JP4647805B2 - 自動車用サイドステップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車体の側方からの衝突に対する衝撃吸収性を有しているアルミニウム合金製の自動車用サイドステップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、ワゴン車やRV (レジャ- ビークル) 車などの車高の高い自動車車体の両側には、乗降用のサイドステップが設けられている。このサイドステップは、車体両側のサイドドアの下方に、水平方向に延びて取り付けられている。
【0003】
これら自動車のサイドステップは、単純な踏み板構造から、意匠上の質量感のある中空断面構造のものまで、種々の形状デザインがある。
【0004】
近年、これら自動車のサイドステップ、特に、前記質量感のある中空断面構造のサイドステップには、車体軽量化や金属光沢性 (美観) のために、従来使用されていた鋼材に代わって、アルミニウム合金製押出中空形材などが使用され始めている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来のアルミニウム合金中空形材製のサイドステップには、車体の側方からの衝突 (以下、側突と言う) の際の衝突のエネルギー (衝撃) を吸収する性能はなかった。これは前記単純な踏み板構造のサイドステップを含め、サイドステップ全般にも言える。
【0006】
この理由は、先ず、従来のサイドステップは、前記側突の際の衝突のエネルギー吸収を意図して取り付けられてはいなかったためである。
図8 の自動車車体の説明図に、従来のサイドステップの取り付け位置を例示する通り、ワゴン車やRV車などの車高の高い自動車A1の従来のサイドステップD は、車体両側のサイドドアC1の下方に、かつ車体に沿ってほぼ水平方向に延びて取り付けられている。
【0007】
これら従来のサイドステップは乗員の乗降のみを目的とし、乗降のしやすさや乗降の際の耐荷重などを優先的に考慮している。しかし、側突の際の衝突のエネルギー吸収のために先ず必要な、他の自動車A2のバンパー補強材B2の高さh2との関係を考慮して設けられてはいない。この結果、従来のサイドステップD の取り付け位置h1は、必然的に、他の自動車A2のバンパー補強材B2の高さh2よりも高く設けられるか、逆に、h2よりも低い位置に設けられることになる。
【0008】
サイドステップD の取り付け位置h1が、他の自動車A2のバンパー補強材B2の高さh2よりもかなり高い場合、他の自動車A2が車高の高い自動車A1に側突した場合に、他の自動車A2のバンパー補強材B2は自動車A1の車体下にもぐり込むかたちとなる。このため、他の自動車A2のバンパー補強材B2が衝撃吸収の役割を果たせず、車体同士が直接衝突することとなり、双方の乗員に強い衝撃が加わることとなる。
【0009】
また、その反対に、サイドステップD の取り付け位置h1が、他の自動車A2のバンパー補強材B2の高さh2よりも低くなる場合でも、同様に、車体同士が直接衝突することとなる。
【0010】
つまり、ワゴン車やRV車などの車高の高い自動車に、普通乗用車などが側突する場合に、サイドステップには双方の車体の衝撃吸収性や衝突安全性が充分機能乃至確保されないこととなる。
【0011】
次に、前記図8 において、サイドステップD の取り付け位置h1が、たまたま、他の自動車A2のバンパー補強材B2の高さh2に対応しており、他の自動車A2のバンパー補強材B2が、仮にサイドステップD に衝突したとしても、従来の中空構造アルミニウム合金製サイドステップでは、その構造からして、側突に対し衝撃吸収効果がなかった。
【0012】
