JP2008116629A - 帯電防止性光学素子、帯電防止性光学素子の製造方法、電子機器装置 - Google Patents

帯電防止性光学素子、帯電防止性光学素子の製造方法、電子機器装置 Download PDF

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Abstract

【課題】基材表面にごみが付着せず、帯電防止性能が長期間にわたって維持できる帯電防止性光学素子を提供する。
【解決手段】帯電防止性光学素子としての光学多層膜フィルタ10は、基材としてのガラス基板20の表面に高屈折率材料のTiO2膜H1、低屈折率材料のSiO2膜L1が順次多層に積層形成され、非カップリング部位に形成される少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物による帯電防止膜40と、が具備されている。また、帯電防止膜40が、界面活性剤を含み、かつ、少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランの2量体以上の縮合物から形成され、前記縮合物が、オルガノシラン総量の1wt%以上70wt%未満である。
【選択図】図1

Description

本発明は、帯電防止膜を有する帯電防止性光学素子と、帯電防止性光学素子の製造方法、及びこの帯電防止性光学素子を組み込んだ電子機器装置に関する。
光学物品、特に光学素子においては、表面が帯電することによるごみの付着等が光の透過性を阻害したり、撮像素子の前段に設置する光学フィルタ等の場合には、付着ごみが写りこんでしまうなどの問題を引き起こす一因になっている。そのため光学素子の表面等に帯電を防止する膜を形成する等の様々な方法が提案されている。
光学素子に係る上述の課題を解決方法として、4級アンモニウム塩構造のような有機カチオン性物質を基材表面に形成することが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
また、オルガノアルコシキシランと多官能アクリレートを含む膜を基材表面に形成することが知られている(例えば、特許文献3,4参照)。
また、多官能アクリレートに有機アニオン性基を導入する膜を基材表面に形成する方法が知られている(特許文献5参照)。
また、カルボキシル基を有する多官能アクリレートとシリケートを組み合わせた膜を基材表面に形成する方法が知られている(例えば、特許文献6参照)。
さらに、導電性金属酸化膜とシリカの分散ゾルを用いる方法(特許文献7参照)や、多層膜の最表面または最表面から2層目に無機導電成膜を形成する方法(特許文献8、特許文献9)も知られている。
特開2000−80169号公報 特開平10−279833号公報 特開平5−179160号公報 特開平5−179161号公報 特開平7−41695号公報 特開平8−325474号公報 特開平7−247445号公報 特開2005−148379号公報 特開2006−221142号公報
このような特許文献1及び特許文献2では、4級アンモニウム塩構造のような有機カチオン性物質を基材表面に形成し表面抵抗を低くしているが、仮に、多層膜光学素子に用いる場合には、ヘイズ(HAZE:曇り度合い)が高く、透明性が低下するという課題を有している。
また、膜厚が厚くなり(1〜20μm)、分光特性に影響が出やすいという課題もある。
また、特許文献3及び特許文献4では、オルガノアルコシキシランと多官能アクリレートを含む膜を基材表面に形成し表面抵抗を低くしているが、帯電防止膜としては不十分であり、膜厚も上述した特許文献1や特許文献2と同等の厚さになるということが知られている。
また、特許文献5では、多官能アクリレートに有機アニオン性基を導入する膜を基材表面に形成するものであるが、透明性が上述した特許文献1及び特許文献2よりも低いという課題を有する。
また、特許文献6によれば、カルボキシル基を有する多官能アクリレートとシリケートを組み合わせた膜を基材表面に形成しているが、透明性は特許文献3及び特許文献4と同レベル、表面抵抗は特許文献3及び特許文献4と同レベルである。
また、特許文献7によれば、導電性金属酸化膜とシリカの分散ゾルを用いることから、金属酸化物ゾルの影響で屈折率が高くなるため、光学素子表面に形成した場合、分光特性に影響がでるという課題がある。さらに、金属酸化物ゾルの影響で透明性を高めることは困難である。
さらに、特許文献8及び特許文献9によれば、多層膜の最表面または最表面から2層目に無機導電成膜を形成する方法であり、最表面から2層目に無機導電性膜を形成する場合には、無機導電成膜をアース(GND接地)することは困難である。また、最上層の低屈折率膜の絶縁性が帯電性防止特性に影響を与えることが考えられる。
さらに、最上層に帯電防止膜を形成する場合、屈折率が高いため、UVIRカットフィルタのような多層膜で求められる充分な分光特性を得ることは困難であると予測される。
本発明の目的は、上述した課題を解決することを要旨とし、帯電防止性能が長期間にわたって維持できる帯電防止性光学素子、この帯電防止性光学素子の製造方法、帯電防止性光学素子を組み込む電子機器装置を提供することである。
本発明の帯電防止性光学素子は、基材と、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物からなる帯電防止膜と、が具備されていることを特徴とする。
この発明によれば、単体で存在する非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物は、基材と膜の固定に加え、2量体以上の縮合物間、2量体以上の縮合物と単体分子間および単体分子間で反応し、隙間を埋める糊の役割を果たす。これにより基材表面に親水成分を固定化するための部位、および膜内で架橋する部位が存在し、充分な帯電防止性能(つまり導電性を有し、導電性の発現は親水成分に吸着した水分による)及び膜自体の耐久性をもつ帯電防止膜が形成される。
また、前記帯電防止膜が、界面活性剤を含むことが好ましい。
このようにすれば、帯電防止性能(導電性能)を阻害することなく、外観が良好で均一な帯電防止膜が作成でき、さらに、帯電防止特性を向上させた帯電防止性光学素子が得られる。
また、前記非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランの2量体以上の縮合物が、オルガノシラン総量の1wt%以上70wt%未満であることが好ましい。
非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランの2量体以上の縮合物が、オルガノシラン総量の1wt%以上70wt%未満であり、それ以外の非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランの単体がある場合、基材表面に親水成分を固定化するための部位、及び膜内で架橋する部位がバランスよく存在し、充分な帯電防止性能(導電性能)および、帯電防止膜自体の耐久性を持つ膜を有する帯電防止性光学素子を実現できる。
また、前記非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物が、スルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホン酸基から選ばれる1種以上の官能基を含有することが好ましい。
スルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホン酸基は良好な親水性を示す。従って、非カップリング部位にこれらの少なくとも1種以上を含有した帯電防止膜を形成することで、良好な帯電防止性能を有する帯電防止性光学素子を実現できる。
また、前記基材が、UVIRカット膜またはIRカット膜が形成されたガラスまたは水晶であることが好ましい。
この発明によれば、従来の光学多層膜フィルタに比較してホコリが付きにくいUVIRカットフィルタ(Ultraviolet-Infrared cut filter)及びIRカットフィルタ(Infrared cut filter)を得ることができる。また、基材がガラス基板で構成されることにより、ホコリが付きにくいCCD(電荷結合素子)などの映像素子の防塵ガラスとして、さらに所望のフィルタ機能を一体的に構成したUVIRカットフィルタ及びIRカットフィルタ機能を含む光学多層膜フィルタを得ることができる。また形成された帯電防止膜は非常に薄く、屈折率が低いため分光特性(透過率)にほとんど影響を与えない。
さらに、前記基材が積層構造であり、前記積層構造の最上段と最下段が水晶基板であることが好ましい。
ここで、水晶基板を積層した光学素子としては、例えば、光学ローパスフィルタがある。
