JP2008127599A - 凝固組織が微細な鋼鋳片 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Cの含有量が0.5質量%以下であり、凝固初相がδ−Feとなる鋼鋳片であって、該鋼鋳片中の酸化物の内、Caを必須とし、さらに、Zr及びHfの内の1種又は2種を主成分とし、その表面の全部又は一部が第三物質を介することなく地鉄に直接接触するように存在するとともに、0.1〜10μmの最大径を有する酸化物が、単独粒子あるいは複合粒子として、任意断面において面積1mm2当たりで1個以上存在する構成とされている。
【選択図】なし
Description
一方、高炭素鋼やオーステナイト系ステンレス鋼のように、凝固初相がγ−Feである場合の接種核として、ZrO2、MgS、CaO、REM系窒化物、Ti2O3などの有効性が知見されている。
上述のような問題から、凝固初相がδ−Feである鋼鋳片の製造において、有害な粗大介在物が生成せず、溶鋼への元素添加が容易で、多量のTiやNを必要としない、新しい接種技術が求められていた。
本発明は上述の知見に基づいて構成されており、その主旨とするところは以下の通りである。
Cr当量=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+1.77Ti+21.4Al+40B+8.29V ・・・(1)
Ni当量=Ni+30C+30N+0.5Mn+0.16Cu ・・・(2)
なお、この実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
即ち、酸化物が溶鋼の脱酸反応によって生成する場合に、鋳片のδ凝固組織において等軸晶の面積率が増えて柱状晶の面積率が減少し、同時に、等軸晶の粒径が微細化するような接種効果が認められた鋳片、あるいは、これを加工した製品の任意断面において酸化物を解析した結果、波長分散型X線分析法(WDS)で測定された酸化物組成は、CaとXを同時に含有しているという特徴が確認された。また、電子線回折で同定された酸化物の結晶構造は、個々の酸化物粒子の全体あるいは一部がペロブスカイト構造(CaTiO3構造)を有するという特徴が確認された。さらに、酸化物を構成するXが主にZrの場合には、斜方ペロブスカイト構造(格子定数:a=0.576nm、b=0.802nm、c=0.559nm)を有するCaZrO3と同定される酸化物が多く確認された。
以上により、本発明者等によって新たに見出された接種核の組成と形態の特徴は、CaとXを主成分とする酸化物であり、地鉄(溶鋼)に対して酸化物表面の全部あるいは一部が第三物質を介することなく直接接触していることである。
本発明で新たに見出されたCaX系酸化物の接種核について、適正な粒子径と個数を検討した結果、酸化物の最大径が0.1〜10μmであり、任意断面の面積1mm2当たりで1個以上存在させた場合に、接種効果が安定的に発現することが明らかとなった。酸化物の最大径が0.1μm未満の場合には接種能力が低く、また、酸化物の最大径が10μmを超える場合には個数が1mm2当たり1個未満となって接種能力が低下するため、上記粒子径及び個数が必要である。
上述のような組成、形態、寸法および個数を有するCaX系酸化物を鋼中に生成させるためには、凝固初相がδ−Feとなる鋼の化学成分を適正に調整するのが好ましい。
以下に、本発明で規定する化学成分組成の限定理由を説明する。
Cの含有量は、0.5%以下とする必要がある。Cが0.5%を超えると、凝固初相がδ−Feからγ−Feに変化するため、CaX系酸化物の格子不整合度に期待する接種効果が得られない。
Sの含有量は、0.01%以下とするのが好ましい。Sが0.01%を超えると、溶鋼中で粗大なCaSが生成し、脱酸のためのCaが不足してCaX酸化物を安定的に生成させることができなくなる虞がある。また、Caが多い場合にSを過剰添加すると、溶鋼中に生成した粗大なCaSがCaX系酸化物の表面を覆い隠し、接種核の能力を低下させる虞があるからである。
Nの含有量は、0.05%以下とするのが好ましい。Nが0.05%を超えると、溶鋼中で粗大なXNが生成し、脱酸のためのXが不足してCaX酸化物を安定的に生成させることができなくなる虞がある。また、Xが多い場合にNを過剰添加すると、溶鋼中に生成した粗大なXNがCaX系酸化物の表面を覆い隠し、接種核の能力を低下させる虞があるからである。