即ち、従来の中空形材製サイドステップは、特開平9-301075号公報 (図3)や特開2000-85505号公報 (図3)などに開示されており、これらを図9 、10に断面図で例示する。図9 、10の通り、従来の中空形材製サイドステップD1、D2は、乗員の乗降用のみを目的としており、側突に対する衝撃吸収を意図していない。このために、図9 、図10のように、共通して側突F の方向に対峙する壁面15、16の面積が著しく小さい。また、前記した通り、普通乗用車など他の自動車のバンパー補強材B2の高さとも対応乃至一致していない。
【0013】
更に、図9 のように、壁面の補強用の中リブも下方に向かう、乗降の際の荷重支持のみを意図した構成となっている。更に、図10のように、サイドステップ自体の車体への取り付け構造も、乗降の際の荷重支持のみを意図した、上下方向からの固定のみなどの脆弱な支持構造となっている。
【0014】
これら図9 、10のような中空サイドステップ構造であれば、仮に、他の自動車A2のバンパー補強材B2が側突した場合、衝撃力にもよるが、サイドステップD1、D2は衝撃により、取り付け部が外れて破断するか、側突F の方向に対峙する壁面が圧壊して破断、飛散する。このため、側突の衝撃吸収効果は期待できない。
【0015】
そして、これら図9 、10のような中空サイドステップ構造において、仮に、アルミニウム合金製として、側突の衝撃吸収効果を高めようとすれば、肉厚を例えば10mm以上と、極端に厚くするしかなく、アルミニウム合金採用の大きな目的乃至利点である軽量化自体が損なわれる。
【0016】
したがって、本発明の目的は、軽量で側突の衝撃吸収効果が高いアルミニウム合金材製自動車用サイドステップを提供しようとするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明自動車用サイドステップの請求項1 の要旨は、車体サイドドアの下方にステイ11を介して取り付けられ、車体に沿ってほぼ水平方向に延びるとともに、中空状のアルミニウム合金材からなる自動車用サイドステップ1 であって、車体側方に張り出し略垂直方向に延在する前面フランジ2 と、この前面フランジ2 に略直交し略水平方向に前面フランジ2 を支持する上方と下方のウエブ3 、4 と、下方のウエブ4 に略直交する後面フランジ5 と、この後面フランジ5 に直交するか、上方のウエブ3 から縦壁を介してつながる、略水平な横壁部6 とを有し、この後面フランジ5 と横壁部6 とが、車体側より張り出したステイ11と、鞍部状の取り付け部を構成することによって、サイドステップ1 単独で、あるいは、このサイドステップ1 と前記ステイ11とで、乗降用のステップを構成する上部中空部7 と、側突に対する衝撃吸収部を構成する下部中空部8 とを形成しており、この衝撃吸収部たる下部中空部8 が普通乗用車車体のバンパー補強材に対応する高さに取り付けられていることである。
【0018】
本発明構成によれば、乗員の乗降用のサイドステップに、側突に対する衝撃吸収部を設け、この衝撃吸収部を、最も数の多い他の普通乗用車車体のバンパー補強材に対応する高さに取り付けるために、乗降用の不便が生じることなく、側突の際の衝撃吸収効果を持たせることができる。
【0019】
また、本発明自動車用サイドステップは、前記側突に対する衝撃吸収部が、車体側方に張り出し略垂直方向に延在する前面フランジを有するので、この前面フランジにより、軽量で側突の衝撃吸収効果が高いアルミニウム合金材製自動車用サイドステップを提供することができる。
【0020】
更に、この前面フランジが、車体側方に張り出した円弧状の形状を有することによって、衝撃吸収部の側突の際の衝撃吸収効果をより高めることができる。
【0021】
そして、前記前面フランジに略直交し略水平方向に前面フランジを支持するウエブと、ウエブに略直交し少なくとも略水平方向で車体側に支持される後面フランジとを有することで、軽量で側突の衝撃吸収効果が高いアルミニウム合金材製自動車用サイドステップを提供することができる。
【0022】
また、衝撃吸収部の側突の際の衝撃吸収効果をより高めるために、前記前面フランジに直交する補強用の中リブを設けることが好ましい。