前記帯電防止膜が形成された水晶基板で構成されることにより、ホコリが付きにくい光学ローパスフィルタを得ることができる。そして、形成された帯電防止膜は非常に薄く、屈折率が低いため分光特性(透過率)にほとんど影響を与えない。そのため複数の水晶板やIR吸収ガラス、位相差板(水晶または有機フィルム)等の部品を接着(または粘着剤)で固定した後に、全表面に帯電防止膜を形成することができる。
また、本発明の帯電防止性光学素子の製造方法は、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物を親水性有機溶剤に希釈した処理液を基材表面に塗布する工程と、前記処理液が塗布された基材を加熱処理して乾燥硬化する工程と、を含むことを特徴とする。
この方法によれば、非カップリング部位に、少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物のカップリング部位の反応を完結させ、充分な帯電防止性能と、帯電防止膜自体が耐久性を有する帯電防止性光学素子を実現できる。
また、本発明の帯電防止性光学素子の製造方法は、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物を親水性有機溶剤に希釈した処理液に含有されるスルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基から選ばれる1種以上の官能基をスルホン酸基に転化する工程と、前記官能基をスルホン酸基に転化された前記処理液を基材表面に塗布する工程と、前記処理液を塗布した基材を加熱処理して乾燥硬化する工程と、を含むことを特徴とする。
スルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基をさらに良好な親水性を示すスルホン酸基に置換することによって、さらに良好な導電性能を持たせることができる。また、この処理液を基材表面に塗布し、これを加熱処理して乾燥硬化することで、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物のカップリング部位の反応を完結させ、充分な帯電防止性能と、帯電防止膜自体の耐久性を有する帯電防止性光学素子が得られる。
また、本発明の他の帯電防止性光学素子の製造方法は、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物を親水性有機溶剤に希釈した処理液を基材表面に塗布する工程と、前記処理液を塗布した基材を加熱処理して乾燥硬化する工程と、前記基材を加熱処理して乾燥硬化する工程の後に、非カップリング部位に含有されるスルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基から選ばれる1種以上の官能基をスルホン酸基に転化する工程と、を含むことを特徴とする。
この製造方法によれば、スルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基をさらに良好な親水性を示すスルホン酸基に変換(転化)することによってさらに良好な帯電防止性能を持たせることができる。
また、前記加熱処理して乾燥硬化する工程が、50℃以上300℃以下の温度範囲で、1分以上24時間以下であることが好ましい。
このようにすれば、塗布された処理液中の溶媒を除去し、オルガノシランの反応を完結させ、充分な帯電防止性能と、帯電防止膜自体の耐久性を有する帯電防止性光学素子が得られる。
また、前記処理液を基材表面に塗布する方法がディップコーティング法であることが望ましい。
また、前記処理液を基材表面に塗布する方法がスピンコーティング法であることが望ましい。
このような塗布方法によれば、外観が良好である均一な帯電防止膜を形成することができる。そして、ディップコーティング法によれば、基材の側面を含む全周面に帯電防止膜を形成することができ、スピンコーティング法によれば、基材の表裏両面に均一な厚さの帯電防止膜を形成することができる。
また、本発明の電子機器装置は、基材と、該基材表面に形成された帯電防止膜とが具備された帯電防止性光学素子を用いた電子機器であって、前記帯電防止膜の非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物が具備された帯電防止性光学素子が組み込まれていることを特徴とする。
上述した帯電防止性光学素子を組み込んだ電子機器装置としては、具体的には、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどの撮像装置や、いわゆるカメラ付携帯電話、いわゆるカメラ付携帯型パソコン(パーソナルコンピュータ)などに適応でき、ほこりがつきにくく、光透過率が高い帯電防止性光学素子により、高性能を維持できる。
また、前記帯電防止性光学素子に形成される前記帯電防止膜の最表面の少なくとも一部がアースされていることが望ましい。
この構造によれば、上述した帯電防止膜が親水性を有しているため、大気中の水分が帯電防止膜に吸着され、このことにより表面抵抗値が低下し、さらに帯電防止膜が電子機器装置に電気的に接続されているために、ユーザーが電子機器装置にふれるだけで帯電防止性光学素子の電荷を取り除くことができ、この電荷によるごみ付着等の電子機器装置への影響を抑制することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1,2は、帯電防止性光学素子としての光学多層膜フィルタ及び光学ローパス−フィルタを例示し、図3〜図5は評価結果、図6,7は電子機器装置を例示している。なお、以下に述べる実施の形態は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。また、以降の実施例では、帯電防止性光学素子として光学多層膜フィルタと光学ローパス−フィルタ(OLPF)を例示して説明する。
(光学多層膜フィルタの構成)
図1は、本発明による光学多層膜フィルタを示す断面図であり、(a)は、帯電防止膜をディッピング法で形成した形態、(b)はスピンコート法で形成した形態を示している。図1(a)において、光学多層膜フィルタ10は、光を透過させるためのガラス基板20と、多層の無機薄膜30とを備えて構成されている。なお、ガラス基板20と多層の無機薄膜30とで基材と呼称する。
ガラス基板20は、白板ガラス(屈折率n=1.52)であり、本実施の形態では、直径30mm、厚さ0.3mmのものを用いた。
無機薄膜30の材料は、高屈折率材料層(H)がTiO2(n=2.40)、低屈折率材料層(L)がSiO2(n=1.46)から構成される。
この無機薄膜30は、ガラス基板20側から、高屈折率材料のTiO2膜H(図中、H1は高屈折率材料のガラス基板表面から1層目を表す)がまず積層形成され、積層された高屈折率材料のTiO2膜H1の上面に、低屈折率材料のSiO2膜L(図中、L1は低屈折率材料の1層目を表す)が積層形成される。以降、低屈折率材料のSiO2膜L1の上面に高屈折率材料のTiO2膜と低屈折率材料のSiO2膜が順次、交互に積層され、無機薄膜30の最上層は、低屈折率材料のSiO2膜L30(図中、L30、H30は30層目を表す)が積層されている。つまり、高屈折率材料のTiO2膜、低屈折率材料のSiO2膜が各々30層、計60層の無機薄膜30が形成されている。
この無機薄膜30の膜構成の詳細について説明する。
以下に説明する無機薄膜30の膜厚構成の表記では、光学膜厚nd=1/4λの値を用いる。具体的には、高屈折率材料層(H)の基準膜厚を1Hとして表記し、低屈折率材料層(L)の膜厚を同様に1Lと表記する。また、(xH、yL)SのSの表記は、スタック数と呼ばれる繰り返しの回数で、括弧内の構成を周期的に繰り返すことを表している。
無機薄膜30の膜厚構成は、設計波長λが550nm、第1層の高屈折率材料のTiO2膜H1が0.60H、第2層(低屈折率材料としては1層目)の低屈折率材料のSiO2膜L1が0.20L、以下、順次1.05H、0.37L、(0.68H、0.53L)4、0.69H、0.42L、0.59H、1.92L、(1.38H、1.38L)6、1.48H、1.52L、1.65H、1.71L、1.54H、1.59L、1.42H、1.58L、1.51H、1.72L、1.84H、1.80L、1.67H、1.77L、(1.87H、1.87L)7、1.89H、1.90L、1.90H、最上層の低屈折率材料のSiO2膜L30が0.96Lの、計60層が形成されている。
(無機薄膜の形成方法)
無機薄膜30の形成方法は一般的なイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(いわゆるIAD法)により形成した。
