JP2008093859A - インクジェット印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1)カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカチオン性ポリマー粒子と、カチオン性界面活性剤とを配合してなる塗工インクを用いて、記録媒体に塗工した後、その塗工処理した部分に、着色剤を含有する水系インクを、インクジェット記録方式により重ねて印刷する印刷方法、及び(2)カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカチオン性ポリマー粒子と、カチオン性界面活性剤とを配合してなる塗工インクと、着色剤を含有する水系インクとから構成されるインクセットであって、インクジェット記録方式により、該塗工インクを塗工処理し、その塗工処理部分に該水系インクを重ねて印刷するインクセットである。
【選択図】なし
Description
インクジェット記録方法に関しては、例えば、特許文献1には、無色の微粒子を含有する液体を被記録材に付着させる液体付着過程と、その液体付着部分に、顔料、水、樹脂微粒子、水溶性溶剤を含む記録液を吐出させる記録液吐出過程とを有し、該液体付着過程では、被記録材の表面粗さ(Ra)が特定範囲に調製され、かつ、表面張力が25〜50mN/mである該記録液による被記録材表面への動的接触角が30°/sec以上に設定されるインクジェット記録方法が開示されている。
インクジェット記録用インクに関しては、例えば、特許文献3には、淡色又は白色の水不溶性微粒子(樹脂エマルジョン)、水溶性有機溶媒及び水を含有する液体組成物と、着色剤、水溶性有機溶媒及び水を含有するインクとを含むインクが開示されている。
インクセットに関しては、例えば、特許文献4には、ブラック用、イエロー用、マゼンタ用及びシアン用インクを有するインクセットであって、少なくとも1種のインクが、水不溶性の色材をその1〜20重量%の有機高分子類で被覆してなるカプセル化色材を含む水性インクであるインクセットが開示されている。
しかし、上記特許文献に開示されたインクジェット記録方法や液体組成物、インク、インクセットでは、光沢性に優れ、にじみのない優れた印字物を得ることができなかった。
(1)塗工インク及び水系インクを用いて、記録媒体に下記工程1及び2を順次施す、インクジェット印刷方法。
工程1:インクジェット記録方式により、該記録媒体の全部又は一部に、カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカチオン性ポリマー粒子と、カチオン性界面活性剤とを配合してなる塗工インクを、塗工処理する工程
工程2:工程1で得られた該記録媒体の塗工処理した部分に、着色剤を含有する水系インクを、インクジェット記録方式により重ねて印刷する工程
(2)カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカチオン性ポリマー粒子と、カチオン性界面活性剤とを配合してなる塗工インクと、着色剤を含有する水系インクとから構成されるインクセットであって、インクジェット記録方式により、該塗工インクを塗工処理し、その塗工処理部分に該水系インクを重ねて印刷する、インクセット。
工程1:インクジェット記録方式により、該記録媒体の全部又は一部に、カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカチオン性ポリマー粒子と、カチオン性界面活性剤とを配合してなる塗工インクを、塗工処理する工程
工程2:工程1で得られた該記録媒体の塗工処理した部分に、着色剤を含有する水系インクを、インクジェット記録方式により重ねて印刷する工程
以下に、本発明の印刷方法に用いる各成分について説明する。
本発明に用いる塗工インクは、カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカチオン性ポリマー粒子と、カチオン性界面活性剤とを配合してなる水系の塗工インクである。
カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカチオン性ポリマー粒子と、カチオン性界面活性剤とを配合することで、効率的にポリマー粒子表面のカチオン電荷密度が高まり、記録媒体への付着性が高まることで光沢性が向上し、印刷後のにじみが抑制すると考えられる。
本発明に用いるカチオン性ポリマー粒子は、カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られる粒子である。
カチオン性ポリマー粒子としては、連続相を水系とする媒体中に、カチオン性界面活性剤の存在下で、ポリマーエマルジョンとなって分散可能であるポリマー粒子であり、エチレン性不飽和モノマーを乳化重合してなるポリマー粒子が好ましい。
これらのポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、(メタ)アクリル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、スチレン−ブタジエン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、スチレン−(メタ)アクリル系ポリマー、ブタジエン系ポリマー、スチレン系ポリマー、後述するカチオン性モノマー由来の構成単位を含有するポリマー等が挙げられる。
なお、本明細書にいうカチオン性界面活性剤とは、常にカチオン性を帯びた界面活性剤のみならず、pHの変化によりカチオン性を帯びることがある界面活性剤も含む。カチオン性モノマーとは、常にカチオン性を帯びたモノマーのみならず、pHの変化によりカチオン性を帯びることがあるモノマーも含む。
カチオン性ポリマー粒子の重合時に用いられるカチオン性界面活性剤と塗工インクに配合するカチオン性界面活性剤とは同一でも異なっていてもよい。
これらに用いられるカチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。アルキル基の炭素数は12〜22が好ましい。
アルキルアミン塩としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
アルキルベタインとしては、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等が挙げられる。
アルキルアミンオキサイドとしては2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。好ましいカチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩が挙げられる。
