以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下においては、X−Yアドレス型の固体撮像装置の一例である、CMOS固体撮像装置をデバイスとして使用した場合を例に説明する。また、CMOS固体撮像装置は、全ての画素がNMOSよりなるものであるとして説明する。
ただしこれは一例であって、対象となるデバイスはMOS型の固体撮像装置に限らない。光や放射線などの外部から入力される電磁波に対して感応性をする単位構成要素をライン状もしくはマトリクス状に複数個配列してなる物理量分布検知用の半導体装置の全てに、後述する全ての実施形態が同様に適用できる。
<固体撮像装置の全体概要>
図1は、本発明に係る固体撮像装置の一実施形態であるCMOS固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)の概略構成図である。
固体撮像装置1は、入射光量に応じた信号を出力する受光素子(電荷生成部の一例)を含む複数個の画素が行および列に配列された(すなわち2次元マトリクス状の)画素部を有し、各画素からの信号出力が電圧信号であって、CDS(Correlated Double Sampling ;相関2重サンプリング)処理機能部やデジタル変換部(ADC;Analog Digital Converter)などが列並列に設けられているものである。
“列並列にCDS処理機能部やデジタル変換部が設けられている”とは、垂直列の垂直信号線(列信号線の一例)19に対して実質的に並列に複数のCDS処理機能部やデジタル変換部が設けられていることを意味する。
複数の各機能部は、デバイスを平面視したときに、ともに画素アレイ部10に対して列方向の一方の端縁側(図の下側に配されている出力側)にのみ配されている形態のものであってもよいし、画素アレイ部10に対して列方向の一方の端縁側(図の下側に配されている出力側)とその反対側である他方の端縁側(図の上側)に分けて配されている形態のものであってもよい。後者の場合、行方向の読出走査(水平走査)を行なう水平走査部も、各端縁側に分けて配して、それぞれが独立に動作可能に構成するのがよい。
たとえば、列並列にCDS処理機能部やデジタル変換部が設けられている典型例としては、撮像部の出力側に設けたカラム領域と呼ばれる部分に、CDS処理機能部やデジタル変換部を垂直列ごとに設け、順次出力側に読み出すカラム型のものである。また、カラム型(列並列型)に限らず、隣接する複数(たとえば2つ分)の垂直信号線19(垂直列)に対して1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を割り当てる形態や、N本おき(Nは正の整数;間にN−1本を配する)のN本分の垂直信号線19(垂直列)に対して1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を割り当てる形態などを採ることもできる。
カラム型を除くものは、何れの形態も、複数の垂直信号線19(垂直列)が1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を共通に使用する構成となるので、画素アレイ部10側から供給される複数列分の画素信号を1つのCDS処理機能部やデジタル変換部に供給する切替回路(スイッチ)を設ける。なお、後段の処理によっては、出力信号を保持するメモリを設けるなどの対処が必要になる。
何れにしても、複数の垂直信号線19(垂直列)に対して1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を割り当てる形態などを採ることで、各画素信号の信号処理を画素列単位で読み出した後に行なうことで、同様の信号処理を各単位画素内で行なうものに比べて、各単位画素内の構成を簡素化し、イメージセンサの多画素化、小型化、低コスト化などに対応できる。
また、列並列に配された複数の信号処理部にて1行分の画素信号を同時並行処理することができるので、出力回路側やデバイスの外部で1つのCDS処理機能部やデジタル変換部にて処理を行なう場合に比べて、信号処理部を低速で動作させることができ、消費電力や帯域性能やノイズなどの面で有利である。逆に言えば、消費電力や帯域性能などを同じにする場合、センサ全体の高速動作が可能となる。
なお、カラム型の構成の場合、低速で動作させることができ消費電力や帯域性能やノイズなどの面で有利であるとともに切替回路(スイッチ)が不要である利点もある。以下の実施形態では、特に断りのない限り、このカラム型で説明する。
図1に示すように、本実施形態の固体撮像装置1は、複数の単位画素3が行および列に配列された画素部や撮像部などとも称される画素アレイ部10と、画素アレイ部10の外側に設けられた駆動制御部7と、画素アレイ部10の単位画素3に画素信号読出用の動作電流(読出電流)を供給する読出電流源部24と、垂直列ごとに配されたカラムAD回路25を有するカラム処理部26と、カラム処理部26にAD変換用の参照信号RAMPを供給する参照信号生成部27と、出力部29とを備えている。これらの各機能部は、同一の半導体基板上に設けられている。
本実施形態のカラムAD回路25は、画素信号Soの基準レベルであるリセットレベルSrst と信号レベルSsig とを独立にデジタルデータに変換するAD変換部と、リセットレベルSrst のAD変換結果と信号レベルSsig のAD変換結果との間で差分処理を実行することで、リセットレベルSrst と信号レベルSsig の差で示される信号成分のデジタルデータを取得する差分処理部の機能を備えている。
なお、カラム処理部26の前段または後段には、必要に応じて信号増幅機能を持つAGC(Auto Gain Control) 回路などをカラム処理部26と同一の半導体領域に設けることも可能である。
駆動制御部7は、画素アレイ部10の信号を順次読み出すための制御回路機能を備えている。たとえば駆動制御部7としては、列アドレスや列走査を制御する水平走査回路(列走査回路)12と、行アドレスや行走査を制御する垂直走査回路(行走査回路)14と、内部クロックを生成するなどの機能を持つ通信・タイミング制御部20とを備えている。
図1では、簡単のため行および列の一部を省略して示しているが、現実には、各行や各列には、数十から数千の単位画素3が配置される。この単位画素3は、典型的には、受光素子(電荷生成部)としてのフォトダイオードと、増幅用の半導体素子(たとえばトランジスタ)を有する画素内アンプとから構成される。
画素内アンプとしては、たとえばフローティングディフュージョンアンプ構成のものが用いられる。一例としては、電荷生成部に対して、電荷読出部(転送ゲート部/読出ゲート部)の一例である読出選択用トランジスタ、リセットゲート部の一例であるリセットトランジスタ、垂直選択用トランジスタ、およびフローティングディフュージョンの電位変化を検知する検知素子の一例であるソースフォロア構成の増幅用トランジスタを有する、CMOSセンサとして汎用的な4つのトランジスタからなる構成のものを使用することができる(図2を参照)。
あるいは、特許第2708455号公報に記載のように、電荷生成部により生成された信号電荷に対応する信号電圧を増幅するための、ドレイン線(DRN)に接続された増幅用トランジスタと、電荷生成部をリセットするためのリセットトランジスタと、垂直シフトレジスタより転送配線(TRF)を介して走査される読出選択用トランジスタ(転送ゲート部)を有する、3つのトランジスタからなる構成のものを使用することもできる。
なお、固体撮像装置1は、色分解(色分離)フィルタを使用することで、画素アレイ部10をカラー撮像対応にすることができる。すなわち、画素アレイ部10における各電荷生成部(フォトダイオードなど)の電磁波(本例では光)が入射される受光面に、カラー画像を撮像するための複数色の色フィルタの組合せからなる色分解フィルタの何れかの色フィルタを、たとえばいわゆるベイヤ(Bayer)配列などにして設けることで、カラー画像撮像対応とする。
単位画素3は、行選択のための行制御線15を介して垂直走査部14と、また垂直信号線19を介してカラムAD回路25が垂直列ごとに設けられているカラム処理部26と、それぞれ接続されている。ここで、行制御線15は垂直走査部14から画素に入る配線全般を示す。
水平走査回路12は、カラム処理部26からカウント値を読み出す読出走査部の機能を持つ。
水平走査部12や垂直走査回路14などの駆動制御部7の各要素は、画素アレイ部10とともに、半導体集積回路製造技術と同様の技術を用いて単結晶シリコンなどの半導体領域に一体的に形成され、半導体システムの一例である固体撮像装置として構成される。
これらの各機能部は、半導体集積回路製造技術と同様の技術を用いて単結晶シリコンなどの半導体領域に一体的に形成されたいわゆる1チップもの(同一の半導体基板上に設けられているもの)として、半導体システムの一例であるCMOSイメージセンサとして、本実施形態の固体撮像装置1の一部をなすように構成される。
なお、固体撮像装置1は、このように各部が半導体領域に一体的に形成された1チップとして形成された形態であってもよいし、図示を割愛するが、画素アレイ部10、駆動制御部7、カラム処理部26などの各種の信号処理部の他に、撮影レンズ、光学ローパスフィルタ、あるいは赤外光カットフィルタなどの光学系をも含む状態で、これらを纏めてパッケージングされた撮像機能を有するモジュール状の形態としてもよい。
水平走査部12や垂直走査部14は、たとえばデコーダを含んで構成され、通信・タイミング制御部20から与えられる制御信号CN1,CN2に応答してシフト動作(走査)を開始するようになっている。このため、たとえば、行制御線15には、単位画素3を駆動するための種々のパルス信号(たとえば、画素リセットパルスRST 、転送パルスTRG 、DRN制御パルスDRN など)が含まれる。
通信・タイミング制御部20は、図示しないが、各部の動作に必要なクロックや所定タイミングのパルス信号を供給するタイミングジェネレータTG(読出アドレス制御装置の一例)の機能ブロックと、端子5aを介して外部の主制御部から供給されるマスタークロックCLK0を受け取り、また端子5bを介して外部の主制御部から供給される動作モードなどを指令するデータDATAを受け取り、さらに固体撮像装置1の情報を含むデータを外部の主制御部に出力する通信インタフェースの機能ブロックとを備える。
たとえば、水平アドレス信号を水平デコード12aへ、また垂直アドレス信号を垂直デコード14aへ出力し、各デコード12a,14aは、それを受けて対応する行もしくは列を選択する。
この際、単位画素3を2次元マトリックス状に配置してあるので、画素信号生成部5により生成され垂直信号線19を介して列方向に出力されるアナログの画素信号を行単位で(列並列で)アクセスし取り込む(垂直)スキャン読みを行ない、この後に、垂直列の並び方向である行方向にアクセスし画素信号(本例ではデジタル化された画素データ)を出力側へ読み出す(水平)スキャン読みを行なうようにすることで、画素信号や画素データの読出しの高速化を図るのがよい。もちろん、スキャン読みに限らず、読み出したい単位画素3を直接にアドレス指定することで、必要な単位画素3の情報のみを読み出すランダムアクセスも可能である。
また、通信・タイミング制御部20では、端子5aを介して入力されるマスタークロック(マスタークロック)CLK0と同じ周波数のクロックCLK1や、それを2分周したクロックやより分周した低速のクロックをデバイス内の各部、たとえば水平走査部12、垂直走査部14、カラム処理部26などに供給する。以下、2分周したクロックやそれ以下の周波数のクロック全般を纏めて、低速クロックCLK2ともいう。
垂直走査部14は、画素アレイ部10の行を選択し、その行に必要なパルスを供給するものである。たとえば、垂直方向の読出行を規定する(画素アレイ部10の行を選択する)垂直デコード14aと、垂直デコード14aにて規定された読出アドレス上(行方向)の単位画素3に対する行制御線15にパルスを供給して駆動する垂直駆動部14bとを有する。なお、垂直デコード14aは、信号を読み出す行の他に、電子シャッタ用の行なども選択する。
水平走査部12は、低速クロックCLK2に同期してカラム処理部26のカラムAD回路25を順番に選択し、その信号を水平信号線(水平出力線)18に導くものである。たとえば、水平方向の読出列を規定する(カラム処理部26内の個々のカラムAD回路25を選択する)水平デコード12aと、水平デコード12aにて規定された読出アドレスに従って、カラム処理部26の各信号を水平信号線18に導く水平駆動部12bとを有する。なお、水平信号線18は、たとえばカラムAD回路25が取り扱うビット数n(nは正の整数)分、たとえば10(=n)ビットならば、そのビット数分に対応して10本配置される。
このような構成の固体撮像装置1において、単位画素3から出力された画素信号は、垂直列ごとに、垂直信号線19を介して、カラム処理部26のカラムAD回路25に供給される。
カラム処理部26の各カラムAD回路25は、1列分の画素のアナログ信号Soを受けて、そのアナログ信号Soを処理する。たとえば、各カラムAD回路25は、アナログ信号を、たとえば低速クロックCLK2を用いて、たとえば10ビットのデジタル信号に変換するADC(Analog Digital Converter)回路を持つ。
カラム処理部26におけるAD変換処理としては、行単位で並列に保持されたアナログ信号を、列ごとに設けられたカラムAD回路25を使用して、行ごとに並列にAD変換する方法を採る。この際には、シングルスロープ積分型(あるいはランプ信号比較型)のAD変換の手法を使用する。この手法は、簡単な構成でAD変換器が実現できるため、並列に設けても回路規模が大きくならないという特徴を有している。
シングルスロープ積分型のAD変換に当たっては、変換開始から参照信号RAMPと処理対象信号電圧とが一致するまでの時間に基づいて、アナログの処理対象信号をデジタル信号に変換する。このための仕組みとしては、原理的には、コンパレータ(電圧比較器)にランプ状の参照信号RAMPを供給するとともに、クロック信号でのカウント(計数)を開始し、垂直信号線19を介して入力されたアナログの画素信号を参照信号RAMPと比較することによって比較結果を示すパルス信号が得られるまでのクロック数をカウントすることでAD変換を行なう。
