JP2008103145A - 電池材料の製造方法及び全固体電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リチウムイオン伝導性固体電解質を、不活性ガス雰囲気中、80〜400℃の温度範囲で加熱乾燥することを含む電池材料の製造方法;及び
リチウムイオン伝導性固体電解質層の揮発分含量が、該固体電解質1kg当たり50g以下である全固体電池。
【選択図】図1
Description
使用される用途が広がるのに伴い、二次電池のさらなる安全性の向上及び高性能化が要求されている。
リチウム電池の安全性を確保する方法としては、有機溶媒電解質に代えて無機固体電解質を用いることが有効である。
1.リチウムイオン伝導性固体電解質層の揮発分含量が、該固体電解質1kg当たり50g以下である全固体電池。
2.リチウムイオン伝導性固体電解質を、不活性ガス雰囲気中、80〜400℃の温度範囲で加熱乾燥することを含む電池材料の製造方法。
3.前記リチウムイオン伝導性固体電解質が、硫化リチウムと五硫化二リンを原料とするものである上記2に記載の電池材料の製造方法。
4.前記リチウムイオン伝導性固体電解質が、粉体状である上記2又は3に記載の電池材料の製造方法。
5.電池材料が個体電解質層形成用材料又は電極材である上記2〜4のいずれかに記載の電池材料の製造方法。
本発明によれば、イオン伝導度の高い電池材料が得られる。
本発明は、リチウムイオン伝導性固体電解質を、不活性ガス雰囲気中、80〜400℃の温度範囲で加熱乾燥し、リチウムイオン伝導性固体電解質の揮発分含量を低減することを特徴としている。
リチウムイオン伝導性固体電解質を構成する物質は、特に限定されず、有機化合物、無機化合物、あるいは有機・無機両化合物からなる材料を用いることができ、リチウムイオン電池分野で公知のものが使用できる。
特に、硫化物系の無機固体電解質は、イオン伝導度が他の無機化合物より高いことが知られており、特開平4−202024等に記載の無機固体電解質を使用できる。具体的には、Li2SとSiS2、GeS2、P2S5、B2S3の組合せから成る無機固体電解質に、適宜、Li3PO4やハロゲン、ハロゲン化合物を添加した無機固体電解質を用いることができる。
リチウムイオン伝導性無機固体電解質は、硫化リチウムと、五硫化二燐及び/又は単体燐及び単体硫黄から製造することができる。具体的には、これらの原料を溶融反応させた後、急冷することにより製造できる。また、これらの原料をメカニカルミリング法(MM法)により処理して得ることができる。このようにして得られた硫化物ガラスを加熱処理してもよい。
好ましくは、硫化リチウムは、少なくとも硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であり、かつN−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%以下であると、溶融急冷法やメカニカルミリング法で得られる固体電解質は、ガラス状電解質(完全非晶質)となる。即ち、硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%を越えると、得られる電解質は、最初から結晶化物の恐れがあり、この結晶化物のイオン伝導度は低い。さらに、この結晶化物について熱処理を施しても結晶化物には変化がなく、高イオン伝導度のリチウムイオン伝導性無機固体電解質を得ることはできない。
このように不純物が低減された硫化リチウムを用いると、高イオン伝導性電解質が得られる。
例えば、以下の方法で製造された硫化リチウムを精製することにより得ることができる。
以下の製造法の中では、特にa又はbの方法が好ましい。
a.非プロトン性有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを0〜150℃で反応させて水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を150〜200℃で脱硫化水素化する方法(特開平7−330312号公報)。
b.非プロトン性有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを150〜200℃で反応させ、直接硫化リチウムを生成する方法(特開平7−330312号公報)。
c.水酸化リチウムとガス状硫黄源を130〜445℃の温度で反応させる方法(特開平9−283156号公報)。