具体的には、ガラス基板20を真空蒸着チャンバー内に取り付けた後、真空蒸着チャンバー内の下部に蒸着材料を充填したるつぼを配置し、電子ビームにより蒸発させた。同時にイオン銃によりイオン化したO2(Arを付加しても良い)を加速照射することにより、ガラス基板20上にTiO2の高屈折率材料の層H1〜H30とSiO2の低屈折率材料の層L1〜L30を、前述した膜厚構成で交互に成膜した。なお、無機薄膜30の形成後、帯電防止膜40をディッピング法に用いて、側面を含む全周面に形成し、図1(a)に示すような光学多層膜フィルタ10を形成する。なお、帯電防止膜40の厚さは約20nmである。帯電防止膜40については、後述する実施例にて詳しく説明する。
なお、低屈折率材料SiO2膜の成膜条件(標準条件)は、成膜速度を0.8nm/sec、加速電圧を1000V、加速電流を1200mA、O2の流量を70sccm、成膜温度を150℃とした。
また、高屈折率材料TiO2の成膜条件(標準条件)は、成膜速度を0.3nm/sec、加速電圧を1000V、加速電流を1200mA、O2の流量を60sccm、Arの流量を20sccm、成膜温度を150℃とした。
次に、スピンコート法にて帯電防止膜40が形成された光学多層膜フィルタ10について図1(b)を用いて説明する。スピンコート法によれば、帯電防止膜40はガラス基板20の裏面側及び低屈折率材料のSiO2膜L30(最上層)の表面に形成される。スピンコート法にて形成される帯電防止膜40の厚さも約20nmとする。帯電防止膜40については、後述する実施例にて詳しく説明する。
(OLPF:光学ローパス−フィルタの構成)
次に、本発明に係る光学素子としてのOLPFについて図面を参照して説明する。
図2は、本発明によるOLPFを示す断面図であり、(a)は、帯電防止膜をディッピング法で形成した形態、(b)はスピンコート法で形成した形態を示している。図2(a)において、OLPF110は、水晶複屈折板51とIRカットガラス60と位相差フィルム70と水晶複屈折板52とが順次積層されて構成されている。なお、このように形成された状態を基材と呼称する。
また、位相差フィルム70は水晶位相差板に置き換えることが可能である。
下層の水晶複屈折板51の裏面にはAR膜(反射防止膜)80が全面にわたって形成され、水晶複屈折板52の表面にはUVIRカット膜90が形成されている。そして、基材の全表面にディッピング法により帯電防止膜40が形成される。帯電防止膜40については、後述する実施例にて詳しく説明する。
帯電防止膜40をスピンコート法で形成する場合には、下層の水晶複屈折板51のAR膜80の表面と、上層の水晶複屈折板52のUVIRカット膜90の表面それぞれに帯電防止膜40が形成される。この際、帯電防止膜40の一部に後述する電子機器装置(図7、参照)にOLPF110を保持し、電子機器装置の固定治具に帯電防止膜40をアースするための導電性を有する電極95が配設される。電極95は帯電防止膜40に導電性接着剤にて貼着しても、上記固定治具に組み込む際に固定治具と帯電防止膜40との間に挿着してもよい。また固定治具自体が電極95を兼用しても良い。なお、帯電防止膜40については後述する実施例にて詳しく説明する。
なお、UVIRカット膜90は、図2(b)に示すように、水晶複屈折板52の表面全体に形成しても、水晶複屈折板52の外周部を除く(電極95の内側)領域に形成してもよい。
続いて、帯電防止膜40の組成及び製造方法について実施例をあげ説明する。帯電防止膜40の組成及び製造方法は、光学多層膜フィルタ10、OLPF110ともに同じである。
本発明の実施例1について説明する。
(処理液の作製)
まず、処理液の作製方法について説明する。
3−トリメトキシシリルプロパンスルホン酸イソプロピルエステル0.01molを氷酢酸60mlに溶解し、ここに、30%過酸化水素水35gを、液温を25〜30℃に保った状態で1時間かけて滴下した。滴下終了後、25℃で一昼夜攪拌した。この液をFT−NMRにて分析したところ、スルホン酸エステル基が酸化、メトキシ基が加水分解され、トリシロキシプロパンスルホン酸が合成されていることがわかった。また、トリシロキシプロパンスルホン酸溶液の固形分濃度を測定したところ、4wt%であった。
このトリシロキシプロパンスルホン酸溶液をエタノールにて0.2%に希釈し、150gとした。ここにN−アミノエチルエタノールアミン0.1gを混合し、30℃で2時間攪拌した(A−1液)。このA−1液の一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全化合物量中の40wt%であることを確認した。次にA−1液に界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムを処理液総量に対し、50ppm加え、処理液Aとした。
(ディップコーティング法により基材表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材を処理液Aに浸漬し、等速引き上げ装置を用いて10cm/分の引き上げ速度で塗布した。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Aを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、120℃で1時間保持し、基材との反応を完結させ、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。このようにして得られた光学多層膜フィルタ10において白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。また、反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
次に、本発明の実施例2について説明する。
(処理液の作製)
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.01molをエタノール1.19mlに溶解し、ここに、0.2N硫酸を0.238g添加し、30℃で2時間攪拌し、メトキシ基の加水分解を行った。ここに7.6%過酸化水素水77.54gを加え、60℃の環境下で24H攪拌し、チオール基の酸化反応とシラノール基の縮合反応をおこなった。
この液をFT−NMRにて分析したところ、メルカプト基が酸化、メトキシ基が加水分解され、トリシロキシプロパンスルホン酸が合成されていることがわかった。この液の一部を純水で200倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全固形分量中の42wt%であることを確認した。また、トリシロキシプロパンスルホン酸溶液の固形分濃度を測定したところ、2.4wt%であった。
このトリシロキシプロパンスルホン酸溶液をエタノールにて固形分濃度が0.15wt%となるよう希釈し、150gの希釈液を得た。この希釈液に、界面活性剤のジラウリルスルホコク酸ナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製ニッコールOTP−100)を処理液総量に対して100ppm加え、処理液Bとした。
(ディップコーティング法により基材表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した無機薄膜またはAR膜、UVIRカット膜等が形成された光学多層膜フィルタを処理液Bに浸漬して、等速引き上げ装置で20cm/分の引き上げ速度で塗布した。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Bを塗布した光学多層膜フィルタを熱風循環式恒温槽内で、60℃で4時間保持し、基材との反応を完結させ、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。得られた光学多層膜フィルタ10において、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。また、反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
次に、本発明の実施例3について説明する。
(処理液の作製)
ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド0.01mol(4.75g)をt−ブタノール47.5gに溶解し、0.1N硝酸1.7gを加えて25℃で2時間攪拌した。これをFT−NMRにて分析したところ、エトキシ基が加水分解され、ビス[3−(トリシロキシシリル)プロピル]ジスルフィドとなっていることがわかった。
