JP2008055570A - 複合金属ナノ粒子、複合金属ナノ粒子を含む多光子吸収反応材料と反応生成物、複合金属ナノ粒子を含む多光子吸収反応助剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】縦横方向の長さが異なる形状異方性を有するコア粒子(例えば、金ナノロッド)表面に、光照射によりプラズモン増強場を発現する金属微小構造体(例えば、銀)を島状に離間して設けた複合金属ナノ粒子と、多光子吸収材料(例えば、ジアリールエテン、アクリレート系やエポキシ系の光硬化性樹脂等)を混合して用い、三次元光記録媒体、三次元光造形用材料、蛍光顕微鏡などに適用する。
【選択図】図1
Description
すなわち、物質内部の、任意の所望の位置でのみ反応を起こすことが可能であり、更には、集光スポット中心部の光強度の高い部分でのみ光反応を起こすことが可能であるため、回折限界を超える加工記録への期待が高まっている。
このような問題を有していることから、多光子吸収反応の優れた特徴を活かしたアプリケーションの普及を図るためには、前記大型のパルスレーザーを必要としない、例えば半導体レーザーにより反応を誘起することが可能な高感度な多光子吸収材料の開発が不可欠であると言える。
金属薄膜の作る増強場は、光の波長程度の空間的広がりを持っており、後述する微粒子による局在プラズモン増強場に比べると1桁近く大きく、光反応の大きな増感効果が期待される。しかし、現実には、高感度な検出は可能であるが、励起光とのカップリングの制約があるために、前記のような特殊な光学配置を必須としている。すなわち、増感効果が得られるエリアは、金属薄膜に沿ったエリアで、かつ、励起光で照明可能範囲(金属薄膜を担持する光屈折率媒体の配置と形状に依存)に限られているため、応用は微量の試料を用いた高感度検出法の分野に限られている。代表的なプラズモン増強効果をもつ金属薄膜材料として銀が用いられている。
この技術における金属微粒子表面に励起されるプラズモンは、上記特許文献1に開示されている技術よりも更に広がりが小さい局在プラズモン増強場であり、その広がりは金属微粒子の周囲100nm以下の領域に限定される。そのため、(a)粒子表面に吸着した試料を高感度に観測可能な微小プローブとして用いるか、若しくは、(b)局在プラズモン増強場が微小な領域に閉じ込められた伝播しない光であることを利用して、金属微粒子を試料近傍で移動することにより、得られる信号と位置との関係から観察像を得る微小プローブ顕微鏡として用いられている。
前者(a)の場合には、ガラス表面等に付着若しくは配列した金属微粒子表面に存在する試料からの蛍光等を、金属微粒子表面の局在プラズモン増強場により増強、観察している。後者(b)の場合は、光の放射圧により微粒子を保持する光ピンセットの原理で微粒子を試料表面でスキャンする等の方法が用いられているが、何れも薄膜表面の分析技術と位置付けられている。また、観察に用いる波長を選択するために、球形コアセル構造による共鳴波長のチューニングが開示されているが、コアとセルの寸法比で共鳴波長が決まるため、共鳴波長の揃った粒子を再現性良く得ることは難しい。
しかし、凝集粒子の凝集塊形状を制御することは難しく、凝集塊の散乱の影響が顕著であることから、マイクロキャビティー中など、微小領域での利用に限られている。
しかし、共鳴波長が球状金微粒子の540nm近傍に相当する低アスペクト比の金ナノロッドでは、球形粒子並みの増強度しか得られないという問題がある。さらには、金以外の金属で、このような共鳴波長の揃った微細な高アスペクト比の粒子が得られておらず、420〜500nmにおいて利用可能な大きな増強効果を示す局在プラズモン増強場発生源は未だ知られていない。
さらに、特許文献7、8に用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。
特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する2光子吸収材料を具体的に開示している例は無かった。
上記提案では、本発明の目的とする光造形用材料、すなわち、局在プラズモン増強場を利用して多光子吸収反応を行う光造形用材料に関して記載されていない。
走査型光学顕微鏡に関するものとしては、例えば、照明光の利用効率を向上させたまま、集光素子のNAの拡大、視野数の拡大を可能とする構成の顕微鏡が提案されている(例えば、特許文献12参照。)。
