JP2008079580A - ハタハタ卵巣の凍結加工品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ハタハタ卵巣を加熱処理した後、凍結処理する工程を含み、解凍後もハタハタ卵巣の粘りと卵の柔らかさが保持されることを特徴とする、ハタハタ卵巣の凍結加工品の製造方法、および、該製造方法によって得られたハタハタ卵巣の凍結加工品を用いて製造された飲食物を提供する。
【選択図】 なし
Description
なお、本発明者らは、ハタハタ卵巣からの粘質物の分離に既に成功し、特許出願している(特許文献1参照)。
それ故、ハタハタ卵巣の保存には、ゼリー状粘質物の保持と卵硬化の問題点を解決する必要があるが、現状では本課題を解決できる方法は報告されていない。
その結果、卵巣を加熱した後に凍結保存したものは、解凍、調理後も本来のゼリー状粘質物と卵の柔らかさを保持していることを見出した。すなわち、卵巣を加熱するとそのゼリー状粘質物は膨潤し、一旦膨潤したゼリー状粘質物は凍結・解凍しても変化がなく、魚卵の硬化も見られなくなった。
本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成したのである。
請求項2に係る本発明は、ハタハタ卵巣が魚体中にあり、かつ、加熱処理が、ハタハタの魚肉部分を加熱することなく、卵巣のみを加熱するものである、請求項1に記載の製造方法である。
請求項3に係る本発明は、ハタハタ卵巣が魚体中にあり、かつ、加熱処理をマイクロ波加熱により行う、請求項1又は2に記載の製造方法である。
請求項4に係る本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法によって得られたハタハタ卵巣の凍結加工品を用いて製造された飲食物である。
請求項1に係る本発明のハタハタ卵巣の凍結加工品の製造方法は、ハタハタ卵巣を加熱処理した後、凍結処理する工程を含み、解凍後もハタハタ卵巣の粘りと卵の柔らかさが保持されることを特徴とするものである。
加熱処理方法としては特に限定されず、例えば温水に浸漬するなどの水中加熱、マイクロ波などの電磁波加熱、ヒーター加熱、水蒸気加熱、ジュール加熱など通常の方法で行うことができる。
魚体中の卵巣のみを選択的に加熱することができる方法としては、例えば、マイクロ波加熱による方法や、放卵口から腹腔内に棒状のヒーター等を挿入する方法、ジュール加熱による方法などが挙げられる。
なお、ジュール加熱とは、加熱の対象となる物質に交流電流を直接流し、その電気抵抗によってその物質自体を発熱させて加熱する技術である。ジュール加熱によって魚体中の卵巣のみを選択的に加熱する方法としては、例えば、電極で卵巣を外からはさみ込むようにして腹部に電極を当てながら電流を流す方法が挙げられる。
具体的には、ハタハタの腹部以外はマイクロ波を遮断するアルミホイルなどの素材で覆い、腹部を露出させた状態で、マイクロ波を当てることにより加熱すればよい。
あるいは、マイクロ波をハタハタの腹部に導波管を用いて部分照射することにより、卵巣のみを加熱してもよい。
さらに、例えば、ジュール加熱によりハタハタ卵巣を加熱する場合の条件は、5〜20kHz好ましくは20kHzで1〜60分、好ましくは3〜20分とすることができる。
凍結処理条件、方法としては特に制限はなく、例えばまず、ハタハタ卵巣が凍結しない0〜5℃に予冷した後、−10℃以下、好ましくは−30〜−50℃まで、急速凍結庫などによる通常の方法で凍結すればよい。
また、凍結後は−10〜−50℃で約2年間まで保存することができるが、特に限定されない。
なお、本発明の凍結加工品の解凍条件、方法は特に限定されない。
このように、本発明の方法によって得られた凍結加工品を用いて製造された飲食物を提供するのが、請求項4に係る本発明である。
成熟した3歳の生ハタハタメス(秋田県男鹿市産)から採卵し、卵巣を得た(図1、2)。この卵巣をポリプロピレン製袋に入れて密封し、70℃の温水に15分浸漬し、直ちに冷却水で5℃まで冷却した。その後、−30℃の凍結庫で凍結し、−20℃で12ヶ月保存した。
次に、室温で自然解凍した卵巣をポリプロピレン製袋から取り出し、蒸留水を加えて70℃まで攪拌しながら加熱すると、粘質物と魚卵が分離して、魚卵はさらに個々に分離した。分離した粘質物の量と粘り、および魚卵の硬さを、以下の方法で分析した(加熱)。