カチオン性モノマーとしては、アミノ基を有する単量体の酸中和物、該単量体を4級化剤で4級化した第4級アンモニウム塩、又はジアリル型第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
アミノ基を有する単量体としては、ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド類、ジアルキルアミノ基を有するスチレン類、ビニルピリジン類、N−ビニル複素環化合物類、及びビニルエーテル類から選ばれる1種以上が好ましい。
ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリルアミド類としては、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジt−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ジアルキルアミノ基を有するスチレン類としては、ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等が挙げられ、ビニルピリジン類としては、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン等が挙げられ、N−ビニル複素環化合物類としては、N−ビニルイミダゾール等が挙げられ、ビニルエーテル類としては、アミノエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル等が挙げられる。
アミノ基を有する単量体を4級化剤で4級化した第4級アンモニウム塩は、前記アミノ基を有する単量体を4級化剤で処理することにより得ることができる。4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等の硫酸ジアルキル等のアルキル化剤が挙げられる。
また、ジアリル型第4級アンモニウム塩としては、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
疎水性モノマー(c)としては、後述する炭素数3〜30のアルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー等が挙げられ、炭素数3〜22のアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマーが好ましい。また、後述する水酸基含有モノマー(d)やモノマー(e)由来の構成単位を含有していてもよい。
前記ポリマー中にカチオン性モノマー由来の構成単位を含有する場合、その含有量は、ポリマー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜10重量%、特に好ましくは0.3〜5重量%である。また、〔(カチオン性モノマーの構成単位)/(疎水性モノマー(c)由来の構成単位)〕の重量比は、保存安定性、光沢性の観点から、好ましくは0.001〜0.5、より好ましくは0.002〜0.3、特に好ましくは0.003〜0.1である。
また、レドックス重合開始剤としては、過酸化物や酸化剤に亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、糖等の還元剤を併用するものが挙げられる。
塗工インクに配合するカチオン性界面活性剤(イ)の配合量としては、光沢性および印刷後のにじみ抑制の観点から、前記カチオン性ポリマー粒子(カチオン性ポリマー粒子由来のカチオン性界面活性剤(ロ)を含む)100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部、更に好ましくは1〜10重量部である。
塗工インクに配合するカチオン性界面活性剤(イ)と、カチオン性ポリマー粒子由来のカチオン性界面活性剤(ロ)との重量比((イ)/(ロ))は、光沢性の観点から、1/1〜1/5が好ましく、1/1〜1/4が更に好ましい。
塗工インク中のカチオン性界面活性剤(イ)の含有量は、好ましくは0.1〜5重量%であり、さらに好ましくは0.2〜2重量%である。
塗工インク中のカチオン性界面活性剤(ロ)の含有量は、好ましくは0.2〜5重量%であり、さらに好ましくは0.3〜3重量%である。
塗工インク中の全カチオン性界面活性剤((イ)+(ロ))含有量は、光沢性の観点から、塗工インク全量に対して、0.5〜10重量%が好ましく、0.8〜5重量%が更に好ましい。
カチオン性ポリマー粒子の平均粒径は、吐出性、及び光沢性の観点から、10〜400nmが好ましく、20〜200nmが更に好ましく、30〜150nmが特に好ましい。
塗工インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、2〜12mPa・sが好ましく、2.5〜10mPa・sが更に好ましい。
塗工インクには、通常水系インクに用いられる湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤、しわ防止剤等の添加剤を含有させることができる。
着色剤としては特に制限はなく、顔料、疎水性染料、水溶性染料(酸性染料、反応染料、直接染料等)等を用いることができるが、耐水性、分散安定性及び耐擦過性の観点から、顔料及び疎水性染料が好ましい。
顔料及び疎水性染料は、水系インクに使用する場合には、界面活性剤、ポリマーを用いて、インク中で安定な微粒子にする必要がある。特に、耐滲み性、耐水性等の観点から、水不溶性ポリマーの粒子中に顔料及び/又は疎水性染料を含有させることが好ましい。
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
疎水性染料としては、油溶性染料、分散染料等が挙げられ、これらの中では油溶性染料が好ましい。
油溶性染料としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック、C.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・バイオレット、C.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン、C.I.ソルベント・オレンジ等の各品番製品が挙げられ、オリエント化学株式会社、BASF社等から市販されている。
上記の着色剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
本発明に用いられる着色剤を含有する水系インクは、下記(1)〜(3)の分散体を含有することが好ましい。
(1)着色剤を界面活性剤、顔料誘導体又は水溶性ポリマーで水中に分散させた分散体
(2)親水性基が直接又は他の原子団を介して顔料に結合している自己分散型顔料の水分散体
