以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下においては、X−Yアドレス型の固体撮像装置の一例である、CMOS固体撮像装置をデバイスとして使用した場合を例に説明する。また、CMOS固体撮像装置は、全ての画素がNMOSよりなるものであるとして説明する。
ただしこれは一例であって、対象となるデバイスはMOS型の固体撮像装置に限らない。光や放射線などの外部から入力される電磁波に対して感応性をする単位構成要素をライン状もしくはマトリクス状に複数個配列してなる物理量分布検知用の半導体装置の全てに、後述する全ての実施形態が同様に適用できる。
<固体撮像装置の全体概要>
図1は、本発明に係る固体撮像装置の一実施形態であるCMOS固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)の概略構成図である。
固体撮像装置1は、入射光量に応じた信号を出力する受光素子(電荷生成部の一例)を含む複数個の画素が行および列に配列された(すなわち2次元マトリクス状の)画素部を有し、各画素からの信号出力が電圧信号であって、CDS(Correlated Double Sampling ;相関2重サンプリング)処理機能部やデジタル変換部(ADC;Analog Digital Converter)などが列並列に設けられているものである。
“列並列にCDS処理機能部やデジタル変換部が設けられている”とは、垂直列の垂直信号線(列信号線の一例)19に対して実質的に並列に複数のCDS処理機能部やデジタル変換部が設けられていることを意味する。
複数の各機能部は、デバイスを平面視したときに、ともに画素アレイ部10に対して列方向の一方の端縁側(図の下側に配されている出力側)にのみ配されている形態のものであってもよいし、画素アレイ部10に対して列方向の一方の端縁側(図の下側に配されている出力側)とその反対側である他方の端縁側(図の上側)に分けて配されている形態のものであってもよい。後者の場合、行方向の読出走査(水平走査)を行なう水平走査部も、各端縁側に分けて配して、それぞれが独立に動作可能に構成するのがよい。
たとえば、列並列にCDS処理機能部やデジタル変換部が設けられている典型例としては、撮像部の出力側に設けたカラム領域と呼ばれる部分に、CDS処理機能部やその他のアナログ信号処理部やデジタル変換部を垂直列ごとに設け、順次出力側に読み出す、垂直列とCDS処理機能部やデジタル変換部などが1対1に接続されるカラム型のものである。また、カラム型(列並列型)に限らず、隣接する複数(たとえば2つ分)の垂直信号線19(垂直列)に対して1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を割り当てる形態や、N本おき(Nは正の整数;間にN−1本を配する)のN本分の垂直信号線19(垂直列)に対して1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を割り当てる形態などを採ることもできる。
カラム型を除くものは、何れの形態も、複数の垂直信号線19(垂直列)が1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を共通に使用する構成となるので、画素アレイ部10側から供給される複数列分の画素信号を1つのCDS処理機能部やデジタル変換部に供給する切替回路(スイッチ)を設ける。なお、後段の処理によっては、出力信号を保持するメモリを設けるなどの対処が別途必要になる。
何れにしても、複数の垂直信号線19(垂直列)に対して1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を割り当てる形態などを採ることで、各画素信号の信号処理を画素列単位で読み出した後に行なうことで、同様の信号処理を各単位画素内で行なうものに比べて、各単位画素内の構成を簡素化し、イメージセンサの多画素化、小型化、低コスト化などに対応できる。
また、列並列に配された複数の信号処理部にて1行分の画素信号を同時並行処理することができるので、出力回路側やデバイスの外部で1つのCDS処理機能部やデジタル変換部にて処理を行なう場合に比べて、信号処理部を低速で動作させることができ、消費電力や帯域性能やノイズなどの面で有利である。逆に言えば、消費電力や帯域性能などを同じにする場合、センサ全体の高速動作が可能となる。
なお、カラム型の構成の場合、低速で動作させることができ消費電力や帯域性能やノイズなどの面で有利であるとともに切替回路(スイッチ)が不要である利点もある。以下の実施形態では、特に断りのない限り、このカラム型で説明する。
図1に示すように、本実施形態の固体撮像装置1は、複数の単位画素3が行および列に配列された画素部や撮像部などとも称される画素アレイ部10と、画素アレイ部10の外側に設けられた駆動制御部7と、画素アレイ部10の単位画素3に画素信号読出用の動作電流(読出電流)を供給する読出電流制御部24と、参照信号Vslopを制御する参照信号制御部25と、垂直列ごとに配されたカラムAD回路250を有するカラム処理部26と、参照信号制御部25を介してカラム処理部26にAD変換用の参照信号Vslopを供給する参照信号生成部27と、出力回路28とを備えている。これらの各機能部は、同一の半導体基板上に設けられている。
参照信号比較型AD変換方式を採用する場合に、考え方としては、参照信号生成部27も列並列で(画素列ごとに)設けることも考えられる。たとえば、各画素列に比較器と参照信号発生器を設け、自列の比較器の比較結果を基に、逐次、参照信号の値を対応する列の参照信号発生器で変化させていく構成を採る場合である。しかしながらこれでは回路規模や消費電力が増える。そこで、本実施形態では、参照信号生成部27を全列共通に使用する構成を採り、参照信号生成部27から発生される参照信号Vslopを各画素列のカラムAD回路250が共通に使用し、各画素列では、比較器が反転したときカウンタ値を各画素列のAD変換結果として保持することでAD変換を行なう構成にする。
詳細は後述するが、読出電流制御部24は実施形態に応じてその内部構成の詳細が異なる。また、参照信号制御部25は、実施形態によっては設けられず、参照信号生成部27からの参照信号Vslopが直接にカラム処理部26に供給されることもある。
参照信号Vslopは、全体的にある傾きを持って線形に変化する波形を持つものであればよく、その変化が滑らかなスロープ状を呈するものであってもよいし、階段状に順次変化するものであってもよい。
本実施形態のカラムAD回路250は、画素信号Soの基準レベルであるリセットレベルSrst と信号レベルSsig とを独立にデジタルデータに変換するAD変換部と、リセットレベルSrst のAD変換結果と信号レベルSsig のAD変換結果との間で差分処理を実行することで、リセットレベルSrst と信号レベルSsig の差で示される信号成分のデジタルデータを取得する差分処理部の機能を備えている。
駆動制御部7は、画素アレイ部10の信号を順次読み出すための制御回路機能を備えている。たとえば駆動制御部7としては、列アドレスや列走査を制御する水平アドレス設定部12aおよび水平駆動部12bを有する水平走査部(列走査回路)12と、行アドレスや行走査を制御する垂直アドレス設定部14aおよび垂直駆動部14bを有する垂直走査部(行走査回路)14と、内部クロックを生成するなどの機能を持つ通信・タイミング制御部20とを備えている。
なお、図中、通信・タイミング制御部20の近傍に点線で示すように、高速クロック生成部の一例であって、入力されたクロック周波数よりも高速のクロック周波数のパルスを生成するクロック変換部23を設けるようにしてもよい。通信・タイミング制御部20は、端子5aを介して入力される入力クロック(マスタークロック)CLK0やクロック変換部23で生成された高速クロックに基づいて内部クロックを生成する。
クロック変換部23で生成された高速クロックを源とする信号を用いることで、AD変換処理などを高速に動作させることができるようになる。また、高速クロックを用いて、高速の計算を必要とする動き抽出や圧縮処理を行なうことができる。また、カラム処理部26から出力されるパラレルデータをシリアルデータ化してデバイス外部に映像データD1を出力することもできる。こうすることで、AD変換されたデジタルデータのビット分よりも少ない端子で高速動作出力する構成を採ることができる。
クロック変換部23は、入力されたクロック周波数よりも高速のクロック周波数のパルスを生成する逓倍回路を内蔵している。このクロック変換部23は、通信・タイミング制御部20から低速クロックCLK2を受け取り、それを元にして2倍以上高い周波数のクロックを生成する。クロック変換部23の逓倍回路としては、k1を低速クロックCLK2の周波数の倍数としたときk1逓倍回路を設ければよく、周知の様々な回路を利用することができる。
図1では、簡単のため行および列の一部を省略して示しているが、現実には、各画素行や各画素列には、数十から数千の単位画素3が配置される。この単位画素3は、典型的には、検知部の一例である受光素子(電荷生成部)としてのフォトダイオードと、増幅用の半導体素子(たとえばトランジスタ)を有する画素内アンプ(画素信号生成部の一例)とから構成される。
画素内アンプとしては、単位画素3の電荷生成部で生成・蓄積された信号電荷を電気信号として出力することができるものであればよく、様々な構成を採ることができるが、一般的には、フローティングディフュージョンアンプ構成のものが用いられる。一例としては、電荷生成部に対して、電荷読出部(転送ゲート部/読出ゲート部)の一例である読出選択用トランジスタを有する転送部、リセットゲート部の一例であるリセットトランジスタを有する初期化部、垂直選択用トランジスタ、およびフローティングディフュージョン(フローティングノードとも称される)の電位変化を検知する検知素子の一例であるソースフォロア構成の増幅用トランジスタを有する、CMOSセンサとして汎用的な4つのトランジスタからなる構成のものを使用することができる。
あるいは、電荷生成部により生成された信号電荷に対応する信号電圧を増幅するための、ドレイン線(DRN)に接続された増幅用トランジスタと、電荷生成部をリセットするためのリセットトランジスタと、垂直シフトレジスタより転送配線(TRF)を介して走査される読出選択用トランジスタ(転送ゲート部)を有する、3つのトランジスタからなる構成のものを使用することもできる。
なお、固体撮像装置1は、色分解(色分離)フィルタを使用することで、画素アレイ部10をカラー撮像対応にすることができる。すなわち、画素アレイ部10における各電荷生成部(フォトダイオードなど)の電磁波(本例では光)が入射される受光面に、カラー画像を撮像するための複数色の色フィルタの組合せからなる色分解フィルタの何れの色フィルタを、たとえばいわゆるベイヤー(Bayer)配列などにして設けることで、カラー画像撮像対応とする。
単位画素3は、行選択のための行制御線15を介して垂直走査部14と、また垂直信号線19を介してカラムAD回路250が垂直列ごとに設けられているカラム処理部26と、それぞれ接続されている。ここで、行制御線15は垂直走査部14から画素に入る配線全般を示す。
水平走査部12は、カラム処理部26からカウント値を水平信号線18へ読み出す読出走査部の機能を持つ。
水平走査部12や垂直走査部14などの駆動制御部7の各要素は、画素アレイ部10とともに、半導体集積回路製造技術と同様の技術を用いて単結晶シリコンなどの半導体領域に一体的に形成され、半導体システムの一例である固体撮像装置として構成される。
これらの各機能部は、半導体集積回路製造技術と同様の技術を用いて単結晶シリコンなどの半導体領域に一体的に形成されたいわゆる1チップもの(同一の半導体基板上に設けられているもの)として、半導体システムの一例であるCMOSイメージセンサとして、本実施形態の固体撮像装置1の一部をなすように構成される。
なお、固体撮像装置1は、このように各部が半導体領域に一体的に形成された1チップとして形成された形態であってもよいし、図示を割愛するが、画素アレイ部10、駆動制御部7、カラム処理部26などの各種の信号処理部の他に、撮影レンズ、光学ローパスフィルタ、あるいは赤外光カットフィルタなどの光学系をも含む状態で、これらを纏めてパッケージングされた撮像機能を有するモジュール状の形態としてもよい。
水平走査部12や垂直走査部14は、たとえばデコーダを含んで構成され、通信・タイミング制御部20から与えられる制御信号CN1,CN2に応答してシフト動作(走査)を開始するようになっている。このためたとえば、行制御線15には、単位画素3を駆動するための種々のパルス信号(たとえば、初期化制御電位を規定する画素リセットパルスRST 、転送制御電位を規定する転送パルスTRG 、垂直選択パルスVSELなど)が含まれる。
通信・タイミング制御部20は、図示しないが、各部の動作に必要なクロックや所定タイミングのパルス信号を供給するタイミングジェネレータTG(読出アドレス制御装置の一例)の機能ブロックと、端子5aを介して外部の主制御部から供給されるマスタークロックCLK0を受け取り、また端子5bを介して外部の主制御部から供給される動作モードなどを指令するデータを受け取り、さらに固体撮像装置1の情報を含むデータを外部の主制御部に出力する通信インタフェースの機能ブロックとを備える。
通信・タイミング制御部20は、たとえば、水平アドレス信号を水平アドレス設定部12aへ、また垂直アドレス信号を垂直アドレス設定部14aへ出力し、各アドレス設定部12a,14aは、それを受けて対応する行もしくは列を選択する。
この際、単位画素3を2次元マトリクス状に配置してあるので、画素信号生成部5により生成され垂直信号線19を介して列方向に出力されるアナログの画素信号を行単位で(列並列で)アクセスし取り込む(垂直)スキャン読みを行ない、この後に、垂直列の並び方向である行方向にアクセスし画素信号(本例ではデジタル化された画素データ)を出力側へ読み出す(水平)スキャン読みを行なうようにすることで、画素信号や画素データの読出しの高速化を図るのがよい。もちろん、スキャン読みに限らず、読み出したい単位画素3を直接にアドレス指定することで、必要な単位画素3の情報のみを読み出すランダムアクセスも可能である。
また、通信・タイミング制御部20では、端子5aを介して入力される入力クロック(マスタークロック)CLK0と同じ周波数のクロックCLK1や、それを2分周したクロックやより分周した低速のクロックをデバイス内の各部、たとえば水平走査部12、垂直走査部14、カラム処理部26などに供給する。以下、2分周したクロックやそれ以下の周波数のクロック全般を纏めて、低速クロックCLK2とも言う。
垂直走査部14は、画素アレイ部10の行を選択し、その行に必要なパルスを供給するものである。たとえば、垂直方向の読出し行を規定する(画素アレイ部10の行を選択する)垂直アドレス設定部14aと、垂直アドレス設定部14aにて規定された読出アドレス上(行方向)の単位画素3に対する行制御線15にパルスを供給して駆動する垂直駆動部14bとを有する。なお、垂直アドレス設定部14aは、信号を読み出す行(読出し行:選択行や信号出力行とも称する)の他に、電子シャッタ用の行なども選択する。
水平走査部12は、低速クロックCLK2に同期してカラム処理部26のカラムAD回路250を順番に選択し、その信号を水平信号線(水平出力線)18に導くものである。たとえば、水平方向の読出列を規定する(カラム処理部26内の個々のカラムAD回路250を選択する)水平アドレス設定部12aと、水平アドレス設定部12aにて規定された読出アドレスに従って、カラム処理部26の各信号を水平信号線18に導く水平駆動部12bとを有する。なお、水平信号線18は、たとえばカラムAD回路250が取り扱うビット数n(nは正の整数)分、たとえば10(=n)ビットならば、そのビット数分に対応して10本配置される。
このような構成の固体撮像装置1において、単位画素3から出力された画素信号は、垂直列ごとに、垂直信号線19を介して、カラム処理部26のカラムAD回路250に供給される。
カラム処理部26の各カラムAD回路250は、対応する列の単位画素3のアナログ信号Soを受けて、そのアナログ信号Soを処理する。たとえば、各カラムAD回路250は、アナログ信号Soを、たとえば低速クロックCLK2を用いて、たとえば10ビットのデジタル信号に変換するADC(Analog Digital Converter)回路を持つ。
カラム処理部26におけるAD変換処理としては、行単位で並列に保持されたアナログ信号Soを、列ごとに設けられたカラムAD回路250を使用して、行ごとに並列にAD変換する方法を採る。この際には、参照信号比較型AD変換の手法を使用する。この手法は、簡単な構成でAD変換器が実現できるため、並列に設けても回路規模が大きくならないという特徴を有している。
参照信号比較型のAD変換に当たっては、変換開始から参照信号Vslopと処理対象信号電圧とが一致するまでの時間に基づいて、アナログの処理対象信号をデジタル信号に変換する。このための仕組みとしては、原理的には、コンパレータ(電圧比較器)にランプ状の参照信号Vslopを供給するとともに、クロック信号でのカウント(計数)を開始し、垂直信号線19を介して入力されたアナログの画素信号を参照信号Vslopと比較することによって比較結果を示すパルス信号が得られるまでのクロック数をカウントすることでAD変換を行なう。
また、この際、回路構成を工夫することで、AD変換とともに、垂直信号線19を介して入力された電圧モードの画素信号に対して、画素リセット直後の信号レベル(ノイズレベルもしくはリセットレベルと称する)と真の(受光光量に応じた)信号レベルとの差分をとる処理(いわゆるCDS処理と等価)を行なうことができる。これにより、固定パターンノイズ(FPN;Fixed Pattern Noise )やリセットノイズと言われるノイズ信号成分を取り除くことができる。
<参照信号生成部とカラムAD回路の詳細>
参照信号生成部27は、DA変換回路(DAC;Digital Analog Converter)27aを有して構成されており、通信・タイミング制御部20からの制御データCN4で示される初期値からカウントクロックCKdac に同期して、階段状の鋸歯状波(ランプ波形;以下参照信号Vslopとも称する)を生成して、参照信号制御部25を介してカラム処理部26の個々のカラムAD回路250に、この生成した階段状の鋸歯状波の参照信号VslopをAD変換用の参照電圧(ADC基準信号)として供給するようになっている。なお、図示を割愛しているが、ノイズ防止用のフィルタを設けるとよい。
なお、この参照信号Vslopは、たとえば逓倍回路で生成される逓倍クロックを元に生成される高速クロックを基準とすることで、端子5aを介して入力されるマスタークロックCLK0に基づき生成するよりも高速に変化させることができる。
通信・タイミング制御部20から参照信号生成部27のDA変換回路27aに供給する制御データCN4は、比較処理ごとの参照信号Vslopが基本的には同じ傾き(変化率)となるように、時間に対するデジタルデータの変化率を同じにする情報も含んでいる。具体的には、カウントクロックCKdac に同期して、単位時間ごとに1ずつカウント値を変化させ、そのカウント値を電流加算型のDA変換回路で電圧信号に変換するようにする。
カラムAD回路250は、参照信号生成部27のDA変換回路27aで生成される参照信号Vslopと、行制御線15(V0,V1,V2,…,Vv)ごとに単位画素3から垂直信号線19(H0,H1,…,Hh)を経由し得られるアナログの画素信号を比較する電圧比較部(コンパレータ)252と、電圧比較部252が比較処理を完了するまでの時間をカウントし、その結果を保持するカウンタ部254とを備えて構成されnビットAD変換機能を有している。
ここで、本実施形態では、列ごとに配された電圧比較部252にDA変換回路27aから参照信号Vslopが共通に供給され、各電圧比較部252が処理を担当する画素信号電圧Vxについて、共通の参照信号Vslopを使用して比較処理を行なうようになっている。
通信・タイミング制御部20は、電圧比較部252が画素信号のリセットレベルVrst と信号成分Vsig の何れについて比較処理を行なっているのかに応じてカウンタ部254におけるカウント処理のモードを切り替える制御部の機能を持つ。この通信・タイミング制御部20から各カラムAD回路250のカウンタ部254には、カウンタ部254がダウンカウントモードで動作するのかアップカウントモードで動作するのかや、その他の制御情報を指示するための制御信号CN5が入力されている。
電圧比較部252の一方の入力端子RAMPは、他の電圧比較部252の入力端子RAMPと共通に、参照信号生成部27で生成される階段状の参照信号Vslopが入力され、他方の入力端子には、それぞれ対応する垂直列の垂直信号線19が接続され、画素アレイ部10からの画素信号電圧が個々に入力される。電圧比較部252の出力信号(比較パルスCOMP)はカウンタ部254に供給される。
カウンタ部254のクロック端子CKには、他のカウンタ部254のクロック端子CKと共通に、通信・タイミング制御部20からカウントクロックCK0が入力されている。
このカウンタ部254は、その構成については図示を割愛するが、ラッチで構成されたデータ記憶部の配線形態を同期カウンタ形式に変更することで実現でき、1本のカウントクロックCK0の入力で、内部カウントを行なうようになっている。カウントクロックCK0も、参照信号Vslopと同様に、逓倍回路で生成される逓倍クロック(高速クロック)を使用することができ、この場合、端子5aを介して入力されるマスタークロックCLK0を使用するよりも高分解能にできる。
