JP2008093657A - 乳化安定剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】食品としての安全性が確立され調達容易なデンプンを原料として、良好な乳化安定性を発揮すると共に広汎な添加目的に利用可能であり、さらに油脂分の酸化抑制効果も発揮しうるデンプン由来の乳化安定剤を提供する。
【解決手段】油脂含有組成物のための乳化安定剤であって、ワキシーコーンスターチまたはコーンスターチを主原料とするデンプンを溶解糊化しこれに超音波を照射したデンプン分散物からなる。もしくは、ワキシーコーンスターチまたはコーンスターチを主原料とするデンプンを溶解糊化しこれに超音波を照射したデンプン分散物を乾燥して得られた乾燥物からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、乳化安定剤に関し、特にデンプンから調製されており、油脂分の乳化及びその酸化抑制効果も併せ持つ乳化安定剤に関する。
水と油とを好適に分散させて均一に混和することは乳化と呼ばれ、食品加工業を始め、機械工業、汚水処理等の広汎な分野において利用される。最も簡便な乳化方法は、攪拌である。しかし、時間経過と共に水同士、油同士で会合し分離してしまう。そのため、水と油とを攪拌する場合、適宜のプロペラ・反応容器、ホモジナイザー等を用いて物理的に微細な小滴を形成し、個々の粒子を分散させて油水間の相分離を防いでいる。
さらに乳化の効率を高めるため、乳化剤として界面活性剤等の両親媒性物質が添加される。食品添加の用途にあっては、マヨネーズ、ドレッシング、マーガリン、バター等の含油脂製品、さらには、油脂製品を含む生地等にも用いられている。とりわけ、食品添加用途においては、種々のグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が利用される。加えて、安全志向からできる限り天然物を用いたいとする要望も多く、サポニン、レシチン、アラビアゴムも用いられる。しかしながら、天然物から得られる乳化剤は価格面で割高となりやすい。また、品質面、生産量において常時安定しているとは言い難く、価格変動の影響を常に受けてしまう。
そこで、低価格であり、供給量の安定したデンプンを用いることが着目されている。糊化や液化を経たデンプンは、油脂分と混合時に油脂分との複合体を形成することが知られている。ところが、糊化や液化したデンプンでは経時と共に老化し、油水の複合体が破壊され、相分離を生じさせてしまう。加えて、糊化のみのデンプンにあっては、粘着性や付着性を発現するものの油脂分との混合時の物理的な妨げとなる。結果として、所望の乳化安定性能は得られていなかった。
このような問題点に対し、オクテニルコハク酸エステル化デンプン等の官能基を付加した化工デンプンを用い対処している(特許文献1参照)。その一方、無水1−オクテニルコハク酸のデンプンに対する使用量規制もあり、万全とはいえない。
上記の事案に対し、レシチン等の乳化剤を補助する目的から液状化を軽度に留めたデンプン加水分解物を用いることにより、安定した乳化性能を得ていた(特許文献2参照)。特許文献2のデンプン加水分解物は、ブドウ糖当量(DE)7〜30の範囲にあるデキストリンである。ところが、適度なブドウ糖当量に分解したデキストリンのみを用いた場合では、所望の乳化性能を得ることはできない。すなわち、デキストリンは他の乳化剤を補助しているに過ぎなかった。
その後も、デンプンの改質化について種々検討が行われている。例えば、デンプンのペースト状物に対する電離放射線(γ線)の照射がある(特許文献3参照)。デンプン粒子に湿熱処理と共に酵素を作用させて中空を形成し、ここに油分を担持させるデンプンの粒子がある(特許文献4参照)。酵素を作用させて中空を形成後に粉砕し、ここに油分を担持させるデンプンの粒子がある(特許文献5参照)。
特許文献3のような電離放射線の照射の場合、得られたデンプン誘導体において架橋促進がみられるものの油分と水分の乳化を得ることはできない。また、特許文献4及び5のデンプン粒子の場合にあっては、個々の粒子構造が保持されている用途に限られる。このため、油分と水分の乳化状態を維持したまま広汎な食品添加を検討する場合に不向きである。
上記のとおり、油分と水分の安定化(すなわち油脂の乳化)を検討してきた。その一方、乳化に際しては個々の粒子が細かくなるため、油水間の接触表面積が増す。つまり、油脂は水分中に溶解している酸素による酸化の影響から不可避となる。通常、酸化防止目的からアスコルビン酸、カロテン、トコフェロール等のビタミン類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が用いられる。さらに、乳化安定と酸化防止の両立を図る安定剤がある(特許文献6参照)。特許文献6の安定剤はマンニトール等の糖アルコールであり、これを油水に添加後、ホモジナイズし乳化している。しかし、糖アルコールは必ずしも十分な乳化性能を発揮できていない。従って、乳化と油脂の酸化防止を好適に兼具する素材は得られていなかった。
特開2005−333949号公報 特開平4−258242号公報 特開2001−329070号公報 特許第3638645号公報 特開平10−182701号公報 特開平8−259943号公報