上記提案では、本発明の目的とする局在プラズモン増強場を利用して多光子吸収を行う蛍光顕微鏡に関して記載されていない。
この問題を解決すべく本発明者らは検討を進めた結果、縦横方向の長さが異なる形状異方性を有するコア粒子(例えば、棒状のコア粒子)の表面に、レーザー光の照射によってプラズモン増強場の発現が可能な金属皮膜をコア粒子表面全体に被覆した複合金属ナノ粒子を用いることにより、上記課題が解決されることを見出した。
従って、本発明の多光子吸収反応材料を用いれば、三次元メモリー、三次元造形等様々な多光子反応過程を利用した応用製品が実現可能となる。
さらに、多光子吸収材料として2光子吸収蛍光材料を用いて2光子蛍光顕微鏡に用いれば、被試験体の劣化や、悪影響をもたらすことなく高感度で観察することが可能である。
また、本発明の多光子吸収反応材料、多光子吸収反応生成物、および多光子吸収反応助剤によれば、物質内部の三次元の任意位置で高密度、高精細な反応を惹起できるため、例えば、超高密度光記録や、超精密三次元造形物など回折限界を超える加工・記録が実現可能となる。さらに多光子吸収材料を蛍光顕微鏡に用いれば、高感度で観察することが可能である。
先ず、粒子形状と金属種の効果について説明する。増強効果の大きなナノ粒子として知られているものに、棒状の微粒子がある。棒状の金属微粒子の最も大きな増強度を示す波長は金属種とアスペクト比により決まる共鳴波長である。
即ち、球状の微粒子に始まって、粒子のアスペクト比が大きいほど長波長側に共鳴波長はシフトすると共に、球状の微粒子に比較し大きな増強度を示す。従って、所望の波長において高い増強効果を示す金属微粒子を得るには、材料金属とアスペクト比の選択が重要である。
極微粒子表面に発生する局在プラズモン増強場に重なりが生じない程度にはなれた孤立した極微粒子を、近接させていくと相互にエネルギーの授受が可能になると共に、局在プラズモン増強場に偏りを生じ、孤立した局在プラズモン増強場に比較し、さらに増強度の高い部位が生じる。また、このように、互いにエネルギーの授受が可能な程度に近接した微細な局在プラズモン増強場が多数集まることによって構成される局在プラズモン増強場全体は、局在プラズモンを励起する波長程度の大きさを持つと、孤立した局在プラズモン増強場とは異なって、励起光の位相を感受することが可能となる。このような、微細な局在プラズモン増強場の近接した集合は、薄膜上に生じる表面プラズモン増強場の広がりと同様に、波長程度に広がる。
従って、複合金属ナノ粒子の粒子径が小さな領域では、表面を構成する島状の金属微小構造体(極微粒子)間の相互作用による局在プラズモン増強場の強い増強効果が発現して、前述のコア材料の表面全体を局在プラズモン増強場を発生する金属で被覆した複合金属ナノ粒子に比べて、より大きな増強効果が発揮される。
従って、前記複合ナノ粒子の大きな局在プラズモン増強場を利用すれば、増強効果を得るために必要な分散濃度は小さくて済み、散乱の効果が抑制され、効率的な局在プラズモン増強場による増強効果が発揮される。
前記いずれの大きさを持った複合金属ナノ粒子の場合でも、その局在プラズモン増強場の増強効果は2光子吸収反応の高感度化に寄与することができる。
金属微小構造体の外形寸法は、基本共鳴波長を決めるファクターであるため、形状の安定性は重要であることから、形状制御は特に重要である。
さらに、本発明では、極微粒子をコア粒子の表面に島状に離間して設けた、いわゆる分断された金属微小構造体とすることにより、近接場光学的には複数の局在プラズモン増強場が近接されて配置された構成と等価な効果が得られる。これにより、前述のコア材料の表面全体を一様に金属で被覆したコアセル構造の複合金属ナノ粒子に比較して、さらに大きな増強効果が得られる。
金属構造体を構成する個々の金属微小構造体の形状としては、エネルギーの授受が可能な程度に近接してコア粒子上に島状に離間して配置されていれば、特に制約は無く、球状および異方性を持った粒子、ひび割れた膜状など様々な形態が利用可能である。
特に、結晶成長核として、容易に高アスペクト比のナノ粒子が得られる金ナノロッドを用いることにより、島状に離間して設けた金属微小構造体(極微粒子)を再現性良く幅広い金属で作成可能となり、高アスペクト比ナノロッドを得ることができる。
金属種の選択を変えることにより、局在プラズモン共鳴波長の最短波長を変えることができ、アスペクト比や、局在プラズモン増強場を発生する金属微小構造体の構造等の選択により、幅広い波長領域で局在プラズモン増強場による光の増強効果が発現し、利用可能となる。