【0023】
更に、前記衝撃吸収部を含めたサイドステップが中空形材からなること、軽量で側突の衝撃吸収効果が高いアルミニウム合金材製自動車用サイドステップを効率良く多量に製造することができる。
【0024】
また、衝撃吸収部の側突の際の衝撃吸収効果をより高めるための、本発明自動車用サイドステップに好適なアルミニウム合金材は、AA乃至JIS 規格による6000、7000系から選択される耐力が200MPa以上のアルミニウム合金であって、押出加工後に急冷されて生成した微細繊維状組織を有するアルミニウム合金押出中空形材が好ましい。
【0025】
なお、アルミニウム合金製で、断面形状が、口形あるいは中リブを設けて補強した日形、田形、目形などの略矩形の押出中空形材自体は、車体衝突時のエネルギーを吸収するために、バンパー補強材やステイ、あるいは側突用のドアビームとして種々採用されている。
【0026】
しかし、前記した通り、これまでの自動車用サイドステップには、側突の際の衝突エネルギーの吸収性能を持たせる意図が無かったことが、前記取り付け位置の問題からも明白である。また、前記バンパー補強材やステイ、あるいは側突用のドアビームとして使用されるアルミニウム合金中空形材は、略矩形断面そのままの構造では、車体側方に取り付けられ、しかも乗員乗降用の機能も必要な自動車用サイドステップには使用できない。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の自動車用サイドステップの実施の形態について詳述する。
本発明の自動車用サイドステップの1 実施態様を、図1 に自動車への取り付け位置を示すRV車の斜視図、図2 にサイドステップの斜視図で例示する。
【0028】
図1 は、RV車A1の車体サイドドアC1の下方に、車体側方に張り出して取り付けられ、車体に沿ってほぼ水平方向に延びる、本発明サイドステップ1aを示している。
【0029】
図1 から分かる通り、本発明サイドステップ1aは、車体側方に張り出した衝撃吸収部8aが、他の普通乗用車A2のバンパー補強材B2の、平均的な乃至最も数の多い、高さh2に対応する高さh1に取り付けられている。このため、他の普通乗用車A2がRV車A1に側突した場合に、他の普通乗用車A2のバンパー補強材B2が、まず最初に衝突するのは (少なくともサイドドアよりも先に衝突するという意味) 、高い確率で、RV車A1の本発明サイドステップ1a (衝撃吸収部8a) となり、側突が生じた場合の衝撃吸収効果を、先ずその位置的な関係 (配置) から発揮しえる。
【0030】
言い換えると、本発明サイドステップにおける衝撃吸収部とは、側突の際に、他の自動車のバンパー補強材 (それ以外の車体部分でも良いが) に最初に衝突する乃至最初に衝突しうるサイドステップ部分と規定される。
【0031】
また、本発明サイドステップ1a取り付け高さh1は、他の特定の普通乗用車のバンパー補強材の高さとの対応を選択するよりも、他の普通乗用車A2のバンパー補強材B2の平均的な高さや最も数の多い高さh2に対応する高さを選択する方が、サイドステップの前記最初に衝突する確率を高めうる点で、好ましい。
【0032】
次に、図2 に詳細構造を例示する通り、本発明サイドステップ1a本体は、アルミニウム合金中空形材からなっている。そして、この中空形材の補強用の中リブ9aによって仕切られた下部の中空部8aが主たる衝撃吸収部である。
【0033】
この衝撃吸収部は、車体側方(x2方向) に張り出すとともに略垂直方向 (車体側突方向に対し略直角方向) に延在する円弧状の前面フランジ (前面縦壁部)2a と、前面フランジ2aに略直交し、略水平方向に後面側より前面フランジ2aを支持する 2つのウエブ3a、4aと、ウエブ4aに略直交するとともに略水平方向 (側突方向に対し平行方向) に車体側(x1方向) に支持される後面フランジ (後面壁部)5a とを有する。
