JP4823569B2 - 光学ガラス部品及びその製造方法 - Google Patents

光学ガラス部品及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4823569B2
JP4823569B2 JP2005149635A JP2005149635A JP4823569B2 JP 4823569 B2 JP4823569 B2 JP 4823569B2 JP 2005149635 A JP2005149635 A JP 2005149635A JP 2005149635 A JP2005149635 A JP 2005149635A JP 4823569 B2 JP4823569 B2 JP 4823569B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
glass substrate
optical
glass
antireflection film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2005149635A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006330076A (ja
Inventor
昭憲 松井
敦 清水
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Wiring Systems Ltd
AutoNetworks Technologies Ltd
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Wiring Systems Ltd
AutoNetworks Technologies Ltd
Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Wiring Systems Ltd, AutoNetworks Technologies Ltd, Sumitomo Electric Industries Ltd filed Critical Sumitomo Wiring Systems Ltd
Priority to JP2005149635A priority Critical patent/JP4823569B2/ja
Publication of JP2006330076A publication Critical patent/JP2006330076A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4823569B2 publication Critical patent/JP4823569B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、光学ガラス部品及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、光学機器のガラス窓、光学フィルタ、あるいはカメラレンズといった、外界に対して露出する面と露出しない面とを有する光学材料に好適に用いられる撥水性を有する光学ガラス部品及びその製造方法に関するものである。
従来、例えば、光学機器のガラス窓、光学フィルタ、カメラレンズといった光学機器に用いられる光学ガラス部品は、その一方の面が外界に露出しているため、雨や湿気、皮脂や汗、汚れに対する撥水性が求められており、レンズ等の表面に撥水性を持たせる試みがなされている。
例えば特許文献1には、ガラス基材の表面に撥水性を持たせるため、フッ化炭素基を含む単分子膜がシロキサン結合を介してそのガラス表面に形成されたものが示されている。
また、特許文献2には、ガラス基材の表面に撥水性を持たせる場合において、ガラス中に含まれるアルカリ金属成分によってフルオロカーボン系の単分子膜が劣化することを防ぐため、ガラス基材表面にシリカを含む膜からなるアルカリバリア層を設け、その上にフルオロカーボン系の単分子膜をシロキサン結合を介して形成させたものについて示されている。
そして、特許文献1や2に示される撥水性を有する膜は、フッ化炭素基を有するクロロシラン系界面活性剤等を含む溶液中にガラス基材を浸漬したり(ディップコーティング法)、スピンコーティング法によってガラス基材上に成膜した上、ガラス基材又はシリカ中のシラノール基と界面活性剤中のシリル基とをシロキサン結合させて、ガラス基材上に形成している。
特許第2500152号 特開平08−325037号公報