異種材料の組み合わせた金属微小構造体の一例を以下に示す。
例えば、コア粒子上に先ず、銀よりなる島状の極微粒子からなる金属構造体を堆積し、次に、緩衝層としてSiO2層を形成して隔て、さらに島状の銀よりなる金属微小構造体を形成して構成した場合などが挙げられる。
ここで、緩衝層としては、コア粒子表面上で完全な膜状の構造をとる必要はなく、金属微小構造体を構成する金属と同様に、島状や球状であることも可能であり、複数の層を実質分離していればよい。実質分離しているとは、拡散等の固相反応により金属微小構造体を構成する島状、球状等の形状をとる各部位が少なくとも金属微小構造体を超えて融着あるいは粒子成長することを抑制する効果があることを指す。
例えば、局在プラズモン増強場発生源としての複合金属ナノ粒子と、ジアリールエテンや、アクリレート系やエポキシ系の光硬化性樹脂(多光子吸収材料)等、多光子吸収色素や多光子吸収材料を組み合せた多光子吸収反応材料は、三次元物質内部の任意の位置で高密度、高精細な反応を引き起こすことができる。また、反応の閾値が下がることによって、従来必要であったフェムト秒レーザーのような高価な光源を不要とすることができて大幅な低コスト化が可能となる。
なお、本発明における多光子吸収反応生成物は、このような多光子吸収反応材料の光反応により得られるものである。
例えば、局在プラズモン増強場発生源としての複合金属ナノ粒子と、重合開始剤や光増感剤等の多光子(2光子)吸収反応促進剤を組み合せることによって、アクリレート系やエポキシ系等の樹脂を高感度で反応を引き起こすことができる。また、多光子吸収反応助剤を用いることで反応の閾値が下がり、従来必要であった高価な光源(例えば、フェムト秒レーザー)が不要となり、応用製品の製造に用いる装置の大幅なコスト低減が可能となる。
以下代表的な応用例として、三次元多層光メモリ、光造形用材料、2光子蛍光顕微鏡について挙げ説明する。
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。さらに、コンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。
そのような中、DVD±Rのような従来の2次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
三次元光記録媒体を提供するためには、三次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、2光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法がある。
すなわち、本発明の多光子吸収反応材料を用いれば、超高密度の2光子吸収三次元光記録媒体は元よりそれを用いた2光子吸収三次元光記録方法及び再生方法が提供される。
基板として、限定するものではないが好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎または静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等が挙げられる。
また、この基板には予め、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであってもよい。使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。蒸発除去には加熱や減圧を用いてもよい。
保護層(中間層)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布して設けてもよい。あるいは、ガラス板を貼合わせてもよい。
また、保護層と2光子吸収光記録材料(記録層)の間および/または、基材と記録層の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。さらに感光膜間の保護層(中間層)にも予め、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであってもよい。
図1の概略図に、本発明における三次元多層光メモリの記録/再生のシステム構成(a)と記録媒体の構成断面(b)を示す。
