JP2008139833A - 表示パネルの前面カバー体 - Google Patents

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Abstract

【課題】乗り物用移動体、特に鉄道車両の内部に設置された表示パネルの前面カバー体であって、火災時に燃焼したり、溶融・変形したり、破損したりすることがなく、たとえ破損してもその破片が頭上に落下することがなく、また有毒ガスの発生がない上、透明性及び防眩性が良好であり、かつ比較的軽量の前面カバー体を提供する。
【解決手段】乗り物用移動体の内部に設置された表示パネルの前面カバー体であって、中間膜を介して2枚のガラス板が接合されたガラス積層板を備えてなる表示パネルの前面カバー体である。
【選択図】なし

Description

本発明は、文字や画像を表示する表示パネルの前面カバー体に関する。さらに詳しくは、本発明は、鉄道車両などの乗り物用移動体の内部に設置された、液晶表示素子などを用いる各種の表示パネルの前面カバー体であって、中間膜を介して2枚のガラス板が接合されたガラス積層板を備えており、火災時に燃焼したり、変形したり、有毒ガスが発生したりすることがなく、かつ、たとえガラス板が破損しても、中間に介在する樹脂膜の接着性のために、ガラス破片の落下を防止し得る表示パネルの前面カバー体に関するものである。
乗り物用移動体、特に鉄道車両においては、行先などの各種情報を表示するために、車内に液晶表示素子やLED(光半導体)などを用いた表示パネルが設置され、行先駅名やニュースなどの情報がテロップで流されている。
この表示パネルの前面カバー体としては、軽量性、透明性、防眩性などが要求されることから、これまで、表面に防眩処理が施されたアクリル樹脂板やポリカーボネート樹脂板などが使用されてきた。
なお、防眩処理とは、表示画面に外部から光が入射し、この光が反射して(グレアーあるいはギラツキなどといわれる)表示画像が見難くなるのを防止する処理のことである。
前記防眩処理は、例えば、樹脂板の成形時にエンボス加工を施し、表面に凹凸を設けたり、あるいはシリカ粒子などを含むコーティング液を表面に塗布、乾燥して、シリカ粒子を含む凹凸コーティング層を設けることなどにより、行われている。
このように、樹脂板の防眩処理は、比較的容易であるものの、樹脂板は一般に表面硬度が低い。したがって、鉄道車両は不特定多数の人が利用するために、様々なものと接触する可能性があり、それにより傷が付くことが予想される。また、車内は定期的に清掃するが、清掃具などに塵挨、砂粒などの汚れが付いていることは容易に想像され、そのような場合には、表示パネルの前面カバー体にすり傷が付きやすいなどの問題が生じる。
このような問題を解決するために、樹脂板の表面に、例えば活性エネルギー線の照射により硬化した樹脂層からなるハードコート層を設け、耐擦傷性を付与することが考えられるが、充分に満足する硬度とはいえない。
表示パネルの前面カバー体が樹脂板である場合の最大の問題は、例えば鉄道車両内で火災が発生した場合、有毒ガスが発生したり、炎の熱により容易に溶けて変形し、その溶融した樹脂が頭上から落ちて、人体にやけどなどを起こすおそれがあることである。
従来、表示パネルの前面カバー体として、フロート板ガラスや強化ガラスの単板を使用したこともあるが、この場合、前記樹脂板に比べて、表面硬度がはるかに高く、傷が付きにくいものの、火災時にガラス板が破損して、割れたガラス破片が頭上から落下するおそれがあり、現在は使用されていない。
一方、建築物や乗り物の窓には、合わせガラスが多用されている。この合わせガラスは、複数のガラス板を、ポリビニルブチラール系や、エチレン−ビニルアセテート共重合体系などの樹脂を有機材料として用いた中間膜を介して、積層することにより製造される。この合わせガラスは、耐衝撃性や防犯性に優れているため、建築物や、乗り物の窓(例えば、特許文献1参照)に広く使用されている。
しかしながら、このような合わせガラスを、乗り物用移動体の内部に設置された表示パネルの前面カバー体に用いた例は、これまで知られていない。
また、乗り物用移動体、特に鉄道車両の内部に設置された表示パネルの前面カバー体としては、火災時に燃焼したり、溶融・変形したり、破損したりすることがなく、たとえ破損してもその破片が頭上に落下することがなく、また有毒ガスの発生がない上、透明性及び防眩性が良好であり、かつ軽量のものが要求されるが、このような要求特性を充分に満たす前記前面カバー体は、これまで知られていないのが実状であった。