粘質物の粘りの評価は、上記の如く分離回収した粘質物について、10人のパネラーによる官能評価により行った。評価は◎:よく粘る(4点)、○:粘る(3点)、△:粘りが弱い(2点)、×:粘りがない(1点)の4段階で行い、平均を表1に示す。
魚卵の硬さの評価は、上記の如く分離回収した魚卵について、10人のパネラーによる官能評価により行った。評価は◎:柔らかい(4点)、○:やや柔らかい(3点)、△:やや硬い(2点)、×:硬い(1点)の4段階で行い、平均を表1に示す。
その結果、表1のように、加熱処理した卵巣のほうが明らかに粘質物量が多く、よく粘っていた。
※粘質物量=B/A+B (A=卵固形分、B=粘質物固形分)
成熟した3歳の生ハタハタメス(秋田県男鹿市産)の放卵口から腹腔内に棒状のヒーター(60W)を挿入し、卵巣の中心部が70℃に達してから約5分加熱した(ヒーター加熱)。この方法によると、ハタハタの魚肉は加熱されず生のままで、卵巣のみを加熱することができた。
また、生ハタハタメスの腹部以外はマイクロ波を遮断するアルミホイルで覆い、腹部は露出させた状態で、卵巣の中心部が70℃で約10分加熱されるマイクロ波加熱処理(100W、2450MHz)を行った(マイクロ波加熱)。この方法でも、ハタハタの魚肉は加熱されず生のままで、卵巣のみを加熱することができた。
上記の方法で加熱したハタハタメスおよび加熱処理を行わない生ハタハタメス(無処理ハタハタ)を、−30℃の凍結庫で急速凍結させ、−20℃で12ヶ月保存した。次いで、実施例1と同様に室温で自然解凍した後、卵巣を魚体から取り出し、蒸留水を加え70℃まで攪拌しながら加熱すると、粘質物と魚卵が分離して、魚卵はさらに個々に分離した。分離した粘質物量と魚卵の硬さを測定した。
一方、加熱処理も凍結保存も行わない生ハタハタの卵巣についても、上記と同様に粘質物と魚卵を分離して分析した。
また、ハタハタ卵の硬さは、円柱状プランジャ(φ10mm)を装着した単軸圧縮・引張型レオメータを用いて圧縮速度1mm/s、ひずみを0.8に設定し、ハタハタ卵一粒の硬さを測定した。圧縮時の最大力(N)を卵の硬さ(破断力)と定義した。測定結果を図4に示す。
また、加熱処理をマイクロ波加熱により行ったハタハタ卵巣は、ヒーター加熱によるものよりも粘質物量が多く、生ハタハタに近い量となることが分かった。
成熟した3歳の生ハタハタメス(秋田県男鹿市産)を、実施例2と同様にマイクロ波加熱処理を行った(マイクロ波加熱)。一方、生ハタハタメス全体を70℃で15分蒸気加熱した(全体加熱)。
上記の方法で加熱したハタハタメスおよび加熱処理を行わない生ハタハタメス(非加熱)を、−30℃の凍結庫で凍結させ、−20℃で12ヶ月保存した。
この3種類の冷凍ハタハタを自然解凍したものを用いて、以下のようにして秋田県の郷土料理である「しょっつる鍋」を調理した。
すなわち、ハタハタに対して約30%の食塩を加え、約2年間発酵・熟成させて得られた魚醤の一種である「しょっつる」で味付けした出汁に、上記の解凍したハタハタメスや、ネギ、豆腐等を加えて「しょっつる鍋」を作った。
粘りの評価は◎:よく粘る(4点)、○:粘る(3点)、△:粘りが弱い(2点)、×:粘りがない(1点)の4段階で行った。硬さの評価は◎:柔らかい(4点)、○:やや柔らかい(3点)、△:やや硬い(2点)、×:硬い(1点)の4段階で行った。また、肉質および総合は、それぞれ◎:大変良い(4点)、○:良い(3点)、△:やや悪い(2点)、×:悪い(1点)の4段階評価を行った。各評価結果の平均を表2に示す。
一方、生ハタハタメスをそのまま凍結保存したものは、魚肉の肉質は良好であるが卵巣の粘質物の粘りが少なく、魚卵は硬くなり、凍結していない生のハタハタを使用した場合とはほど遠い食感であった。
Claims (4)
- ハタハタ(Arctoscopus japonicus)卵巣を加熱処理した後、凍結処理する工程を含み、解凍後もハタハタ卵巣の粘りと卵の柔らかさが保持されることを特徴とする、ハタハタ卵巣の凍結加工品の製造方法。
- ハタハタ卵巣が魚体中にあり、かつ、加熱処理が、ハタハタの魚肉部分を加熱することなく、卵巣のみを加熱するものである、請求項1に記載の製造方法。
- ハタハタ卵巣が魚体中にあり、かつ、加熱処理をマイクロ波加熱により行う、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法によって得られたハタハタ卵巣の凍結加工品を用いて製造された飲食物。
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