記録用レーザー光源1(例えば、ハイパワーのパルスレーザー光源)からの記録光を対物レンズ5により3次元記録媒体6中にフォーカスする。フォーカスポイントでは、2光子吸収により記録が行われるが、フォーカスポイント以外では、先に述べたように光の照射パワーが低く、2乗効果による記録は行われない。即ち、選択的な記録が可能となる。
記録層の厚さは0.01〜0.5μm、中間層の厚さは0.1〜5μmが好ましく、この構造であれば、現在普及しているCD/DVDと同じディスクサイズで、テラバイト級の超高密度光記録が実現できる。さらに、データの再生方法(透過/あるいは反射型)により、基板11と同様の基板12(保護層)、あるいは高反射率材料からなる反射膜が設けられた構成とされる。
なお、本発明に従い同様に形成される三次元多層光メモリの形態としては、カード状、プレート状、テープ状、ドラム状等が考えられる。
以下、本発明における光造形用材料の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの実施形態により何ら限定されない。
図2に、本発明の複合金属ナノ粒子と多光子吸収材料を含む多光子吸収反応材料を用いて光造形する場合に用いる装置の概略構成図を示す。以下、2光子光造形法として説明する。
なお、図2中、符号23は透過光陵を時間的にコントロールするシャッター、24はNDフィルター、27は光手段としてのレンズ、28はコンピュータ、20は光造形物を示す。
(a)回折限界をこえる加工分解能:2光子吸収の光強度に対する非線形性によって、光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。
(b)超高速造形:2光子吸収を利用した場合、焦点以外の領域では、光硬化性樹脂が原理的にも硬化しない。このため照射させる光強度を大きくし、ビームのスキャン速度を速くすることができる。このため、造形速度を約10倍向上することができる。
(c)三次元加工:光硬化性樹脂は、2光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来のSIHでは、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になる問題点が、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。
(d)高い歩留り:従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行うのでこうした問題は解消される。
(e)大量生産への適用:超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。
主成分は、オリゴマーと反応性希釈剤からなる樹脂成分と光重合開始剤(必要に応じ光増感材料を含む)である。光重合開始剤や光増感材料が含まれる場合にはこれらの反応促進剤が多光子吸収反応促進剤であってもよく(この場合には樹脂は必ずしも多光子吸収材料でなくともよい)、いわゆる、複合金属ナノ粒子と多光子吸収反応促進剤が多光子吸収反応助剤として機能するものが用いられる。
なお、オリゴマーは重合度が2〜20程度の重合体であり、末端に多数の反応基を持つものが好ましく用いられ、さらに、粘度、硬化性等を調整するために反応性希釈剤が加えられてもよい。
特に、光源から発光されるパルスレーザー光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、パルスレーザー光の照射に際して、多光子吸収過程を利用することにより、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させることが可能となる。
従来の2光子吸収材料(2光子吸収重合開始剤または2光子吸収光増感材料)に比較して、2光子吸収感度が高いため、高速造形が可能で、励起光源としても小型で安価なレーザ光源が使用できるため、大量生産可能な実用用途への展開が可能となる。
2(多)光子励起レーザ走査顕微鏡(2光子蛍光顕微鏡)とは、近赤外パルスレーザを標本面上に集光し走査させて、そこでの2(多)光子吸収により励起されて発生する蛍光を検出することにより像を得る顕微鏡である。
以下、本発明における2光子蛍光顕微鏡の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの実施形態により何ら限定されない。
