JP2008063333A - 酸無水物エステルとその組成物、熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物をエステル化した新規な酸無水物エステルおよびその組成物。
【選択図】 なし
Description
脂環式酸無水物の硬化剤を用いる硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスホニウムブロマイド(特許文献1参照)、2-エチル-4-メチルイミダゾール(特許文献2参照)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7のエチルヘキサン塩(特許文献3参照)およびテトラフェニルホスホニウムブロマイド(特許文献4参照)などが使用されている。
また、従来の硬化剤は蒸気圧が高く、硬化時に一部が蒸発するため、配合比が目的とした値から外れ、目的とした性能を有する硬化物を得ることが困難である。
1.下記の一般式(1)で表されることを特徴とする酸無水物エステル。
3.一般式(1)におけるRが、メチル基、エチル基、1-プロピル基および2-プロピル基のいずれかである上記2の酸無水物エステル。
4.上記1〜3のいずれかの酸無水物エステルを含有することを特徴とする硬化剤。
5.上記1〜3のいずれかに記載の酸無水物エステルとエポキシ環を有する化合物を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
6.上記5の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
7.(A)上記1〜3のいずれかの酸無水物エステルと(B)シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸-1,2-無水物を含有することを特徴とする酸無水物エステル組成物。
8.(A):(B)の重量比が、95〜5:5〜95である上記7の酸無水物エステル組成物。
9.(A):(B)の重量比が、60〜10:40〜90である上記8の酸無水物エステル組成物。
10.上記7〜9のいずれかの酸無水物エステル組成物からなる硬化剤。
11.上記7〜9のいずれかの酸無水物エステル組成物とエポキシ環を有する化合物を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
12.上記11の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
13.シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物の酸クロライドおよびシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸から選択される化合物と、炭素数1〜4の一価もしくは二価のアルコールを反応させることを特徴とする一般式(1)で表される酸無水物エステルの製造方法。
14.シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸に前記アルコールを添加し、生成する水を抜きながら加熱転位反応をさせる工程を含む前記13の製造方法。
特に、上記の(B)酸無水物を含有する酸無水物エステル組成物は、硬化促進剤を添加しなくても硬化し、耐熱衝撃強度等の優れた硬化物が得られる。
一般式(1)におけるRは炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、1-プロピル基および2-プロピル基がさらに好ましい。
例えばシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物と一価アルコール、或いは二価アルコール(グリコール)とを反応させてエステル化し、そのエステル化物を生成する水を抜きながら加熱転位反応をさせることにより、合成することができる。その際、(i)水の共沸剤を入れることや、(ii)不活性ガスを流通させながら、あるいは(iii)減圧しながら反応を行うことで生成水の除去が容易となる。これら(i)〜(iii) の方法は併用することが出来る。また、反応は無触媒でも酸触媒を用いても構わない。
また、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物のカルボキシル基を酸クロライドにして、この部位に対応するアルコールを反応させることができる。
また、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸に前記アルコールを添加し、生成する水を抜きながら加熱転位反応をさせることもできる。その際は、上記(i)〜 (iii)の方法を採用することができる。(i)〜(iii)の方法は併用することも出来る。反応は無触媒でも酸触媒を用いても良い。
これらの反応に使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの一価アルコールや、エチレングリコール、ブチレングリコールなどのグリコールが挙げられる。これらのアルコールは単独で使用してもいいし、或いは2種以上のアルコールを混合して使用しても良い。
(a)上記のように、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物に一価アルコールを添加し、生成する水を抜きながら加熱転位反応をさせる工程を含む方法により製造する。シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物にエステルを構成するアルコールを添加して、加熱することで添加されたアルコールのアルキル基を含むカルボキシエステル基の転位反応および無水化反応が起こり、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-アルキルエステルが得られる。その際は、(i)水の共沸剤を入れること、(ii)不活性ガスを流通させながら、あるいは(iii)減圧しながら反応を行うことで生成水の除去が容易となる。(i)〜(iii)の方法は併用することも出来る。反応は無触媒でも酸触媒を用いても良い。