この溶液1.5gをエタノールで100倍に希釈し、全量150gとした。さらに、ここに、1N水酸化ナトリウム溶液0.1g混合し、室温で30分攪拌した(C−1液)。このC−1液の一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全化合物量中の30%であることを確認した。次にC−1液に界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムを処理液総量に対し、50ppm加え、処理液Cとした。
(スピンコーティング法により光学多層膜フィルタ表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した光学多層膜フィルタ(基材)に、スピンコーターを用いて以下の方法で処理液Cを塗布した。光学多層膜フィルタ(基材)の中心部付近を真空チャックし、回転数500rpmで回転させた状態で処理液Cを5ml吐出し、回転数2500rpmで10秒間回転させ、余剰な処理液Cを振り切った。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Cを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、120℃で1時間保持し、基材との反応を完結させた。
(官能基をスルホン酸基に転化する工程)
オゾンガスを酸素ガスで希釈したオゾン含有ガス(オゾン含有量200g/m3)を、90℃で10分間接触させ酸化処理することにより、スルフィド基をスルホン酸基に置換し、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。スルホン酸基の存在の確認は、メチレンブルーによる染色によって行った。メチレンブルーはスルホン酸に対し、イオン的に非常に強く結合するため、スルホン酸基が存在する場合、青く染色されることが知られている。得られた光学多層膜フィルタ10の一部を1mMメチレンブルー水溶液(pH4)に25℃にて1分間浸漬したあと、純水を満たした超音波洗浄機(槽容量2.6リットル、発振周波数:45kHz、出力:120W)で3分間洗浄を行ったところ、青色に染色されていることが認められ、スルホン酸基の存在が確認された。得られた光学多層膜フィルタ10は、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
次に、本発明の実施例4について説明する。
(処理液の作製)
ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド0.02mol(4.75g)をt−ブタノール40.5gに溶解し、0.1N硝酸1.2gを加えて30℃で5時間攪拌した。これをFT−NMRにて分析したところ、エトキシ基が加水分解され、ビス[3−(トリシロキシシリル)プロピル]ジスルフィドとなっていることを確認した。
この溶液2.25gをエタノールで100倍に希釈し、全量150gとしたものを処理液Dとした。この液の一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全化合物量中の29wt%であることを確認した。
(スピンコーティング法により基材に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材にスピンコーターを用いて処理液Dを塗布した。スピンコーターを用いた処理液Dの塗布は、基材の中心部付近を真空チャックし、回転数500rpmで回転させた状態で処理液Dを3ml吐出し3秒間回転を保持し、さらに回転数2500rpmで10秒間回転させ、余剰な処理液Dを振り切った。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Dを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、120℃で1時間保持し、基材との反応を完結させた。
(官能基をスルホン酸基に転化する工程)
オゾンガスを溶解したオゾン水(オゾン含有量70〜80ppm)を常温で20分間接触させ酸化処理することにより、スルフィド基をスルホン酸基に置換し、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。スルホン酸基の存在の確認は、メチレンブルーによる染色によって行った。メチレンブルーはスルホン酸に対し、イオン的に非常に強く結合するため、スルホン酸基が存在する場合、青く染色されることが知られている。得られた光学多層膜フィルタ10の一部を1mMメチレンブルー水溶液(pH4)に25℃にて1分間浸漬したあと、純水を満たした超音波洗浄機(槽容量2.6リットル、発振周波数:45kHz、出力:120W)で3分間洗浄を行ったところ、青色に染色されていることが認められ、スルホン酸基の存在が確認された。得られた光学多層膜フィルタ10には、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
続いて、本発明の実施例5について説明する。
(処理液の作製)
処理液D(実施例4参照)と同様に、ビス[3−(トリシロキシシリル)プロピル]ジスルフィド溶液をエタノール/水(50/50vol%)溶媒で10倍に希釈し、これにオゾンガスを酸素ガスで希釈したオゾン含有ガス(オゾン含有量200g/m3)を2.5l/min.で30分間通じ酸化した。この液をFT−NMRにて分析したところ、ジスルフィド基が酸化され、トリシロキシプロパンスルホン酸が合成されていることを確認した。こうして得られたトリシロキシプロパンスルホン酸溶液の固形分濃度を測定したところ2.0%であった。
このトリシロキシプロパンスルホン酸溶液をエタノールにて固形分濃度が0.15wt%となるよう希釈し、150gの希釈液を得て、処理液Eとした。この液の一部を純水20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全固形分量中の30wt%であることを確認した。
(ディップコーティング法により基材表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材を準備した。その基材を処理液Eに浸漬し、等速引き上げ装置を用いて20cm/分の引き上げ速度で塗布した。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Eを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、120℃で1時間保持し、基材との反応を完結させ、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。得られた光学多層膜フィルタ10には、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
続いて、本発明の実施例6について説明する。
(処理液の作製及び官能基をスルホン酸基に転化する工程)
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン溶液(0.02molをアセトン60mlに溶解)を氷冷した0.4mol/l過酸化マンガン水溶液200ml中に氷冷したまま1時間かけて滴下した。滴下終了後、氷冷からはずし、25℃で2時間攪拌し、未反応の過マンガン酸を二酸化マンガンにした。この反応液から、二酸化マンガンを濾別し、わずかに黄みがかった濾液を得た。この濾液をFT−NMRにて分析したところ、チオール基が酸化、メトキシ基が加水分解され、トリシロキシプロパンスルホン酸カリウムが合成されていることがわかった。また、トリシロキシプロパンスルホン酸カリウム溶液の固形分濃度を測定したところ、3wt%であった。
このトリシロキシプロパンスルホン酸カリウム溶液をエタノールにて0.2%に希釈し、150gとした。ここに濃塩酸(35%)を0.05g、酢酸0.025gを混合し、0℃で72時間攪拌した(G−1液)。このG−1液の一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全化合物量中の15%であることを確認した。次にG−1液に界面活性剤のジラウリルスルホコハク酸ナトリウムを処理液総量に対し、50ppm加え、処理液Gとした。
(ディップコーティング法により基材表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材を処理液Gに浸漬し、等速引き上げ装置を用いて10cm/分の引き上げ速度で塗布した。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Gを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、120℃で1時間保持し、基材との反応を完結させ、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。得られた光学多層膜フィルタ10には、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