図3に、本発明における2光子励起レーザ走査顕微鏡(2光子蛍光顕微鏡)の基本構成の概略図を示す。
このような構成により、2光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。
これを用いれば、従来の2光子吸収蛍光材料に比較して大きな2光子吸収断面積を有しているので、低濃度で高い2光子吸収特性を発揮する。従って、本発明によれば、高感度な2光子吸収蛍光反応材料が得られるだけでなく、被観察材料に照射する光の強度を強くする必要がなくなり、被観察材料の劣化、破壊を抑制することができ、被観察材料中の他成分の特性に対する悪影響も低下させることができる。
以下の手順で、金ナノロッド分散液、緩衝層(SiO2)皮膜の形成、金ナノロッドをコアとする複合ナノ粒子分散液、複合ナノ粒子と色素の混合分散液を順次作製した。
光還元法を用いた金ナノロッドの作成から順を追って説明する。
原料溶液としてCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)水溶液(0.18mol/l)70ml、シクロヘキサン0.36ml、アセトン1ml、硝酸銀水溶液(0.01mol/l)1.5mlを加え、マグネットスターラーにより攪拌した。さらに、塩化金酸溶液(0.024mol/l)2mlを加えた後、アスコルビン酸水溶液(0.1mol/l)0.4mlを加え、塩化金酸溶液の色が消えたことを確認した。
次に、直径100mmのシャーレーに混合用液を移し、254nmの紫外線を低圧水銀ランプ(アズワン社製、SUV−16)により約20分照射した。この工程により、金ナノロッドが形成され、前記金ナノロッドの安定な分散液が得られた。透過電子顕微鏡による観測の結果、分散液中の金ナノロッドは、平均的な粒子形状が長径50nm、短径12nmであることが確認された。
なお、上記金ナノロッドの作製においては、光還元法による合成を示したが、電解法、種粒子からの成長など各種合成法により得られる金ナノロッドも使用可能なことは言うまでもない。成長条件を変えることにより、アスペクト比の異なる金ナノロッドを容易に得ることが可能である。
次に、上記で得られた金ナノロッド分散液5mlに、(3−アミノプロピル)エチルジエトキシシランのアセトン溶液(1vol%)10mlを加え、80℃で2時間加熱処理し、金ナノロッド表面にSiO2皮膜を形成した。この工程により、SiO2皮膜付き金ナノロッドが形成された。
さらに、シクロヘキサン5mlを加えて攪拌することにより、SiO2皮膜付金ナノロッドのシクロヘキサン分散液が得られた。ここで、油性溶媒の選択については適宜選択可能であることは言うまでもなく、また、微粒子の分散方法も、チオール基を有する化合物を含め、さまざまな界面活性剤を、油性溶媒の種類、分散特性を考慮して採用することが可能である。
次いで、上記で得られたシクロヘキサン分散液5mlに、硝酸銀のアセトン溶液(0.01mol/l)を0.01ml加え、さらにアスコルビン酸のアセトン溶液(0.01mol/l)を攪拌しながら0.005mlずつ、2回に分け、総量として0.01mlを加え、化学還元により還元した。
還元により生じた金属銀は、溶液中に分散した金ナノロッド表面のSiO2皮膜上に島状に析出して、それぞれ離間した銀微小構造体を形成した。ここで、硝酸銀の添加量と液温および還元剤の添加量により還元速度をコントロールすることが可能であり、これらの条件を適宜選択して組み合わせることにより、金属微小構造体の組織をコントロールすることが可能である。
以上の工程により、金ナノロッドをコアとする複合ナノ粒子分散液が得られた。
さらに、下記構造式(I)で表される2光子蛍光色素のアセトン飽和溶液0.5mlを、上記で作製した金ナノロッドをコアとする複合ナノ粒子分散液2mlに注入攪拌し、複合ナノ粒子と色素の混合分散液が得られた。
実施例1と同様にして光還元法を用い、平均的な粒子形状が長径100nm、短径25nmである金ナノロッド分散液を得たこと以外は実施例1と同様の工程により、銀微小構造体を島状に形成した複合ナノ粒子の分散液を作製し、さらに複合ナノ粒子と前記構造式(I)で表される2光子蛍光色素の混合分散液を作製した。
実施例1と同様にして光還元法を用い、平均的な粒子形状が長径200nm、短径50nmである金ナノロッド分散液を得たこと以外は実施例1と同様の工程により、銀微小構造体を島状に形成した複合ナノ粒子の分散液を作製し、さらに複合ナノ粒子と前記構造式(I)で表される2光子蛍光色素の混合分散液を作製した。