Oの含有量は、0.001〜0.01%にするのが好ましい。Oが0.001%未満では、CaX系酸化物の粒子径と個数が不足する虞がある。また、Oが0.01%を超えると、CaX系酸化物の粒子径が粗大化し、その個数が不足すると同時に、鉄鋼製品の品質に有害性をもたらす虞があるからである。
Alの含有量は、0.001〜0.1%とするのが好ましい。Alが0.001%未満では、O量を安定的に0.01%以下に低減することができなくなる虞がある。また、Alが0.1%を超えると、酸化物中のAl含有量が増加してCaX系酸化物を安定的に生成させることができなくなる虞がある。さらに、Oが多い場合にAlを過剰添加すると、粗大なアルミナクラスターが生成し、鋳造ノズルが閉塞したり、鉄鋼製品の品質が劣化する虞があるからである。
Caの含有量は、0.0005〜0.005%とするのが好ましい。Caが0.0005%未満では、酸化物中のCa含有量が減少してCaX系酸化物を安定的に生成させることができなくなる虞がある。また、Caが0.005%を超えると、酸化物中のCa含有量が増加してCaX系酸化物を安定的に生成させることができなくなる虞がある。さらに、Sが多い場合にCaを過剰添加すると、溶鋼中で粗大なCaSが生成してCaX系酸化物の表面を覆い隠し、接種核の能力を低下させる虞があるからである。
Zrの含有量は、0.0005〜0.05%とするのが好ましい。Zrが0.0005%未満では、酸化物中のZr含有量が減少してCaX系酸化物を安定的に生成させることができなくなる虞がある。また、Zrが0.05%を超えると、酸化物中のZr含有量が増加してCaX系酸化物を安定的に生成させることができなくなる虞がある。さらに、Nが多い場合にZrを過剰添加すると、溶鋼中で粗大なZrNが生成してCaX系酸化物の表面を覆い隠し、接種核の能力を低下させる虞がある。また、さらに、過剰なZr添加は合金コストの上昇を招くため好ましくないからである。
Hfの含有量は、0.001〜0.1%とするのが好ましい。Hfが0.001%未満では、酸化物中のHf含有量が減少してCaX系酸化物を安定的に生成させることができなくなる虞がある。また、Hfが0.1%を超えると、酸化物中のHf含有量が増加してCaX系酸化物を安定的に生成させることができなくなる虞がある。さらに、Nが多い場合にHfを過剰添加すると、溶鋼中で粗大なHfNが生成してCaX系酸化物の表面を覆い隠し、接種核の能力を低下させる虞がある。また、さらに、過剰なHf添加は合金コストの上昇を招くため好ましくないからである。
本発明の凝固組織が微細な鋼鋳片では、さらに必要に応じて、溶鋼中における脱酸力がAlよりも小さい他の元素を添加してもよい。
即ち、Alよりも脱酸力の強いREMやBa、Mgなどを添加すると、脱酸反応においてCaやXと競合するため、本発明のCaX系酸化物を安定的に生成させることができない。
一方、Alよりも脱酸力の小さな成分であるSi、Mn、P、Ti、Cu、Ni、Cr、Mo、W、Nb、V、Bの内の1種又は2種以上の元素を、凝固初相がδ−Feとなる範囲内で添加した場合にも本発明の効果が得られる。但し、この際、下記(1)式で計算されるCr当量は30%以下とする必要がある。Cr当量が30%を超えると、耐食性や耐熱性などの冶金効果は飽和し、合金コストの上昇を招くため好ましくないからである。
さらに、本発明の鋼鋳片では、下記(2)式で計算されるNi当量を15%以下とする必要がある。Ni当量が15%を超えると、凝固初相がδ−Feからγ−Feに変化するため、CaX系酸化物の格子不整合度に期待した接種効果が得られないからである。
なお、(1)式と(2)式に含まれない化学成分であるPとWについては、特に上限を設ける必要はない。
Cr当量=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+1.77Ti+21.4Al+40B+8.29V ・・・(1)
Ni当量=Ni+30C+30N+0.5Mn+0.16Cu ・・・(2)
