ところで、特許文献1のエジェクタ式冷凍サイクルを作動させる際、サイクル内を循環する循環冷媒流量(圧縮機11吐出流量)を低流量に減らすと、サイクル効率が低下していく。
これは、循環冷媒流量が低流量になると、ノズル部15aに流入する冷媒流量も低下するために、ノズル部冷媒流量(Gnoz)×ノズル部出入口間エンタルピ差(ΔHnoz)で表される減圧膨張時の運動エネルギーが低下するからである。そして、減圧膨張時の運動エネルギーが低下すると、回収エネルギーの絶対量も低下し、圧縮機吸入圧力低下あるいは吸引冷媒流量の低下が生じ、冷凍能力低下および圧縮機省動力効果の低下を引き起こすからである。
ところが、実際に特許文献1のエジェクタ式冷凍サイクルを作動させて、循環冷媒流量を所定流量から低流量へ減らした際のサイクル効率の低下度合は、上述の回収エネルギー低下に起因するサイクル効率の低下度合よりも、大きくなってしまう。
そこで、本発明者らがその原因について調査したところ、循環冷媒流量が低流量になると、圧縮機11を潤滑するために冷媒中に混入された冷凍機油が蒸発器20内に滞留してしまうことが原因であると判明した。
その理由は、循環冷媒流量の低下によって回収エネルギーが低下してしまうと、アキュムレータ22から蒸発器20内に流入した冷凍機油を吸引冷媒とともにエジェクタ15内に吸引してサイクルを循環させることができなくなるからである。つまり、冷媒が蒸発器20内で気化した後の高粘度の冷凍機油を蒸発器20から吸引することができなくなり、冷凍機油が蒸発器20内に滞留してしまう。
そして、冷凍機油が蒸発器20内に滞留すると、冷凍機油が冷媒から吸熱してしまうために蒸発器20の空気との熱交換能力を低下させる。また、冷凍機油が蒸発器20の冷媒通路を塞いで半閉塞・閉塞状態となり、吸引冷媒の圧損増加や流れの間欠化に伴うサイクル安定性悪化を引き起こす。さらに、圧縮機11への冷凍機油の戻り量が減少して圧縮機11の潤滑不足を起こす原因にもなってしまう。
本発明は、上記点に鑑み、循環冷媒流量が低流量になっても充分なサイクル効率向上効果を得ることを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明では、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、圧縮機(11)から吐出された高圧冷媒を放熱させる放熱器(12)と、放熱器(12)出口側冷媒の流れを分岐する分岐部(Z)と、分岐部(Z)で分岐された一方の冷媒を減圧膨張させるノズル部(15a)から噴射する高速度の冷媒流によって、冷媒を冷媒吸引口(15d)から吸引し、高速度の冷媒流と冷媒吸引口(15d)からの吸引冷媒とを混合してディフューザ部(15f)で昇圧させるエジェクタ(15)と、分岐部(Z)で分岐された他方の冷媒を減圧膨張させる絞り手段(19)と、絞り手段(19)下流側の低圧冷媒を蒸発させて、冷媒吸引口(15d)上流側に流出する蒸発器(20)とを備え、圧縮機(11)を潤滑する冷凍機油として、液相冷媒に対して溶解性を有するオイルが採用されているエジェクタ式冷凍サイクルを特徴とする。
これによれば、冷凍機油として液相冷媒に対して溶解性を有するオイルが採用されているので、放熱器(12)下流側の液相冷媒に適正な濃度の冷凍機油を溶かし込むことができる。さらに、放熱器(12)下流側に設けられた分岐部(Z)で冷媒の流れを分岐して、分岐された冷媒を蒸発器(20)へ流入させるので、循環冷媒流量に依存することなく、蒸発器(20)へ流入する冷媒の冷凍機油の濃度を適正な値に維持できる。
しかも、分岐部(Z)から蒸発器(20)を介して冷媒吸引口(15d)へ至る冷媒流路をエジェクタ(15)に対して並列的な接続関係にしているので、圧縮機(11)の冷媒吸入、吐出能力を利用して蒸発器(20)へ流入した冷媒を冷媒吸引口(15d)へ導出させることができる。従って、循環冷媒流量が低流量になって、エジェクタ(15)の回収エネルギーが低下しても、上述したサイクル効率低下および機能低下を抑制できる。
また、特許文献1に記載のサイクル構成に対し、本件記載のサイクル構成は分岐部で気液分離する構造をとらないため、冷媒吸引口(15d)に接続される蒸発器(20)内に流入する冷凍機油濃度が小さく、蒸発器(20)内に冷凍機油が滞留してしまうことを抑制でき、充分なサイクル効率向上効果を得ることができる。なお、上記の冷凍機油の適正な濃度とは、蒸発器(20)内に付着した冷凍機油が蒸発器(20)における冷媒の吸熱作用を阻害しない範囲の濃度を意味している。
また、上記特徴のエジェクタ式冷凍サイクルにおいて、圧縮機は密閉式圧縮機(11)であってもよい。