ここで、カウンタ部254は、カウントモードに拘わらず共通のアップダウンカウンタ(U/D CNT)を用いて、ダウンカウント動作とアップカウント動作とを切り替えて(具体的には交互に)カウント処理を行なうことが可能に構成されている点に特徴を有する。
また、本実施形態のカウンタ部254としては、カウント出力値がカウントクロックCK0に同期せずに出力される非同期カウンタを使用するのが好ましい。基本的には、同期カウンタを使用することもできるが、同期カウンタの場合、全てのフリップフロップ(カウンタ基本要素)の動作がカウントクロックCK0で制限される。よって、より高周波数動作が要求される場合には、カウンタ部254としては、その動作制限周波数が最初のフリップフロップ(カウンタ基本要素)の制限周波数でのみ決められるため高速動作に適する非同期カウンタの使用がより好ましいのである。
カウンタ部254には、水平走査部12から制御線12cを介して制御パルスが入力される。カウンタ部254は、カウント結果を保持するラッチ機能を有しており、制御線12cを介しての制御パルスによる指示があるまでは、カウンタ出力値を保持する。
個々のカラムAD回路250の出力側は、たとえば、カウンタ部254の出力を水平信号線18に接続することができる。あるいは、図示のように、カウンタ部254の後段に、このカウンタ部254の保持したカウント結果を保持するnビットのメモリ装置としてのデータ記憶部256と、カウンタ部254とデータ記憶部256との間に配されたスイッチ258とを備える構成を採ることもできる。
データ記憶部256を備える構成を採る場合、スイッチ258には、他の垂直列のスイッチ258と共通に、通信・タイミング制御部20から、所定のタイミングで、制御パルスとしてのメモリ転送指示パルスCN8が供給される。スイッチ258は、メモリ転送指示パルスCN8が供給されると、対応するカウンタ部254のカウント値をデータ記憶部256に転送する。データ記憶部256は、転送されたカウント値を保持・記憶する。
なお、カウンタ部254のカウント値を所定のタイミングでデータ記憶部256に保持させる仕組みは、両者間にスイッチ258を配する構成に限らず、たとえば、カウンタ部254とデータ記憶部256とを直接に接続しつつ、カウンタ部254の出力イネーブルをメモリ転送指示パルスCN8で制御することで実現することもできるし、データ記憶部256のデータ取込タイミングを決めるラッチクロックとしてメモリ転送指示パルスCN8を用いることでも実現できる。
データ記憶部256には、水平走査部12から制御線12cを介して制御パルスが入力される。データ記憶部256は、制御線12cを介しての制御パルスによる指示があるまでは、カウンタ部254から取り込んだカウント値を保持する。
水平走査部12は、カラム処理部26の各電圧比較部252とカウンタ部254とが、それぞれが担当する処理を行なうのと並行して、各データ記憶部256が保持していたカウント値を読み出す読出走査部の機能を持つ。
データ記憶部256の出力は、水平信号線18に接続されている。水平信号線18は、カラムAD回路250のビット幅であるnビット幅分の信号線を有し、図示しないそれぞれの出力線に対応したn個のセンス回路を経由して出力回路28に接続される。
特に、データ記憶部256を備えた構成とすれば、カウンタ部254が保持したカウント結果を、データ記憶部256に転送することができるため、カウンタ部254のカウント動作すなわちAD変換処理と、カウント結果の水平信号線18への読出動作とを独立して制御可能であり、AD変換処理と外部への信号の読出動作とを並行して行なうパイプライン動作が実現できる。
このような構成において、カラムAD回路250は、所定の画素信号読出期間において、カウント動作を行ない、所定のタイミングでカウント結果を出力する。すなわち、先ず、電圧比較部252では、参照信号生成部27からの参照信号Vslopと、垂直信号線19を介して入力される画素信号電圧Vxとを比較し、双方の電圧が同じになると、電圧比較部252の比較パルスCOMP(コンパレート出力)が反転する。たとえば、電圧比較部252は、電源電位などのHレベルをインアクティブ状態として、画素信号電圧Vxと参照信号Vslopとが一致したときに、Lレベル(アクティブ状態)へ遷移する。
カウンタ部254は、参照信号生成部27から発せられるランプ波形電圧に同期してダウンカウントモードもしくはアップカウントモードでカウント動作を開始しており、コンパレート出力の反転した情報がカウンタ部254に通知されると、カウント動作を停止し、その時点のカウント値を画素データとしてラッチ(保持・記憶)することでAD変換を完了する。
この後、カウンタ部254は、所定のタイミングで水平走査部12から制御線12cを介して入力される水平選択信号CH(i)によるシフト動作に基づいて、記憶・保持した画素データを、順次、カラム処理部26外や画素アレイ部10を有するチップ外へ出力端子5cから出力する。
なお、本実施形態の説明としては直接関連しないため特に図示しないが、その他の各種信号処理回路なども、固体撮像装置1の構成要素に含まれる場合がある。
<固体撮像装置の動作;基本動作>
図2は、図1に示した固体撮像装置1のカラムAD回路250における基本動作である信号取得差分処理を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、本実施形態の参照信号比較型AD変換処理を適用したカラムAD変換処理の特徴の理解を容易にするため、参照信号比較型AD変換処理の一般的な処理手法について示し、その後に、本実施形態の処理の特徴について複数の実施形態を用いて具体的に説明する。
画素アレイ部10の各単位画素3で感知されたアナログの画素信号をデジタル信号に変換する仕組みとしては、たとえば、所定の傾きで下降する(階段状に下降する場合でもよい)ランプ波形状の参照信号Vslopと単位画素3からの画素信号における基準成分や信号成分の各電圧とが一致する点を探し、この比較処理で用いる参照信号Vslopの生成(変化開始)時点から、画素信号における基準成分や信号成分に応じた電気信号と参照信号とが一致した時点までをカウントクロックでカウント(計数)することで、基準成分や信号成分の各大きさに対応した画素信号レベルのカウント値を得る手法を採る。
つまり、垂直信号線19に読み出したアナログの画素信号電圧Vxを、列ごとに配置されたカラムAD回路250の電圧比較部252で参照信号Vslopと比較する。このとき、電圧比較部252と同様に列ごとに配置されたカウンタ部254を動作させておき、参照信号Vslopのある電位とカウンタ部254とを1対1の対応をとりながら変化させることで、垂直信号線19の画素信号電圧Vxをデジタルデータに変換する。ここで、参照信号Vslopの変化は電圧の変化を時間の変化に変換するものであり、その時間をある周期(クロック)で量子化しながらカウンタ部254で数えることで、デジタルデータに変換する。参照信号Vslopがある時間Δtの間にΔV変化するとして、Δtの周期でカウンタ部254を動作させると参照信号VslopがN×ΔV変化したときのカウンタ値はNとなる。
ここで、垂直信号線19から出力される画素信号So(画素信号電圧Vx)は、時間系列として、基準レベルとしての画素信号の雑音を含むリセットレベルSrst の後に信号レベルSsig が現れるものである。P相の処理を基準レベル(リセットレベルSrst 、事実上リセットレベルVrst と等価)について行なう場合、D相の処理はリセットレベルSrst に信号成分Vsig を加えた信号レベルSsig についての処理となる。
詳細な説明は割愛するが、先ず、リセットレベルSrst についてのAD変換期間であるプリチャージ相(P相と省略して記すこともある)の信号取得時には、ダウンカウントモードにしておく。またこのとき、単位画素3をリセット電位する(t1〜t2)。このリセット電位が画素信号Soとして垂直信号線19に出力される。これにより、画素信号電圧Vxとしては、リセットレベルSrst が垂直信号線19に現れるようになる。
垂直信号線19(H0,H1,…)上のリセットレベルSrst が収束して安定となったら、通信・タイミング制御部20は、カウンタ部254におけるカウント動作開始と同時に参照信号Vslopが変化し始めるようにするべく、制御データCN4として、データ保持制御パルスHLDCを使用し、このデータ保持制御パルスHLDCをインアクティブLにする(t10)。
これを受けて、参照信号生成部27は、電圧比較部252の一方の入力端子RAMPへの比較電圧である参照信号Vslopとして、初期電圧SLP_iniを始点とする、全体として鋸歯状(RAMP状)に時間変化させた階段状もしくは線形状の電圧波形を入力する。電圧比較部252は、この参照信号Vslopと画素アレイ部10から供給される垂直信号線19の画素信号電圧Vxとを比較する。
電圧比較部252の入力端子RAMPへの参照信号Vslopの入力と同時に、電圧比較部252における比較時間を、参照信号生成部27から発せられる参照信号Vslopに同期して、行ごとに配置されたカウンタ部254で計測する。実際には、参照信号Vslopの生成のためにデータ保持制御パルスHLDCがインアクティブLにされており、これによってデータ保持部512の保持動作が解除されるので、カウンタ部254は、P相のカウント動作として、初期値“0”からダウンカウントを開始する。すなわち、負の方向にカウント処理を開始する。
電圧比較部252は、参照信号生成部27からの参照信号Vslopと垂直信号線19を介して入力される画素信号電圧Vxとを比較し、双方の電圧が同じになったときに、コンパレート出力をHレベルからLレベルへ反転させる。つまり、リセットレベルVrst に応じた電圧信号(リセットレベルSrst )と参照信号Vslopとを比較して、リセットレベルVrst の大きさに対応した時間軸方向に大きさを持っているアクティブロー(L)のパルス信号を生成して、カウンタ部254に供給する。
この結果を受けて、カウンタ部254は、コンパレート出力の反転とほぼ同時にカウント動作を停止し、その時点のカウント値(符号を加味して“−Drst ”とする)を画素データとしてラッチ(保持・記憶)することでAD変換を完了する。つまり、電圧比較部252における比較処理によって得られる時間軸方向に大きさを持っているアクティブロー(L)のパルス信号の幅をカウントクロックCK0でカウント(計数)することで、リセットレベルVrst の大きさに対応したデジタル値Drst を示す(符号を加味すれば−Drst を示す)カウント値を得る。
通信・タイミング制御部20は、所定のダウンカウント期間を経過すると、データ保持制御パルスHLDCをアクティブHにする(t14)。これにより、参照信号生成部27は、ランプ状の参照信号Vslopの生成を停止し(t14)、初期電圧SLP_iniに戻る。
P相の処理時は、画素信号電圧VxにおけるリセットレベルVrst を電圧比較部252で検知してカウンタ部254でカウント動作を行なっているので、単位画素3のリセットレベルVrst を読み出してリセットレベルVrst のAD変換を実施することになる。
続いての信号レベルSsig についてのAD変換期間であるデータ相(D相と省略して記すこともある)の信号取得時には、リセットレベルVrst に加えて、単位画素3ごとの入射光量に応じた信号成分Vsig を読み出し、P相の読出しと同様の動作を行なう。すなわち、先ず通信・タイミング制御部20は、カウントモード制御信号UDCをハイレベルにしてカウンタ部254をアップカウントモードに設定する(t16)。
またこのとき、単位画素3では、読出対象行Vnの垂直選択信号φVSELをアクティブHにしたままで転送信号φTRG をアクティブHにして垂直信号線19に信号レベルSsig を読み出す(t18〜t19)。垂直信号線19(H0,H1,…)上の信号レベルSsig が収束して安定となったら、通信・タイミング制御部20は、カウンタ部254におけるカウント動作開始と同時に参照信号Vslopが変化し始めるようにするべく、制御データCN4として、データ保持制御パルスHLDCを使用し、このデータ保持制御パルスHLDCをインアクティブLにする(t20)。
これを受けて、参照信号生成部27は、電圧比較部252の一方の入力端子RAMPへの比較電圧である参照信号Vslopとして、初期電圧SLP_iniを始点としP相と同じ傾きを持った全体として鋸歯状(RAMP状)に時間変化させた階段状もしくは線形状の電圧波形を入力する。電圧比較部252は、この参照信号Vslopと画素アレイ部10から供給される垂直信号線19の画素信号電圧Vxとを比較する。
電圧比較部252の入力端子RAMPへの参照信号Vslopの入力と同時に、電圧比較部252における比較時間を、参照信号生成部27から発せられる参照信号Vslopに同期して、行ごとに配置されたカウンタ部254で計測する。ここでも、実際には、参照信号Vslopの生成のためにデータ保持制御パルスHLDCがインアクティブLにされており、これによってデータ保持部512の保持動作が解除されるので、カウンタ部254は、D相のカウント動作として、P相の読出しおよびAD変換時に取得された画素信号電圧VxのリセットレベルSrst のデジタル値Drst (ここでは負の値となっている)から、P相とは逆にアップカウントを開始する。すなわち、正の方向にカウント処理を開始する。
電圧比較部252は、参照信号生成部27からのランプ状の参照信号Vslopと垂直信号線19を介して入力される画素信号電圧Vxとを比較し、双方の電圧が同じになったときに、コンパレート出力をHレベルからLレベルへ反転させる(t22)。つまり、信号成分Vsig に応じた電圧信号(画素信号電圧Vxの信号レベルSsig )と参照信号Vslopとを比較して、信号成分Vsig の大きさに対応した時間軸方向に大きさを持っているアクティブロー(L)のパルス信号を生成して、カウンタ部254に供給する。
この結果を受けて、カウンタ部254は、コンパレート出力の反転とほぼ同時にカウント動作を停止し、その時点のカウント値を画素データとしてラッチ(保持・記憶)することでAD変換を完了する(t22)。つまり、電圧比較部252における比較処理によって得られる時間軸方向に大きさを持っているアクティブロー(L)のパルス信号の幅をカウントクロックCK0でカウント(計数)することで、画素信号電圧Vxにおける信号レベルSsig に対応したカウント値を得る。
所定のアップカウント期間を経過すると、単位画素3では、読出対象行Vnの垂直選択信号φVSELをインアクティブLにして画素信号Soの垂直信号線19への出力を禁止し、次の読出対象行Vn+1について、垂直選択信号φVSELをアクティブHにする(t26)。このとき、通信・タイミング制御部20は、次の読出対象行Vn+1についての処理に備える。たとえば、カウントモード制御信号UDCをローレベルにしてカウンタ部254をダウンカウントモードに設定する。
このD相の処理時は、画素信号電圧Vxにおける信号レベルSsig を電圧比較部252で検知してカウント動作を行なっているので、単位画素3の信号成分Vsig を読み出して信号レベルSsig のAD変換を実施することになる。
ここで、信号レベルSsig は、リセットレベルSrst に信号成分Vsig を加えたレベルであるので、信号レベルSsig のAD変換結果のカウント値は、基本的には“Drst +Dsig ”であるが、アップカウントの開始点を、リセットレベルSrst のAD変換結果である“−Drst ”としているので、実際に保持されるカウント値は、“−Drst +(Dsig+Drst ) =Dsig ”となる。
つまり、カウンタ部254におけるカウント動作を、P相の処理時にはダウンカウント、D相の処理時にはアップカウントとしているので、カウンタ部254内で自動的に、リセットレベルSrst のAD変換結果であるカウント値“−Drst ”と信号レベルSsig のAD変換結果であるカウント値“Drst +Dsig ”との間での差分処理(減算処理)が自動的に行なわれ、この差分処理結果に応じたカウント値Dsig がカウンタ部254に保持される。この差分処理結果に応じたカウンタ部254に保持されるカウント値Dsig は信号成分Vsig に応じたものとなる。
上述のようにして、P相の処理時におけるダウンカウントとD相の処理時におけるアップカウントといった、2回の読出しとカウント処理によるカウンタ部254内での差分処理によって、単位画素3ごとのばらつきを含んだリセットレベルVrst を除去することができ、単位画素3ごとの入射光量に応じた信号成分Vsig のみのAD変換結果を簡易な構成で取得することができる。よって、カラムAD回路250は、アナログの画素信号をデジタルの画素データに変換するデジタル変換部としてだけでなく、CDS(Correlated Double Sampling ;相関2重サンプリング)処理機能部としても動作することとなる。
また、カラムAD回路250では、カウンタ部254の後段にデータ記憶部256を備えており、カウンタ部254の動作前に、通信・タイミング制御部20からのメモリ転送指示パルスCN8に基づき、前行Hx−1のカウント結果をデータ記憶部256に転送することができる。つまり、AD変換期間終了後、カウンタ部254内のデータをデータ記憶部256へと退避し、カラムAD回路250は次の行Vx+1のAD変換を開始する。データ記憶部256内のデータは、その裏で水平走査部12により順に選択され、出力回路28を用いて読み出すことができる。
<<カラムAD変換処理の詳細>>
上記説明から理解されるように、参照信号比較型などと称されるAD変換方式では、アナログの単位信号(画素信号電圧Vx)とデジタルデータに変換するためのランプ状の参照信号Vslopとを電圧比較部252で比較するので、電圧比較部252における比較処理に要する時間が、AD変換性能、特に変換処理の高速性を律則することになる。
このようなことを踏まえると、参照信号生成部27ではカウントクロックCKdac の周波数を高速にする手法を採って参照信号Vslopの傾きを精度よく大きくして比較処理に要する時間を短くするとも可能であるが、この場合、AD変換時の分解能に影響を及ばさいようにするには、カウンタ部254でのカウント処理に供されるカウントクロックCK0も周波数を変更して高速にし、カウンタ部254内での分周動作を高速化させなければならない。
この場合、カウンタ部254全体が高速で動作することになり、消費電力が増加してしまう。参照信号Vslopの傾きを大きくする際にカウントクロックCKdac の周波数を高速にする場合にも、同様に参照信号生成部27では消費電力が増加するが、カラム処理部26ではカウンタ部254が各画素列に配置されているので、「消費電力が増加」の度合いが、カラム処理部26の方が参照信号生成部27よりも比べものにならないほど大きい。
本実施形態では、この点を勘案して、参照信号比較型などと称されるAD変換方式を採用する場合に、カウンタ部254での消費電力増大を抑えながらAD変換処理の高速化を図ることのできる仕組みにする。以下具体的に説明する。
なお、カウントクロックCK0とカウントクロックCKdac とは原理的には同一周波数である必要はないが、理解を容易にするため、以下の説明では、それらが同一周波数であってかつ同期しているもの、具体的には完全に同一のものとする。
図3は、参照信号比較型AD変換処理における比較処理完了時点の電圧比較部252とカウンタ部254の動作の概要を説明する図である。ここで、図3(A)は、参照信号Vslopと画素信号電圧Vxとの関係を拡大して示した図である。図3(B)は、画素アレイ部10からの画素信号電圧Vxがカウンタ部254によってデジタルデータに変換されるまでの流れを回路ブロック図とともに示した図である。
前記の前提のように、通信・タイミング制御部20からはカウントクロックCKdac がDA変換回路27aに供給されるとともに、それと同一周波数でかつ同期しているカウントクロックCK0がカウンタ部254に供給される。カウンタ部254は、内部回路として、カウントクロックCK0に基づいてカウント動作(分周動作)をするフリップフロップの多段接続で構成された分周処理部254aと、分周処理部254aへのカウントクロックCK0の供給を制御するオン/オフ型のスイッチ254bとを有する。
AD変換用の比較処理開始時には電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルにしておく。スイッチ254bの制御入力端には、電圧比較部252から比較パルスCOMPが供給される。スイッチ254bは、比較パルスCOMPがHレベルのときにはオンし、通信・タイミング制御部20からのカウントクロックCK0を分周処理部254aに伝達する一方、比較パルスCOMPがLレベルのときにはオフし、カウントクロックCK0の分周処理部254aへの伝達を停止する。分周処理部254aは、カウントクロックCK0の供給があるときにカウント動作(分周動作)をし、カウントクロックCK0の供給が停止されると、それまでのカウント値を保持・出力する。
AD変換処理(比較処理)開始時にはDA変換回路27aおよび分周処理部254aには同一周波数のクロックCKdac ,CK0が入力され同期しており、先ず、参照信号生成部27のDA変換回路27aからは、図3(A)および図3(B)のそれぞれに示すように、階段状ではあるが、カウントクロックCKdac に従い時間的にリニアに変化(ここでは漸次電圧値が低下する)する参照信号Vslopが電圧比較部252に供給される。なお、後述する実施形態においては、電圧比較部252からの比較パルスCOMPに基づき参照信号Vslopの電圧レベルを切り替える参照信号制御部25を介在させる場合と介在させない場合がある。また、後述する実施形態においては、読出電流制御部24は、一定の動作電流Idを垂直信号線19に流す場合と、電圧比較部252からの比較パルスCOMPに基づき動作電流Idを変更することで画素信号電圧Vxの電圧レベルを切り替える場合とがある。