デンプンは低廉に入手可能であり、保存性に優れ、しかも安全面においては周知である。そこで、発明者らは、上記背景技術の知見を踏まえデンプンには改良の余地があることを確信して、引き続きデンプンに着目し鋭意研究を重ねた。すると、発明者らは、超音波照射を伴ったデンプン糊化物の適度な分散物が、油分・水分間における乳化作用に非常に優れていることを発見した。さらに、同分散物が油脂の酸化劣化の抑制に良好であることも発見した。
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、食品としての安全性が確立され調達容易なデンプンを原料として、良好な乳化安定性を発揮すると共に広汎な添加目的に利用可能であり、さらに油脂分の酸化抑制効果も発揮しうるデンプン由来の乳化安定剤を提供する。
すなわち、請求項1の発明は、油脂含有組成物のための乳化安定剤であって、デンプンを溶解糊化しこれに超音波を照射したデンプン分散物からなることを特徴とする乳化安定剤に係る。
請求項2の発明は、前記デンプン分散物が超音波照射した液状物を乾燥して得られた乾燥物である請求項1に記載の乳化安定剤に係る。
請求項3の発明は、前記デンプン分散物がワキシーコーンスターチを主原料とする請求項1又は2に記載の乳化安定剤に係る。
請求項4の発明は、前記デンプン分散物がコーンスターチを主原料とする請求項1又は2に記載の乳化安定剤に係る。
請求項1の発明に係る乳化安定剤によると、油脂含有組成物のための乳化安定剤であって、デンプンを溶解糊化しこれに超音波を照射したデンプン分散物からなるため、調達容易なデンプンを原料としながらも、デキストリンよりも良好な乳化安定性を得ることができる。また、化工デンプンのように化学的処理も必要としない。さらには油脂分の酸化抑制効果も発揮することが可能な乳化安定剤を得ることができる。
請求項2の発明に係る乳化安定剤によると、請求項1の発明において、前記デンプン分散物が超音波照射した液状物を乾燥して得られた乾燥物であるため、乳化安定剤としての防腐や保存、取り扱いやすさが向上する。
請求項3の発明に係る乳化安定剤によると、請求項1又は2の発明において、前記デンプン分散物がワキシーコーンスターチを主原料とするため、糊化時の安定性に優れ、容易に安定した乳化作用を得ることができる。
請求項4の発明に係る乳化安定剤によると、請求項1又は2の発明において、前記デンプン分散物がコーンスターチを主原料とするため、糊化時の安定性に優れ、容易に安定した乳化作用を得ることができることに加えて、安価に原料調達が可能である。
以下添付の図面に基づきこの発明の好適な実施形態を説明する。
図1は第1実施形態の乳化安定剤の概略工程図、図2は第2実施形態の乳化安定剤の概略工程図である。
本発明の乳化安定剤は、請求項1に規定されるように、油脂含有組成物に添加されて、当該組成物中の油脂分と水分との間の乳化を促進する安定剤である。併せて、油脂分が水分中に溶解する酸素により酸化劣化することも抑制する酸化抑制能力も有する安定剤である。
ここで油脂分とは、酪酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等の脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)を示し、列記の脂肪酸を含んだトウモロコシ油、大豆油、菜種油、オリーブ油、ごま油、亜麻仁油、綿実油、紅花油、ひまわり油、しそ油、落花生油、やし油、魚油等の油類、ラード、ヘット、乳脂等の脂類である。この他、各種のトリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール類、ろう(ワックス)に加え、ホスファチジルコリン等のリン脂質、テルペン類、ステロール類も含めることができる。
油脂含有組成物とは、列記の油脂分を含有する食品、飲料、化粧品、医薬品、食品添加物等が該当する。この油脂含有組成物には、「水分中に油脂分が存在(例えばドレッシング等)」または「油脂分中に水分が存在(例えばマーガリン等)」のいずれの組成形態も含む。これに加え、機械用の洗浄油、潤滑油、切削油、エンジンオイル等の各種工業油も該当する。
図1の概略工程図を用い請求項1の発明である第1実施形態の乳化安定剤を説明する。乳化安定剤は安価であり調達容易なデンプンを出発原料とする。デンプンは、いったん水等の水分に分散後、加熱等により適度にデンプン結晶中に水分子が入り込んだ状態、すなわち糊化される(S11)。次に、糊化したデンプン溶液に対して超音波が照射され、物理的なエネルギーが加わりデンプン分子の低分子量化が促進する(S12)。こうして、超音波照射により適度に低分子量化したデンプン分子を水等に分散させている液状物(デンプン分散物)が第1実施形態の乳化安定剤(P1)である。
さらに、各工程の詳細を述べる。糊化(S11)において、デンプン糊化時の粘度は、デンプンの種類、添加水分量、乳化安定性能をはじめ、設備面等より好適に勘案される。たいてい、デンプンは0.2〜40Pa・sの粘度範囲内に調製される。特に、工程間の流動性等が考慮されるため、デンプンは0.2〜4Pa・sの粘度範囲内に調製されることが好ましい。