次に、本発明の実施例7について説明する。
(処理液の作製及び官能基をスルホン酸基に転化する工程)
実施例6と同様に、トリシロキシプロパンスルホン酸カリウム溶液を作製し、強酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製アンバーライト IR−120Na)100ml中を通薬速度SV4にて通過させた。トリシロキシプロパンスルホン酸カリウム溶液のpHが10.5であったのに対し、イオン交換した溶液はpHが1.3であり、スルホン酸カリウムがスルホン酸にイオン交換され、トリストリシロキシプロパンルホン酸溶液となっていることが確認された。トリシロキシプロパンスルホン酸溶液の固形分濃度を測定したところ、1.5wt%であった。
このトリシロキシプロパンスルホン酸カリウム溶液をエタノールにて0.15%に希釈し、150gとした。この希釈液を0℃で72時間保管した(H−1液)。このH−1液の一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全化合物量中の10%であることを確認した。次にH−1液に界面活性剤のジラウリルスルホコハク酸ナトリウムを処理液総量に対し、100ppm加え、処理液Hとした。
(ディップコーティング法により基材表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材を処理液Gに浸漬し、等速引き上げ装置を用いて20cm/分の引き上げ速度で塗布した。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Hを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、60℃で4時間保持し、基材との反応を完結させ、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。得られた光学多層膜フィルタ10には、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
次に、本発明の実施例8について説明する。
(処理液の作製)
アセトン60mlに3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.02molを溶解し、これを氷冷した0.4mol/l過マンガン酸カリウム水溶液200ml中に氷冷したまま1時間かけて滴下した。滴下終了後、25℃で2時間攪拌し、未反応の過マンガン酸カリウムを二酸化マンガンとした。この反応液を0℃で一昼夜保管し、二酸化マンガン微粒子を沈降させ、これを濾別した。この濾液をFT−NMRにて分析したところ、メルカプト基が酸化、メトキシ基が加水分解され、トリシロキシプロパンスルホン酸カリウムが合成されていることがわかった。また、トリシロキシプロパンスルホン酸カリウム溶液の固形分濃度を測定したところ、3wt%であった。
得られたトリシロキシプロパンスルホン酸カリウム溶液を、再生した強酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製アンバーライトIR−120Na)100ml中を通薬速度SV4にて通過させた。トリシロキシプロパンスルホン酸カリウム溶液のpHが10.5であったのに対し、イオン交換した溶液はpHが1.3であり、スルホン酸カリウムがスルホン酸にイオン交換され、トリシロキシプロパンスルホン酸溶液となっていることが確認された。トリシロキシプロパンスルホン酸溶液の固形分濃度を測定したところ、1.5wt%であった。
このトリシロキシプロパンスルホン酸溶液をエタノールにて固形分濃度が0.15wt%となるよう希釈し、150gの希釈液を得た。この希釈液を0℃で72時間保管し縮合物を生成した後、界面活性剤のジラウリルスルホコハク酸ナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製ニッコールOTP−100)を処理液総量に対して100ppm加え、処理液Iとした。
この処理液Iの一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全固形分量中の15wt%であることを確認した。
(ディップコーティング法により基材表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材を準備した。その基材を処理液Iに浸漬し、等速引き上げ装置を用いて20cm/分の引き上げ速度で塗布した。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Iを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、120℃で1時間保持し、基材との反応を完結させ、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。得られた光学多層膜フィルタ10には、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。また、反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
次に、本発明の実施例9について説明する。
(処理液の作製)
トリシロキシプロパンスルホン酸溶液を作製し、これを固形分濃度が0.15wt%となるようエタノールで希釈し、150gの希釈液を得た。ここにN−アミノエチルエタノールアミンを0.3g混合し、40℃で2時間保持し縮合物を生成した後、界面活性剤のジラウリルスルホコハク酸ナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製ニッコールOTP−100)を処理液総量に対して100ppm加え、処理液Jとした。
この処理液Jの一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全固形分量中の62wt%であることを確認した。
(ディップコーティング法により基材表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材を準備した。その基材を処理液Jに浸漬し、等速引き上げ装置を用いて20cm/分の引き上げ速度で塗布した。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Jを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、120℃で1時間保持し、基材との反応を完結させ、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。得られた光学多層膜フィルタ10には、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
次に、本発明の実施例10について説明する。前述した実施例1〜実施例9では、光学素子として光学多層膜フィルタを例示して説明したが、実施例10は、光学素子としてOLPF(図2、参照)に帯電防止膜を形成する方法である。
実施例10では、処理液の組成、処理液の作製方法、OLPF表面に処理液を塗布する方法、及び処理液を加熱処理して乾燥硬化し帯電防止膜40を形成する方法は、前述した実施例1と同じであり、処理する対象を光学多層膜フィルタからOLPFに置き換えることができるので、説明を省略する。
ここで、OLPF表面に処理液を塗布する方法が、スピンコーティング法である場合には、スピンコーターを用いて基材の中心部付近を真空チャックし、回転数500rpmで回転させた状態で処理液5mlを吐出し、回転数2500rpmで10秒間回転させ、余剰な処理液を振り切ることにより処理液を塗布することができる。その後、基材を加熱処理して乾燥硬化して帯電防止膜40を有するOLPF110を得た。得られたOLPF110には、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
続いて、前述した実施例1〜実施例10との特性を比較するために複数の比較例を例示して説明する。なお、比較例は、光学素子として光学多層膜フィルタを例示している。
〈比較例1〉
(処理液の作製)
処理液I(実施例8、参照)を調製する際と同様に、トリシロキシプロパンスルホン酸溶液を調製し、これをエタノールにて固形分濃度が0.15wt%となるよう希釈し、150gの希釈液を得た。この希釈直後の液を、処理液Kとした。