ここで、図3(A)および図3(B)のそれぞれに示すように、画素信号電圧Vx(アナログ値)と参照信号Vslopとが一致する時点になると、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルからLレベルに切り替える。これによりスイッチ254bはオフするので、カウントクロックCK0が入力されることで動作していた分周処理部254aはカウント動作を停止し、このときのカウント値(比較時間/クロック周波数)を画素データDの値として出力する。
したがって、図3(A)に示すように、画素信号電圧VxがVxaである単位画素3Aの画素データDa、画素信号電圧VxがVxb(<Vxa)である単位画素3Bの画素データDb、画素信号電圧VxがVxc(<Vxb)である単位画素3Cの画素データDcがそれぞれ得られることになる。画素信号電圧Vxは、画素信号Soの基準レベルであるリセットレベルSrst と信号レベルSsig (<)Srst とを含むものであり、信号成分Vsig (=|Ssig −Srst |)および対応する画素データDに関して言えば、画素信号電圧Vxの値が小さいほど大きくなる。
<第1実施形態(第1例)>
図4〜図6は、第1実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理を説明する図である。ここで、図4は、第1実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理に適用される参照信号制御部25周辺の構成例を説明する回路ブロック図である。図5は、第1実施形態(第1例)および比較例の各参照信号比較型AD変換処理に適用されるDA変換回路27aの詳細を説明する機能ブロック図である。図6は、第1実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理の動作原理を説明する図であって、2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2と画素信号電圧Vxとの関係を示している。
図4に示すように、第1実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理が適用される固体撮像装置1においては、参照信号生成部27とカラム処理部26との間の参照信号Vslopの伝達に介在する参照信号制御部25を備えている。また、詳細は図5にて説明するが、DA変換回路27aは、1LSBの電圧差を持つ2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2(Vslop_1>Vslop_2とする)を生成可能に構成されている。なお、“LSB”は、AD変換の量子化単位すなわち1デジタル単位の相当するアナログ量である。
図4に示すように、第1実施形態(第1例)の参照信号制御部25は、DA変換回路27aから出力される2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2を切り替える参照信号選択部300を備える。参照信号選択部300は、2入力−1出力型のスイッチ310を画素列ごとに有している。
スイッチ310の制御入力端には、自列の電圧比較部252から比較パルスCOMPが供給されるようになっている。スイッチ310は、比較パルスCOMPがHレベルのときには参照信号Vslop_2を選択して電圧比較部252に伝達する一方、比較パルスCOMPがLレベルのときには参照信号Vslop_1を選択して電圧比較部252に伝達する。
つまり、参照信号制御部25は、参照信号選択部300としてスイッチ310も画素列ごとに設けることで、各画素列のカラムAD回路250内の電圧比較部252の出力(比較パルスCOMP)が対応する画素列のスイッチ310にフィードバックされ、電圧比較部252の出力が反転するタイミングでスイッチ310が切り替わり、電圧比較部252が参照する参照信号Vslopを各画素列独立に制御するようになっている。
第1実施形態(第1例)のDA変換回路27aは、その詳細を図5(A)に示すように、機能的には、ビット別に対応するN(Nは画素データのビット数に対応する;図では8ビット分)本のシンク電流源322と、各シンク電流源322の出力を選択的に合成するためのオン/オフ型の出力スイッチ350と、電流電圧変換用の抵抗素子330とを有する。なお、シンク電流源322および出力スイッチ350については、図では最上位ビットMSBについてのみ符号を示す。
図5(A)に示す第1実施形態の構成では最下位ビットLSBについては出力スイッチ350が設けられておらず、その代わりに出力ノード380_1と出力ノード380_2との間に抵抗素子332が設けられ、シンク電流源322の出力が抵抗素子332を介して抵抗素子330に接続されるのに対して、図5(B)に示す比較例では出力スイッチ350を介して抵抗素子330に接続される。
参照信号Vslop_1用の出力ノード380_1と参照信号Vslop_2用の出力ノード380_2との間に設ける抵抗素子332の抵抗値と、参照信号Vslop_1用の出力ノード380_1と電源ノードとの間に設ける抵抗素子330の抵抗値は同じ値Rに設定する。
図示を割愛するが、出力スイッチ350の制御入力端に対しては、各シンク電流源322の出力スイッチ350のオン/オフ動作を制御する切替部が接続される。
各シンク電流源322は、一方が基準電位(接地電位GND )に接続され他方のシンク側が出力スイッチ350(LSBは除く)に接続されている。LSBを除くビット別の各出力スイッチ350のシンク電流源322とは反対側およびLSBのシンク電流源322の出力側は共通に接続されるとともに、その接続点Xa_1が、全てのビットで共通に電流電圧変換用の抵抗素子330に接続されている。抵抗素子330の反対側は電源に接続されている。
ビット別のシンク電流源322は、ビットの重みに対応した電流量をシンクするようになっている。たとえば、最下位ビットLSBについては最小電流量Iとし、上位側に行くに連れて、1ビットごとに、その電流量を、スケーリング値xのべき乗で増加させるようにする。つまり、LSBをIとして、以下順に、I・{x^&}(&は、1,2,…,N−2,N−1)とする。本例では、スケーリングxを2とし、そのべき乗でビットの重みを付けている。
接続点Xa_1では、図5(A)に示す第1実施形態(第1例)の構成および図5(B)に示す比較例の何れにおいても、各ビットの電流加算結果の電流値と抵抗素子330の抵抗値との積に対応する電圧値Vrmp がDA変換結果である参照信号Vslop_1として出力ノード380_1から出力される。また、図5(A)に示す第1実施形態(第1例)の構成においては、LSBのシンク電流源322と抵抗素子332との接続点X_2では、参照信号Vslop_1の電圧値Vrmp よりもさらに、LSBのシンク電流源322の電流値Iと抵抗素子332の抵抗値との積に対応する電圧値(1LSB分の電圧値)が低下され、DA変換結果である参照信号Vslop_2として出力ノード380_2から出力される。つまり、参照信号Vslop_2は、参照信号Vslop_1よりも常に1LSB分だけ低下したもの(参照信号Vslop_2=Vrmp −1IR)となる。
図5(A)に示す第1実施形態(第1例)の構成においては、抵抗素子330,332の各抵抗値を同じ値Rにすることで、電位差がR×Iだけ異なる2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2が出力され、さらにそれぞれの参照信号Vslop_1,Vslop_2はR×2・Iのステップ電圧で変化する。
ここで、図5(B)に示す比較例のDA変換回路27aにおいてR×Iは1LSB(AD変換の量子化単位)に相当することを考慮すると、図5(A)に示す第1実施形態(第1例)の構成においては、図6に示すように、2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2はそれぞれ1LSB電位が異なっており(Vslop_1=Vslop_2+1LSB)、何れもカウントクロックCKdac 当たり2LSBのステップ電圧で変化していると言い換えることができる。
画素信号電圧Vxを画素データDに変換することとの関係においては、参照信号選択部300は、前段比較処理用の参照信号として、2種類の参照信号の内、同一カウント値での各値と画素信号電圧Vxとの比較において最初に画素信号電圧Vxと一致することになる方の参照信号Vslop_2を先ず前段参照信号として選択し、この参照信号Vslop_2と画素信号電圧Vxとの後段比較処理で比較パルスCOMPが反転したら(Lレベルになると)、残りの参照信号Vslop_1に切り替える。
デジタルデータの最下位ビットの分解能(1LSB)のレベル差を持ち、当該最下位ビットの分解能のレベル(1LSB)に対してM=2倍のステップ(2LSB)で変化するM種類の各参照信号Vslopと画素信号電圧Vxとを比較して画素信号電圧Vxの画素データDを特定する。ここで、画素信号電圧VxのAD変換結果である画素データDとの関係で言えば、カウントクロックCK0がタイミングT時点で比較パルスCOMPが反転したときの画素データを特定することになるので、その直前のタイミング“T−1”との関係においては、“Vslop_1(T)−Vslop_1(T−1)”および“Vslop_2(T)−Vslop_2(T−1)”は何れも2LSB分の差がある。各参照信号を1LSBに対して2倍(つまり2LSB)の変化率で変化させるので当然のことである。
一方、各参照信号Vslop_1,Vslop_2と画素信号電圧Vxとの各比較結果に基づき画素データDを特定することを考えたときには、各参照信号Vslop_1,Vslop_2が電圧比較部252の入力部においても階段状であるようにしておくことで、参照信号Vslop_1,Vslop_2のレベル差(本例では1LSB)を利用した画素信号電圧Vxの分別ができる。参照信号の変化率よりも分解能を向上することができ、結局は、1LSBステップで画素データDを確定できる。
本例の場合、Vslop_1>Vslop_2の関係があり、画素信号電圧Vxよりも参照信号Vslop_1(T),Vslop_2(T)が下回ったときに比較パルスCOMPが反転し、その時点のカウント値を保持する点を考慮する。すなわち、画素信号電圧Vxに対してVslop_1(T)で比較パルスCOMPが反転すると言うことは、Vslop_1(T−1)≧画素信号電圧Vx>Vslop_1(T)であり、また、画素信号電圧Vxに対してVslop_2(T)で比較パルスCOMPが反転すると言うことは、Vslop_2(T−1)≧画素信号電圧Vx>Vslop_2(T)であり、その間が2LSB分である。
Vslop_1(T)>Vslop_2(T)でかつその差が1LSB分である点を勘案すれば、Vslop_2(T−1)≧画素信号電圧Vx>(または≧)Vslop_1(T)であるか(その間が1LSB分)、Vslop_1(T)≧(または>)画素信号電圧Vx>Vslop_2(T)である(その間が1LSB分)。これにより、1LSB分の電圧差を持つ2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2を2LSBの変化率でかつ階段状に変化させつつ、2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2のそれぞれと画素信号電圧Vxとの比較結果を参照することで、画素信号電圧Vxの画素データDを1LSBの分解能で確定することができる。以下、その処理手順を具体的に説明する。
<第1実施形態(第1例)の処理手順:基本>
図7は、第1実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理手順を説明する図であって、電圧比較部252による比較処理後のカウンタ部254における画素信号電圧Vxに対応する画素データDの確定手法を説明する図である。
第1例においては、参照信号制御部25におけるスイッチ310の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間が十分短く、参照信号Vslopの電位が2LSB変化する時間Tadと比較しても十分に短いものと仮定する。なお、時間Tadは、カウントクロックCK0(本例ではCK0=CKdac )の1クロック分の時間に相当し、以下、AD単位Tadと称する。つまり、参照信号Vslop_2での比較処理後にさらに参照信号Vslop_1での比較処理を完了するまで遅延期間Tdelay が、カウントクロックCK0(本例では=CKdac )の1クロック分未満である。たとえば、図7は、その遅延期間Tdelay が約半クロック分である状態で示している。
比較処理の開始前では、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルにしている。このため、参照信号制御部25において、各画素列のスイッチ310は、DA変換回路27aから出力される2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2の内の参照信号Vslop_2の方を選択して電圧比較部252に供給する。各画素列の電圧比較部252は、比較処理の当初は、参照信号Vslop_2と対応する自列の垂直信号線19から供給される画素信号電圧Vxを比較し、アナログ値の画素信号電圧Vxα(αはa,b)と参照信号Vslop_2とが一致する時点Tになると、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルからLレベルに切り替える。この比較処理をAD変換用の前段比較処理と称する。
参照信号制御部25において、各画素列のスイッチ310は、自列の電圧比較部252からの比較パルスCOMPがLレベルに切り替ると、図6や図7に示すように、参照信号Vslop_2から参照信号Vslop_1に切り替える。電圧比較部252は、直ちに、画素信号電圧Vxαを参照信号Vslop_1(T)と再度比較する)。この比較処理をAD変換用の後段比較処理と称する。カウンタ部254は、このときのカウント値Tを保持しておく。つまり、カウンタ部254は、画素信号電圧Vxαと参照信号Vslop_1の大小関係が反転するタイミングのカウント値Tを保持する。
“画素信号電圧Vxα>参照信号Vslop_1(T)”であれば比較パルスCOMPはLレベルが維持されるが、“画素信号電圧Vxα<参照信号Vslop_1(T)”であれば比較パルスCOMPはHレベルに切り替る。このときの比較結果(比較パルスCOMP)がカウンタ部254に通知されており、各比較結果に基づき、以下のようにして画素データDを確定する。つまり、カウンタ部254は、2種類の参照信号Vslopの内の参照信号選択部300により選択された参照信号Vslop_2との電圧比較部252による比較処理が完了した時点のカウント値Tを保持するとともに、参照信号選択部300による残りの参照信号Vslop_1の選択に応じた画素信号電圧Vxとの電圧比較部252による比較結果に基づき、保持しておいたカウント値Tを修正することで画素信号電圧Vxのデジタルデータを確定する。
たとえば、カウンタ部254は、“画素信号電圧Vxα>参照信号Vslop_1(T)”の場合は、最終的なカウント値として“2T−1”を出力する。図7(A)に示すように、2LSBステップでのAD変換処理時に、参照信号Vslop_2(T)の“2T−1”に相当する電圧値よりも画素信号電圧Vxaが高く、実際には、画素信号電圧Vxaとしては2Tレベルには達しておらず“2T−2”〜“2T−1”の範囲にあるからである。一方、“画素信号電圧Vxα<参照信号Vslop_1(T)”の場合は、最終的なカウント値として2Tを出力する)。図7(B)に示すように、2LSBステップでのAD変換処理時に、参照信号Vslop_2(T)の2Tに相当する電圧値よりも画素信号電圧Vxbが低く、実際に、画素信号電圧Vxbとしては2Tに相当するレベルに達しているからである。
これにより、比較例のDA変換回路27aを用いた参照信号比較型AD変換処理に場合に比べて、参照信号Vslopを2LSBステップで制御しながら、1LSBの電圧差を持つ2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2との比較を所定の順(本例では先に電圧レベルの低い参照信号Vslop_2とする)に行なうことで、1LSB単位でのAD変換処理が実現されることになる。カウントクロックCK0やカウントクロックCKdac の周波数を高速にしなくても、実質的にAD変換に必要な時間が1/2になるといった利点が得られる。AD変換に必要な時間を1/2にできるので、ビット分解能を維持しつつカウンタ部254での消費電力増大を抑えながらAD変換処理を2倍に高速化することができる。
比較例で単純に2倍にしようとすれば、たとえば各クロック速度を2倍にするので消費電力が増大するのに対して、本第1実施形態(第1例)を適用すれば、概ね1倍時と同じ消費電力で処理速度を2倍にすることができる。逆に、比較例と同じ処理速度を維持する場合には、第1実施形態(第1例)を適用すれば消費電力を概ね半分にできる。
<第1実施形態(第2例)の処理手順>
図8は、第1実施形態(第2例)の参照信号比較型AD変換処理手順を説明する図であって、第1例の問題点と第2例の効果を説明する図である。
前述の第1例では、参照信号制御部25におけるスイッチ310の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間が十分短く、参照信号Vslopの電位が2LSB変化する時間(カウントクロックCK0(本例では=CKdac )の1クロック分の時間に相当する)と比較しても十分に短いものと仮定していた。しかしながら、実際にはこのようにならない場合も考えられる。
たとえば、図8(A)に示すように、参照信号Vslop_2での比較処理後にさらに参照信号Vslop_1での比較処理を完了するまでにカウントクロックCKdac のβクロック分以上“β+1”クロック分未満(βを処理遅延クロック幅と称する:図ではβ=1)だけ要する場合、第1例の処理においてはカウンタ部254は、カウント値“T+β”を保持することになり、画素データの確定処理においては、“2(T+β)−1”もしくは2(T+β)を最終的なカウント値として出力することになり誤差が生じる。
この問題を解消するには、処理遅延クロック数βに合わせて、参照信号Vslop_1を参照信号Vslop_2と比較して“1+2β”LSB分だけ高く設定しておき、次に示すようにカウンタ部254におけるカウント動作と同期させてAD変換動作を行なえばよい。
なお、“1+2β”LSB分だけ参照信号Vslop_1の電位を高めるためには、その分の嵩上げに対応した回路構成にすればよい。たとえば、図5(A)において参照信号Vslop_2用の出力ノード380_2と参照信号Vslop_1用の出力ノード380_1の間に設ける抵抗素子332の抵抗値を、参照信号Vslop_1用の出力ノード380_1と電源ノードとの間の抵抗素子330の抵抗値と比較して“1+2β”倍に設定してやればよい。
具体的には、図8(B),図8(C)に示す通りであり、第1例と同様に、各画素列の電圧比較部252は、比較処理の当初は、参照信号Vslop_2と対応する自列の垂直信号線19から供給される画素信号電圧Vxαを比較し、画素信号電圧Vxαと参照信号Vslop_2とが一致する時点になると、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルからLレベルに切り替える。カウンタ部254は、このときのカウント値Tを保持しておく。参照信号制御部25において、各画素列のスイッチ310は、自列の電圧比較部252からの比較パルスCOMPがLレベルに切り替ると、参照信号Vslop_2から参照信号Vslop_1に切り替える。
この後、電圧比較部252は参照信号Vslop_1と画素信号電圧Vxαとの比較処理を開始するのであるが、回路応答の問題から、参照信号制御部25におけるスイッチ310の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間が遅くなり、電圧比較部252にての実際の比較が行なわれる(完了する)のは、カウントクロックCKdac がβクロック分増えたタイミングになってしまう。
図6(B),図8(C)には、その処理遅延の状態を模式的に示している。前段比較処理結果に基づく参照信号Vslopの切替指示から比較処理が完了するまでの遅延期間Tdelay は、β*Tdac ≦Tdelay <(β+1)*Tdacとなっている(図8(B)ではβ=1、図8(C)ではβ=3)。概念的には、βクロック分増えたタイミングで電圧比較部252による比較結果が得られると見なすことができるので、図8(B),図8(C)に示すように、電圧比較部252は、事実上、参照信号Vslop_2(T)よりも1LSB分だけ電位が高い参照信号Vslop_1(T+β)との比較を行なうものと見なすことができる。参照信号Vslop_1(T+β)は参照信号Vslop_2(T)+1LSBである。これにより、第1実施形態(第1例)と同じ電圧関係での比較が行なわれると見なすことができる。
図8(B),図8(C)に示すように、“画素信号電圧Vxα>参照信号Vslop_1(T+β)”であれば比較パルスCOMPはLレベルが維持されるが、“画素信号電圧Vxα<参照信号Vslop_1(T+β)”であれば比較パルスCOMPはHレベルに切り替る。このときの比較結果(比較パルスCOMP)がカウンタ部254に通知されており、カウンタ部254は、“画素信号電圧Vxα>参照信号Vslop_1(T+β)”の場合は、最終的なカウント値として“2T−1”を出力する。一方、“画素信号電圧Vxα<参照信号Vslop_1(T+β)”の場合は、最終的なカウント値として2Tを出力する。
