JP2008095255A - 抗ピル性アクリル系繊維とその製造方法 - Google Patents

抗ピル性アクリル系繊維とその製造方法 Download PDF

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【課題】優れた風合いと抗ピル性を有し、良好な品質および性能の繊維製品が得られる抗ピル性アクリル系繊維とその製造方法を提供する。
【解決手段】単繊維繊度が0.3〜2.2dtexで、引っ張り強度が3.0cN/dtex以上、結節強度が1.5cN/dtex以下、結節強度(cN/dtex)の値と結節伸度(%)の値との積Kが10以下であり、繊維表面に溝状の皺が存在し、繊維軸方向に垂直な断面において皺と皺との頂点を結ぶ線と皺の底部からの最短距離が最大1.0μmで、かつ0.2〜1.0μmである皺が、任意の繊維断面において25〜60本存在する抗ピル性アクリル系繊維とその製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、優れた風合い、染色鮮明性と抗ピル性を有し、良好な品質および性能の繊維製品が得られる抗ピル性アクリル系繊維とその製造方法に関する。
アクリル系繊維は他の合成繊維に比べ最も羊毛に類似した柔軟な風合い、保温性、嵩高性ならびに優れた染色性を有し、衣料用またはインテリア分野に多く利用されている。しかしながらアクリル系繊維の編織物は、着用中にその表面に毛羽、短毛等の絡まりあったピリングと呼ばれる毛玉が発生しやすく、編織物の外観を著しく損ない商品価値を低下させるという実用上の欠点がある。かかる状況を背景としてピリングの発生を防止するためにこれまでに多くの提案がなされてきた。
特許文献1には、繊維の引っ張り強度、結節強伸度を特定の範囲とすることによって抗ピル性アクリル系繊維を得る方法、特許文献2には溶剤の洗浄と延伸処理を施した糸条の膨潤度を200%〜220%に制御し、さらに強度3g/d以上、結節強度(cN/dtex)の値と結節伸度(%)の値との積Kを20以下とすることで、抗ピル性アクリル系繊維を得る方法が開示されているが、これらの抗ピル性アクリル系繊維を、天然繊維等の抗ピル性を有さない他の繊維と混合して使用される場合は、抗ピル性が不十分であるという問題があった。さらに、これらの方法で得られた抗ピル性アクリル系繊維は、その製造条件により、染色性が低く、染色鮮明性が良くないという問題があった。他の繊維との混合使用における抗ピル性を改善する方法としては、特許文献3や特許文献4のように、繊維の断面形状を真円化し特定の熱処理条件の下で抗ピル性を向上させる方法が開示されており、これらの方法によって抗ピル性は改善されるものの、特殊な紡糸製造条件が必要であることや、抗ピル性アクリル系繊維の製造工程で接着繊維が多発する等の生産性の問題が発生し、依然として、抗ピル性を維持しながら、染色鮮明性が良好な抗ピル繊維アクリル系繊維を、高い生産性で製造することができなかった。ところで、アクリル系極細繊維の表面に特定の皺を存在させることで染色鮮明性および光沢を抑制する方法が、特許文献5には開示されているが、この製造方法では、空気中での冷延伸倍率を高くする事が必要であるため、抗ピル性アクリル系繊維の製造への適用ができなかった。
特開昭59−192717号公報 特開平04−57909号公報 特開昭59−116409号公報 特開平09−250024号公報 特開2000−303253号公報
本発明の目的は、優れた風合いと染色鮮明性と抗ピル性を有し、良好な品質および性能の繊維製品が得られる抗ピル性アクリル系繊維とその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下に示す本発明を見出すにいたった。
すなわち、本発明の第1の要旨は、単繊維繊度が0.3〜2.2dtexのアクリル系合成繊維であって、引っ張り強度が3.0cN/dtex以上、結節強度が1.5cN/dtex以下、結節強度(cN/dtex)の値と結節伸度(%)の値との積Kが10以下であり、繊維表面に多数の筋状の皺を有し、かつ繊維軸方向に垂直な任意の断面において、皺と皺との頂点を結ぶ線と皺の底部からの最短距離が最大1.0μmであり、かつ0.2〜1.0μmである皺が、25〜60本存在する抗ピル性アクリル系繊維である。
