JP2008137611A - 車体バンパービームおよび車体用衝撃緩衝部材 - Google Patents

車体バンパービームおよび車体用衝撃緩衝部材 Download PDF

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Abstract

【課題】比較的狭幅化された外寸形状でも、歩行者などの人間を確実に保護する機能を持つ対人保護用エネルギー吸収部材を提供することである。
【解決手段】衝撃緩衝部材1を前面側に設けた、中空構造の車体バンパービーム10であって、衝撃緩衝部材1は、衝突壁部2と側壁部3、4と接合用フランジ5、6とを有して金属材によって一体に形成されており、衝突壁部2と側壁部3、4とで、バンパービーム10を囲む形の略コの字状断面形状を形成するとともに、接合用フランジ5、6をバンパービーム後面壁12から張り出させたフランジ15、16と接合し、この衝撃緩衝部材1をバンパービーム後面壁12側より支持させることである。
【選択図】図1

Description

本発明は、車体衝突時の荷重エネルギー吸収性能に優れ、特に歩行者との衝突時に、人体に与える衝撃を緩和し、歩行者の損傷を低減する特性に優れた車体バンパービームおよび車体用衝撃緩衝部材に関するものである。
自動車などの車体には、乗員の安全性確保と被衝突物の保護のために、車体衝突時に、衝撃方向に自ら変形して衝撃荷重を低減し、衝撃エネルギーを吸収する、バンパーシステムが設けられる。
このバンパーシステムとして代表的なものは、バンパーステイの前面に取り付けられる鉄鋼製またはアルミニウム合金製バンパービームと、その前面に設けられる発泡樹脂製緩衝材と、更にその前面に設けられ、車輌外面と一体となることの多いバンパーカバー、とで構成されるバンパーシステムである。
近年、車体軽量化のために、これらバンパービームには、鋼材に代わって、アルミニウム合金製の押出中空形材などが使用され始めている。アルミニウム合金製バンパービームは、口形、日形、目形あるいはそれに類似する略矩形の断面形状が幅方向に延在し、車体外形に合わせて適切な曲げを持った中空材からなる。なお、鉄鋼製バンパービームにおいても、中空材が開断面部材となることが多いことを除いては、ほぼ同様である。
これらの車体バンパーシステムには、車体に支持されたバンパービームとその前面に配置された発泡材からなる緩衝材により、車体の前方や後方からの衝突、あるいは前方や後方への車体の衝突などの際に、衝撃荷重を低減し、衝撃エネルギーを吸収する機能が求められる。
これらの衝撃エネルギー吸収機能として、従来から求められてきた、車輌やその他の物体(ガードレール、電信柱など)などの「高剛性の物体」との衝突以外に、近年では、歩行者との衝突の際に、歩行者を保護する特性も新たに求められるようになっている。
例えば、車輌が歩行者に衝突した際の当該歩行者の損傷は、頭部、腰部、脚部が代表例であり、欧州車輌委員会などでは、新型車両評価プログラム(NCAP)を実施している。これによれば、頭部、腰部、脚部それぞれについて歩行者保護特性評価試験法を提案しており、車両の歩行者保護に対する標準的な評価方法になりつつある。これらの評価試験の内、バンパーシステムが関係する部位である脚部の評価試験法は、歩行者の脚部を模擬した脚部インパクターを時速40kmでバンパービームに衝突させる。そして、この衝突の際に、脚部インパクターに設けた各種センサーの出力(加速度、せん断変形量、曲げ角度)が一定値以下になることを求めている。特に、加速度の値は、150G以下となることが要求されている。
しかし、これまでに開示されているバンパーシステムは、あくまで車輌やその他の物体(ガードレール、電信柱など)など、「高剛性の物体」との衝突を前提として考案されたもので、比較的、高剛性で高強度なものとの衝突を前提として設計されたものがほとんどである。このため、これらのバンパーシステムでは、歩行者の脚部モデルとの衝突時には、前記評価値(加速度、せん断変形量、曲げ角度)のうち、特に加速度が規制値を上回る。
これに対して、歩行者保護に対応するべく、強度・剛性を低下させて設計したバンパーシステムは、逆に、高剛性・高強度な衝突物との衝突時の衝撃荷重低減や衝撃エネルギーを吸収する機能が低下するようになる。このため、バンパーシステムには、この相矛盾する機能を両立、兼備することが求められる。
これに対して、バンパービーム(バンパー補強材)の前面に、衝撃吸収装置やエアバックを設けるなどのアイデアとしては従来から種々提案されているものの、実用化は未だされていない。このため、通常は(実際には)、バンパービーム前面側であって、バンパーカバーの裏側に、発泡ウレタン材や発泡スチロール材などの比較的厚いアブソーバ(クッション材、エネルギー吸収部材)を設けることによって対応してきた。しかし、車体設計上、設けるアブソーバの厚みには限界があり、その歩行者保護性能(衝撃エネルギー吸収機能)にも限界があるのが実情である。
一方、従来から、上記アブソーバに加えて、車体衝突に対する衝撃緩衝部材を前面に設けたバンパービームが提案されている。このようなバンパービームでは、車体衝突時には衝撃緩衝部材を断面厚み方向(横断面方向)に変形させて車体衝突の衝撃を緩衝する。これによれば、バンパービーム(バンパー補強材)の本来の高剛性・高強度な衝突物との衝突時の衝撃荷重低減や衝撃エネルギーを吸収する機能を低下させずに、歩行者保護の機能を新たに追加したバンパー補強材を提供できる。