特開2005−298219号公報
本発明は、このような状況下で、乗り物用移動体、特に鉄道車両の内部に設置された表示パネルの前面カバー体であって、火災時に燃焼したり、溶融・変形したり、破損したりすることがなく、たとえ破損してもその破片が頭上に落下することがなく、また有毒ガスの発生がない上、透明性及び防眩性が良好であり、かつ比較的軽量の前面カバー体を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する、乗り物用移動体の内部に設置された表示パネルの前面カバー体を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、中間膜を介して2枚のガラス板が接合されたガラス積層板、好ましくは外側(観察者側)ガラス板表面に防眩処理が施され、2枚のガラス板及び中間膜の厚さが、それぞれ特定の範囲にあるガラス積層板を備えてなる前面カバー体により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]乗り物用移動体の内部に設置された表示パネルの前面カバー体であって、中間膜を介して2枚のガラス板が接合されたガラス積層板を備えてなる表示パネルの前面カバー体、
[2]ガラス積層板における外側(観察者側)ガラス板の表面に、防眩処理が施されてなる上記[1]に記載の表示パネルの前面カバー体、
[3]ガラス積層板における中間膜が、樹脂成分としてポリビニルアセタール系樹脂又はエチレン−ビニルアセテート共重合体系樹脂を含むものである上記[1]又は[2]に記載の表示パネルの前面カバー体、
[4]ガラス積層板における中間膜が着色剤を含む上記[1]〜[3]のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体、
[5]ガラス積層板における内側(表示パネル側)ガラス板の中間膜と接しない側の表面に着色層が形成されてなる上記[1]〜[4]のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体、
[6]ガラス積層板において、2枚のガラス板の厚さが、それぞれ0.7〜1.4mmであり、中間膜の厚さが0.1〜0.9mmである上記[1]〜[5]のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体、
[7]ガラス積層板の可視光線透過率が40〜60%である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体、
[8]ガラス積層板のヘーズ率が2〜8%である上記[1]〜[7]のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体、及び
[9]乗り物用移動体が鉄道車両である上記[1]〜[8]のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体、
を提供するものである。
本発明によれば、鉄道車両などの乗り物用移動体の内部に設置された、液晶表示素子などを用いる各種の表示パネルの前面カバー体であって、中間膜を介して2枚のガラス板が接合されたガラス積層板を備えており、火災時に燃焼したり、変形したり、有毒ガスが発生したりすることがなく、かつ、たとえガラス板が破損しても、中間に介在する樹脂膜の接着性のために、ガラス破片の落下を防止し得る、比較的軽量の表示パネルの前面カバー体を提供することができる。
本発明の表示パネルの前面カバー体(以下、単に「前面カバー体」と称することがある。)は、乗り物用移動体の内部に設置された表示パネルの前面カバー体であって、中間膜を介して2枚のガラス板が接合されたガラス積層板を備えてなることを特徴とする。なお、本発明において、乗り物用移動体の内部とは、鉄道車両など乗り物用移動体を構成する壁体で囲われた内側部分全体を意味し、特に制限されるものではない。具体的には、乗り物用移動体の内壁、天井、床などが挙げられる。
本発明の前面カバー体として用いられるガラス積層板は、2枚のガラス板が中間膜を介して接合された構造を有している。前記2枚のガラス板の材質に特に制限はなく、従来建築物や乗り物用の合わせガラスに慣用されているソーダライムシリカガラスの中から、任意の材質のものを適宜選択して用いることができる。また、このガラス板は、化学強化ガラス、風冷強化ガラス、倍強度ガラス又は強化処理が施されていないフロート板ガラスなど、いずれであってもよい。