ここで、密閉式圧縮機(11)とは、圧縮機の外殻を構成する密閉容器(11c)内に、流体(冷媒)を圧縮する圧縮機構部(11a)、および、この圧縮機構部(11a)を駆動させる駆動機構部(11b)を収容したものである。
さらに、後述する実施形態で説明するように、密閉型圧縮機(11)では、密閉容器(11c)内部へ吸入された流体(冷媒)が、密閉容器(11c)内を通過して圧縮機構部(11a)の圧縮室に流入する間に、圧縮機構部(11a)、駆動機構部(11b)等から受熱して加熱されるようになっている。
ところで、エジェクタ式冷凍サイクルでは、ディフューザ部(15f)で冷媒を昇圧させて、圧縮機(11)に吸入される冷媒の密度を上昇させている。そして、この冷媒の密度上昇によって、圧縮機(11)の吐出流量を増加させることができるので、サイクル効率の向上を図ることができる。
そこで、本発明者らは、吸入冷媒の加熱の有無によって、圧縮機構部(11a)の圧縮室へ流入する冷媒の密度がどのように変化するかについて調査した。図3は、その調査結果を示し、吸入冷媒の加熱有りの条件での冷媒密度の変化を実線でプロットし、吸入冷媒の加熱無しの条件での冷媒密度の変化を破線でプロットしている。
また、吸入冷媒圧力(C)はエジェクタ(15)を有しないサイクルにおける圧縮機構部(11a)の圧縮室へ流入する冷媒圧力を示し、吸入冷媒圧力(D)はエジェクタ(15)を有するサイクル(具体的には、後述する一実施形態のサイクル)における圧縮機構部(11a)の圧縮室へ流入する冷媒圧力を示している。従って、D−Cはディフューザ部(15f)の昇圧量を示している。
図3によれば、冷媒の加熱有り条件での冷媒密度の上昇量(Δρh)は、冷媒の加熱無し条件での冷媒密度の上昇量(Δρn)に対して、大きくなっていることが判る。このことは、吸入冷媒を加熱することによって、ディフューザ部(15f)の昇圧による吸入冷媒の密度上昇効果が、拡大されることを意味する。
さらに、本発明者らは、循環冷媒流量と冷媒密度の上昇率との関係について調査したところ、図4に示すように、循環冷媒流量が少なくなる程、冷媒密度の上昇率が増加することが判った。これは、循環冷媒流量が少なくなる程、吸入冷媒の温度が上昇しやすくなるからである。
なお、冷媒密度の上昇率とは、吸入冷媒が加熱されない場合のディフューザ部(15f)の昇圧による密度上昇量に対する、吸入冷媒が加熱される場合のディフューザ部(15f)の昇圧による密度上昇量の比である。
従って、密閉式圧縮機(11)を採用することで、循環冷媒流量が低流量になっても、ディフューザ部(15f)の昇圧による吸入冷媒の密度上昇効果を拡大して、充分なサイクル効率向上効果を得ることができる。
また、上述の特徴のエジェクタ式冷凍サイクルにおいて、冷媒は、HC系冷媒であってもよい。
ここで、一般的に、冷凍サイクルの冷媒としてHC系冷媒を採用すると、例えばフロン系冷媒を採用した場合に対して、同一条件時のサイクルバランスにおいて、その作動圧力を大幅に低下できることから、圧縮機の負荷低減によりサイクル効率を向上させやすいという利点がある。
その一方で、HC系冷媒(例えば、イソブタン)の液相冷媒の密度に対する気相冷媒の密度の気液密度比(気相冷媒の密度/液相冷媒の密度)は、例えば二酸化炭素の気液密度比と比較して極めて小さい。そのため、気相冷媒の流速と液相冷媒の流速にとの間に差が発生しやすい。
エジェクタ式冷凍サイクルにおいては、ノズルにて減圧膨張する際に液冷媒が沸騰(気化)するため、ノズル内で気化したガス冷媒流速と、気化せず流出する液冷媒流速の速度差が大きく生じてしまう。この損失によってノズル出口の運動エネルギーが低下し、回収エネルギー低下およびサイクル効率低下を引き起こし易い特徴がある。
そのため、特許文献1のエジェクタ式冷凍サイクルにHC系冷媒を採用すると、サイクル効率も低下しやすい。
これに対して、上述の特徴のエジェクタ式冷凍サイクルでは、前述の如く、循環冷媒流量が低流量になっても圧縮機(11)の冷媒吸入、吐出能力を利用でき、さらに、蒸発器(20)内へ流入する冷凍機油の濃度を適正な濃度に維持できるので、HC系冷媒使用時においてもエジェクタ式冷凍サイクルのサイクル効率向上効果を充分に得ることができるとともに、上記したHC系冷媒を採用することの効果を得ることができる。
さらに、圧縮機として密閉式圧縮機(11)を採用すれば、可燃性のHC系冷媒が外部に漏れることを防止できるので、エジェクタ式冷凍サイクルの安全性を向上させることもできる。
また、上述の特徴のエジェクタ式冷凍サイクルにおいて、ノズル部(15a)は、冷媒を噴射する冷媒噴射口(15c)を有し、ノズル部(15a)の外周には、冷媒吸引口(15d)から吸引された冷媒が通過する吸引冷媒通路(15g)が設けられており、吸引冷媒通路(15g)の冷媒通路面積(Asuc)は、冷媒噴射口(15c)の冷媒通路面積(Anoz)よりも大きくなっていてもよい。