また、この際、回路構成を工夫することで、AD変換とともに、垂直信号線19を介して入力された電圧モードの画素信号に対して、画素リセット直後の信号レベル(ノイズレベルもしくはリセットレベルと称する)と真の(受光光量に応じた)信号レベルVsig との差分をとる処理(いわゆるCDS処理と等価)を行なうことができる。これにより、固定パターンノイズ(FPN;Fixed Pattern Noise )やリセットノイズといわれるノイズ信号成分を取り除くことができる。
<参照信号生成部とカラムAD回路との詳細>
参照信号生成部27は、DA変換回路(DAC;Digital Analog Converter)27aを有して構成されており、通信・タイミング制御部20からの制御データCN4で示される初期値からカウントクロックCK0に同期して、単位画素3から出力されたアナログの画素信号出力Vxにおける所定レベルをデジタルデータに変換するための漸次変化する参照信号として、階段状の鋸歯状波(ランプ波形;参照信号RAMP)を生成して、カラム処理部26の個々のカラムAD回路25に、この生成した階段状の鋸歯状波の参照信号RAMPをAD変換用の参照電圧(ADC基準信号)として供給するようになっている。なお、図示を割愛しているが、ノイズ防止用のフィルタを設けるとよい。
なお、この参照信号RAMPは、たとえば逓倍回路で生成される逓倍クロックを元に生成される高速クロックを基準とすることで、端子5aを介して入力されるマスタークロックCLK0に基づき生成するよりも高速に変化させることができる。
通信・タイミング制御部20から参照信号生成部27のDA変換回路27aに供給する制御データCN4は、比較処理ごとの参照信号RAMPが同じ傾き(変化率)となるように、時間に対するデジタルデータの変化率を同じにする情報も含んでいる。具体的には、単位時間ごとに1ずつカウント値を変化させるのがよい。
カラムAD回路25は、参照信号生成部27のDA変換回路27aで生成される参照信号RAMPと、行制御線15(V0,V1,…)ごとに単位画素3から垂直信号線19(H0,H1,…)を経由し得られるアナログの画素信号とを比較する電圧比較部(コンパレータ)252と、電圧比較部252が比較処理を完了するまでの時間をカウントし、その結果を保持するカウンタ部254とを備えて構成されnビットAD変換機能を有している。
通信・タイミング制御部20は、電圧比較部252が画素信号のリセット成分ΔVと信号成分Vsig の何れについて比較処理を行なっているのかに応じてカウンタ部254におけるカウント処理のモードを切り替える制御部の機能を持つ。この通信・タイミング制御部20から各カラムAD回路25のカウンタ部254には、カウンタ部254がダウンカウントモードで動作するのかアップカウントモードで動作するのかを指示するための制御信号CN5が入力されている。
電圧比較部252の一方の入力端子RAMPは、他の電圧比較部252の入力端子RAMPと共通に、参照信号生成部27で生成される階段状の参照信号RAMPが入力され、他方の入力端子には、それぞれ対応する垂直列の垂直信号線19が接続され、画素アレイ部10からの画素信号電圧が個々に入力される。電圧比較部252の出力信号はカウンタ部254に供給される。
カウンタ部254のクロック端子CKには、他のカウンタ部254のクロック端子CKと共通に、通信・タイミング制御部20からカウントクロックCK0が入力されている。
このカウンタ部254は、その構成については図示を割愛するが、ラッチで構成されたデータ記憶部255の配線形態を同期カウンタ形式に変更することで実現でき、1本のカウントクロックCK0の入力で、内部カウントを行なうようになっている。カウントクロックCK0も、参照信号RAMPと同様に、高速クロックを元に生成することで、端子5aを介して入力されるマスタークロックCLK0より高速にすることができる。
ここで、カウンタ部254は、カウントモードに拘わらず共通のアップダウンカウンタ(U/D CNT)を用いて、ダウンカウント動作とアップカウント動作とを切り替えて(具体的には交互に)カウント処理を行なうことが可能に構成されている点に特徴を有する。
カウンタ部254には、水平走査回路12から制御線12cを介して制御パルスが入力される。カウンタ部254は、カウント結果を保持するラッチ機能を有しており、制御線12cを介しての制御パルスによる指示があるまでは、カウンタ出力値を保持する。
個々のカラムAD回路25の出力側は、たとえば、カウンタ部254の出力を水平信号線18に接続することができる。あるいは、図示のように、カウンタ部254の後段に、このカウンタ部254の保持したカウント結果を保持するnビットのメモリ装置としてのデータ記憶部256と、カウンタ部254とデータ記憶部256との間に配されたスイッチ258とを備える構成を採ることもできる。
データ記憶部256を備える構成を採る場合、スイッチ258には、他の垂直列のスイッチ258と共通に、通信・タイミング制御部20から、所定のタイミングで、制御パルスとしてのメモリ転送指示パルスCN8が供給される。スイッチ258は、メモリ転送指示パルスCN8が供給されると、対応するカウンタ部254のカウント値をデータ記憶部256に転送する。データ記憶部256は、転送されたカウント値を保持・記憶する。
なお、カウンタ部254のカウント値を所定のタイミングでデータ記憶部256に保持させる仕組みは、両者間にスイッチ258を配する構成に限らず、たとえば、カウンタ部254とデータ記憶部256とを直接に接続しつつ、カウンタ部254の出力イネーブルをメモリ転送指示パルスCN8で制御することで実現することもできるし、データ記憶部256のデータ取込タイミングを決めるラッチクロックとしてメモリ転送指示パルスCN8を用いることでも実現できる。
データ記憶部256には、水平走査回路12から制御線12cを介して制御パルスが入力される。データ記憶部256は、制御線12cを介しての制御パルスによる指示があるまでは、カウンタ部254から取り込んだカウント値を保持する。
水平走査回路12は、カラム処理部26の各電圧比較部252とカウンタ部254とが、それぞれが担当する処理を行なうのと並行して、各データ記憶部256が保持していたカウント値を読み出す読出走査部の機能を持つ。
データ記憶部256の出力は、水平信号線18に接続されている。水平信号線18は、カラムAD回路25のビット幅であるnビット幅分の信号線を有し、図示しないそれぞれの出力線に対応したn個のセンス回路を経由して出力回路28に接続される。
特に、データ記憶部256を備えた構成とすれば、カウンタ部254が保持したカウント結果を、データ記憶部256に転送することができるため、カウンタ部254のカウント動作すなわちAD変換処理と、カウント結果の水平信号線18への読出動作とを独立して制御可能であり、AD変換処理と外部への信号の読出動作とを並行して行なうパイプライン動作が実現できる。
このような構成において、カラムAD回路25は、水平ブランキング期間に相当する画素信号読出期間において、カウント動作を行ない、所定のタイミングでカウント結果を出力する。すなわち、先ず、電圧比較部252では、参照信号生成部27からのランプ波形電圧と、垂直信号線19を介して入力される画素信号電圧とを比較し、双方の電圧が同じになると、電圧比較部252のコンパレート出力が反転する。たとえば、電圧比較部252は、電源電位などのHレベルをインアクティブ状態として、画素信号電圧と参照信号RAMPとが一致したときに、Lレベル(アクティブ状態)へ遷移する。
カウンタ部254は、参照信号生成部27から発せられるランプ波形電圧に同期してダウンカウントモードもしくはアップカウントモードでカウント動作を開始しており、コンパレート出力の反転した情報がカウンタ部254に通知されると、カウント動作を停止し、その時点のカウント値を画素データとしてラッチ(保持・記憶)することでAD変換を完了する。
この後、カウンタ部254は、所定のタイミングで水平走査回路12から制御線12cを介して入力される水平選択信号CH(i)によるシフト動作に基づいて、記憶・保持した画素データを、順次、カラム処理部26外や画素アレイ部10を有するチップ外へ出力端子5cから出力する。
なお、本実施形態の説明としては直接関連しないため特に図示しないが、その他の各種信号処理回路なども、固体撮像装置1の構成要素に含まれる場合がある。
<画素部>
図2は、図1に示した固体撮像装置1に使用される単位画素3の構成例と、駆動部と駆動制御線と画素トランジスタの接続態様を示す図である。画素アレイ部10内の単位画素(画素セル)3の構成は、通常のCMOSイメージセンサと同様であり、本実施形態では、CMOSセンサとして汎用的な4TR構成のものや、たとえば、特許第2708455号公報に記載のように、3つのトランジスタからなる3TR構成のものを使用することができる。もちろん、これらの画素構成は一例であり、通常のCMOSイメージセンサのアレイ構成であれば、何れのものでも使用できる。
画素内アンプとしては、たとえばフローティングディフュージョンアンプ構成のものが用いられる。一例としては、電荷生成部に対して、電荷読出部(転送ゲート部/読出ゲート部)の一例である読出選択用トランジスタ、リセットゲート部の一例であるリセットトランジスタ、垂直選択用トランジスタ、およびフローティングディフュージョンの電位変化を検知する検知素子の一例であるソースフォロア構成の増幅用トランジスタを有する、CMOSセンサとして汎用的な4つのトランジスタからなる構成(以下4TR構成ともいう)のものを使用することができる。
たとえば、図2に示す4TR構成の単位画素3は、光を受光して電荷に変換する光電変換機能とともに、その電荷を蓄積する電荷蓄積機能の各機能を兼ね備えた電荷生成部32と、電荷生成部32に対して、電荷読出部(転送ゲート部/読出ゲート部)の一例である読出選択用トランジスタ(転送トランジスタ)34、リセットゲート部の一例であるリセットトランジスタ36、垂直選択用トランジスタ40、およびフローティングディフュージョン38の電位変化を検知する検知素子の一例であるソースフォロア構成の増幅用トランジスタ42を有する。
この単位画素3は、電荷蓄積部の機能を備えた電荷注入部の一例であるフローティングディフュージョン38とからなるFDA(Floating Diffusion Amp)構成の画素信号生成部5を有するものとなっている。フローティングディフュージョン38は寄生容量を持った拡散層である。
読出選択用トランジスタ(第2の転送部)34は、転送パルスφTRGが供給される転送駆動バッファBF1により転送配線(読出選択線TX)55を介して駆動されるようになっている。リセットトランジスタ36は、リセットパルスφRSTが供給されるリセット駆動バッファBF2によりリセット配線(RST)56を介して駆動されるようになっている。垂直選択用トランジスタ40は、垂直選択パルスφVSELが供給される選択駆動バッファBF3により垂直選択線(SEL)52を介して駆動されるようになっている。各駆動バッファは、垂直走査部14の垂直駆動部14bによって駆動可能になっている。
画素信号生成部5におけるリセットトランジスタ36は、ソースがフローティングディフュージョン38に、ドレインが電源Vddにそれぞれ接続され、ゲート(リセットゲートRG)には画素リセットパルスRST がリセット駆動バッファから入力される。
垂直選択用トランジスタ40は、一例として、ドレインが増幅用トランジスタ42のソースに、ソースが画素線51にそれぞれ接続され、ゲート(特に垂直選択ゲートSELVという)が垂直選択線52に接続されている。なおこのような接続構成に限らず、ドレインが電源Vddに、ソースが増幅用トランジスタ42のドレインにそれぞれ接続され、垂直選択ゲートSELVが垂直選択線52に接続されるようにしてもよい。
垂直選択線52には、垂直選択信号SELが印加される。増幅用トランジスタ42は、ゲートがフローティングディフュージョン38に接続され、ドレインが垂直選択用トランジスタ40を介して電源Vddに、ソースは画素線51に接続され、さらに垂直信号線53(19)に接続されるようになっている。
さらに垂直信号線53は、その一端がカラム処理部26側に延在するとともに、その経路において、読出電流源部24が接続され、増幅用トランジスタ42との間で、略一定の動作電流(読出電流)が供給されるソースフォロワ構成が採られるようになっている。
具体的には、読出電流源部24は、各垂直列に設けられたNMOS型のトランジスタ(特に負荷MOSトランジスタという)242と、全垂直列に対して共用される電流生成部245およびゲートおよびドレインが共通に接続されソースがソース線248に接続されたNMOS型のトランジスタ246を有する基準電流源部244とを備えている。
各負荷MOSトランジスタ242は、ドレインが対応する列の垂直信号線53に接続され、ソースが接地線であるソース線248に共通に接続されている。これにより、各垂直列の負荷MOSトランジスタ242は基準電流源部244のトランジスタ246との間でゲート同士が接続されカレントミラー回路を構成し、垂直信号線19に対し電流源として機能するように接続されている。
ソース線248は、水平方向の端部(図1の左右の垂直列)で基板バイアスである接地(GND)に接続され、負荷MOSトランジスタ242の接地に対する動作電流(読出電流)が、チップの左右両端から供給されるような構成となっている。
電流生成部245には、必要時にのみ所定電流を出力するようにするための負荷制御信号SFLACTが、図示しない負荷制御部から供給されるようになっている。電流生成部245は、信号読出し時には、負荷制御信号SFLACTのアクティブ状態が入力されることで、各増幅用トランジスタ42に接続された負荷MOSトランジスタ242によって、予め決められた定電流を流し続けるようになっている。つまり、負荷MOSトランジスタ242は、選択行の増幅用トランジスタ42とソースフォロアを組んで読出電流を増幅用トランジスタ42に供給することで垂直信号線53への信号出力をさせる。