この2枚のガラス板の厚さは、得られるガラス積層板の強度及び重さなどの観点から、それぞれ0.7〜1.4mmの範囲であることが好ましく、0.9〜1.3mmの範囲であることが、さらに好ましい。
また、該ガラス板は後述する好ましい可視光線透過率を得るために、着色層を設けるなどの方法により着色されていてもよい。着色層を設ける部分については特に制限はないが、効果的に印刷でき、また中間膜への影響がないとの観点から、後述する防眩処理層を有さないガラス板の中間膜と接しない側、すなわち、本発明の前面カバー体において、ガラス積層板における内側ガラス板の中間膜と接していない側の表面に設けることが好ましい。着色層の厚さについては、高温に曝された際における可燃ガスの発生を抑える点から0.1mm以下であることが好ましく、0.05mm以下であることがさらに好ましい。
着色層を形成する方法としては特に制限はなく、公知の方法で行うことができ、例えばUV印刷等の方法を好適に用いることができる。なお、UV印刷に用いられるインキの種類及び紫外線(UV)の照射条件等については、通常UV印刷に用いられるもの及び条件の範囲で適宜選択される。
また、ガラスを着色することにより可視光線透過率を制御する場合には、後に詳述する中間膜に着色する必要性がないことから、中間膜の選択の幅を広げることができる。一方、中間膜として着色されたものを用いることにより、可視光線透過率を制御する場合には、ガラス板は必ずしも着色されている必要はない。
本発明の前面カバー体においては、ガラス積層板における外側ガラス板の中間膜と接していない側の表面に、防眩処理層を設けることが好ましい。この防眩処理層の形成方法に特に制限はなく、以下に示す化学的エッチング法又はコーティング法を採用することができる。ここで、外側ガラス板とは、観察者側のガラス板、すなわち非表示パネル側のガラス板である。
[化学的エッチング法による防眩処理]
この方法としては、例えばフッ酸を用いたフロスト加工と呼ばれる方法を用いることができる。ガラスはフッ酸に溶解するが、細かなエリアごとにガラスが溶解する程度にムラを設けることによって、ミクロンオーダーの凹凸を形成することができる。
[コーティング法による防眩処理]
このコーティング法としては、不燃性の観点から、例えば無機シリカ系バインダーに、平均粒径が0.5〜5μm程度のシリカ粒子を含有するコーティング液をガラス板の片表面に塗布、乾燥して、防眩機能を有するコーティング層を形成する方法を採用することができる。
前記無機シリカ系バインダーを作製するには、例えばメタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム又は水ガラス(ケイ酸ナトリウム混合物)を用い、水系媒体中で塩酸、硫酸、硝酸などの酸又は塩化マグネシウム、硫酸カルシウムなどの金属化合物を作用させ、加水分解処理する方法を用いることができる。この加水分解処理により、遊離のケイ酸が生成するが、このものは重合しやすく、原料の種類によって異なるが、鎖状、環状、網目状のものの混合物である。水ガラスから得られたポリケイ酸は、通常、鎖状構造のものが主体である。
このようにして作製した無機シリカ系バインダー中に、全固形分質量に基づき5〜20質量%程度になるように前記シリカ粒子を均質分散させてコーティング液を調製したのち、ガラス板の片表面に塗布、乾燥して、厚さ1〜20μm程度の防眩機能を有するコーティング層を形成させる。
本発明の前面カバー体として用いられるガラス積層板における中間膜を形成する材料としては、特に制限はなく、従来、建築物や乗り物などに用いられている合わせガラスの中間膜を形成する材料として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。前記中間膜を形成する材料としては、ポリビニルアセタール系樹脂やエチレン−ビニルアセテート共重合体系樹脂などを挙げることができる。
