JP2008063647A - 溶鋼の脱硫方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 転炉出鋼時に普通鋼或いは低硫鋼のS含有量が目標S濃度の上限を外れた場合、製造工程に撹乱を生ずることなく、且つ、製造コストの上昇を抑えしかも安定してこれらのS含有量を目標上限以下に低減することのできる脱硫方法を提供する。
【解決手段】 溶銑の脱炭精錬により得た溶鋼を転炉から取鍋に出鋼し、取鍋内溶鋼の湯面上に存在するスラグの還元処理を行った後、溶鋼をRH真空脱ガス装置にて二次精錬するに当たり、RH真空脱ガス装置にて溶鋼中にAlを投入して溶鋼を脱酸した後、RH真空脱ガス装置に設けた上吹きランスから、真空脱ガス槽内の溶鋼湯面に向けてCaOを48〜58mass%、Al23 を42〜52mass%含有し、CaF2 を含有しない脱硫用プリメルトフラックスを吹き付けて溶鋼を脱硫する。その際に、脱硫用プリメルトフラックスを吹き付ける前に、真空脱ガス槽内の溶鋼にMgOを投入することが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、RH真空脱ガス装置を用いた溶鋼の脱硫方法に関し、詳しくは、目標S濃度が数ppmレベルの所謂、極低硫鋼を対象とするのではなく、目標S濃度が数十ppmレベルの低硫鋼或いはそれ以上の普通鋼における目標S濃度の上限外れを防止するために行う溶鋼の脱硫方法に関するものである。
転炉から出鋼された後の溶鋼を脱硫する二次精錬方法としては、アーク加熱とスラグ精錬とが可能なLF(Ladle Furnace )と称する取鍋精錬設備を用い、多量の脱硫用フラックスを溶鋼に添加して溶鋼を加熱しつつ攪拌する方法(例えば特許文献1参照)、及び、RH真空脱ガス装置を用い、RH真空脱ガス装置の真空脱ガス槽内の溶鋼に脱硫用フラックスを投入して脱硫する方法(例えば特許文献2及び特許文献3参照)が一般的である。これらの何れの方法も、ラインパイプ材などに代表される目標S濃度が数ppmレベルの極低硫鋼の製造に適するように、脱硫用フラックスの組成やその投入方法が工夫されている。
このような極低硫鋼の製造においては、脱硫処理のために、LFでのアーク加熱によって電力コストが上昇しても、また、CaF2 や金属Caを含有する特殊な脱硫用フラックスを使用することによって脱硫用フラックスコストが上昇しても、或いは、このような特殊な脱硫用フラックスの使用に起因して取鍋や真空脱ガス槽の耐火物が溶損し、それによって耐火物コストが上昇しても、鋼材価格はそれに見合ったもので取引されるので問題とならない。
これに対して、目標S濃度が数十ppmレベルの低硫鋼やそれ以上の一般の普通鋼では、溶銑予備処理の段階でS濃度を低減することで、特段に二次精錬での脱硫処理を実施することなく目標S濃度の上限以下となるようにしていた。これは、二次精錬での脱硫処理は、低硫鋼や普通鋼では、上記のコスト上昇を鋼材価格が補いきれないからである。
しかし、近年、スラグに対する環境規制の観点から、転炉脱炭精錬における媒溶剤にフッ素含有物質である蛍石を使用しない傾向になってきたことと、CO2 発生量低減の要請から、鉄スクラップを転炉で多量に使用する操業が増えたことによって、これらの低硫鋼や普通鋼で目標S濃度の上限外れが発生するようになった。これは、品質の悪い鉄スクラップ中からのSの混入が避けがたいことと、併せて、転炉での媒溶剤に蛍石を使用しなくなったことに起因する転炉スラグの脱硫能の低下とが相俟って発生したものである。
特開2005−179762号公報 特開2003−342631号公報 特開平11−6009号公報