このような4TR構成では、フローティングディフュージョン38は増幅用トランジスタ42のゲートに接続されているので、増幅用トランジスタ42はフローティングディフュージョン38の電位(以下FD電位という)に対応した信号を電圧モードで、画素線51を介して垂直信号線19(53)に出力する。
リセットトランジスタ36は、フローティングディフュージョン38をリセットする。読出選択用トランジスタ(転送トランジスタ)34は、電荷生成部32にて生成された信号電荷をフローティングディフュージョン38に転送する。垂直信号線19には多数の画素が接続されているが、画素を選択するのには、選択画素のみ垂直選択用トランジスタ40をオンする。すると選択画素のみが垂直信号線19と接続され、垂直信号線19には選択画素の信号が出力される。
<電圧比較部の詳細構成例>
図3は、電圧比較部252の概略回路図である。ここで、図3(A)は、その基本構成例を示し、図3(B)は、その変形構成例を示す。本実施形態の電圧比較部252は、その構成を工夫することで、リセット成分ΔVのバラツキに左右されずに比較期間を設定できるようにする点に特徴を有する。
電圧比較部252の基本構成は、一般に良く知られている差動アンプ構成を採用しており、NMOS型のトランジスタ302,304を有する差動トランジスタ対部300と、差動トランジスタ対部300の出力負荷となるPMOS型のトランジスタ312,314を有する正電源側に配された負荷トランジスタ対部310と、各部300,310に一定の動作電流を供給する接地(GND)側に配されたNMOS型の定電流源トランジスタ322を有する電流源部320とを備えている。
本構成においては、正電源側は、当該電圧比較部252のインアクティブ側の基準電源として機能し、接地(GND)側は、当該電圧比較部252のアクティブ側の基準電源として機能する。
トランジスタ302,304の各ソースSが共通に定電流源トランジスタ322のドレインDと接続され、トランジスタ302,304の各ドレイン(出力端子)Dに負荷トランジスタ対部310の対応するトランジスタ312,314のドレインDが接続されている。
定電流源トランジスタ322のゲートには、DCゲート電圧VGが入力される。この定電流源トランジスタ322が、電圧比較部252のコンパレート出力のスルーレートを決める要因となる。
差動トランジスタ対部300の出力(コンパレート出力Comp1;図示した例ではトランジスタ304のドレイン出力)は増幅アンプ360に入力され、当該増幅アンプ360に設けられた図示しないインバータやバッファなどで構成されたアンプに接続され、さらに図示しないバッファを経て、十分な増幅がなされた後、コンパレート出力Comp2としてカウンタ部254に出力されるようになっている。
また、本実施形態の電圧比較部252は、電圧比較部252の動作点をリセットする動作点リセット部330を備えている。動作点リセット部330は、オフセット除去部として機能するものである。つまり、電圧比較部252は、オフセット除去機能付きの電圧コンパレータとして構成されている。動作点リセット部330は、PMOS型のスイッチトランジスタ332,334と信号結合用の容量素子336,338とを有している。
ここで、スイッチトランジスタ332は、ドレインD−ソースS間がトランジスタ302のゲート(入力端子)G−ドレイン(出力端子)D間に接続され、またスイッチトランジスタ334は、ドレインD−ソースS間がトランジスタ304のゲート(入力端子)G−ドレイン(出力端子)D間に接続され、各ゲートGには共通に比較器リセットパルスPSETが供給されるようになっている。
また、トランジスタ302のゲート(入力端子)には、容量素子336を介して画素信号Vxが供給され、トランジスタ304のゲート(入力端子)には、図示しない参照信号生成部27から参照信号RAMPが供給されるようになっている。
さらに、本実施形態の電圧比較部252は、画素信号電圧Vxの所定レベルについての比較処理を行なうのに先立って、電圧比較部252のコンパレート出力(比較出力)を強制的にインアクティブ状態の強制初期値Comp_sw に設定する初期設定部340を備えている。
ここで、「強制的に」とは、差動アンプ構成の電圧比較部252の各入力端(本例ではトランジスタ302,304のゲート)に入力される画素信号電圧Vxや参照信号RAMPの大きさとは無関係であることを意味する。このため、初期設定部340には、コンパレート出力Comp1を強制的に強制初期値Comp_sw に設定するための初期設定制御パルスPini が供給されるようになっている。
初期設定部340は、AD変換用の比較処理完了後に、次のAD変換のために、AD変換用の比較結果を示すコンパレート出力Comp2のアクティブ状態(本例ではLレベル)を、強制的にインアクティブ状態に戻す機能を果たす。本例の場合、インアクティブ状態はHレベルであるので、初期設定部340によるインアクティブ時のコンパレート出力Comp1の強制初期値Comp_sw を高電位側にする。
たとえば、図3(A)に示す基本構成例では、初期設定部340は、電源と電圧比較部252の出力端Compとの間に、PMOS型のスイッチトランジスタ342を有している。スイッチトランジスタ342は、ソースSが電源に接続され、ドレインDが電圧比較部252の出力端Compに接続され、ゲートGには、初期設定制御パルスPini が供給されるようになっている。
このような構成において、動作点リセット部330は、容量素子336,338を介して入力される信号に対してサンプル/ホールド機能を発揮する。すなわち、画素信号Vxと参照信号RAMPとの比較を開始する直前だけ比較器リセットパルスPSETをアクティブ(本例ではHレベル)にし、差動トランジスタ対部300の動作点をドレイン電圧(読出電位;基準成分や信号成分を読み出す動作基準値)にリセットすることで、コンパレート出力を電位Comp_pset にする。その後、容量素子336を介して画素信号Vxをトランジスタ302へ、また容量素子338を介して参照信号RAMPを入力し、画素信号Vxと参照信号RAMPとが同電位となるまで比較を行なう。画素信号Vxと参照信号RAMPとが同電位となると出力が反転する。
ここで、比較器リセットパルスPSETを供給して差動トランジスタ対部300のトランジスタ302,304のゲートとドレインを一時的に接続(ショート)してダイオード接続とし、単位画素3の増幅用トランジスタ42の入力にトランジスタ304のオフセット成分を加えたものをトランジスタ304の入力端子(ゲート)に保持した後に参照信号RAMPを入力して、画素信号Vxと参照信号RAMPとの比較を開始する。こうすることで、画素信号の読出電位で電圧比較部252の動作点が設定されるようになるので、リセット成分ΔVのバラツキの影響を受け難くなる。
さらに、本実施形態においては、画素信号のあるレベルについてのAD変換用の比較処理完了後の次のレベルについてのAD変換のために、予め、初期設定部340にてスイッチトランジスタ342のゲートにアクティブL(ロー)の初期設定制御パルスPini を供給してスイッチトランジスタ342をオンさせる。こうすることで、AD変換用の比較結果を示すコンパレート出力Comp1のアクティブ状態(本例ではLレベル)を、強制的かつ瞬時にインアクティブ状態(強制初期値Comp_sw )に戻すようにする。
スイッチトランジスタ342によって強制的かつ瞬時にインアクティブ状態に戻すので、コンパレート出力Comp1が初期電位Comp_iniに戻るまでのセトリング時間の大幅な短縮が期待できる。すなわち、スイッチトランジスタ342がオンすると、電圧比較部252のコンパレート出力Comp1は、トランジスタ302に入力される画素信号のレベルに関係なく、強制的に強制初期値Comp_sw へと引っぱられる。
ここで、図3(A)に示す基本構成例では、スイッチトランジスタ342のソースSを電源に接続しているので、強制初期値Comp_sw は電源電圧Vdに等しくなる。なお、実際には、スイッチトランジスタ342の飽和電圧分が存在するので、厳密には、スイッチトランジスタ342をオンさせたときのコンパレート出力Comp1は電源電圧Vd(=強制初期値Comp_sw )に等しくならない。
なお、このように、強制初期値Comp_sw を電源電圧Vdに等しくすることは必須ではなく、たとえば、図3(B)に示す変形構成例のように、強制初期値Comp_sw を規定する電位を発生する初期値生成部344を設け、スイッチトランジスタ342のソースSを初期値生成部344の出力に接続するようにしてもよい。
初期値生成部344としては、ツェナーダイオードを始めとする定電圧を生成可能な素子や回路を利用した構成を採用することができる。
もちろん、この場合は、初期値生成部344を設けない図3(A)に示す基本構成例よりも回路規模が増える不利益はある。ただし、初期値生成部344が出力する強制初期値Comp_sw の値次第では、リセットレベルについてのAD変換処理時にスイッチトランジスタ342をオンさせる必要性がなく、タイミング制御が容易になる利点が生じる(詳細はセトリング処理の第2例で説明する)。
初期値生成部344が出力する強制初期値Comp_sw は、スイッチトランジスタ342をオンさせたときのコンパレート出力Comp1を増幅アンプ360で増幅して得られるコンパレート出力Comp2として、他の機能部(特にカウンタ部254)がインアクティブ状態として認識できる値とする。
たとえば、定常初期値Comp_iniに近くかつそれよりも少し大きな電源電圧Vd側の値、つまり電圧比較部252が比較処理を開始する時点のコンパレート出力Comp1の値よりも、電圧比較部252のインアクティブ側の基準電源の電位(電源電圧Vd)寄りの値を強制初期値Comp_sw として発生してもよい(「前者の場合」と称する)。
あるいは、定常初期値Comp_iniに近くかつそれよりも少し小さな値、つまり電圧比較部252が比較処理を開始する時点のコンパレート出力Comp1の値よりも、電圧比較部252のアクティブ側の基準電源の電位(接地:GNDd)寄りの値(たとえば電位Comp_pset )を強制初期値Comp_sw として発生してもよい(「後者の場合」と称する)。さらには、定常初期値Comp_iniと同じにしてもよい。
こうすることで、強制初期値Comp_sw を電源電圧以外の任意の電圧値(厳密にはインアクティブ状態の範囲で)にすることができる。もちろん、この場合にも、実際には、スイッチトランジスタ342の飽和電圧分が存在するので、厳密には、スイッチトランジスタ342をオンさせたときのコンパレート出力Comp1は、初期値生成部344が出力した強制初期値Comp_sw に等しくならない。
前者の場合や図3(A)に示す基本構成例の場合には、スイッチトランジスタ342を作動させたときのコンパレート出力Comp1が定常初期値Comp_iniに達するまでの準備期間におけるセトリング動作の振舞いは、初期設定部340を設けない場合の振舞いと異なり、高電位側からセトリングが完了するようになる。これに対して、後者の場合には、スイッチトランジスタ342を作動させたときのコンパレート出力Comp1が定常初期値Comp_iniに達するまでの準備期間におけるセトリング動作の振舞いは、初期設定部340を設けない場合の振舞いと同じく、低電位側からセトリングが完了するようになる。後述するセトリング処理の第2例では、この準備期間におけるセトリング動作の振舞いの相違に着目した対処を行なう。
コンパレート出力Comp1を強制初期値Comp_sw にするときの電位の変化は、電圧比較部252の通常動作時のように、定電流源トランジスタ322を流れる電流量によってその応答速度が規定されるものではなく、強制初期値Comp_sw に直接に設定されるものなので、電流制限がないため、スルーレートにも制限がない。
つまり、初期設定部340(スイッチトランジスタ342)を具備しない構成時のスルーレートに比べて非常に早いため、瞬時にアクティブ状態(本例ではLレベル;低電位)からインアクティブ状態(強制初期値Comp_sw )まで引き戻すことができる。
このように、電圧比較部252のコンパレート出力Comp1を強制的にインアクティブ状態(強制初期値Comp_sw )に引き戻して固定することで、トランジスタ302に入力される画素信号のレベルやトランジスタ304に入力される参照信号RAMPのレベルがどのような状態になっても、コンパレート出力Comp1が反転することはない。
したがって、スイッチトランジスタ342をオンさせておく限り、電圧比較部252の比較動作前の状態を、主に参照信号RAMPの初期値で規定される定常初期値Comp_iniに近い強制初期値Comp_sw に保つことができる。そして、AD変換を開始するのに合わせてスイッチトランジスタ342をオフさせれば、電圧比較部252のコンパレート出力Comp1は強制初期値Comp_sw から比較前の定常初期値Comp_iniに戻り、そこから次のAD変換用の比較処理を開始することができる。
この初期設定部340を具備した電圧比較部252の具体的な動作については、後で詳しく説明する。
なお、初期設定部340は、AD変換用の比較処理前のセトリング時間の短縮のために動作させるだけでなく、AD変換処理が不要な場合に、電圧比較部252をスタンバイ状態にして、消費電力を低減したりコンパレート出力Comp1,Comp2が不安定になることを防止したりするためのスイッチとして用いることもできる。AD変換処理が不要な場合に、コンパレート出力Comp1を定常的に強制初期値Comp_sw に引っ張ることで、リセットレベルや信号レベルについてのAD変換用の比較処理に関係なく、コンパレート出力Comp1,Comp2を一定電位に維持できる。
スタンバイ状態にして、コンパレート出力Comp1を強制初期値Comp_sw に固定することで、電圧比較部252への入力値に関わらず、電圧比較部252は、固定値を出力するため、誤作動を防止できる。また、電圧比較部252のコンパレート出力Comp1と接続された増幅アンプ360への入力値が強制初期値Comp_sw で固定されるため、コンパレート出力Comp2をインアクティブ状態に維持できるだけでなく、増幅アンプ360での低消費電力化を図ることもできる。
<固体撮像装置の動作>