この処理液Kの一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全固形分量中の0.6wt%であることを確認した。
(ディップコーティング法により基材表面に塗布する工程及び加熱処理して乾燥硬化する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材を処理液Kに浸漬し、等速引き上げ装置を用いて20cm/分の引き上げ速度で塗工した。
これを熱風循環式恒温槽内で、120℃で1時間保持することにより乾燥硬化を行い、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。また、得られた光学多層膜フィルタ10には、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
〈比較例2〉
続いて、比較例2について説明する。
(処理液の作製)
処理液J(実施例9参照)の調製と同様に、固形分濃度が0.15wt%のトリシロキシプロパンスルホン酸のエタノール溶液にN−アミノエチルエタノールアミンを0.3g混合し、75℃で200時間保持し縮合物を生成、処理液Lとした。
この処理液Lの一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全固形分量中の79wt%であることを確認した。
(ディップコーティング法により基材表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材を処理液Jに浸漬し、等速引き上げ装置を用いて20cm/分の引き上げ速度で塗布した。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Jを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、120℃で1時間保持することにより乾燥硬化を行い、基材との反応を完結させ、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。得られた光学多層膜フィルタ10には、外観上若干の白濁が確認された。
〈比較例3〉
続いて、比較例3について説明する。
(処理液の作製)
処理液D(実施例4、参照)でビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィドの替わりに、n−ヘキシルトリエトキシシランを4.96g用いた以外は同様に、加水分解、縮合を行い、エタノールにて固形分濃度が0.15wt%となるよう希釈し、150gの処理液Mを得た。
この処理液Mの一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全化合物量中の52wt%であることを確認した。
(スピンコーティング法により基材表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材に、スピンコーターを用いて以下の方法で塗工した。基材の中心部付近を真空チャックし、回転数500rpmで回転させた状態で処理液Mを3ml吐出し3秒間保持し、さらに回転数2500rpmで10秒間回転させ、余剰な処理液Mを振り切った。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Mを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、120℃で1時間保持し、基材との反応を完結させた。
処理液Mで処理した光学多層膜フィルタ10は、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。反射率は処理前と後で変化が見られなかった。メチレンブルー染色法により、この光学多層膜フィルタの染色を行ったが、染色されなかった。つまり、この処理液Mは、スルホン酸基が存在していないことを示している。
〈比較例4〉
続いて、比較例4について説明する。なお、比較例4では、処理液M(比較例3参照)を用いた。
(スピンコーティング法により基材表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材に、スピンコーターを用いて以下の方法で処理液Mを塗工した。基材の中心部付近を真空チャックし、回転数500rpmで回転させた状態で処理液Mを3ml吐出し3秒間回転を保持し、さらに回転数2500rpmで10秒間回転させ、余剰な処理液Mを振り切った。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Mを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、120℃で1時間保持し、基材との反応を完結させた。
(官能基をスルホン酸基に転化する工程)
オゾンガスを酸素ガスで希釈したオゾン含有ガス(オゾン含有量200g/m3)を、90℃で10分間基材に接触させ酸化処理することにより、スルフィド基をスルホン酸基に置換し、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。スルホン酸基の存在の確認は、メチレンブルーによる染色によって行った。得られた光学多層膜フィルタ10の一部を1mMメチレンブルー水溶液(pH4)に25℃にて1分間浸漬したあと、純水を満たした超音波洗浄機(槽容量2.6リットル、発振周波数:45kHz、出力:120W)で3分間洗浄を行ったところ、青色に染色されていることが認められ、スルホン酸基の存在が確認された。得られた光学多層膜フィルタ10は、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。また、反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
〈比較例5〉
続いて、比較例5について説明する。比較例5では、処理液I(実施例8、参照)を用いた。
(ディップコーティング法により基材表面に塗布する工程)
40℃の1.6N水酸化カリウム液に3分浸漬し、純水で充分に洗浄した基材を処理液Iに浸漬し、等速引き上げ装置を用いて20cm/分の引き上げ速度で塗工した。
(加熱処理して乾燥硬化する工程)
処理液Iを塗布した基材を熱風循環式恒温槽内で、40℃で1時間保持し、基材との反応を完結させ、帯電防止膜40を有する光学多層膜フィルタ10を得た。得られた光学多層膜フィルタ10は、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。また、反射率は処理前と後で変化が見られなかった。
〈比較例6〉
続いて、比較例6について説明する。比較例6は、図1において示した光学多層膜フィルタの最上層L30から2番目の層L29をITO(図示は省略)で形成しているところに特徴を有しており、このITOの部分と、帯電防止膜40が無いこと以外は図1に示す構成と同じである。ITOの抵抗は、膜厚130nmにおいて1×104(ohm)以下であった。
〈比較例7〉
続いて、比較例7について説明する。比較例7は、光学多層膜フィルタに帯電防止膜を形成していない場合を例示する(図示は省略)。
(帯電防止膜の評価結果)
前述した実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例7にて示した帯電防止膜の各試料における耐擦傷性、表面電位、表面抵抗、分光特性について評価し比較する。
まず、上記各評価項目の評価方法を示し、評価結果を表1、及び図3、図4、図5に表す。
(評価方法:耐擦傷性)
帯電防止膜40の表面を♯0000のスチールウールで1kgの加重をかけ50回摩擦した。傷のついた度合いを3段階に分けて評価した。具体的には、○:全く傷がつかない、△:1〜10本細かい傷がつく(実用上問題ないレベル)、×:細かく無数に傷がつく(実用上問題あり)というように分類した。
(評価方法:静電気)
レンズペーパーで帯電防止膜40を強く擦った後、表面電位計(トレックジャパン製、Model 341)によって表面電位の推移を測定した。プローブと基材表面の距離10mm。ステージは金属製でアースした状態で測定。測定環境を湿度55%±5%、気温25℃±3℃とした。
(評価方法:表面抵抗)
表面抵抗測定装置(三菱ケミカル製、ハイレスターUP MCP−HT45)を用いた。測定条件は1000V、30secとし、測定環境を湿度55%±5%、気温25℃±3℃として測定した。
(評価方法:透過率)
分光器(日立製、SpectrophotmeterU−4100)を用いて測定した。
(評価方法:ヘイズ(HAZE)
自動ヘーズコンピュータ(スガ試験機株式会社製:HZ−2)を用いてダブルビーム方式で測定した。
(評価方法:染色試験)
スルホン酸基の存在の確認を、メチレンブルーによる染色によって行った。メチレンブルーはスルホン酸に対しイオン的に非常に強く結合するため、スルホン酸基が存在する場合青く染色されることが知られている。得られた帯電防止性光学素子(光学多層膜フィルタ10及びOLPF110)の一部を1mMメチレンブルー水溶液(pH4)に25℃にて1分間浸漬したあと、純水を満たした超音波洗浄機(槽容量2.6リットル、発振周波数45kHz,出力120W)で3分間洗浄を行い、青色に染色されているか確認した。
(評価結果)
前述した実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例7にて示した方法で形成された試料を、上述の評価方法を用いて評価した結果を表1及び図3〜図5に示す。
Figure 2008116629
表1に示すように、実施例1〜10の耐擦傷性は若干の差はあるものの実用上満足できるレベルであった。実施例3,4においてわずかに耐擦傷性が悪くなっている。この原因は明確ではないが、帯電防止膜40の形成後にオゾン処理をすることにより帯電防止膜40にダメージが入ったか、密着性に影響を及ぼしたと考えられる。
また、比較例6において若干耐擦傷性が悪くなっている。この原因は明確ではないが、最上層から2層目の(本評価で用いた)ITO膜自体の硬度不足のために耐擦傷性が低下したと考えられる。
また、比較例1、2、5において耐擦傷性が低下している。比較例1は2量体以上の縮合物の量が少ないために、耐擦傷性が低下したと考えられる。比較例2は逆に2量体以上の縮合物の量が多すぎるために帯電防止膜40の構成物質が均一に分散しなかったために、耐擦傷性が低下したと考えられる。比較例5は加熱温度が低いために帯電防止膜40の反応が不十分になり、耐擦傷性が低下したと考えられる。
表面抵抗は、表1に示すように、実施例1〜実施例10では、表面抵抗が1.4×109〜5.1×109(ohm/□)となっており、帯電防止性能としては充分な抵抗値であると判断できる。比較例3,4の表面抵抗は2.4×1011(ohm/□)、3.8×1011(ohm/□)になっており、帯電防止としての機能に不足すると思われる。これはスルホン酸基の量が不足したために、親水性が低下したことによると考えられる。
また、比較例6は表面抵抗が他に比べ非常に低くなっている。これは低抵抗のITOの効果だと考えられる。比較例7は表面抵抗が1×1015(ohm/□)以上であり、本測定機では正確な値は得られなかったが、表面抵抗が他に比べ非常に高いことがわかった。
続いて、表面電位の測定結果について説明する。
図3は、実施例1〜実施例10の測定結果、図4は比較例1〜比較例7の測定結果を示すグラフである。図3において、実施例1〜実施例10に関しては多少のばらつきがあるが、20秒以内に初期の表面電位の約1/2、約100秒で表面電位が−50V以下になっている。
図4において、比較例1,2,5は実施例1〜実施例10と同様の結果を示している。
比較例3,4に関しては初期の1/2の表面電位になるまでに約50秒程度かかっており、100秒経過しても−400V以上の表面電位が残っており、帯電防止機能として満足とはいえない。
比較例6b及び比較例7に関しては、初期の帯電量がそのまま維持されており、100秒以上経過してもほとんど変化していない。比較例6aは帯電量が急速に減少し5秒以内に初期値の1/2以下になっている。しかしながら帯電量が−150Vぐらいで飽和し、100秒経過後でもその電圧は維持されている。この原因は明確にわかっていないが、最上層のSiO2(図1のL30)の抵抗(絶縁性)が高いために発生していると考えられる。
なお、比較例6aと比較例6bの差は、前述した比較例のITO膜を有する構成において測定方法を変えた結果としての差によるものである。比較例6bは、光学多層膜フィルタを測定器のステージにそのままを置いて測定した場合であり、これはITOがアースされていない状態である。そのため比較例6aは、ITO部分がアースされるように電極を取り付けた上で測定を行った。
比較例6aと比較例6bの測定結果の差は次のように考えられる。
表面電位が高い場合は、最上層のSiO2を電荷が通り抜けITOに到達することができる(絶縁破壊が発生したと考えられる)が、表面電位が低くなると電荷が移動できずに表面に残ってしまうか、または、最上層のSiO2の絶縁性は高いが実際に電子ビーム蒸着をした場合は、ピンホールや欠陥が多数存在する。そのため、その付近の電荷は移動してITOに到達することができるが、そこから離れた部分にある電荷は、電位が低くなると横方向に電荷が移動できなくなるために、部分的に電荷が残ってしまうと考えられる。
図5は、実施例10によるOLPFに対し、帯電防止膜40を塗布する前後(図中、処理前、処理後で表す)で、分光特性を評価した結果を示す。帯電防止膜40の塗布による透過率への影響はほとんどない。これは帯電防止膜40の膜厚が約20nmと非常に薄く、屈折率も低い(屈折率nが1.2〜1.4)ためほとんど影響しなかったと考えられる。
なお、表1では、透過率と対応する関係にある曇り度合い(ヘイズ:HAZE)を表しており、比較例2以外は実使用上において問題がない値を示している。
従って、前述した実施例1〜実施例10による帯電防止膜40の構成、製造方法及び評価結果から、本発明による帯電防止性光学素子は、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物による帯電防止膜40を有している。従って、基材の最表面に親水成分を固定化するための部位及び膜内で架橋する部位が存在し、親水成分に吸着した水分による導電性の発現により、充分な帯電防止性能と、帯電防止膜自体の耐久性をもつ膜を有する帯電防止性光学素子を実現できる。
また、帯電防止膜40が界面活性剤を含むことから、帯電防止性能(導電性能)を阻害することなく、外観が良好である均一な膜が作成できる。
また、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランの2量体以上の縮合物が、オルガノシラン総量の1wt%以上70wt%未満としており、それ以外の非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランの単体を存在させている。従って、光学素子表面に親水成分を固定化するための部位及び膜内で架橋する部位がバランスよく存在し、充分な帯電防止性能及び帯電防止膜自体の耐久性を備える。
また、前述した非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物が、スルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホン酸基から選ばれる1種以上の官能基を含有しており、これらは良好な親水性を示す。従って、非カップリング部位にこれらの少なくとも1種以上を含有した帯電防止膜40を形成することで、良好な帯電防止性能が得られる。
さらに、基材が水晶複屈折板51,52で構成され、UVIRカットフィルタ及びIRカットフィルタ機能を含む光学ローパスフィルタを実現できる。そして、形成された帯電防止膜40は非常に薄く、屈折率が低いので分光特性(透過率)にほとんど影響を与えない。そのため複数の水晶複屈折板51,52やIRカットガラス60、位相差フィルム70等の部品を接着(または粘着剤)で固定した後に、全表面に帯電防止膜40を形成することができる。
(電子機器装置)
続いて、前述した本発明の帯電防止性光学素子を搭載した電子機器装置について図面を参照して説明する。ここでは、帯電防止性光学素子としてOLPF110を電子機器装置として静止画の撮影を行うデジタルスチルカメラの撮像装置に適用した一実施例を例示して説明する。
図6は、本発明のデジタルスチルカメラの撮像装置の一構成例を示す説明図である。図2も参照する。図6において、デジタルスチルカメラ400は、入射光を入射するレンズ200と、撮像モジュール100と、撮像モジュール100から出力される撮像信号の記録・再生等を行う本体部300と、から構成されている。
撮像モジュール100は、OLPF110と、光学像を電気的に変換する撮像素子のCCD(電荷結合素子)120と、この撮像素子120を駆動する駆動部130を含んで構成されている。OLPF110は、前述したように(図2(a)、参照)、全周面に帯電防止膜40が形成されている。