このように、普通鋼や低硫鋼で転炉出鋼時のS含有量が目標S濃度の上限を外れた場合、これを救済する有効な手だては無かった。例えば、このようなチャージをLFにて脱硫処理しようとすると、連続鋳造工程までの製造工程が撹乱されて連続鋳造工程での連々鋳を妨げる原因となり、また、溶鋼加熱の電力や耐火物溶損のためにコストが著しく増大し、経済的に成り立たないからである。
一方、普通鋼や低硫鋼のほとんどが、介在物の低減や合金成分の調整を目的としてRH真空脱ガス装置で処理される現状にあっては、RH脱ガス処理中に脱硫処理することは製造工程に撹乱を生じる心配はない。しかし、RH真空脱ガス装置において、特許文献2や特許文献3のような高脱硫能の脱硫用フラックスを使用することは、脱硫用フラックスコストや耐火物コストを増大させるという問題を起こす。
また、上述のような普通鋼や低硫鋼の目標S濃度の上限外れを救済する程度であれば、脱硫用フラックスの使用量を削減しても十分に対処可能と考えられるが、少量の脱硫用フラックスで脱硫処理した際には、脱硫用フラックスの一部が真空脱ガス槽の側壁に付着したり取鍋壁に付着したりして、脱硫反応に寄与しない場合があり、脱硫効率に大きなバラツキが生じる。その結果、目標S濃度の上限外れを解消できない場合も発生する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、転炉出鋼時に普通鋼或いは低硫鋼のS含有量が、目標S濃度の上限を外れた場合、或いは、目標S濃度の上限ぎりぎりで、復硫によっては目標S濃度の上限を外れる恐れのある場合に、連続鋳造工程までの製造工程に撹乱を生ずることなく、且つ、製造コストの上昇を抑え、しかも安定してこれらのS含有量を目標上限値以下に低減することのできる有効な溶鋼の脱硫方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は、溶銑の脱炭精錬により得た溶鋼を転炉から取鍋に出鋼し、取鍋内溶鋼の浴面上に存在するスラグの還元処理を行った後、溶鋼をRH真空脱ガス装置にて二次精錬するに当たり、RH真空脱ガス装置にて溶鋼中にAlを投入して溶鋼を脱酸した後、RH真空脱ガス装置に設けた上吹きランスから、真空脱ガス槽内の溶鋼浴面に向けてCaOを48〜58mass%、Al23 を42〜52mass%含有し、CaF2 を含有しない脱硫用プリメルトフラックスを吹き付けて溶鋼を脱硫することを特徴とする、溶鋼の脱硫方法を提供する。その際に、前記上吹きランスから脱硫用プリメルトフラックスを吹き付ける前に、真空脱ガス槽内の溶鋼にMgOを投入することが好ましい。
本発明によれば、転炉出鋼時に普通鋼や低硫鋼のS含有量が、目標S濃度の上限を外れた場合、或いは目標S濃度の上限ぎりぎりで、復硫によっては目標S濃度の上限を外れる恐れのある場合に、普通鋼や低硫鋼のほとんどが処理されるRH真空脱ガス装置を用いて脱硫処理を行うので、製造工程に撹乱を生じることなく、脱硫処理を実施することができる。
また、本発明によれば、脱硫用フラックスとして、CaOを48〜58mass%、Al23 を42〜52mass%含有し、CaF2 を含有しないプリメルトフラックスを使用するので、つまり、CaF2(蛍石)を使用しないので、脱硫用フラックスコストは安価であるうえに、真空脱ガス槽の耐火物を溶損する心配がない。また、プリメルトフラックスであるので、生石灰よりも硬質であり、搬送中に粉化しにくく、真空脱ガス槽内に上吹きランスを介して吹き付けた際に、真空排気系へのキャリーオーバーが少なく、無駄なく溶鋼に侵入させることができるのみならず、一旦溶鋼に侵入すると溶解が速く且つ溶鋼の脱酸のためにRH真空脱ガス装置で投入したAlによる脱酸生成物を吸収して脱硫に最適なCaO・Al23 (CaOが34mass%、Al23 が66mass%に相当)の溶融相が生成し、これが速やかに溶鋼を脱硫する。