ところで、特許文献1のサイクルでは、圧縮機(11)吐出冷媒流量のうち全流量がエジェクタ(15)のノズル部(15a)を通過する。そして、このノズル部(15a)を通過するノズル部冷媒流量(Gnoz)の増減に伴って、冷媒吸引口(15d)から吸引される吸引冷媒流量(Ge)も増減する。
さらに、エジェクタ(15)の冷媒吸引力は、ノズル部冷媒流量(Gnoz)の圧力エネルギーおよび流体エネルギーに依存するので、吸引冷媒流量(Ge)は、ノズル部冷媒流量(Gnoz)よりも多くならない。すなわち、特許文献1のエジェクタ式冷凍サイクルでは、ノズル部冷媒流量(Gnoz)に対する吸引冷媒流量(Ge)の流量比(Ge/Gnoz)は、必ず1未満となる。
これに対して、上述の特徴のエジェクタ式冷凍サイクルでは、ノズル部(15a)の上流側で冷媒の流れを分流し、さらに、圧縮機(11)の冷媒吸入、吐出能力を利用して蒸発器(20)へ流入した冷媒を冷媒吸引口(15d)へ導出させることができるので、吸引冷媒流量(Ge)を、ノズル部冷媒流量(Gnoz)よりも多くすることができる。
すなわち、上述の特徴のエジェクタ式冷凍サイクルでは、ノズル部冷媒流量(Gnoz)に対する吸引冷媒流量(Ge)の流量比(Ge/Gnoz)が1以上となった状態でサイクルを運転することができる。
そこで、本発明者らは、上述の特徴のエジェクタ式冷凍サイクルおよび特許文献1のサイクルにおける流量比(Ge/Gnoz)とサイクル効率との関係について調査した。具体的には、上述の特徴のエジェクタ式冷凍サイクルとして、後述する一実施形態のサイクルを用いている。
図5は、その調査結果であり、実施形態のサイクルのサイクル効率を実線でプロットし、特許文献1のサイクルのサイクル効率を破線でプロットしている。図5によれば、特許文献1のサイクルでは、1より僅かに小さい流量比(Ge/Gnoz)においてサイクル効率がピークP2となり、実施形態のサイクルでは、1より大きい流量比(Ge/Gnoz)においてサイクル効率がピークP1となることが判った。
従って、上記の如く、吸引冷媒通路(15g)の冷媒通路面積(Asuc)が、冷媒噴射口(15c)の冷媒通路面積(Anoz)よりも大きくなっていれば、流量比(Ge/Gnoz)を容易に1以上に設定することができ、循環冷媒流量が低流量になっても、充分なサイクル効率向上効果を得やすい。
さらに、本発明者らは、循環冷媒流量が低流量になっている場合に、一実施形態のサイクルにおいて、冷媒噴射口(15c)の冷媒通路面積(Anoz)に対する吸引冷媒通路(15g)の冷媒通路面積(Asuc)の面積比(Asuc/Anoz)とサイクル効率との関係を調査した。
図6は、その調査結果であり、図6によれば、面積比(Asuc/Anoz)が、3≦Asuc/Anoz≦10になっている場合に所望のサイクル効率E以上の値を得られることが判った。
なお、このように流量比(Ge/Gnoz)に対して、面積比(Asuc/Anoz)が比較的大きな値となる理由は、冷媒吸引口(15d)から吸引される冷媒は、蒸発器(20)にて吸熱した後の冷媒なので、ノズル部(15a)に流入する冷媒に対して乾き度が高く、密度が小さくなるからである。
従って、面積比(Asuc/Anoz)を上記の範囲とすることで、より一層、循環冷媒流量が低流量になっても、充分なサイクル効率向上効果を得ることができる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
図1〜6により、本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明のエジェクタ式冷凍サイクル10を業務用冷蔵庫に適用した例の全体構成図である。なお、一般的に、業務用冷蔵庫に適用されたエジェクタ式冷凍サイクルでは、車両用空調装置等に適用される場合に対して、通常運転時にサイクル内を循環する冷媒循環流量(圧縮機11吐出流量)が低流量になる。
まず、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10において、圧縮機11は、冷媒を吸入、圧縮および吐出するもので、具体的には、流体を吸入圧縮する圧縮機構部11aと、この圧縮機構部11aを駆動する駆動機構部である電動モータ11bと、圧縮機構部11aおよび電動モータ11bを収容するケーシング11cとを有して構成される電動式の密閉型圧縮機である。
圧縮機構部11aとしては、スクロール型圧縮機構、ローリングピストン型圧縮機構、ベーン型圧縮機等種々の型式を採用できる。また、電動モータ11bとしては、ACモータ、DCモータ等いずれの型式を採用してもよい。さらに、電動モータ11bは後述する空調制御装置21から出力される制御信号によって回転数制御され、この回転数制御によって圧縮機11の冷媒吐出能力が制御される。