図4は、図1に示した固体撮像装置1のカラムAD回路25における基本動作である信号取得差分処理を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、基本動作を説明するべく、初期設定部340の動作を割愛して説明する。
画素アレイ部10の各単位画素3で感知されたアナログの画素信号をデジタル信号に変換する仕組みとしては、たとえば、所定の傾きで下降するランプ波形状の参照信号RAMPと単位画素3からの画素信号における基準成分や信号成分の各電圧とが一致する点を探し、この比較処理で用いる参照信号RAMPの生成時点から、画素信号における基準成分や信号成分に応じた電気信号と参照信号とが一致した時点までをカウントクロックでカウント(計数)することで、基準成分や信号成分の各大きさに対応した画素信号レベルのカウント値を得る手法を採る。
ここで、垂直信号線19から出力される画素信号Soは、時間系列として、基準レベルとしての画素信号の雑音を含むリセットレベルSrst の後に信号レベルSsig が現れるものである。1回目の処理を基準レベル(リセットレベルSrst ・事実上リセット成分ΔVと等価)について行なう場合、2回目の処理はリセットレベルSrst に信号成分Vsig を加えた信号レベルSsig についての処理となる。以下具体的に説明する。
1回目の読出しのため、先ず通信・タイミング制御部20は、カウンタ部254のカウント値を初期値“0”にリセットさせるとともに、カウンタ部254をダウンカウントモードに設定する。そして、読出対象行Vnの単位画素3から垂直信号線19(H0,H1,…)への1回目の読出しが安定した後、通信・タイミング制御部20は、比較器リセットパルスPSETをアクティブ(Lレベル)にして電圧比較部252をリセットする(t8〜t9)。 この動作により、各単位画素3のリセットレベルのバラツキおよび電圧比較部252自身のオフセット電圧を容量素子336,338へと記憶、吸収することができる。
次に、参照信号生成部27に向けて、参照信号RAMP生成用の制御データCN4を供給する(t10)。これを受けて、参照信号生成部27は、電圧比較部252の一方の入力端子RAMPへの比較電圧として、初期電圧RAMP_iniを始点として、全体として鋸歯状(RAMP状)に時間変化させた階段状の波形(RAMP波形)を入力する。電圧比較部252は、このRAMP波形の比較電圧と画素アレイ部10から供給される任意の垂直信号線19の画素信号電圧Vxとを比較する。
電圧比較部252の入力端子RAMPへの参照信号RAMPの入力と同時に、電圧比較部252における比較時間を、行ごとに配置されたカウンタ部254で計測するために、参照信号生成部27から発せられるランプ波形電圧に同期して、カウンタ部254のクロック端子に通信・タイミング制御部20からカウントクロックCK0を入力し、1回目のカウント動作として、初期値“0”からダウンカウントを開始する。すなわち、負の方向にカウント処理を開始する。
電圧比較部252は、参照信号生成部27からのランプ状の参照信号RAMPと垂直信号線19を介して入力される画素信号電圧Vxとを比較し、双方の電圧が同じになったときに、コンパレート出力をHレベルからLレベルへ反転させる。つまり、リセット成分Vrst に応じた電圧信号(リセットレベルSrst )と参照信号RAMPとを比較して、リセット成分Vrst の大きさに対応した時間軸方向に大きさを持っているアクティブLのパルス信号を生成して、カウンタ部254に供給する。
この結果を受けて、カウンタ部254は、コンパレート出力の反転とほぼ同時にカウント動作を停止し、その時点のカウント値を画素データとしてラッチ(保持・記憶)することでAD変換を完了する。つまり、電圧比較部252における比較処理によって得られる時間軸方向に大きさを持っているアクティブLのパルス信号の幅をカウントクロックCK0でカウント(計数)することで、リセットレベルSrst すなわちリセット成分Vrst の大きさに対応したカウント値を得る。
通信・タイミング制御部20は、所定のダウンカウント期間を経過すると、電圧比較部252への制御データの供給と、カウンタ部254へのカウントクロックCK0の供給とを停止する。これにより、参照信号生成部27は、ランプ状の参照信号RAMPの生成を停止する(t14)。
この1回目の読出し時は、画素信号電圧VxにおけるリセットレベルVrst を電圧比較部252で検知してカウント動作を行なっているので、単位画素3のリセット成分ΔVを読み出してリセットレベルVrst のAD変換を実施することになる。
このリセット成分ΔV内には、単位画素3ごとにばらつく雑音がオフセットとして含まれている。しかし、このリセット成分ΔVのばらつきは一般に小さく、またリセットレベルSrst は概ね全画素共通であるので、任意の垂直信号線19の画素信号電圧Vxにおけるリセット成分ΔVの出力値はおおよそ既知である。
加えて、比較器リセットパルスPSETにより電圧比較部252をリセットする際、1回目の読出電位で動作点が設定されるため、ゲインを上げた場合にもリセット成分ΔVのバラツキに関わらず、リセットレベルSrst が比較可能範囲を超えてしまうことが少なくなる。したがって、1回目のリセットレベルSrst についてのAD変換時には、参照信号RAMPを調整することにより、ダウンカウント期間(比較期間)を短くすることが可能である。たとえば、リセットレベルSrst についての比較処理の最長期間を、7ビット分のカウント期間(128クロック)にして、リセットレベルSrst (リセット成分ΔV)の比較を行なっている。
続いての2回目の読出し時には、リセット成分ΔVに加えて、単位画素3ごとの入射光量に応じた信号成分Vsig を読み出し、1回目の読出しと同様の動作を行なう。ただし、比較器リセットパルスPSETをオフ(Hレベル)したままとし、比較器リセットパルスPSETによる電圧比較部252のリセットを行なわない。
すなわち、先ず通信・タイミング制御部20は、カウンタ部254をアップカウントモードに設定する。そして、読出対象行Vnの単位画素3から垂直信号線19(H0,H1,…)への2回目の読出しが安定した後、通信・タイミング制御部20は、参照信号生成部27に向けて、参照信号RAMP生成用の制御データCN4を供給する(t20)。
これを受けて、参照信号生成部27は、電圧比較部252の一方の入力端子RAMPへの比較電圧として、初期電圧RAMP_iniを始点として、全体として鋸歯状(RAMP状)に時間変化させた階段状の波形(RAMP波形)を入力する。電圧比較部252は、このRAMP波形の比較電圧と画素アレイ部10から供給される任意の垂直信号線19の画素信号電圧Vxとを比較する。
電圧比較部252の入力端子RAMPへの参照信号RAMPの入力と同時に、電圧比較部252における比較時間を、行ごとに配置されたカウンタ部254で計測するために、参照信号生成部27から発せられるランプ波形電圧に同期して、カウンタ部254のクロック端子に通信・タイミング制御部20からカウントクロックCK0を入力し、2回目のカウント動作として、1回目の読出し時に取得された単位画素3のリセット成分ΔVに対応するカウント値から、1回目とは逆にアップカウントを開始する。すなわち、正の方向にカウント処理を開始する。
電圧比較部252は、参照信号生成部27からのランプ状の参照信号RAMPと垂直信号線19を介して入力される画素信号電圧Vxとを比較し、双方の電圧が同じになったときに、コンパレート出力をHレベルからLレベルへ反転させる(t22)。つまり、信号成分Vsig に応じた電圧信号(画素信号電圧Vxの信号レベルSsig )と参照信号RAMPとを比較して、信号成分Vsig の大きさに対応した時間軸方向に大きさを持っているアクティブLのパルス信号を生成して、カウンタ部254に供給する。
この結果を受けて、カウンタ部254は、コンパレート出力の反転とほぼ同時にカウント動作を停止し、その時点のカウント値を画素データとしてラッチ(保持・記憶)することでAD変換を完了する(t22)。つまり、電圧比較部252における比較処理によって得られる時間軸方向に大きさを持っているアクティブLのパルス信号の幅をカウントクロックCK0でカウント(計数)することで、画素信号電圧Vxにおける信号レベルSsig、換言すれば信号成分Vsig の大きさに対応したカウント値を得る。
通信・タイミング制御部20は、所定のダウンカウント期間を経過すると(t24)、電圧比較部252への制御データの供給と、カウンタ部254へのカウントクロックCK0の供給とを停止する。これにより、参照信号生成部27は、ランプ状の参照信号RAMPの生成を停止する。
この2回目の読出し時は、画素信号電圧Vxにおける信号レベルSsig を電圧比較部252で検知してカウント動作を行なっているので、単位画素3の信号成分Vsig を読み出して信号レベルSsig のAD変換を実施することになる。
ここで、本実施形態においては、カウンタ部254におけるカウント動作を、1回目の読出し時にはダウンカウント、2回目の読出し時にはアップカウントとしているので、カウンタ部254内で自動的に、リセットレベルSrst のAD変換結果と信号レベルSsig のAD変換結果との間での差分処理(減算処理)が行なわれ、この差分処理結果に応じたカウント値がカウンタ部254に保持される。この差分処理結果に応じたカウンタ部254に保持されるカウント値は信号成分Vsig に応じたものとなる。
つまり、上述のようにして、1回目の読出し時におけるダウンカウントと2回目の読出し時におけるアップカウントといった、2回の読出しとカウント処理によるカウンタ部254内での差分処理によって、単位画素3ごとのばらつきを含んだリセット成分ΔVとカラムAD回路25ごとのオフセット成分とを除去することができ、単位画素3ごとの入射光量に応じた信号成分Vsig のみを簡易な構成で取り出すことができる。この際、リセット雑音も除去できる利点がある。
よって、本実施形態のカラムAD回路25は、アナログの画素信号をデジタルの画素データに変換するデジタル変換部としてだけでなく、CDS(Correlated Double Sampling ;相関2重サンプリング)処理機能部としても動作することとなる。
また、カウンタ部254内に保持されたカウント値が示す画素データは正の信号電圧を示すので、補数演算などが不要となり、既存のシステムとの親和性が高い。
ここで、2回目の読出し時は、入射光量に応じた信号成分Vsig を読み出すので、光量の大小を広い範囲で判定するために、アップカウント期間(t20〜t24;比較期間)を広く取り、電圧比較部252に供給するランプ電圧を大きく変化させる必要がある。
そこで本実施形態では、信号レベルSsig についての比較処理の最長期間を、10ビット分のカウント期間(1024クロック)にして、信号レベルSsig の比較を行なっている。つまり、リセットレベルSrst (リセット成分ΔV,基準成分)についての比較処理の最長期間を、信号レベルSsig についての比較処理の最長期間よりも短くする。リセットレベルSrst と信号レベルSsig の双方の比較処理の最長期間すなわちAD変換期間の最大値を同じにするのではなく、リセットレベルSrst についての比較処理の最長期間を信号レベルSsig についての比較処理の最長期間よりも短くすることで、2回に亘るトータルのAD変換期間が短くなるように工夫する。
この場合、1回目と2回目との比較ビット数が異なるが、通信・タイミング制御部20から制御データを参照信号生成部27に供給して、この制御データに基づいて参照信号生成部27にてランプ電圧を生成するようにすることで、ランプ電圧の傾きすなわち参照信号RAMPの変化率を1回目と2回目とで同じにする。デジタル制御でランプ電圧を生成するので、ランプ電圧の傾きを1回目と2回目とで同じにすることが容易である。これにより、AD変換の精度を等しくできるため、アップダウンカウンタによる差分処理結果が正しく得られる。
また、本実施形態のカラムAD回路25では、カウンタ部254の後段にデータ記憶部256を備えており、カウンタ部254の動作前(t30)に、通信・タイミング制御部20からのメモリ転送指示パルスCN8に基づき、前行Hx−1のカウント結果をデータ記憶部256に転送する。
つまり、AD変換期間終了後、カウンタ部254内のデータをデータ記憶部256へと退避し、カラムAD回路25は次の行Vx+1のAD変換を開始する。データ記憶部256内のデータは、その裏で水平走査回路12により順に選択され、出力回路28を用いて読み出される。
データ記憶部256を備えない構成では、2回目の読出処理、すなわちAD変換処理が完了した後でなければ画素データをカラム処理部26の外部に出力することができないので、読出処理には制限があるのに対して、データ記憶部256を備えることで、1回目の読出処理(AD変換処理)に先立って前回の減算処理結果を示すカウント値をデータ記憶部256に転送しているので、読出処理には制限がない。
<シングルスロープ積分型AD変換方式の問題点の詳細>
図5は、シングルスロープ積分型AD変換方式の問題点、特に、アナログの単位信号とデジタルデータに変換するための参照信号RAMPとを比較する電圧比較部252の応答が、AD変換性能、特に変換処理速度に与える影響を説明する図である。なお、各タイミングにおいて、リセットレベルSrst のAD変換に関わる部分は40番台で示し、信号レベルSsig のAD変換に関わる部分は50番台で示す。
図3に示す電圧比較部252について説明したように、シングルスロープ積分型などと称されるAD変換方式を採る場合、あるレベルについてのAD変換用の比較処理完了後に、次のレベルのAD変換のために、AD変換用の比較結果を示すコンパレート出力のアクティブ状態(本例ではLレベル)を初期状態に戻してAD変換を開始するまで、この状態を維持しておく必要がある。ところが、初期設定部340を備えていない構成では、セトリング期間が長くなってしまう問題がある。
たとえば、画素アレイ部10から画素信号のリセット成分を読み出してリセットレベルSrst のAD変換用の比較処理(t40〜t42:リセットレベルSrst についての比較処理の最長期間)の完了後に、信号成分を読み出して信号レベルSsig のAD変換をする際、参照信号生成部27が、参照電圧RAMPを初期電圧RAMP_iniに戻しても(t42)、電圧比較部252のコンパレート出力Comp1が定常初期値Comp_iniまで戻ってくるまでの時間が遅くなる。なお、t44〜t47については後で説明する。
すなわち、リセットレベルSrst のAD変換のために電圧比較部252のコンパレート出力Comp1がインティブ状態である定常初期値Comp_iniからアクティブ状態であるLレベルに反転し、その後、信号レベルSsig のAD変換のために、参照電圧RAMPを初期電圧RAMP_iniに戻して、コンパレート出力Comp1をリセットレベルSrst のAD変換用の比較開始前と同じ定常初期値Comp_iniまで戻さなければならない。
本実施形態の電圧比較部252のように、アクティブ状態をLレベルにする場合には、定常初期値Comp_iniは電源電位に近い高電位である。つまり、リセットレベルSrst のAD変換時にアクティブ状態であるLレベル(低電位)となってしまったコンパレート出力Comp1は、上昇して定常初期値Comp_iniに戻るまで、大きな電圧変化を必要とする。
この出力部電位(コンパレート出力Comp1)のスルーレートは、電圧比較部252の接地側に接続された定電流源トランジスタ322の動作速度で規定される。つまり、定電流源トランジスタ322に流れる電流量によって、コンパレート出力Comp1の電圧変化速度は大きく影響される。電流量を増やすことで出力部電位のスルーレートの向上は望めるが、その分消費電流が増えることになる。逆に電流量を減らすと、電圧比較部252での消費電流は減るが、コンパレート出力Comp1がなかなか落ち着かず、高速に動作させることはできない。つまり、低消費電力と高速動作のトレードオフとなるため、簡単に定電流源トランジスタ322の電流量を調節することはできない。したがって、電流値を調節して出力部電位のスルーレートを大きく上げることを望むことはできない。
電圧比較部252のコンパレート出力Comp1が、比較動作前の定常初期値Comp_iniに戻るまでの時間が掛かるということは、信号レベルSsig のAD変換用の比較処理完了までの時間も増え、一度のCDS処理に時間が掛かるということにも繋がる。したがって、画素数が増え、CDS処理する回数が増えるほど時間が掛かってしまい、高性能化を図れば測るほど高速化が難しくなっていく。
なお、前述の説明は、リセットレベルのAD変換後の信号レベルのAD変換用に定常初期値Comp_iniに戻す際の問題について説明したが、次の単位画素3についてのリセットレベルのAD変換用に、前の単位画素3についての信号レベルのAD変換後に、参照電圧RAMPを初期電圧RAMP_iniに戻してコンパレート出力Comp1を定常初期値Comp_iniに戻す際にも、全く同様の現象が生じる(t52〜t53)。
さらに、初期設定部340を具備しない構成では、光量が少なく暗い状態で用いる場合、リセットレベルのAD変換後にコンパレート出力Comp1が定常初期値Comp_iniに戻るのを待っている期間に、単位画素3の読出選択用トランジスタ34に供給される転送パルスφTRGのカップリングにより、垂直信号線53(19)の電位が上がってしまい、参照信号RAMPを超えてしまう現象が現われる(t44〜t46)。
その結果、コンパレート出力Comp1は、リセットレベルのAD変換後に定常初期値Comp_iniに戻る途中で、再度、アクティブ状態のLレベルに反転してしまう。しかも、このときには、転送パルスφTRGを起因とする垂直信号線53(19)の電位と参照信号RAMPの初期値との差が大きく、リセットレベルのAD変換後のLレベルの電位Comp_rstよりも大幅に低い電位Comp_trgとなってしまう。
このため、転送パルスφTRGの供給が停止され、垂直信号線53(19)の電位が参照信号RAMPよりも下がり、再びコンパレート出力Comp1が電位Comp_trgから定常初期値Comp_iniに戻って(t47)、その状態が落ち着くまで(t50)、信号レベルSsig についてのAD変換処理用の比較処理を待たなければならない。
なお、リセットレベルSrst のAD変換後に定常初期値Comp_iniに戻るまでの期間(ここではt42〜t47)を、信号レベルAD変換用のセトリング期間と称する。このセトリング期間を短くできればできる程、信号レベルについてのAD変換用の比較処理期間を長くとることができる。換言すれば、比較処理期間を同じにする場合には、セトリング期間を短くする分だけ信号レベルについてのAD変換処理に要する総時間を短縮できる。また、セトリング期間を短くする時間分、信号レベルについてのAD変換用の参照信号RAMPの有効期間(傾きを持って変化する期間)を延ばすことができるので、従来と同じ期間内でより多くのビット幅を確保できるようになる。その結果、高解像度の画像を取得することができる。
ここで、コンパレート出力Comp1が電位Comp_trgから定常初期値Comp_iniに戻る期間(t46〜t47)は、定電流源トランジスタ322の動作電流で規定される出力部電位のスルーレートで決まる。
一方、信号レベルのAD変換後については、コンパレート出力Comp1が電位Comp_trgから定常初期値Comp_iniに戻る期間(t46〜t47)と同様であり、信号レベルSsig のAD変換処理(t50〜t52:信号レベルSsig についての比較処理の最長期間)の後に、電位Comp_sigから定常初期値Comp_iniに戻るまでの期間(t52〜t53)は、定電流源トランジスタ322の動作電流で規定される出力部電位のスルーレートで決まる。この電位Comp_sigから定常初期値Comp_iniに戻るまでの期間(t52〜t53)を、リセットレベルAD変換用のセトリング期間と称する。
ここで、単位画素3から画素信号VxをカラムAD回路25に読み出さなければ、当然にカラムAD回路25でのAD変換出力は得られず、画素信号Vxを読み出すためには、単位画素3内の読出選択用トランジスタ34に一定期間の転送パルスφTRG(高電位)を加えなければならない。
したがって、この転送パルスφTRGによるカップリングを起因として垂直信号線53の電位が上がることは避けがたい。ということは、リセットレベルのAD変換後に定常初期値Comp_iniに戻る途中で、画素信号Vxを読み出すための転送パルスφTRGがアクティブ(高電圧)になるとき、コンパレート出力Comp1もアクティブ状態であるLレベルに反転せざるを得ないことになる。
リセットレベルAD変換用のセトリング期間との比較においては、特に、このリセットレベルAD変換時の反転(t42)→AD変換後の戻り(t42〜t44)→転送パルスφTRGを起因とするセトリング待ち(t44〜t47)に要する、信号レベルAD変換用のセトリング期間が長く、AD変換処理やそれに付随したCDS処理の高速化へのネックとなってしまう。
<問題点のシミュレーション>
図6は、図5にて説明した問題点についてシミュレーションにより確認した結果を示す図である。なお、図中において、時間の単位である“μ(マイクロ)”は“u”で示している。また、P相の期間は、リセットレベルについての比較処理の最長期間であり、D相の期間は、信号レベルについての比較処理の最長期間である。
シミュレート条件としては、電源電圧は3.0V、電圧比較部252のコンパレート出力Comp1は、定常初期値Comp_iniが2.7V前後に落ち着くものとする。
図6から分かるように、P相での比較処理に先立ち、それ以前の処理対象画素のD相での比較処理によってコンパレート出力Comp1,Comp2が反転した後、一旦、コンパレート出力Comp1が初期電位Comp_iniに戻ってから、次の処理対象画素について、P相での比較処理を行なう。そして、P相での比較処理によってコンパレート出力Comp1,Comp2が反転した後、一旦、コンパレート出力Comp1が初期電位Comp_iniに戻ってから、D相での比較処理を行なう。
それぞれにおいて、コンパレート出力Comp1が初期電位Comp_iniに戻る際には、ある程度の時間を要していることが分かる(図中のA矢指部とB矢指部)。それに伴い、コンパレート出力Comp_out2の反転タイミングも遅れていることが分かる。
加えて、P相のAD変換処理後にD相の比較処理を開始するまでの待ち時間では、転送パルスφTRGによるカップリングノイズのため画素信号電圧Vxが急激に大きくなり(図中のC矢指部)、それに伴って、コンパレート出力Comp1は、P相での比較処理後に初期電位Comp_iniに戻ろうとする過程で(図中のD矢指部)、低電位側に反転してしまうことも分かる(図中のE矢指部)。その結果、転送パルスφTRGによるカップリングノイズが落ち着くまでは、コンパレート出力Comp1が初期電位Comp_iniに戻れない。
よって、P相でのAD変換処理後にD相についてAD変換処理を開始するまでの時間が長くなり、全体のAD変換処理(それに付随するCDS処理も)に要する時間がより長く掛ってしまう。後述するセトリング処理の第1例では、この問題を改善する。
また、詳細は後述するが、前の処理対象の単位画素3についてのD相のAD変換処理後に今回の処理対象の単位画素3についてのP相の比較処理を開始するまでの待ち時間におけるコンパレート出力Comp1のセトリング完了までの変化状態と(図中のF矢指部)、今回の処理対象の単位画素3についてのD相の比較処理を開始するまでの待ち時間におけるコンパレート出力Comp1のセトリング完了までの変化状態(図中のG矢指部)とが異なると、換言すれば、P相とD相の各AD変換処理時のセトリング条件が異なると、画素信号出力Vxが同一であってもコンパレート出力Comp1,Comp2の反転タイミングにずれが生じ、様々な不具合が生じてしまう。後述するセトリング処理の第2例では、この問題を改善する。
<<セトリング処理;信号レベルのAD変換時>>
図7は、セトリング期間を短縮するために設けられた初期設定部340の第1例の動作(セトリング処理)を説明する図である。特に断りのない限り、電圧比較部252の構成としては、スイッチトランジスタ342のソースSが電源に接続された図3(A)に示す基本構成例であり、強制初期値Comp_sw が電源電圧Vdに等しいものとして説明する。
初期設定部340の第1例のセトリング処理動作は、主に転送パルスφTRGを起因とする信号レベルAD変換用のセトリング期間を短縮する点に着目したものである。なお、各タイミングにおいて、リセットレベルSrst のAD変換に関わる部分は60番台で示し、信号レベルSsig のAD変換に関わる部分は70番台で示す。以下、図5との相違点を中心に説明する。
図3に示す電圧比較部252について説明したように、本実施形態の電圧比較部252は、初期設定制御パルスPini で制御されるスイッチトランジスタ342を有する初期設定部340を備えている。そして、AD変換用の比較処理完了後に、次のAD変換のために、予め、スイッチトランジスタ342のゲートにアクティブL(ロー)の初期設定制御パルスPini を供給してスイッチトランジスタ342をオンさせることで、コンパレート出力Comp1のアクティブ状態(本例ではLレベル)を、強制的かつ瞬時にインアクティブ状態(強制初期値Comp_sw :本例では電源電圧Vd)に戻してしまう。
たとえば、図7に示すように、リセットレベルSrst についてのAD変換用の比較処理(t60〜t61)の完了後で、かつリセットレベルSrst についての比較処理の最長期間が経過した後(t62以降)、単位画素3から信号成分Vsig を読み出すタイミングに合わせて、つまり、単位画素3の読出選択用トランジスタ34に転送パルスφTRGが供給されるタイミング(t64〜t66)に合わせて、スイッチトランジスタ342のゲートにアクティブLの初期設定制御パルスPini を供給してスイッチトランジスタ342をオンさせる(ts1〜te1)。
ここで、転送パルスφTRGのアクティブH(ハイ)の期間(t64〜t66)と初期設定制御パルスPini のアクティブLの期間(ts1〜te1)とのタイミング関係は、完全に一致している必要はない。
たとえば、初期設定制御パルスPini の供給開始タイミングに関しては、信号レベルAD変換用のセトリング期間を短縮することを目的とするのであるから、リセットレベルSrst についての比較処理の最長期間が経過した後(t62以降)であればよく、転送パルスφTRGの供給開始タイミング(t64)と一致している必要はない。たとえば、転送パルスφTRGを停止させる時点(t66)の直前に、初期設定制御パルスPini をアクティブLにしてもよい(ts1<t66)。
一方、停止タイミングに関しては、転送パルスφTRGの読出選択用トランジスタ34への供給が停止したときに(インアクティブになったときに)、概ね同時に、初期設定制御パルスPini のスイッチトランジスタ342への供給も停止する(インアクティブになる)ようにすればよい。各停止のタイミングが完全に同時でない場合は、何れか先で後であるかは問わない。
ただし、転送パルスφTRGの読出選択用トランジスタ34への供給が停止しても、転送パルスφTRGによるカップリングを起因とした垂直信号線53の電位は、即時には元のリセットレベルSrst には下がることができず遅れが生じる。その結果として、電圧比較部252のコンパレート出力Comp1が、アクティブ状態であるLレベルからインアクティブ状態に戻るのも遅れる。
この点を考慮すると、図7に示すように、転送パルスφTRGの読出選択用トランジスタ34への供給を停止する時点(t66)よりも少し前に(t66>te1)、初期設定制御パルスPini をインアクティブHにするのではなく、図示を割愛するが、転送パルスφTRGの読出選択用トランジスタ34への供給が停止して(t66)、少し遅れてから(t66<te1)、初期設定制御パルスPini をインアクティブHにするのが好ましいと考えられる。
このように、単位画素3の読出選択用トランジスタ34に対する転送パルスφTRGに合わせて、初期設定制御パルスPini を初期設定部340のスイッチトランジスタ342に供給してスイッチトランジスタ342をオンさせる。
こうすることで、コンパレート出力Comp1は、トランジスタ302に入力される画素信号のレベルに関係なく、強制的に強制初期値Comp_sw (=電源電圧Vd)へと引っぱられ、インアクティブ状態となる。