また更に、プリメルトフラックスであるので、溶融の潜熱が小さく、CaOとAl23 とを単に混合したフラックスや焼結フラックスに比べて溶鋼の温度低下が小さい。この溶鋼の温度低下が小さいことと、CaF2を含有しないために耐火物溶損の心配がないこと及びCaF2 や金属Caを含有しないために安価であることから、比較的多くの量の脱硫用フラックスを使用することができ、このため脱硫反応効率が安定するという優れた効果が得られる。
また、脱硫用プリメルトフラックスを溶鋼に向けて吹き付ける以前に、真空脱ガス槽内の溶鋼にMgOを投入することにより、このMgOはRH真空脱ガス装置の下降管から溶鋼流に随伴されて取鍋内の溶鋼に入り、浮上して取鍋内溶鋼の浴面上に存在するスラグと溶鋼との間に高融点のバリア層を形成する。このバリア層によって取鍋内に存在するスラグ中のFeOやMnOなどの酸化性成分による溶鋼の再酸化が防止でき、脱硫に好適な低酸素ポテンシャルの雰囲気を維持することができるとともに、復硫も防止できる。
以下、本発明を具体的に実施するに当たっての好ましい形態を説明する。
本発明は、溶銑を転炉で脱炭精錬して普通鋼或いは低硫鋼を製造する際に、転炉脱炭精錬の終了時における溶鋼成分のS含有量が、目標S濃度の上限を外れた場合、或いは、目標S濃度の上限ぎりぎりで、復硫によっては目標S濃度の上限を外れる恐れのある場合に、以下のようにして溶鋼に脱硫処理を施し、溶鋼のS含有量を目標S濃度の上限値以下まで減少させる。
即ち、転炉脱炭精錬終了時の溶鋼成分分析値のS濃度が、目標S濃度の上限を外れた場合或いは外れそうな場合に、転炉では当該溶鋼に対して特別な処理を実施することなく、得られた溶鋼を予定通り転炉から取鍋へ出鋼し、この出鋼の末期或いは出鋼後に、転炉から取鍋内に流出したスラグにAlなどの強脱酸剤を還元剤として添加してスラグの還元処理を行い、その後、溶鋼をRH真空脱ガス装置に搬送し、RH脱ガス処理中の溶鋼にAlを投入して溶鋼を脱酸した後、真空脱ガス槽に設けた上吹きランスから、真空脱ガス槽内の溶鋼浴面に向けて脱硫用フラックスを吹き付けて溶鋼を脱硫する。
ここで、低硫鋼とは、目標S濃度が数十ppmレベルの鋼で、普通鋼とは、目標S濃度が低硫鋼の目標S濃度以上であって、上限値がおよそ0.03mass%程度の鋼である。但し、普通鋼でも仕様に応じてS濃度の目標値は異なり、上限値が0.010mass%のものや0.015mass%のものなど、様々である。
転炉脱炭精錬で使用する溶銑は、特に制限はないが、溶銑予備処理によってSやPを低減したものであることが好ましい。特に、溶銑脱硫処理によってSを低減しておくと、転炉脱炭精錬で得られる溶鋼のS含有量の目標上限外れが生じても、その超過分が小さく、RH真空脱ガス装置での脱硫負荷を小さくできるからである。また、脱炭精錬を行う転炉の形式には特に制限がなく、上吹き転炉、不活性ガス底吹き攪拌方式の上底吹き転炉、上吹きランスと底吹き羽口の両方から溶鋼に酸素を供給する酸素上底吹き転炉、底吹き転炉の何れであってもよい。
本発明が対象とする鋼は、目標S濃度の上限が数十ppmの低硫鋼、及び、それより高S濃度まで許容できる普通鋼である。目標S濃度の上限が数ppmの極低硫鋼は、本発明では十分に脱硫するのは困難である場合が多いので、好ましくない。