実施例1と同様にして光還元法を用い、平均的な粒子形状が長径400nm、短径80nmである金ナノロッド分散液を得たこと以外は実施例1と同様の工程により、銀微小構造体を島状に形成した複合ナノ粒子の分散液を作製し、さらに複合ナノ粒子と前記構造式(I)で表される2光子蛍光色素の混合分散液を作製した。
実施例1と同様にして光還元法を用い、平均的な粒子形状が長径600nm、短径100nmである金ナノロッド分散液を得たこと以外は実施例1と同様の工程により、銀微小構造体を島状に形成した複合ナノ粒子の分散液を作製し、さらに複合ナノ粒子と前記構造式(I)で表される2光子蛍光色素の混合分散液を作製した。
実施例1において同様にして光還元法を用い、平均的な粒子形状が長径800nm、短径100nmである金ナノロッド分散液を得たこと以外は実施例1と同様の工程により、銀微小構造体を島状に形成した複合ナノ粒子の分散液を作製し、さらに複合ナノ粒子と前記構造式(I)で表される2光子蛍光色素の混合分散液を作製した。
実施例1と同様にして光還元法を用い、平均的な粒子形状が長径1600nm、短径150nmである金ナノロッド分散液を得たこと以外は実施例1と同様の工程により、銀微小構造体を島状に形成した複合ナノ粒子の分散液を作製し、さらに複合ナノ粒子と前記構造式(I)で表される2光子蛍光色素の混合分散液を作製した。
先ず、実施例1と同様の工程(〔金ナノロッド分散液の作製〕、〔緩衝層(SiO2)皮膜の形成〕、〔金ナノロッドをコアとする複合ナノ粒子分散液の作製〕)により、平均的な粒子形状を長径50nm、短径12nmとした金ナノロッド表面のSiO2皮膜上に島状の銀微小構造体を形成した。複合ナノ粒子を含有する分散液(シクロヘキサン溶液)を得た。
以上のような工程により、緩衝層であるSiO2膜により隔てられた、2層の島状の銀が積層した構成の金属微小構造体を備えた複合金属ナノ粒子のシクロヘキサン分散溶液が得られた。
さらに、この複合金属ナノ粒子のシクロヘキサン分散溶液を、実施例1と同様に前記構造式(I)で表される2光子蛍光色素を含む溶液と混合し、複合金属ナノ粒子と2光子蛍光色素の混合分散液を作成した。
以下の手順で、金ナノロッド分散液、金ナノロッドをコアとする複合ナノ粒子分散液、複合ナノ粒子と色素の混合分散液を順次作製した。
次に、直径100mmのシャーレーに混合用液を移し、254nmの紫外線を低圧水銀ランプ(アズワン社製、SUV−16)により約20分照射した。この工程により、金ナノロッドが形成され、前記金ナノロッドの安定な分散液が得られた。透過電子顕微鏡による観測の結果、分散液中の金ナノロッドは、平均的な粒子形状が長径50nm、短径12nmであることが確認された。
シクロヘキサン2mlに、下記構造式(I)で表される2光子蛍光色素のアセトン飽和溶液0.5mlを混合した2光子蛍光色素溶液を作成した。この溶液は、実施例1〜9に示した複合ナノ粒子と色素の混合分散液から複合ナノ粒子を除いたものに相当する。
実施例1と同様の工程により、平均的な粒子形状を長径50nm、短径12nmとした金ナノロッド表面にSiO2皮膜を形成した。
得られたSiO2皮膜付き金ナノロッドのシクロヘキサン分散液5mlに、硝酸銀のアセトン溶液(0.01mol/l)を0.05ml加え、さらにアスコルビン酸のアセトン溶液(0.01mol/l)を攪拌しながら0.005mlずつ、10回に分け、総量として0.05mlを加え、化学還元により還元した。還元により生じた金属銀は、溶液中に分散した金ナノロッドのSiO2皮膜表面全体を被覆するように析出(膜状)し、いわゆる緩衝層上に銀皮膜が積層した構成の複合金属ナノ粒子が得られた。
実施例9と同様の工程により、界面活性剤であるドデカンチオールにより安定分散された、平均的な粒子形状が長径50nm、短径12nmである金ナノロッドのシクロヘキサン分散液5mlを作製した。この金ナノロッドのシクロヘキサン分散液に、前記構造式(I)で表される2光子蛍光色素を混合した2光子蛍光色素溶液を作製した。
銀被覆の複合ナノ粒子と2光子蛍光色素の混合分散液を光路長1mmの光学セルに入れ、測定試料とした。2光子励起光源には赤外線フェムト秒レーザー、スペクトラフィジックス社製、MaiTai(波長780nm)を用い、焦点距離100mmの集光レンズで混合溶液中にそれぞれ集光点を結び、2光子励起の蛍光を測定した。