(3)着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体
前記分散体(1)に用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤がいずれも挙げられ、顔料誘導体としては、イオン性官能基又はイオン性官能基の塩を有する、アゾ誘導体、ジアゾ誘導体、フタロシアニン誘導体、キナクリドン誘導体、イソインドリノン誘導体、ジオキサジン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、チオインジゴ誘導体、アントラキノン誘導体、キノフタロン誘導体等が挙げられる。
前記水溶性ポリマーは、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10gを越えるもの、好ましくは20g以上、更に好ましくは30g以上であるポリマーである。上記溶解量は、水溶性ポリマーがカルボキシ基、アンモニウム基等の塩生成基を有する場合は、その種類に応じて、水溶性ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量をいう。
前記水溶性ポリマーは、分散性の観点から、その重量平均分子量が2,000〜50,000であることが好ましい。なお、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、溶媒として60ミリモル/Lのリン酸及び50ミリモル/Lのリチウムブロマイドを溶解したジメチルホルムアミドを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定することができる。
ここで、他の原子団としては、炭素原子数1〜24、好ましくは炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換基を有してもよいフェニレン基又は置換基を有してもよいナフチレン基等が挙げられる。
アニオン性親水基としては、顔料粒子を水系媒体に安定に分散しうる程度に十分に親水性が高いものであれば、任意のものを用いることができる。その具体例としては、カルボキシ基(−COOM1)、スルホン酸基(−SO3M1)、リン酸基(−PO3M1 2)、−SO2NH2、−SO2NHCOR1又はそれらの解離したイオン形(−COO-、−SO3 -、−PO3 2-、−PO3 - M1)等が挙げられる。上記化学式中、M1は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムである。R1は、炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基である。
これらのアニオン性親水基の中では、特にカルボキシ基(−COOM1)、スルホン酸基(−SO3M1)が好ましい。
カチオン性親水基としては、アンモニウム基、アミノ基等が挙げられる。
これらの中でも、本発明に用いられる水系インクとしては、優れた吐出信頼性、印刷物の光沢性を向上させる観点から、(3)着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を用いることが好ましく、下記に説明する。
水不溶性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーとしては、水不溶性ビニルポリマー、水不溶性エステル系ポリマー、水不溶性ウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらの中では、水分散体の安定性の観点から、水不溶性ビニルポリマーが好ましい。
ここで水不溶性ポリマーとは、105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下、好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下であるポリマーをいう。上記溶解量は、水不溶性ポリマーが塩生成基を有する場合は、その種類に応じて、水不溶性ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
このような水不溶性グラフトポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)(以下「(a)成分」ということがある)、マクロマー(b)(以下「(b)成分」ということがある)、及び疎水性モノマー(c)(以下「(c)成分」ということがある)を含むモノマー混合物(以下「モノマー混合物」ということがある)を共重合してなる水不溶性ビニルポリマーが好ましい。
(a)成分は、得られる分散体の分散安定性を高める等の観点から用いられるものであり、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。具体的には、特開平9−286939号公報第5頁第7欄24行〜同頁第8欄29行に記載されているもの等を用いることができる。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられ、これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミドが好ましい。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコネート等が挙げられる。
不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、分散安定性、吐出信頼性等の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸がより好ましい。
(b)成分は、水不溶性ポリマー粒子の分散安定性を高めると共に、印字濃度向上等の観点から用いられ、数平均分子量が500〜100,000、好ましくは1,000〜10,000で、片末端に不飽和基等の重合性官能基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。
なお、(b)成分の数平均分子量は、標準物質としてポリスチレンを用い、溶媒として50ミリモル/Lの酢酸を含有するテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定することができる。
(b)成分のマクロマーとしては、具体的には、下記(b−1)スチレン系マクロマー、(b−2)アルキル(メタ)アクリレート系マクロマー、(b−3)芳香環含有(メタ)アクリレート系マクロマー、(b−4)シリコーン系マクロマー等が挙げられる。
スチレン系マクロマーとは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー(b−1 モノマーという)を有するマクロマーを意味する。スチレン系モノマーの中ではスチレンが好ましい。