具体的には、硫化リチウムを、有機溶媒を用い、100℃以上の温度で洗浄する。洗浄に用いる有機溶媒は、非プロトン性極性溶媒であることが好ましく、さらに、硫化リチウムの製造に使用する非プロトン性有機溶媒と洗浄に用いる非プロトン性極性有機溶媒とが同一であることがより好ましい。
硫化リチウムと、五硫化二燐及び/又は単体燐及び単体硫黄の混合モル比は、通常50:50〜80:20、好ましくは60:40〜75:25である。
特に好ましくは、Li2S:P2S5=68:32〜74:26(モル比)程度である。
この際の反応温度は、好ましくは400℃〜1000℃、より好ましくは800℃〜900℃である。また、反応時間は、好ましくは0.1時間〜12時間、より好ましくは1〜12時間である。上記反応物の急冷温度は、通常10℃以下、好ましくは0℃以下であり、その冷却速度は通常1〜10000K/sec程度、好ましくは1〜1000K/secである。
上記原料を用いたメカニカルミリング法は、室温で反応を行うことができる。MM法によれば、室温でガラス状電解質を製造できるため、原料の熱分解が起らず、仕込み組成のガラス状電解質を得ることができるという利点がある。また、MM法では、ガラス状電解質の製造と同時に、ガラス状電解質を微粉末化できるという利点もある。
MM法の回転速度及び回転時間は特に限定されないが、回転速度が速いほど、ガラス状電解質の生成速度は速くなり、回転時間が長いほどガラス質状電解質ヘの原料の転化率は高くなる。
例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
結晶成分を含有する固体電解質を生成させる熱処理温度は、好ましくは190℃〜340℃、より好ましくは195℃〜335℃、特に好ましくは200℃〜330℃である。190℃より低いと高イオン伝導性の結晶が得られにくい場合があり、340℃より高いとイオン伝導性の低い結晶が生じる恐れがある。
用いる不活性ガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス等が挙げられ、アルゴンガスが好ましい。
また、電池材料としての使用、即ち、全固体電池に組み立てられるまでの工程は、不活性ガス雰囲気下、100〜300℃の範囲で実施されれば、水分等の揮発分の再付着による電池性能への影響は殆どない。全固体電池として組み立てられるまでの工程とは、正極、負極、固体電解質層、及び集電体が一体化されるまでの工程、好ましくは全固体電池がシールされるまでの工程を意味する。
リチウムイオン伝導性固体電解質の揮発分含量は、実施例に記載方法により測定することができる。
本発明の全固体電池は、リチウムイオン伝導性固体電解質の揮発分含量が、固体電解質1kg当たり50g以下(5重量%以下)であることを特徴とする。
従来は、製造されてから一定期間保存され、雰囲気中の僅かな水分等の揮発分の付着によりイオン伝導度が低下したリチウムイオン伝導性固体電解質を用いて固体電解質層を形成していたため、これを用いて製造された全固体電池は、充放電時のレート特性、サイクル特性等の電池性能の劣ったものであった。
これに対し、一定期間保存の後、電池材料として使用する前に上記条件で加熱乾燥されたリチウムイオン伝導性固体電解質を用いて形成された固体電解質層は、その揮発分含量が固体電解質1kg当たり50g以下まで低減されているため、これを用いて製造された全固体電池は、前記のような優れた電池性能を発揮することができる。
本発明の全固体電池においては、粉体状又はペレット状の固体電解質と溶媒やバインダー(結着材や高分子化合物等)を混合した溶液を塗布、塗工した後、溶媒を除去し成膜化することができる。また、固体電解質自体や固体電解質とバインダー(結着材や高分子化合物等)や支持体(固体電解質層の強度を補強させたり、固体電解質自体の短絡を防ぐための材料や化合物等)を混合・組合せた電解質を加圧プレスすることで成膜化することも可能である。
本発明においては、前記条件で加熱乾燥され揮発分含量が低減された粉体状又はペレット状のリチウムイオン伝導性固体電解質、好ましくは粉体状の固体電解質を用いてシート状の固体電解質層を形成することが好ましいが、シート状の固体電解質を前記条件で加熱乾燥してもよい。
本発明の全固体電池に用いられる集電体の材料は特に制限されず、電池分野において集電体材料として使用されているものが使用できる。具体的には、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、リチウム、又はこれらの合金等からなる板状体や箔状体等が挙げられる。