ケーシング11cは、所定の耐圧性を有する密閉容器で形成されており、密閉型圧縮機の外殻を構成するとともに、ケーシング11c内へ冷媒を吸入させる吸入口11dと、ケーシング11cから冷媒を吐出させる吐出口11eとを有している。従って、冷媒は吸入口11dまたは吐出口11eを介することなく、ケーシング11cの内外を出入りすることができない。
また、密閉型圧縮機では、吸入口11dから吸入された冷媒が、ケーシング11内を通過して圧縮機構部11aの圧縮室(図示せず)に流入する間に圧縮機構部11a、電動モータ11b等を冷却するようになっている。つまり、密閉型圧縮機では、吸入口11dから吸入された冷媒が、圧縮機構部11a、駆動機構部11b等から受熱して加熱されるようになっている。
圧縮機11の吐出口11eには、放熱器12が接続されている。放熱器12は圧縮機11から吐出された高圧冷媒と送風ファン12aによって送風された外気(車室外空気)との間で熱交換を行って高圧冷媒を冷却して放熱させる熱交換器である。送風ファン12aはモータ12bによって駆動される電動ファンである。また、モータ12bは後述する空調制御装置21から出力される制御電圧によって回転駆動される。
なお、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルでは、冷媒としてHC系冷媒(具体的には、イソブタン)を採用しており、高圧冷媒が超臨界圧力以上に上昇しない亜臨界サイクルを構成している。従って、本実施形態の放熱器12は冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。
さらに、本実施形態の冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油として、液相状態の冷媒に対して溶解性を有するオイルを採用している。換言すると、冷凍機油として、液相冷媒に対して相容性を有するオイルを採用している。
また、液相冷媒に対する冷凍機油用濃度は、後述する第1、2蒸発器16、20内に流入した冷凍機油が第1、2蒸発器16、20における冷媒の吸熱作用を阻害しない範囲の濃度になっている。
放熱器12の下流側には、冷媒の気液を分離して液相冷媒を溜める気液分離器であるレシーバ13が接続されている。このレシーバ13はタンク状の形状をしており、気相冷媒と液相冷媒の密度差によって気液を分離するものである。従って、レシーバ13の鉛直方向下方側に液相冷媒が溜まる。そして、レシーバ13の底部に設けられた液相冷媒出口から液相冷媒が下流側に導出される。
なお、本実施形態では、放熱器12とレシーバ13とを別体として構成しているが、放熱器12とレシーバ13とを一体に構成してもよい。さらに、放熱器12として、冷媒を凝縮させる凝縮用熱交換部と、この凝縮用熱交換部からの冷媒を導入して冷媒の気液を分離するレシーバ部と、このレシーバ部からの飽和液相冷媒を過冷却する過冷却用熱交換部とを有する、いわゆるサブクールタイプの凝縮器を採用してもよい。
レシーバ13の下流側には、冷媒の流れを分岐する分岐部Zが配置されている。そして、この分岐部Zにおいて分岐された一方の冷媒は、分岐部Zと後述するエジェクタ15のノズル部15a側とを接続するノズル部側配管18aへ流入し、他方の冷媒は、分岐部Zとエジェクタ15の冷媒吸引口16d側とを接続する吸引口側配管18bへ流入する。
ノズル部側配管18aには、可変絞り機構14が設けられている。この可変絞り機構14は、レシーバ13からの高圧液相冷媒を気液二相状態の中間圧冷媒に減圧する機能を果たす。
本実施形態では、可変絞り機構14として周知の温度式膨張弁を採用しており、後述する第1蒸発器16出口側冷媒の過熱度に応じて弁体部(図示せず。)の開度を調整し、それにより、可変絞り機構14を通過する冷媒流量を調整して第1蒸発器16出口側冷媒の過熱度が所定の値に近づくようにしている。
具体的には、温度式膨張弁の弁体には圧力応動手段をなすダイヤフラム機構14aが結合され、ダイヤフラム機構14aは感温筒14bの封入ガス媒体の圧力(第1蒸発器16出口側冷媒の温度に応じた圧力)と、均圧管14cにより導入される第1蒸発器16出口側冷媒圧力とに応じて弁体を変位させ、弁体の開度を調整するようになっている。
可変絞り機構14の出口側には、エジェクタ15が接続されている。このエジェクタ15は冷媒を減圧する減圧手段であるとともに、冷媒を減圧する減圧手段の機能を果たすとともに、高速で噴出する冷媒流の吸引作用によって冷媒の循環を行う冷媒循環手段としての機能を果たす。