スチレン系マクロマーは、例えば、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体、及び片末端に重合性官能基を有する、スチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。片末端に存在する重合性官能基は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、これらを共重合させることで、スチレン系マクロマー由来の構成単位を有する水不溶性グラフトポリマーを得ることができる。他のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、後記のアルキル(メタ)アクリレート(b−2 モノマー)、及びスチレン以外の芳香環含有(メタ)アクリレート(b−3 モノマー)等が挙げられる。
側鎖中、又はスチレン系マクロマー中、スチレン系モノマー由来の構成単位の含有量は、高印字濃度性の観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート系マクロマーとは、ヒドロキシ基を有していてもよい、炭素数1〜22、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を有する、アルキル(メタ)アクリレート(b−2 モノマー)を有するマクロマーを意味する。
b−2 モノマーとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
b−2 モノマー由来の構成単位を含む側鎖は、片末端に重合性官能基を有するアルキル(メタ)アクリレート系マクロマーを共重合することにより得られ、例えば、メチルメタクリレート系マクロマー、ブチルアクリレート系マクロマー、イソブチルメタクリレート系マクロマー、ラウリルメタクリレート系マクロマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート系マクロマーは、片末端に重合性官能基を有するアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体、及び片末端に重合性官能基を有する、アルキル(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、重合性官能基は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましい。他のモノマーとしては、前記のスチレン系モノマー(b−1 モノマー)、後記のスチレン以外の芳香環含有(メタ)アクリレート(b−3 モノマー)等が挙げられる。
側鎖中、又はアルキル(メタ)アクリレート系マクロマー中、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は、最も多く、高印字濃度の観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
芳香環含有(メタ)アクリレート系マクロマーとは、芳香環含有(メタ)アクリレート(b−3 モノマー)を有するマクロマーを意味する。芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、下記式(1)で表されるモノマーが好ましい。
CH2=CR2COOR3 (1)
(式中、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3は置換基を有していてもよい、炭素数7〜22のアリールアルキル基又は炭素数6〜22のアリール基を示す。)
具体的には、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、フタルイミドメチル(メタ)アクリレート、p−ニトロフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルフタレート等が挙げられる。これらの中では、特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
芳香環含有(メタ)アクリレート系マクロマーは、片末端に重合性官能基を有する芳香環含有(メタ)アクリレートの単独重合体、及び片末端に重合性官能基を有する、芳香環含有(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、重合性官能基は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましい。他のモノマーとしては、前記のスチレン系モノマー(b−1 モノマー)、(メタ)アクリル酸エステル(b−2 モノマー)等が挙げられる。
側鎖中、又は芳香環含有(メタ)アクリレート系マクロマー中、芳香環含有(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量は最も多い。
本発明で用いられる水不溶性グラフトポリマーは、オルガノポリシロキサン鎖を側鎖として有していてもよい。この側鎖は、例えば、好ましくは下記式(2)で表される、片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマーを共重合することにより得ることができる。
CH2=C(CH3)−COOC3H6−〔Si(CH3)2−O〕t−Si(CH3)3 (2)
(式中、tは8〜40の数を示す)
本発明に用いられるポリマーが、水不溶性グラフトポリマーである場合、[主鎖/側鎖]の重量比は、保存安定性等を向上させる観点から、1/1〜20/1であることが好ましく、3/2〜15/1が更に好ましく、2/1〜10/1が特に好ましい。なお、重合性官能基は側鎖に含有されるものとしてその重量比を計算する。
上記の中では、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーが顔料との親和性が高く、保存安定性を向上させる観点から好ましい。
(c)成分は、印字濃度等の向上の観点から用いられ、アルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、芳香環含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)セチル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、(イソ)ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数3〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらの中では、炭素数3〜22、好ましくは炭素数3〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが、分散安定性の観点から好ましい。