本発明の全固体電池に用いられる正極材は特に制限されず、電池分野において正極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、硫化物系の正極活物質としては、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni3S2)等が挙げられ、TiS2が好ましい。
また、酸化物系の正極活物質としては、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V6O13)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)等が挙げられる。尚、これらを混合して用いることも可能である。これらのうち、コバルト酸リチウムが好ましい。また、上記の他、セレン化ニオブ(NbSe3)等も使用できる。
本発明の全固体電池に用いられる負極材は特に制限されず、電池分野において負極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、炭素材料が挙げられ、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。又は、それらの混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組合わせた合金を、負極材として用いることができる。
全固体電池の部材である固体状の上記電極材料(極材)においては、電子伝導性に加えてイオン伝導度を向上させるため、極材の粒子同士が密着し、粒子間の接合点や面を多く存在させ、イオン伝導パスをより多く確保することが重要である。そのため、電解質等のイオン伝導活物質を混合し、極材とする方法が用いられる。電解質として固体電解質層の形成に使用する固体電解質を使用することができる。この場合、混合される固体電解質は、上記条件で加熱乾燥し揮発分含量が低減されたものであることが好ましい。また、極材粒子間の隙間に生じる空間(単位体積における空間体積と極材粒子の体積の割合:空隙率)が少ない程、極材層が密に詰まっており、イオン伝導度は高くなる。
正極には、導電助剤として、電子が正極活物質内で円滑に移動するようにするために、電気的に導電性を有す物質を適宜添加してもよい。電気的に導電性を有する物質としては特に制限はなく、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブのような導電性物質又はポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロールのような導電性高分子を単独又は混合して用いることができる。
電極は、上記極材(正極材又は負極材)を集電体の少なくとも一部に膜状に形成することで作製できる。製膜方法としては、例えば、ブラスト法、エアロゾルデポジション法、コールドスプレー法、スパッタリング法、気相成長法又は溶射法等が挙げられる。このような方法により製膜することで、極材層の空隙率をより小さくすることができ、イオン伝導度を向上させることができる。
簡便な装置や室温条件下、電解質の結晶状態を変化させない温度範囲で製膜できることから、ブラスト法やエアロゾルデポジション法が好ましい。
全固体電池は、上述した電池用部材を貼り合せ、接合することで製造できる。接合する方法としては、各部材を積層し、加圧・圧着する方法や、2つのロール間を通して加圧する方法(roll to roll)等がある。
また、接合面にイオン伝導性を有する活物質や、イオン伝導性を阻害しない接着物質を介して接合してもよい。
接合においては、固体電解質の結晶構造が変化しない範囲で加熱融着してもよい。
[製造例1]
(1)硫化リチウム(Li2S)の製造
撹拌翼のついた10リットルオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。続いてこの反応液を窒素気流下(200cc/分)昇温し、反応した硫化水素の一部を脱硫化水素化した。昇温するにつれ、上記硫化水素と水酸化リチウムの反応により副生した水が蒸発を始めたが、この水はコンデンサにより凝縮し系外に抜き出した。水を系外に留去すると共に反応液の温度は上昇するが、180℃に達した時点で昇温を停止し、一定温度に保持した。脱硫化水素反応が終了後(約80分)反応を終了し、硫化リチウムを得た。