本発明においては、RH真空脱ガス装置での脱硫を確実に実施するために、転炉からの出鋼時に取鍋に流出した溶鋼浴面上のスラグに、Alなどの強脱酸剤を還元剤として添加し、スラグを還元することが必要である。スラグの還元剤としては、安価であることからAl灰(「アルミドロス」ともいう)が好適である。Al灰とは、金属Alを30〜50mass%含有した金属AlとAl23 との混合物であり、他の成分も含有している。
スラグの還元の目安としては、スラグ中のFeOとMnOとの合計含有量が5mass%以下程度とするのが望ましい。スラグ中のFeOとMnOとの合計含有量が5mass%よりも多いと、脱硫処理時或いは脱硫処理後にスラグによる溶鋼の再酸化が発生して、脱硫反応を阻害したり、復硫を生じさせたりする原因となる。一方、2mass%未満まで還元するには還元剤を多量に使用しなくてはならず、経済的ではない。尚、溶鋼を転炉から出鋼する際には、通常の精錬と同様に、Si、Mn、Alなどで溶鋼を粗く脱酸しても構わない。
RH真空脱ガス装置では、溶鋼のRH脱ガス処理中に、真空脱ガス槽内の溶鋼にAlを投入して溶鋼を脱酸した後、真空脱ガス槽に設けた上吹きランスから、真空脱ガス槽内の溶鋼浴面に向けて脱硫用フラックスを吹き付けて添加する。ここで溶鋼中へのAl投入量は、各鋼種の目標とする成分組成(鋼種により異なる)に依存するので一概には決められないが、通常のアルミキルド鋼では、total.Alにして0.050〜0.100mass%が目標組成となることが多いので、RH脱ガス処理前の溶鋼成分を分析し、それに応じて不足分を投入すればよい。尚、total.Alとは、溶鋼に溶解しているAlと、Al23 などの酸化物形態で溶鋼中に存在しているAlとの合計値であり、また、粉粒体を吹き付けて添加することは「投射」とも呼ばれている。
この投射用の上吹きランスは真空脱ガス槽内に上方から垂直に挿入する場合や、真空脱ガス槽の側壁から斜めに挿入する方式などが知られており、特に制限はないが、脱硫用フラックスのキャリーオーバーを少なくする観点からは垂直に挿入するのが好ましい。
脱硫用フラックスとしては、CaO粉及びAl23 粉の混合物を加熱・溶融し、固化させた後に粉砕処理して得られる、CaOを48〜58mass%、Al23 を42〜52mass%含有し、CaF2 を含有していないプリメルトフラックスを使用する。脱硫用フラックスとして、CaO粉とAl23 粉との単なる混合物を使用すると、フラックスの搬送中に粉化(とくにCaOの粉化)が発生しやすく、その結果、微粉成分が溶鋼浴面に到達する前に真空脱ガス槽の排気系に吸引(所謂「キャリーオーバー」)されやすいうえに、溶鋼中に侵入してからの溶解も遅く、脱硫が速やかに進行しないが、CaOとAl23 とをプリメルトすることにより、これらの問題は全て解消される。脱硫用フラックスにはCaF2 を含有させないが、これは耐火物の溶損を極力防止するため及び脱硫用フラックスコストを安価にするために、必要なことである。
脱硫用フラックス中のCaOを48〜58mass%、Al23 を42〜52mass%とする理由は、溶鋼中に脱硫用フラックスが侵入した際に、脱酸生成物である溶鋼中のAl23を吸収して脱硫に最適なCaO・Al23 組成の液相が容易に生成するようにするためである。CaOが48mass%よりも少ないか、Al23 が52mass%よりも多い場合には、脱硫能が乏しく、好ましくない。また、CaOが58mass%よりも多いか、Al23 が42mass%よりも少ない場合には、脱硫用フラックスの融点が高く、溶鋼中に侵入しても速やかに溶解しないので脱硫が遅滞し、好ましくない。