しかしながら、特許文献1や2に示されるものは、上記ディップコーティング法によって、ガラス基材表面又はシリカ膜表面にシロキサン結合を介してフルオロカーボン系の単分子膜を形成させる時に、レンズ両面に撥水性を有する膜が形成される。例えば、これにより製造した光学ガラス部品をカメラレンズに用いる場合、外界に露出している面についてはその撥水機能を発揮することができるが、カメラ内部に入る非露出面については、カメラ本体が防水構造を有しているため、撥水性は必要ないばかりか、逆にカメラ内部でその撥水性によって結露を招くことになるという問題があった。一方、スピンコーティング法により成膜する場合には、ガラス基材の一方面のみに上記単分子膜を形成することができるものの、ディップコーティング法のような多数枚同時処理は難しいため、生産性が低いという問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、光学機器のガラス窓、光学フィルタ、カメラレンズなどの露出面と非露出面とを有する光学材料において、その露出面のみ撥水性を有するものとした、従来より簡便で量産性に優れた光学ガラス部品及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る光学ガラス部品は、請求項1に記載のように、ガラス基材の表裏面に無機ハロゲン化物からなる反射防止膜が形成されると共に、該ガラス基材の表面側の反射防止膜の上のみにシリカ膜が形成され、さらに該シリカ膜の表面にシロキサン結合を介してパーフルオロアルキル基又はポリシロキサン含有化合物からなる撥水性を有する単分子膜が形成されていることを要旨とする。
この場合、上記反射防止膜は、請求項2に記載のように、MgF、CaF、BaF、LiFから選択される1種又は2種以上の無機フッ化物により形成されていることが望ましい。
そして、請求項1又は2に記載の光学ガラス部品は、請求項3に記載のように、光学機器のガラス窓、光学フィルタ、あるいはカメラレンズに好適に用いることができる。
一方、本発明に係る光学ガラス部品の製造方法は、請求項4に記載のように、ガラス基材の表裏面に無機ハロゲン化物からなる反射防止膜を形成する工程と、該ガラス基材の表面側の反射防止膜の上のみにシリカ膜を形成する工程と、該ガラス基材に前記反射防止膜及び前記シリカ膜が形成されたものを、パーフルオロアルキル基又はポリシロキサン含有化合物からなる撥水剤を含む溶液中に浸漬して前記シリカ膜の表面にのみ前記撥水剤からなる単分子膜を形成する工程とからなることを要旨とする。
この場合、前記無機ハロゲン化物には、請求項5に記載のように、MgF、CaF、BaF、LiFから選択される1種又は2種以上の無機フッ化物を用いることが望ましい。
請求項1に記載の光学ガラス部品によれば、パーフルオロアルキル基又はポリシロキサン含有化合物からなる単分子膜がガラスの一方面のみに形成されていることから、その一方面のみ撥水機能を有するものとすることができる。
また、ガラスの両面に反射防止膜が形成されていることから、両表面での反射を軽減することができるため、入射光量を増やす一方で不要なガラスの裏面反射を低減することができる。
さらに、この反射防止膜は、ガラス基材とシリカ膜との間に形成されていることから、ガラス基材中に含まれるアルカリ金属等がシリカ膜と撥水膜との界面に侵入するのを防ぐため、その界面におけるパーフルオロアルキル基又はポリシロキサン含有化合物とシリカのシラノール基でのシロキサン結合は分解されず、その撥水膜が劣化して白濁することによる光学機能の低下も起こらない。
この場合、上記反射防止膜には、請求項2に記載の材料を用いることにより、表面反射が充分に軽減される。
そして、請求項3に記載のように、上記光学ガラス部品を、光学機器のガラス窓、光学フィルタあるいはカメラレンズに用いた場合、光学ガラス部品の露出面のみ撥水性を有するため、露出面は雨や湿気によっても視界が悪くならず、いわゆる「ヤケ」なども起きない。また、皮脂や汗、汚れが付きにくく取れやすくなる。さらに、光学機器内部におけるレンズの非露出面の結露を招くこともない。
一方、請求項4に記載の製造方法によれば、ガラス基材の両面に無機ハロゲン化物からなる反射防止膜を形成し、さらにその一方の面のみにシリカ膜を形成することから、その後ガラス基材に撥水膜を形成する場合に、このガラス基材を撥水剤が溶解している溶液中に浸漬する方法によって、最表面にシリカ膜が形成された一方面のみ撥水膜が形成され、他方の、最表面に反射防止膜が形成されている面には撥水膜が形成されないようにすることができる。
このようなディップコーティング法(浸漬法)は、溶液に漬けてガラス基材に膜をコーティングするような簡便な方法であるとともに、一度に多数枚のガラス基材を溶液に漬けることができることから、ガラス基材への成膜処理速度の向上につながるため、スピンコーティング法等と比べ、量産性の高い方法となる。
この場合、上記反射防止膜には、請求項5に記載の材料を用いることにより、表面反射が充分に軽減された光学ガラス部品の製造方法とすることができる。
次に本発明の実施形態について、図1〜3を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る光学ガラス部品10は、図1に示すように、ガラス基材12の上面と下面に無機ハロゲン化物からなる反射防止膜14がそれぞれ形成され、ガラス基材12の上面に形成された反射防止膜14の上にのみ(一方面のみ)シリカ膜16が形成されている。そして、そのシリカ膜16の上にパーフルオロアルキル基含有化合物からなる撥水膜18が形成されている。