ここで、図2により、エジェクタ15の詳細について説明する。図2(a)はエジェクタ15の軸方向断面図であり、(b)は(a)のB−B断面図である。なお、B−B断面は、後述するノズル部15aの先端部における断面である。
本実施形態のエジェクタ15は、ノズル部15aおよびボデー部15bを有して構成されている。ノズル部15aは、ステンレス合金等の金属で形成されており、略円筒状で冷媒の流れ方向に向かって先細りの形状の先端部を有し、この形状に沿って冷媒通路面積を変化させ、冷媒を等エントロピ的に減圧膨張させるようになっている。
従って、ノズル部15aの先細り形状の先端部には、冷媒を噴射する冷媒噴射口15cが形成される。なお、以下の説明では、この冷媒噴射口15cの冷媒通路面積をAnozとする。
また、ノズル部15aは、ボデー部15bの内部に圧入等の方法で固定されており、圧入部(固定部)から冷媒が漏れないようになっている。もちろん、固定部から冷媒が漏れないようになっていれば、接着、溶接、圧接、はんだ付け等の接合手段で接合・固定してもよい。
ボデー部15bは、アルミニウム等の金属で形成されており、図2(a)に示すように、略円筒状の形状になっており、内部にノズル部15aを支持・固定するとともに、混合部15e、ディフューザ部15fが形成され、さらに、ボデー部15bの内外を貫通する冷媒吸引口15dが形成されている。もちろん、上記の機能を有すれば、金属以外の物質(具体的には樹脂等)で形成されていてもよい。
冷媒吸引口15dは後述する第2蒸発器20下流側冷媒をボデー部15b内部に吸引する吸引口であり、ノズル部15aの外周側に配置され、ノズル部15aの冷媒噴射口15cと連通するように設けられている。従って、ノズル部15aの外周には、冷媒吸引口15bから吸引された冷媒が通過する吸引冷媒通路15gが形成される。
なお、以下の説明では、この吸引冷媒通路15gの冷媒通路面積のうち最小値をAsucとする。従って、ノズル部15aの冷媒通路面積をAnozおよび吸引冷媒通路15gの冷媒通路面積Asucは、図2(b)のB−B断面図に示すように表される。
さらに、本実施形態では、AsucがAnozよりも大きくなるように形成されており、具体的には、Anozに対するAsucの面積比Asuc/Anozが、3≦Asuc/Anoz≦10の範囲になるように形成されている。
混合部15eは、ボデー部15bの略中央の内部に形成され、冷媒噴射口15cから噴射された高速度の噴射冷媒と複数の冷媒吸引口15dから吸引された吸引冷媒とを混合する空間で、ノズル部15aおよび冷媒吸引口15dの下流側に配置されている。
ディフューザ部15fは、混合部15eの下流側に配置されて冷媒流れを減速して冷媒圧力を上昇させる昇圧部である。ディフューザ部15fは冷媒の通路面積を徐々に大きくする形状に形成されており、冷媒流れを減速して冷媒圧力を上昇させる機能、つまり、冷媒の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する機能を有する。
さらに、ディフューザ部15fの下流側には、図1に示すように、第1蒸発器16が接続される。第1蒸発器16は、ディフューザ部15fから流出した冷媒と送風ファン16により送風された空気との間で熱交換を行って、冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる熱交換器である。
送風ファン16aはモータ16bにより駆動される電動ファンであり、モータ16bは後述する空調制御装置21から出力される制御電圧によって回転駆動される。さらに、送風ファン16aは冷蔵庫内空気を吸入して送風するようになっており、送風空気は再び冷蔵庫内に吹き出される。
第1蒸発器16の下流側は、内部熱交換器17の低圧側冷媒通路17bの入口側に接続され、低圧側冷媒通路17bの出口側は圧縮機11の吸入側に接続される。
次に、吸引口側配管18bには、上述の内部熱交換器17の高圧側冷媒通路17aが接続され、高圧側冷媒通路17aの下流側には、固定絞り19が接続されている。
内部熱交換器17は、高圧側冷媒通路17aを通過する高温高圧冷媒と低圧側冷媒通路17bを通過する低温低圧冷媒との熱交換を行うものである。そして、内部熱交換器17における冷媒相互間の熱交換によって、吸引口側配管18bを通過する冷媒が冷却されるので、第1蒸発器16および第2蒸発器20における冷媒入口・出口間の冷媒のエンタルピ差(冷却能力)を増大させることができる。
固定絞り19は、第2蒸発器20への流入する冷媒の流量調整と減圧を行う絞り手段であって、具体的にはキャピラリチューブやオリフィスのような固定絞りで構成できる。そして、第2蒸発器20は、冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる熱交換器である。