ポリビニルアセタール系樹脂としては、例えばポリビニルアルコール(以下、「PVA」と記す)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール樹脂、PVAとn−ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。なかでも、優れた透明性、耐候性、強度、接着力、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性等の諸機能のバランスにより優れる中間膜が得られることから、ポリビニルブチラール樹脂が好適である。本発明においては、これらのポリビニルアセタール系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、エチレン−ビニルアセテート共重合体系樹脂としては、エチレンと酢酸ビニルの共重合体(EVA)、EVAに塩化ビニルをグラフト重合させたものなどが挙げられ、EVAにおける酢酸ビニルの含量は通常40質量%以下である。本発明においては、これらのエチレン−ビニルアセテート共重合体系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ガラス積層板における前記中間膜には、必要に応じ、可塑剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などの添加剤を適宜含有させることができる。
可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル系、多塩基性有機酸エステル系などの有機酸エステル系可塑剤や、有機リン酸系、有機亜リン酸系などのリン酸系可塑剤等が挙げられる。
着色剤は、本発明の前面カバー体の透過率を調整し、表示画像のコントラストを向上させるために用いられるものであり、特にグレー色が有利である。
紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤については特に制限はなく、従来プラスチック添加剤として公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
当該ガラス積層板における中間膜の厚さは、当該ガラス積層板の接着強度、厚さ及び重さなどの観点から、0.1〜0.9mmの範囲が好ましく、0.2〜0.6mmがさらに好ましい。0.1mm以上であると、前面カバー体が破損した際にガラスの飛散を効果的に防止することができ、また膜の扱いが容易である。一方、0.9mm以下であると、火災により加熱された場合の可燃性ガスの発生量を抑制することができる。また、可燃ガスの急激な発生を抑制するとの観点から、2枚のガラス板の間隔は小さい方が好ましく、具体的には0.3mm以下が好ましい。
次に、当該ガラス積層板の製造方法の一態様について説明する。
まず、前述したポリビニルアセタール系樹脂などの中間膜を形成する材料及び所望により用いられる各種添加剤を含む樹脂組成物を調製したのち、この樹脂組成物を公知の方法により中間膜用シートに製膜する。
次いで、表面に防眩処理層が設けられたガラス板の該防眩処理層とは反対側の面と、他方のガラス板とを対向させ、その間に、前記の中間膜用シートを介挿し、70〜110℃程度の温度で予備接着(予備圧着)を行ったのち、この予備接着された構成体をオートクレーブの中に入れ、温度120〜150℃程度、圧力1〜1.5MPa程度の条件で加熱加圧して本接着(本圧着)を行うことにより、所望のガラス積層板を得ることができる。
図1(a)は、このようにして得られたガラス積層板の1例の断面図であって、ガラス積層板10は、表面に防眩処理層4が設けられたガラス板1とガラス板2とが、中間膜3を介して接合され、一体化してなる構造を有している。
また、前記他方のガラス板の中間膜と接しない側の表面に着色層を有していてもよく、図1(b)に示すように、ガラス積層板10が表面に防眩処理層4が設けられたガラス板1と、着色層5を有するガラス板2とが、中間膜3を介して接合され、一体化してなる構造を有していてもよい。
本発明の前面カバー体は、このようにして得られたガラス積層板を、従来公知の切断装置を用いて、所定形状に切断し、次いで切断面の研磨処理(面取り)を行ったのち、このガラス積層板を、防眩処理層が外側(観察者側)に位置するように、アルミニウム製などの不燃性の枠体に、シリコーンゴムなどの難燃性パッキンを介してはめ込むことにより、製作することができる。
具体的には、例えば、図2及び図3にそれぞれ斜視図及び縦断面図を示すように、ガラス積層板10を額縁状の不燃性の枠体11と挟持部材12との間に挟み込むようにして本発明の前面カバー体20を製作することができる。図3に示す態様では、ガラス積層板10を枠体11と枠体11に接合された挟持部材12で上下から挟み込んで固定している。挟持部材12は枠体11の上辺部全体及び下辺部全体にわたって設置されていてもよいし、上辺部及び下辺部の一部分に設置されていてもよい。さらに、挟持部材12は枠体11の左右の側辺部の全部又は一部に設置されていてもよい。
