の化学組成の重量1.2トンのアルミニウムスラブを用意した。これらのアルミニウムスラブを、表7に記載の製造条件に従って面削し、面削後均質化熱処理を施し、熱間圧延を行い、引続き常法に従って冷間圧延、中間焼鈍を行い、仕上冷間圧延で厚さ115μm、幅1000mmの箔とした。この箔を常法に従って溶剤で洗浄した後、スリット工程において115μm厚さ、500mm幅、2000m長さのコイルとし、最終焼鈍の後、(100)立方体方位密度、静電容量、箔表面のアルミ酸化物からなる、2個以上の微小欠陥1が500μm以内の間隔Tで圧延方向Xに連なった形態の、圧延直交方向に0.05mm以上の幅Wでかつ圧延方向Xに0.5mm以上の長さLの集合欠陥2について、試験1に準拠して判定した。その結果を表7に示す。
実施No.5−1は面削量が小さく、粗熱延の開始温度が高い上、ブラシロール適用開始圧下率が小さい。また、仕上熱延の開始温度が高い。このため、箔表面のアルミ酸化物の密度が大きく、静電容量の最小値が小さく、表面光沢の欠陥も判定基準を満たさない。
実施No.5−2は粗熱延の全圧下率が小さいため、(100)立方体方位密度が小さく、静電容量が相対的に低い。
実施No.5−6、5−10は、ブラシロール適用開始温度が低く、箔表面の酸化物の欠陥が本発明範囲を超え、表面光沢の欠陥も判定基準を満たさない。
実施No.5−7は、仕上熱延でのブラシロール適用を省略したため、箔表面の酸化物の欠陥が発明範囲を超え、表面光沢の欠陥も判定基準を満たさない。
実施No.5−9は、スラブの均熱温度が低いため、(100)立方体方位密度、表面光沢の欠陥の状態は判定基準を満たすが静電容量が低い。
Figure 2008144255
〔試験6〕
表8に示す素材No.1の化学組成の重量1.2トンのアルミニウムスラブを用意した。これらのアルミニウムスラブを、表7に記載の本発明で開示した製造条件に従って面削し、面削後均質化熱処理を施し、熱間圧延を行い、引続き常法に従って冷間圧延、中間焼鈍を行い、仕上冷間圧延で厚さ115μm、幅1000mmの箔とした。この箔を常法に従って溶剤で洗浄した後、スリット工程において115μm厚さ、500mm幅、2000m長さのコイルとし、最終焼鈍の後、(100)立方体方位密度、静電容量、箔表面のアルミ酸化物からなる、2個以上の微小欠陥1が500μm以内の間隔Tで圧延方向Xに連なった形態の、圧延直交方向に0.05mm以上の幅Wでかつ圧延方向Xに0.5mm以上の長さLの集合欠陥について、試験1に準拠して判定した。その結果を表8に示す。
試料No.6−1は粗熱延ブラシロール適用前の各パス中の最小圧下率と、最大圧下率が本発明の請求範囲を外れる。このため、(100)立方体方位密度の標準偏差が大きく、相対的に静電容量の最小値が低く、さらに、表面光沢の欠陥も判定基準を満たさない。
試料No.6−5は、粗熱延ブラシロール適用前の平均変形速度が3.5より小さいため、箔表面のアルミ酸化物の密度が大きく、表面光沢の欠陥が判定基準を満たさない。
実施No.6−6は、粗熱延ブラシロール適用前の平均変形速度が5.0より大きいため、(100)立方体方位密度の標準偏差が大きく、相対的に静電容量の最小値が低い。
実施No.6−7は、粗熱延ブラシロール適用時の各パス圧下率が20%より小さく、平均変形速度も2.5より小さいため、箔表面のアルミ酸化物の密度が大きく、表面光沢の欠陥が判定基準を満たさない。
実施No. 6−12は、粗熱延ブラシロール適用時の各パス圧下率が55%を超え、平均変形速度も4.0を超えるため、(100)立方体方位密度の標準偏差が大きく、相対的に静電容量の最小値が低い。また箔表面のアルミ酸化物密度が大きく、表面光沢の欠陥が判定基準を満たさない。
Figure 2008144255
アルミニウム箔の表面酸化物からなる欠陥を示す模式図である。
符号の説明
1 微小欠陥
2 集合欠陥

Claims (13)

  1. 化学組成においてAl純度が99.95質量%以上であり、Si:5〜50質量ppm、Fe:5〜40質量ppm、Cu:10〜80質量ppmおよびPb:0.3〜1.0質量ppmを含み、残部が不純物からなるアルミニウム箔で構成され、
    表面において立方体方位結晶粒の占有率を示す(100)方位密度とエッチング後のアルミニウム材コイルから検出されるアルミ酸化物からなる欠陥が、下記の条件を満足することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
    〔(100)方位密度〕
    70〜150μmの範囲の任意の厚さで、幅500mm、長さ2000mのアルミニウム箔コイルの全長から無作為に抽出される長さ200mmの10個の検体において、各々圧延方向と直交するコイル幅方向の両端〜60mmおよび中央部の3箇所から抽出した30箇所を測定点とする。これらの測定点に対し、35%HCl:60%HNO3:48%HFを容積比75:25:1で混合した30℃の処理液中に30秒浸漬した後、水洗、乾燥して、(100)方位の結晶粒と他方位の結晶粒の光沢を変化させ、画像処理により(100)方位の結晶粒の面積率を測定したときの方位密度平均値が98%以上で、かつ、その標準偏差σが1%以内であること。
    〔アルミ酸化物からなる欠陥〕
    70〜150μmの範囲の任意の厚さで、幅500mm、長さ2000mのアルミニウム箔コイルの全長から無作為に抽出される長さ200mmの10個の検体において、各々圧延方向と直交するコイル幅方向の両端〜60mmおよび中央部の3箇所から合計30個の試料を抽出する。これらの試料において抽出される、2個以上の微小欠陥が500μm以内の間隔で圧延方向に連なった形態の、圧延直交方向に0.05mm以上かつ圧延方向に0.5mm以上の集合欠陥の平均密度が50個/100cm2以下、最大密度が100個/100cm2以下であること。