ガラス基材12は、例えば、硼珪酸光学ガラスで、BK7やB270などが例示できる。これらガラス表面にはシラノール基を含んでいるため、後述の撥水剤とシロキサン結合を形成する。よって、このガラス基材12を直接撥水剤を含む溶液に浸漬すると、その両表面にシロキサン結合を介して撥水膜が形成される。
そのため、このガラス基材12に直接上記撥水剤を付けたものを光学機器のガラス窓、光学フィルタあるいはカメラレンズといった外界に対して露出する面と露出しない面(非露出面)とを有する光学部品に用いると、その光学機器内部で結露することがあるため、良くない。
反射防止膜14は、無機ハロゲン化物からなるものであり、例えば、LiF、NaF、MgF、CaF、BaF、SrF、LaF、NaAlF、NaAl14などの無機フッ化物などが例示できる。特に好ましくは、MgF、CaF、BaF、LiFである。これらの化合物はその屈折率がガラス基材と比べて比較的低く、その差が大きいものであるため、単層コートとしたときでもガラス表面での反射を抑える効果が高いものだからである。
このような分子内に酸素原子を含まない無機ハロゲン化合物は、その表面にヒドロキシル基を有していないので、シラノール基又はクロロシリル基を含有しパーフルオロアルキル基などの疎水性を有する後述の撥水剤とはシロキサン結合を形成しないため、このような反射防止膜が形成された面の表面は撥水処理されない。
この反射防止膜14を単層で形成する場合は、膜厚を、入射する光の波長(光学レンズであれば可視光線域の中央波長である550nmで、MgFの屈折率1.38であるから約400nmとなる)の1/4とし、膜の屈折率がガラスの屈折率と空気の屈折率の相乗平均であれば、膜表面からの反射光と膜−ガラス基材界面からの反射光が互いに相殺し、最も反射を抑えることができる。
この反射防止膜14は単層でも多層でも良い。その成膜方法は、被膜原料が無機ハロゲン化物であるため、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、エレクトロンビーム法などの各種物理的方法(PVD法)などが好適であり、屈折率、光学的膜厚、膜構成等の制御の容易さ等を考慮して適宜定めるものである。このような物理蒸着させるための成膜温度は、用いるガラス基材の耐熱温度よりも低いことが必要であり、例えば、ガラス基材としてBK7を用いる場合には、300℃前後であることが好ましい。
シリカ膜16の成膜方法としては、例えば、熱分解蒸着法、スパッタリング法などの各種PVD法や、プラズマCVD法などの各種公知のCVD法やゾル−ゲル法などが適用できる。
このシリカ膜は、反射防止膜14の反射防止特性を損なわないように、光学的に影響がない程度に均一な厚みのものが良い。具体的には、光学的膜厚は10〜100nm程度であることが好ましい。この膜厚が10nm未満だと、被膜形成が難しく、100nmより大きいものは、反射防止膜14の反射防止特性が損なわれるからである。
撥水膜18の原料となるパーフルオロアルキル基含有化合物は、下記式(化1)で表される化合物が示される。
(化1)
SiR3−n
(式中Rはフルオロアルキル基を、Rはアルキル基を、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基、イソシアネート基などの加水分解性を有する有機基を表す。n=0〜2の整数を示す。)
上記化合物のR基は、その炭素数が1から20程度のものが好ましい。そして、この撥水膜18は、シリカ膜上に並んだ状態で配列するため、これらを規則正しく配列させるためには、R基が分岐鎖を有するものより直鎖のものの方が好ましい。このような化合物としては、例えば、CF(CFCHCHSi(OCH,CF(CFCHCHSi(OC,CF(CFCHCHSiCl等が例示できる。
上記化合物のうち、CF(CFCHCHSiClのようなクロロシラン系化合物の場合には、非水系の溶媒に溶解させたものとして用いることができ、CF(CFCHCHSi(OCH,CF(CFCHCHSi(OCのようなアルコキシシラン系化合物の場合には、非水系溶媒でも良いし、アルコール類のような含水系の溶媒でも用いることができる。
なお、アルコキシシラン系化合物の場合には、成膜時において、シリカ膜のシラノール基とシロキサン結合形成させるためには、Si−OCH基やSi−OC基などの反応性を上げる目的で加水分解させてSi−OH基にすることが必要である。そのため、溶液中に触媒として有機酸等を添加して脱アルコールさせる必要がある。
非水系の溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、n−ヘキサデカン等の炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロトリフルオロエタン等のクロロアルカン類などが例示できる。また、含水系の溶媒としては、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類が例示できる。これらは、単独で用いても良いし、組み合わせても良い。溶媒を用いずに撥水剤のみ用いることもできる。上記パーフルオロアルキル基含有化合物の溶解度や溶液の粘度、加水分解速度等によって溶媒組成や量を適宜定めることができる。また、これら溶媒は、周囲温度で空気中、単に乾燥させることにより蒸発するものが好ましい。