なお、ガラス積層板10は、防眩処理層が観察者側に位置するように設置される。ガラス積層板10と枠体11及び挟持部材12の接触部には、シリコーンゴムなどの難燃性パッキン13を介在させる。このようにして、本発明の前面カバー体20を製作することができる。
このようにして得られた本発明の前面カバー体の光学特性については、ヘーズ値が防眩性の指標となり、ヘーズ値は2〜8%が好ましい。ヘーズ値が2%以上であると十分な防眩性が発揮され、8%以下であると画像の鮮明さが維持される。以上の観点から、ヘーズ値は3〜6%がより好ましい。
さらに、可視光線透過率は、表示の視認性及びコントラストの観点から、40〜60%の範囲にあることが好ましい。
なお、可視光線透過率は、JIS R3212 3.11(可視光線透過率試験)に準拠し、ヘーズ値は、JIS K7105 6.4ヘーズに準拠した値を示す。
また、表示画像の色調の変化を防ぐために、ニュートラルな色調が好ましく、具体的には、JIS Z8729に準拠したL***表色系による透過色の表示方法でa*及びb*が共に5以下であることが望ましい。ここで、透過色の表示において、光源は標準の光Cを用いた。
本発明の前面カバー体は、中間膜を介して2枚のガラス板が接合されたガラス積層板を備えており、火災時に燃焼したり、変形したりすることがなく、かつ、たとえガラス板が破損しても、中間に介在する樹脂膜の接着性のために、ガラス破片の落下を防止し得るなどの特性を有し、乗り物用移動体の内部に設置された液晶表示素子などを用いる各種の表示パネルの前面カバー体として用いられる。
本発明の前面カバー体が適用される乗り物用移動体としては、例えば鉄道車両、自動車、船舶、飛行機などを挙げることができるが、これらの中で、特に鉄道車両の表示パネル(例えば、行先駅名、ニュース、注意事項などの情報を表示)の前面カバー体として、本発明のカバー体が好ましく用いられる。
本発明の前面カバー体を表示パネルに装着する方法に特に制限はなく、本発明の前面カバー体における不燃性枠体に、適当な装着用器具を取り付け、従来公知の方法により、表示パネルに装着すればよい。この際、スペーサーを介さず、表示パネルに直接装着してもよいし、適当な厚さのスペーサーを介して装着してもよい。
図4は、本発明の前面カバー体を、表示パネルに装着した場合の1例のイメージ図である。符号20は本発明の前面カバー体、21は表示パネルの全体を示す。図4に示す態様では、本発明の前面カバー体20は蝶つがい22で表示パネル本体に接合される。また、前面カバー体20の下部には、フック式の留め金等(図示せず)を設けることができ、前面カバー体20を表示パネル本体に固定することができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
片表面に防眩処理層を有する厚さ1.1mmのソーダライムシリカガラス板の該防眩処理層とは反対側の面と、他の厚さ1.1mmのソーダライムシリカガラス板とを対向させ、その間にグレー色の厚さ0.38mmのポリビニルブチラールシート[ソルーシア社製、商品名「バンシーバ(Vanceva)」]を介挿し、約2.7kPaの真空度で脱気した袋内にて、約100℃の温度で予備接着(予備圧着)を行った。次いで、この予備接着された構成体をオートクレーブの中に入れ、温度 約140℃、圧力 約1.37MPaの条件で加熱加圧して、本接着(本圧着)を行い、ガラス積層板を作製した。
次に、このガラス積層板を、ダイヤソーにより、所定形状に切断し、次いで切断面をレジンダイヤにより研磨処理(面取り)したのち、このガラス積層板を、防眩処理層が外側(観察者側)に位置するようにアルミニウム製の枠体にシリコーンゴムパッキンを介してはめ込み、図2及び図3に示す前面カバー体を製作した。
この前面カバー体の光学特性は、ヘーズ値が3.9%、及び可視光線透過率が45.9%であり、また、L***表色系による透過色は、L*=73.8、a*=1.9、b*=−3.1であった。
なお、ヘーズ値の測定には、ヘーズコンピューター(スガ試験機(株)製、型式「HZ−1」)を用い、可視光線透過率及び透過色の測定には、分光光度計((株)島津製作所製、型式「UV3101」)を用いた。
次に、このようにして得られた前面カバー体を表示パネルに装着した。
実施例2