このOLPF110は、CCD120の前面に、固定治具140によってCCD120と一体的に構成され、CCD120の防塵ガラス機能を併せて有している。この固定治具140を金属等によって構成することによってOLPF110の表面と電気的な接続を行うことができる。さらにこの固定治具140は金属製のケーブル150によってデジタルスチルカメラ400の外側(例えば筐体:図示せず)と電気的な接続を得られる構造にすることによって人体等を介してアース(GND接地)することができる。
なお、図示しないが、本体部300は、撮像信号の補正等を行う信号処理部と、撮像信号を磁気テープ等の記録媒体に記録する記録部と、この撮像信号を再生する再生部と、再生された映像を表示する表示部などの構成要素が含まれる。
従って、上述したように構成されたデジタルスチルカメラ400は、CCD120と、防塵ガラス機能、UVIRカットフィルタ機能を一体的に備えたOLPF110の搭載により、貼り合わせ精度のよい、良好な光学特性のデジタルスチルカメラ400を提供することができる。また、OLPF110がアースされているために、ユーザーがデジタルスチルカメラ400に触れるだけでOLPF110に発生する静電気等による電荷を取り除くことができ、この電荷によるデジタルスチルカメラ400へのごみ付着等の影響を抑制することができる。
なお、上述した実施例の撮像モジュール100は、レンズ200を分離して配置した構造で説明したが、レンズ200も含めて撮像モジュールが構成されていてもよい。
続いて、本発明の電子機器装置の他の実施例について図面を参照して説明する。
図7は、帯電防止膜をスピンコート法で形成したOLPFを撮像モジュールに搭載した例を示す部分説明図である。図7において、OLPF110は、帯電防止膜40をスピンコート法にて形成(図2(b)、参照)しているため、側面部には帯電防止膜40が形成されない。このため、固定治具140に撮像素子120とOLPF110とを固定する場合、基板上面の帯電防止膜40と固定治具140とが直に接して電気的接続をおこなってもよい。
また、図2(b)に示すようにOLPF110の帯電防止膜40の表面の一部(外周縁部)に導電性を有する保持部材95を配設してもよい。なお、保持部材95は帯電防止膜40に導電性接着剤にて貼着しても、固定治具140に組み込む際に固定治具140と帯電防止膜40との間に挿着してもよい。保持部材95に弾性を有する材料を用いればなおよい。
このようにすることで、帯電防止膜40をスピンコート法により形成したOLPF110においても、保持部材95を介して確実にアース(GND接地)することができる。
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述した実施例では、帯電性防止性光学素子として光学多層膜フィルタ及び光学ローパス−フィルタを例示して説明したが、他の光学素子にも適合させることができる。
本発明の光学多層膜フィルタを示す断面図であり、(a)は、帯電防止膜をディッピング法で形成した形態、(b)はスピンコート法で形成した形態を示す断面図。 本発明のOLPFを示す断面図であり、(a)は、帯電防止膜をディッピング法で形成した形態、(b)はスピンコート法で形成した形態を示す断面図。 本発明の実施例1〜実施例10における測定結果を示すグラフ。 比較例1〜比較例7の測定結果を示すグラフ。 本発明の実施例10によるOLPFに対し、帯電防止膜を塗布する前後における分光特性を示すグラフ。 本発明のデジタルスチルカメラの撮像装置の一構成例を示す説明図。 本発明のデジタルスチルカメラの他の実施例を示す部分説明図。
符号の説明
10…光学多層膜フィルタ、20…ガラス基板、40…帯電防止膜。

Claims (14)

  1. 基材と、該基材表面に形成された帯電防止膜が具備された帯電防止性光学素子であって、
    前記帯電防止膜の非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物が具備されていることを特徴とする帯電防止性光学素子。
  2. 請求項1に記載の帯電防止性光学素子において、
    前記帯電防止膜が、界面活性剤を含むことを特徴とする帯電防止性光学素子。
  3. 請求項1または請求項2に記載の帯電防止性光学素子において、
    前記非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランの2量体以上の縮合物が、オルガノシラン総量の1wt%以上70wt%未満であることを特徴とする帯電防止性光学素子。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の帯電防止性光学素子において、
    前記非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物が、スルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホン酸基から選ばれる1種以上の官能基を含有することを特徴とする帯電防止性光学素子。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の帯電防止性光学素子において、
    前記基材が、UVIRカット膜またはIRカット膜が形成されたガラスまたは水晶であることを特徴とする帯電防止性光学素子。
  6. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の帯電防止性光学素子において、
    前記基材が積層構造であり、前記積層構造の最上段と最下段が水晶基板であることを特徴とする帯電防止性光学素子。
  7. 前記非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物を親水性有機溶剤に希釈した処理液を基材表面に塗布する工程と、
    前記処理液が塗布された基材を加熱処理して乾燥硬化する工程と、
    を含むことを特徴とする帯電防止性光学素子の製造方法。
  8. 非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物を親水性有機溶剤に希釈した処理液に含有されるスルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基から選ばれる1種以上の官能基をスルホン酸基に転化する工程と、
    前記官能基をスルホン酸基に転化された前記処理液を基材表面に塗布する工程と、
    前記処理液を塗布した基材を加熱処理して乾燥硬化する工程と、
    を含むことを特徴とする帯電防止性光学素子の製造方法。
  9. 非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物を親水性有機溶剤に希釈した処理液を基材表面に塗布する工程と、
    前記処理液を塗布した基材を加熱処理して乾燥硬化する工程と、
    前記基材を加熱処理して乾燥硬化する工程の後に非カップリング部位に含有されるスルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基から選ばれる1種以上の官能基をスルホン酸基に転化する工程と、
    を含むことを特徴とする帯電防止性光学素子の製造方法。
  10. 請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の帯電防止性光学素子の製造方法において、
    前記加熱処理して乾燥硬化する工程が、50℃以上300℃以下の温度範囲で、1分以上24時間以下であることを特徴とする帯電防止性光学素子の製造方法。
  11. 請求項7ないし請求項10のいずれか一項に記載の帯電防止性光学素子の製造方法において、
    前記処理液を基材表面に塗布する方法がディップコーティング法であることを特徴とする帯電防止性光学素子の製造方法。
  12. 請求項7ないし請求項10のいずれか一項に記載の帯電防止性光学素子の製造方法において、
    前記処理液を基材表面に塗布する方法がスピンコーティング法であることを特徴とする帯電防止性光学素子の製造方法。
  13. 基材と、該基材表面に形成された帯電防止膜とが具備された帯電防止性光学素子を用いた電子機器であって、
    前記帯電防止膜の非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランまたは/及びその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物が具備された帯電防止性光学素子が組み込まれていることを特徴とする電子機器装置。
  14. 請求項13に記載の電子機器装置において、
    前記帯電防止性光学素子に形成される前記帯電防止膜の少なくとも一部がアースされていることを特徴とする電子機器装置。
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