本発明の第2の要旨は、94.0質量%以上のアクリロニトリル単位と、該アクリロニトリルと共重合性を有するビニル系モノマー単位4.0〜5.8質量%、およびスルホン酸基含有ビニルモノマー単位0.2〜2.0質量%からなるアクリロニトリル系ポリマーを用い、湿式紡糸法による抗ピル性アクリル系繊維を製造するに際し、18〜25質量%のアクリロニトリル系ポリマーと、1〜3質量%の水、72〜81質量%の有機溶媒からなる紡糸原液を、溶媒濃度が30〜40質量%、温度が45〜65℃の凝固浴に吐出し、紡糸ドラフト0.5〜1.4倍で紡糸した後、次いで空気中において、1.1〜1.2倍で冷延伸し、さらに熱水延伸工程で、前述の冷延伸倍率と熱水延伸倍率との積Sが、4.0〜5.5倍となるように熱水延伸し、油剤付与後、乾燥緻密化処理を行い、さらに熱緩和処理を行うことを特徴とする請求項1記載の抗ピル性アクリル系繊維の製造方法である。
本発明によれば、優れた風合い、染色鮮明性と抗ピル性を兼備し、良質な品質、性能の繊維製品を得ることが可能な抗ピル性アクリル系繊維を提供する事ができ、セーター、肌着、ジャージ等の衣料用途において、単独あるいは綿、レーヨン、ウール等、他繊維と混紡し、紡績をした際の加工性が良好で、優れた風合いと品質を有する抗ピル性繊維製品を提供する事を可能とするものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるアクリロニトリル系重合体は94質量%以上のアクリロニトリル単位を含有することが必要である。アクリロニトリル単位の含有率が94質量%未満の場合は、衣料用繊維として必要な繊維物性を損なうので好ましくない。また、アクリロニトリルと共重合性を有するビニル系モノマー単位の含有率は4.0質量%以上、5.8質量%以下にすることが好ましい。ビニル系モノマー単位の含有率が4.0質量%未満の場合は、紡糸原液のゲル化が進行しやすくなるため、紡糸原液工程の管理が困難となり、一方、5.8質量%より多く含まれる場合は、抗ピル性能が低下するので好ましくない。また、スルホン酸基含有ビニルモノマー単位の含有率は0.2質量%以上、2.0質量%以下にすることが好ましい。スルホン酸基含有ビニルモノマー単位の含有率が0.2質量%未満の場合は十分な染色性能が得られず、2.0質量%より多く含まれる場合は、染色性能は高まるものの、凝固が遅く、紡糸工程で接着が発生しやすくなる等の紡糸安定性不良による繊維生産性の低下、さらに得られた繊維もリング染色などの染色斑を引き起こすため好ましくない。
アクリロニトリルと共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、あるいはこれらの(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、スチレン、アクリル酸アミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、などが挙げられる。また、スルホン酸基含有ビニルモノマーとしては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはこれらの金属塩類、およびアミン塩類等が好ましく用いられるが、本発明はここに挙げたモノマーに限定されるものではない。これらは、このようなアクリロニトリル系ポリマーを得るために重合方法は、水媒体中で実施する懸濁重合法が望ましい。
これらのアクリロニトリル系ポリマーを湿式紡糸する溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒であることが必要である。中でも、繊維製造における生産性、得られた抗ピル性アクリル系繊維の染色鮮明性と、抗ピル性能のバランスの面からジメチルアセトアミドが好ましい。また、用いるアクリロニトリル系ポリマーの還元粘度(0.5%DMF溶液中、25℃で測定)は1.5dl/g以上、2.2dl/g以下であることが好ましい。1.5dl/g未満の場合には紡糸原液の曳糸性が不足し安定紡糸が難しくなり、2.2dl/gを超えると抗ピル性は低下してしまうので好ましくない。