なお、これらパーフルオロアルキル基含有化合物には、各種の架橋剤等を添加することも可能である。また、パーフルオロアルキル基含有化合物の主鎖または分岐鎖にエチレン基等の二重結合や三重結合を導入したものに、電子線等を照射して架橋させることも可能である。このような処理により、形成された単分子膜の硬度をさらに向上することができる。
上記(化1)において、R基は、含フッ素系化合物だけでなく、有機ポリシロキサン系の重合物(シリコーン)であっても良い。この有機ポリシロキサン系の重合物(シリコーン)としては、例えば、末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサンなどのポリアルキル、ポリアルケニル、ポリアリールシロキサン化合物などが例示できる。好ましくは、ポリジメチルシロキサンである。これら有機ポリシロキサン系の重合物(シリコーン)は、シロキサン結合を介してシリカ膜の上に成膜したときの静止接触角を大きくし、高い撥水性を有するものだからである。
このような撥水膜18は、ガラス基材に汗や油等の汚れが侵入するのを抑制するバリア層としての機能を有するとともに、汚れの付着を防止する機能を有する。この機能は、単に汚れが付着しないだけでなく、付着しても簡単にふき取れることも意味する。
次に、本実施形態に係る光学ガラスの製造方法の一例について図2を参照して説明する。本製造方法は、工程(1)〜(3)からなる。
工程(1)は、ガラス基材12の一方及び他方の表面に無機ハロゲン化物からなる反射防止膜14をスパッタリング法によって被膜形成する工程である。
ガラス基材をきれいに洗浄した後、スパッタリング装置内に載置させ、MgFターゲットを用いて反射防止膜14をガラス基材12表面に蒸着させる。この場合、このMgF膜をガラス基材12の両面に形成させることから、一方の面に被膜形成させた後、もう一方の面に被膜形成するために、ガラス基材12を反転させ、その裏面にもMgF膜を蒸着させる。
工程(2)は、工程(1)で形成したガラス基材12表面の反射防止膜14の一方の表面にのみシリカ膜16を形成する工程である。
工程上の効率の面から、反射防止膜14の形成に用いる装置と同一の装置を用いて被膜形成させることが好ましいため、シリカ膜16の形成は同じ装置内で連続的に行う。よって、ターゲットをSiOに変えた後、被膜形成を片面のみ行う。
工程(3)は、工程(2)の後、パーフルオロアルキル基含有化合物からなる撥水剤を含む溶液中にガラス基材を浸漬してシリカ膜16の表面にのみ撥水剤からなる単分子膜18を形成する工程である。
この工程(3)における化学吸着の反応機構は、図3(a)〜(c)に示して説明する。パーフルオロアルキル基含有化合物としてCF(CFCHCHSi(OCHを用いた場合である。
図1(a)のように、CF(CFCHCHSi(OCHのSi−OCH結合が、空気中の水分等によって加水分解され、その全部又は一部がSi−OHとなる(図中には全部加水分解されたものとして示している)。
その後、図1(b)のように、加水分解により生成したCF(CFCHCHSi(OH)の中のSi−OH結合とガラス基材12中のシラノール基との間で脱水縮合反応が起き、CF(CFCHCHSi(OH)基がガラス基板上に化学吸着される。
さらにこの化学吸着されたCF(CFCHCHSi(OH)基のSi−OH基が分子間で脱水縮合し、図1(c)に示すような単分子膜からなる撥水膜18が形成される。
このように、撥水膜18は、シリカ膜16と化学結合によって分子が並んだ状態(配向状態)で形成される。このような化学反応に基づくものであるため、極めて薄いナノオーダーの膜厚を有する単分子膜とすることができる。これによって、光学部材であるガラス基材12や反射防止膜14本来の光透過性などの光学特性を損なうことがないものとなる。
工程(3)を実施する前の状態は、ガラス基材の一方面の最表面にはシラノール基を有するシリカ膜が形成され、他方の面の最表面にはシラノール基を持たないMgFなどの無機ハロゲン化物からなる反射防止膜が形成されているため、工程(3)では、シリカ膜が形成された方の面にのみシロキサン結合を介してパーフルオロアルキル基含有化合物からなる撥水膜を形成させることができる。これによって、一方の面のみ撥水性を有するものとし、他方の面がカメラ等の基材内部に入っている時にも、結露等を起こさないものとすることができる。