スイッチ310の切替えや電圧比較部252での比較動作などに付随する処理遅延があっても、参照信号Vslop_1に対してその処理遅延を勘案して電圧レベルを嵩上げした参照信号Vslop_2を使用した処理を行なうことで、参照信号制御部25におけるスイッチ310の切替え時間や電圧比較部252における動作時間マージンを稼ぐことができる。これにより、参照信号Vslop_2での比較処理後にさらに参照信号Vslop_1での比較処理を完了するまでにカウントクロックCKdac のβクロック分以上“β+1”クロック分未満だけ要する場合においても、誤差を生じることなく処理できる。
<第1実施形態(第3例)>
図9〜図11は、第1実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理を説明する図である。ここで、図9は、第1実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理に適用される参照信号制御部25周辺の構成例を説明する回路ブロック図である。図10は、第1実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理に適用されるDA変換回路27aの詳細を説明する機能ブロック図である。図11は、第1実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理の動作原理を説明する図であって、4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4と画素信号電圧Vxとの関係を示している。
第1例では、1LSB分の電圧差のある2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2を切り替えて処理することで、AD変換に要する時間を比較例と比較して実質的に1/2とする事例であるのに対して、この第3例は、1LSB分の電圧差のある4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4を使用し、最初は最も電圧レベルの低い参照信号Vslop_2で比較処理を行ない、画素信号電圧Vxと参照信号Vslop_2とが一致した後には、参照信号Vslop_1,Vslop_3,Vslop_4を切り替えながら、画素信号電圧Vxと参照信号Vslop_1,Vslop_3,Vslop_4との大小関係を順次判定することで、AD変換に要する時間を比較例と比較して実質的に1/4とする事例である。
図9に示すように、第1実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理が適用される固体撮像装置1においては、DA変換回路27aは、1LSBずつの電圧差を持った4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4(Vslop_1>Vslop_2>Vslop_3>Vslop_4とする)を生成可能に構成されている。
DA変換回路27aは4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4を用意するので、図9に示すように、第3例のDA変換回路27aと参照信号制御部25とを繋ぐ参照信号Vslop用の配線数は4本になる。また、参照信号制御部25は、参照信号選択部300を、4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4を順次切り替えて電圧比較部252に供給する形態のものとする。
具体的には、第3例の参照信号選択部300は、4入力−1出力型のスイッチ312とスイッチ312の切替動作を制御する切替制御部(SEL)314とを画素列ごとに有する。切替制御部314は、自列の電圧比較部252から比較パルスCOMPが供給されるとともに図示を割愛した通信・タイミング制御部20からカウントクロックCKdac が供給され、またその制御出力SEL がスイッチ310の制御入力端およびカウンタ部254に供給されるようになっている。
切替制御部314は、電圧比較部252での前段比較処理が開始するとき(比較パルスCOMPはHレベルである)には4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4の内の電圧レベルの最も低い参照信号Vslop_4を選択して電圧比較部252に伝達する一方、比較パルスCOMPがHレベルからLレベルに切り替ると、カウントクロックCKdac の1クロック内(Tdac 内)で、残りの3種類の参照信号Vslop_3,Vslop_2,Vslop_1を順次(その順序は不問)選択して電圧比較部252に伝達するように、スイッチ312の切替動作(参照信号Vslopの選択動作)を制御する。
電圧比較部252の後段比較処理においては、順に供給される3種類の参照信号Vslop_3,Vslop_2,Vslop_1と自列の画素信号電圧Vxとを比較する。カウンタ部254は、前段比較処理終了時点(比較パルスCOMPがLになった時点)のカウント値Tを保持するとともに、電圧比較部252での後段比較処理における参照信号Vslop_3,Vslop_2,Vslop_1時の各比較パルスCOMPと切替制御部314からの制御出力SEL とに基づき、画素信号電圧Vxに対応する画素データを確定する。
第1実施形態(第3例)のDA変換回路27aは、その詳細を図10に示すように、第1例のDA変換回路27aにおける2ビット目(I*2^2)を担当する電流セルの構成を変形している。具体的には、LSBのシンク電流源322と同じように、電流の重付けがI(=I*2^0)のシンク電流源324,325を用意し、シンク電流源324の出力を抵抗素子334を介して、またシンク電流源325の出力を抵抗素子335を介して、それぞれ抵抗素子330に接続する。抵抗素子334とシンク電流源324との接続点を参照信号Vslop_3用の出力ノード380_3とし、抵抗素子335とシンク電流源325との接続点を参照信号Vslop_4用の出力ノード380_4とする。抵抗素子330,332,334,335の各抵抗値は、同じ値Rに設定する。
こうすることで、出力ノード380_2では、参照信号Vslop_1の電圧値Vrmp よりもさらに、LSBのシンク電流源322の電流値Iと抵抗素子332の抵抗値Rとの積に対応する電圧値(1LSB分の電圧値)が低下され、DA変換結果である参照信号Vslop_2として“Vrmp −1IR”が出力ノード380_2から出力される。出力ノード380_3では、参照信号Vslop_1の電圧値Vrmp よりもさらにシンク電流源324,325の合成電流値2*Iと抵抗素子334の抵抗値Rとの積に対応する電圧値(2LSB分の電圧値)が低下され、DA変換結果である参照信号Vslop_3として“Vrmp −2IR”が出力ノード380_3から出力される。
出力ノード380_4では、参照信号Vslop_3の電圧値“Vrmp −2IR”よりもさらに、シンク電流源325の電流値Iと抵抗素子335の抵抗値Rとの積に対応する電圧値(1LSB分の電圧値)が低下され、DA変換結果である参照信号Vslop_4として“Vrmp −3IR”が出力ノード380_4から出力される。IRは1LSB分であるから、参照信号Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4は、それぞれ参照信号Vslop_1よりも常に1LSB分,2LSB分,3LSB分だけ低下したものとなる。
図10に示す第1実施形態(第3例)の構成においては、抵抗素子330,332,334,335の各抵抗値を同じ値Rにすることで、電位差がR×Iだけ異なる4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4が出力され、さらにそれぞれの参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4はR×4・Iのステップ電圧で変化する。つまり、図11に示すように、4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4はそれぞれ1LSB電位が異なっており(Vslop_1>Vslop_2>Vslop_3>Vslop_4)、何れもカウントクロックCKdac 当たり4LSBのステップ電圧で変化していると言い換えることができる。
画素信号電圧Vxを画素データDに変換することとの関係においては、参照信号選択部300は、前段比較処理用の参照信号として、4種類の参照信号の内、同一カウント値での各値と画素信号電圧Vxとの比較において最初に画素信号電圧Vxと一致することになる方の参照信号Vslop_4を先ず前段参照信号として選択し、この参照信号Vslop_4と画素信号電圧Vxとの後段比較処理で比較パルスCOMPが反転したら(Lレベルになると)、残りの参照信号Vslop_3,Vslop_2,Vslop_1に切り替える。
デジタルデータの最下位ビットの分解能(1LSB)のレベル差を持ち、当該最下位ビットの分解能のレベル(1LSB)に対してM=4倍のステップ(4LSB)で変化するM種類の各参照信号Vslopと画素信号電圧Vxとを比較して画素信号電圧Vxの画素データDを特定する。ここで、画素信号電圧VxのAD変換結果である画素データDとの関係で言えば、カウントクロックCK0がタイミングT時点で比較パルスCOMPが反転したときの画素データを特定することになるので、その直前のタイミング“T−1”との関係においては、“Vslop_@(T)−Vslop_@(T−1)”は何れも4LSB分の差がある。各参照信号Vslop_@を1LSBに対して4倍(つまり4LSB)の変化率で変化させるので当然のことである。
一方、各参照信号Vslop_@と画素信号電圧Vxとの各比較結果に基づき画素データDを特定することを考えたときには、各参照信号Vslop_@のレベル差(本例では1LSB)を利用することで分解能を4LSBよりも向上することができる(本例では1LSBにする)。
本例の場合、Vslop_1>Vslop_2>Vslop_3>Vslop_4の関係があり、画素信号電圧Vxよりも参照信号Vslop_@(T)が下回ったときに比較パルスCOMPが反転し、その時点のカウント値を保持する点を考慮する。すなわち、画素信号電圧Vxに対してVslop_@(T)で比較パルスCOMPが反転すると言うことは、Vslop_@(T−1)≧画素信号電圧Vx>Vslop_@(T)であり、その間が4LSB分である。Vslop_1(T)>Vslop_2(T)>Vslop_3(T)>Vslop_4(T)でかつそれぞれの差が1LSB分である点を勘案すれば、Vslop_4(T−1)≧画素信号電圧Vx>(または≧)Vslop_1(T)であるか(その間が1LSB分)、Vslop_1(T)≧(または>)画素信号電圧Vx>Vslop_2(T)である(その間が1LSB分)、Vslop_2(T)≧(または>)画素信号電圧Vx>Vslop_3(T)である(その間が1LSB分)か、Vslop_3(T)≧(または>)画素信号電圧Vx>Vslop_4(T)である(その間が1LSB分)。
これにより、1LSB分の電圧差を持つ4種類の参照信号Vslop_@を4LSBの変化率でかつ階段状に変化させつつ、4種類の参照信号Vslop_@のそれぞれと画素信号電圧Vxとの比較結果を参照することで、画素信号電圧Vxの画素データDを1LSBの分解能で確定することができる。以下、その処理手順を具体的に説明する。
<第1実施形態(第3例)の処理手順>
図11を参照して、電圧比較部252による比較処理後のカウンタ部254における画素データDの確定手法を説明する。第1実施形態(第1例)と同様に、ここでも基本としては、参照信号制御部25におけるスイッチ310の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間が十分短く、参照信号Vslopの電位が4LSB変化する時間(カウントクロックCK0(本例では=CKdac )の1クロック分の時間に相当する)と比較しても十分に短いものと仮定する。
比較処理の開始前では、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルにしている。このため、参照信号制御部25において、各画素列のスイッチ310は、DA変換回路27aから出力される4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4の内の電圧レベルが最も低い参照信号Vslop_4を選択して電圧比較部252に供給する。各画素列の電圧比較部252は、比較処理の当初は、参照信号Vslop_4と対応する自列の垂直信号線19から供給される画素信号電圧Vxを比較し、画素信号電圧Vxαと参照信号Vslop_4とが一致する時点になると、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルからLレベルに切り替える。
参照信号制御部25において、各画素列のスイッチ310は、自列の電圧比較部252からの比較パルスCOMPがLレベルに切り替ると、図11(A)に示すように、参照信号Vslop_4から、たとえば参照信号Vslop_3→Vslop_2→Vslop_1の順で順次切り替える。これに応じて、電圧比較部252は、直ちに、画素信号電圧Vxを各参照信号Vslop_3,Vslop_2,Vslop_1と再度順次比較していく。カウンタ部254は、このときのカウント値Tを保持しておく。
図11(B)に示すように、各参照信号Vslop_3,Vslop_2,Vslop_1での比較時に“画素信号電圧Vxα>参照信号Vslop_@(T):@は3〜1”であれば比較パルスCOMPはLレベルであるが、“画素信号電圧Vxα<参照信号Vslop_@(T)”であれば比較パルスCOMPはHレベルである。このときの比較結果(比較パルスCOMP)がカウンタ部254に通知されており、各比較結果に基づき、以下のようにして画素データDを確定する。つまり、カウンタ部254は、4種類の参照信号Vslopの内の参照信号選択部300により選択された参照信号Vslop_4との電圧比較部252による比較処理が完了した時点のカウント値を保持するとともに、参照信号選択部300による残りの3種類の参照信号Vslop_3,_2,_1のそれぞれの選択に応じた画素信号電圧Vxとの電圧比較部252による各比較結果に基づき、保持しておいたカウント値Tを修正することで画素信号電圧Vxのデジタルデータを確定する。
たとえば、画素信号電圧Vxα>参照信号Vslop_1(T)の場合、最終的なカウント値として“4T−3”を出力する。4LSBステップでのAD変換処理時に、参照信号Vslop_4(T)の“4T−3”に相当する電圧値よりも画素信号電圧Vxaが高く、画素信号電圧Vxaとしては4Tレベル(“4T−1”〜“4T”の範囲:以下同様)には達しておらず“4T−4”〜“4T−3”の範囲にあるからである。
参照信号Vslop_2(T)<画素信号電圧Vxα≦参照信号Vslop_1(T)の場合、最終的なカウント値として“4T−2”を出力する。画素信号電圧Vxbとしては4Tレベルには達しておらず“4T−3”〜“4T−2”の範囲にあるからである。参照信号Vslop_3(T)<画素信号電圧Vxα≦参照信号Vslop_2(T)の場合、最終的なカウント値として“4T−1”を出力する。画素信号電圧Vxcとしては4Tレベルには達しておらず“4T−2”〜“4T−1”の範囲にあるからである。参照信号Vslop_4(T)<画素信号電圧Vxα≦参照信号Vslop_3(T)の場合、最終的なカウント値として“4T”を出力する。画素信号電圧Vxdは4Tレベルに達しているからである。
これにより、比較例のDA変換回路27aを用いた参照信号比較型AD変換処理に場合に比べて、参照信号Vslopを4LSBずつ制御しながら1LSB単位でのAD変換処理が実現されることになる。カウントクロックCK0やカウントクロックCKdac の周波数を高速にしなくても、実質的にAD変換に必要な時間が1/4になるといった利点が得られる。AD変換に必要な時間を1/4にできるので、ビット分解能を維持しつつカウンタ部254での消費電力増大を抑えながらAD変換処理を4倍に高速化することができ、かつ第1実施形態よりもさらに高速にできる。
なお、前述の基本例では、参照信号制御部25におけるスイッチ310の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間が十分短く、参照信号Vslopの電位が4LSB変化する時間と比較しても十分に短いものと仮定していたが、実際にはこのようにならない場合も考えられる。
この問題を解消するには、第1例に対する変形例である第2例と同様に、参照信号Vslopを切り替えて比較処理を行なう都度処理遅延が発生するから、処理遅延クロック数βに合わせて、各参照信号Vslop_4,Vslop_3,Vslop_2,Vslop_1のレベル差が1LSBではなく“1+2β”LSBとなるように嵩上げしておき、カウンタ部254におけるカウント動作と同期させてAD変換動作を行なえばよい。参照信号Vslop_4を基準とすると、参照信号Vslop_3は“1+2β”LSB、参照信号Vslop_2は2*(1+2β)LSB、参照信号Vslop_1は3*(1+2β)LSBだけ高く設定することになる。
なお、“k*(1+2β)”LSB分だけ参照信号Vslop_1の電位を高めるためには、その分の嵩上げに対応した回路構成にすればよい。たとえば、各抵抗素子332の抵抗値を、抵抗素子330の抵抗値と比較して“1+2β”倍に設定してやればよい。
参照信号選択部300では、前段参照信号である参照信号Vslop_4と画素信号電圧Vxとの比較で比較パルスCOMPが反転すると(Lレベルになると)、即時に残りの何れかに切り替えるとともに、以後は、残りの参照信号をカウンタ部254のカウントステップのタイミング差を持たせて順次切り替える。こうすることで、各回の参照信号の切替え〜比較処理の期間をAD単位Tadに揃えるとともに、レベルが順次“1+2β”LSBで異なる参照信号Vslopの各タイミング時点の値を事実上参照信号Vslop(T)と同じにして比較ができるようになる。
<第1実施形態(第4例):一般化>
図12は、第1実施形態(第4例)の参照信号比較型AD変換処理を説明する図であって、M種類の参照信号Vslopを示している。
1LSBずつの電圧差を持つ複数種類の参照信号Vslopを使用するとともに、第1例では2LSBステップで参照信号Vslopを変化させることでAD変換期間を1/2に短縮し、第3例では4LSBステップで参照信号Vslopを変化させることでAD変換期間を1/4に短縮する事例を示したが、これを発展させることで、結局、第1実施形態の処理態様としては、1LSBずつの電圧差を持ち階段状に変化する複数種類の参照信号Vslopを使用するとともに、カウントクロックCKdac に基づく参照信号Vslopの最小ステップ幅を2^nLSB(nは正の整数)として、電圧比較部252の入力部においても階段状に変化するようにしておくことで、AD変換期間を1/2^nに短縮することができる。そのためには、先ず、1LSBの電圧差を持ち2^nLSBステップの2^n種類の参照信号VslopをDA変換回路27aにて生成する。
“2^n”とするのは、デジタルデータのビットの重付けとの整合性から、最小ステップ幅の設定が容易でかつ回路構成もコンパクトになるからである。また、1LSBの電圧差を持たせているのでは、AD変換の分解能を従前と同じく1LSBにするためである。原理的には、分解能の低下を認めるときにはmLSBにしてもよいが、こうすることは、発明の本質から外れるので本実施形態では採用しない。AD変換の高速化を分解能の低下で実現することに他ならないからであり、本実施形態は、AD変換の高速化を分解能の低下を招くことなく実現することにあるからである。
“2^n”とすることは必須ではなく、図12に示すように、1LSBの電圧差を持つk種類の参照信号VslopをDA変換回路27aにて生成し、各参照信号Vslopの最小ステップ幅をkLSB(kは正の整数)とすることにより、AD変換期間を1/kに短縮することができる。
k=2^nとすると、第1例〜第3例のように参照信号Vslopの変化方向を漸次電圧レベルが低下するものとする場合には、DA変換回路27aから出力される2^n種類の参照信号Vslopの内の電圧レベルが最も低い参照信号Vslop_minと画素信号電圧Vxとを先ず比較し、両者が一致する時点になったら、残りの参照信号Vslop_minよりも1LSB〜(2^n−1)LSBだけ電圧レベルの高い各参照信号Vslopに切り替えながら画素信号電圧Vxと順に比較するとよい。カウンタ部254は、このときのカウント値Tを保持しておき、かつ、各参照信号Vslopと画素信号電圧Vxとの比較結果に基づいて画素データを特定すればよい。
ただし、k種類の各参照信号のレベル差を1LSBとするとk種類の全ての参照信号Vslopと画素信号電圧Vxとの比較をAD単位Tad内で完結させる必要があるので、参照信号Vslopの数を増やすほど処理遅延が問題となる。処理遅延が問題となるときには、第2例のように、処理遅延クロック数βに合わせて、k種類の各参照信号のレベル差が1LSBではなく“1+2β”LSBとなるように嵩上げ(嵩下げ)しておき、カウンタ部254におけるカウント動作と同期させてAD変換動作を行なえばよい。各参照信号Vslopの比較処理時には、カウンタ部254のカウントステップのタイミング差を持たせて各参照信号Vslopを切り替える。
<第2実施形態(第1例)>