(b)シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物のカルボキシル基を酸クロライドにして、この部位に対応するアルコールを反応させることでシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-アルキルエステルを製造する。
(c)シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物の原料であるシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸と一価アルコールを反応させる。すなわち、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸に一価アルコールを添加し、生成する水を抜きながら加熱転位反応をさせる工程を含む方法により製造する。その際は、(a)の場合と同様に、(i)〜 (iii)の方法を採用することができる。(i)〜(iii)の方法は併用することも出来る。反応は無触媒でも酸触媒を用いても良い。(c)の方法では、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸にエステルを構成するアルコールを添加して、加熱することで添加されたアルコールのアルキル基を含むカルボキシエステル基の転位反応および無水化反応が起こり、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-アルキルエステルが得られる。
蒸留方式には回分式、連続式のいずれでも良いが、目的物の分解および高沸分の生成を抑制するため熱履歴が少ない方法が好ましい。また、副生成物との分離を良くするために、段数をつけて蒸留することが好ましい。
蒸留圧力は15mmHg(2kPa)以下が好ましく、10mmHg(1.3kPa)以下がさらに好ましい。このような圧力とすることにより目的物の分解および高沸成分の生成を抑制することができる。
本発明の酸無水物エステル組成物が、(A)一般式(1)で表される酸無水物エステル、特にシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-アルキルエステルと(B)シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物からなる場合には、(A):(B)の重量比が、95〜5:5〜95であることが好ましく、60〜10:40〜90であることがさらに好ましい。酸無水物エステルのアルキルにより異なるが、(A)に(B)を前記範囲に添加することにより硬化性が良好となり、硬化促進剤を用いずに、透明性(光透過率)などに優れた硬化物を容易に得ることができる。
本発明で使用するエポキシ環を有する化合物とは、エチレンオキサイド骨格を分子内に有する有機化合物や無機化合物である。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、DPP型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートやビニルシクロヘキセンジエボキサイド等の脂環式エポキシ樹脂;ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロ無水フタル酸のジグリシジルエステル等の多塩基酸のポリグリシジルエステル;ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を1個もったグリシジルエーテル等が挙げられ、上記エポキシ樹脂の核水添化物(核水添化エポキシ樹脂)も挙げられる。また、エポキシ環を有する無機化合物としてシリコーン骨格にエポキシ環が含まれる化合物が挙げられる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
これらのエポキシ環を有する化合物の中で、特に3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートやシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロ無水フタル酸のジグリシジルエステル等の多塩基酸のポリグリシジルエステル等の核水添化エポキシ樹脂は無色透明性を良好にするため、より好ましく用いられる。
熱硬化性樹脂組成物(II)においては、硬化促進剤の使用は無色透明性が損なわれやすいため、LED等の光電変換素子の封止材料には好ましくないが、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化促進剤を適宜使用できる。
熱硬化性樹脂組成物(I)および(II)における硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系化合物、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫やアルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物類、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、三ふっ化ホウ素、トリフェニルボレート等のホウ素化合物、塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化物が挙げられる。更には、高融点イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、アミンをエポキシ樹脂等に付加したアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性促進剤、イミダゾール系、リン系、ホスフィン系促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性促進剤、アミン塩型潜在性硬化促進剤、ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型の潜在性硬化促進剤等に代表される潜在性硬化促進剤も使用することができる。これらの硬化促進剤は単独又は2種以上を混合して使用することができる。
熱硬化性樹脂組成物(I)および、熱硬化性樹脂組成物(II)で硬化促進剤を用いる場合の硬化促進剤の配合量は、所定の効果が得られる限り特に限定されるものではないが、通常、熱硬化性樹脂組成物の重量に対する硬化促進剤量が0.001〜2重量%、好ましくは0.01〜1.0重量%である。0.001重量%以上の硬化促進剤量を用いることにより硬化が促進され、2重量%以下とすることにより硬化物の無色透明性が損なわれることや長期間加熱下での変色が大きくなることがない。