デンプンを溶解する場合、作業効率の面から温水、熱水が用いられる。加えて、製品となる乳化安定剤の添加用途に合わせて、水以外に塩水、糖蜜水、調味料を溶解させた溶液、スープ(ブイヨン)、出汁、たれ、つゆ等にデンプンを溶解させて、呈味のデンプン糊化物とすることも可能である。この場合、添加対象となる食材の水分希釈が回避される。
超音波照射(S12)において、照射する超音波は、20kHz〜1MHzの一般的な周波数であり、超音波発振器の出力も100〜2000Wの適宜である。極端に低い周波数の場合、超音波照射に伴う振動、衝撃等のエネルギーは低くなり、デンプンのゲル状化には寄与しない。著しく高い周波数の場合、過度にデンプンが液状化して低分子量化が進みすぎ、乳化の安定性が確保されないおそれがあり得る。なお、照射時間は周波数、出力、最終的な粘度等により総合的に規定される。
超音波照射に用いる処理槽、超音波振動子、超音波発振器等は、生産規模や処理能力等を勘案して適切に選択される。デンプン糊化物に対する超音波照射は、逐次回分式あるいは連続式のいずれであっても良い。
続いて図2の概略工程図を用い請求項2の発明である第2実施形態の乳化安定剤を説明する。第1実施形態の場合と同様に、デンプンは、いったん水等の水分に分散後、加熱等により適度にデンプン結晶中に水分子が入り込んだ状態、すなわち糊化される(S21)。次に、糊化したデンプン溶液に対して超音波が照射され、物理的なエネルギーが加わりデンプン分子の低分子量化が促進する(S22)。超音波照射により低分子量化されたデンプン分子を水等に分散させている液状物(デンプン分散物)が乾燥され、乾燥物に加工される(S23)。この乾燥物が第2実施形態の乳化安定剤(P2)である。溶解・糊化(S21)、超音波照射(S22)は、第1実施形態の乳化安定剤(P1)にて詳述した装置、手法と同様であるため、その説明を省略する。
乾燥(S23)においては、凍結乾燥、真空ドラムドライヤによる乾燥、噴霧乾燥(スプレードライ)等が用いられる。乾燥することにより、防腐や保存、取り扱いやすさ等の利便性が向上する。デンプン由来の乳化安定剤は、もとより呈味や風味維持が所望されていないため、量産性に優れた噴霧乾燥が用いられる。乾燥物の形状は、粉末状あるいはフレークのような不定形状等、限定されない。なお、油分・水分間への拡散性能の観点から、粉末状であることが好ましく、必要に応じて粒径の分級が行われる。
第2実施形態の原料デンプンの糊化に際し、水以外の塩水や調味料液を用いるならば、呈味を有するデンプン分散物の乾燥品が得られる。このような乾燥物は、食品添加用途として、食材の味を薄めることがなくなり、食品全体としての味のバランスを保つ上で好ましい。ただし、調味料液にデンプン分子を分散させている場合、風味の減退を避けるため、真空ドラムドライヤ等を用いることが好ましい。
これまでに述べた乳化安定剤の原料となるデンプンは、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、ライムギ、コメ、サツマイモ(甘藷デンプン)、ジャガイモ(馬鈴薯デンプン)、エンドウ、緑豆、タピオカ等に由来する。通常、アミロペクチン量が高いほど糊化後に沈澱や固化を生じにくい傾向にあると考えられるため、請求項3の発明に規定するように、このデンプン分解物には、ワキシーコーンスターチを主原料として用いられる。ワキシーコーンスターチは、ほぼ全量アミロペクチンから構成される。これに加えて、後述の実施例にも示され、請求項4の発明に規定するように、デンプン分解物には、コーンスターチを主原料として用いることができる。コーンスターチを用いた場合、ワキシーコーンスターチと比較して非常に良好な乳化安定性能を得ることができる(実施例参照)。さらに、安価に調達可能であるため製造原価を抑えることができる。
デンプン由来の乳化安定剤の製造において、作業の簡便さから通常1種類の原料デンプン(ワキシーコーンスターチ、あるいはコーンスターチのみ)を適度に制御しながら超音波照射することにより得られる。さらには、原料デンプンを別々に超音波照射して分散し、予め異なるデンプン分散物同士を事後的に所望の割合で混合して乳化安定剤を調製することもできる。むろん、原料デンプンの超音波照射に当たり、単一種類のデンプンを異なる照射量毎に調製して事後混合する方法や、複数種類のデンプンを異なる照射量毎に調製して事後混合する方法等、適宜に選択できる。この方法の利点は次のとおりである。例えば、原料デンプンを調達するに当たり、原料の収穫地、収穫時期、収穫年等の環境要因による品質の変動がありうる。そこで、事後的にデンプン分散物同士を混ぜ合わせることにより、極力品質を安定させることができる。
後述の実施例に開示するとおりデンプンを溶解糊化して超音波を照射したデンプン分散物によって、油脂分と水分との乳化作用は認められる。しかし、超音波照射を経たデンプン分散物による乳化に関する作用機構の詳細は現時点で不明である。発明者らは、当該作用機構として次の機構を推定している。一般的に糊化したデンプンにおいては、膨潤することによりデンプン結晶を構成する糖鎖間に水分子が侵入し、水分子が抱きかかえられたネットワーク状の高分子構造を形成している。そのため、デンプン糊に見られる特有の付着性や弾力性を発現している。糊化したデンプンに対し超音波が照射された場合、前記のネットワーク状の高分子構造が適度に破壊される。この結果、水との親和性を維持したまま液状化する。同時に、デンプンの高分子構造が適度に維持されていることから、疎水部分(親油性部分)も保存される。つまり、水分と油分の双方への親和性を併存させることができるものと考えることができる。