この電位の変化は、定電流源トランジスタ322を流れる電流量の制限を受けないため、スルーレートにも制限がない。このため、初期設定部340(スイッチトランジスタ342)を具備しない構成時のスルーレートに比べて、コンパレート出力Comp1は、非常に早く強制初期値Comp_sw へと引っぱられるため、瞬時にアクティブ状態(本例ではLレベル;低電位)からインアクティブ状態(強制初期値Comp_sw :本例ではHレベルに対応する電源電圧Vd)まで引き戻すことができ、セトリング時間を大幅に短縮することができる。
この後、信号レベルSsig についてのAD変換を開始するのに合わせて、スイッチトランジスタ342をオフさせれば(te1)、コンパレート出力Comp1は強制初期値Comp_sw (=電源電圧Vd)から定常初期値Comp_iniに戻り(t67)、信号レベルSsig についてのAD変換用の比較処理を開始することができる。
初期設定部340を備えていない構成では、垂直信号線53の画素信号電圧Vxが転送パルスφTRGのカップリングにより上昇して参照信号RAMPを超え、電圧比較部252のコンパレート出力Comp1がアクティブ状態(本例では電位Comp_rstよりも低電位の電位Comp_trg)となってしまう。
この場合、電位Comp_trgから電源電位に近い定常初期値Comp_iniまでの電位差が大きい上、電圧比較部252の出力部のスルーレートは定電流源トランジスタ322の電流量で規定されてしまうので、戻るのが非常に遅くなる。転送パルスφTRGによるカップリングの影響が停止したとしても、コンパレート出力Comp1が定常初期値Comp_iniに戻るのに時間が掛かってしまう。
これに対して、初期設定部340を備えた本実施形態の仕組み適用することで、垂直信号線53の画素信号電圧Vxにおいては転送パルスφTRGによるカップリングの影響があったしても、これに関係なく、コンパレート出力Comp1を、定常初期値Comp_iniに近い強制初期値Comp_sw (=電源電圧VdVD)に強制的にしておくことができる。
転送パルスφTRGによるカップリングの影響があり得る期間(t64〜t66)に合わせて、スイッチトランジスタ342をオンさせることで(ts1〜te1)、この間のコンパレート出力Comp1(=強制初期値Comp_sw )の定常初期値Comp_iniに対する電位差を大幅に縮小させることにより、セトリング時間(本例ではte1〜t67)を大幅に短縮することができる。
これにより、短縮されたセトリング時間の経過後には、即時に参照電圧RAMPを変化させてAD変換用の比較処理を開始することができる。スイッチトランジスタ342をオフさせてから(te1)、比較処理を開始するまで(t70)までの準備期間ΔTD(=te1〜t70)を短くすることができ、スイッチトランジスタ342を動作させない構成に比べて、信号レベルSsig (信号成分Vsig )に関してのAD変換に要する総時間を短縮できる。また、この総時間を変更しない場合、セトリング期間を短くする時間分だけ比較期間(t70〜t72)を延ばすことができるので、より多くのビット幅を確保でき、高解像度の画像を取得することができる。
なお、コンパレート出力Comp1が、スイッチトランジスタ342がオンしている期間(ts1〜te1における強制初期値Comp_sw から定常初期値Comp_iniに戻る期間(te1〜t67)は、定電流源トランジスタ322の動作電流で規定される出力部電位のスルーレートで決まるが、戻る際の電位差が大幅に縮小されているからである。
<シミュレーション;第1例>
図8は、図7にて説明した仕組みを適用した場合の効果を、シミュレーションにより確認した結果を示す図である。画素信号電圧Vxにおける信号レベルSsig についてのAD変換用の比較処理の前に、電圧比較部252のコンパレート出力Comp1が、定常初期値Comp_iniに戻る過程を、初期設定部340を備えていない場合と備えている場合とで比較して示している。なお、図中において、時間の単位である“μ(マイクロ)”は“u”で示している。
シミュレート条件としては、たとえば、電源電圧は3.0V、電圧比較部252のコンパレート出力Comp1は、定常初期値Comp_iniが2.7V前後に落ち着くものとする。
コンパレート出力Comp1は、スルーレートが定電流源トランジスタ322の電流量に規定されるため、定常初期値Comp_iniに近い方がより早く定常初期値Comp_iniに落ち着くことになる。
たとえば、2.4μsecの時点では、初期設定部340を備えていない構成では、コンパレート出力Comp1(電位Comp_trg)は1.3V付近まで低下している。電位Comp_trgと定常初期値Comp_iniとの差は、概ね“2.7V−1.3V=1.4V”となっている。
これに対して、初期設定部340を備えている構成では、初期設定部340のスイッチトランジスタ342がオンすることで、コンパレート出力Comp1(強制初期値Comp_sw )は電源電圧である3.0V付近まで引っ張られている。強制初期値Comp_sw と定常初期値Comp_iniとの差は、“3.0V−2.7V=0.3V”となり、初期設定部340を備えていない構成よりも遙かに小さくなっている。
初期設定部340のスイッチトランジスタ342がオフになり、コンパレート出力Comp1が定常初期値Comp_iniに戻る過程では、初期設定部340を備えていない構成では、2.8μsec付近まで掛かっている。セトリング時間は、概ね“2.8μsec−2.4μsec=400nsec”となっている。
これに対して、初期設定部340を備えている構成では、2.6μsec付近までで定常初期値Comp_iniに戻り、セトリング時間が早くなっていることが分かる。すなわち、スイッチトランジスタ342をオンさせてコンパレート出力Comp1を一旦電源電圧Vdにに引っ張ることで、本例のセトリング時間は、概ね“2.6μsec−2.4μsec=200nsec”となり、初期設定部340を備えていない構成のように自然にセトリングが完了するのを待つよりも、セトリング時間が200nsec程度短くなることが分かる。
なお、スイッチトランジスタ342をオンさせてコンパレート出力Comp1を一旦電源電圧Vdにに引っ張るようにしたことで、信号レベルSsig のAD変換処理時の準備期間におけるセトリング動作の振舞いとしては、高電位側(本例では電源電圧Vd=3V)から定常初期値Comp_ini(=2.7V)に向かって変化してセトリングが完了するようになる。この点は、このような仕組みを適用せずに、自然にセトリングが完了するのを待つ場合には、低電位側(本例では1.3V)から定常初期値Comp_ini(=2.7V)に向かって変化してセトリングが完了するのと異なる。
<<セトリング処理;リセットレベルのAD変換時>>
図9〜図11は、セトリング期間を短縮するために設けられた初期設定部340の第2例の動作(セトリング処理)を説明する図である。ここで、図9はセトリング処理の第2例を適用した場合のリセットレベルSrst のAD変換処理に着目したタイミングチャートである。図示を割愛しているが、信号レベルSsig のAD変換処理時には、前述のセトリング処理の第1例を実施している。各タイミングにおいて、信号レベルSsig のAD変換に関わる部分は80番台で示し、リセットレベルSrst のAD変換に関わる部分は90番台で示す。
初期設定部340の第2例のセトリング処理動作は、AD変換用の比較処理に先立つ、電圧比較部252の出力(コンパレート出力Comp1)が定常初期値Comp_iniに達するまでの準備期間におけるセトリング動作の振舞いに着目したものである。具体的には、信号レベルSsig (信号成分Vsig )についてのAD変換とリセットレベルSrst (リセット成分Vrst )についてのAD変換処理のセトリング条件を揃える点に特徴を有する。
ここで、「AD変換処理のセトリング条件を揃える」とは、信号レベルSsig やリセットレベルSrst についてAD変換処理用の比較処理を開始するに当たり、参照電圧RAMPの変化が開始する直前の、コンパレート出力Comp1が定常初期値Comp_iniに達するまでの準備期間におけるセトリング動作の振舞いを何れにおいても同じすることを意味する。AD変換処理に付随してなされるCDS処理結果の精度を上げることを目的とするものである。「準備期間におけるセトリング動作の振舞い」とは、高電位側から定常初期値Comp_iniに向かって変化してセトリングが完了するのか、低電位側から定常初期値Comp_iniに向かって変化してセトリングが完了するのか、つまり各AD変換処理における比較処理に先立つコンパレート出力Comp1の初期電位Comp_iniへの収束状態を意味する。
たとえば、信号レベルSsig のAD変換処理時に高電位側からセトリングが完了する場合には、リセットレベルSrst についてのAD変換処理時にも、高電位側からセトリングが完了するようにする。これが適用されるのは、電圧比較部252として、スイッチトランジスタ342のソースSを電源に接続した図3(A)に示す基本構成例とした場合や、図3(B)に示す変形構成例のように初期値生成部344を設ける場合において、初期値生成部344から出力される強制初期値Comp_sw を定常初期値Comp_iniに近くかつそれよりも少し大きな電源電圧Vd側の値とする場合である。
一方、信号レベルSsig のAD変換処理時に低電位側からセトリングが完了する場合には、リセットレベルSrst についてのAD変換処理時にも、低電位側からセトリングが完了するようにする。これが適用されるのは、図3(B)に示す変形構成例のように初期値生成部344を設ける場合において、初期値生成部344から出力される強制初期値Comp_sw を定常初期値Comp_iniに近くかつそれよりも少し小さな値とする場合である。
以下、図7との相違点を中心に説明する。先ずは、特に断りのない限り、電圧比較部252の構成としては、スイッチトランジスタ342のソースSが電源に接続された図3(A)に示す基本構成例であり、強制初期値Comp_sw が電源電圧Vdに等しいものとして説明する。
電圧比較部252が画素信号電圧Vxと参照信号RAMPとの比較動作をするのは、信号レベルについてのAD変換時だけでなく、リセットレベルについてのAD変換時も、当然に比較動作を行なう。したがって、このリセットレベルについてのAD変換用の比較処理に先立って、参照電圧RAMPを初期電位Comp_iniに戻して、電圧比較部252のコンパレート出力Comp1を比較動作前の定常初期値Comp_iniに戻しておく(t82〜t83)。
本実施形態の電圧比較部252の構成では、動作点リセット部330を設けており、さらに、単位画素3をリセットする画素リセットパルスRST をアクティブHにしている期間(t90〜t91)をカバーするように比較器リセットパルスPSETをアクティブHにすることで(t8〜t9)、差動トランジスタ対部300の動作点をトランジスタ302,304のドレイン電圧にリセットする。これにより、比較器リセットパルスPSETがアクティブHの期間は、コンパレート出力Comp1が電位Comp_pset に固定される。
さらに、この第2例では、信号レベルSsig についてのAD変換用の比較処理(t92〜t93)の完了後で、かつ信号レベルSsig についての比較処理の最長期間が経過した後(t94以降)、単位画素3からリセット成分Vrst を読み出すタイミングに合わせて、スイッチトランジスタ342のゲートにアクティブLの初期設定制御パルスPini を供給してスイッチトランジスタ342をオンさせる(ts2〜te2)。
ここで、画素リセットパルスRST や比較器リセットパルスPSETのアクティブ期間と初期設定制御パルスPini のアクティブLの期間(ts2〜te2)とのタイミング関係は、完全に一致している必要はない。
たとえば、初期設定制御パルスPini の供給開始タイミングに関しては、当該単位画素3よりも前の処理対象の単位画素3に関して、信号レベルSsig についての比較処理の最長期間が経過した後(t94以降)であればよく、画素リセットパルスRST の供給開始タイミング(t90)や比較器リセットパルスPSETの供給開始タイミング(t8)と一致している必要はない。
ただし、実体面としては、比較器リセットパルスPSETによりコンパレート出力Comp1の動作点を電位Comp_pset に固定する機能に対して悪影響を与えないようにすることが好ましく、比較器リセットパルスPSETをインアクティブLにした後(t9)に、初期設定制御パルスPini をアクティブLにするのがよい(ts2>t9)。
一方、停止タイミングに関しては、AD変換用の比較処理を開始するのと概ね同時に、初期設定制御パルスPini のスイッチトランジスタ342への供給も停止する(インアクティブHになる)ようにすればよい。ここで、初期設定制御パルスPini をインアクティブHにしても、コンパレート出力Comp1は即時には初期電位Comp_iniに戻ることができず遅れが生じる。
この点を考慮すると、図9に示すように、AD変換用の比較処理を開始する時点(t92)よりも少し前に(t92>te2)、初期設定制御パルスPini を停止するのではなく、図示を割愛するが、転送パルスφTRGの読出選択用トランジスタ34への供給が停止して(t66)、少し遅れてから(t66<te1)、初期設定制御パルスPini をインアクティブHにするのが好ましいと考えられる。
なお、さらに好ましくは、スイッチトランジスタ342をオフさせてから(te2)、比較処理を開始するまで(t92)までの準備期間ΔTP(=te2〜t92)は、信号レベルSsig についてのAD変換時において、スイッチトランジスタ342をオフさせてから比較処理を開始するまでまでの準備期間ΔTD(=te1〜t70)と同じにするのがよい。信号レベルSsig とリセットレベルSrst の各AD変換時の準備期間におけるセトリング動作の振舞いを同じにする際に、各準備期間ΔTP,ΔTDを相当程度(極めて)に短くした場合でも、AD変換処理に付随してなされるCDS処理結果の精度を上げるためである(詳細は後述する)。