そしてこのように製造された光学ガラス部品10は、一方面のみ撥水性を有するものであるため、光学機器の透明なガラス窓、光学フィルタ、カメラレンズ等で外部に露出される表面と、機器内部で覆われる裏面とを有する部品に好適に用いることができる。また、ガラス両面に反射防止膜が形成されていることから、表裏面での反射を抑えた光透過性の高い光学ガラス部品となる。さらに、この反射防止膜はガラス基材中に含まれるアルカリ金属等がシリカ膜と撥水膜との界面に侵入するのを防ぐバリア層となるため、その界面におけるパーフルオロアルキル基含有化合物とシリカのシラノール基でのシロキサン結合は分解されず、よって、その撥水膜が劣化して白濁することによる光学機能の低下も起こらない。なお、この光学ガラス部品10は、全光線透過率が95%以上であることが好ましい。また、表面反射率が3%以下であることが好ましい。
次に、実施例について説明する。
(実施例1)
エドモンド・オプティクス・ジャパン社製のガラス基材(BK7)を、スパッタリング室内に載置し、スパッタリング法によりガラス基材の両面にMgF膜(膜厚100nm)を形成し、その後、ターゲットをSiOに変え、成膜されたMgF膜上の片面のみにシリカ膜(SiO膜)を成膜(膜厚60nm)した。次に、この成膜されたガラス基材を、CF(CFCHCHSiCl(撥水剤)のn−ヘキサデカン希釈液(溶液濃度3×10−3mol/L)中に室温で1時間浸漬した。その後、アセトンと2−プロパノールで良く洗浄して、未反応の撥水剤を除去した。除去後、空気中にさらして空気中の水分により撥水剤が加水分解され、乾燥させることにより、被膜形成された光学ガラスを得た。
(比較例1)
実施例1と同じガラス基材に、MgF及びSiO膜を成膜せずに、実施例1と同じ撥水剤の溶解液中に浸漬し、同様の処理を行い、ガラス基材の表裏面に撥水膜を形成させた。
(比較例2)
実施例1と同じガラス基材に、実施例1と同様の方法でSiO膜(60nm)のみを片面に形成させ、その後、実施例1と同じ撥水剤の溶解液をスピンコーティング法を用い、SiO膜が形成された面のみに撥水膜を形成させた。
(撥水性評価)
一般的な測定方法により静止接触角を測定した。
(長期膜安定性評価)
各種成膜したガラス基材を85℃、85%RHで1000時間放置し、ガラス基材表面の濁りについて目視で評価した。
実施例1の層構成は、上から撥水膜/SiO膜/MgF膜/ガラス基材/MgF膜となっている。一方、比較例1の層構成は、上から撥水膜/ガラス基材/撥水膜であり、比較例2の層構成は、上から撥水膜/SiO膜/ガラス基材である。
表1に、実施例1及び比較例1並びに2で得られた被膜ガラスの全光線透過率、表面撥水性、長期膜安定性及び被膜ガラス製造工程の作業性について示す。
実施例1のものは、全光線透過率が98%と良好であった。このガラス基材(BK7)自体の光反射率は5%であったが、その両面にMgF膜を形成させたことによりその反射率を2%まで低下させることができた。また、撥水膜を塗布した面について求めた水に対する静止接触角は115°であり、撥水性は良好であり、片面のみ撥水性を有するものである。そして、高温高湿試験によって、この成膜したガラス基材上の膜は白濁しなかった。これは、MgF膜及びSiO膜がバリア層となってガラス基材中のアルカリ金属類がSiO膜と撥水膜の界面に侵入するのを防いでいるため、撥水膜が劣化しなかったものと考える。
一方、比較例1のものは、反射防止膜が形成されていないため、全光線透過率が91%であり不充分であった。また、水に対する静止接触角はその両面とも115°であり、良好であった。これにより、その一方の面がカメラ等の機器内部に入る場合、結露を起こすおそれがある。そして、高温高湿試験を行ったところ、白く濁ってしまった。これは、ガラス基材と撥水膜との間にバリア層となる膜が形成されていないため、膜が経時的に劣化したものと考える。
また、比較例2のものは、MgF膜が形成されておらず、反射防止膜としてSiO膜が形成されているのみであるため、全光線透過率は93%であり、不充分であった。撥水性は実施例1と同様、片面撥水性が良好であった(静止接触角115°)。そして、高温高湿試験を行ったところ、実施例1と同様、撥水膜が白く濁ることはなかった。
なお、実施例1と比べて比較例2のものは、光透過率がやや劣るという違いがあるが、さらに、その製造方法において作業効率性に大きな差があり、実施例1のものはディップコーティング法を用いているため、一度に大量のガラス基材上に撥水膜を形成させることが可能であるが、比較例2のものは、スピンコーティング法を用いており、その塗布方法の都合上、一枚一枚行わなければならないため、実施例1と比較して生産効率が非常に悪いものである。
Figure 0004823569
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、上記実施例において、反射防止膜やシリカ膜は、スパッタリング法による成膜のみ示しているが、他の成膜方法で行ったものであっても良いことは勿論である。
本発明に係る撥水性を有する光学ガラスは、カメラレンズなどの光学部品として使用することができる。
本発明に係る撥水性を有する光学ガラスの層構成を示す図である。 本発明に係る撥水性を有する光学ガラスの製造工程を示す図である。 撥水剤がガラス基材表面に化学吸着する反応を示す図である。
符号の説明
10 光学ガラス部品
12 ガラス基材
14 反射防止膜(MgF膜)
16 シリカ膜(SiO膜)
18 撥水膜