  2. 化学組成においてAl純度が99.95質量%以上であり、Si:5〜50質量ppm、Fe:5〜40質量ppm、Cu:10〜80質量ppmおよびPb:0.3〜1.0質量ppmを含み、残部が不純物からなるアルミニウム箔で構成され、
    表面において立方体方位結晶粒の占有率を示す(100)方位密度とエッチング後のアルミニウム材コイルから検出されるアルミ酸化物からなる欠陥が、下記の条件を満足することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
    〔(100)方位密度〕
    70〜150μmの範囲の任意の厚さで、幅500mm、長さ2000mのアルミニウム箔コイルの全長から無作為に抽出される長さ200mmの10個の検体において、各々圧延方向と直交するコイル幅方向の両端〜60mmおよび中央部の3箇所から抽出した30箇所を測定点とする。これらの測定点に対し、35%HCl:60%HNO3:48%HFを容積比75:25:1で混合した30℃の処理液中に30秒浸漬した後、水洗、乾燥して、(100)方位の結晶粒と他方位の結晶粒の光沢を変化させ、画像処理により(100)方位の結晶粒の面積率を測定したときの方位密度平均値が98%以上で、かつ、その標準偏差σが1%以内であること。
    〔アルミ酸化物からなる欠陥〕
    70〜150μmの範囲の任意の厚さで、幅500mm、長さ2000mのアルミニウム箔コイルの全長から無作為に抽出される長さ200mmの10個の検体において、各々圧延方向と直交するコイル幅方向の両端〜60mmおよび中央部の3箇所から合計30個の試料を抽出する。これらの試料において抽出される、2個以上の微小欠陥が200μm以内の間隔で圧延方向に連なった形態の、圧延直交方向に0.02mm以上かつ圧延方向に0.2mm以上の集合欠陥の平均密度が200個/100cm2以下、最大密度が500個/100cm2以下であること。
  3. アルミニウム箔は、さらに化学組成においてZn:2〜20質量ppm、Ga:2〜20質量ppm、Zr:10〜40質量ppmのうち1種以上を含む請求項1または2に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
  4. 化学組成においてAl純度が99.95質量%以上であり、Si:5〜50質量ppm、Fe:5〜40質量ppm、Cu:10〜80質量ppmおよびPb:0.3〜1.0質量ppmを含み、残部が不純物からなるアルミニウム箔に対して、両面を片面あたり8mm以上面削し、面削後の600℃以上で1時間以上加熱する均質化熱処理を施し、その後500℃以下まで冷却して熱間圧延を開始し、粗圧延スタンドで圧下率95%以上で圧延し、連続して仕上圧延スタンドにおいて350℃以下で圧下率30%以上で熱延を行い、その後、冷間圧延、中間焼鈍、仕上冷間圧延、洗浄、最終焼鈍を順に施すことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
  5. アルミニウム箔は、さらに化学組成においてZn:2〜20質量ppm、Ga:2〜20質量ppm、Zr:10〜40質量ppmのうち1種以上を含む請求項4に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
  6. 前記アルミニウム箔を均質化熱処理後480℃以下まで冷却する請求項4または5に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
  7. 前記粗圧延スタンドにおいては、熱間圧延の開始温度以下350℃以上の温度範囲で、40%以上の任意の圧下率から95%以上までの圧下率の間に、ブラシロールをワークロール上に接触回転させ、連続する仕上圧延スタンドでの熱間圧延においてもブラシロールをワークロール上に接触回転させる請求項4ないし6のいずれかに記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
  8. 熱間圧延の粗圧延の複数パスの内、ブラシロールを適用する前の各パスの圧下率を2〜30%と規定し、このとき各パスの平均変形速度εmが1)式の条件に該当するとともに、ブラシロールを適用するパスにおいては、各パスの圧下率を20〜55%と規定し、このとき平均変形速度εmが2)式の条件に該当するものである請求項7に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
    3.5≦εm≦5.0・・・1)
    2.5≦εm≦4.0・・・2)
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載されたアルミニウム箔に、エッチングを実施する工程を含むことを特徴とする電解コンデンサ用電極材の製造方法。
  10. エッチングの少なくとも一部が直流電解エッチングである請求項9に記載の電解コンデンサ用電極材の製造方法。
  11. 請求項9または10に記載された製造方法によって製造されたアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
  12. 陽極材として用いられる請求項11に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
  13. 電極材として請求項9または10に記載の製造方法によって製造された電解コンデンサ用電極材が用いられていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
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