例えば、特許文献1では、バンパービームの外端面から所要量だけ離間して位置すると共に、衝突時に前記物体からの衝撃を受ける当接壁部と、バンパービームに当接する取付壁部から延出して、当接壁部を裏側から支持する支持壁部とを有する中空構造体の衝撃緩衝部材が提案されている。そして、前記支持壁部が、前記取付壁部に連なる所要幅の領域に、湾曲的に延在する湾曲支持壁を、該取付壁部に沿って有し、前記当接壁部へ前記物体を介して衝撃が加わった際に、前記湾曲支持壁がその湾曲方向へ変形しつつ折曲するよう構成している。
特許文献2では、車体に取り付けた少なくとも2つのフレームレールと、これらのフレームレールにそれぞれ連結した少なくとも2つのブラケットと、これらのブラケットに付設したビーム部と、このビーム部に付設したプレート部材と、前記ブラケットに連結したフレームレール延長部とを備えた車両用衝撃低減バンパ装置が提案されている。
特許文献3には、前面からの衝突荷重に対して蛇腹形状の形材を蛇腹形状が平行な方向となるように延在させて、歩行者衝突時に蛇腹状の変形を起こし、荷重変位における最大荷重を低くするとともに、歩行者の保護に必要なエネルギー吸収量を確保しようとする、対人保護用エネルギー吸収部材が提案されている。
特許文献4には、車体前後方向に略平行に設けられた前面フランジと後面フランジおよびこれらのフランジ間をつなぐ略平行に設けられた左右のウエブとから構成されるとともに、前記各ウエブは各々外側方に向かって湾曲しているアルミニウム合金中空形材からなる対人保護用エネルギー吸収部材が提案されている。これによれば、歩行者衝突時に前記各ウエブが変形を起こして、全体が丁度電車のパンタグラフの開閉状態のように、次第に偏平に変形していき、荷重変位における最大荷重を低くするとともに、歩行者の保護に必要なエネルギー吸収量を確保できる。
特開2004-114864号公報 特開2003-285704号公報 特開2003-312397 号公報 特開2004-90910号公報
しかし、特許文献1は、緩衝部材が樹脂製の中空部材であるために、十分な歩行者脚部の保護性能を得るためには、金属製の緩衝材に比して、厚みをかなり厚くする必要があり、軽量化が犠牲になる。また、その製作上でも、樹脂の材質、肉厚が限定され、金属製の緩衝材に比してリサイクル性が劣る問題もある。
そして、一方では、車体設計上や小型車など、バンパービーム(バンパー補強材)の車体前面側とバンパーカバーとの間の距離 (隙間) のより狭幅化のために、衝撃緩衝部材(対人保護用エネルギー吸収部材)は、車体前後方向の幅をより薄くすることが求められている。この点、特許文献2のような衝撃緩衝部材では、歩行者の保護に必要なエネルギー吸収量を確保するために、プレート部材の車体前後方向の長さが比較的長く(プレート部材がバンパービーム前面に長く張り出し)、車体の設計(車種)によっては使用できない。
また、実際の衝突事故においては、歩行者の衝突位置は各々異なる。このため、エネルギー吸収部材の設置位置に対して、歩行者の衝突位置が大きくずれることが起こり得る。即ち、歩行者脚部の衝突位置が車幅方向にずれる場合、歩行者脚部の衝突方向が水平方向に対してずれる場合などである。これらの場合に対応して、緩衝部材(エネルギー吸収部材)の期待する変形が生じるようにするためには、バンパー補強材の前面に亙る、比較的大きな面積を有する対人保護用エネルギー吸収部材が必要となる。
このように緩衝部材を比較的大面積化した場合、特許文献3、4のような比較的厚肉で構成された緩衝部材では、重量が増加して軽量化が犠牲になる。また、歩行者脚部の衝突方向が車体上下方向(鉛直方向)に対してずれる場合を想定すると、特許文献3、4のような形材の断面厚み方向への圧壊を利用した緩衝部材では、圧縮力の作用線がずれることを意味する。この圧縮力の作用線がずれると、断面厚み方向への圧壊を利用した緩衝部材では、エネルギー吸収特性が低下しやすくなる。したがって、このタイプの緩衝部材では、歩行者の衝突位置のずれによっても、このエネルギー吸収特性を保持するために、断面の厚みを増さざるを得ない。この観点からも、特許文献3、4のような緩衝部材では、歩行者の保護に必要なエネルギー吸収量を確保しがたい。
したがって、本発明の目的は、比較的大面積化された場合でも軽量で、かつ断面厚み方向に狭幅化(薄肉化)された場合でも、衝突時の発生荷重や加速度等を低くできるような、歩行者脚部の保護特性に優れた、車体バンパービームおよび車体用衝撃緩衝部材を提供しようとするものである。
上記目的を達成するための、本発明車体バンパービームの要旨は、衝撃緩衝部材を前面側に設けた、中空構造の車体バンパービームであって、前記衝撃緩衝部材は、衝突壁部と側壁部と接合用フランジとを有して、これらが厚み3 .0mm以下の金属材によって一体に形成されており、前記衝突壁部は、バンパービームの前方側に向かって張り出すとともに、車体上下方向に延在するバンパービーム前面壁の全領域に亙って車体上下方向に延在し、前記側壁部は、この衝突壁部の車体上下方向の各端部から、バンパービームの車体前後方向に延在する側壁の外側に沿って車体後方に向かって各々伸長して、バンパービーム後面壁にまで至り、この側壁部と前記衝突壁部とで、バンパービームを囲む形の略コの字状断面形状を形成するとともに、前記接合用フランジを前記両側壁部の車体後方側の各端部から車体上下方向に各々張り出させて、バンパービームの後面壁側より支持したことである。
荷重変位における最大荷重を低くするとともに、歩行者の保護に必要なエネルギー吸収量を確保する断面厚み方向の変形を確保するために、前記衝撃緩衝部材の衝突壁部が車体衝突時の変形の起点となる凹みを有することが好ましい。また、同じく、前記衝撃緩衝部材が、アルミニウム合金板の成形によって、前記衝突壁部と側壁部と接合用フランジとを一体に形成されたものであることが好ましい。
同じく、前記バンパービームは、アルミニウム合金製中空押出形材で構成されていることが好ましい。