また、背景技術において開示したように、水分と油脂分とを攪拌して乳化させた場合、水分中に溶解している酸素やラジカル種によって油脂分は酸化され、劣化することが知られている。これは二重結合を含む不飽和脂肪酸ほど顕著である。特に、乳化に伴って油脂分は細粒化し、水分と油脂分との接触表面積は増大するため、油脂分の酸化の影響は決して無視できない。既述のとおり、本発明として開示する超音波照射を経たデンプンは、乳化安定剤としての機能を有する。その後、発明者らは、水分、油脂分、デンプン由来の乳化安定剤の経時変化を追跡する中において、超音波照射を経たデンプンは混入された油脂分の酸化劣化の抑制効果も発見した(後記実施例参照)。
一方、超音波処理自体が油脂分の乳化に多用されていることから、予めデンプンと油脂分とを混合して超音波処理を行い、乳化することも可能である。ただし、本発明におけるデンプンの酸化抑制効果は超音波処理後のデンプンに発現することが確認されている。このため、予めデンプンと油脂分を混合した超音波処理の場合には効果が薄く、逆に強力な超音波処理により油脂分の酸化劣化が生じやすい点に留意すべきである。従って、デンプンを単独、または劣化を生じにくい素材のみを混和して超音波処理を行った後に油脂分と混和を行うことが望ましい。
本発明のデンプン由来の乳化安定剤に起因する油脂分の酸化劣化の抑制効果は、現状明らかとはされていない。この作用についても発明者らは次のとおり考える。前述の乳化の作用機構と同様に、糊化したデンプンに対する超音波照射により、デンプンの高分子構造が適度に維持され、疎水部分(親油性部分)も保存される。この場合の水分と油分の双方への親和性に伴い、油脂分の疎水部分がデンプンにより保護され、油脂分の疎水部分と水分との接触が低減されるものと考える。こうして、油脂分の疎水部分が被る酸化劣化がより抑制される。
従って、本発明のデンプン由来の乳化安定剤にあっては、安定した乳化性能に加えて酸化抑制能力も兼ね備えるため、水分と油脂分とを乳化させた食品、飲料、医薬品、化粧品、食品添加物等に好適に用いられる。特に、従前のデンプン(化工デンプン)やデキストリン等のように他の乳化剤との併用としなくとも、単独での使用において十分な乳化安定性能を発現しうる。ゆえに、水分と油脂分のみからなる単純な組成物の場合であっても有効である。具体的に、食品、飲料の分野においては、マヨネーズ、ドレッシング、スープ、ルー、クリーム、マーガリン等に添加される他、これらから加工される食品にも当然に含まれる。医薬品、化粧品の分野においては、外用薬としての乳液、または、薬剤を担持したマイクロカプセルを製造する際にも有効である。この他、微生物を用いる工業用油の廃油処理分野においても乳化剤となるため有益である。自明ながら、デンプンは天然物であるため、環境負荷が極めて少なく、デンプンの乳化安定剤自体も栄養分となる利点もある。
また、超音波照射を経たデンプン分散物由来の乳化安定剤によると、水分と油脂分とからなる油脂含有組成物をいったん乳化した後に、その中から水分を乾燥によって除去してデンプン分散物と油脂分との混合固形物を得ることもできる。おそらく、デンプンの高分子構造が適度に維持された結果、疎水部分(親油性部分)も保存され、油脂分の疎水部分がデンプンにより保護される。乾燥時には、デンプンによる保護を受けていない水分の蒸発が進み、油脂分のみがデンプンに取り残されたものと考えられる。
これには油脂分を担持する賦形剤としての効果が期待される。また、液体で取り扱われていた油分を固化するため、油分の保存、計量、充填の性能が向上し、上記の食品、化粧品、医薬品等への用途も有望である。
[分析機器]
数平均分子量(Mn)の測定に当たり、HPLCによるゲル濾過クロマトグラフ法とした。同装置の示差屈折検出器は株式会社島津製作所製:RID−10A、ポンプは株式会社島津製作所製:LC−10ADvp、カラムオーブンは株式会社島津製作所製:CTO−10ASvp、カラムは東ソー株式会社製TSKgel α−M(7.8×300mm)とした。
各試作例並びに比較例のいずれも、1重量%(w/v)の濃度に純水に希釈して溶解し、0.45μmのメンブレンフィルターを用いて濾過後、前記のHPLCに装填して計測した。キャリアには純水を用い、流速1.0mL/分、カラム温度80℃とした。分子量標準物質として昭和電工株式会社製:SHODEX STANDARD P−82(プルラン;重量平均分子量787000,194000,46700,5900)を用いた。
[超音波の照射]
超音波分散機(株式会社ギンセン製:商品名「GSD1200CVP」)を用い、周波数20kHz、出力1200Wの条件下、約50℃の液温を維持しながら、糊化したデンプンに超音波照射した。超音波の照射時間を変えることにより、デンプンが受けるエネルギー量を制御した。
[粘度の計測]