実施例1において、ポリビニルブチラールシートに代えて、無色透明で厚さ0.25mmのエチレン−ビニルアセテート製シート[積水化学工業(株)製、商品名「S−LEC SEF」]を用い、また、防眩処理層を有さないソーダライムシリカガラス板の中間膜と接しない側の面に、UV印刷によりグレー色を施したこと以外は、実施例1と同様にして、前面カバー体を製作した。この前面カバー体の光学特性を、実施例1と同様に評価した結果、ヘーズ値が3.9%、及び可視光線透過率が41.5%であり、また、L***表色系による透過色は、L*=64.32、a*=2.70、b*=−2.66であった。
また、該前面カバー体について、鉄道に関する技術上の基準を定める省令第83条の解釈基準に定められる試験方法IIにより評価を行った。該試験方法は、ISO5660−1:2002に準拠したコーンカロリーメータ燃焼発熱性試験により、総発熱量(MJ/m2)、着火時間(秒)及び最大発熱速度(kW/m2)を評価するものである。共試材としては、縦横約100mmの正方形のもの3枚を用いた。放射熱は50kW/m2、試験時間は10分間とした。結果を第1表に示す。なお、着火時間とは、試験片から炎が確認されてから10秒以上炎が存在した場合を着火とみなし、試験開始から最初に着火が確認されるまでの時間をいう。
本発明の前面カバー体は、総発熱量が8MJ/m2以下と小さく、着火時間が60秒以上と長く、かつ、最大発熱速度が300kW/m2以下と小さい。従って、火災時の燃焼性が極めて小さく、優れた性能を有することが確認された。
Figure 2008139833
本発明の表示パネルの前面カバー体は、火災時に燃焼したり、変形したり、有毒ガスが発生したりすることがなく、かつ、たとえガラス板が破損しても、中間に介在する樹脂膜の接着性のために、ガラス破片の落下を防止し得るなどの特性を有し、乗り物用移動体、特に鉄道車両の内部に設置された液晶表示素子などを用いる各種の表示パネルの前面カバー体として用いられる。
本発明で用いるガラス積層板の断面図である。(a)はガラス積層板における外側(観察者側)ガラス板の表面に防眩処理が施された例、(b)はさらに、内側(表示パネル側)ガラス板の表面に着色層が形成された例を示す。 本発明の前面カバー体の1例の斜視図である。 本発明の前面カバー体の1例の縦断面図である。 本発明の前面カバー体を表示パネルに装着した場合の1例のイメージ図である。
符号の説明
1 防眩処理層を有するガラス板
2 ガラス板
3 中間膜
4 防眩処理層
5 着色層
10 ガラス積層板
11 不燃性枠体
12 挟持部材
13 パッキン
20 本発明の前面カバー体
21 表示パネル
22 蝶つがい

Claims (9)

  1. 乗り物用移動体の内部に設置された表示パネルの前面カバー体であって、中間膜を介して2枚のガラス板が接合されたガラス積層板を備えてなる表示パネルの前面カバー体。
  2. ガラス積層板における外側(観察者側)ガラス板の表面に、防眩処理が施されてなる請求項1に記載の表示パネルの前面カバー体。
  3. ガラス積層板における中間膜が、樹脂成分としてポリビニルアセタール系樹脂又はエチレン−ビニルアセテート共重合体系樹脂を含むものである請求項1又は2に記載の表示パネルの前面カバー体。
  4. ガラス積層板における中間膜が着色剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体。
  5. ガラス積層板における内側(表示パネル側)ガラス板の中間膜と接しない側の表面に着色層が形成されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体。
  6. ガラス積層板において、2枚のガラス板の厚さが、それぞれ0.7〜1.4mmであり、中間膜の厚さが0.1〜0.9mmである請求項1〜5のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体。
  7. ガラス積層板の可視光線透過率が40〜60%である請求項1〜6のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体。
  8. ガラス積層板のヘーズ率が2〜8%である請求項1〜7のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体。
  9. 乗り物用移動体が鉄道車両である請求項1〜8のいずれかに記載の表示パネルの前面カバー体。
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