上記目的を達成するための、本発明車体用衝撃緩衝部材の要旨は、車体バンパービームの前面側に設けられる、車体衝突に対する衝撃緩衝部材であって、衝突壁部と側壁部と接合用フランジとを有して、これらが厚み3 .0mm以下の金属材によって一体に形成されており、前記衝突壁部は、バンパービームの前方側に向かって張り出すとともに、車体上下方向に延在するバンパービーム前面壁の全領域に亙って車体上下方向に延在し、前記側壁部は、この衝突壁部の車体上下方向の各端部から、バンパービームの車体前後方向に延在する側壁の外側に沿って車体後方に向かって各々伸長して、バンパービーム後面壁にまで至り、この側壁部と前記衝突壁部とで、バンパービームを囲む形の略コの字状断面形状を形成するとともに、前記接合用フランジを前記両側壁部の車体後方側の各端部から車体上下方向に各々張り出させて、バンパービームの後面壁側より支持されることである。
この衝撃緩衝部材は、荷重変位における最大荷重を低くするとともに、歩行者の保護に必要なエネルギー吸収量を確保する断面厚み方向の変形を確保するために、前記衝突壁部が車体衝突時の変形の起点となる凹みを有することが好ましい。また、前記衝撃緩衝部材が、アルミニウム合金板の成形によって、前記衝突壁部と側壁部と接合用フランジとを一体に形成されたものであることが好ましい。
本発明車体バンパービームは、バンパービーム前面に設ける、車体衝突に対する衝撃緩衝部材の構造、形状が特徴的である。即ち、本発明車体バンパービームは、先ず、衝撃緩衝部材の前記衝突壁部が、バンパービームの前方側に向かって張り出すとともに、車体上下方向に延在するバンパービーム前面壁の全領域に亙って車体上下方向に延在する。
このように、本発明車体バンパービームでは、衝撃緩衝部材の前記衝突壁部の面積を、バンパービームの前面に亙るように(バンパービーム前面壁の全面をカバーできるように)大きくしている。このため、エネルギー吸収機能を、歩行者の衝突位置によらず発揮させることができる。また、バンパービーム前面壁と衝突壁部とで構成する中空構造自体を大きくでき、中空構造の車体前後方向(断面厚み方向)の変形による車体衝突時の衝撃の吸収、緩衝機能を大きくできる。
また、衝撃緩衝部材の前記側壁部は、前記衝突壁部の車体上下方向の各端部から、バンパービームの車体前後方向に延在する側壁の外側に沿って車体後方に向かって各々伸長して、バンパービーム後面壁にまで至り、この側壁部と前記衝突壁部とで、バンパービームを囲む形の略コの字状断面形状を形成する。このため、本発明では、衝撃緩衝部材の両側壁部のストローク(長さ)が比較的長くなり、車体衝突時の衝撃による前記両側壁部の車体前後方向(断面厚み方向)の変形長さが長くなる。この結果、荷重−変位関係(曲線)における荷重の急な立ち上がりを低減し、衝突時の緩衝特性(歩行者保護特性)を向上させることができる。また、強度など、バンパービーム10側の特性にも悪影響を与えない。更に、エネルギ吸収特性を変化させ、設計の自由度を増すことも可能となる。
更に、衝撃緩衝部材の前記接合用フランジは、前記両側壁部の車体後方側の各端部から車体上下方向に各々張り出して、バンパービーム後面壁から車体上下方向に各々張り出させたフランジと接合することで、衝撃緩衝部材をバンパービームの後面壁側より支持している。このような支持、接合は、バンパービームおよび衝撃緩衝部材の長手方向(車体幅方向)に亙って連続的に行なわれている。
このため、衝撃緩衝部材とバンパービームとの接合がフランジ同士の接合となって、ボルト、リベットなどの汎用される機械的接合手段や、スポット溶接などの汎用される溶接接合手段が採用可能となって、接合の選択肢が増し、接合自体も簡便となる。これによって、衝撃緩衝部材のバンパービームに対する支持、接合力を、衝撃緩衝部材の長手方向に亙って、制御することが可能である。言い換えると、歩行者の保護に必要なエネルギー吸収量を確保し、衝撃緩衝部材の車体前後方向(断面厚み方向)の変形を確保するように制御したり、衝突の際に生じる反力や加速度を制御することもできる。
そして、衝撃緩衝部材が一枚のアルミニウム合金板を成形したものであるなど、これら衝撃緩衝部材の衝突壁部と側壁部と接合用フランジとの各部材が、3 .0mm以下の金属材によって一体に形成されている。これによって、衝突壁部と側壁部と接合用フランジとに各々分割された各部材を接合して一体化したものに比して、衝撃緩衝部材の製作が容易になる。また、車体衝突時の衝撃による各接合部の破断がなくなり、衝突時のエネルギー吸収機能を向上させることができる。
したがって、本発明車体バンパービームは、衝撃緩衝部材が比較的狭幅化(薄肉化)された場合でも、衝突時の発生荷重や加速度等を低くでき、歩行者の保護に必要な特性を確保できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面などを用いて以下に説明する。
図1は、車体のフロント側あるいはリア側に設けた、本発明車体バンパービームの一態様を示し、本発明金属製衝撃緩衝部材を車体バンパービームの前面側に取り付けた態様を示す斜視図である。図2は、同じく、取り付けられる衝撃緩衝部材のみ別の態様を示す斜視図である。
図1、2の本発明金属製衝撃緩衝部材1は、基本的な構造として、車体前面側の衝突壁部2と、各上下側の側壁部3(図の上側)、4(図の下側)と、各上下側の接合用フランジ5(図の上側)、6(図の下側)とを有している。
また、図1、2におけるバンパービーム10は、車体前面側の前面壁11と、各上下側の側壁13(図の上側)、14(図の下側)と、後面壁12から構成される中空(断面)構造を有している。後面壁12は、車体上下方向に各々延伸する2個のフランジ15(図の上側)、16(図の下側)を有する。このフランジ15、16の表面側(前面側:図の右側の面)において、各々、衝撃緩衝部材1のフランジ5、6を接合している。