さらに、本実施形態では、フィンアンドチューブ構造の第1蒸発器16と第2蒸発器20を一体構造に組み付けている。具体的には、第1蒸発器16と第2蒸発器20のフィンを共通化し、フィンと接触するチューブ構成で分割するものである。もちろん、2つの別体蒸発器を風路方向(図1では、矢印A方向)に直列に配置してもよい。
そのため、上述の送風ファン16aにて送風された空気は、矢印Aのように流れ、まず、第1蒸発器16にて冷却され、次に第2蒸発器20にて冷却されるようになっている。すなわち、第1蒸発器16と第2蒸発器20にて同一の冷却対象空間を冷却するようになっている。
空調制御装置21は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。空調制御装置21は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行って上記各種機器11b、12b、16b等の作動を制御する。
また、空調制御装置21には、各種センサ群からの検出信号、および操作パネル(図示せず。)からの各種操作信号が入力される。センサ群として具体的には、外気温(車室外温度)を検出する外気センサ等が設けられる。また、操作パネルには業務用冷蔵庫の作動スイッチ、冷却対象空間である庫内温度を設定する温度設定スイッチ等が設けられている。
次に、上述のような構成で本実施形態の作動について説明する。操作パネルの作動スイッチが投入されると、空調制御装置21の制御信号によって圧縮機11の電動モータ11bが作動し、圧縮機構部11aに駆動力が伝達されると、圧縮機11が吸入口11dから気相冷媒を吸入して、圧縮して吐出口11eから吐出する。
なお、本実施形態では、圧縮機11として、密閉式圧縮機を採用しているので、吸入口11dから吸入された冷媒は、圧縮機構部11aの圧縮室に流入するまでに、加熱されて温度上昇する。
圧縮機11から圧縮され吐出された高温高圧の気相冷媒は放熱器12に流入する。放熱器12では高温高圧の冷媒が外気により冷却されて凝縮する。放熱器12から流出した放熱後の高圧冷媒は、レシーバ13にて気相冷媒と液相冷媒に分離され、さらに、レシーバ13から流出した液相冷媒は、分岐点Zにてノズル部側配管18aへ流入する冷媒流れと吸引口側配管18bへ流入する冷媒流れとに分流される。
この際、本実施形態では、液相冷媒に対して溶解性を有する冷凍機油が採用されているので、分岐点Zにてノズル部側配管18aへ流入する液相冷媒の冷凍機油濃度と吸引口側配管18bへ流入する液相冷媒の冷凍機油濃度は、ほぼ均一な値となる。
また、ノズル部側配管18aへ流入する冷媒流量(ノズル部冷媒流量)Gnozと吸引口側配管18bへ流入する冷媒流量(吸引冷媒流量)Geとの流量比Ge/Gnozは、エジェクタ内の減圧部であるノズルと固定絞りの流量特性により決定し、エジェクタ15の冷媒噴射口15cの冷媒通路面積Anozに対する吸引冷媒通路15gの冷媒通路面積Asucの面積比Asuc/Anozが調整されているため損失が少ない運転が可能になっている。
可変絞り機構14に向かう冷媒流れは、可変絞り機構14で減圧および流量調整されてエジェクタ15へ流入する。ここで、可変絞り機構14は、第1蒸発器16出口側冷媒の過熱度が所定の値に近づくように、可変絞り機構14の通過冷媒流量を調整する。
エジェクタ15に流入した冷媒流れはノズル部15aでさらに減圧されて膨張する。そして、ノズル部15aで冷媒の圧力エネルギーが速度エネルギーに変換され、このノズル部15aの噴出口から冷媒は高速度となって噴出する。この際の冷媒吸引作用により、冷媒吸引口15bから第2蒸発器20通過後の冷媒を吸引する。
ノズル部15aから噴出した冷媒と冷媒吸引口15bより吸引された冷媒は、ノズル部15a下流側の混合部15eで混合してディフューザ部15fに流入する。このディフューザ部15fでは通路面積の拡大により、冷媒の速度(膨張)エネルギーが圧力エネルギーに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する。
そして、エジェクタ15のディフューザ部15fから流出した冷媒は第1蒸発器16に流入する。第1蒸発器16では、低温の低圧冷媒が送風ファン16aの送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風ファン16aの送風空気が冷却される。
第1蒸発器16通過後の気相冷媒は内部熱交換器17の低圧側冷媒通路17bへ流入し、分岐点Zから吸引口側配管18bを介して内部熱交換器17の高圧側冷媒通路17aへ流入した高温高圧冷媒と熱交換を行う。そして、低圧側冷媒通路17bから流出した気相冷媒は、圧縮機11に吸入され再び圧縮される