実施例1〜7の各銀被覆の複合ナノ粒子と2光子蛍光色素の混合分散液について、2光子蛍光の増強度を下記表1に示す(励起光強度は、平均出力80mWである)。なお、相対比較である比較例1は表1に記載していない。
評価における記号の意味は次のようである。
◎:著しく増強効果が認められたもの。
○:増強効果が認められたもの。
△:基準溶液と同程度の蛍光強度を示したもの。
2光子蛍光測定1と同じ測定系を用い、励起光源の平均出力を400mWに設定し、2光子蛍光光量の測定を行った。測定に用いた試料(分散液)は、実施例1、実施例9および比較例1である。
3つの試料をそれぞれ光路長1mmのセルに入れ、セル中の試料が励起光源の焦点位置となるようセットし、励起光の連続照射を行った。照射開始直後の蛍光光量および同一点に連続照射を30分行った後の蛍光光量をそれぞれの試料で比較例1と比較し検討した結果を下記表2に示す。なお、相対比較である比較例1は表2に記載していない。
評価における記号の意味は次のようである。
◎:著しく増強効果が認められたもの。
○:増強効果が認められたもの。
2光子蛍光測定1と同じ測定系を用いて同じ測定条件で、実施例1、8、および比較例2、3の混合分散液の2光子蛍光強度を観察し、その蛍光強度を相対評価した。結果を下記表3に示す。
評価における記号の意味は次のようである。
◎:最も蛍光強度の強かったもの。
○:次に蛍光強度の強かったもの。
●:比較した中で次に蛍光の弱かったもの。
△:比較した中で最も蛍光強度の弱かったもの。
さらに、実施例1と実施例8の比較から、金ナノロッド表面にSiO2緩衝層を介して2層の島状の銀を積層した複合金属ナノ粒子(実施例8)が最も大きな増強効果を示した。この結果から、複数の金属微小構造体を設けることにより、さらなるプラズモン増強場による増強効果が発揮されることが認められた。
1 記録用レーザー光源
2 再生用レーザー光源
3 ピンホール
4 検出器
5 対物レンズ
6 3次元記録媒体
11 基板
12 基板(又は反射膜)
13 記録ビット
14 記録層
15 中間層(保護層)
20 光造形物
21 近赤外パルスレーザ光源(光源)
23 シャッター
24 NDフィルター
25 ミラースキャナー
26 Zステージ
27 レンズ
28 コンピュータ
29 光硬化性樹脂液
30 2光子励起レーザ走査顕微鏡
31 レーザ光源
32 光束変換光学系
33 走査光学系
34 対物レンズ系
35 標本面
36 ダイクロイックミラー
37 光検出器
Claims (10)
- 縦横方向の長さが異なる形状異方性を有するコア粒子の表面に、光照射によりプラズモン増強場を発現する金属微小構造体を島状に離間して設けてなることを特徴とする複合金属ナノ粒子。
- 前記縦横方向の長さが異なる形状異方性を有するコア粒子が、金ナノロッドであることを特徴とする請求項1に記載の複合金属ナノ粒子。
- 前記縦横方向の長さが異なる形状異方性を有するコア粒子の表面と、光照射によりプラズモン増強場を発現する金属微小構造体との間に接合界面を隔離する緩衝層を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の複合金属ナノ粒子。
- 前記光照射によりプラズモン増強場を発現する金属微小構造体が、複数の層で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合金属ナノ粒子。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の複合金属ナノ粒子と多光子吸収材料を含んでなることを特徴とする多光子吸収反応材料。
- 前記多光子吸収材料が、2光子吸収材料であることを特徴とする請求項5に記載の多光子吸収反応材料。
- 前記多光子吸収材料が、多光子吸収色素であることを特徴とする請求項5または6に記載の多光子吸収反応材料。
- 請求項5〜7のいずれかに記載の多光子吸収反応材料から得られることを特徴とする多光子吸収反応生成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の複合金属ナノ粒子と多光子吸収反応促進剤を含んでなることを特徴とする多光子吸収反応助剤。
- 前記多光子吸収反応促進剤が2光子吸収反応促進剤であることを特徴とする請求項9に記載の多光子吸収反応助剤。
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