本発明の抗ピル性アクリル系繊維の繊度は、0.3〜2.2dtexである。一般的に、繊維が細くなると染色鮮明性が低下する傾向にあるが、本発明の染色鮮明性の効果は、特に1.0dtex以下の極細繊維において顕著である。引っ張り強度は、紡績工程等の加工工程通過性の点で、3.0cN/dtex以上であることが必要である。さらに、結節強度が1.5cN/dtex以下であり、かつ結節強度(cN/dtex)の値と結節伸度(%)の値との積Kが10以下であるという2つの条件を満たす必要がある。結節強度が1.5cN/dtexより高い場合、結節強度が1.5cN/dtex以下であっても、結節強度(cN/dtex)の値と結節伸度(%)の値との積Kが10より大きい場合は抗ピル性能が低下するので、好ましくない。
さらに、本発明においてはこの繊維表面に特定の溝状の皺が存在することが必要である。すなわち、繊維表面に存在する皺の深さ、本数を制御することで、繊維製造工程における紡糸性、生産性を低下させることなく、抗ピル性アクリル系繊維の染色鮮明性を著しく向上させることができる。この皺の深さは繊維軸方向に垂直な断面において皺と皺との頂点を結ぶ線と皺の底部からの最短距離が最大1.0μmであり、かつ0.2〜1.0μmの皺の本数が任意の繊維断面において25〜60本存在することが必要である。このような皺が繊維表面上に存在することで、繊維表面で可視光が干渉し、可視光の透過と乱反射が抑制され、染色後の繊維が深みのある落ち着いた色合いとなる。この皺と皺との頂点を結ぶ線と皺の底部からの最短距離が0.2μm未満の場合は、繊維表面での可視光の干渉効果が弱くなり、透過する可視光の量が多くなる結果、繊維は、鮮明性のない淡い色を呈する。一方、1.0μmより大きい場合は、繊維表面で可視光の乱反射が多くなるので、繊維は、鮮明性のない白っぽい色を呈し、いずれの場合も染色後の繊維の染色鮮明性が低下するので好ましくない。また、この皺が25本未満の場合は可視光の干渉を促進する性能が弱くなるため淡色を呈するので好ましくなく、一方、60本を越える場合は可視光の乱反射が多くなるため白っぽくなるので好ましくない。
また、紡糸原液のアクリロニトリル系ポリマー濃度は18〜25質量%のアクリロニトリル系ポリマーと、1〜3質量%の水、72〜81質量%の有機溶媒からなる必要がある。紡糸原液中のアクリロニトリル系ポリマー濃度が18質量%未満の場合、得られる繊維の表面に、1.0μmより大きい皺が著しく多くなるため好ましくない。一方、25質量%を超えると紡糸原液の曳糸性が不足するため安定した紡糸ができなくなるので好ましくない。また、該紡糸原液中の水の濃度が1質量%未満の場合は、0.2〜1.0μmである皺が、60本を越えるので好ましくなく、一方、3質量%より多く含まれる場合は、紡糸原液の安定性が悪くなるため現実的な生産に適さなくなってしまうので好ましくない。また、該紡糸原液の温度は60〜95℃であることが好ましい。60℃未満の場合は紡糸原液の曳糸性が不足するだけでなく、粘度が高いためにノズル圧上昇などの操業性悪化の原因となる。95℃より高い場合は紡糸原液のゲル化等の変性を引き起こすことが多く、安定した紡糸が望めなくなる。
該紡糸原液を湿式紡糸するための凝固浴の組成は、有機溶媒濃度が30〜40質量%、水の成分が60〜70質量%であることが必要である。有機溶媒濃度が30質量%未満の場合は、紡糸性が低下し、凝固浴での糸入れが多くなる傾向となり好ましくない。40質量%より高い場合は、1.0μmより大きい皺が多くなり、さらに十分な抗ピル性能を示さなくなるので好ましくない。また、凝固浴の温度は45℃〜65℃にする必要がある。45℃未満の場合、1.0μmより大きい皺が多くなり、さらに十分な抗ピル性能を示さなくなるので好ましくなく、他方、65℃より高くなると、後述の熱水中、繊維を延伸する工程において、糸切れが多発し、繊維の生産性が低下するので好ましくない。
該凝固浴中にノズルから紡糸原液を押し出し繊維状に賦形する際の紡糸ドラフトは0.5〜1.4倍にする必要がある。紡糸ドラフトが0.5倍未満の場合は得られた繊維の抗ピル性能が低下し、1.4倍より高い場合は紡糸安定性が損なわれてしまう。かくして得られた凝固糸を空気中1.1〜1.2倍で冷延伸することが必要である。1.1倍未満の場合は、発現する皺の数が少なくなるとともに皺が浅くなってしまい、本発明の要件である特定の皺を得ることができず好ましくなく、1.2倍より高くなると抗ピル性能が低下するので好ましくない。このように、特定の組成の原液を使用し、特定の凝固浴組成で紡糸すること、さらに空気中、特定の延伸条件で冷延伸を行うことによって、繊維表面に本発明の要件である特定の皺を形成させることができる。