初期設定制御パルスPini をアクティブLにしている期間(ts2〜te2)では、コンパレート出力Comp1は、トランジスタ302に入力される画素信号のレベルに関係なく、強制的に強制初期値Comp_sw (=電源電圧Vd)へと引っぱられインアクティブ状態となる。
リセットレベルSrst についてのAD変換を開始するのに合わせて、スイッチトランジスタ342をオフさせれば(te2)、コンパレート出力Comp1は強制初期値Comp_sw (=電源電圧Vd)から定常初期値Comp_iniに戻り、リセットレベルSrst についてのAD変換用の比較処理を開始することができる。
<セトリング処理の第2例の意義>
図10〜図12は、図9に示したセトリング処理の第2例を適用することの意義を説明する図である。ここで、図10および図11は、セトリング方向の違いによって生じる問題点の詳細を説明する図であり、図12はその対処方法の概念を説明する図である。
リセットレベルSrst のAD変換処理時に比較処理を開始するのに先立ってスイッチトランジスタ342をオンさせる仕組みを適用しないと、リセットレベルSrst のAD変換処理時の準備期間におけるセトリング動作の振舞いとしては、低電位側(本例では比較器リセットパルスPSETによる電位Comp_pset )から定常初期値Comp_iniに向かって変化してセトリングが完了する。
一方、このリセットレベルSrst についてのAD変換前の信号レベルSsig のAD変換処理時には、セトリング処理の第1例を実施しているので、高電位側(本例では電源電圧Vd)から定常初期値Comp_iniに向かって変化してセトリングが完了する。その結果、信号レベルSsig とリセットレベルSrst の各AD変換時の準備期間におけるセトリング動作の振舞いが異なることになる。
この準備期間におけるセトリング動作の振舞いの相違は、本来であれば(理想的には)、コンパレート出力Comp1,Comp2に影響を与えないはずである。すなわち、図10(A)に示すように、高電位側からでも低電位側からでも、セトリング完了時には、コンパレート出力Comp1の電位は、完全に同電位(=初期電位Comp_ini)に落ち着くはずである。
セトリング完了時のコンパレート出力Comp1の電位が初期電位Comp_iniで同じであれば、リセットレベルSrst および信号レベルSsig についてのAD変換処理時に、同一の画素信号レベルに関しては、コンパレート出力Comp1,Comp2が反転するタイミングは完全に同じになるはずである。
しかしながら、本願発明者の調査によれば、準備期間ΔTD,ΔTPを十分に長くとらずに実際に動作させるような短い期間では、図10(B)に示すように、高電位側からと低電位側からではセトリングが完了するときのコンパレート出力Comp1の電位が完全に同電にはならないということが分かった。
さらに、高電位側から定常初期値Comp_iniに向かって変化してセトリングが完了するときの定常初期値Comp_iniH と、低電位側から定常初期値Comp_iniに向かって変化してセトリングが完了するときの定常初期値Comp_iniL とで差ΔComp_iniが生じてしまうと、つまりセトリングが未完了であると、AD変換処理やそれに付随するCDS処理の初期状態がずれ、CDS処理結果の精度が低下し、最終的には、縦筋ノイズが画像に現われるということが分かった。
セトリング処理の第1例を適用して、信号レベルについてのAD変換時に強制初期化動作を実行すると、AD変換精度やそれに付随するリセットレベルと信号レベルとの差をとる処理(CDS処理)の精度を低下させる可能性があるということである。
すなわち、図11に示すように、垂直信号線19の電位(画素信号電圧Vx)が同一であっても、先ず、コンパレート出力Comp1が反転する際の電位変化の状態が理想の状態からずれてしまい(反転タイミングがずれてしまい)、その影響が、コンパレート出力Comp2の反転タイミングのずれとなって現われてしまう。
このようなコンパレート出力Comp1,Comp2の反転タイミングのずれは、カラムごとに発生し、そのずれの具合がカラムごとにランダムに起こると、リセットレベルと信号レベルとでそれぞれでランダム成分が発生し、CDS処理結果の精度がカラムごとに違うことになる。
列ごとに設けられたカラムAD回路25の電圧比較部252でAD変換用の比較処理を実行するので、反転タイミングずれが本質的に列相関性を持って現れ易い特徴があり、反転タイミングずれのレベルが小さくても、それが縦筋ノイズとなって画像に現れ、視覚的にも感知され易い傾向がある。
反転タイミングずれのレベルが同じであっても、それが列ごとに蓄積し縦筋模様として認識される場合と、不規則に分布している場合では、人間の感じ方は大きく異なり、不規則に分布している場合の方がずっと自然に受け入れることができる。これは、幾何学的なパターン認識ができる場合は、どうしてもそこに意識が集中してしまうという人間の認知心理学的な特性によるものである。
このような問題を解消するには、準備期間ΔTD,ΔTPを十分に長くとればよいが、CDS処理結果に影響ないレベルまで待つと時間が掛り過ぎる。
これに対して、図9に示したように、リセットレベルSrst のAD変換処理時にも、比較処理を開始するのに先立ってスイッチトランジスタ342をオンさせてコンパレート出力Comp1を強制的に強制初期値Comp_sw に設定する仕組みを適用すれば、信号レベルSsig とリセットレベルSrst の各AD変換時の準備期間におけるセトリング動作の振舞いを同じにできる、つまり信号レベルSsig のAD変換とリセットレベルSrst のAD変換処理のセトリング条件を揃えることができる。
より詳細には、図12(A)に示す第1例のように、P相およびD相の何れも高電位側からセトリングが完了するようにすれば、同じようなセトリング動作の振舞いをするようになり、同一の画素信号電圧Vxに対してはコンパレート出力Comp1の反転タイミングずれは生じない。コンパレート出力Comp1の変化がほぼ高電位側の定常初期値Comp_iniH に収束した時点(T0)で比較処理を開始することができ、コンパレート出力Comp1が初期電位Comp_iniに達するまで待たなくてもよくなる。
また、コンパレート出力Comp1の変化がほぼ高電位側の定常初期値Comp_iniH に収束した時点(T0)以降では、P相の準備期間ΔTPとD相の準備期間ΔTDとに差があっても問題ない。コンパレート出力Comp1がほぼ定常初期値Comp_iniH に収束し切っているので、準備期間ΔTP,ΔTDに差があってもコンパレート出力Comp1の差は殆ど生じないからである。
これに対して、コンパレート出力Comp1の変化がほぼ高電位側の定常初期値Comp_iniH に収束する時点(T0)以前では、P相の準備期間ΔTPとD相の準備期間ΔTDとを同一にしておくことが好ましい。コンパレート出力Comp1が未だ定常初期値Comp_iniH に収束し切っていないので、準備期間ΔTP,ΔTDに差があるとコンパレート出力Comp1に差が生じ、同一の画素信号電圧Vxに対してコンパレート出力Comp1の反転タイミングずれが生じる可能性があるからである。つまり、各準備期間ΔTP,ΔTDを相当程度(極めて)に短くする場合には、P相とD相の各AD変換処理時に何れも高電位側からセトリングするようにする場合であっても準備期間ΔTP,ΔTDを同一にしておくことが好ましいのである。
このようにすることで、CDS処理結果の精度を上げることができ、縦筋ノイズの問題を招くことなく、AD変換処理時間を短縮したり、より多くのビット幅を確保して高解像度の画像を取得したりすることができる。
前記の説明から理解されるように、セトリング処理の第2例を適用する図9に示した処理タイミングとする制御によって、信号レベルについての比較処理に先立って、電圧比較部252の比較出力(コンパレート出力Comp1)をインアクティブの強制初期値Comp_sw に設定する際に、リセットレベル(リセット成分)と信号レベル(信号成分)の各AD変換処理における比較処理に先立つコンパレート出力Comp1の初期電位Comp_iniへの収束状態(準備期間におけるセトリング動作の振舞い)を同一にするセトリング動作制御部の機能が実現される。
図9に示した例では、電圧比較部252の構成として、スイッチトランジスタ342のソースSが電源に接続された図3(A)に示す基本構成例で説明したが、このことは必須ではない。信号レベルとリセットレベルについての各比較処理に先立つコンパレート出力Comp1が初期電位Comp_iniに向かって変化するときの振舞い(特に高電位側から収束するのか低電位側から収束するのか)が同一になるようにすればよいのである。
たとえば、図3(B)に示す変形構成例のように初期値生成部344を設ける場合において、初期値生成部344から出力される強制初期値Comp_sw を定常初期値Comp_iniに近くかつそれよりも少し大きな電源電圧Vd側の値とする場合には、図9に示した制御タイミングと同じように、信号レベルとリセットレベルの両AD変換処理時の各比較処理に先立って、スイッチトランジスタ342を初期設定制御パルスPini でオンさせるように制御すればよい。
一方、図3(B)に示す変形構成例のように初期値生成部344を設ける場合において、初期値生成部344から出力される強制初期値Comp_sw を定常初期値Comp_iniに近くかつそれよりも少し小さな値とする場合には、図7に示した制御タイミングと同じように、信号レベルのAD変換処理時にのみ、比較処理に先立って、スイッチトランジスタ342を初期設定制御パルスPini でオンさせるように制御するだけでよい。
図3(B)に示す変形構成例のように初期値生成部344を設ける場合において、初期値生成部344から出力される強制初期値Comp_sw を定常初期値Comp_iniに近くかつそれよりも少し小さな値とする場合において、D相側とP相側の双方について比較処理前にコンパレート出力Comp1を強制初期値Comp_sw にする強制的な初期化動作を実行することを排除するものではないが、この場合には、P相側についての強制的な初期化動作は必須ではないのである。
何故なら、この場合には、信号レベルのAD変換処理時に、比較処理に先立ってスイッチトランジスタ342をオンさせたときのコンパレート出力Comp1の定常初期値Comp_iniに達するまでの準備期間におけるセトリング動作の振舞いは、スイッチトランジスタ342をオンさせない場合の振舞いと同じく、低電位側からセトリングが完了するようになるからである。結果的には、D相側についてのみ強制的な初期化動作を実行するだけで、P相とD相のセトリング方向が一致するからである。
換言すれば、図3(B)に示す変形構成例のように初期値生成部344を設け、初期値生成部344から出力される強制初期値Comp_sw を定常初期値Comp_iniに近くかつそれよりも少し小さな値とし、信号レベルのAD変換処理時にのみ、比較処理に先立って、スイッチトランジスタ342を初期設定制御パルスPini でオンさせるように制御することによって、リセットレベル(リセット成分)と信号レベル(信号成分)の各AD変換処理における比較処理に先立つコンパレート出力Comp1の初期電位Comp_iniへの収束状態(準備期間におけるセトリング動作の振舞い)を同一にするセトリング動作制御部の機能が実現される。
より詳細には、図12(B)に示す第2例のように、D相側についてのみ強制的な初期化動作を実行してP相およびD相の何れも低電位側からセトリングが完了するようにすれば、同じようなセトリング動作の振舞いをするようになり、同一の画素信号電圧Vxに対してはコンパレート出力Comp1の反転タイミングずれは生じない。
コンパレート出力Comp1の変化がほぼ低電位側の定常初期値Comp_iniL に収束した時点(T0)で比較処理を開始することができ、コンパレート出力Comp1が初期電位Comp_iniに達するまで待たなくてもよくなる。
特に、強制初期値Comp_sw を比較器リセットパルスPSETによる電位Comp_pset と同じにすれば、事実上、動作点リセット部330による処理によってP相側の強制初期化動作を実行したのと同じようになり、かつセトリング動作を開始する電位を同じにできる。
なお、図12(C)に示す第3例のように、初期値生成部344を設け、初期値生成部344から出力される強制初期値Comp_sw を定常初期値Comp_iniに近くかつそれよりも少し小さな値とする場合にも、D相側だけでなくP相側についても強制的な初期化動作を実行してもよい。
D相側だけに強制初期化動作を実行させる場合、セトリングの方向は同一になるが、強制初期値Comp_sw を比較器リセットパルスPSETによる電位Comp_pset と同じにしない場合には、セトリング動作を開始する電位が異なり、その影響を受け得るのに対して、D相側だけでなくP相側についても、同じ強制初期値Comp_sw からセトリング動作を開始させることができる利点が得られる。
この場合は、準備期間ΔTP,ΔTDに関しては以下のようにする。先ず、コンパレート出力Comp1の変化がほぼ低電位側の定常初期値Comp_iniL に収束した時点(T0)以降では、P相の準備期間ΔTPとD相の準備期間ΔTDとに差があっても問題ない。コンパレート出力Comp1がほぼ定常初期値Comp_iniL に収束し切っているので、準備期間ΔTP,ΔTDに差があってもコンパレート出力Comp1の差は殆ど生じないからである。
これに対して、コンパレート出力Comp1の変化がほぼ低電位側の定常初期値Comp_iniL に収束する時点(T0)以前では、P相の準備期間ΔTPとD相の準備期間ΔTDとを同一にしておくことが好ましい。コンパレート出力Comp1が未だ定常初期値Comp_iniL に収束し切っていないので、準備期間ΔTP,ΔTDに差があるとコンパレート出力Comp1に差が生じ、同一の画素信号電圧Vxに対してコンパレート出力Comp1の反転タイミングずれが生じる可能性があるからである。つまり、各準備期間ΔTP,ΔTDを相当程度(極めて)に短くする場合には、P相とD相の各AD変換処理時に何れも低電位側からセトリングするようにする場合であっても準備期間ΔTP,ΔTDを同一にしておくことが好ましいのである。