上記(1)で得られた500mLのスラリー反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリー)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP 100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP 100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥した。得られた硫化リチウム中の不純物含有量を測定した。
上記のようにして製造したLi2SとP2S5(アルドリッチ製)を70対30のモル比に調製した混合物を約1gと直径10mmのアルミナ製ボール10ケとを45mLのアルミナ製容器に入れ、遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型番P−7)にて、窒素中、室温(25℃)にて、回転速度を370rpmとし、20時間メカニカルミリング処理することで、白黄色の粉末である硫化物系ガラスを得た。また、得られた粉末をガラス製の密閉容器に入れ、300℃、2時間熱処理して焼成を行い硫化物系ガラスセラミックを得た。
(1)揮発分含量の測定
揮発成分含量は、エスエスアイ・ナノテクノロジー社製TG/DTAを用いて求めた。所定量の電解質サンプルをN2雰囲気下で定量して、測定用パンにいれ、常温〜400℃まで10℃/分で昇温した。その際の重量減少量を測定し、これよりサンプル1kg当たりの揮発分含量を算出した。
揮発成分の定性分析は熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置で測定した。試料を400℃に加熱した熱分解部に導入し、発生したガスをガスクロマトグラフ質量分析装置で検出した。ガスの成分はライブラリ検索で同定した。その結果、主な揮発成分はH2S、CS2及びH2Oであることを確認した。
各部の製造元及び型式、並びに測定条件は以下の通りである。
メーカー : フロンティアラボ株式会社
型式 : Py2020iD型
熱分解雰囲気 : He
温度 : 400℃
加熱時間 : 30秒
メーカー : 日本電子株式会社
型式 : JMS−Q1000GC K9型
製造例1(3)で得られた硫化物系ガラスセラミック(リチウムイオン伝導性固体電解質)を、−70℃でアルゴン雰囲気中のグローブボックス中に1週間放置した後、揮発成分含量を測定したところ、55g/kgであり、イオン伝導度は、7×10−4S/cmという低い値であった。
比較例1と同様に−70℃でアルゴン雰囲気中のグローブボックス中に1週間放置した後の硫化物系ガラスセラミック(リチウムイオン伝導性固体電解質)を、アルゴン気流下にて250℃で2時間、加熱乾燥した。その結果、加熱乾燥直後には揮発成分含量は検出されず、イオン伝導度は2.0×10−3S/cmであった。このイオン伝導度は、硫化物系ガラスセラミック製造直後と同等又はそれ以上である。
(1)正極/固体電解質層/負極ペレットの製造
負極を構成する負極材を、カーボングラファイト(TIMCAL製、SFG−15)と実施例1で加熱乾燥して得られた硫化物系ガラスセラミックとを質量比1:1で混合して製造した。正極を構成する正極材を、コバルト酸リチウムと実施例1で加熱乾燥して得られた硫化物系ガラスセラミックとを質量比が6:4で混合して製造した。そして、市販のペレット成形機を用い、負極材(10mg)、固体電解質である実施例1で加熱乾燥して得られた硫化物系ガラスセラミック(150mg)、正極材(20mg)を順次ペレット成形機の中に入れ、順次20t/cm2の圧力を掛け、正極、固体電解質層及び負極の三層のペレットを製造した。
両極に集電体としてSUS板により挟み込み、ねじ締めにより集電体を圧着させ、全固体電池を得た。
10 正極
20 固体電解質層
30 負極
40,42 集電体
Claims (5)
- リチウムイオン伝導性固体電解質層の揮発分含量が、該固体電解質1kg当たり50g以下である全固体電池。
- リチウムイオン伝導性固体電解質を、不活性ガス雰囲気中、80〜400℃の温度範囲で加熱乾燥することを含む電池材料の製造方法。
- 前記リチウムイオン伝導性固体電解質が、硫化リチウムと五硫化二リンを原料とするものである請求項2に記載の電池材料の製造方法。
- 前記リチウムイオン伝導性固体電解質が、粉体状である請求項2又は3に記載の電池材料の製造方法。
- 電池材料が固体電解質層形成用材料又は電極材である請求項2〜4のいずれか1項に記載の電池材料の製造方法。
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