【0034】
まず、前記前面フランジ2aは、前記構成により、充分な壁面積と衝突荷重方向をもって側突に応対することができる。即ち、側突によって、前面フランジ2aに Fの方向から衝撃が加わった場合でも、前面フランジ2aの曲げ剛性が大きくなり、圧壊乃至損壊を防止できるとともに、前面フランジ2a乃至サイドステップ全体が側突方向に変形して、衝撃荷重を吸収する。
【0035】
前記前面フランジ2aの断面形状は、このように円弧状でなくても、直線的あるいは波板状でも良い。また、その表面も平坦でなくとも、凹凸を設けても良い。しかし、側突の衝撃荷重に対応して、前面フランジの曲げ剛性を大きくするためには、円弧状に車体側方(x2方向) に張り出すことが好ましい。そして、この前面フランジの曲げ剛性をより大きくするためには、後述する図4 や図6 の通り、前面フランジの下端に、更に下方に張り出した張出フランジ13を設けても良い。
【0036】
次に、前面フランジ2aが、前面フランジ2aに略直交するウエブ3a、4aにより、略水平方向に後面側より支持されるため、側突によって、前面フランジ2aに Fの方向から衝撃が加わった場合でも、構造体としての剛性が大きくなり、座屈しにくくなる。この結果、比較的大きな衝突荷重であっても、前面フランジ2aなどのの折れ曲りや座屈を防止し、衝突荷重のエネルギー吸収量を大きくすることができる。
【0037】
この効果を達成するためには、単純には、前面フランジ2aを、2 つ以上など多くのウエブで支持することが好ましい。例えば、仮に、前面フランジの支持を図2 の下方ウエブ (ウエブ4a) のみで行った場合、側突の際の衝撃荷重が大きい場合に、衝突荷重のエネルギーを吸収できずに破断される可能性がある。
【0038】
また、後面フランジ 5a は、後面フランジ 5a に直交する横壁部6aとともに、車体側より張り出した鋼製などのステイ11との関係で、本発明サイドステップの鞍部状の取り付け部を構成している。
【0039】
後面フランジ 5a は、ウエブ4aに略直交するとともに略水平方向に車体側に支持され、側突方向に対し平行方向に、ウエブ4aを介して、前面フランジ2aを支持する。このため、側突によって、前面フランジ2aに Fの方向から衝撃が加わった場合でも、構造体としての剛性が大きくなり、座屈しにくくなる。この結果、比較的大きな衝突荷重であっても、前面フランジ2aなどの折れ曲りや座屈を防止すると共に、ステイの接触面を広くとることができ、この部分での破断を防止し、衝突荷重のエネルギー吸収量を大きくすることができる。
【0040】
仮に、後面フランジ 5a 乃至サイドステップ自体の車体への取り付け構造を、前記図10のように、上下方向 (垂直方向) からの固定のみとした場合には、前面フランジ2a乃至サイドステップ自体の側突に対する支持構造が弱くなり、衝突荷重のエネルギー吸収量を大きくできない。
【0041】
後面フランジ 5a は、後面フランジ 5a に直交する横壁部6aとともに、前記ステイ11の先端縦壁部11a と中間横壁部11b などにおいて、適宜、車体側に支持および接合される。この接合手段は、図2 では、ボルト、ナットなどの公知の機械的締結手段12により行っているが、他に、フランジ面とステイ面とを溶接しても良く、両者を組み合わせることも可能である。
【0042】
なお、横壁部6aの上下方向の支持および接合は、前記した通り、乗降の際の荷重支持を主目的とするが、側突方向に対し平行方向に前面フランジを支持することと合わせて用いられると、衝撃吸収部の衝撃吸収性を高める効果もある。
【0043】
更に、前記中リブ9aは、ウエブ3a、4aと同様に、前面フランジ2aにかかる衝突荷重を支えて補強し、衝撃吸収部の衝撃吸収効果を高めるために選択的に設けられる。その本数は、中空部8aの肉厚や長さ、幅との関係で選択的であって、車体側突方向に対して平行になるよう、水平方向に延在して1 〜3 本程度設ける。