引き続いて、熱水中で繊維中に残留する溶剤を洗浄しながら延伸される。この熱水延伸工程の延伸倍率と前述の冷延伸倍率との積Sが、4.0〜5.5倍であることが必要である。積Sが4.0倍より低いと、得られた繊維の紡績工程通過性が低下し好ましくなく、5.5倍を超えると、抗ピル性が低下するので好ましくない。また、熱水延伸工程を経た延伸糸の膨潤度は200〜250%の範囲にあることが好ましい。膨潤度が200%未満の場合には、得られたアクリル系抗ピル繊維を天然繊維等の抗ピル性を有さない他の繊維と混合して使用する場合に、抗ピル性が低下する傾向にあり、一方で250%を超えると得られる繊維が失透し、光沢が失われるとともに、繊維の機械的強度が低く、紡績、編み立ての工程で繊維の損傷発生が著しくなる傾向となるので好ましくない。この延伸糸の膨潤度の制御は、原液濃度条件、凝固浴温度条件、および冷延伸と熱水中の延伸倍率条件を適宜調整することにより行われる。得られた延伸糸に定法により油浴剤処理を施し、少なくとも140℃で乾燥させる。140℃未満で乾燥緻密化処理を行うと、十分な繊維強度が得られないおそれがあるので好ましくない。その乾燥緻密化処理後、熱緩和条件処理を施してアクリル系繊維とする。熱緩和条件としては、繊維物性、染色性と抗ピル性発現のバランスから、湿熱雰囲気下で100℃から120℃の範囲が好ましい。
以上のような製造方法により得た本発明の抗ピル性アクリル系繊維はカットして短繊維とされた後、紡績される。紡績糸の構成は、本発明の抗ピル性アクリル系繊維を100%としても良いし、他の繊維、例えば通常のアクリル系繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維等の合成繊維または化学繊維、綿、ウール、絹等の天然繊維と混紡して、紡績糸とすることも可能である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は何等これらに限定されるものではない。なお、実施例中の「%」は、特記しない限りそれぞれ質量%を意味する。
[紡糸原液粘度の測定方法]
50℃における各原液の粘度測定は、JIS Z8803 落球粘度法によって測定した。
[膨潤度(繊維含水率)の測定方法]
紡糸工程において、延伸後、乾燥緻密化処理前のゲル状繊維を採取し、直径約40cmの遠心脱水機を使用、3000rpm、10分間の条件で、該ゲル状繊維の遠心脱水を行い、その遠心脱水処理後の質量をL0。さらに、該遠心脱水処理後のゲル状繊維を、120℃、60分間の条件で、熱風乾燥機において乾燥後、デシケーター中で、室温まで温度を低下させた後の該ゲル状繊維の質量をL1としたとき、

(膨潤度) = (L0−L1)/L1 × 100 (%)

で、乾燥緻密化処理前のゲル状繊維の膨潤度(繊維含水率)を求めた。
[抗ピル性能の測定方法]
抗ピル性に関しては、得られた編地を、0.2%owfの保土谷化学工業社製 Aizen Cathilon Blue-BRLH染料溶液で浴比1:100、温度97℃、時間50分間の条件で染色後、60℃の熱風乾燥機で乾燥して、抗ピル性測定用の編地を作成し、ICI法(JIS L 1076 A法にて5時間試験)により抗ピル性を評価した。

[染色後の染色鮮明性の評価方法]
得られた編地を、0.9%owfの保土谷化学工業社製 Aizen Cathilon Blue-BRLH染料溶液で浴比1:100、温度97℃、時間50分間の条件で染色後、60℃の熱風乾燥機で乾燥して、染色鮮明性評価用の編地を作成し、5人の判定員が、その染色鮮明性評価用の編地を目し判定で、深みのある良好な染色鮮明性を有していると判断されるものに1点、染色性は有しているものの際立って良好であり深みがあるとは判断されないものに0点をつけた。5人の点数の合計が、5点の場合の判定結果を◎、3点場合の判定結果を○、2点以下の場合の判定結果をXとして評価した。
[繊維表面の皺と皺の間の深さ、皺の本数の測定方法]