Claims (5)

  1. ガラス基材の表裏面に無機ハロゲン化物からなる反射防止膜が形成されると共に、該ガラス基材の表面側の反射防止膜の上のみにシリカ膜が形成され、さらに該シリカ膜の表面にシロキサン結合を介してパーフルオロアルキル基又はポリシロキサン含有化合物からなる撥水性を有する単分子膜が形成されていることを特徴とする光学ガラス部品。
  2. 前記反射防止膜は、MgF、CaF、BaF、LiFから選択される1種又は2種以上の無機フッ化物により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス部品。
  3. 前記光学ガラス部品は、光学機器のガラス窓、光学フィルタ、あるいはカメラレンズであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学ガラス部品。
  4. ガラス基材の表裏面に無機ハロゲン化物からなる反射防止膜を形成する工程と、
    該ガラス基材の表面側の反射防止膜の上のみにシリカ膜を形成する工程と、
    該ガラス基材に前記反射防止膜及び前記シリカ膜が形成されたものを、パーフルオロアルキル基又はポリシロキサン含有化合物からなる撥水剤を含む溶液中に浸漬して前記シリカ膜の表面にのみ前記撥水剤からなる単分子膜を形成する工程と、
    からなることを特徴とする光学ガラス部品の製造方法。
  5. 前記無機ハロゲン化物には、MgF、CaF、BaF、LiFから選択される1種又は2種以上の無機フッ化物を用いることを特徴とする請求項4に記載の光学ガラス部品の製造方法。
JP2005149635A 2005-05-23 2005-05-23 光学ガラス部品及びその製造方法 Expired - Fee Related JP4823569B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005149635A JP4823569B2 (ja) 2005-05-23 2005-05-23 光学ガラス部品及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005149635A JP4823569B2 (ja) 2005-05-23 2005-05-23 光学ガラス部品及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006330076A JP2006330076A (ja) 2006-12-07
JP4823569B2 true JP4823569B2 (ja) 2011-11-24