【0044】
本発明では、以上のような衝撃吸収部構造と車体側への支持および接合構造とすることにより、比較的薄い肉厚であっても、サイドステップの側突に対する衝撃吸収効果を高めることが可能である。
【0045】
一方、図2 において、上方のウエブ3aにより構成された上部の中空部7aは、乗降用のステップを構成し、平坦なウエブ3aの上面が乗降用のステップ面となる。ウエブ3aの上面は、必ずしも平坦でなくとも、表面に凹凸を設ける、あるいは波板状としても良い。
【0046】
本発明では、サイドステップの内の前記衝撃吸収部8aの部分さえ、他の普通乗用車A2のバンパー補強材B2の高さh2に対応する高さh1に取り付けられていれば、前記乗降用のステップを形成する円弧状のウエブ3aにより構成された上部の中空部7aは、必ずしも他の普通乗用車A2のバンパー補強材B2の高さh2に対応しなくても良い。
【0047】
本発明サイドステップのアルミニウム合金中空形材断面形状の別の態様を、図5 から図7 に示す。
図5 のサイドステップ1cは、図2 の補強用中リブ9aを除いた以外は、基本的に図2 の中空形材断面形状と同じとしたものである。衝撃吸収部8cは円弧状の前面フランジ2cと、前面フランジ2cに略直交し後面側より前面フランジを支持する2 つのウエブ3c、4cと、ウエブ4cに略直交するとともに側突方向に対し平行方向に車体側に支持される後面フランジ5cとを有する。
【0048】
なお、この例では、ウエブ3c表面に中空形材の長手方向に延在する足掛け用の凹み10a を設けている。このように、上部のウエブ表面のステップは必ずしも平坦である必要はなく、プレスあるいはハイドロフォームなどの加工により、上部のウエブに長手方向に延在する足掛け用の凹みを形成しても良い。
【0049】
図6 のサイドステップ1dは、図5 の中空形材を四角張った断面形状としたものである。衝撃吸収部8dは円弧状の前面フランジ2dと、前面フランジ2dに略直交し後面側より前面フランジを支持する2 つのウエブ3d、4dと、ウエブ4dに略直交するとともに側突方向に対し平行方向に車体側に支持される後面フランジ5dとを有する。そして、前面フランジ2dの曲げ剛性の補強のために、前面フランジ2dの下端の下方に張り出した突出フランジ13を選択的に有する。
【0050】
図7 のサイドステップ1eは、図6 の補強用中リブ9bを設けた以外は、基本的に図6 の中空形材断面形状と同じとしたものである。衝撃吸収部8eは円弧状の前面フランジ2eと、前面フランジ2eに略直交し後面側より前面フランジを支持する2 つのウエブ3e、4eと、ウエブ4eに略直交するとともに側突方向に対し平行方向に車体側に支持される後面フランジ5eとを有する。
【0051】
次に、本発明サイドステップを、押出中空形材ではなく、アルミニウム合金板の成形加工により製作した別の態様を、図3 、図4 に示す。
図3 の本発明サイドステップ1b本体は、アルミニウム合金板の中空状の成形体からなっている。そして、中空状の下部の空間部8bが主たる衝撃吸収部である。この衝撃吸収部は、車体側方に張り出すとともに車体側突方向に対し略直角 (略垂直方向) に延在する円弧状の前面フランジ2bと、前面フランジ2aに略直交し後面側より前面フランジを支持する2 つのウエブ3b、4bと、ウエブ4bに略直交するとともに側突方向に対し平行方向に車体側に支持される後面フランジ5bとを有する。
【0052】
この後面フランジ5bは、横壁部6bとともに、車体側より張り出した鋼製などのステイ11との関係で、本発明サイドステップの鞍部状の取り付け部を構成している。後面フランジ5bは、横壁部6bとともに、前記ステイ11の先端縦壁部11a と中間横壁部11b などにおいて、適宜、車体側に支持および接合される。この接合手段は、ボルト、ナットなどの公知の機械的締結手段12でも、フランジ面とステイ面とを溶接しても良く、両者を組み合わせることも可能である。
【0053】
以上のような衝撃吸収部構造と車体側への支持および接合構造とすることにより、板からの成形材であっても、前記図2 や図5 〜7 の中空形材の場合と同様、比較的薄い肉厚であっても、サイドステップの側突に対する衝撃吸収効果を高めることが可能である。即ち、側突によって、前面フランジ2bに Fの方向から衝撃が加わった場合、ウエブ3b、4bは、前面フランジ2bにかかる衝突荷重を後面から支えるとともに、圧壊乃至損壊することなく、サイドステップの横 (後面) 方向に座屈、変形して、衝撃荷重を吸収する。
【0054】
一方、円弧状のウエブ3bにより構成された上部の中空部7bは、乗降用のステップとなり、前記図5 の場合と同じく、必要により、中空形材の長手方向に延在する足掛け用の凹み10b を有している。また、この凹み10b 上には、必要により、ゴムや樹脂などの弾性体からなる平板状の滑り止め14が設けられている。また、滑り止め14の表面には長手方向に延在する凹凸条を設けている。
【0055】
次に、図4 は、前記図3 の態様に、円弧状の前面フランジ2bの下端に、下方に張り出した突出フランジ13を設けた例で、これ以外は、基本的に図3 の態様と同じである。このフランジ13を設けることにより、前記した通り、側突によって、前面フランジ2bに Fの方向から衝撃が加わった場合、前面フランジ2bの曲げ剛性が大きくなり、衝突荷重のエネルギー吸収量を大きくすることができる。
【0056】
なお、この前面フランジの下端の下方に張り出したフランジは、前記図2 や図5 〜7 の中空形材に設けても、同じ効果を有する。
【0057】
ここにおいて、本発明サイドステップの長手方向に渡る断面形状は、必ずしも同一でなくとも、部分的あるいは順次断面形状が変化するような中空形状乃至中空状形状が、車体の設計側から、自由に選択できる。
【0058】
また、本発明サイドステップの場合、軽量化のためのアルミニウム合金材採用の利点なり目的を達成するためには、肉厚が5mm 以下の薄いアルミニウム合金製中空形材乃至板材からなることが好ましい。この肉厚が5mm を越えた場合、重量と強度との関係からは、鋼材と大差なくなり、軽量化のためのアルミニウム合金材採用の利点そのものが損なわれてしまう可能性がある。言い換えると、本発明サイドステップでは、肉厚が5mm 以下の薄いものでも、サイドステップの側突に対する衝撃吸収効果を高めることが可能である利点がある。
【0059】
(アルミニウム合金)
本発明サイドステップで用いるアルミニウム合金は、肉厚が5mm 以下の軽量化条件を満たした上で、側突の衝撃エネルギーの吸収性に優れることが望ましい。このためには、使用するアルミニウム合金材の耐力が200MPa以上であることが好ましい。
【0060】
これらの要求特性を満足するアルミニウム合金材としては、通常、この種構造部材用途に汎用される、AA乃至JIS 規格に規定された3000系、5000系、6000系、7000系等の汎用 (規格) アルミニウム合金材 (圧延板材、押出形材で、O 、T4、T6、T7等の要求性能に見合った調質をされたもの) が好適かつ選択的に用いられる。その中でも、成形性が良く、耐力の比較的高い6000系、7000系等のアルミニウム合金材が好ましい。
【0061】
ただ、これらのアルミニウム合金の中でも、側突の衝撃エネルギーの吸収性がより優れるためには、更に、アルミニウム合金材の結晶組織がより微細なものが好ましい。そして、この微細結晶組織の中でも、押出加工直後の空冷あるいは水冷などの急冷処理によって生成した、微細な繊維状組織 (等軸状組織ではなく、押出形材の長手方向に渡って微細な繊維状に配列した結晶組織) となったアルミニウム合金押出形材が、衝撃エネルギー吸収性の点で特に好ましい。
【0062】