これが、衝撃緩衝部材1のフランジ5、6を、バンパービームの後面壁側より支持する一つの態様である。この図1、2で示したバンパービーム10では、フランジ5、6(衝撃緩衝部材1の)支持用のフランジ15、16を、後面壁12の延長線上(同じ面上)から張り出させている。但し、これらフランジ15、16を、バンパービーム後面壁12側ではあるが、後面壁12よりも前面側の、上側の側壁(ウエブ)13、下側の側壁(ウエブ)14から、車体上下方向に各々張り出させても良い。但し、この場合は、図1、2の後面壁12の延長線上での支持に比して、側壁部3、4の長さが短くなるので、この側壁部3、4の長さによる衝撃緩衝部材性能を低下させない程度での、後面壁12よりも前面側とする。
図1、2において、矢印Fが車体衝突時の荷重方向を示し、図1、2においては、図の右から左へが車体衝突時の荷重方向であり、図の右側がバンパービーム乃至車体のフロント側あるいはリア側を示す。また、衝撃緩衝部材1の右側に一点鎖線22で示しているのが車体パネル(バンパカバー、フード、トランクなど)である。
図1、2において、図示はしないが、衝撃緩衝部材1と一点鎖線で示した車体との間には、PP発泡フォームなどからなるアブソーバを、従来通り配置しても良い。また、バンパービーム10の車体後方側(図の左側)には、バンパービーム10を支持する鋼製やアルミニウム合金製のステイ、鋼製車体サイドメンバーなどが順に配置される。なお、本発明では、このアブソーバの厚みを従来よりも薄くあるいは少量とすることができ、アブソーバを一切使用しないことも可能である。
(衝突壁部)
図1、2において、金属製衝撃緩衝部材1の衝突壁部2は、前記衝突壁部は、バンパービーム10の前方側に向かって張り出すとともに、車体上下方向(図の上下方向)に延在するバンパービーム前面壁11の全領域(車体上下方向の全領域)に亙って、車体上下方向に延在している。この衝突壁部2の車体上下方向の形状は、バンパービーム10の前方に向けて突出して湾曲するドーム型形状を有している。この衝突壁部2は、歩行者との車体衝突時には、その形状全体が車体前後方向(断面厚み方向)に変形して、衝突の衝撃を吸収、緩衝する主要部分となる。
このように、衝突壁部2は、その面積を、バンパービーム10の前面壁11の車体上下方向の全領域に亙って延在するように(バンパービーム前面壁11の車体上下方向の全面をカバーできるように)大きくする。このため、エネルギー吸収機能を、バンパービーム10に対する歩行者の衝突位置の車体上下方向(鉛直方向)のずれによらず発揮させることができる。また、バンパービーム前面壁11と衝突壁部2とで構成する中空構造自体を大きくできる。このため、衝突壁部2の車体前後方向の変形による車体衝突時の衝撃の吸収、緩衝機能を大きくすることができる。
なお、衝突壁部2の形状は、衝突壁部2がバンパービーム10の前方側に向かって張り出してさえいれば、自由に選択できる。即ち、図1のように、円弧状として、側壁3、4と、角部なく(コーナー部が無く、あるいは角張らずに)形成してもよい。また、大きな肩Rの角部を車体上下方向に各々設けて、これを衝突壁部2の車体上下方向の両端部とし、側壁3、4との交点としても良い。ただ、角部(コーナー部)を設けた場合には、これが破壊の起点となりやすいために、大きな肩Rとするか、図1のように、円弧状として、角部をなくすことが好ましい。上記角部がある場合には、この角部が、本発明で言う衝突壁部2の車体上下方向の各端部となる。ただ、この角部をなくした場合の、本発明で言う衝突壁部2の車体上下方向の各端部とは、略水平な側壁部3、4と、略垂直方向の衝突壁部2との適当な交点となる。
本発明では、衝突壁部2をバンパービーム10の前面壁11の車体上下方向の全領域に亙って延在させるものの、その長手方向(車体幅方向)は、この前面壁11の長手方向(車体幅方向)全領域(全域)に亙って延在させる必要は無い。前記図1、2の本発明金属製衝撃緩衝部材1の例は、代表的な構造として、単一の衝撃緩衝部材1を、バンパービーム10の長手方向(車体幅方向)全領域(全域)に亙って延在させている場合を例示している。
これに対して、バンパービーム10の前面壁11の長手方向(車体幅方向)前面の必要部位のみや、必要長さのみ、衝撃緩衝部材1や衝突壁部2を、部分的に、あるいは分割して、複数個設けても良い。また、バンパービーム10の前面壁11の長手方向(車体幅方向)前面における不要部分(不要部位)のみ、衝突壁部2を部分的に切り欠くようにしても良い。
このような衝撃緩衝部材1や衝突壁部2を部分的あるいは分割した設け方をする場合には、特に、ステイなどによりバンパービーム10を後面から支持しているような、比較的剛体となっているバンパービーム10の両端部の部分は、歩行者脚部の保護を行なう必要があり、各々必須に衝撃緩衝部材1を設ける。
その一方で、バンパービーム10の長手方向(車体幅方向)中央部は、部分的に衝撃緩衝部材1を設けずに、その部分をアブソーバのみとすることもできる。このように、バンパービーム10の前面壁11の長手方向前面の必要部位のみや、必要長さのみ、衝撃緩衝部材1や衝突壁部2を部分的にあるいは分割して設けた場合には、設ける衝撃緩衝部材の軽量化を図ることができる。
(側壁部)
衝撃緩衝部材1の各上下側の側壁部3(図の上側)、4(図の下側)は、衝突壁部2の車体上下方向の各端部から、バンパービーム10の車体前後方向に延在する側壁13、14の外側に沿って車体後方に向かって各々伸長して、バンパービーム後面壁12にまで至って延在している。この結果、この側壁部3、4と衝突壁部2とで、バンパービーム10を囲む形の略コの字状断面形状を形成している。
このように、本発明では、衝撃緩衝部材1の両側壁部3、4のストローク(長さ)は、衝突壁部2の車体前面方向への張出量(バンパービーム前面壁11からの衝突壁部2までの長さ)と、更に、バンパービーム10の車体前後方向に延在する側壁13、14の長さとを合計したものとなる。このため、衝撃緩衝部材1の両側壁部3、4は比較的大きなストローク(長さ)となる。これに対して、衝撃緩衝部材1のフランジ5、6が、バンパービーム10の前面壁11または側壁13、14で支持される(バンパービームの前面壁または側壁の部分から張り出される)場合には、衝撃緩衝部材の両側壁部のストロークは、本発明の衝撃緩衝部材1の両側壁部3、4よりもかなり小さなストロークとならざるを得ない。
即ち、例え、衝突壁部2が、バンパービーム前面壁11から車体前方にあまり張り出さず、バンパービーム前面壁11に沿っていたとしても、少なくともバンパービーム側壁13、14の長さの分だけは、常に両側壁部3、4のストロークが確保される。このため、本発明では、車体衝突時の衝撃による両側壁部3、4の車体前後方向(断面厚み方向)の変形長さが長くなり、荷重−変位関係(曲線)における荷重の急な立ち上がりを低減し、衝突時の緩衝特性(歩行者保護特性)を向上させることができる。また、強度など、バンパービーム10側の特性にも悪影響を与えない。
(フランジ)
図1、2において、衝撃緩衝部材1の取付壁部であるフランジ5、6は、側壁3、4の車体後方側の端部から、バンパービーム後面壁12の一部であるフランジ15(図の上側)、16(図の下側)に沿って、車体上下方向に伸長して、各フランジ15、16の前面側(図の右側の面)に当接する形状を有する。そして、このフランジ15、16において、各々、衝撃緩衝部材1のフランジ5、6を機械的な接合手段21などのよって接合している。この21のような接合は、図1、2に示すように、バンパービーム10のフランジ15、16および衝撃緩衝部材1のフランジ5、6の、長手方向(車体幅方向)に亙って、適宜必要に応じた間隔を設けて行なわれている。
以上のように、このため、衝撃緩衝部材1とバンパービーム10との接合がフランジ同士の接合となっておれば、ボルト、リベットなどの汎用される機械的接合手段21や、スポット溶接などの汎用される溶接接合手段が採用可能となって、接合の選択肢が増し、接合自体も簡便となる。
また、上記の通り、衝撃緩衝部材1はバンパービーム10の後面壁12側に支持されている。これにより、上記したフランジ同士の接合との相乗効果によって、衝撃緩衝部材1のバンパービーム10に対する支持、接合力を、衝撃緩衝部材1の長手方向に亙って、部分的あるいは全面的に自由に制御することが可能である。例えば、衝撃緩衝部材1の支持、接合する力を、比較的強固な接合強度(支持強度)とした場合には、衝撃緩衝部材の支持面がバンパービーム前面壁の広域な面となり、衝突荷重が負荷された際に、接合部が例え局部的であったとしても、接合部の破断などが生じにくい。このため、歩行者の保護に必要なエネルギー吸収量を確保するだけの、中空構造の断面厚み方向の変形が確保できる。一方、これを比較的弱い接合強度とする場合には、ボルトやスポット溶接などの間隔を大きくすることで可能であり、これによって汎用される溶接接合手段衝突の際に生じる反力や加速度を低く抑制できる。
前記特許文献2では、衝撃緩衝部材の取付壁部を、バンパービームの上下壁面に接合している。ただ、このように、衝撃緩衝部材の取付壁部を、バンパービームの上下壁面に接合した場合、バンパービームが閉断面の場合には、衝撃緩衝部材の取付壁部からの、片側からしか接合(結合)できない。この片側接合方式では、溶接するか、下穴をあけておいてブラインドリベット等で接合するしかない。この際、溶接を用いると、バンパービームをアルミニウム合金製とした場合には、溶接時の熱影響により、部分的に強度低下を生じる。また、ブラインドリベットでは、下穴をあける作業が余分に必要となり、接合強度的にも弱くなる。このため、衝撃緩衝部材の取付壁部を支持する力が弱くなり、衝突荷重が負荷された際には、両者の局部的な接合部の破断などが生じやすい。したがって、歩行者の保護に必要なエネルギー吸収量を確保する断面厚み方向の変形が確保できにくい。特許文献2は、衝突壁部と取付壁部とが金属薄板によって一体に形成されている点や、バンパービーム前面と衝突壁部とで中空構造を構成させ、車体衝突時には衝突壁部を断面厚み方向に変形させて車体衝突の衝撃を緩衝する点は、本発明と同じである。しかしながら、バンパービームの上下壁面に取り付けているために、上記した片側接合の問題や、前記した通り、衝撃緩衝部材の側壁部のストロークが比較的短く、衝撃緩衝部材の圧縮変形長さが短くなる問題がある。この結果、荷重変位における初期荷重が高くなり、緩衝特性(歩行者保護特性)が低下するなどの欠点が生じる。
(フランジ接合方法)
衝撃緩衝部材1のフランジ5、6の、バンパービームのフランジ15、16への接合の仕方は、リベット、ボルトなどの機械的な接合21でよい。これに変えて、あるいは、これに組み合わせて溶接しても良い。なお、この接合位置は、接合強度を確保できるならば自由であり、バンパービーム10(フランジ15、16)および衝撃緩衝部材1(フランジ5、6)の長手方向(車体幅方向)に亙って、適切な間隔をおいて設けられる。なお、この接合位置なり接合間隔を変えることで、衝撃緩衝部材1の接合強度(支持強度)を変えることができる。例えば、強固な接合強度が必要な部位では、結合力の高い接合方法を選択したり、接合ピッチを狭くする方法で、接合強度(結合力)を高められる。また、衝突の際に生じる反力や加速度を低く抑制したい場合には、結合力の低い接合方法を選択したり、接合ピッチを大きくする方法で、接合強度(結合力)を低められる。
(薄板一体形成)
衝撃緩衝部材1の、衝突壁部2、側壁部3、4、接合用フランジ5、6は、その厚みが3.0mm以下の金属材から一体に形成される。即ち、一枚のアルミニウム合金板を成形したものであるなど、これら衝突壁部2、側壁部3、4、接合用フランジ5、6との各部材が、3 .0mm以下の金属材によって一体に形成されている。これによって、これら衝突壁部と側壁部と接合用フランジとに各々分割された各部材を接合して一体化したものに比して、衝撃緩衝部材の製作が容易になる。また、車体衝突時の衝撃による各接合部の破断がなくなり、衝突時のエネルギー吸収機能を向上させることができる。勿論、要求特性に応じて、衝突壁部2、側壁部3、4、接合用フランジ5、6の厚みは一様(同じ)でも、また、一様でなくても(異ならせても)良い。この際、少なくとも衝突壁部2の厚みは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下とする。
金属材としては板厚(厚み)3.0mm以下の金属薄板が好ましい。アルミニウム合金材としては板厚が3.0mm以下のアルミニウム合金薄板が例示される。また、強度が高い鋼材としては板厚が1.5mm以下の薄鋼板が好ましい。これら薄板のプレス成形によって、衝撃緩衝部材1は、衝突壁部2、側壁部3、4、接合用フランジ5、6とが一体に形成されることが好ましい。
厚み乃至板厚が小さくないと(厚みが薄くないと)、歩行者衝突時の衝突荷重負荷をきっかけとした、歩行者の保護に必要なエネルギー吸収量を確保する断面厚み方向の変形が生じ始める荷重が高くなり、衝撃緩衝部材としての機能を発揮できない。また、厚みが3.0mmを超えた場合には、前記したバンパービーム前面全体に亙る大きい(広い)面積に用いる場合には、アルミニウム合金薄板を用いたとしても、重量が増加し、軽量化が困難となる。なお、衝撃緩衝部材を構成するアルミニウム合金材として、圧延板などの薄板の他、板厚(肉厚)3.0mm以下のアルミニウム合金の押出が可能であれば、衝突壁部2と取付壁部3、4とをアルミニウム合金押出中空形材として、一体に形成しても良い。
また、これら衝突壁部2と側壁部3、4と接合用フランジ5、6とを一体とせずに、各々分割された各部材を接合して一体化した場合には、分割部乃至接合部が必然的に存在する。このため、これら分割部乃至接合部から破断しやすくなり、やはり、歩行者の保護に必要なエネルギー吸収量を確保する断面厚み方向の変形が起こりにくくなり、衝撃緩衝部材としての機能を発揮できない。また、衝撃緩衝部材製造の工程やコストも増すこととなる。
(変形部)
ここで、図2のように、衝突壁部2の、歩行者衝突時の衝突荷重負荷をきっかけとした、断面厚み方向の変形を起こりやすくするために、衝突壁部2の上下方向中央部に、変形の起点となる凹み(凹部)である変形部7を有することが好ましい。凹みの変形部7は、歩行者の衝突位置によらず、断面厚み方向の変形を起こりやすくする効果を発揮させるために、衝突壁部2の車体幅方向(長手方向)に亙って延在させて設ける。このため、この図2の変形部7を設けた衝撃緩衝部材1は、このような変形部7を設けない図1のドーム型衝撃緩衝部材に比して、凹み7による謂わば双山型断面中空形状を有している。なお、凹みの意味は荷重方向Fに対して後退乃至凹んでいるという意味である。
後述する実施例で裏付ける通り、この断面厚み方向の変形(横断面変形)を起こりやすくする変形部7を設けた図2の双山型衝撃緩衝部材の方が、変形部7を設けない図1のドーム型衝撃緩衝部材よりも、他の条件を同じとすれば、最大加速度(最大荷重)が小さく、また、エネルギー吸収量が比較的大きくなる。この変形部5は、断面厚み方向の変形を起こりやすくする効果を発揮させるためには、必ずしも上記凹みでなくとも良く、切欠き部や、他の部分よりも薄肉部とすることも可能である。しかし、凹みであれば、衝撃緩衝部材を元板からプレス成形する際などに、一体的に成形しやすく、また、上記変形促進効果も発揮されやすいために好ましい。
(衝撃緩衝部材全体の長手方向に亙る形状)
図1、2において、バンパービーム10は、車体の設計上、直線的ではなく、両端部が車体前後方向に後退、湾曲し、全体が長手方向に亙って車体幅方向に湾曲した形状を有している。このため、衝撃緩衝部材1も、このバンパービーム10の湾曲した形状に合わせて、両端部が車体前後方向に後退、湾曲し、全体が長手方向に亙って車体幅方向に湾曲した形状を有している。このように、衝撃緩衝部材1全体の長手方向に亙る形状は、パンパービーム10の車体幅方向の形状が直線的であれば直線的になど、バンパービーム10全体の長手方向に亙る形状に適合させたものとする。
(衝撃緩衝部材の他の態様)
衝撃緩衝部材の他の態様として、衝撃緩衝部材1の接合用フランジ5、6のいずれか一方あるいは両方を、バンパービーム10のフランジ15、16の裏面側(図の左側の面)に沿わせて、接合しても良い。このような場合には、衝撃緩衝部材1の衝突壁部2の車体上下方向の長さや、側壁部3、4同士の車体上下方向の間隔を、バンパービーム10のフランジ15、16を含めたバンパービーム10の車体上下方向の長さ(高さ)以上として、側壁部3、4の車体後方への伸長の直線性を確保する。但し、衝撃緩衝部材1の支持力は、前記した図1、2の場合に比して低下する。
(衝撃緩衝部材の材質)
板厚が3.0mm以下である衝撃緩衝部材の材質は、普通鋼板や高張力鋼板でも良いが、前記したバンパービーム前面全体に亙る広面積に用いても、軽量で、かつエネルギー吸収効果が大きい、アルミニウム合金が好ましい。このアルミニウム合金の種類は、通常、薄板や押出形材として、この種構造部材用途に汎用される、AA乃至JIS 規格で言う、3000系、成形性が良く耐力の比較的高い、5000系、6000系等の汎用 (規格) アルミニウム合金 (O、T4、T5、T6、T7等の要求性能に見合った調質乃至熱処理をされたもの) が好適かつ選択的に用いられる。
(バンパービーム)
図1、2で示したバンパービーム10は、前面壁11と後面壁12とを繋ぎ、略水平で略平行に配置された上側の側壁13、下側の側壁14とからなる口型断面中空部を有する。また、バンパービーム後面壁12から、車体上下方向に各々延伸する2個のフランジ15(上側)、16(下側)を有する。衝撃緩衝部材1の取付壁部3(上側)、4(下側)を接合する点で、このフランジ15、16が無く、前面壁11と直接取付壁部3、4を接合する場合よりも接合しやすく効率的である。但し、衝撃緩衝部材1のフランジ5、6を、バンパービームの後面壁側より支持する態様としては、必ずしも、図1、2のように、このフランジ15、16を後面壁12の延長線上(同じ面上)から張り出さなくても良い。例えば、これらフランジ15、16を、バンパービーム後面壁12側ではあるが、後面壁12よりも車体前後方向のより前面側の、上側の側壁13、下側の側壁14から、車体上下方向に各々張り出させ、これによって衝撃緩衝部材1のフランジ5、6を、バンパービームの後面壁側より支持する態様としても良い。
(バンパービームの他の態様)
図1、2で示したバンパービーム10の中空部の断面厚み方向(車体前後方向:横方向)の変形強度を補強した態様として、中リブを設けても良い、例えば、図1、2のバンパービーム10の口型断面中空部に、一本の中リブを横方向に入れて日型断面とするか、二本の中リブを横方向に平行入れて目型断面としても良い。また、図1、2のバンパービーム10の口型断面中空部に、十字状あるいはX字状の中リブを入れて、略田型断面としても良い。更に、これら中リブと組み合わせて、あるいは組み合わせずに、バンパービーム10の、上下側壁13、14と後面壁12との繋ぎ部分(角部)のコーナーRを大きくして、中空部の断面厚み方向の変形強度を向上させても良い。
これらの例では、前記図1、2のバンパービーム10を含めて、バンパービームの材質をアルミニウム合金とし、かつ、長手方向に亙る中空断面形状の作り易さからして、アルミニウム合金中空押出形材とした態様を意図している。バンパービーム10は、高張力鋼板製でも良いが、より軽量で、金属薄板でも板厚効果によるエネルギー吸収効果が大きい、アルミニウム合金が好ましい。通常、この種構造部材用途に汎用される、AA乃至JIS規格で言う、3000系や、成形性が良く耐力の比較的高い、5000系、6000系、7000系等の汎用 (規格) アルミニウム合金中空押出形材(O、T4、T5、T6、T7等の要求性能に見合った調質乃至熱処理をされたもの) が好適かつ選択的に用いられる。
なお、上記のように好適例を示したが、これらバンパービーム側の断面厚み方向の(横断面の)形状や、鋼製、アルミニウム合金製などの材質は、自動車設計側の都合から主として定まる。このため、本発明では、上記好適例を問わず、自動車設計側で定まる、種々の断面厚み方向の(横断面の)形状や長手方向形状あるいは材質など、種々のバンパービームに適用できる。
前記図1と図2とに示した本発明バンパービームを解析モデル化し、汎用の有限要素解析ソフトABAQUSを用いて、歩行者衝突を想定した荷重時の静的圧壊解析による加速度−変位関係を解析にて求めた。発明例の本解析モデルではアブソーバは設けないものとした。但し、本発明の使用態様として、衝撃緩衝部材1の前面側に、PP発泡フォームなどからなるアブソーバを配置しても(アブソーバと組み合わせても)良い。また、図3に示すような、バンパービームの下部にあって、衝突時に、脚部の下部を衝突方向と反対方向に、矢印で示すF1の力で蹴り上げて、脚部の過度な折れ曲がり(大きな曲げ角度)を防止する別の手段20などとの組み合わせても良い。
図3に上記解析モデルを示す。図3において、10は図1の本発明バンパービーム、11、12はバンパービームの前壁、後壁、1は衝撃緩衝部材、2、3、4は衝撃緩衝部材の衝突壁部、側壁部である。また、22は車体パネル、30は前記欧州車輌委員会の新型車両評価プログラムに準じた、歩行者脚部を模擬した脚部インパクターのモデルで、31は膝(関節)部分を示す。
図3において、バンパービーム10の打撃位置(高さ)hは、地面からの高さ(mm)を示し、前記欧州車輌委員会の新型車両評価プログラムに準じて、340.0mmと一定にした。また、歩行者の脚部はバンパービーム10の長手方向中央部から長手方向(車体幅方向)に100mm、または300mmずれた位置で衝突するものと仮定した。これを打撃位置として表1に示す。
この解析では、前記欧州車輌委員会の評価試験に準じて、歩行者の脚部を模擬した脚部インパクターを時速(初速)40kmで衝突させた際の、脚部インパクターの受ける負荷(加速度)、膝の曲げ角度(衝突方向)、膝の剪断変位(衝突方向)を解析評価した。評価は、前記欧州車輌委員会の基準により行い、脚部インパクター30の受ける負荷(加速度)が150G以下、膝の曲げ角度が15.0°以下、膝の剪断変位が5.0以下、となることを合格の基準とした。これらの結果を表1に示す。
比較のために、本発明の衝撃緩衝部材を設けず、前記図1に示したバンパービーム10前面側に、11倍の発泡率からなり、汎用されている中では最も硬いPP発泡フォーム製の厚さ40mmのアブソーバのみを配置した比較例(従来例)7、8のバンパービームも、同様に解析した。
なお、解析条件は、上記発明例、比較例ともに、以下の共通した条件とした。即ち、荷重の負荷は、図1のように、各バンパービーム10(衝撃緩衝部材1の)の正面、中央部に矢印Fのように負荷されるものとした。衝撃緩衝部材1はJIS6022アルミニウム合金板H調質材、板厚0.8mm、1.2mmの2種類の板のプレス成形品とした。
プレス成形品である衝撃緩衝部材1の外寸形状は、共通して、長さ(車体幅方向)はバンパービーム10と同じ1400mm、衝突壁部2の最大高さ(車体上下方向)90mm、衝突壁部2の最大張出長さ(バンパービーム前面壁11からの車体前後方向の張出長さ)50mm、側壁部3、4の各長さ(フランジ5、6から衝突壁部2までの車体前後方向の長さ)95mmとした。フランジ5、6の車体上下方向の長さ15mmとした。また、衝撃緩衝部材1の全長に亙る凹み7が有る場合には、凹み7の幅(車体上下方向)を70mm、深さ(車体前後方向)を10mmとした。
また、バンパービーム10は、7000系アルミニウム合金押出形材T5調質材、肉厚3.0mmとした。外寸形状は、共通して、長さ(車体幅方向)1300mm、前面壁11、後面壁12の高さ(車体上下方向)87mm、前面壁11の厚さ2.3mm、後面壁12の厚さ2.0mm、フランジ15、16の各長さ(車体上下方向)15mm、各側壁13、14の長さ(車体前後方向)38mm、各厚さ2.2mmとした。
表1の結果から、図1、2のタイプの発明例1〜6は、歩行者の脚部打撃位置がずれても、最大荷重が小さく、エネルギー吸収(EA)量が大きい。この結果、脚部インパクターの受ける負荷(加速度)、膝の曲げ角度(衝突方向)、膝の剪断変位(衝突方向)が小さく、前記欧州車輌委員会の合格基準を満たしている。したがって、発明例は、衝突時の歩行者の脚部に対するダメージが小さいことが分かる。
これに対して、本発明の衝撃緩衝部材を設けず、前記図1に示したバンパービーム10前面側に、PP発泡フォームからなるアブソーバのみを配置した比較例(従来例)7、8は、脚部インパクター30の受ける負荷(加速度)、膝の曲げ角度や、膝の剪断変位などが、前記欧州車輌委員会の合格の基準を超えている。これは、アブソーバがあるにもかかわらず、脚部がバンパービーム10の前面側と早期に衝突して、急激な荷重の立ち上がりが早期に起きることを意味している。したがって、従来のアブソーバのみでは衝突時の歩行者の脚部に対するダメージが大きいことも裏付けている。
Figure 2008137611
本発明によれば、比較的薄幅化された外寸形状でも、荷重変位における最大荷重を低くすることができ、歩行者衝突に見合った適切な衝突荷重でエネルギー吸収に必要な断面方向の変形を生じることができる。この結果、歩行者などの人間を確実に保護する機能を持つバンパービームおよび衝撃緩衝部材を提供することができる。また、バンパービームの本来の機能を低下させずに、歩行者保護の機能を新たに追加したバンパービームを提供することができる。このため、バンパービームに効果的な歩行者保護効果を与えることができる。
本発明車体バンパービームの一態様を示す斜視図である。 本発明車体バンパービームの他の態様を示す斜視図である。 本発明車体バンパービーム特性の解析の態様を示す説明図である。
符号の説明
1:衝撃緩衝部材、2:衝突壁部、3、4:側壁部、5、6:フランジ、
7:凹み、10:バンパービーム、11:バンパービーム前面壁、
12:バンパービーム後面壁、13、14:バンパービーム側壁、
15、16:バンパービームフランジ、21:接合手段、22:車体パネル、
30:歩行者脚部モデル、31:膝部

Claims (6)

  1. 衝撃緩衝部材を前面側に設けた、中空構造の車体バンパービームであって、前記衝撃緩衝部材は、衝突壁部と側壁部と接合用フランジとを有して、これらが厚み3.0mm以下の金属材によって一体に形成されており、前記衝突壁部は、バンパービームの前方側に向かって張り出すとともに、車体上下方向に延在するバンパービーム前面壁の全領域に亙って車体上下方向に延在し、前記側壁部は、この衝突壁部の車体上下方向の各端部から、バンパービームの車体前後方向に延在する側壁の外側に沿って車体後方に向かって各々伸長して、バンパービーム後面壁にまで至り、この側壁部と前記衝突壁部とで、バンパービームを囲む形の略コの字状断面形状を形成するとともに、前記接合用フランジを前記両側壁部の車体後方側の各端部から車体上下方向に各々張り出させて、バンパービームの後面壁側より支持したことを特徴とする車体バンパービーム。
  2. 前記衝撃緩衝部材の衝突壁部が車体衝突時の変形の起点となる凹みを有する請求項1に記載の車体バンパービーム。
  3. 前記バンパービームがアルミニウム合金製中空押出形材で構成されている請求項1または2に記載の車体バンパービーム。
  4. 前記衝撃緩衝部材が、アルミニウム合金板の成形によって、前記衝突壁部と側壁部と接合用フランジとを一体に形成されたものである1乃至3のいずれか1項に記載の車体バンパービーム。
  5. 車体バンパービームの前面側に設けられる、車体衝突に対する衝撃緩衝部材であって、衝突壁部と側壁部と接合用フランジとを有して、これらが厚み3 .0mm以下の金属材によって一体に形成されており、前記衝突壁部は、バンパービームの前方側に向かって張り出すとともに、車体上下方向に延在するバンパービーム前面壁の全領域に亙って車体上下方向に延在し、前記側壁部は、この衝突壁部の車体上下方向の各端部から、バンパービームの車体前後方向に延在する側壁の外側に沿って車体後方に向かって各々伸長して、バンパービーム後面壁にまで至り、この側壁部と前記衝突壁部とで、バンパービームを囲む形の略コの字状断面形状を形成するとともに、前記接合用フランジを前記両側壁部の車体後方側の各端部から車体上下方向に各々張り出させて、バンパービームの後面壁側より支持されることを特徴とする車体用衝撃緩衝部材。
  6. 前記衝撃緩衝部材が、アルミニウム合金板の成形によって、前記衝突壁部と側壁部と接合用フランジとを一体に形成されたものである請求項5に記載の車体用衝撃緩衝部材。
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