セトリング処理の第1例で説明したように、初期設定部340を設けて、コンパレート出力を強制的にインアクティブ状態の強制初期値Comp_sw にする仕組みを採ることで、D相(信号レベル,信号成分)のAD変換処理時に、コンパレート出力Comp1のセトリング時間を大幅に短縮することができる。この結果、次のような効果が得られる。
たとえば、1回のCDS処理に要する時間が短くなるので、フレームレートを大きくすることができる。また、削減された時間分、リセットレベルや信号レベルについてのAD変換用の参照信号RAMPの最長期間を延ばすことでビット数を増やすことができるので、初期設定部340を設けない構成と同じ期間内で、より高解像度の画像を出力できる。
このとき、セトリング処理の第2例も適用するようにすれば、つまり、P相(リセットレベル,リセット成分)のAD変換処理時とD相(信号レベル,信号成分)のAD変換処理時の各セトリング条件を同一にすることで、信号レベルについてのAD変換時に強制初期化動作を実行しても、AD変換精度やそれに付随するCDS処理の精度を低下させることがなく、縦筋ノイズの問題を発生させることなく、セトリング処理の第1例による効果を享受できる。
<撮像装置>
図13は、前述の固体撮像装置1と同様の仕組みを利用した物理情報取得装置の一例である撮像装置の概略構成を示す図である。この撮像装置8は、可視光カラー画像を得る撮像装置になっている。
前述した固体撮像装置1の仕組みは固体撮像装置のみではなく、撮像装置にも適用可能である。この場合、撮像装置としても、カラム処理部26のカラムAD回路25を構成する電圧比較部252に初期設定部340を設けて、コンパレート出力を強制的にインアクティブ状態の強制初期値Comp_sw にする仕組みを採ることで、コンパレート出力のセトリング時間を短縮することができる。
この際、初期設定部340のスイッチトランジスタ342を制御する初期設定制御パルスPini のオン/オフタイミングは、その他のタイミングパルス(たとえば単位画素3を駆動する転送パルスφTRGやリセットパルスφRST、あるいは電圧比較部252用の比較器リセットパルスPSETなど)と同様に、外部の主制御部から通信・タイミング制御部20に対するデータ設定で任意に指定できるようにする。
具体的には、撮像装置8は、蛍光灯などの照明装置801の下にある被写体Zの像を担持する光Lを撮像装置側に導光して結像させる撮影レンズ802と、光学ローパスフィルタ804と、たとえばR,G,Bの色フィルタがベイヤ配列とされている色フィルタ群812、および画素アレイ部10と、画素アレイ部10を駆動する駆動制御部7と、画素アレイ部10から出力された画素信号に対してCDS処理やAD変換処理などを施すカラム処理部26と、カラム処理部26に参照信号RAMPを供給する参照信号生成部27と、カラム処理部26から出力された撮像信号を処理するカメラ信号処理部810を備えている。
光学ローパスフィルタ804は、折返し歪みを防ぐために、ナイキスト周波数以上の高周波成分を遮断するためのものである。また、図中に点線で示しように、光学ローパスフィルタ804と合わせて、赤外光成分を低減させる赤外光カットフィルタ805を設けることもできる。この点は、一般的な撮像装置と同様である。
カラム処理部26の後段に設けられたカメラ信号処理部810は、撮像信号処理部820と、撮像装置8の全体を制御する主制御部として機能するカメラ制御部900とを有する。
撮像信号処理部820は、色フィルタとして原色フィルタ以外のものが使用されているときにカラム処理部26のAD変換機能部から供給されるデジタル撮像信号をR(赤),G(緑),B(青)の原色信号に分離する原色分離機能を具備した信号分離部822と、信号分離部822によって分離された原色信号R,G,Bに基づいて色信号Cに関しての信号処理を行なう色信号処理部830とを有する。
また撮像信号処理部820は、信号分離部822によって分離された原色信号R,G,Bに基づいて輝度信号Yに関しての信号処理を行なう輝度信号処理部840と、輝度信号Y/色信号Cに基づいて映像信号VDを生成するエンコーダ部860とを有する。
色信号処理部830は、図示を割愛するが、たとえば、ホワイトバランスアンプ、ガンマ補正部、色差マトリクス部などを有する。ホワイトバランスアンプは、図示しないホワイトバランスコントローラから供給されるゲイン信号に基づき、信号分離部822の原色分離機能部から供給される原色信号のゲインを調整(ホワイトバランス調整)し、ガンマ補正部および輝度信号処理部840に供給する。
ガンマ補正部は、ホワイトバランスが調整された原色信号に基づいて、忠実な色再現のためのガンマ(γ)補正を行ない、ガンマ補正された各色用の出力信号R,G,Bを色差マトリクス部に入力する。色差マトリクス部は、色差マトリクス処理を行なって得た色差信号R−Y,B−Yをエンコーダ部860に入力する。
輝度信号処理部840は、図示を割愛するが、たとえば、信号分離部822の原色分離機能部から供給される原色信号に基づいて比較的周波数が高い成分までをも含む輝度信号YHを生成する高周波輝度信号生成部と、ホワイトバランスアンプから供給されるホワイトバランスが調整された原色信号に基づいて比較的周波数が低い成分のみを含む輝度信号YLを生成する低周波輝度信号生成部と、2種類の輝度信号YH,YLに基づいて輝度信号Yを生成しエンコーダ部860に供給する輝度信号生成部とを有する。
エンコーダ部860は、色信号副搬送波に対応するデジタル信号で色差信号R−Y,B−Yをデジタル変調した後、輝度信号処理部840にて生成された輝度信号Yと合成して、デジタル映像信号VD(=Y+S+C;Sは同期信号、Cはクロマ信号)に変換する。
エンコーダ部860から出力されたデジタル映像信号VDは、さらに後段の図示を割愛したカメラ信号出力部に供給され、モニター出力や記録メディアへのデータ記録などに供される。この際、必要に応じて、DA変換によってデジタル映像信号VDがアナログ映像信号Vに変換される。
本実施形態のカメラ制御部900は、コンピュータが行なう演算と制御の機能を超小型の集積回路に集約させたCPU(Central Processing Unit )を代表例とする電子計算機の中枢をなすマイクロプロセッサ(microprocessor)902と、読出専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)904、随時書込みおよび読出しが可能であるとともに揮発性の記憶部の一例であるRAM(Random Access Memory)906と、図示を割愛したその他の周辺部材を有している。マイクロプロセッサ902、ROM904、およびRAM906を纏めて、マイクロコンピュータ(microcomputer )とも称する。
なお、上記において“揮発性の記憶部”とは、装置の電源がオフされた場合には、記憶内容を消滅してしまう形態の記憶部を意味する。一方、“不揮発性の記憶部”とは、装置のメイン電源がオフされた場合でも、記憶内容を保持し続ける形態の記憶部を意味する。記憶内容を保持し続けることができるものであればよく、半導体製のメモリ素子自体が不揮発性を有するものに限らず、バックアップ電源を備えることで、揮発性のメモリ素子を“不揮発性”を呈するように構成するものであってもよい。
また、半導体製のメモリ素子により構成することに限らず、磁気ディスクや光ディスクなどの媒体を利用して構成してもよい。たとえば、ハードディスク装置を不揮発性の記憶部として利用できる。また、CD−ROMなどの記録媒体から情報を読み出す構成を採ることでも不揮発性の記憶部として利用できる。
カメラ制御部900は、システム全体を制御するものであり、特に前述の初期設定部340との関係においては、画素アレイ部10やカラム処理部26を制御する各種の制御パルスのオン/オフタイミングを調整する機能を有している。特に、電圧比較部252に設けられた初期設定部340との関係においては、初期設定部340のスイッチトランジスタ342を制御するための初期設定制御パルスPini のオン/オフタイミングを制御する制御部としての機能を持つ。
ROM904にはカメラ制御部900の制御プログラムなどが格納されているが、特に本例では、カメラ制御部900によって、各種の制御パルスのオン/オフタイミングを設定するためのプログラムが格納されている。
RAM906にはカメラ制御部900が各種処理を行なうためのデータなどが格納されている。
また、カメラ制御部900は、メモリカードなどの記録媒体924を挿脱可能に構成し、またインターネットなどの通信網との接続が可能に構成している。たとえば、カメラ制御部900は、マイクロプロセッサ902、ROM904、およびRAM906の他に、メモリ読出部907および通信I/F(インタフェース)908を備える。
記録媒体924は、たとえば、マイクロプロセッサ902にソフトウェア処理をさせるためのプログラムデータや、輝度信号処理部840からの輝度系信号に基づく測光データDLの収束範囲や露光制御処理(電子シャッタ制御を含む)並びに初期設定部340を駆動する初期設定制御パルスPini のオン/オフタイミングをも考慮した各種の制御パルスのオン/オフタイミングなど、様々な設定値などのデータを登録するなどのために利用される。
メモリ読出部907は、記録媒体924から読み出したデータをRAM906に格納(インストール)する。通信I/F908は、インターネットなどの通信網との間の通信データの受け渡しを仲介する。
なお、このような撮像装置8は、駆動制御部7およびカラム処理部26を、画素アレイ部10と別体にしてモジュール状のもので示しているが、固体撮像装置1について述べたように、これらが画素アレイ部10と同一の半導体基板上に一体的に形成されたワンチップものの固体撮像装置1を利用してもよいのは言うまでもない。
また、図では、画素アレイ部10や駆動制御部7やカラム処理部26やカメラ信号処理部810の他に、撮影レンズ802、光学ローパスフィルタ804、あるいは赤外光カットフィルタ805などの光学系をも含む状態で、撮像装置8を示しており、この態様は、これらを纏めてパッケージングされた撮像機能を有するモジュール状の形態とする場合に好適である。
ここで、前述の固体撮像装置1におけるモジュールとの関係においては、図示のように、画素アレイ部10(撮像部)と、AD変換機能や差分(CDS)処理機能を具備したカラム処理部26などの画素アレイ部10側と密接に関連した信号処理部(カラム処理部26の後段のカメラ信号処理部は除く)が纏めてパッケージングされた状態で撮像機能を有するモジュール状の形態で固体撮像装置1を提供するようにし、そのモジュール状の形態で提供された固体撮像装置1の後段に、残りの信号処理部であるカメラ信号処理部810を設けて撮像装置8の全体を構成するようにしてもよい。
または、図示を割愛するが、画素アレイ部10と撮影レンズ802などの光学系とが纏めてパッケージングされた状態で撮像機能を有するモジュール状の形態で固体撮像装置1を提供するようにし、そのモジュール状の形態で提供された固体撮像装置1に加えて、カメラ信号処理部810をもモジュール内に設けて、撮像装置8の全体を構成するようにしてもよい。
また、固体撮像装置1におけるモジュールの形態として、カメラ信号処理部200に相当するカメラ信号処理部810を含めてもよく、この場合には、事実上、固体撮像装置1と撮像装置8とが同一のものと見なすこともできる。
このような撮像装置8は、「撮像」を行なうための、たとえば、カメラや撮像機能を有する携帯機器として提供される。なお、「撮像」は、通常のカメラ撮影時の像の撮り込みだけではなく、広義の意味として、指紋検出なども含むものである。
このような構成の撮像装置8においては、前述の固体撮像装置1の全ての機能を包含して構成されており、前述の固体撮像装置1の基本的な構成および動作と同様とすることができ、コンパレート出力を強制的にインアクティブ状態の強制初期値Comp_sw にする仕組みを採ることで、コンパレート出力のセトリング時間を短縮することができる。
たとえば、上述した処理をコンピュータに実行させるプログラムは、フラッシュメモリ、ICカード、あるいはミニチュアーカードなどの不揮発性の半導体メモリカードなどの記録媒体924を通じて配布される。さらに、サーバなどからインターネットなどの通信網を経由して前記プログラムをダウンロードして取得したり、あるいは更新してもよい。
記録媒体924の一例としてのICカードやミニチュアーカードなどの半導体メモリには、上記実施形態で説明した固体撮像装置1(特にコンパレート出力のセトリング時間短縮に関わる機能)における処理の一部または全ての機能を格納することができる。したがって、プログラムや当該プログラムを格納した記憶媒体を提供することができる。たとえば、セトリング時間短縮処理用のプログラム、すなわちRAM906などにインストールされるソフトウェアは、固体撮像装置1について説明したセトリング時間短縮処理と同様に、セトリング時間短縮を実現するためのパルスタイミング設定機能をソフトウェアとして備える。
ソフトウェアは、RAM906に読み出された後にマイクロプロセッサ902により実行される。たとえばマイクロプロセッサ902は、記録媒体の一例であるROM904およびRAM906に格納されたプログラムに基づいてパルスタイミング設定処理を実行することにより、コンパレート出力のセトリング時間短縮する機能をソフトウェア的に実現することができる。
1…固体撮像装置、10…画素アレイ部、12…水平走査回路、14…垂直走査回路、18…水平信号線、19,53…垂直信号線、20…通信・タイミング制御部、24…読出電流源部、25…カラムAD回路、252…電圧比較部、254…カウンタ部、256…データ記憶部、258…スイッチ、26…カラム処理部、27…参照信号生成部、27a…DA変換回路、28…出力回路、3…単位画素、300…差動トランジスタ対部、302,304…トランジスタ、310…負荷トランジスタ対部、312,314…トランジスタ、320…電流源部、322…定電流源トランジスタ、330…動作点リセット部、332…スイッチトランジスタ、334…スイッチトランジスタ、340…初期設定部、342…スイッチトランジスタ、344…初期値生成部、360…増幅アンプ、5…画素信号生成部、7…駆動制御部、8…撮像装置