図13および図14は、第2実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理を説明する図である。ここで、図13は、第2実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理に適用されるDA変換回路27aの詳細を説明する機能ブロック図である。図14は、第2実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理の動作原理を説明する図であって、2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2と画素信号電圧Vxとの関係を示している。
第1実施形態の各例では、1LSB分の電圧差のある2^n種類の参照信号Vslopを順次切り替えて画素信号電圧Vxと比較することで、AD変換に要する時間を比較例と比較して実質的に1/2^nとする事例であるのに対して、この第2実施形態(第1例)は、参照信号Vslopのフルレンジ(Full Range)における起点側(第1実施形態との比較では最大値)から少なくもフルレンジに対して1/2(ハーフレンジ(Half Range)もしくは1/2レンジと称する)の電圧レベルまでをカバーする最小ステップ電圧が1LSBの第1の参照信号Vslop_1と、少なくともハーフレンジの電圧レベルからフルレンジの電圧レベルまでをカバーする最小ステップ電圧が1LSBの第2の参照信号Vslop_2とを使用する、つまり、ハーフレンジだけずらした2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2を使用することで、AD変換に要する時間を比較例と比較して実質的に1/2とする事例である。
参照信号Vslop_1でフルレンジの前半の電圧レベルの比較処理を担当し、参照信号Vslop_2でフルレンジの後半の電圧レベルの比較処理を担当するようにすることで、AD変換処理時間の短縮効果においては第1実施形態(第1例)と同じであるが、最初に画素信号電圧Vxがフルレンジの前半と後半の何れの電圧レベル側にあるかを特定したら、参照信号Vslop_1,Vslop_2の内の画素信号電圧Vxの電圧レベルに応じた方を使用することで、参照信号制御部25におけるスイッチ310の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間の問題を解消するようにした点に特徴を有する。
このような2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2を生成する第2実施形態(第1例)のDA変換回路27aの構成としては、図5(B)に示した比較例のDA変換回路27aにおいて、LSB側の電流セルの構成を変更する。具体的には、図13に示すように、最上位ビットMSB(シンク電流源324の電流の重付けは変更しない)については出力スイッチ350が設けられておらず、その代わりに参照信号Vslop_1用の出力ノード380_1と参照信号Vslop_2用の出力ノード380_2との間に抵抗素子336が設けられ、シンク電流源322の出力が抵抗素子336を介して抵抗素子330に接続される。抵抗素子336の抵抗値と抵抗素子332の抵抗値は同じ値Rに設定する。
こうすることで、参照信号Vslop_2用の出力ノード380_2においては、参照信号Vslop_1の電圧値Vrmp よりもさらに、MSBのシンク電流源322の電流値2^(N−1)*I(Nは画素データのビット幅)と抵抗素子336の抵抗値との積に対応する電圧値(フルレンジに対して最上位ビットMSBの重付け分=1/2レンジ分)が低下され、DA変換結果である参照信号Vslop_2として出力ノード380_2から出力される。つまり、参照信号Vslop_2は、参照信号Vslop_1よりも常に2^(N−1)LSB(つまり1/2レンジ分)だけ低下したものとなる。図13においては、8ビット(N=8)対応の例を示しており、フルレンジは256であるから、参照信号Vslop_2は、“Vrmp −128IR”となる。
ここで、図5(B)に示す比較例のDA変換回路27aにおいてR×Iは1LSB(AD変換の量子化単位)に相当することを考慮すると、図13に示す第2実施形態(第1例)の構成においては、図14に示すように、2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2は2^(N−1)LSB分(フルレンジの1/2)電位が異なっており(Vslop_1>Vslop_2)、何れもカウントクロックCKdac 当たり1LSBのステップ電圧で変化していると言い換えることができる。
第2実施形態(第1例)のDA変換回路27aは2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2を用意するので、図示を割愛するが、図5に示した第1実施形態(第1例)のDA変換回路27aと参照信号制御部25とを繋ぐ参照信号Vslop用の配線数は2本になる。また、参照信号制御部25は、スイッチ310を、2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2を切り替えて比較部252に供給する2入力−1出力型にする。この点は、2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2を用意する第1実施形態(第1例)と同じである。
<第2実施形態(第1例)の処理手順>
図14を参照して、第2実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理手順の基本例を説明する。一例としてAD変換のフルレンジが8ビットで説明する。なお、第2実施形態(第1例に限らずだの例も含む)の場合、参照信号Vslop_1,Vslop_2は、電圧比較部252の入力部においても階段状である必要はない。
第2実施形態(第1例)においては、比較処理の最初に、画素信号電圧Vxが0以上128IR以下であるか128IRを超え256IRの範囲であるか、つまりAD変換のフルレンジにおける0〜128LSBの領域と128〜256LSBの領域の何れに属しているかを調べ、その後1LSBステップで変化(減少)する1/2レンジ幅の参照信号Vslop(参照信号Vslop_1,Vslop_2の何れか一方)と画素信号電圧Vxとを比較して画素信号電圧Vxの画素データを確定することで画素信号電圧VxのAD変換を行なう。このため、比較例と比較して、実質的にAD変換時間を1/2に抑えることができる。
先ず比較処理の開始前では、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルにしている。このため、参照信号制御部25内の各スイッチ310はDA変換回路27aから出力される2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2の内の参照信号Vslop_2の方を選択して電圧比較部252に伝達する。このときの参照信号Vslop_1の初期出力値(他のレンジとの境界部分の値)はVrmp (=0*IR)で、参照信号Vslop_2の初期出力値はVrmp −(2^(N−1))IRで、カウント値は“0”とする。たとえば、8ビット(N=8)の場合には、参照信号Vslop_1の初期出力値はVrmp (0IR)、参照信号Vslop_2の初期出力値はVrmp −128IRである。
後半の電圧レベル(フルレンジにおける128〜256LSBの領域)を担当する参照信号Vslop_2の他方の参照信号Vslop_1との境界となる初期値(つまりフルレンジの1/2のレベル)と画素信号電圧Vxとを比較する。すなわち、各画素列の電圧比較部252は、比較処理の最初は、参照信号Vslop_2(初期値)と対応する自列の垂直信号線19から供給される画素信号電圧Vxを比較し、画素信号電圧Vxが参照信号Vslop_2(初期値)以上となる列(つまり参照信号Vslop_2(初期値)≦画素信号電圧Vxの列)については、電圧比較部252は比較パルスCOMPをLレベルとする一方、画素信号電圧Vxが参照信号Vslop_2(初期値)未満となる列(つまり参照信号Vslop_2(初期値)>画素信号電圧Vxの列)については、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルとする(Hレベルを維持する)。
これを受けて、画素信号電圧Vx(アナログ値)が参照信号Vslop_2(初期値)以上となる列(つまり参照信号Vslop_2(初期値)≦画素信号電圧Vxの列)については、スイッチ310は、参照信号Vslop_1を選択して電圧比較部252に伝達する。電圧比較部252は比較パルスCOMPをLレベルからHレベルに直ちに切り替える。参照信号Vslop_1(初期値)>画素信号電圧Vxとなるからである。
以後、各画素列において、電圧比較部252は、1LSBステップで変化する参照信号Vslop_1もしくは参照信号Vslop_2と画素信号電圧Vxとを比較し、画素信号電圧Vxと参照信号Vslop_1もしくは参照信号Vslop_2が一致する時点になると、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルからLレベルに切り替える。この比較パルスCOMPの変化情報はカウンタ部254に伝達されており、カウンタ部254は、この変化をトリガーとして、このときのカウント値Tを保持しておく。つまり、カウンタ部254は、画素信号電圧Vxと比較対象とした参照信号Vslopの大小関係が反転するタイミングのカウント値Tを保持する。
たとえば図14に示すように、0〜128LSBの領域の画素信号電圧Vxaのときには参照信号Vslop_1が使用され、参照信号Vslop_1を使用していた画素列のカウンタ部254は、最終的なカウント値として保持しておいたカウント値Taをそのまま出力する。一方、128〜256LSBの領域の画素信号電圧Vxbのときには参照信号Vslop_2が使用され、参照信号Vslop_2を使用していた画素列のカウンタ部254は、最終的なカウント値として“Tb+ΔT”を出力する。ここで、ΔTは、Nビットの半分に相当するカウント値(=2^(N−1)LSB=128LSB分)である。参照信号Vslop_2を使用するのは、画素信号電圧Vxがフルレンジの後半分であり、参照信号Vslop_1に対して、事実上、Nビットの半分に相当するカウント値(=2^(N−1)LSB分)の嵩上げがあるからである。
なお、本例の場合、初回の比較時に、参照信号Vslop_2(初期値)>画素信号電圧Vxの画素列のカウント値における最上位ビットに“1”を代入しておいてもよい。このようにすることで、予め最終的なカウント値に上記のΔTを加算しておくことに対応する。
これにより、参照信号Vslopを1LSBずつ制御しながら1SLB単位でのAD変換処理が実現されることになる。予め画素信号電圧Vxがフルレンジに対して1/2を超えるか否かつまりフルレンジを2等分した領域の何れに属するかを分類しておき、図14に示すような2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2の内の属する領域に対応するものと画素信号電圧Vxとを比較するようにしているので、カウントクロックCK0やカウントクロックCKdac の周波数を高速にしなくても、実質的にAD変換に必要な時間が1/2になるといった利点が得られる。AD変換に必要な時間を1/2にできるので、ビット分解能を維持しつつカウンタ部254での消費電力増大を抑えながらAD変換処理を2倍に高速化することができる。比較例では参照信号Vslopをフルレンジで変化させる必要があるところを、第2実施形態(第1例)ではハーフレンジ分だけ動かすだけでよいからである。
加えて、予め画素信号電圧Vxがフルレンジに対して1/2を超えるか否かを分類しておくことで、以後は、1LSBステップで変化する参照信号Vslop_1もしくは参照信号Vslop_2と画素信号電圧Vxとを比較して画素データを特定する1回の比較処理で済ますことで画素データを特定できるので、第1実施形態(第1例)で生じていたような、参照信号制御部25におけるスイッチ310の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間の問題を解消できる。
<第2実施形態(第2例)>
図15〜図17は、第2実施形態(第2例)の参照信号比較型AD変換処理を説明する図である。ここで、図15は、第2実施形態(第2例)の参照信号比較型AD変換処理に適用されるDA変換回路27aの詳細(その1)を説明する機能ブロック図である。図16は、第2実施形態(第2例)の参照信号比較型AD変換処理に適用されるDA変換回路27aの詳細(その2)を説明する機能ブロック図である。図17は、第2実施形態(第2例)の参照信号比較型AD変換処理の動作原理を説明する図であって、4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4と画素信号電圧Vxとの関係を示している。
第2実施形態(第1例)では、ハーフレンジだけずらした2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2を使用することで、AD変換に要する時間を比較例と比較して実質的に1/2とする事例であるのに対して、第2実施形態(第2例)は、1/4レンジだけずらした4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4を使用することで、AD変換に要する時間を比較例と比較して実質的に1/4とする事例である。
フルレンジを4等分し、それぞれの電圧範囲を担当する各参照信号Vslopでフルレンジの各部分の電圧レベルと画素信号電圧Vxとの比較処理を行なうようにすることで、AD変換処理時間の短縮効果においては第1実施形態(第3例)と同じであるが、最初に画素信号電圧Vxがフルレンジを4等分した何れの領域(電圧レベル)にあるかを特定したら、4等分に対応する各参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4の内の画素信号電圧Vxの電圧レベルに応じた方を使用することで、参照信号制御部25におけるスイッチ310の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間の問題を解消するようにした点に特徴を有する。
このような4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4を生成する第2実施形態(第2例)のDA変換回路27aの構成としては、図5(B)に示した比較例のDA変換回路27aにおいて、LSBおよび1段下位側の各電流セルの構成を変更する。具体的には、図15に示す構成例(その1)のように、最上位ビットMSBおよびもう1段下位の“MSB−1”(各シンク電流源324の電流の重付けは変更しない)については出力スイッチ350を設けない。その代わりに参照信号Vslop_1用の出力ノード380_1と“MSB−1”側に設けられる参照信号Vslop_2用の出力ノード380_2との間に抵抗素子337が設けられ、シンク電流源322の出力が抵抗素子337を介して抵抗素子330に接続される。また、参照信号Vslop_1用の出力ノード380_1とMSB側に設けられる参照信号Vslop_3用の出力ノード380_3との間に抵抗素子338が設けられ、シンク電流源322の出力が抵抗素子338を介して抵抗素子330に接続される。
さらに、参照信号Vslop_3用の出力ノード380_3と基準電位(GND )との間に、“MSB−1”のシンク電流源324と同じ重付けを持ったシンク電流源326および抵抗素子339の直列回路でなる電流セルを設け、シンク電流源326と抵抗素子339の接続点を参照信号Vslop_4用の出力ノード380_4とする。各抵抗素子330,337,338,339の抵抗値は同じ値Rに設定する。
こうすることで、参照信号Vslop_2用の出力ノード380_2においては、参照信号Vslop_1の電圧値Vrmp よりもさらに、“MSB−1”用のシンク電流源322の電流値2^(N−2)*I(Nは画素データのビット幅)と抵抗素子337の抵抗値との積に対応する電圧値(フルレンジに対して1/4レンジ分)が低下され、DA変換結果である参照信号Vslop_2として出力ノード380_2から出力される。つまり、参照信号Vslop_2は、参照信号Vslop_1よりも常に1/4レンジ分だけ低下したものとなる。
また、参照信号Vslop_3用の出力ノード380_3においては、参照信号Vslop_1の電圧値Vrmp よりもさらに、“MSB”用のシンク電流源322の電流値2^(N−1)*I(Nは画素データのビット幅)と抵抗素子338の抵抗値との積に対応する電圧値(フルレンジに対して1/2レンジ分)が低下され、DA変換結果である参照信号Vslop_3として出力ノード380_3から出力される。つまり、参照信号Vslop_3は、参照信号Vslop_1よりも常に1/2レンジ分だけ低下したものとなる。
また、参照信号Vslop_4用の出力ノード380_4においては、参照信号Vslop_3の電圧値Vrmp−1/2レンジ)よりもさらに、シンク電流源326の電流値2^(N−2)*I(Nは画素データのビット幅)と抵抗素子339の抵抗値との積に対応する電圧値(フルレンジに対して1/4レンジ分)が低下され、DA変換結果である参照信号Vslop_4として出力ノード380_4から出力される。抵抗素子338およびMSBのシンク電流源322と抵抗素子339およびシンク電流源326とで、3/4レンジ分の電流セルが構成される。参照信号Vslop_4は、参照信号Vslop_1よりも常に3/4レンジ分だけ低下したものとなる。つまり、4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4は、1/4レンジ(8ビット時には64LSB)の電圧差を持つ。
なお、シンク電流源326および抵抗素子339を設ける代わりに、図16に示す構成例(その2)のように、参照信号Vslop_1用の出力ノード380_1と基準電位(GND )との間に、3/4レンジ分の重付けを持ったシンク電流源327および抵抗素子340の直列回路でなる3/4レンジ分の電流セルを設け、シンク電流源327と抵抗素子340の接続点を参照信号Vslop_4用の出力ノード380_4としてもよい。各抵抗素子330,337,338,340の抵抗値は同じ値Rに設定する。
この場合、参照信号Vslop_4用の出力ノード380_4においては、参照信号Vslop_1の電圧値Vrmp よりもさらに、シンク電流源327の電流値(3/4レンジ分)と抵抗素子340の抵抗値との積に対応する電圧値(フルレンジに対して3/4レンジ分)が低下され、DA変換結果である参照信号Vslop_4として出力ノード380_4から出力される。つまり、参照信号Vslop_4は、参照信号Vslop_1よりも常に3/4レンジ分だけ低下したものとなる。図15および図16においては、8ビット(N=8)対応の例を示しており、フルレンジは256であるから、参照信号Vslop_2は“Vrmp −64IR”、参照信号Vslop_3は“Vrmp −128IR”、参照信号Vslop_4は“Vrmp −192IR”となる。
ここで、図5(B)に示す比較例のDA変換回路27aにおいてR×Iは1LSB(AD変換の量子化単位)に相当することを考慮すると、図15および図16に示す第2実施形態(第1例)の構成においては、図17に示すように、4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4は、2^(N−2)LSB分(フルレンジの1/4)電位が異なっており(Vslop_1>Vslop_2>Vslop_3>Vslop_4)、何れもカウントクロックCKdac 当たり1LSBのステップ電圧で変化していると言い換えることができる。
第2実施形態(第2例)のDA変換回路27aは4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2Vslop_3,Vslop_4を用意するので、図示を割愛するが、図9に示した第1実施形態(第3例)と同様に、DA変換回路27aと参照信号制御部25とを繋ぐ参照信号Vslop用の配線数は4本になる。また、参照信号制御部25は、参照信号を、4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4を切り替えて比較部252に供給する4入力−1出力型のスイッチ312およびスイッチ312を制御する切替制御部314を有するものとする。この点は、4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4を用意する第1実施形態(第3例)と同じである。
第2実施形態(第2例)の切替制御部314は、画素信号電圧Vxと4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4の各初期値との初回の比較処理における判定結果に基づき、その後に使用する参照信号Vslopを特定する。
<第2実施形態(第2例)の処理手順>
図17を参照して、第2実施形態(第2例)の参照信号比較型AD変換処理手順の基本例を説明する。一例としてAD変換のフルレンジが8ビットで説明する。
参照信号Vslopを1LSBステップ変化させる比較処理の開始前では、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルにしている。これを受けて切替制御部314は、参照信号制御部25内の各スイッチ312を、DA変換回路27aから出力される4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4の内の最も電圧レベルの低い参照信号Vslop_4を選択して電圧比較部252に伝達する。