これらアルミニウム合金材は、圧延や押出、あるいは鍛造などの常法によるアルミニウム合金材の製造の際、あるいはサイドステップへの成形、加工の前後に、強度、成形性、衝撃エネルギー吸収性などの要求性能に見合った調質処理 (熱処理) を適宜施されて、サイドステップとして使用される。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、特にワゴン車やRV車などの車高の高い自動車に対し、軽量で側突の衝撃吸収効果が高いアルミニウム合金製自動車用サイドステップを提供することができる。
このため、自動車の軽量化に大きく寄与するとともに、自動車用サイドステップへのAl合金材の用途も大きく拡大するものであり、工業的な価値が高い。
また、車高の高い自動車の側だけでなく、側突した側の自動車も含めた双方の車体の衝撃吸収性や衝突安全性が充分機能乃至確保される効果もあり、大きな社会的意義を持つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明サイドステップの取り付け位置を示す斜視図である。
【図2】本発明サイドステップの一実施態様を示す斜視図である。
【図3】本発明サイドステップの他の実施態様を示す断面図である。
【図4】本発明サイドステップの他の実施態様を示す断面図である。
【図5】本発明サイドステップの他の実施態様を示す断面図である。
【図6】本発明サイドステップの他の実施態様を示す断面図である。
【図7】本発明サイドステップの他の実施態様を示す断面図である。
【図8】従来のサイドステップの取り付け位置を示す説明図である。
【図9】従来の中空型サイドステップを示す断面図である。
【図10】従来の中空型サイドステップを示す断面図である。
【符号の説明】
1:サイドステップ、2:前面フランジ、3 、4:ウエブ、5:後面フランジ、6:横壁部、7:上部中空部、8:下部中空部 (衝撃吸収部) 、9:中リブ、10: 凹み、11: ステイ、12: 締結手段、13: 突出フランジ
Claims (5)
- 車体サイドドアの下方にステイ11を介して取り付けられ、車体に沿ってほぼ水平方向に延びるとともに、中空状のアルミニウム合金材からなる自動車用サイドステップ1 であって、車体側方に張り出し略垂直方向に延在する前面フランジ2 と、この前面フランジ2 に略直交し略水平方向に前面フランジ2 を支持する上方と下方のウエブ3 、4 と、下方のウエブ4 に略直交する後面フランジ5 と、この後面フランジ5 に直交するか、上方のウエブ3 から縦壁を介してつながる、略水平な横壁部6 とを有し、この後面フランジ5 と横壁部6 とが、車体側より張り出したステイ11と、鞍部状の取り付け部を構成することによって、サイドステップ1 単独で、あるいは、このサイドステップ1 と前記ステイ11とで、乗降用のステップを構成する上部中空部7 と、側突に対する衝撃吸収部を構成する下部中空部8 とを形成しており、この衝撃吸収部たる下部中空部8 が普通乗用車車体のバンパー補強材に対応する高さに取り付けられていることを特徴とする自動車用サイドステップ。
- 前記前面フランジ2 が車体側方に張り出した円弧状の形状を有する請求項1に記載の自動車用サイドステップ。
- 前記前面フランジ2 に直交する補強用の中リブ9 を設けた請求項1または2に記載の自動車用サイドステップ。
- 前記衝撃吸収部8 が中空形材からなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動車用サイドステップ。
- 前記アルミニウム合金材として、AA乃至JIS 規格による6000、7000系から選択される耐力が200MPa以上のアルミニウム合金であって、押出加工後に急冷されて生成した微細繊維状組織を有するアルミニウム合金押出中空形材を用いた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動車用サイドステップ。
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