プリメルトフラックスの粒度は、反応効率の観点から粒径1mm未満、望ましくは粒径150μm未満が質量比率で90%以上であることが好ましい。一方、キャリーオーバーを少なくする観点からは微粉分は少ない方が望ましく、従って、粒径10μm未満が質量比率で10%未満であるのが好ましく、粒径50μm未満が10%未満であるのがより好ましい。尚、脱硫用フラックス中には不純物として5mass%までのSiO2 は許容できる。これよりもSiO2 が多いと、脱硫能が低下するので好ましくない。
更に、脱硫時の溶鋼の酸素ポテンシャルを低位に維持するとともに、脱硫後の復硫を効果的に防止するために、RH真空脱ガス装置にて脱硫用プリメルトフラックスを吹き付け添加する前に、真空脱ガス槽内の溶鋼にMgOを投入することが好ましい。MgOの投入方法としては、真空脱ガス槽の上部に設けられた副原料投入シュートから投入する方法、或いは、脱硫用フラックスを投射する上吹きランスから投射する方法のどちらであっても構わないが、キャリーオーバーを少なくし、塊状のマグネシアクリンカーなども使用できる点からは、前者の方法を採用することが好ましい。
このMgOはRH真空脱ガス装置の下降管から溶鋼流に随伴されて取鍋内の溶鋼に入り、溶鋼中を浮上して、取鍋内溶鋼の浴面上に存在するスラグと溶鋼との間に高融点のバリア層を形成する。このバリア層によって取鍋スラグ中のFeOやMnOなどの酸化性成分による溶鋼の再酸化が防止でき、脱硫に好適な低酸素ポテンシャルの雰囲気を維持することができるとともに、復硫も防止できる。MgO源としてはマグネシアクリンカーのほかマグネシア系耐火物屑なども使用できる。上記効果を発揮させるための好ましいMgOの投入量は、溶鋼トン当たり1kg(以下「kg/t」と記す)以上、より好ましくは1.5kg/t以上である。但し、多量に投入すると溶鋼の温度降下をきたすので、好ましくは上限を5kg/tとし、より好ましくは3kg/tとする。
上記のように構成された本発明によれば、転炉出鋼時に目標S濃度の上限を外れたか、或いは、目標S濃度の上限ぎりぎりで復硫によっては代表成分において目標S濃度の上限を外れる恐れのある普通鋼や低硫鋼を効果的に脱硫処理することができる。しかも、近年、普通鋼や低硫鋼のほとんどが、介在物の低減や合金成分の調整を目的としてRH真空脱ガス装置で処理されるようになったので、RH脱ガス精錬に脱硫処理を追加実施しても製造工程に撹乱を生じる心配はない。
[本発明例1]
目標S濃度の上限が0.0024mass%である低炭アルミキルドの低硫鋼の精錬に本発明を適用した。当該低硫鋼を製造するに当たり、使用した溶銑は脱硫処理の施された溶銑であるが、溶銑のS含有量から判断して前記目標S濃度を安定して達成することは困難であったので、本発明を適用することとした。
脱硫処理の施された溶銑を転炉にて脱炭精錬して約300トンの溶鋼を得て、この溶鋼を取鍋に出鋼した。取鍋内の溶鋼のS含有量は0.0026mass%であった。取鍋内のスラグにアルミ灰(金属Al分30mass%)を添加してスラグを還元処理し、スラグ中のFeOとMnOとの合計含有量を2.8mass%とした後、溶鋼をRH真空脱ガス装置に搬送した。
RH真空脱ガス装置で溶鋼の環流を開始後、真空脱ガス槽内の溶鋼にAlを投入して脱酸処理した。脱酸処理後、CaO:51mass%、Al23 :45mass%、SiO2 :1mass%の脱硫用プリメルトフラックス(粒径10〜250μm)を、Arガスをキャリアガスとして、真空脱ガス槽の上方から挿入した上吹きランスを通じて真空脱ガス槽内の溶鋼浴面に向けて投射した。投射時の真空脱ガス槽内の圧力は2.6〜3.9kPa(20〜30torr)であり、投射速度を約80kg/min(0.27kg/min・t)、キャリアガス流量を8Nm3 /min(0.027Nm3 /min・t)として10分間投射した。投射した脱硫用プリメルトフラックスは750kg(2.5kg/t)であった。脱硫処理後の溶鋼中S含有量は0.0019mass%、脱硫率は26.9%であった。