このときの参照信号Vslop_1の初期出力値(他のレンジとの境界部分の値)はVrmp (=0*IR)で、参照信号Vslop_2の初期出力値はVrmp −(2^(N−2))IR、参照信号Vslop_3の初期出力値はVrmp −(2^(N−1))IR、参照信号Vslop_4の初期出力値はVrmp −(2^(N−1)+2^(N−2))IR、カウント値は“0”とする。たとえば、8ビット(N=8)の場合には、参照信号Vslop_1の初期出力値はVrmp (0IR)、参照信号Vslop_2の初期出力値はVrmp −64IR、参照信号Vslop_3の初期出力値はVrmp −128IR、参照信号Vslop_4の初期出力値はVrmp −192IRである。
第2実施形態(第2例)においては、比較処理の最初に、画素信号電圧Vxが0〜64LSB,64〜128LSB,128〜192LSB,192〜256LSBの各領域の何れに属しているかを調べ、その後1LSBステップで減少する1/4レンジ幅の参照信号Vslop(参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4の何れか1つ)と画素信号電圧Vxとを比較して画素信号電圧Vxの画素データを確定することで画素信号電圧VxのAD変換を行なう。このため、比較例と比較して、実質的にAD変換時間を1/4に抑えることができる。
たとえば、電圧比較部252の比較パルスCOMPを参照しながら、必要に応じて参照信号Vslop_3,Vslop_2の順に切り替え、これに応じて電圧比較部252では、参照信号Vslop_4,Vslop_3,Vslop_2の各初期値(つまりフルレンジの3/4,1/2,1/4の各レベル)と画素信号電圧Vxとを比較することで、その後に使用する参照信号Vslopを特定する。具体的には、画素信号電圧Vxα<参照信号Vslop_4(初期値)のときには比較パルスCOMPはHが維持されるので、画素信号電圧Vxαが192〜256LSBの領域に属していることが特定され、参照信号Vslop_4を用いた比較処理を開始する。
画素信号電圧Vxα≧参照信号Vslop_4(初期値)のときには比較パルスCOMPはLになるので、切替制御部314はスイッチ312を制御して、参照信号Vslop_4よりも64LSBだけ電圧レベルの高い参照信号Vslop_3を選択して電圧比較部252に伝達する。このとき、画素信号電圧Vxα<参照信号Vslop_3(初期値)であれば比較パルスCOMPはHになるので、画素信号電圧Vxαが128〜192LSBの領域に属していることが特定され、参照信号Vslop_3を用いた比較処理を開始する。
画素信号電圧Vxα≧参照信号Vslop_3(初期値)のときには比較パルスCOMPはLになるので、切替制御部314はスイッチ312を制御して、参照信号Vslop_3よりも64LSBだけ電圧レベルの高い参照信号Vslop_2を選択して電圧比較部252に伝達する。このとき、画素信号電圧Vxα<参照信号Vslop_2(初期値)であれば比較パルスCOMPはHになるので、画素信号電圧Vxαが64〜128LSBの領域に属していることが特定され、参照信号Vslop_2を用いた比較処理を開始する。
画素信号電圧Vxα≧参照信号Vslop_2(初期値)のときには比較パルスCOMPはLになるので、切替制御部314はスイッチ312を制御して、参照信号Vslop_2よりも64LSBだけ電圧レベルの高い参照信号Vslop_1を選択して電圧比較部252に伝達する。このとき、画素信号電圧Vxα<参照信号Vslop_2(初期値)となり比較パルスCOMPはHになるので、画素信号電圧Vxαが0〜64LSBの領域に属していることが特定され、参照信号Vslop_1を用いた比較処理を開始する。
参照信号制御部25において、画素列ごとのスイッチ310は、それぞれ、画素信号電圧Vxα>192IRとなる画素列については参照信号Vslop_4、192IR≧画素信号電圧Vx>128IRとなる画素列については参照信号Vslop_2、128IR≧画素信号電圧Vx>64IRとなる画素列については参照信号Vslop_3、64IR≧画素信号電圧Vxとなる画素列については参照信号Vslop_4をそれぞれ選択して電圧比較部252に供給する。その結果、全列の電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルに初期設定し次の比較処理に備える。
以後、各画素列において、電圧比較部252は、1LSBステップで変化する参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4の何れかと画素信号電圧Vxとを比較し、両者が一致する時点になると、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルからLレベルに切り替える。この比較パルスCOMPの変化情報はカウンタ部254に伝達されており、カウンタ部254は、この変化をトリガーとして、このときのカウント値Tを保持しておく。
参照信号Vslop_1を使用していた画素列のカウンタ部254は、最終的なカウント値として保持しておいたカウント値Tをそのまま出力する。参照信号Vslop_2を使用していた画素列のカウンタ部254は、最終的なカウント値として“T+ΔT1”を出力する。ここで、ΔT1は、Nビットの1/4に相当するカウント値(=2^(N−2)LSB分)である。
参照信号Vslop_2を使用するのは、画素信号電圧Vxが64〜128LSBの領域にあるときであり、参照信号Vslop_1に対して、事実上、2^(N−2)LSB分)の嵩上げがあるからである。参照信号Vslop_3を使用していた画素列のカウンタ部254は、最終的なカウント値として“T+ΔT2”を出力する。ここで、ΔT2は、Nビットの1/2に相当するカウント値(=2^(N−1)LSB分)である。参照信号Vslop_3を使用するのは、画素信号電圧Vxが128〜192LSBの領域にあるときであり、参照信号Vslop_1に対して、事実上、2^(N−1)LSB分)の嵩上げがあるからである。
参照信号Vslop_4を使用していた画素列のカウンタ部254は、最終的なカウント値として“T+ΔT3”を出力する。ここで、ΔT3は、Nビットの3/4に相当するカウント値(=3*2^(N−2)LSB分)である。参照信号Vslop_4を使用するのは、画素信号電圧Vxが192〜256LSBの領域にあるときであり、参照信号Vslop_1に対して、事実上、3*2^(N−2)LSB分)の嵩上げがあるからである。
これにより、参照信号Vslopを1LSBずつ制御しながら1SLB単位でのAD変換処理が実現されることになるし、予め画素信号電圧Vxがフルレンジを4等分した領域の何れに属するかを分類しておき、図17に示すような4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4の内の属する領域に対応するものと画素信号電圧Vxとを比較するようにしているので、カウントクロックCK0やカウントクロックCKdac の周波数を高速にしなくても、実質的にAD変換に必要な時間が1/4になるといった利点が得られる。AD変換に必要な時間を1/4にできるので、ビット分解能を維持しつつカウンタ部254での消費電力増大を抑えながらAD変換処理を4倍に高速化することができる。比較例では参照信号Vslopをフルレンジで変化させる必要があるところを、第2実施形態(第2例)では1/4レンジ分だけ動かすだけでよいからである。
加えて、予め画素信号電圧Vxがフルレンジを4等分した領域の何れに属するかを分類しておくことで、以後は、1LSBステップで変化する参照信号Vslop_1,Vslop_2,Vslop_3,Vslop_4の何れか1つと画素信号電圧Vxとを比較して画素データを特定する1回の比較処理で済ますことで画素データを特定できるので、第1実施形態(第3例)で生じていたような、参照信号制御部25におけるスイッチ310の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間の問題を解消できる。
<第2実施形態(第3例);一般化>
図18は、第2実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理を説明する図であって、M種類の参照信号Vslopと画素信号電圧Vxとの関係を示している。
第2実施形態(第1例)ではフルレンジを2等分して対応する参照信号Vslopを使用して画素信号電圧Vxと比較を行なうことでAD変換期間を1/2に短縮し、第2実施形態(第2例)ではフルレンジを4等分して対応する参照信号Vslopを使用して画素信号電圧Vxと比較を行なうことでAD変換期間を1/4に短縮する事例を示したが、これを発展させることで、結局、第2実施形態の処理態様としては、フルレンジを2^n等分して対応する領域の1LSBの変化率で階段状に変化する参照信号Vslopを使用して画素信号電圧Vxと比較を行なうことでAD変換期間を1/2^nに短縮することができる。
“2^n”とするのは、デジタルデータのビットの重付けとの整合性から、各参照信号Vslopの生成が容易でかつ回路構成もコンパクトになるからである。ただし、“2^n”とすることは必須ではなく、図18に示すように、フルレンジをk(kは正の整数)個の領域に等分して、画素信号電圧Vxに対応する領域の1LSBの変化率で階段状に変化する参照信号Vslopを使用して画素信号電圧Vxと比較を行なうことでAD変換期間を1/kに短縮することができる。
初回の比較処理において画素信号電圧Vxとフルレンジ×1/k〜フルレンジ×(k−1)/kの範囲内でフルレンジ×1/k刻みで存在する各参照信号Vslopとを比較することで、画素信号電圧Vxが、k等分した領域の何れに属するかを特定してAD変換用の参照信号Vslopとするものを特定する。つまり、画素信号電圧Vxとフルレンジ×1/k刻みの各参照信号Vslopの初期電圧値の比較(特に領域特定比較と称する)を行ない、次にこの領域特定比較処理結果に基づいて前記各参照信号Vslopの中からAD変換用の参照信号Vslopとするものを選択する。
以後、電圧比較部252は、1LSBステップで変化する画素信号電圧Vxの領域特定比較処理結果に応じた参照信号Vslop(初期値がフルレンジ×1/k刻みの値の何れかであり、最小ステップ電圧が1LSB)の何れかと画素信号電圧Vxとを比較する。カウンタ部254は、画素信号電圧Vxと比較対象とした参照信号Vslopの大小関係が反転するタイミングのカウント値Tを保持する。
カウンタ部254は、比較対象とした参照信号Vslopがフルレンジをk等分した何れの領域に対応するものであるのかに応じて、(m−1)*εだけデータの嵩上げ(データ修正)を行なうことで、画素信号電圧Vxのデジタルデータを確定させる。ここで、εは、Nビットのフルレンジのカウント値の1/kに相当するカウント値であり、画素信号電圧VxのAD変換に使用される参照信号Vslopの参照子である。
<第3実施形態>
図19〜図21は、第3実施形態の参照信号比較型AD変換処理を説明する図である。ここで、図19は、第3実施形態の参照信号比較型AD変換処理に適用されるDA変換回路27aの詳細を説明する機能ブロック図である。図20は、第3実施形態の参照信号比較型AD変換処理の動作原理を説明する図であって、4種類の参照信号Vslopと画素信号電圧Vxとの関係を示している。図21は、第3実施形態の参照信号比較型AD変換処理に適用される参照信号制御部25の1画素列分を示す図である。
第3実施形態は、前述の第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせたものである。図示した例では、参照信号Vslop_1に対して1LSB分の電圧差を持つ2種類の参照信号Vslopを用意するようにした第1実施形態(第1例)と、フルレンジを2等分する2種類の参照信号Vslopを用意するようにした第2実施形態(第1例)とを組み合わせている。
なお、MSBの電流セルにおいては、その電流の重付けがI*127のシンク電流源328に変更している。これは、参照信号Vslop_1に対して1LSB分の電圧差を持つ2種類の参照信号Vslopを用意するようにした第1実施形態(第1例)を適用することに対応したものである。さらに、参照信号Vslop_3用の出力ノード380_3と基準電位(GND )との間に、LSBのシンク電流源322と同じ重付けを持ったシンク電流源329および抵抗素子341の直列回路でなる電流セルを設け、シンク電流源329と抵抗素子341の接続点を参照信号Vslop_4用の出力ノード380_4とする。各抵抗素子330,332,338,341の抵抗値は同じ値Rに設定する。
こうすることで、図20に示すように、参照信号Vslop_1の電圧値Vrmp よりもさらに1LSB低下した“Vrmp −1IR”が参照信号Vslop_2として出力ノード380_2(抵抗素子332とLSBのシンク電流源322との接続点)から出力される。参照信号Vslop_1の電圧値Vrmp よりも1/2レンジ(128IR)分だけ低下した参照信号Vslop_3(=Vrmp −128IR)として出力ノード380_3(抵抗素子338とシンク電流源328との接続点)から出力される。参照信号Vslop_1の電圧値Vrmp よりも1/2レンジ分+1LSBだけ低下した参照信号Vslop_4(=Vrmp −129IR)として出力ノード380_4(抵抗素子341とシンク電流源329との接続点)から出力される。
第3実施形態のDA変換回路27aは4種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2Vslop_3,Vslop_4を用意するので、図9に示した第1実施形態(第3例)と同様に、DA変換回路27aと参照信号制御部25とを繋ぐ参照信号Vslop用の配線数は4本になる。また、参照信号制御部25は、図21に示すように、参照信号選択部300を、2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2もしくは参照信号Vslop_3,Vslop_4を切り替える2入力−1出力型のスイッチ310を各系統に備えるとともに、各スイッチ310の出力をさらに切り替えて比較部252に供給する2入力−1出力型のスイッチ314およびスイッチ313を制御する切替制御部314を有するものとする。各スイッチ310の制御入力と切替制御部314には電圧比較部252からの比較パルスCOMPを供給する。
第3実施形態の切替制御部314は、画素信号電圧Vxと2種類の参照信号Vslop_2,Vslop_4の各初期値との初回の比較処理における判定結果に基づき、その後に使用する参照信号Vslopが電圧レベルの高い参照信号Vslop_1,Vslop_2の系統と,電圧レベルの低い参照信号Vslop_3,Vslop_4の系統とを特定する。その後、電圧比較部252は、画素信号電圧Vxの属するレンジに適合した参照信号Vslop_2(もしくはVslop_4)と画素信号電圧Vxとの前段比較処理を開始し、比較パルスCOMPがLに反転したら参照信号Vslop_1(もしくはVslop_3)に切り替え、画素信号電圧Vxとの後段比較処理を行なう。
<第3実施形態の処理手順>
図20を参照して、第3実施形態の参照信号比較型AD変換処理手順の基本例を説明する。一例としてAD変換のフルレンジが8ビットで説明する。
先ず、第2実施形態(第1例)の処理手順を適用して、それぞれレンジを代表する参照信号を使用して、画素信号電圧Vxがフルレンジを2等分する何れの領域に属するかを特定する。先ず、比較処理の開始前では、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルにしている。このため、参照信号制御部25において、各画素列のスイッチ310は、DA変換回路27aから出力される2種類の参照信号Vslop_1,Vslop_2および参照信号Vslop_3,Vslop_4の内のそれぞれ電圧レベルの低い参照信号Vslop_2および参照信号Vslop_4の方を、レンジを代表する参照信号として選択して各出力をスイッチ313に渡す。切替制御部314は、比較パルスCOMPがHレベルのときには電圧レベルの低い参照信号Vslop_4の方を選択して電圧比較部252に供給する。電圧比較部252は、参照信号Vslop_4の初期値(つまりフルレンジの1/2+1LSBのレベル)と画素信号電圧Vxとを比較する。これにより、画素列ごとに、画素信号電圧Vxが0〜129LSB,129〜256LSBの各領域の何れに属しているかが特定される。
なお、参照信号選択部300の回路構成を変更すれば、それぞれ電圧レベルの高い参照信号Vslop_1および参照信号Vslop_3の方を、レンジを代表する参照信号として選択でき、画素列ごとに、画素信号電圧Vxが0〜128LSB,128〜256LSBの各領域の何れに属しているかが特定される。
参照信号制御部25において、画素列ごとのスイッチ314は、それぞれ画素信号電圧Vx≧参照信号Vslop_4(初期値)(=129LSB)となる画素列については参照信号Vslop_2、参照信号Vslop_4(初期値)(=129LSB)>画素信号電圧Vxとなる画素列については参照信号Vslop_4を選択して電圧比較部252に供給する。その結果、全列の電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルに初期設定し次の比較処理に備える。
次に、第1実施形態(第1例)の処理手順を適用して、比較処理の当初は、参照信号Vslop_2(もしくはVslop_4)(各領域で電圧レベルの低い方)と対応する自列の垂直信号線19から供給される画素信号電圧Vxを比較し、画素信号電圧Vx(アナログ値)と参照信号Vslop_2(もしくはVslop_4)とが一致する時点になると、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルからLレベルに切り替える。
参照信号制御部25において、各画素列のスイッチ310は、自列の電圧比較部252からの比較パルスCOMPがLレベルに切り替ると、参照信号Vslop_2(もしくはVslop_4)から参照信号Vslop_1(もしくはVslop_3)(つまり1LSBだけレベルの高い方)に切り替える。電圧比較部252は、直ちに、画素信号電圧Vxを参照信号Vslop_1(もしくはVslop_3)と再度比較する。カウンタ部254は、このときのカウント値Tを保持しておく。つまり、カウンタ部254は、画素信号電圧Vxと参照信号Vslop_1(もしくはVslop_3)の大小関係が反転するタイミングのカウント値Tを保持する。
カウンタ部254は、画素信号電圧Vxがフルレンジを略2等分した何れの領域に対応するものであるのかと、後段比較処理結果とに基づき、画素信号電圧Vxの画素データを確定する。たとえば、“画素信号電圧Vxa>参照信号Vslop_1”の場合は、最終的なカウント値として“2Ta−1”を出力する。“画素参照信号Vslop_1>信号電圧Vxb>参照信号Vslop_2”の場合は、最終的なカウント値として2Tbを出力する。“画素信号電圧Vxc>参照信号Vslop_3”の場合は、最終的なカウント値として“2Tc−1”に1/2レンジ分を嵩上げした“2Tc−1+128”を出力する。“画素参照信号Vslop_3>信号電圧Vxd>参照信号Vslop_4”の場合は、最終的なカウント値として2Tdに1/2レンジ分を嵩上げした“2Td+128”を出力する。
これにより、第1実施形態(第3例)や第2実施形態(第2例)と同様に、AD変換期間は実質的に1/4となる。また、第2実施形態(第2例)では、AD変換期間を1/4とするため3/4レンジ分の電流セルを用意しなければならず、このため消費電流が増加してしまうデメリットがあるのに対して、第3実施形態では、3/4レンジ分の電流セルを用意する必要がないため、消費電力低減の効果が期待できる。
また、AD変換用の後段比較処理時に、第1実施形態(第3例)では参照信号Vslop_3,Vslop_2,Vslop_1の3種類を切り替えて処理しなければならないのに対して、第3実施形態では参照信号Vslop_1(もしくはVslop_3)の1種類で処理すればよく、第1実施形態(第2例)で説明したような「スイッチ310の切替えや電圧比較部252での比較動作などに付随する処理遅延」対して有利になる。
<第4実施形態(第1例)>
図22〜図24は、第4実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理を説明する図である。ここで、図22は、第4実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理に適用される読出電流制御部24周辺の構成例を説明する回路ブロック図である。図23は、第4実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理に適用されるDA変換回路27aの詳細を説明する機能ブロック図である。図24は、第4実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理の動作原理を説明する図であって、参照信号Vslopと2種類の画素信号電圧Vxとの関係を示している。
前述の第1〜第3実施形態では、画素列ごとに設けられたスイッチ310を具備する参照信号制御部25に対して電圧レベルの異なる複数種類の参照信号Vslopを供給し、参照信号制御部25(スイッチ310)により画素列ごとに使用すべき参照信号Vslopを切り替えて電圧比較部252にて画素信号電圧Vxとの比較を行なうことで、画素信号電圧Vxをデジタルデータに変換(AD変換)していた。これに対して、第4実施形態では、全ての画素列が1種類の参照信号Vslopを共通に使用しつつ、画素信号電圧Vxの電圧レベルを各画素列独立に制御するようにした点に特徴を有する。