超音波照射に伴うデンプン糊化物におけるデンプン分子の低分子量化の評価は、デンプン糊化物の粘度変化を指標とした。粘度は、日本薬局方の一般試験法における粘度測定法に準拠し、粘度分析装置(東機産業株式会社製:商品名「TVB−10M」)を用い粘度(Pa・s)を測定した。
[デンプンの分散化:試作例1,2,3,4の調製]
原料デンプンとしてワキシーコーンスターチ(日本食品化工株式会社製:商品名「ワキシースターチ」)を用い、これに水を加え、ミニクッカー(ノリタケエンジニアリング株式会社製)により糊化した。次に、上記の超音波分散機を用いて同様の照射条件、温度の下で4種類の照射時間により超音波照射し、試作例1ないし4のデンプン分散物溶液を調製した。各試作例1ないし4はいずれも20重量%の濃度であり、粘度並びに数平均分子量Mnの測定結果は下記表1のとおりである。
Figure 2008093657
[乳化安定性の評価]
上記調製により得られた試作例1ないし4のデンプン分散物の乳化安定性を調べるため、各試作例の溶液と食用油を混合した後、円筒形のガラス製容器(直径40mm、高さ120mm)に各試作例の溶液と食用油との混合物を100mLずつ移し、室温で3日間静置して油層、混和層、水層の分離の有無について概観を確認した。
試作例1ないし4のデンプン分散物の添加量に関し、いずれの試作例とも最終重量(400g)中に固形分重量換算として1重量%(固形分4g含有)、5重量%(固形分20g含有)、8重量%(固形分32g含有)、10重量%(固形分40g含有)を満たすように各試作例の溶液とも量を変えながら食用油200gとを混合し、適量の水を添加して最終重量400gに合わせて混合した後、室温で3日間静置し層分離の概観を確認した。
試作例1について試作例1−1:1重量%、試作例1−2:5重量%、試作例1−3:8重量%、試作例1−4:10重量%のとおり対応し、試作例2について試作例2−1:1重量%、試作例2−2:5重量%、試作例2−3:8重量%、試作例2−4:10重量%のとおり対応し、試作例3について試作例3−1:1重量%、試作例3−2:5重量%、試作例3−3:8重量%、試作例3−4:10重量%のとおり対応し、試作例4について試作例4−1:1重量%、試作例4−2:5重量%、試作例4−3:8重量%、試作例4−4:10重量%のとおり対応する。各試作例の重量%は固形分重量換算による数値である。
食用油はサラダ油(日清オイリオグループ株式会社製:商品名「日清サラダ油」)を使用した。混合に際してはホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製:商品名「TK HOMOMIXER」),ローター(TYPE M)を使用し、12000回転、15分回転攪拌により十分に懸濁した。
超音波照射を経たデンプン分散物と比較するため、比較例にデキストリンと未処理のデンプンを用いた。
・比較例1
ワキシーコーンスターチ原料デキストリン(フタムラスターチ株式会社製:商品名「FSD−301」)を用い、これを20重量%のデキストリン溶液とした(比較例1)。比較例1の数平均分子量は3100であった。比較例1のデキストリン溶液を用い、最終重量(400g)中に固形分重量換算として1重量%(固形分4g含有;比較例1−1)、5重量%(固形分20g含有;比較例1−2)、8重量%(固形分32g含有;比較例1−3)、10重量%(固形分40g含有;比較例1−4)を満たすように各試作例の溶液とも量を変えながら食用油200gとを混合し、適量の水を添加して最終重量400gに合わせて混合した後、室温で3日間静置し層分離の概観を確認した。
・比較例2
試作例1ないし4と同様のワキシーコーンスターチ(日本食品化工株式会社製:ワキシースターチ)を用い、これに水を加え、前出のミニクッカー(ノリタケエンジニアリング株式会社製)により糊化し、同様に20重量%の濃度の糊化デンプン溶液とした(比較例2)。比較例2の数平均分子量及び粘度については粘性が高く測定不能であった。比較例2のデキストリン溶液を用い、最終重量(400g)中に固形分重量換算として1重量%(固形分4g含有;比較例2−1)、5重量%(固形分20g含有;比較例2−2)、8重量%(固形分32g含有;比較例2−3)、10重量%(固形分40g含有;比較例2−4)を満たすように各試作例の溶液とも量を変えながら食用油200gとを混合し、適量の水を添加して最終重量400gに合わせて混合した後、室温で3日間静置し層分離の概観を確認した。
試作例1−1ないし試作例4−4と、比較例の結果は、下記表2である。乳化安定性の分離度は、「(静置後の分離した油層の体積)÷(静置開始時点のガラス製容器に存在する食用油の換算体積)×100」とする体積百分率により算出した。なお、全量分離とは、当初の添加した油の全量がほぼそのまま分離した状態である。例えば、静置後に分離した油分:50mL、当初添加油量:50mLとなる場合、全量分離であるため、分離度は100%となる。表中の評価の項目は、分離度を踏まえた総合判断に基づく。“○”は乳化安定性において問題なし。“△”は乳化安定性が一部劣る。“×”は乳化安定性が確認できず使用に適さない。
Figure 2008093657
[乳化安定性の結果・考察]