脱硫処理後、この溶鋼に必要な合金材を投入して溶鋼成分の最終調整を実施した後、RH脱ガス処理を終了した。次いで、溶鋼を連続鋳造設備に搬送して連続鋳造し、連続鋳造中にタンディッシュから代表溶鋼サンプルを採取した。この代表溶鋼サンプルのS濃度を分析した結果、S濃度は0.0021mass%であり、目標S濃度の上限値を満足した。
目標S濃度の上限が0.0024mass%である低炭アルミキルドの低硫鋼の9チャージについて上記と同様の処理を行った。その結果、脱硫用プリメルトフラックスの平均原単位が2.2kg/tで、平均脱硫率は26.1%、脱硫率のバラツキは±6.5%であり、狭い範囲にS含有量を調整することができた。
[本発明例2]
本発明例1と同様に、目標S濃度の上限が0.0024mass%である低炭アルミキルドの低硫鋼の精錬に本発明を適用した。当該低硫鋼を製造するに当たり、使用した溶銑は脱硫処理の施された溶銑であるが、溶銑のS含有量から判断して前記目標S濃度を安定して達成することは困難であったので、本発明を適用することとした。
脱硫処理の施された溶銑を転炉にて脱炭精錬して約300トンの溶鋼を得て、この溶鋼を取鍋に出鋼した。取鍋内の溶鋼のS含有量は0.0027mass%であった。取鍋内のスラグにアルミ灰(金属Al分30mass%)を添加してスラグを還元処理し、スラグ中のFeOとMnOとの合計含有量を3.0mass%とした後、溶鋼をRH真空脱ガス装置に搬送した。
RH真空脱ガス装置で溶鋼の環流を開始後、真空脱ガス槽内の溶鋼にAlを投入して脱酸処理した。Al投入から2分経過した時点で、真空脱ガス槽の上方にある副原料投入シュートからマグネシアクリンカー540kg(1.8kg/t)を真空脱ガス槽内の溶鋼浴面上に添加した。その後2分経過し、真空脱ガス槽内の溶鋼浴面上にマグネシアクリンカーが存在しなくなった以降、CaO:51mass%、Al23 :45mass%、SiO2 :1mass%の脱硫用プリメルトフラックス(粒径10〜250μm)を、Arガスをキャリアガスとして、真空脱ガス槽の上方から挿入した上吹きランスを通じて真空脱ガス槽内の溶鋼浴面に向けて投射した。投射時の真空脱ガス槽内の圧力は2.6〜3.9kPa(20〜30torr)であり、投射速度を約75kg/min(0.25kg/min・t)、キャリアガス流量を7.5Nm3 /min(0.025Nm3 /min・t)として10分間投射した。投射した脱硫用プリメルトフラックスは720kg(2.4kg/t)であった。脱硫処理後の溶鋼中S含有量は0.0020mass%、脱硫率は25.9%であった。
脱硫処理後、この溶鋼に必要な合金材を投入して溶鋼成分の最終調整を実施した後、RH脱ガス処理を終了した。次いで、溶鋼を連続鋳造設備に搬送して連続鋳造し、連続鋳造中にタンディッシュから代表溶鋼サンプルを採取した。この代表溶鋼サンプルのS濃度を分析した結果、S濃度は0.0020mass%であり、目標S濃度の上限値を満足した。
目標S濃度の上限が0.0024mass%である低炭アルミキルドの低硫鋼の9チャージについて上記と同様の処理を行った。その結果、脱硫用プリメルトフラックスの平均原単位が2.2kg/tで、平均脱硫率は25.9%、脱硫率のバラツキは±2.5%であり、狭い範囲にS含有量を調整することができた。