図22に示すように、回路構成としては、先ず読出電流制御部24は、画素アレイ部10の各垂直信号線19に対して、画素信号読出用の2種類の動作電流(読出電流)Id_1,Id_2を切り替える2入力−1出力型のスイッチ410を画素列ごとに有する動作電流切替制御部400を備える。動作電流切替制御部400は、垂直信号線19にそれぞれ異なる動作電流を供給して画素信号電圧Vxのレベルを相対的に変化させることで一定のレベル差を有する複数種類の画素信号電圧Vxに分ける手段の一例であり、スイッチ410は、複数(ここでは2)種類の画素信号電圧Vxを選択する画素信号選択部の一例である。これに対応するべく、基準電流源部244には、2種類の動作電流(読出電流)Id_1,Id_2を生成する2種類の電流生成部245_1,245_2および各電流生成部245_1,245_2と接続されるNMOS型のトランジスタ246_1,246_2を有する。
各画素列の垂直信号線19には負荷MOSトランジスタ242のドレインが接続され、そのソースが接地線であるソース線に共通に接続される。各垂直列の負荷MOSトランジスタ242は基準電流源部244のトランジスタ246_1,246_2との間でゲート同士が接続されカレントミラー回路を構成し、垂直信号線19に対し電流源として機能するように接続されている。
各電流生成部245_1,245_2には、必要時にのみ所定電流を出力するようにするための負荷制御信号が、図示しない負荷制御部から供給されるようになっている。電流生成部245は、信号読出し時には、負荷制御信号のアクティブ状態が入力されることで、各増幅用トランジスタ42に接続された負荷MOSトランジスタ242によって、予め決められた定電流を流し続けるようになっている。つまり、負荷MOSトランジスタ242は、選択行の増幅用トランジスタ42とソースフォロアを組んで読出電流を増幅用トランジスタ42に供給することで垂直信号線19への信号出力をさせる。
また、このような構成の読出電流制御部24に対応する第4実施形態(第1例)のDA変換回路27aは、図23に示すように、図5(B)に示した比較例のDA変換回路27aに対して、LSBの電流セルを構成するシンク電流源322および出力スイッチ350を取り外す。これにより、第4実施形態(第1例)のDA変換回路27aの出力ノード380から出力される参照信号Vslopは、R×2I(2LSB)のステップ電圧で変化する。なお、全ての画素列が1種類の参照信号Vslopを共通に使用するので、参照信号制御部25を設けずに参照信号生成部27からの参照信号Vslopを直接にカラム処理部26に供給する。
図22に示すように、NMOS型のトランジスタ246_1のゲート・ドレインは電流生成部245_1の出力と接続されるとともに、ゲート線243_1として各画素列のスイッチ410の一方の入力端に共通に接続され、NMOS型のトランジスタ246_2のゲート・ドレインは電流生成部245_2の出力と接続されるとともに、ゲート線243_2として各画素列のスイッチ410の他方の入力端に共通に接続される。
電流生成部245_1が生成する動作電流Id_1と電流生成部245_2が生成する動作電流Id_2(>Id_1とする)との電流差は、図24に示すように、垂直信号線19における画素信号電圧VxをAD変換における1LSB分だけ異ならせることのできるものとする。動作電流Idが大きいほど画素信号電圧Vxの電位が低下するので、動作電流Id_1時の画素信号電圧Vx_1と動作電流Id_2時の画素信号電圧Vx_2との間には、画素信号電圧Vx_2=画素信号電圧Vx_1−1LSBの関係がある。
たとえば、第1の手法として、DA変換回路27aの構成例に準じてビット別の電流源の組合せで各電流生成部245_1,245_2を構成することとし、最小となるLSBの電流源に関しては、動作電流の多い動作電流Id_1用の電流生成部245_1については設けるが、動作電流の少ない動作電流Id_2用の電流生成部245_2については省略するとよい。
あるいは、第2の手法として、電流生成部245_1,245_2を、各カレントミラー比m/nをトランジスタのフィンガー数またはトランジスタの個数で調整するカレントミラー構成のものとし、そのフィンガー数またはトランジスタ数の調整で画素信号電圧Vxに対して1LSBの差を持たせるようにするとよい。本例の場合であれば、動作電流の多い動作電流Id_1用の電流生成部245_1についてはNビット分のフィンガーもしくはトランジスタを用意し、動作電流の少ない動作電流Id_2用の電流生成部245_2についてはそのフィンガーやトランジスタを1つ少なくするとよい。
スイッチ410の制御入力端には、自列の電圧比較部252から比較パルスCOMPが供給されるようになっている。スイッチ410は、比較パルスCOMPがHレベルのとき(つまり比較処理の開示時点)には動作電流Id_1に対応するゲート線243_1を選択してその列の負荷MOSトランジスタ242のゲートに接続することで動作電流Id_1の情報を負荷MOSトランジスタ242に伝達する。これにより、その画素列の垂直信号線19の画素信号電圧Vxは動作電流Id_2時に比べて1LSB分高い画素信号電圧Vx_1となる。一方、比較パルスCOMPがLレベルに切り替った時点(つまり動作電流Id_1における画素信号電圧Vx_1と参照信号Vslopとが一致した時点)で、動作電流Id_2に対応するゲート線243_2を選択してその列の負荷MOSトランジスタ242のゲートに接続することで動作電流Id_2の情報を負荷MOSトランジスタ242に伝達する。これにより、その画素列の垂直信号線19の画素信号電圧Vxは動作電流Id_1時に比べて1LSB分低い画素信号電圧Vx_2となる。
つまり、第4実施形態(第1例)の読出電流制御部24は、スイッチ410も画素列ごとに設けることで、各画素列のカラムAD回路250内の電圧比較部252の出力(比較パルスCOMP)が対応する画素列のスイッチ410にフィードバックされており、電圧比較部252の出力が反転するタイミングでスイッチ410が切り替わり、電圧比較部252が参照信号Vslopと比較する画素信号電圧Vxを各画素列独立に1LSBの差を持って制御するようになっている。
<第4実施形態の処理原理>
図25は、第4実施形態(第1例に限らず後述の他の例も含む)の参照信号比較型AD変換処理の原理を説明する図である。画素信号電圧Vx_@のAD変換結果である画素データDとの関係で言えば、γLSBステップで変化する参照信号Vslopとの比較において、カウントクロックCK0がタイミングT時点で比較パルスCOMPが反転したときの画素データDを特定することになる。本例の場合、画素信号電圧Vx_@よりも参照信号Vslop(T)が下回ったときに比較パルスCOMPが反転し、その時点のカウント値を保持する点と、Vx_@>Vx_@+1でかつその差が1LSB分である点を考慮する。
すなわち、画素信号電圧Vx_@に対してVslop(T)で比較パルスCOMPが反転すると言うことは、Vslop(T−1)≧Vx_@>Vslop(T)でありその間がγLSB分であるが、参照信号Vslopが電圧比較部252の入力部においても階段状であるようにしておくことで、1LSB分の電圧差を持つVx__@との各比較結果を参照すれば、そのγLSB内を1LSBで区分けできる。Vx_@>Vx_@+1である点を加味すれば、電圧レベルの最も高い画素信号電圧Vx_1と参照信号Vslopとの比較で比較パルスCOMPが反転したときのカウント値Tを保持するとともに、画素信号電圧Vx_1に対して1LSBステップで電圧が減少する残りの画素信号電圧Vx_2,…,Vx_γ と参照信号Vslop(T)とを比較すれば、図25(γ=4の例)に示すように、画素信号電圧Vx_1がγLSB内のどのレベルにあるのかによって、画素信号電圧Vx_2,…,Vx_γ と参照信号Vslop(T)との比較結果に差が生じる。よって、その比較結果を参照すれば、画素信号電圧Vx_1がγLSB内のどのレベルにあるのかを特定できる。
図25では、γ=4の場合において、画素信号電圧Vx_1が、Vslop(T−1)〜Vslop(T)内で最も電圧レベルの高い範囲内にあるとき(Vslop(T)+4LSB〜Vslop(T)−3LSB)と、最も電圧レベルの低い範囲内にあるとき(Vslop(T)+1LSB〜Vslop(T)とを示している。この図と図示を割愛したその他の電圧レベル範囲での比較結果を類推することで、画素信号電圧Vx_@と参照信号Vslop(T)との比較による比較結果を比較パルスCOMP_@としたとき、以下の点が特定される。
画素信号電圧VxがVslop(T)+4LSB〜Vslop(T)−3LSBの範囲内にあるときには、COMP_1=L,COMP_2=L,COMP_3=L,COMP_4=Lである。画素信号電圧VxがVslop(T)+3LSB〜Vslop(T)−2LSBの範囲内にあるときには、COMP_1=L,COMP_2=L,COMP_3=L,COMP_4=Hである。画素信号電圧VxがVslop(T)+2LSB〜Vslop(T)−1LSBの範囲内にあるときには、COMP_1=L,COMP_2=L,COMP_3=H,COMP_4=Hである。画素信号電圧VxがVslop(T)+1LSB〜Vslop(T)の範囲内にあるときには、COMP_1=L,COMP_2=H,COMP_3=H,COMP_4=Hである。
これにより、参照信号VslopをγLSBの変化率でかつ電圧比較部252の入力部においても階段状であるように変化させつつ、1LSB分の電圧差を持つγ種類の画素信号電圧Vx_@との比較結果を参照することで、画素信号電圧Vxの画素データDを1LSBの分解能で確定することができる。以下、その処理手順を具体的に説明する。
<第4実施形態(第1例)の処理手順>
図24を参照して、第4実施形態(第1例)の参照信号比較型AD変換処理の手順例を説明する。第1例においては、読出電流制御部24の動作電流切替制御部400におけるスイッチ410の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間が十分短く、参照信号Vslopの電位が2LSB変化する時間(AD単位Tad)と比較しても十分に短いものと仮定する。つまり、画素信号電圧Vx_1での比較処理後にさらに画素信号電圧Vx_2での比較処理を完了するまで期間(遅延分)が、カウントクロックCK0(本例では=CKdac )の1クロック分未満である。たとえば、図24では、その遅延分が約半クロック分である状態で示している。
比較処理の開始前では、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルにしている。このため、読出電流制御部24の動作電流切替制御部400において、各画素列のスイッチ410は、初期状態では動作電流Id_1に対応するゲート線243_1を選択する。これにより、1LSB分の電圧差を持つ2種類の画素信号電圧Vx_1,Vx_2の内、1LSB分だけ電圧が高い画素信号電圧Vx_1が電圧比較部252に供給されるようになる。
つまり、k(本例ではk=2)種類の画素信号電圧Vxの内の、同一カウント値での各値と参照信号Vslopとの比較において最初に参照信号Vslopと一致することになる画素信号電圧Vx_1を前段画素信号として選択する。
画素信号電圧Vx_1を前段画素信号とするAD変換用の比較処理が開始すると、各画素列の電圧比較部252は、自列の画素信号電圧Vx_1とDA変換回路27aからの2LSBステップで変化する参照信号Vslopと比較し、図24に示すように、画素信号電圧Vx_1(アナログ値)と参照信号Vslopとが一致する時点Tになると、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルからLレベルに切り替える。この比較処理をAD変換用の前段比較処理と称する。
読出電流制御部24の動作電流切替制御部400において、各画素列のスイッチ410は、自列の電圧比較部252からの比較パルスCOMPがLレベルに切り替ると、動作電流Id_2に対応するゲート線243_2を選択する。これにより、図24に示すように、1LSB分の電圧差を持つ2種類の画素信号電圧Vx_1,Vx_2の内、1LSB分だけ電圧が低い画素信号電圧Vx_2が電圧比較部252に供給されるようになる。
各画素列の電圧比較部252は、直ちに、自列の画素信号電圧Vx_2とDA変換回路27aからの2LSBステップで変化する参照信号Vslop(T)と再度比較する。この比較処理をAD変換用の後段比較処理と称する。カウンタ部254は、このときのカウント値Tを保持しておく。つまり、カウンタ部254は、画素信号電圧Vx_1,Vx_2と参照信号Vslop(T)の大小関係が反転するタイミングのカウント値Tを保持する。
図24(A)に示すように、“画素信号電圧Vx_2>参照信号Vslop(T)”であれば比較パルスCOMPはLレベルが維持されるが、“画素信号電圧Vx_2<参照信号Vslop_1(T)”であれば比較パルスCOMPはHレベルに切り替る。このときの比較結果(比較パルスCOMP)がカウンタ部254に通知されており、カウンタ部254は、“画素信号電圧Vx_2>参照信号Vslop(T)”の場合は、最終的なカウント値として“2T−1”を出力する。
図24(A)に示すように、2LSBステップでのAD変換処理時に、参照信号Vslop(T)の“2T”に相当する電圧値よりも画素信号電圧Vx_2(=Vx_1−1LSB)の方が高く、実際には、前段比較処理時の画素信号電圧Vx_1としては2Tレベル(2T+1〜2Tの範囲)には達しておらず“2T−2”〜“2T−1”の範囲にあるからである。一方、“画素信号電圧Vx_2<参照信号Vslop(T)”の場合は、最終的なカウント値として2Tを出力する。図24(B)に示すように、2LSBステップでのAD変換処理時に、参照信号Vslop(T)の2Tに相当する電圧値よりも画素信号電圧Vx_2が低く、実際に、前段比較処理時の画素信号電圧Vx_1としては2Tレベルに達しているからである。
これにより、第4実施形態(第1例)においては、比較例のDA変換回路27aを用いた参照信号比較型AD変換処理に場合に比べて、参照信号Vslopを2LSBステップで制御しながら、1LSBの電圧差を持つ2種類の画素信号電圧Vx_1,Vx_2との比較を順に行なうことで、1LSB単位でのAD変換処理が実現されることになる。カウントクロックCK0やカウントクロックCKdac の周波数を高速にしなくても、実質的にAD変換に必要な時間が1/2になるといった利点が得られる。AD変換に必要な時間を1/2にできるので、ビット分解能を維持しつつカウンタ部254での消費電力増大を抑えながらAD変換処理を2倍に高速化することができる。
<第4実施形態(第2例)の処理手順>
図26は、第4実施形態(第2例)の参照信号比較型AD変換処理手順を説明する図である。前述の第1例では、読出電流制御部24の動作電流切替制御部400におけるスイッチ410の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間が十分短く、参照信号Vslopの電位が2LSB変化する時間(AD単位Tad)と比較しても十分に短いものと仮定していた。しかしながら、実際にはこのようにならない場合も考えられる。
たとえば、図26(A)に示すように、画素信号電圧Vx_1での比較処理後にさらに画素信号電圧Vx_2での比較処理を完了するまでにカウントクロックCKdac のβクロック分以上“β+1”クロック分未満(βを処理遅延クロック幅と称する)だけ要する場合、前述の第1例での処理においてはカウンタ部254は、カウント値“T+β”を保持することになり、画素データを決定する処理においては、“2(T+β)−1”もしくは2(T+β)を最終的なカウント値として出力することになり誤差が生じる。この点は、第1実施形態(第1例)における問題と似通っている。
この問題を解消するには、第1実施形態(第2例)における対処方法に準じて、処理遅延クロック数βに合わせて、画素信号電圧Vx_2を画素信号電圧Vx_1と比較して“1+2β”LSB分だけ低く設定しておき、次に示すようにカウンタ部254におけるカウント動作と同期させてAD変換動作を行なえばよい。
具体的には、第1例と同様に、各画素列の電圧比較部252は、比較処理の当初は、対応する自列の垂直信号線19から供給される画素信号電圧Vx_1と参照信号Vslopを比較し、画素信号電圧Vx_1(アナログ値)と参照信号Vslopとが一致する時点になると、電圧比較部252は比較パルスCOMPをHレベルからLレベルに切り替える。カウンタ部254は、このときのカウント値Tを保持しておく。
読出電流制御部24の動作電流切替制御部400において、各画素列のスイッチ410は、自列の電圧比較部252からの比較パルスCOMPがLレベルに切り替ると、負荷MOSトランジスタ242へのゲート線の接続を動作電流Id_1に対応するゲート線243_1から動作電流Id_2に対応するゲート線243_2に切り替える。
この後、電圧比較部252は参照信号Vslopと画素信号電圧Vx_2との比較処理を開始するのであるが、回路応答の問題から、読出電流制御部24におけるスイッチ410の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間が遅くなり、電圧比較部252にての実際の比較が行なわれる(完了する)のは、カウントクロックCKdac がβクロック分増えたタイミングになってしまう。
図26(B),図26(C)には、その処理遅延の状態を模式的に示している。前段比較処理における画素信号電圧Vxの切替指示から後段比較処理が完了するまでの期間Tdelay は、β*Tdac ≦Tdelay <β*Tdacとなっている(図26(B)ではβ=1、図26(C)ではβ=3)。概念的には、βクロック分増えたタイミング(T+β)で電圧比較部252による画素信号電圧Vx_2を用いた比較結果が得られると見なすことができるので、図26(B),図26(C)に示すように、電圧比較部252は、事実上、画素信号電圧Vx_1よりも(1+β*2)LSB分だけ電位が低い画素信号電圧Vx_2と参照信号Vslop(T+β)との比較を行なうものと見なすことができる。これにより、比較対象となる参照信号Vslop(T+β)は参照信号Vslop(T)より(β*2)LSB分だけ電位が低下するので、第4実施形態(第1例)と同じ電圧関係での比較が行なわれると見なすことができる。
図26(B),図26(C)に示すように、“画素信号電圧Vxα_2>参照信号Vslop(T+β)”(αはa,b)であれば比較パルスCOMPはLレベルが維持されるが、“画素信号電圧Vxα_2<参照信号Vslop(T+β)”であれば比較パルスCOMPはHレベルに切り替る。このときの比較結果(比較パルスCOMP)がカウンタ部254に通知されており、カウンタ部254は、“画素信号電圧Vxα_2>参照信号Vslop(T+β)”の場合は、最終的なカウント値として“2T−1”を出力する一方、“画素信号電圧Vxα_2<参照信号Vslop(T+β)”の場合は、最終的なカウント値として2Tを出力する。
スイッチ410の切替えや電圧比較部252での比較動作などに付随する処理遅延があっても、画素信号電圧Vx_1に対してその処理遅延を勘案して電圧レベルを嵩下げした画素信号電圧Vx_2を使用した処理を行なうことで、読出電流制御部24におけるスイッチ410の切替え時間や電圧比較部252における動作時間マージンを稼ぐことができる。これにより、画素信号電圧Vx_1での比較処理後にさらに画素信号電圧Vx_2での比較処理を完了するまでにカウントクロックCKdac のβクロック分以上“β+1”クロック分未満だけ要する場合においても、誤差を生じることなく処理できる。
<第4実施形態(第3例)>
図27〜図29は、第4実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理を説明する図である。ここで、図27は、第4実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理に適用される読出電流制御部24周辺の構成例を説明する回路ブロック図である。図28は、第4実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理に適用されるDA変換回路27aの詳細を説明する機能ブロック図である。図29は、第4実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理の動作原理を説明する図であって、参照信号Vslopと4種類の画素信号電圧Vxとの関係を示している。
第1例では、1LSB分の電圧差のある2種類の画素信号電圧Vx_1,Vx_2を切り替えて処理することで、AD変換に要する時間を比較例と比較して実質的に1/2とする事例であるのに対して、この第3例は、1LSB分の電圧差のある4種類の画素信号電圧Vx_1,Vx_2,Vx_3,Vx_4を使用し、最初は最も電圧レベルの高い画素信号電圧Vx_1で比較処理を行ない、画素信号電圧Vx_1と参照信号Vslopとが一致した後には、画素信号電圧Vx_2,Vx_3,Vx_4を切り替えながら、参照信号Vslopとの大小関係を順次判定することで、AD変換に要する時間を比較例と比較して実質的に1/4とする事例である。これは、第1実施形態における第1例と第3例との相違と同じような関係である。
図27に示すように、第4実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理が適用される固体撮像装置1においては、読出電流制御部24の動作電流切替制御部400は、1LSBずつの電圧差を持った4種類の画素信号電圧Vx_1,Vx_2,Vx_3,Vx_4(Vx_1>Vx_2>Vx_3>Vx_4とする)を電圧比較部252に供給可能に構成されている。