ポリエステルチューブの中心軸と繊維束の軸方向が略並行になるように、適量の繊維をポリエステルチューブに挿入し、その繊維軸に略垂直方向に切断して、繊維断面観察サンプルを作成する。走査型電子顕微鏡を使用し、繊維軸に略垂直方向に切断されている繊維を選定し、その繊維断面を観察して、図1に示したように皺1と皺1との頂点を結ぶ線2を引いたとき、皺の底部3から線2までの最短距離Aが0.2〜1.0μmである表面皺の本数を数え、20本の繊維について、平均値を求めた。
[実施例1〜5、比較例1〜8]
アクリロニトリル単位95%、酢酸ビニル単位4.4%、メタリルスルホン酸ソーダ単位0.6%からなる還元粘度1.6のアクリロニトリル系ポリマーをジメチルアセトアミドに溶解し重合体濃度24%、水の濃度2%、50℃での粘度が200ポイズの紡糸原液を得た。
この紡糸原液を75℃に調温し、35%ジメチルアセトアミド、温度50℃
の凝固浴中にノズルから押し出して湿式紡糸し、次いで空気中で1.15倍の冷延伸を施した後、さらに沸水中で溶剤を洗浄しながら4.0倍延伸を施し、続いて油剤を付着させ150℃の熱ローラーで乾燥し、さらに1.1kg/cm2加圧スチーム中で緩和処理を行い、単繊維繊度が1.7dtexのアクリル系繊維を得た。この繊維を51mmにカットし、2インチ紡によりメートル番手1/52の紡績糸となし、この紡績糸を抗ピル性測定用条件及び染色鮮明性評価用条件で染色後、24ゲージ、48本の丸編み機を用いて天竺組織に製編して、抗ピル性測定用の編地と染色鮮明性評価用の編地を作成した。それらの抗ピル性、染色鮮明性を評価したところ、抗ピル性5級、染色鮮明性は良好(○)であった。

同様に紡糸原液中の水の濃度、凝固浴条件、各延伸倍率、目標繊度を変更して製造した繊維を、紡績、編地作成し、それらの抗ピル性と染色鮮明性を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2008095255
[実施例6〜11、比較例9〜15]
実施例1〜5、比較例1、3〜8で得た抗ピル性アクリル系繊維70%と、沸騰水中での収縮率が18%である1.7dtexの収縮性アクリル系繊維30%、あるいは沸騰水中での収縮率が20%である1.3dtexの収縮性アクリル繊維30%とを混紡し、メートル番手1/52の紡績糸を得た。この紡績糸を染色後、24ゲージ、48本の丸編み機を用いて天竺組織に製編、編地を作成し、評価を行った。それらの抗ピル性と染色鮮明性の評価結果を表2に示す。
Figure 2008095255
表1および表2の結果から明らかなように、本発明に関わる諸工程要件を満たす条件にて製造されたアクリル系繊維は、それ自身が優れた抗ピル性能と染色鮮明性を有するだけでなく、他の繊維と混綿した後も良好な抗ピル性能と染色鮮明性を発現することが分かる。
繊維の拡大断面模式図である。 図1の四角に囲った部分の拡大模式図である。
符号の説明
1 皺
2 皺の頂点を結ぶ線
3 皺間の底部
A 線2と底部3の最短距離

Claims (2)

  1. 単繊維繊度が0.3〜2.2dtexのアクリル系合成繊維であって、引っ張り強度が3.0cN/dtex以上、結節強度が1.5cN/dtex以下、結節強度(cN/dtex)の値と結節伸度(%)の値との積Kが10以下であり、繊維表面に多数の筋状の皺を有し、かつ繊維軸方向に垂直な任意の断面において、皺と皺との頂点を結ぶ線と皺の底部からの最短距離が最大1.0μmであり、かつ0.2〜1.0μmである皺が、25〜60本存在する抗ピル性アクリル系繊維。
  2. 94.0質量%以上のアクリロニトリル単位と、該アクリロニトリルと共重合性を有するビニル系モノマー単位4.0〜5.8質量%、およびスルホン酸基含有ビニルモノマー単位0.2〜2.0質量%からなるアクリロニトリル系ポリマーを用い、湿式紡糸法による抗ピル性アクリル系繊維を製造するに際し、18〜25質量%のアクリロニトリル系ポリマーと、1〜3質量%の水、72〜81質量%の有機溶媒からなる紡糸原液を、溶媒濃度が30〜40質量%、温度が45〜65℃の凝固浴に吐出し、紡糸ドラフト0.5〜1.4倍で紡糸した後、次いで空気中において、1.1〜1.2倍で冷延伸し、さらに熱水延伸工程で、前述の冷延伸倍率と熱水延伸倍率との積Sが、4.0〜5.5倍となるように熱水延伸し、油剤付与後、乾燥緻密化処理を行い、さらに熱緩和処理を行うことを特徴とする請求項1記載の抗ピル性アクリル系繊維の製造方法。
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