[比較例]
本発明例1,2と同様に、目標S濃度の上限が0.0024mass%である低炭アルミキルドの低硫鋼を製造するに当たり、使用した溶銑は脱硫処理の施された溶銑であるが、溶銑のS含有量から判断して前記目標S濃度を安定して達成することは困難であったので、従来のCaF2を含有する高価な脱硫用フラックスを使用してRH真空脱ガス装置で脱硫処理をすることとした。
脱硫処理の施された溶銑を転炉にて脱炭精錬して約300トンの溶鋼を得て、この溶鋼を取鍋に出鋼した。取鍋内の溶鋼のS含有量は0.0026mass%であった。取鍋内のスラグにアルミ灰(金属Al分30mass%)を添加してスラグを還元処理し、スラグ中のFeOとMnOとの合計含有量を2.9mass%とした後、溶鋼をRH真空脱ガス装置に搬送した。
RH真空脱ガス装置で溶鋼の環流を開始後、真空脱ガス槽内の溶鋼にAlを投入して脱酸処理した。Al投入から2分経過した時点で、真空脱ガス槽の上方にある副原料投入シュートからマグネシアクリンカー550kg(1.83kg/t)を真空脱ガス槽内の溶鋼浴面上に添加した。その後2分経過し、真空脱ガス槽内の溶鋼浴面上にマグネシアクリンカーが存在しなくなった以降、CaO:57mass%、CaF2 :39mass%、SiO2 :2mass%の脱硫用プリメルトフラックス(粒径10〜250μm)を、Arガスをキャリアガスとして、真空脱ガス槽の上方から挿入した上吹きランスを通じて真空脱ガス槽内の溶鋼浴面に向けて投射した。投射時の真空脱ガス槽内の圧力は2.6〜3.9kPa(20〜30torr)であり、投射速度を約75kg/min(0.25kg/min・t)、キャリアガス流量を7.5Nm3 /min(0.025Nm3 /min・t)として7分間投射した。投射した脱硫用プリメルトフラックスは540kg(1.8kg/t)であった。脱硫処理後の溶鋼中S含有量は0.0019mass%、脱硫率は26.9%であった。
脱硫処理後、この溶鋼に必要な合金材を投入して溶鋼成分の最終調整を実施した後、RH脱ガス処理を終了した。次いで、溶鋼を連続鋳造設備に搬送して連続鋳造し、連続鋳造中にタンディッシュから代表溶鋼サンプルを採取した。この代表溶鋼サンプルのS濃度を分析した結果、S濃度は0.0020mass%であり、目標S濃度の上限値を満足した。
目標S濃度の上限が0.0024mass%である低炭アルミキルドの低硫鋼の15チャージについて上記と同様の処理を行った。その結果、脱硫用プリメルトフラックスの平均原単位が1.5kg/tで、平均脱硫率は25.5%であったが、脱硫率のバラツキは±15.1%であり、脱硫後のS含有量は大幅にばらついた。

Claims (2)

  1. 溶銑の脱炭精錬により得た溶鋼を転炉から取鍋に出鋼し、取鍋内溶鋼の浴面上に存在するスラグの還元処理を行った後、溶鋼をRH真空脱ガス装置にて二次精錬するに当たり、RH真空脱ガス装置にて溶鋼中にAlを投入して溶鋼を脱酸した後、RH真空脱ガス装置に設けた上吹きランスから、真空脱ガス槽内の溶鋼浴面に向けてCaOを48〜58mass%、Al23 を42〜52mass%含有し、CaF2 を含有しない脱硫用プリメルトフラックスを吹き付けて溶鋼を脱硫することを特徴とする、溶鋼の脱硫方法。
  2. 前記上吹きランスから脱硫用プリメルトフラックスを吹き付ける前に、真空脱ガス槽内の溶鋼にMgOを投入することを特徴とする、請求項1に記載の溶鋼の脱硫方法。
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