このための回路構成としては、先ず読出電流制御部24の動作電流切替制御部400は、画素アレイ部10の各垂直信号線19に対して、画素信号読出用の4種類の動作電流(読出電流)Id_1,Id_2,Id_3,Id_4を切り替える4入力−1出力型のスイッチ410を画素列ごとに有する。これに対応するべく、基準電流源部244には、4種類の動作電流(読出電流)Id_1,Id_2,Id_3,Id_4を生成する4種類の電流生成部245_1,245_2,245_3,245_4および各電流生成部245_1,245_2,245_3,245_4と接続されるNMOS型のトランジスタ246_1,246_2,246_3,246_4を有する。
また、このような構成の読出電流制御部24に対応する第4実施形態(第3例)のDA変換回路27aは、図28に示すように、図5(B)に示した比較例のDA変換回路27aに対して、下位2ビット分(LSBおよびもう1段上位)の電流セルを構成するシンク電流源322および出力スイッチ350を取り外す。これにより、第4実施形態(3例)のDA変換回路27aの出力ノード380から出力される参照信号Vslopは、R×4I(4LSB)のステップ電圧で変化する。なお、全ての画素列が1種類の参照信号Vslopを共通に使用するので、参照信号制御部25を設けずに参照信号生成部27からの参照信号Vslopを直接にカラム処理部26に供給する。
図27に示すように、各NMOS型のトランジスタ246_1,246_2,246_3,246_4のゲート・ドレインは対応する電流生成部245_1,245_2,245_3,245_4の出力と接続されるとともに、対応するゲート線243_1,243_2,243_3,243_4として各画素列のスイッチ410の対応する入力端に共通に接続される。
各電流生成部245_1,245_2,245_3,245_4が生成する動作電流Id_1,Id_2,Id_3,Id_4(Id_1<Id_2<Id_3<Id_4)の電流差は、図29に示すように、垂直信号線19における画素信号電圧VxをAD変換における1LSB分ずつ異ならせることのできるものとする。動作電流Idが大きいほど画素信号電圧Vxの電位が低下するので、各動作電流Id_1,Id_2,Id_3,Id_4時の画素信号電圧Vx_1,Vx_2,Vx_3,Vx_4には、Vx_2=Vx_1−1LSB,Vx_3=Vx_1−2LSB,Vx_4=Vx_1−3LSBの関係がある。
スイッチ410の制御入力端には、自列の電圧比較部252から比較パルスCOMPが供給されるようになっている。スイッチ410は、比較パルスCOMPがHレベルのとき(つまり比較処理の開示時点)には動作電流Id_1に対応するゲート線243_1を選択してその列の負荷MOSトランジスタ242のゲートに接続することで動作電流Id_1の情報を負荷MOSトランジスタ242に伝達する。
これにより、第4実施形態(第3例)の読出電流制御部24は、スイッチ410も画素列ごとに設けることで、各画素列のカラムAD回路250内の電圧比較部252の出力(比較パルスCOMP)が対応する画素列のスイッチ410にフィードバックされており、電圧比較部252の出力が反転するタイミングでスイッチ410が切り替わり、電圧比較部252が参照信号Vslopと比較する4種類の画素信号電圧Vx_1,Vx_2,Vx_3,Vx_4を各画素列独立に1LSBの差を持って制御するようになる。
<第4実施形態(第3例)の処理手順>
図29は、第3実施形態(第3例)の参照信号比較型AD変換処理手順を説明する図である。第3例においても、読出電流制御部24の動作電流切替制御部400におけるスイッチ410の切替えおよび電圧比較部252における比較動作に要する時間が十分短く、参照信号Vslopの電位が2LSB変化する時間(AD単位Tad)と比較しても十分に短いものと仮定し、第1例との相違を中心に説明する。
最も動作電流Idが低い動作電流Id_1時の最も電圧レベルの高い画素信号電圧Vx_1を用いた前段比較処理によって比較パルスCOMPがLレベルに切り替ると、その画素列のスイッチ410は、動作電流Id_1を除く残りの各動作電流Id_2,Id_3,Id_4に対応するゲート線243_2,243_3,243_4を順次(順序は不問)選択する。これにより、図29(B)〜図29(D)に示すように、それぞれ画素信号電圧Vx_1に対して、1LSB分、2LSB分、3LSBだけ低下した3種類の画素信号電圧Vx_2,Vx_3,Vx_4が電圧比較部252に順に供給されるようになる。
AD変換用の後段比較処理において、各画素列の電圧比較部252は、各画素信号電圧Vx_2,Vx_3,Vx_4とDA変換回路27aからの4LSBステップで変化する参照信号Vslop(T)と再度順に比較していく。カウンタ部254は、このときのカウント値Tを保持しておく。つまり、カウンタ部254は、画素信号電圧Vx_1,Vx_2,Vx_3,Vx_4と参照信号Vslop(T)の大小関係が反転するタイミングのカウント値Tを保持する。
図29(B)〜図29(D)に示すように、各画素信号電圧Vxα_2,Vxα_3,Vxα_4(αはa,b,c,d)での比較時に“参照信号Vslop(T)<画素信号電圧Vxα_@:@は2〜4”であれば比較パルスCOMPはLレベルであるが、“参照信号Vslop(T)>画素信号電圧Vxα_@”であれば比較パルスCOMPはHレベルである。このときの各比較結果(比較パルスCOMP)がカウンタ部254に通知されており、各比較結果に基づき、以下のようにして画素データDを確定する。
たとえば、“参照信号Vslop(T)>画素信号電圧Vxα_2,Vxα_3,Vxα_4”を満たす画素信号電圧Vxdの場合には、カウンタ部254は、最終的なカウント値として“4T”を出力する。“参照信号Vslop(T)≦画素信号電圧Vxα_2”かつ“参照信号Vslop(T)>画素信号電圧Vxα_3,Vxα_4”を満たす画素信号電圧Vxcの場合には、カウンタ部254は、最終的なカウント値として“4T−1”を出力する。
“参照信号Vslop(T)≦画素信号電圧Vxα_2,Vxα_3”かつ“参照信号Vslop(T)>画素信号電圧Vxα_4”を満たす画素信号電圧Vxbの場合には、カウンタ部254は、最終的なカウント値として“4T−2”を出力する。“参照信号Vslop(T)≦画素信号電圧Vxα_2,Vxα_3,Vxα_4”を満たす画素信号電圧Vxaの場合には、カウンタ部254は、最終的なカウント値として“4T−3”を出力する。
<第4実施形態(第4例):一般化>
第1例では2LSBステップで参照信号Vslopを変化させつつ1LSB分の電圧差を持つ2種類の画素信号電圧Vxと比較することでAD変換期間を1/2に短縮し、第3例では4LSBステップで参照信号Vslopを変化させつつ1LSB分の電圧差を持つ4種類の画素信号電圧Vxと比較することでAD変換期間を1/4に短縮する事例を示したが、これを発展させることで、結局、第4実施形態の処理態様としては、参照信号Vslopの最小ステップ幅を2^nLSB(nは正の整数)としつつ1LSB分の電圧差を持ち階段状(ステップ状)に変化する2^n種類の画素信号電圧Vxと比較することでAD変換期間を1/2^nに短縮することができる。
“2^n”とするのは、デジタルデータのビットの重付けとの整合性から、最小ステップ幅の設定が容易でかつ回路構成もコンパクトになるからである。ただし、“2^n”とすることは必須ではなく、最小ステップ幅をkLSB(kは正の整数)とすることにより、AD変換期間を1/kに短縮することができる。これに対応して、読出電流制御部24は、1LSBの電圧差を持つk種類の画素信号電圧Vxを電圧比較部252に切替供給可能に構成する。
ただし、k種類の各画素信号電圧Vxのレベル差を1LSBとするとk種類の全ての画素信号電圧Vxと参照信号Vslopとの比較をAD単位Tad内で完結させる必要があるので、画素信号電圧Vxの数を増やすほど処理遅延が問題となる。処理遅延が問題となるときには、第2例のように、処理遅延クロック数βに合わせて、k種類の各画素信号電圧Vxのレベル差が1LSBではなく“1+2β”LSBとなるように嵩上げ(嵩下げ)しておき、カウンタ部254におけるカウント動作と同期させてAD変換動作を行なえばよい。
各画素信号電圧Vxの比較処理時には、カウンタ部254のカウントステップのタイミング差を持たせて各画素信号電圧Vxを切り替える。
<撮像装置>
図30は、前述の固体撮像装置1と同様の仕組みを利用した物理情報取得装置の一例である撮像装置の概略構成を示す図である。この撮像装置8は、可視光カラー画像を得る撮像装置になっている。
前述した固体撮像装置1の仕組みは固体撮像装置のみではなく、撮像装置にも適用可能である。この場合、撮像装置としても、参照信号比較型AD変換方式を採用する場合に、回路面積の増大を抑えつつ、比較部における比較処理に要する時間を短縮することで、AD変換処理の高速化や消費電力低減を図ることのできる仕組みを実現できるようになる。
この際、参照信号比較型AD変換を実行するための参照信号Vslopもしくは画素信号電圧Vxの生成数の制御、あるいは参照信号Vslopの傾き(1カウント当たりのLSBステップ数)の制御は、外部の主制御部において、モード切替指示を通信・タイミング制御部20に対するデータ設定で任意に指定できるようにする。
具体的には、撮像装置8は、蛍光灯などの照明装置801の下にある被写体Zの像を担持する光Lを撮像装置側に導光して結像させる撮影レンズ802と、光学ローパスフィルタ804と、たとえばR,G,Bの色フィルタがベイヤー配列とされている色フィルタ群812と、画素アレイ部10と、画素アレイ部10を駆動する駆動制御部7と、画素アレイ部10から出力される画素信号の動作電流を制御する読出電流制御部24と、画素アレイ部10から出力された画素信号に対してCDS処理やAD変換処理などを施すカラム処理部26と、カラム処理部26に参照信号Vslopを供給する参照信号生成部27と、カラム処理部26から出力された撮像信号を処理するカメラ信号処理部810を備えている。
光学ローパスフィルタ804は、折返し歪みを防ぐために、ナイキスト周波数以上の高周波成分を遮断するためのものである。また、図中に点線で示しように、光学ローパスフィルタ804と合わせて、赤外光成分を低減させる赤外光カットフィルタ805を設けることもできる。この点は、一般的な撮像装置と同様である。
カラム処理部26の後段に設けられたカメラ信号処理部810は、撮像信号処理部820と、撮像装置8の全体を制御する主制御部として機能するカメラ制御部900とを有する。
撮像信号処理部820は、色フィルタとして原色フィルタ以外のものが使用されているときにカラム処理部26のAD変換機能部から供給されるデジタル撮像信号をR(赤),G(緑),B(青)の原色信号に分離する原色分離機能を具備した信号分離部822と、信号分離部822によって分離された原色信号R,G,Bに基づいて色信号Cに関しての信号処理を行なう色信号処理部830とを有する。
また撮像信号処理部820は、信号分離部822によって分離された原色信号R,G,Bに基づいて輝度信号Yに関しての信号処理を行なう輝度信号処理部840と、輝度信号Y/色信号Cに基づいて映像信号VDを生成するエンコーダ部860とを有する。
色信号処理部830は、図示を割愛するが、たとえば、ホワイトバランスアンプ、ガンマ補正部、色差マトリクス部などを有する。ホワイトバランスアンプは、図示しないホワイトバランスコントローラから供給されるゲイン信号に基づき、信号分離部822の原色分離機能部から供給される原色信号のゲインを調整(ホワイトバランス調整)し、ガンマ補正部および輝度信号処理部840に供給する。
ガンマ補正部は、ホワイトバランスが調整された原色信号に基づいて、忠実な色再現のためのガンマ(γ)補正を行ない、ガンマ補正された各色用の出力信号R,G,Bを色差マトリクス部に入力する。色差マトリクス部は、色差マトリクス処理を行なって得た色差信号R−Y,B−Yをエンコーダ部860に入力する。
輝度信号処理部840は、図示を割愛するが、たとえば、信号分離部822の原色分離機能部から供給される原色信号に基づいて比較的周波数が高い成分までをも含む輝度信号YHを生成する高周波輝度信号生成部と、ホワイトバランスアンプから供給されるホワイトバランスが調整された原色信号に基づいて比較的周波数が低い成分のみを含む輝度信号YLを生成する低周波輝度信号生成部と、2種類の輝度信号YH,YLに基づいて輝度信号Yを生成しエンコーダ部860に供給する輝度信号生成部とを有する。
エンコーダ部860は、色信号副搬送波に対応するデジタル信号で色差信号R−Y,B−Yをデジタル変調した後、輝度信号処理部840にて生成された輝度信号Yと合成して、デジタル映像信号VD(=Y+S+C;Sは同期信号、Cはクロマ信号)に変換する。
エンコーダ部860から出力されたデジタル映像信号VDは、さらに後段の図示を割愛したカメラ信号出力部に供給され、モニター出力や記録メディアへのデータ記録などに供される。この際、必要に応じて、DA変換によってデジタル映像信号VDがアナログ映像信号Vに変換される。
本実施形態のカメラ制御部900は、コンピュータが行なう演算と制御の機能を超小型の集積回路に集約させたCPU(Central Processing Unit )を代表例とする電子計算機の中枢をなすマイクロプロセッサ(microprocessor)902と、読出専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)904、随時書込みおよび読出しが可能であるとともに揮発性の記憶部の一例であるRAM(Random Access Memory)906と、図示を割愛したその他の周辺部材を有している。マイクロプロセッサ902、ROM904、およびRAM906を纏めて、マイクロコンピュータ(microcomputer )とも称する。
なお、上記において“揮発性の記憶部”とは、装置の電源がオフされた場合には、記憶内容を消滅してしまう形態の記憶部を意味する。一方、“不揮発性の記憶部”とは、装置のメイン電源がオフされた場合でも、記憶内容を保持し続ける形態の記憶部を意味する。記憶内容を保持し続けることができるものであればよく、半導体製のメモリ素子自体が不揮発性を有するものに限らず、バックアップ電源を備えることで、揮発性のメモリ素子を“不揮発性”を呈するように構成するものであってもよい。
また、半導体製のメモリ素子により構成することに限らず、磁気ディスクや光ディスクなどの媒体を利用して構成してもよい。たとえば、ハードディスク装置を不揮発性の記憶部として利用できる。また、CD−ROMなどの記録媒体から情報を読み出す構成を採ることでも不揮発性の記憶部として利用できる。
カメラ制御部900は、システム全体を制御するものであり、特に前述の参照信号比較型AD変換方式を採用する場合の比較処理時間の短縮化との関係においては、参照信号Vslopもしくは画素信号電圧Vxの生成数の制御、あるいは参照信号Vslopの傾き(1カウント当たりのLSBステップ数)の制御のための各種の制御パルスのオン/オフタイミングや設定値を調整する機能を有している。
ROM904にはカメラ制御部900の制御プログラムなどが格納されているが、特に本例では、カメラ制御部900によって、各種の制御パルスのオン/オフタイミングを設定するためのプログラムが格納されている。
RAM906にはカメラ制御部900が各種処理を行なうためのデータなどが格納されている。
また、カメラ制御部900は、メモリカードなどの記録媒体924を挿脱可能に構成し、またインターネットなどの通信網との接続が可能に構成している。たとえば、カメラ制御部900は、マイクロプロセッサ902、ROM904、およびRAM906の他に、メモリ読出部907および通信I/F(インタフェース)908を備える。
記録媒体924は、たとえば、マイクロプロセッサ902にソフトウェア処理をさせるためのプログラムデータや、輝度信号処理部840からの輝度系信号に基づく測光データDLの収束範囲や露光制御処理(電子シャッタ制御を含む)、並びに参照信号比較型AD変換方式を採用する場合の比較処理時間の短縮化のための各種の制御パルスのオン/オフタイミングや設定値など様々な設定値などのデータを登録するなどのために利用される。
メモリ読出部907は、記録媒体924から読み出したデータをRAM906に格納(インストール)する。通信I/F908は、インターネットなどの通信網との間の通信データの受け渡しを仲介する。
なお、このような撮像装置8は、駆動制御部7およびカラム処理部26を、画素アレイ部10と別体にしてモジュール状のもので示しているが、固体撮像装置1について述べたように、これらが画素アレイ部10と同一の半導体基板上に一体的に形成されたワンチップものの固体撮像装置1を利用してもよいのは言うまでもない。
また、図では、画素アレイ部10や駆動制御部7やカラム処理部26や参照信号生成部27やカメラ信号処理部810の他に、撮影レンズ802、光学ローパスフィルタ804、あるいは赤外光カットフィルタ805などの光学系をも含む状態で、撮像装置8を示しており、この態様は、これらを纏めてパッケージングされた撮像機能を有するモジュール状の形態とする場合に好適である。
ここで、前述の固体撮像装置1におけるモジュールとの関係においては、図示のように、画素アレイ部10(撮像部)と、AD変換機能や差分(CDS)処理機能を具備したカラム処理部26などの画素アレイ部10側と密接に関連した信号処理部(カラム処理部26の後段のカメラ信号処理部は除く)が纏めてパッケージングされた状態で撮像機能を有するモジュール状の形態で固体撮像装置1を提供するようにし、そのモジュール状の形態で提供された固体撮像装置1の後段に、残りの信号処理部であるカメラ信号処理部810を設けて撮像装置8の全体を構成するようにしてもよい。
または、図示を割愛するが、画素アレイ部10と撮影レンズ802などの光学系とが纏めてパッケージングされた状態で撮像機能を有するモジュール状の形態で固体撮像装置1を提供するようにし、そのモジュール状の形態で提供された固体撮像装置1に加えて、カメラ信号処理部810をもモジュール内に設けて、撮像装置8の全体を構成するようにしてもよい。
また、固体撮像装置1におけるモジュールの形態として、カメラ信号処理部200に相当するカメラ信号処理部810を含めてもよく、この場合には、事実上、固体撮像装置1と撮像装置8とが同一のものと見なすこともできる。
このような撮像装置8は、「撮像」を行なうための、たとえば、カメラや撮像機能を有する携帯機器として提供される。なお、「撮像」は、通常のカメラ撮影時の像の撮り込みだけではなく、広義の意味として、指紋検出なども含むものである。
このような構成の撮像装置8においては、前述の固体撮像装置1の全ての機能を包含して構成されており、前述の固体撮像装置1の基本的な構成および動作と同様とすることができ、参照信号比較型AD変換方式を採用する場合に、回路面積の増大を抑えつつ、比較部における比較処理に要する時間を短縮することで、AD変換処理の高速化や消費電力低減を図ることのできる仕組みを実現できるようになる。
たとえば、上述した処理をコンピュータに実行させるプログラムは、フラッシュメモリ、ICカード、あるいはミニチュアーカードなどの不揮発性の半導体メモリカードなどの記録媒体924を通じて配布される。さらに、サーバなどからインターネットなどの通信網を経由して前記プログラムをダウンロードして取得したり、あるいは更新したりしてもよい。
記録媒体924の一例としてのICカードやミニチュアーカードなどの半導体メモリには、上記実施形態で説明した固体撮像装置1(特に参照信号比較型AD変換方式を採用する場合の比較処理時間の短縮化に関わる機能)における処理の一部または全ての機能を格納することができる。したがって、プログラムや当該プログラムを格納した記憶媒体を提供することができる。たとえば、参照信号Vslopもしくは画素信号電圧Vxの生成数あるいは参照信号Vslopの傾き設定(1カウント当たりのLSBステップ数)を連動させた制御を行なうAD変換高速化処理用のプログラム、すなわちRAM906などにインストールされるソフトウェアは、固体撮像装置1について説明したAD変換高速化処理と同様に、AD変換処理の高速化を実現するための制御パルスやその他の設定値の設定機能をソフトウェアとして備える。
ソフトウェアは、RAM906に読み出された後にマイクロプロセッサ902により実行される。たとえばマイクロプロセッサ902は、記録媒体の一例であるROM904およびRAM906に格納されたプログラムに基づいて設定処理を実行して、参照信号Vslopもしくは画素信号電圧Vxの生成数あるいは参照信号Vslopの傾き設定(1カウント当たりのLSBステップ数)を連動させた制御を行なうことで、参照信号比較型AD変換方式を採用する場合に、回路面積の増大を抑えつつ、比較部における比較処理に要する時間を短縮し、AD変換処理の高速化や消費電力低減を図る機能をソフトウェア的に実現することができる。
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、前記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
たとえば、前述の各実施形態では、信号レベルSsig が大きいほど画素信号電圧Vxが低下するタイプの単位画素3に適合するように参照信号Vslopも漸次低下するタイプの例で説明したが、これらはそれぞれの極性を逆転させ、信号レベルSsig が大きいほど画素信号電圧Vxが上昇するタイプの単位画素もでき、それに適合するように参照信号も漸次上昇するタイプにすればよい。この場合、たとえばシンク電流源はソース電流源に変更するなどすればよい。
1…固体撮像装置、10…画素アレイ部、12…水平走査部、14…垂直走査部、20…通信・タイミング制御部、23…クロック変換部、24…読出電流制御部、25…参照信号制御部、250…カラムAD回路、252…電圧比較部、254…カウンタ部、26…カラム処理部、27…参照信号生成部、27a…DA変換回路、28…出力回路、3…単位画素、300…参照信号選択部、400…動作電流切替制御部、7…駆動制御部、8…撮像装置、900…カメラ制御部