一方、吸引口側配管18bに流入した冷媒流れは、内部熱交換器17にて、前述の如く、第1蒸発器16から流出した低温低圧の気相冷媒と熱交換を行って冷却され、さらに、固定絞り19で減圧されて低圧冷媒となり、この低圧冷媒が第2蒸発器20に流入する。
第2蒸発器20では、流入した低圧冷媒が第1蒸発器16で冷却された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風ファン16aの送風空気がさらに冷却される。そして、第2蒸発器20通過後の冷媒は冷媒吸引口15bからエジェクタ15内へ吸引されて、混合部15eでノズル部15aを通過した液相冷媒と混合して第1蒸発器16に流入していく。
以上の如く、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルでは、エジェクタ15のディフューザ部15fの下流側冷媒を第1蒸発器16に供給するとともに、吸引口側配管18b側の冷媒を固定絞り19を介して第2蒸発器20にも供給できるので、第1蒸発器16および第2蒸発器20で同時に冷却作用を発揮できる。
さらに、送風ファン16aから送風された空気を第1蒸発器16→第2蒸発器20の順に通過させて同一の冷却対象空間(冷蔵庫内)を冷却できる。その際に、第1蒸発器16の冷媒蒸発圧力をディフューザ部15fで昇圧した後の圧力として、一方、第2蒸発器20は冷媒吸引口16bに接続されるので、第2蒸発器20の冷媒蒸発圧力をノズル部15a減圧直後の最も低い圧力とすることができる。
従って、第1蒸発器16の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)よりも第2蒸発器20の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を低くすることができる。その結果、第1蒸発器16および第2蒸発器20の冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を確保して、効率的に送風空気を冷却できる。
また、第1蒸発器16下流側を圧縮機11吸入側に接続しているので、ディフューザ部15fで昇圧された冷媒を圧縮機11に吸入させることができる。その結果、圧縮機11の吸入圧を上昇させることができるので、圧縮機11の駆動動力を低減することができる。
さらに、内部熱交換器17の作用によって、第1、2蒸発器16、20における冷媒入口・出口間の冷媒のエンタルピ差を拡大できるので、サイクルの冷凍能力を増大できる。その結果、サイクル効率を向上させることができる。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、業務用冷蔵庫に適用されているので、冷媒循環流量(圧縮機11吐出流量)が低流量になってしまうが、冷凍機油として液相冷媒に対して溶解性を有するオイルが採用されているので、放熱器12下流側のレシーバ13内の液相冷媒に適正な濃度の冷凍機油を溶かし込むことができる。
そして、レシーバ13下流側に設けられた分岐部Zで冷媒の流れを分岐して、第2蒸発器20へ流入させるので、循環冷媒流量に依存することなく、蒸発器20へ流入する冷媒の冷凍機油の濃度を適正な値に維持できる。
しかも、分岐部Zから第2蒸発器20を介して冷媒吸引口15へ至る冷媒流路をエジェクタ15に対して並列的な接続関係にしているので、圧縮機11の冷媒吸入、吐出能力を利用して第2蒸発器20へ流入した冷媒を冷媒吸引口15dへ導出させることができる。
従って、循環冷媒流量が低流量になって、エジェクタ15の冷媒吸引能力が低下しても、吸引冷媒流量が低下することを抑制できる。その結果、循環冷媒流量が低流量になっても、エジェクタ15の冷媒吸引口15dに接続される第2蒸発器20に冷凍機油が滞留してしまうことを抑制できるので、エジェクタを採用したことによる充分なサイクル効率向上効果を得ることができる。
また、圧縮機11として、密閉式圧縮機を採用しているので、前述の図3、4で説明したように、圧縮機11に吸入された低流量の冷媒が加熱されることで、冷媒が加熱されない場合に対して、ディフューザ部15fの昇圧による吸入冷媒の密度上昇効果が拡大される。その結果、循環冷媒流量が低流量になっても充分なサイクル効率向上効果を得ることができる。
また、冷媒として、HC系冷媒(具体的には、イソブタン)を採用しているので、フロン系冷媒を採用した場合に対して、冷媒充填量を少なくすることができる。さらに、フロン系冷媒を採用した場合に対して、サイクルの高圧側圧力を下げることができるので、サイクル効率を向上させることができる。