また、本発明の酸無水物エステルおよび酸無水物エステル組成物は、その他、積層板や絶縁性が必ずしも必要でない用途として、各種FRP成形品、各種コーティング材料、接着剤、装飾材料等に使用される熱硬化性樹脂組成物の硬化剤、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等の原料や改質剤、可塑剤や潤滑油原料、医農薬中間体、塗料用樹脂原料、トナー用樹脂等に用いることができる。
しかし、本発明の熱硬化性樹脂組成物は前記用途に限定されるものではなく、その他のLED、半導体レーザーの等の発光素子光導電素子、フォトダイオード、太陽電池、フォトトランジスタ、フォトサイリスタ等の受光素子、フォトカプラー、フォトインタラプター等の光結合素子で代表される光電変換素子の絶縁封止材料、液晶等の接着剤、光造形用の樹脂、更にプラスティック、ガラス、金属等の表面コーティング剤。装飾材料等の透明性を要求される用途にも用いることができる。
なお、以下の実施例等において、組成分析および硬化物の評価を以下のように行った。
A.組成分析
生成物の分析及び同定をNMR,GC-MSを使用した。測定条件は以下の通りである。
(1) NMR分析
装置: 日本電子製 JNM-AL400
溶媒: 重クロロホルム
(2) GC-MS分析
装置: 島津製作所製 GCMS-QP1100EX
カラム: 信和化工製HR-1(0.32φm x 25m)
各実施例および比較例で得られた樹脂組成物を5cm×5cmの型に、3mmの厚さとなるように導入し、開放系、熱風乾燥機で加熱して予備硬化した後、完全硬化させるために更に加熱する本硬化を行った。予備硬化では120℃で3時間の加熱し、本硬化では更に150℃で2時間加熱した。
得られた硬化物について、以下の方法により、(1)400nm光線透過率を(i)初期、(ii)150℃耐熱試験後、(iii)耐UV試験後に測定した。また、(2)下記の耐熱衝撃試験を行い、さらに(3)予備硬化および本硬化における重量減少率を測定した。
自記分光光度計(島津製作所社製、UV-3100PC)を使用して、約3mm厚の硬化物の400nm光線透過率を測定し、1mm厚の光線透過率(%/mm)に変換した。
(150℃耐熱試験)
150℃ギヤーオーブン中で120時間、硬化物を暴露し、硬化物の400nm光線透過率を測定した。
〈耐UV試験〉
アイスーパーUVテスター(岩崎電気SUV-W11)を用い、300〜400nmのUV光を、照射量68mw/cm2で硬化物に照射し、120時間後の400nm光線透過率を測定した。
(耐熱衝撃試験)
銅片を入れて硬化させた硬化物を、-40℃/30分→25℃/5分→100℃/30分→25℃/5分のヒートサイクルを100回繰り返し、クラック発生の有は×、無を○と評価した。
固体のシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物100g〔三菱ガス化学(株)製〕を鞘管、冷却管を備えた四つ口フラスコに入れ、180℃に加熱し、滴下ロートにてエタノール10.65gを1時間かけて滴下した。180℃にて1時間撹拌し、その後、共沸剤としてオルトキシレン10mlを加えて共に撹拌しながら還流した。生成する水を抜きながら235℃で11時間加熱したところ理論量の水が抜き出された。得られた反応液を理論段数10段相当での減圧蒸留を行い、圧力7mmHg(1.0kPa)、 200℃で主生成物を単離した。
表1および表2に示すNMR分析と、GC-MS分析における分子イオンピークとフラグメントピークにより、上記主生成物がシクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-エチルエステルであること、シクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-エチルエステルは下記の式(3)および式 (4)に示す二種類の立体異性体の混合物であることが分かった。
また、内標分析による方法で主生成物の組成分析をしたところ、シクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-エチルエステル純度は96.5重量%であり、原料のシクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物が2重量%、ジエステル化合物が1重量%、トリエステル化合物が0.4重量%含まれていた。シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-エチルエステルは液体で、その粘度は25℃で0.65Pa・sであった。
固体のシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物100g〔三菱ガス化学(株)製〕を鞘管、冷却管を備えた四つ口フラスコに入れ、180℃に加熱し、滴下ロートにてメタノール7.41gを1時間かけて滴下した。180℃にて1時間撹拌し、その後、共沸剤としてオルトキシレン10mlを加えて共に撹拌しながら還流した。生成する水を抜きながら235℃で11時間加熱したところ理論量の水が抜き出された。得られた反応液を理論段数10段相当での減圧蒸留を行い、圧力5mmHg(0.7kPa), 185℃で主生成物を単離した。
表3および表4に示すNMR分析と、GC-MS分析における分子イオンピークとフラグメントピークにより、上記主生成物がシクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-メチルエステルであること、シクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-メチルエステルは式(5)および式 (6)に示すに示す二種類の立体異性体の混合物であることが分かった。