いずれの試作例、比較例とも、同一濃度の油分・水分間における固形分存在量はほぼ同量である。表2から超音波照射を受けたデンプン分散物の乳化安定性能は明らかである。特に、重量の半分を油脂分が占めるような油脂分が多い状態であっても乳化安定性能が得られる。このことは、超音波照射を受けたデンプン分散物は広汎な分野に適応可能であることを示唆する。
超音波照射を受けたデンプン分散物の数平均分子量は約40×104〜100×104の範囲にある(試作例1ないし4)。これに対して、比較例のデキストリンは酵素により非常に軽度に加水分解されたDE1(デキストロース当量)の数平均分子量約3000である。また、比較例のデンプンは数平均分子量100×104を超過していることが予想される。試作例のデンプン分散物は、これらのいずれの分子量範囲と異なる。
ワキシーコーンスターチを原料デンプンとして用いた場合の検証によると、油分・水分の安定した乳化状態を得るためには、数平均分子量は概ね数十万であることが好ましいものと考える。また、当該分子量によると、全体におけるデンプン分散物の濃度に関わらず効果を発揮している。そこで、発明者らは、超音波照射を経たデンプン分散物が安定した乳化状態とする要因を以下のとおり考える。
背景技術に開示した特許第3638645号等のように、デンプンの粒子形状を維持しながら多孔化することにより吸油性は向上する。この作用は、デンプン粒子内部は親油性とされているためである。ところが、比較例2の糊化デンプンのとおり、親油性は、加熱糊化によりデンプンの粒状構造が崩壊した後では、著しく喪失する。つまり、デンプンの糊化に伴う高粘度化、付着性の上昇により、本来デンプン分子が有する親油性部分に油脂分は到達し難くなったことを要因と考える。
次に、比較例1のデキストリンのとおり、酵素的にデンプンを分解して液状化する場合、数平均分子量が数千前後の鎖長に分解してしまうため、親油性部分が保持されず親油性そのものが消失してしまうことが推定できる。一般に糊化したデンプンを酵素により液化させる方法にあっては、DE1のように極めて低い分解度に制御しても数平均分子量は約3000にまで低分子化してしまう。さらにDEを低減しようとすると、高粘度下のデンプンと酵素の十分な混和、反応の制御にかなりの技術的困難性が伴うことから、酵素処理の手法の実現性は低いものと予想できる。
これに対し、超音波照射を経たデンプン分散物の試作例1,試作例2のように数平均分子量を数十万とする適度に分解が進行した巨大分子の場合、一般に糊化デンプンに見られる高粘度化や付着性上昇の影響が低減される。そのため、油脂分は比較的容易に到達可能となり、総じて安定した複合体を形成することが想定できる。
[乳化安定性の実証評価]
発明者らは、上記のとおり超音波照射を受けたデンプン分散物の乳化安定性に確信を得た後、さらに多様な油脂分と混合して乳化の効果の検証を行った。併せて、ワキシーコーンスターチ以外にもコーンスターチをはじめとする他のデンプンについても乳化安定性を前出の分離度により評価した。評価結果は、表3のとおりである。
・試作例5
試作例1のワキシーコーンスターチを原料デンプンとして用い、これに水を加え、同ミニクッカーにより糊化した。前記の超音波分散機を用いて試作例1と同様の照射条件、温度の下で超音波照射し、温度50℃にて粘度0.266Pa・s、濃度20重量%のデンプン分散物溶液を調製した。このデンプン分散物溶液25gに大豆油(関東化学株式会社製)100g、水75gを添加し、前出と同様のホモジナイザー、ローターを使用し、12000回転、15分回転攪拌により十分に懸濁した。その後静置し、1日後、7日後の外観を分離度として観察した。下記の試作例16,試作例17においては、超音波照射の時間を適宜加減しながら、ほぼ試作例5の粘度付近に調整した。
・試作例6
油脂分を試作例1で使用したサラダ油(日清オイリオグループ株式会社製:商品名「日清サラダ油」)とした以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例7
油脂分をごま油(日清オイリオグループ株式会社製:商品名「香りひきたつごま油」)とした以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例8
油脂分をマーガリン(雪印乳業株式会社製:商品名「雪印ネオソフト」)とした以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例9
油脂分をバター(雪印乳業株式会社製:商品名「きれてる雪印北海道バター」)とした以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例10
油脂分をオリーブ油(株式会社J−オイルミルズ製:商品名「OLIVE OIL」)とした以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例11
油脂分をヤシ油製化粧油(株式会社生活の木製:商品名「ハンドメイドギルドベースオイルCOCONUT OIL ココナッツオイル(化粧油)」)とした以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例12
油脂分をマカダミアナッツ油製化粧油(株式会社生活の木製:商品名「ハンドメイドギルドベースオイルMACADAMIA NUT マカダミアナッツオイル(化粧油)」)とした以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例13