しかも、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、循環冷媒流量が低流量になっても、上記の如く、エジェクタ15の冷媒吸引口14dに接続される2蒸発器20内に冷凍機油が滞留しないので、気液密度比が極めて小さいHC系冷媒を採用しても、気相冷媒の流速と液相冷媒の流速と差が拡大されにくい。
従って、循環冷媒流量が低流量になっても、充分なサイクル効率向上効果を得ることができるとともに、上記したHC系冷媒を採用することの効果を得ることができる。さらに、圧縮機11として密閉式圧縮機を採用しているので、可燃性のHC系冷媒が外部に漏れることを防止できるので、エジェクタ式冷凍サイクルの安全性を向上させることもできる。
さらに、面積比Asuc/Anozが、3≦Asuc/Anoz≦10となるように形成しているので、前述の図5、6で説明したように、循環冷媒流量が低流量になっても、流量比Ge/Gnozに対して流れを阻害しない値とすることができ、充分なサイクル効率向上効果を得ることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、図1に示すサイクル構成のエジェクタ式冷凍サイクルについて説明したが、本発明が適用できるサイクル構成は図1に示す例に限定されない。
例えば、上述の実施形態では、レシーバ14から流出した液相冷媒の流れを分岐部Zにて分流しているが、レシーバ14を廃止して放熱器12出口側冷媒の流れを直接分岐部Zにて分流してもよい。この場合は、気相冷媒と液相冷媒の双方が分岐部Zにて分流されることになるが、液相状態の冷媒には冷凍機油が溶け込んでいるので、上述の実施形態と全く同様の効果を得ることができる。
また、上述の実施形態では、温度式膨張弁14を分岐部Zとエジェクタ15のノズル部15aとの間に配置しているが、レシーバ14と分岐部Zとの間に配置してもよい。また、分岐部Zと第2蒸発器20との間に配置してもよい。
また、本実施形態では、第1、2蒸発器16、20において冷媒が吸熱作用を発揮できるようなサイクル構成になっているが、第1蒸発器16を廃止してもよい。
(2)上述の実施形態では、本発明のエジェクタ式冷凍サイクルを業務用冷蔵庫に適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、業務用冷蔵庫と同様に、通常運転時にサイクル内を循環する冷媒循環流量が低流量になる家庭用冷蔵庫、自動販売機用冷却装置、冷蔵機能付きショーケース等に適用してもよい。
もちろん、冷媒循環流量が変動しうる車両用空調装置等に適用してもよい。この場合は、サイクルが低流量で運転される運転条件において、上述の効果を発揮できる。
(3)上述の実施形態では、第1、2蒸発器16、20によって同一の空調対象空間(冷蔵庫内)を冷却しているが、第1、2蒸発器16、20によって異なる空調対象空間を冷却するようにしてもよい。例えば、第1蒸発器16に対して、冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)が低い第2蒸発器20を冷凍庫内用に適用し、第1蒸発器16を冷蔵庫内用に適用してもよい。
(4)上述の実施形態では、冷媒としてHC系冷媒を採用しているが、冷媒はこれに限定されない。例えば、フロン系冷媒、二酸化炭素等を採用してもよい。
(5)上述の実施形態では、絞り手段として、キャピラリチューブやオリフィスで構成された固定絞り19を採用しているが、電気的、機械的に冷媒通路面積を変更できる可変絞り機構を採用してもよい。また、絞り手段を固定絞り機構と可変絞り機構とのとの組み合わせで構成してもよい。
(6)上述の実施形態では、エジェクタ15として、冷媒通路面積Anozが一定のノズル部15aを有する固定エジェクタを例示しているが、エジェクタ15として、冷媒通路面積Anozを調整可能な可変ノズル部を有する可変エジェクタを用いてもよい。
この可変ノズル部の具体例としては、可変ノズル部の通路内にニードルを挿入し、このニードルの位置を電気的アクチュエータにより制御して冷媒通路面積Anozを調整する機構とすればよい。
さらに、可変ノズル部の冷媒通路面積Anozの調整範囲が、3≦Asuc/Anoz≦10の範囲となるように調整すれば、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(7)上述の実施形態では、放熱器12を冷媒と外気とを熱交換させる室外側熱交換器とし、第1、2蒸発器15、18を室内側熱交換器として車室内および冷蔵庫内の冷却用に適用しているが、逆に、第1、2蒸発器15、18を外気等の熱源から吸熱する室外側熱交換器として構成し、放熱器12を空気あるいは水等の被加熱流体を加熱する室内側熱交換器として構成するヒートポンプサイクルに本発明を適用してもよい。