なお、本明細書にいう「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方の場合を含むことを示す。
(c)成分としては、印字濃度向上等の観点から、芳香環含有モノマーが好ましい。
上記(a)〜(c)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(d)成分は、分散安定性を高めるものである。(d)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルカンジイル基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましい。
CH2=C(R4)COO(R5O)pR6 (3)
(式中、R4は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、R5はヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R6はヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1〜30の1価の炭化水素基、pは平均付加モル数を示し、1〜60、好ましくは1〜30の数である。)
(e)成分は、水性インクの吐出信頼性を高め、連続印字してもヨレの発生を抑制する等の優れた効果を発現するものである。
式(3)において、R5又はR6が有してもよいヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子又は硫黄原子が挙げられる。
R5又はR6で示される基の代表例としては、炭素数6〜30の芳香族基、炭素数3〜30のヘテロ環基、炭素数1〜30のアルカンジイル基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。これらの基は2種以上を組み合わせたものであってもよい。置換基としては、芳香族基、ヘテロ環基、アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基等が挙げられる。
上記R6としては、フェニル基、炭素数1〜30、好ましくは分岐鎖を有していても良い炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基又はヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基が好ましく挙げられる。R6のより好ましい例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、(イソ)ブチル基、(イソ)ペンチル基、(イソ)ヘキシル基等の炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
商業的に入手しうる(d)、(e)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社の多官能性アクリレートモノマー(NKエステル)M−40G、同90G、同230G、EH―4E、日本油脂株式会社のブレンマーシリーズ、PE−90、同200、同350,PME−100、同200、同400、同1000、PP−500、同800、同1000、AP−150、同400、同550、同800、50PEP−300、50POEP−800B等が挙げられる。
上記(d)成分及び(e)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(a)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性等の観点から、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。
(b)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性、印字濃度向上等の観点から、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、特に好ましくは5〜35重量%である。
(c)成分の含有量は、印字濃度等の観点から、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは10〜60重量%である。
(a)成分の含有量と、(b)成分と(c)成分の合計含有量との重量比((a)/[(b)+(c)])は、得られる水系インクの長期保存安定性、吐出信頼性等の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.7、更に好ましくは0.05〜0.5である。
(e)成分の含有量は、吐出信頼性、分散安定性等の観点から、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜30重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
(a)成分と(d)成分との合計含有量は、水中での安定性、耐水性等の観点から、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは7〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。
また、(a)成分と(e)成分の合計含有量は、水中での分散安定性、吐出信頼性等の観点から、好ましくは5〜75重量%、より好ましくは7〜50重量%、更に好ましくは10〜40重量%である。
(a)成分と(d)成分と(e)成分との合計含有量は、水中での分散安定性及び吐出信頼性の観点から、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは7〜50重量%、更に好ましくは10〜40重量%である。
水不溶性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、前記モノマー混合物を共重合させることによって製造されるが、これらの重合法の中では、溶液重合法の場合に、特に高光沢性や高印字濃度等の効果が好適に得られる。
溶液重合法で用いる溶媒としては、水不溶性ポリマーと親和性の高い極性有機溶媒が好ましく、水に対する溶解度が20℃において、50重量%以下のものが好ましく、5重量%以上のものが好ましい。極性有機溶媒としては、例えば、ブトキシエタノール等の脂肪族アルコール;トルエン、キシレン等の芳香族類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ブトキシエタノール、又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加することができる。