油脂分を一般工業用潤滑油(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製:商品名「コスモオルパス68」)とした以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例14
油脂分を工業用コンプレッサー潤滑油(出光興産株式会社製:商品名「ダフニーニューロータリーコンプレッサーオイル」)とした以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例15
油脂分を工業用タービン潤滑油(出光興産株式会社製:商品名「ダフニータービンオイル」)とした以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例16
デンプンをワキシーコーンスターチからコーンスターチ(フタムラスターチ株式会社製)に変更した以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例17
デンプンをワキシーコーンスターチから馬鈴薯デンプン(東海澱粉株式会社製)に変更した以外、全て試作例5と同一の条件とした。
・試作例18
原料デンプンとしてコーンスターチ(フタムラスターチ株式会社製)を用い、これに水を加え、同ミニクッカーにより糊化した。前記の超音波分散機を用い、試作例1と同様の照射条件及び温度を適用し、超音波照射の時間を制御することにより、温度80℃にて粘度0.830Pa・s、濃度20重量%のデンプン分散物溶液を調製した。このデンプン分散物溶液25gに大豆油(試作例5と同じ)100g、水75gを添加し、前出と同様のホモジナイザー、ローターを使用し、12000回転、15分回転攪拌により十分に懸濁した。その後静置し、1日後、7日後の外観を分離度として観察した。なお、試作例18は試作例16の超音波照射条件を変更した例に相当する。
・試作例19
油脂分を試作例6と同じサラダ油とした以外、全て試作例18と同一の条件とした。
・試作例20
油脂分を試作例7と同じごま油とした以外、全て試作例18と同一の条件とした。
・試作例21
油脂分を試作例8と同じマーガリンとした以外、全て試作例18と同一の条件とした。
・試作例22
油脂分を試作例9と同じバターとした以外、全て試作例18と同一の条件とした。
・試作例23
油脂分を試作例10と同じオリーブ油とした以外、全て試作例18と同一の条件とした。
・試作例24
油脂分を試作例11と同じヤシ油製化粧油(ココナッツオイル)とした以外、全て試作例18と同一の条件とした。
・試作例25
油脂分を試作例12と同じマカダミアナッツ油製化粧油とした以外、全て試作例18と同一の条件とした。
・試作例26
油脂分を試作例13と同じ一般工業用潤滑油とした以外、全て試作例18と同一の条件とした。
・試作例27
油脂分を試作例14と同じ工業用コンプレッサー潤滑油とした以外、全て試作例18と同一の条件とした。
・試作例28
油脂分を試作例15と同じ工業用タービン潤滑油とした以外、全て試作例18と同一の条件とした。
・比較例3
上記試作例16,18等に用いたコーンスターチに水を加え、同ミニクッカーにより糊化し、濃度20重量%の糊化デンプン溶液とした。この糊化デンプン溶液を用い、以降の処理を試作例18と同様にして懸濁後、静置して観察した。比較例3はコーンスターチにおける超音波照射の有無の対照例である。
Figure 2008093657
[実証評価の結果・考察]
表3に示すとおり、超音波照射を受けたデンプン分散物の脂肪酸等を主体とする油脂分の乳化に関する実証効果は確認できた。この差は比較例3との対比から明白である。油脂分毎の乳化安定性の差は、組成成分の相違、あるいは添加剤の影響を受けるものと考えられる。この結果より、食品用、医薬品、化粧品等の分野の乳化剤としては性能を確保しうる。また、工業用油の乳化についても有効であることが確認できた。
デンプンの種類毎に見られる乳化安定性の相違について、当初、アミロペクチンに存在する糖鎖が分岐した分子構造の保存性が影響していると考えられていた。そこで、ほぼアミロペクチンからなるワキシーコーンスターチを主体に検証を進めてきた。しかし、ワキシーコーンスターチよりもアミロペクチン含有量が少ない一般的なコーンスターチとの比較によると、超音波照射の条件いかんによっては乳化安定性の油脂分全般の改善が明らかとなった。とりわけ、工業用油の乳化安定性の向上が顕著である。発明者らは、アミロペクチンの分岐した分子構造の保存性に加え、アミロースのらせん状の直鎖構造も存在していることから、アミロース鎖による油脂分の捕捉も乳化に寄与しているものと推定する。原料デンプンの種類は、超音波照射の条件に加え、添加する食品、医薬品等の用途、乳化性能、価格をはじめとする要因に応じて適切に選択することができる。
[油脂吸着性能の検証]
超音波照射を受けたデンプン分散物の新たな機能を調査すべく、油脂吸着性能を検証した。
・実験例1
試作例1において調製したワキシーコーンスターチ使用のデンプン分散物溶液40gにサラダ油(試作例6と同じ)40g、水160gを添加し、前出と同じのホモジナイザー、ローターを使用し、12000回転、15分回転攪拌により十分に懸濁した。その後この懸濁物をステンレス製のバットに広げ、100℃で加温して乾燥した。