下記表1に示す化学成分組成を有する10kg鋼鋳片を、実験室内に設置した真空溶解炉を用いて作製した。下記表1中、鋼Bと鋼28のみがγ−Fe凝固であり、その他の鋼は全てδ−Fe凝固である。また、鋳造の際は、溶鋼過熱度が60〜70℃になるように溶鋼温度を調整し、同一の鋳型(鋳型底面:約80mm四角、鋳型高さ:約200mm)を用いて鋳片を作製した。
上記方法によって作製された鋳片の1/2高さ断面において、下記表1に示すCaX系酸化物の個数、等軸晶率、等軸晶粒径を測定し、結果を下記表2に示した。
CaX系酸化物個数は、鋳片断面の中央部において次のような手順で測定した。まず、酸化物組成においてCaとXを同時に含有し、酸化物表面の全部あるいは一部が地鉄に直接接触しており、さらに、酸化物単独としての最大径が0.1〜10μmであることを満たす酸化物の個数を4mm2の面積にわたって測定し、1mm2あたりの個数に換算した。なお、この際、鋳片断面を研磨まで腐食することなく、WDSと走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて上記の測定を行った。
まず、任意に10個以上の酸化物粒子をSEM−WDS装置で解析し、酸化物組成、酸化物表面と地鉄との接触状況、酸化物の最大径を測定し、本発明で規定するCaX系酸化物の存在割合を求める。次に、WDSによるOのマッピング処理によって、4mm2の面積における酸化物個数を測定する。そして、面積1mm2当たりの酸化物個数にCaX系酸化物の存在割合をかけ合わせ、1mm2当たりのCaX系酸化物個数を求める。なお、このような酸化物分散状態の測定は、鋼鋳片とそれを加工した製品においてほぼ同じであるから、製品の任意断面で実行しても構わない。
等軸晶率及び等軸晶粒径は、鋼鋳片の1/2高さ断面をエッチプリント法で観察し、次の手順で測定した。
即ち、等軸晶率は、鋼鋳片の全断面における等軸晶部分の面積割合を測定した。
また、等軸晶粒径は、等軸晶部分のデンドライト方向が不連続に変化する境界を結晶粒界とみなし、最大径の大きい順に20個を測定して平均化した。
表1に示す鋼A及び鋼1〜15は本発明鋼であり、鋼成分とCaX系酸化物の分散状態が適正であるため、表2に示すように、本鋳造条件において等軸晶率が70%以上と高く、等軸晶粒径が1〜3mmと小さいことが確認された。
また、鋼29〜32は、CaとXを添加せずにREM、Ba、Mgを添加した比較鋼であり、等軸晶率が50〜60%と本発明鋼よりも低く、等軸晶粒径が4mmと本発明鋼よりも大きいことが確認された。
Claims (3)
- Cの含有量が0.5質量%以下であり、凝固初相がδ−Feとなる鋼鋳片であって、
該鋼鋳片中の酸化物の内、Caを必須とし、さらに、Zr及びHfの内の1種又は2種を主成分とし、その表面の全部又は一部が第三物質を介することなく地鉄に直接接触するように存在するとともに、0.1〜10μmの最大径を有する酸化物が、単独粒子あるいは複合粒子として、任意断面において面積1mm2当たりで1個以上存在することを特徴とする、凝固組織が微細な鋼鋳片。 - 鋼鋳片の成分組成が、質量%で、
C :0.5%以下、
S :0.01%以下、
N :0.05%以下、
O :0.001〜0.01%、
Al:0.001〜0.1%、
Ca:0.0005〜0.005%
を含有し、さらに、
Zr:0.0005〜0.05%、
Hf:0.001〜0.1%
の内の1種又は2種を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であることを特徴とする、請求項1に記載の凝固組織が微細な鋼鋳片。 - 溶鋼中における脱酸力がAlよりも小さな成分である、Si、Mn、P、Nb、V、Ti、Cu、Ni、Cr、Mo、W、Bの内の1種又は2種以上を含有するとともに、これらの成分の含有量が、下記(1)式で計算されるCr当量が30質量%以下となり、且つ、下記(2)式で計算されるNi当量が15質量%以下となる含有量とされていることを特徴とする、請求項2に記載の凝固組織が微細な鋼鋳片。
Cr当量=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+1.77Ti+21.4Al+40B+8.29V ・・・(1)
Ni当量=Ni+30C+30N+0.5Mn+0.16Cu ・・・(2)
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