また、内標分析による方法で主生成物の組成分析をしたところ、シクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-メチルエステル純度は99重量%であり、原料のシクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物が0.1重量%、ジエステル化合物が1重量%、トリエステル化合物が0.1重量%含まれていた。シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-メチルエステルは液体で、その粘度は25℃で1.42Pa・sであった。
固体のシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物100g〔三菱ガス化学(株)製〕を鞘管、冷却管を備えた四つ口フラスコに入れ、180℃に加熱し、滴下ロートにて1-プロパノール13.89gを1時間かけて滴下した。180℃にて1時間撹拌し、その後、共沸剤としてオルトキシレン10mlを加えて共に撹拌しながら還流した。生成する水を抜きながら235℃で11時間加熱したところ理論量の水が抜き出された。得られた反応液を理論段数10段相当で減圧蒸留を行い、圧力8mmHg(1.0kPa), 203℃で主生成物を単離した。
表5および表6に示すNMR分析およびGC-MS分析における分子イオンピークとフラグメントピークにより、上記主生成物がシクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-(1-プロピル)エステルであること、シクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-(1-プロピル)エステルは式(7)および式 (8)に示す二種類の立体異性体の混合物であることが分かった。
また、内標分析による方法で主生成物の質量組成を測ったところ、シクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-(1-プロピル)エステル純度は97重量%であり、原料のシクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物が0.1重量%、ジエステル化合物が2重量%、トリエステル化合物が0.1重量%含まれていた。シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-(1-プロピル)エステルは液体で、その粘度は25℃で0.47Pa・sであった。
実施例1で得られたシクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-エチルエステル81重量部と脂環エポキシ樹脂〔ダイセル化学(株)製セロキサイド、エポキシ当量126〕50重量部、ベンジルジメチルアミン0.13重量部を混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の30℃の粘度は0.28Pa・sであった。
得られた樹脂組成物の予備硬化および本硬化における重量減少率および硬化物の評価結果を表7に示す。
なお、表7において酸無水物はシクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物を示し、酸無水物エステルは該酸無水物のエステルを示す。また、組成の欄で酸無水物エステルおよび酸無水物の括弧内の数値は両者からなる組成物の重量%を示す。
実施例2で得られたシクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-メチルエステル76重量部、ベンジルジメチルアミン0.13重量部と脂環エポキシ樹脂〔ダイセル化学(株)製セロキサイド、エポキシ当量126〕50重量部を混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の30℃の粘度は0.42Pa・sであった。
得られた樹脂組成物の予備硬化および本硬化における重量減少率および硬化物の評価結果を表7に示す。
実施例3で得られたシクロヘキサン-1,2-4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-(1-プロピル)エステル86重量部と脂環エポキシ樹脂〔ダイセル化学(株)製セロキサイド、エポキシ当量126〕50重量部、ベンジルジメチルアミン0.13重量部を混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の30℃の粘度は0.30Pa・sであった。
得られた樹脂組成物の予備硬化および本硬化における重量減少率および硬化物の評価結果を表7に示す。
シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物が50重量%と実施例1で得られたシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-エチルエステルが50重量%(平均分子量212.2)からなる酸無水物エステル組成物 76重量部(0.36モル)と脂環族エポキシ樹脂〔ダイセル化学(株)製セロキサイド、エポキシ当量126〕50重量部と混合(酸無水物モル/エポキシ当量比0.9)して熱硬化性樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の30℃の粘度は1.3Pa・sであった。
得られた樹脂組成物の予備硬化および本硬化における重量減少率および硬化物の評価結果を表7に示す。
シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物が90重量%と実施例1で得られたシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-エチルエステルが10重量%(平均分子量201.0)からなる酸無水物エステル組成物 72重量部(0.36モル)と脂環族エポキシ樹脂〔ダイセル化学(株)製セロキサイド、エポキシ当量126〕50重量部と混合(酸無水物モル/エポキシ当量比0.9)して熱硬化性樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の30℃の粘度は10.0Pa・sであった。
得られた樹脂組成物の予備硬化および本硬化における重量減少率および硬化物の評価結果を表7に示す。
シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物が50重量%と実施例2で得られたシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-メチルエステルの純度が50重量%(平均分子量205.2)からなる酸無水物エステル組成物73重量部(0.36モル)と脂環族エポキシ樹脂〔ダイセル化学(株)製セロキサイド、エポキシ当量126〕50重量部と混合(酸無水物モル/エポキシ当量比0.9)して熱硬化性樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の30℃の粘度は1.5Pa・sであった。
得られた樹脂組成物の予備硬化および本硬化における重量減少率および硬化物の評価結果を表7に示す。
シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物が50重量%と実施例3で得られたシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物-4-(1-プロピル)エステルの純度が50重量%(平均分子量219.2)からなる酸無水物エステル組成物78重量部(0.36モル)と脂環族エポキシ樹脂〔ダイセル化学(株)製セロキサイド、エポキシ当量126〕50重量部と混合(酸無水物モル/エポキシ当量比0.9)して熱硬化性樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の30℃の粘度は1.0Pa・sであった。
得られた樹脂組成物の予備硬化および本硬化における重量減少率および硬化物の評価結果を表7に示す。
メチルヘキサヒドロ無水フタル酸〔新日本理化(株)製、リカシッドMH700〕60重量部、硬化促進剤としてベンジルジメチルアミンを0.13重量部、および脂環エポキシ樹脂〔ダイセル化学(株)製セロキサイド、エポキシ当量126〕50重量部を混合した。得られた樹脂組成物の30℃の粘度は0.10Pa・sであった。
得られた樹脂組成物の予備硬化および本硬化における重量減少率および硬化物の評価結果を表7に示す。
シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物を35重量部、脂環エポキシ樹脂〔ダイセル化学(株)製セロキサイド、エポキシ当量126〕50重量部と混合したが、硬化速度が速いために泡を巻き込んだまま硬化が進み、泡のない良好な硬化物は得られなかった。
シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物(三菱ガス化学(株)製)を71重量部(0.36モル)、脂環族エポキシ樹脂(ダイセル化学(株)製セロキサイド、エポキシ当量126)50重量部と混合(酸無水物/エポキシ当量比0.9)して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の30℃の粘度は22.2Pa・sであり、この樹脂組成物を5cm×5cmの型に、3mmの厚さとなるように流したが、硬化速度が速いために泡を巻き込んだまま硬化が進み、泡のない良好な硬化物が得られなかった。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、光線透過性に優れ、熱処理およびUV照射した場合でも硬化後の蒸発ロスがなく、無色透明性が保持でき、また、予備硬化時および本硬化時の重量減少率が少ないことから高精度の成形体が得られ、光電変換素子の封止材料等に有利に使用できることが分かる。
さらに、本発明の(A)酸無水物エステルと(B)シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物からなる酸無水物エステル組成物と、エポキシ環を有する化合物からなる熱硬化性樹脂組成物(実施例7〜10)では、上記特性に加えて、硬化促進剤を用いずに硬化することができ、−40℃〜100℃の冷却加熱を100回繰り返すヒートサイクルでもクラックが発生しないことから、極めて優れた耐熱衝撃性を有することが分かる。
Claims (14)
- 一般式(1)におけるRが、炭素数1〜4のアルキル基である請求項1に記載の酸無水物エステル。
- 一般式(1)におけるRが、メチル基、エチル基、1-プロピル基および2-プロピル基のいずれかである請求項1に記載の酸無水物エステル。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の酸無水物エステルを含有することを特徴とする硬化剤。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の酸無水物エステルとエポキシ環を有する化合物を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
- (A)請求項1〜3のいずれかに記載の酸無水物エステルと(B)シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物を含有することを特徴とする酸無水物エステル組成物。
- (A):(B)の重量比が、95〜5:5〜95である請求項7に記載の酸無水物エステル組成物。
- (A):(B)の重量比が、60〜10:40〜90である請求項8に記載の酸無水物エステル組成物。
- 請求項7〜9のいずれかに記載の酸無水物エステル組成物からなる硬化剤。
- 請求項7〜9のいずれかに記載の酸無水物エステル組成物とエポキシ環を有する化合物を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項11に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
- シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物の酸クロライドおよびシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸から選択される化合物と、炭素数1〜4の一価もしくは二価のアルコールを反応させることを特徴とする一般式(1)で表される酸無水物エステルの製造方法。
- シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸に前記アルコールを添加し、生成する水を抜きながら加熱転位反応をさせる工程を含む請求項13に記載の製造方法。
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