・実験例2
試作例18において調製したコーンスターチ使用のデンプン分散物溶液40gに実験例1と同量のサラダ油、水を添加し、同様の条件により懸濁、乾燥した。
・比較例4
比較例4では、実験例1のデンプン分散物溶液を前出の比較例1に用いたデキストリン溶液(濃度20重量%)に変更した以外は全て実験例1と共通の条件とした。
・比較例5
比較例5では、実験例1のデンプン分散物溶液を前出の比較例2に用いた糊化デンプン溶液(濃度20重量%)に変更した以外は全て実験例1と共通の条件とした。
[油脂吸着性能の結果・考察]
実験例1、実験例2、比較例4、比較例5において、実験例1と実験例2より乾燥物を得た。しかし、比較例はいずれも油分が浸出し乾燥物を得られなかった。実験例、比較例とも、ほぼ同様の固形分量、油分量である。実験例1,2のみ、加熱に伴う油分の分離を防止し、乾燥物を生じさせている。つまり、超音波照射を受けたデンプン分散物(乾燥物)は、高温下においても油脂分を安定的に保持している。得られた結果において、デンプン種による相違(ワキシーコーンスターチとコーンスターチとの違い)は特になく、いずれも乾燥することができた。なお、当該デンプン分散物と油脂分の混合後の乾燥には、適宜の装置を用いることが可能である。例えば、スプレードライ等を用いることにより、均質な粉末物を得ることができる。
この結果から、超音波照射を受けたデンプン分散物は油脂分を担持する賦形剤としても十分に有効である。そこで、食品、医薬品、化粧品等の分野への応用性も高く、粉末油脂の製造、脂溶性薬剤やビタミン類の担持体の用途が検討できる。
[酸化抑制効果の検証]
超音波照射を受けたデンプン分散物は油脂分との間に安定した複合体を形成していることを推定した発明者らは、当該安定性に起因した酸化抑制効果の存在も仮定した。そこで、酸化抑制効果も検証した。酸化抑制効果の評価に当たり、株式会社講談社発行「新版食品化学実験(2005年発行,第3版)74ページ」に記載の過酸化物価(POV)の測定方法に基づき、「過酸化物のmg当量/1kg油脂量」を算出し評価した。この結果は表4のとおりである。
・実験例3
試作例1において調製したワキシーコーンスターチ使用のデンプン分散物溶液40gに大豆油(試作例5と同じ)200g、水160gを添加し、前出と同じのホモジナイザー、ローターを使用し、12000回転、15分回転攪拌により十分に懸濁した(固形分量2%)。その後、この懸濁物50gをネジ口スピッツ管(内容量:50mL)に注ぎ、封栓して室温に静置した。過酸化物価は、懸濁直後、5日経過後、28日経過後に測定した。
・実験例4
試作例18において調製したコーンスターチ使用のデンプン分散物溶液40gに実験例3と同量の大豆油、水を添加し、同様の条件により懸濁後、同期間静置した。
・比較例6
比較例6では、実験例3のデンプン分散物溶液を前出の比較例1に用いたデキストリン溶液(濃度20重量%)に変更し、このデキストリン溶液50gに大豆油(試作例5と同じ)200g、水150gを添加した(固形分量2.5%)。以降の攪拌、測定は全て実験例3と共通の条件とした。
・比較例7
比較例7では、水200gに大豆油(試作例5と同じ)200gを添加した。以降の攪拌、測定は全て実験例3と共通の条件とした。
Figure 2008093657
[酸化抑制効果の結果・考察]
実験例3及び実験例4は、いずれも比較例7との対比から酸化の進行を抑制していることがわかる。特に経過時間が長くなるほど顕著であり、しかも、低濃度においても効果がある。得られた結果において、デンプン種による相違(ワキシーコーンスターチとコーンスターチとの違い)はほとんど無く、両方とも同程度の効果を示した。比較例6のデキストリンにおいても酸化抑制効果は見られるものの、実験例3,4の効果には及ばない。
この結果を踏まえ、発明者らは、超音波照射を受けたデンプン分散物は油脂分との間に複合体を形成することにより、油脂分の疎水部分を水中の溶存酸素、その他ラジカル種から保護していることを予想する。
以上のとおり、実施例に開示した超音波照射を受けたデンプン分散物は、乳化安定性及び酸化抑制効果を併せ持つ知見を得た。ゆえに、超音波照射を受けたデンプン分散物は、食品等の油脂含有組成物の乳化安定と酸化抑制の両面を兼備する極めて有用な特性を有し、幅広い分野への応用が可能である。
第1実施形態の乳化安定剤の概略工程図である。 第2実施形態の乳化安定剤の概略工程図である。

Claims (4)

  1. 油脂含有組成物のための乳化安定剤であって、
    デンプンを溶解糊化しこれに超音波を照射したデンプン分散物からなることを特徴とする乳化安定剤。
  2. 前記デンプン分散物が超音波照射した液状物を乾燥して得られた乾燥物である請求項1に記載の乳化安定剤。
  3. 前記デンプン分散物がワキシーコーンスターチを主原料とする請求項1又は2に記載の乳化安定剤。
  4. 前記デンプン分散物がコーンスターチを主原料とする請求項1又は2に記載の乳化安定剤。
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