モノマー混合物の重合条件は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、通常、重合温度は30〜100℃、好ましくは50〜80℃であり、重合時間は1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価(KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
塩生成基がカチオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価(HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]}×100
酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から算出することができるが、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して滴定する方法を用いて求めることもできる。
着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子は、次の工程(a)及び(b)により、水分散体として得ることが好ましい。
工程(a):水不溶性ポリマー、有機溶媒、着色剤、水及び必要により中和剤を含有する混合物を、分散処理する工程
工程(b):前記有機溶媒を除去する工程
前記工程(a)では、まず、前記水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に着色剤、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、前記有機溶媒に加えて混合し、水中油型の分散体を得ることが好ましい。混合物中、着色剤は、5〜50重量%が好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、水不溶性ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、水は、10〜70重量%が好ましい。水不溶性ポリマーが塩生成基を有する場合、中和剤を用いることが好ましいが、中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記水不溶性ビニルポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
アルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトン及びメチルエチルケトンが好ましく、特に、メチルエチルケトンが好ましい。これらの溶媒は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
中和剤としては、水不溶性ポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。中和剤としては、前記のものを用いることができる。
着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の平均粒径は、分散安定性、吐出性の観点から、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは70〜170nm、特に好ましくは70〜150nmである。
着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子のD90(散乱強度の頻度分布における、小粒子側から計算した累積90%の値)は、粗大粒子を減らして分散体の保存安定性を高める観点及び記録媒体の光沢性向上の観点から、800nm以下が好ましく、500nm以下が更に好ましく、300nm以下が特に好ましく、その下限は、100nm以上が好ましく、120nm以上が更に好ましい。それらの観点から、前記D90は、100〜800nmが好ましく、100〜500nmが更に好ましく、120〜300nmが特に好ましい。
なお、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の平均粒径及びD90は、ポリマー粒子の平均粒径と同じ測定方法により求めることができる。
水系インク中における着色剤の含有量は、分散安定性、印字濃度等を高める点から1〜20重量%が好ましく、3〜10重量%が更に好ましい。
着色剤が水不溶性ポリマーに含有されてなる場合、水不溶性ポリマーと着色剤の量比は、印字濃度を高める等の観点から、〔着色剤/水不溶性ポリマー〕の重量比が、好ましくは50/50〜90/10、より好ましくは50/50〜80/20、更に好ましくは55/45〜78/22である。
水系インク中、水の含有量は、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%である。
本発明で用いる記録媒体は、インクジェット記録方式に適用できるものであれば特に制限はなく、紙、プラスチック、及びそれらの複合物等が挙げられる。
紙としては、パルプ繊維を水中に分散し湿式抄紙して得られるシート状物であり、パルプ繊維を主成分として含有し、パルプ繊維同士が水素結合やバインダーで互いに結合した状態になっているパルプシートが好ましい。具体的には、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ等をパルプ原料として得たパルプシート、例えば、上質紙、中質紙、上更紙、更紙、帳簿用紙、ケント紙、色上質紙、グラビア紙、複写紙、タイプ紙、コピー紙、グラシン紙等が挙げられる。本発明によれば、普通紙にも、光沢性の優れた写真印刷物や、印字物を得ることができるため、本発明の効果を発揮させるにはインク受容層を有しない、上質紙、中質紙、コピー紙等の通常、普通紙と言われる非塗工紙が好適である。
本発明で好適に使用し得る記録媒体の具体例としては、例えば、ゼロックス社製の商品名、ゼロックス4024、キヤノン株式会社製のPB用紙、株式会社リコー製のPPC用紙マイペーパー等の市販の普通紙が挙げられる。
なお、記録媒体としては、空隙型インク受容層やアルミナ系インク受容層を有する、通常、光沢紙、写真用紙と言われるものも使用することができる。
本発明は、塗工インク及び水系インクを用いて、記録媒体に下記工程1及び2を順次施す、インクジェット印刷方法である。
工程1:インクジェット記録方式により、該記録媒体の全部又は一部に、カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカチオン性ポリマー粒子と、カチオン性界面活性剤とを配合してなる塗工インクを、塗工処理する工程
工程2:工程1で得られた該記録媒体の塗工処理した部分に、着色剤を含有する水系インクを、インクジェット記録方式により重ねて印刷する工程
塗工する領域は、記録媒体の全部、即ち全面であってもよく、一部であってもよく、工程2で得られる印刷画面の光沢性の要求に応じて、決めることができる。例えば、工程2で写真画像を印刷する場合、その部分だけを予め工程1で塗工しておくことができる。
本発明においてインクジェット記録方式は制限されないが、特にピエゾ方式のインクジェットプリンタに好適である。
本発明のインクセットは、カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカチオン性ポリマー粒子と、カチオン性界面活性剤とを配合してなる塗工インクと、着色剤を含有する水系インクとから構成されるインクセットであって、インクジェット記録方式により、該塗工インクを塗工処理し、その塗工処理部分に該水系インクを重ねて印刷する、インクセットである。
インクセットは、水系インクとして、2種以上の異なる色、好ましくは有彩色のインクを備えていることが好ましい。ここで、「異なる色」とは、日本電色工業株式会社の分光式色差計SE−2000等を用いて、印刷物をD65/2の光の波長で反射光を測定し、L*a*b*表色系で表示したとき、a*(赤−緑方向の色度)とb*(黄−青方向の色度)が同一でない色をいう。例えば、シアン、イエロー、マゼンタ、ライトシアン、ダークイエロー、及びライトマゼンタからなる群から選ばれる2種以上の有彩色等が挙げられる。
本発明のインクセットは、これらの有彩色から選ばれる2色以上の水系インクの組み合わせを含むことが好ましく、3色インクセット、4色インクセット、5色インクセット、6色インクセット、7色インクセット以上のいずれであってもよい。
より好ましくは、減法混色の3原色であるマゼンタインク、イエローインク及びシアンインクから選ばれる2色以上の異なる色の水系インクを備えたインクセットであり、これら3色のインクを備えたインクセットが特に好ましい。本発明のインクセットは、更に、自己分散型カーボンブラック等のブラックインクを備えていてもよい。
製造例1(カチオン性ポリマー粒子1の製造)
2L−セパラフルフラスコにイオン交換水600部、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(花王株式会社製のコータミン86W、有効分28%)71.4部、を添加し、73℃設定の温浴で加熱・攪拌し、内温67℃まで昇温させた。次いで水溶性開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬株式会社製のV−50)1.0部と、スチレン200部とを添加し、3時間加熱攪拌を行った。冷却後、得られた混合液から凝集物を200メッシュ濾過(目開き;約75μm)し、得られた濾過液をエバポレーターにより加熱濃縮し、冷却後、濃縮液を1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、イオン交換水で調整することで、カチオン性ポリマー粒子1を得た(固形分(有効分)含有量20%、平均粒径52nm)。
製造例1において用いたステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの仕込み量を47.6部、に変えて、製造例1と同様に行い、カチオン性ポリマー粒子2を得た(固形分(有効分)含有量20%、平均粒径93nm)。
反応容器内に、メチルエチルケトン20部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.25部、及び(a)メタクリル酸/(b)スチレンマクロマー(商品名:AS−6S:東亜合成株式会社製)/(c)ベンジルメタクリレート/(e)NKエステルEH―4E(新中村化学工業株式会社製のオクトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、エチレンオキサイドの平均付加モル数:4)=15/30/50/5(有効分重量比)のモノマー混合物250部の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、上記モノマー混合物の残りの90%を仕込み、前記重合連鎖移動剤2.25部、メチルエチルケトン40部及びラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))2.5部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記ラジカル重合開始剤3部をメチルエチルケトン30部に溶解した溶液を加え、更に65℃で3時間、70℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。次に、このポリマー溶液に、メチルエチルケトンを適量添加し、攪拌することにより、固形分含有量(有効分含有量)が50%のポリマー溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量は、前述の方法により、約2万であった。
得られたペーストをイオン交換水で希釈(約10%)し、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分(有効分)含有量が20%の顔料含有粒子の水分散体を得た。
上記で得られた顔料含有粒子の水分散体25部、グリセリン10部、2−{2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ}エタノール5部、ヘキサンジオール2部、アセチレングリコールEO付加物(平均付加モル数:10)(川研ファインケミカル株式会社製、商品名:アセチレノールE100)0.5部及びイオン交換水57.5部を混合し、得られた混合液を1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、水系マゼンタインクを得た。
シアンインクについては、シアン顔料〔C.I.ピグメント・ブルー15:4、大日精化株式会社製、商品名:クロモファイン・ブルー4965〕を使用し、イエローインクについては、イエロー顔料〔C.I.ピグメント・イエロー74、山陽色素株式会社製、商品名:ファーストイエロー7414〕を使用して、同様の方法で水系シアンインク及び水系イエローインクを得た。
得られたポリマー粒子の平均粒径は、マゼンタは99nm、シアンは81nm、イエローは111nmであり、D90は、マゼンタは157nm、シアンは130nm、イエローは218nmであった。
自己分散カーボンブラック(オリヱント化学工業株式会社製、商品名:CW−2、固形分15%)55.3部、グリセリン15部、2−{2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ}エタノール5部、ヘキサンジオール2部、アセチレングリコールEO付加物(平均付加モル数:10)(川研ファインケミカル株式会社製、商品名:アセチレノールE100)0.5部及びイオン交換水22.2部を混合し、得られた混合液を前記メンブランフィルターで濾過し、黒色インクを得た。
カチオン性ポリマー粒子1(固形分(有効分)含有量20%、平均粒径52nm)75部、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(花王株式会社製のコータミン86W、有効分28%)2.25部、2−{2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ}エタノール5部、ヘキサンジオール2部、アセチレングリコールEO付加物(平均付加モル数:10)(川研ファインケミカル株式会社製、商品名:アセチレノールE100)0.5部及びイオン交換水15.25部を混合し、得られた混合液を1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、水系塗工インク1を得た。
カチオン性ポリマー粒子2(固形分(有効分)含有量20%、平均粒径93nm)75部、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(花王株式会社製のコータミン86W、有効分28%)1.6部、2−{2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ}エタノール5部、ヘキサンジオール2部、前記アセチレングリコールEO付加物0.5部及びイオン交換水15.9部を混合し、得られた混合液を前記メンブランフィルターで濾過し、水系塗工インク2得た。
カチオン性ポリマー粒子1(固形分(有効分)含有量20%、平均粒子径52nm)75部、2−{2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ}エタノール5部、ヘキサンジオール2部、前記アセチレングリコールEO付加物0.5部及びイオン交換水17.5部を混合し、得られた混合液を前記メンブランフィルターで濾過し、水系塗工インク3得た。
カチオン性ポリマー粒子2(固形分(有効分)含有量20%、平均粒径93nm)75部、2−{2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ}エタノール5部、ヘキサンジオール2部、前記アセチレングリコールEO付加物0.5部及びイオン交換水17.5部を混合し、得られた混合液を前記メンブランフィルターで濾過し、水系塗工インク4得た。
市販のセイコーエプソン株式会社のインクジェットプリンタ(品番:EM−930C、ピエゾ方式)のブラックインクを、表1に示すように、上記塗工インク1〜4に置き換えて、記録媒体に塗工処理及び印刷を行った。
記録媒体として、ゼロックス社製、普通紙「ゼロックス4024」を用意し、これに上記塗工インクを普通紙フォトモード(双方向印刷オフ)でベタ印刷することによって、塗工を行った。3回繰り返し塗工を行うことによって、塗工させた。塗工量が多い方が、吐出性がよい。
なお、塗工インク中のカチオン性ポリマー粒子の塗工量(g/m2)(単位面積当たりの塗工量)は、塗工インクを同印刷条件でOHPシート(セイコーエプソン株式会社製、商品名:MJOHPS1N)に印刷した後、水を蒸発(20℃、12時間)させた残存量(塗工後に水を蒸発させたOHPシートの重量−塗工前のOHPシートの重量)から、下記式により求めた。
塗工量(g/m2)=残存量(g)×(塗工インク中の微粒子の含有率(重量%))×〔1/[100−塗工インク中の水の含有率(重量%)]〕×[1/塗工したOHPシートの面積(m2)]
印刷は、同プリンターにより、上記製造例3で得られた水系インク(イエローインク、マゼンタインク、シアンインク)、及び上記製造例4で得られた黒色インクを用い、記録媒体をフォトモードで、塗工処理した部分に重ねてベタ印刷を行った。
画像にじみは、塗工処理した部分に重ねてカラーインク(シアンインク、イエローインク、マゼンタインク)単色及び黒色インクでベタ印刷し、得られた印刷物のカラーインク(シアンインク、イエローインク、マゼンタインク)単色ベタ印刷部と黒色インクベタ印刷部の境界のにじみを下記評価基準に従って目視により評価し、各色の評価の平均値を求めた。
〔評価基準〕
◎:全くにじみなし
〇:ややにじみあり
△:明らかににじみあり
実施例2と比較例2とを比較した場合、カチオン性ポリマー粒子由来のカチオン性界面活性剤の含有量が同じであるにもかかわらず、実施例2で得られた印刷物は、塗工インク調製時にカチオン性界面活性剤を配合することにより、光沢性に優れ、にじみがないことが分かる。
Claims (6)
- 塗工インク及び水系インクを用いて、記録媒体に下記工程1及び2を順次施す、インクジェット印刷方法。
工程1:インクジェット記録方式により、該記録媒体の全部又は一部に、カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカチオン性ポリマー粒子と、カチオン性界面活性剤とを配合してなる塗工インクを、塗工処理する工程
工程2:工程1で得られた該記録媒体の塗工処理した部分に、着色剤を含有する水系インクを、インクジェット記録方式により重ねて印刷する工程 - 塗工インク中の全カチオン性界面活性剤の含有量が、0.5〜10重量%である、請求項1に記載のインクジェット印刷方法。
- カチオン性ポリマー粒子を構成するポリマー中における、疎水性モノマー由来の構成単位の含有量が、50〜100重量%である、請求項1または2に記載のインクジェット印刷方法。
- 塗工インクに配合するカチオン性界面活性剤(イ)と、カチオン性ポリマー粒子由来のカチオン性界面活性剤(ロ)との重量比((イ)/(ロ))が、1/1〜1/5である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- カチオン性ポリマー粒子の平均粒径が、10〜400nmである、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- カチオン性界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカチオン性ポリマー粒子と、カチオン性界面活性剤とを配合してなる塗工インクと、着色剤を含有する水系インクとから構成されるインクセットであって、インクジェット記録方式により、該塗工インクを塗工処理し、その塗工処理部分に該水系インクを重ねて印刷する、インクセット。
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