Family

ID=37551859

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005149635A Expired - Fee Related JP4823569B2 (ja) 2005-05-23 2005-05-23 光学ガラス部品及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4823569B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5765052B2 (ja) * 2011-05-13 2015-08-19 旭硝子株式会社 光学部品、光学装置
EA034006B1 (ru) * 2015-10-29 2019-12-18 Общество С Ограниченной Ответственностью "Изовак Технологии" Комбинированное оптическое покрытие и способ его изготовления (варианты)

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04285035A (ja) * 1991-03-14 1992-10-09 Tokai Rika Co Ltd ガラス用撥水膜
JP3986621B2 (ja) * 1997-05-30 2007-10-03 住友化学株式会社 シートの防汚処理システム
JP4412450B2 (ja) * 2001-10-05 2010-02-10 信越化学工業株式会社 反射防止フィルター
JP4224330B2 (ja) * 2003-03-26 2009-02-12 大日本印刷株式会社 バリアフィルム

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006330076A (ja) 2006-12-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0166363B1 (en) Low reflectance transparent material having antisoiling properties
AU2002313976B2 (en) Hybrid film, antireflection film comprising it, optical product, and method for restoring the defogging property of hybrid film
JP4267813B2 (ja) 反射防止面用防汚コーティング層および調製方法
CN111163936B (zh) 防水防油构件和防水防油构件的制造方法
US6395331B1 (en) Transparent substrate bearing an anti-stain, hydrophobic coating, and process for making it
KR102569079B1 (ko) 반사방지 부재 및 그 제조 방법
CN101639663A (zh) 透光性部件、钟表及透光性部件的制造方法
JP5043851B2 (ja) 蒸着材料、それを用いた光学部材及び眼鏡用プラスチックレンズの製造方法並びに眼鏡用プラスチックレンズ
JP2005301208A (ja) 防汚性光学物品の製造方法
TW201543068A (zh) 光學元件
JPH0853650A (ja) 非湿潤性コーティング用組成物
JP2009175500A (ja) 光学部材の製造方法
US20210332248A1 (en) Water-repellent, oil-repellent member and method for manufacturing water-repellent, oil-repellent member
JP2006201558A (ja) 撥液層を有する物品又は透明部品、撥液層を有する光学レンズ及びその製造方法、並びにこの光学レンズを用いた投射型画像表示装置
JP4823569B2 (ja) 光学ガラス部品及びその製造方法
JP3649585B2 (ja) 撥水性被膜形成用溶液
JPH1026703A (ja) 撥水処理されたレンズ
AU737281B2 (en) Transparent substrate bearing an anti-stain, hydrophobic coating, and process for making it
CN1095187C (zh) 用于显示器上的防反射过滤器
JPH1192177A (ja) 撥水処理ガラス及びその製造方法
KR100689110B1 (ko) 저 표면에너지를 갖는 렌즈 코팅용 조성물 및 이를 이용한렌즈 코팅 방법 및 렌즈 옥형 가공 방법
JP4396232B2 (ja) 防汚性光学物品の製造方法
JP7255692B2 (ja) 撥水撥油部材及び撥水撥油部材の製造方法
JP2812121B2 (ja) 光学物品の製造方法
JPH10292151A (ja) 撥水処理光学要素

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080325

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20101105

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20101109

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101221

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110906

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110907

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4823569

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140916

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees