JP2008054518A - 液体調味料、動物性素材調理時の臭み低減方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化防止剤や多量の酒類などを添加しなくても魚や肉などの臭みを十分に低減でき、しかもだし風味の効いた美味しい煮物を調理できるとともに、固形分の均一分散性及び安定性に優れた液体調味料を提供すること。
【解決手段】本発明の液体調味料は、寒天と、500μm以下の魚節粉末とを含有することを特徴とする。この場合、寒天は低ゼリー強度寒天であることがよい。本発明の液体調味料は、例えば、ガム類、澱粉類、ペクチン、ゼラチン等といった、寒天を除く増粘剤をさらに含有していてもよい。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の液体調味料は、寒天と、500μm以下の魚節粉末とを含有することを特徴とする。この場合、寒天は低ゼリー強度寒天であることがよい。本発明の液体調味料は、例えば、ガム類、澱粉類、ペクチン、ゼラチン等といった、寒天を除く増粘剤をさらに含有していてもよい。
【選択図】なし
Description
本発明は、魚、肉、野菜などを加熱調理するときに用いる液体調味料、及びそのような液体調味料を用いた動物性素材調理時の臭み低減方法に関する。
従来より、魚、肉などの煮物を調理する際には、素材への味付けとともに、魚、肉の持つ生臭さや獣臭さをマスキングするため、醤油、日本酒・みりん・ワイン等の酒類、味噌等の調味料が用いられてきた。特に、近年では調理の手間を簡略化するため、煮物調理に用いる各種の調味料をあらかじめ複合的に混合させた液体調味料がよく用いられている。
しかしながら、醤油、日本酒・みりん・ワイン等の酒類、味噌等で調理するだけでは、魚、肉などの臭みを十分に消すことはできない。そこで、魚の生臭みなどを消すための様々な工夫が従来なされてきた(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2002−291437号公報
特開昭57−68763号公報
しかしながら、特許文献1の方法は電子レンジでの煮魚調理に限定されたものであり、かつ本来酸化防止剤として使用される食品添加物を用いている点で、好ましくないものであった。また、特許文献2の方法では、清酒を利用した方法であって、生臭みを消すためには多量の清酒を必要とし、それゆえ調理物にアルコール臭が付与されてしまうという欠点を有していた。つまり、上記のような添加物等を極力使用せずに魚や肉の臭みを十分に消去でき、煮物に好適な液体調味料の開発が求められていた。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸化防止剤や多量の酒類などを添加しなくても魚や肉などの臭みを十分に低減でき、しかもだし風味の効いた美味しい煮物を調理できるとともに、固形分の均一分散性及び安定性に優れた液体調味料を提供することにある。また、本発明の別の目的は、魚や肉などといった動物性素材の調理時にその臭みを十分に低減できる方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、煮物用液体調味料のだし感を強くすることにより、魚の生臭み、肉の獣臭をマスキングする効果を奏することを確認した。この場合、液体調味料中に通常のだし液(魚節を熱水で抽出したもの。)や各種エキス類を添加するだけでは、香りが不十分であることがわかった。また、鰹節粉等の魚節粉末を液体調味料中に直接添加することで、加熱調理中に魚節粉末からだし風味が新たに抽出され、格段にだし感が増強されることもわかった。なお、だしの風味を補うために魚節やその削り節、粉などを含有した液体調味料が従来提供されているが(例えば、実公平4−54794号)、この従来技術では魚や肉の臭みをマスキングする効果の付与のために魚節粉末を混入させているわけではない。
ここで、魚節粉末を液体調味料に添加した場合には、粉末の沈殿や浮上が起こりやすくなり、液体調味料の不均一化という問題が生じる。この問題を解決する手法としては、粉末などの固形分の均一分散化及び安定化のため、各種ガム類、澱粉類、ペクチン、ゼラチン等の増粘剤を使用して液体調味料に粘性を付与することが従来よく行われている。しかし、この方法によって魚節粉末を均一に分散させると、だし風味が弱くなり、魚や肉の臭みをマスキングする効果が減少するという問題が生じることがわかった。その原因としては、液体調味料の粘度が上昇し、だし液、各種エキス、魚節粉末の風味立ちを悪くすることが考えられた。
ところが、煮魚のてり出しを目的に加熱調理時に別途粉末寒天を加えて調理したところ、ガム類で増粘した煮物用液体調味料を使用しているにもかかわらず、だし感が弱くならず、魚の生臭みがマスキングされることを新規に見出した。
その理由は不明であるが、ガム類、澱粉類、ペクチン、ゼラチン等の増粘剤はいずれもベタッとした糊状の食感を持つのに対し、寒天ゲルはサクッとした独特の食感を持ち、この独特の食感からくる風味立ち効果によって、ガム、澱粉類などの増粘による風味立ちを悪くする作用が相殺され、さらには風味立ちが向上されたためである、と本発明者らは推測している。
そこで、寒天を煮物用液体調味料の中に組み込み一材化するためには、どのような寒天が適しているかを検討した。その結果、粉末寒天、棒寒天では、一定量を超えて使用すると、液体調味料がゲルを形成してしまうため液の均一化が困難であることがわかった。そこで本発明者らは、試行錯誤の末、寒天の持つゲル形成性が弱くむしろ増粘剤としてのチクソトロピーに作用する低ゼリー強度寒天の使用を試みた。使用の結果、低ゼリー強度寒天は、粉末寒天、棒寒天などの寒天に比べてゲル化しにくく、良好であることがわかった。しかしながら、魚節粉末の大きさや量などにもよるが、低ゼリー強度寒天のみを使用して液体調味料を増粘させ、魚節粉末の安定的な均一分散化を図ろうとすると、低ゼリー強度寒天を多量に使用しなければならない場合が多く、これによって液体調味料が部分的にゲル化した状態になることがわかった。
そこで、魚節粉末を安定的に分散させるためには、低ゼリー強度寒天と、寒天を除く増粘剤(即ち、ガム類、澱粉類、ペクチン、ゼラチン等の増粘剤)との併用が好ましいことを知見した。また、本発明者らは、だし風味の風味立ち効果を持つ低ゼリー強度寒天と、逆に風味立ちを悪くするガム類、澱粉類、ペクチン、ゼラチン等の増粘剤との組み合わせを種々検討し、魚や肉の臭みをマスキングする効果を衰えさせることなく、しかも液体調味料のゲル化もほとんどなく、さらに魚節粉末を均一に分散できる適正な配合比を見出した。そして、本発明者らはこれら一連の知見に基づき下記の発明を完成させるに至ったのである。
即ち、請求項1に記載の発明は、寒天と、500μm以下の魚節粉末とを含有することを特徴とする液体調味料をその要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記寒天が低ゼリー強度寒天であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、1.5質量%寒天溶液を調製して20℃で15時間放置して凝固させたゲルについて、その表面1cm2当たりで20秒間耐えうる最大重量をもってゼリー強度と定義した場合、前記低ゼリー強度寒天のゼリー強度の測定値が、10g/cm2〜250g/cm2であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、寒天を除く増粘剤をさらに含有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4において、寒天と、寒天を除く増粘剤との質量比が、1:0.3〜1.8であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体調味料を添加して動物性素材を加熱調理することにより、前記動物性素材の臭みをマスキングして低減することを特徴とする、動物性素材調理時の臭み低減方法をその要旨とする。
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、酸化防止剤や多量の酒類などを添加しなくても魚や肉などの臭みを十分に低減でき、しかもだし風味の効いた美味しい煮物を調理できるとともに、固形分の均一分散性及び安定性に優れた液体調味料を提供することができる。また、請求項6に記載の発明によると、魚や肉などといった動物性素材の調理時にその臭みを十分に低減できる方法を提供することができる。
本発明の液体調味料には、魚節粉末が含有されている必要があり、さらにその粒径の大きさが500μm以下である必要がある。粒径が大きすぎる魚節粉末を多く含有させた液体調味料の場合、食べた際にざらつくことで食感を害するため、好ましくないからである。また、大きすぎる魚節粉末は、だし成分が抽出されにくく、魚や肉の臭みをマスキングする効果を奏するまでに至らないからである。よって、液体調味料に500μm以下の魚節粉末を含有させることが必須要件となる。なお、ここで言う500μm以下の魚節粉末とは、目開き500μmのメッシュを通過した魚節粉末を指す。ただし、ざらつきによる食感の低下を伴わない程度であれば、500μm以下の魚節粉末中に500μm超の魚節粉末中が若干量含まれていてもそれほど問題にはならない。
本発明に用いる魚節としては、通常だしの抽出に用いる節類であれば特に限定されず、例えば、鰹節、宗田かつお節、鯖節、むろあじ節、焼きあご、煮干等の節類などを用いることができる。特に、鰹節、宗田かつお節の粉末は、だしの香りが強いことに加え、一般的に好まれやすい香りを有する。それゆえ、これら節類は、臭みマスキング作用を奏するのに十分な量を超えて含有させても、しつこいと感じることなく、好まれる香りにすることができる点で、有利である。
本発明の液体調味料には寒天が含有されている必要がある。寒天の成分はガラクトースを基本骨格とする多糖類からなり、中性のゲル化能に富むアガロースとイオン性のゲル化能を持たないアガロペクチンとに分類される。なお、多糖類からなる寒天は、増粘剤の一種として把握されることができる。アガロースの繰り返し単位であるアガロビオースの構造は、1,3位で結合したβ−D−ガラクトピラノースと、1,4位で結合した3,6アンヒドロ−α−L−ガラクトビラノースとからなっている。アガロペクチンは、寒天中のアガロース以外のイオン性の多糖類を全て含めて理解されている。アガロペクチンはアガロースと同じ結合様式を有しているが、部分的に硫酸エステル、メトキシル基、ピルビン酸基、カルボキシル基を多く含んでいる。また、寒天の分子量は海藻から抽出される時の加水分解の程度により異なるが、一般的には数千〜数万と考えられている。
本発明の液体調味料に用いる寒天としては特に限定されず、通常市販されている寒天(例えば、粉末寒天、棒寒天など)を使用することが可能である。しかし、通常市販されている寒天はゲル強度が強く、多量に使用すると液体調味料の全体または一部をゲル化させてしまうため、従来においてこの種の液体調味料に使用した例は殆どない。ところが、寒天の種類を検討した結果、液体調味料に使用しやすい好適な特性を有する寒天、具体的には「低ゼリー強度寒天」という寒天があることがわかった。なお、このような低ゼリー強度寒天としては、例えば、伊那食品工業製「ウルトラ寒天シリーズ」などを用いることができる。
本発明において「ゼリー強度」とは、日寒水式の方法によるゼリー強度の測定値のことを指し、より具体的には、1.5質量%寒天溶液を調製して20℃で15時間放置して凝固させたゲルについて、その表面1cm2当たりで20秒間耐えうる最大重量の測定値(g/cm2)のことを指している。この方法によると、通常市販されている寒天のゼリー強度は、おおよそ300g/cm2〜500g/cm2の測定値を示す。一方、本発明において好適な低ゼリー強度寒天は、10g/cm2〜250g/cm2といった測定値を示す。より好ましくは、測定値が10g/cm2〜200g/cm2程度の低ゼリー強度寒天を用いることがよい。
また、本発明においては、魚節粉末を含有させることが必須であるが、この魚節粉末の分散状態が不均一であると、魚や肉の臭みをマスキングする効果を均等に付与できなくなる。そのため、魚節粉末を均一に分散させるために粘度付けをする必要があり、このような粘度付けをするためには、寒天、ガム類、澱粉類、ペクチン、ゼラチン等の増粘剤などを用いることが考えられる。魚節粉末の量などにもよるが、低ゼリー強度寒天も含めて寒天のみで魚節粉末の均一分散化を図ろうとしても、多量に用いる必要があり、かつ液体調味料に部分的なゲル化が生じてしまうため、均一分散化の達成には至らない。従って、寒天を単独で使用することよりも、寒天と、寒天を除く増粘剤とを併用することが好ましい。寒天を除く増粘剤としては、具体的には、ガム類、澱粉類、ペクチン、ゼラチン等の増粘剤から選択される1種または2種以上のものを挙げることができる。
ここで、寒天(特に低ゼリー強度寒天)と、寒天を除く増粘剤(ガム類、澱粉類、ペクチン、ゼラチン等の増粘剤の合計)とを配合する際の質量比は、魚節粉末の粒度、含有量、魚節のだし感の強さ、増粘剤の粘度付与レベル他によって異なるが、好ましくは1:0.3〜1.8、より好ましくは1:0.5〜1.5であり、特に好ましくは1:0.5〜1.0である。この比率より低ゼリー強度寒天が少ないと、低ゼリー強度寒天を除く増粘剤の影響が強くなりすぎる結果、だし感を引き出すことができず、魚や肉の臭みをマスキングする効果が得にくくなる。一方、この比率より寒天(特に低ゼリー強度寒天)が多いと、ゲル強度が強くなりすぎてしまい、液体調味料が部分的にゲル化し、液体調味料を均一にすることが難しくなる。
なお、増粘剤全体の添加量としては、魚節粉末が均一に分散できるのに適した量であればよく、これに関しても魚節粉末の粒度、含有量、増粘剤の粘度付与レベルなどによって異なる。例えば、粒径が350μmパスの魚節粉末を液体調味料全体の0.5%程度含有させた場合には、液体調味料の粘度を500cps〜2000cps程度にするため、増粘剤の一種である低ゼリー強度寒天を0.1質量%〜0.5質量%程度、寒天を除く増粘剤の一種であるキサンタンガムを0.1質量%〜0.3質量%程度含有させることがよい。
本発明の液体調味料は、魚節粉末、寒天(特に低ゼリー強度寒天)、寒天を除く増粘剤以外の原料が添加されていても勿論構わない。その具体的としては、例えば、通常煮物用の調味料などで使用される、醤油(濃口、淡口)、砂糖、みりん、発酵調味料、食塩、化学調味料、鰹・昆布等のだし、エキス等があり、これらを適宜構成原料として選択することが可能である。なお、清酒やワイン等の酒類に関しては、調理物にアルコール臭を付与したい場合には多量に添加しても構わないが、そうでない場合には添加量を極力少なくすることがよい。酸化防止剤に関しては、極力添加しないほうが好ましい。
なお、本発明の液体調味料は、素材(調理物)の特性を問わず、その調理の際に利用することが可能であるが、特にはその素材を加熱調理する際に利用されることが好適である。加熱調理の態様としては特に限定されないが、液体調味料の存在下で素材の加熱を行う調理であれば何でもよく、とりわけ煮物調理であることが好適である。また、素材自体についても特に限定されないが、特に魚や肉に代表される動物性素材、それらの中でも生臭さや獣臭さがある動物性素材を加熱調理する場合に本発明の液体調味料を用いることが好適である。
特に、魚の生臭みは一般に嫌われることが多く、かつ、他の調味料(醤油等)だけではマスキングが困難であるため、本発明の液体調味料は、煮魚用液体調味料として特に効果を発揮し、好適に利用することができる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれにより制限されるものではない。
(実施例1)
(1)液体調味料の作製
(実施例1)
(1)液体調味料の作製
表1の処方の全原料を用意した。まず、キサンタンガムをあらかじめ一部の砂糖に分散し、水(約100mL)に徐々に添加攪拌し、溶解、増粘させた。その後、他の原料(低ゼリー強度寒天以外の原料)を投入溶解し、均一に混合した。また、低ゼリー強度寒天(伊那食品工業株式会社製の「ウルトラ寒天UX−30S」)をダマにならない様に均一に分散させた後、残りの水を投入して、全原料が均一になるよう十分に混合し、最後に80℃以上の加熱攪拌をし、完全に溶解させた。
なお、本実施例におけるだし液としては、沸騰したお湯1Lの中に、花かつお100gを投入し、5分間ホールドした後、だし液中より花かつおを取り除いた物を用いた。また、本実施例における鰹節粉末としては、42メッシュ(目開き約355μm)パス品を用いた。
(2)イワシの煮付けの作製
(2)イワシの煮付けの作製
上記のように作製した5種類の液体調味料をそれぞれ3倍に希釈(液体調味料500mLに水1Lを混合)した後、この希釈液を20尾の真イワシとともに圧力鍋に入れ、加熱調理した。蒸気噴出後、中火で約20分加熱したら、火を止めて自然放冷した。そして、イワシが室温に戻ったものをサンプルとした。
(3)液体調味料の性状とイワシの煮付けの官能評価
(3)液体調味料の性状とイワシの煮付けの官能評価
上記(1)において作製した液体調味料(対照区を除く)について、液の性状(鰹節粉末の均一分散性)を評価した。また、上記(2)において作製したイワシの煮付けについて、香り(生臭み)・味を評価した。
液体調味料の性状評価としては、鰹節粉末の均一分散性と、液体調味料の均一性とを絶対評価することとした。この場合、鰹節粉末が均一に分散しており液体調味料も均一な物性で商品として問題なし(○)、若干鰹節粉末が沈殿し、あるいは液体調味料の一部がゲル化した状態であり、商品としてあまり好ましくない(△)、鰹節粉末が底に完全に分離している、あるいは液体調味料がゲル化しており、商品として好ましくない(×)、の3段階で評価した。
イワシの煮付けの香り(生臭み)・味の評価としては、絶対評価として、生臭くなく、かつお節のだしが効いて非常に美味しく好ましい(◎)、生臭みは気にならず好ましい(○)、少し生臭みがありあまり好ましくない(△)、大変生臭く好ましくない(×)、の4段階で評価した。その結果を表1に示す。
表1からわかるように、鰹節粉末の入らない液体調味料で煮たイワシ(対照区)は大変生臭いという評価に対して、鰹節粉末を入れた液体調味料で煮たイワシ(試験例1)は、だしが効いて美味しいという評価を得た。しかし、液体調味料としては鰹節粉末が沈殿した状態であり、商品としては好ましくないという結果であった。
これに対して、鰹節粉末を入れキサンタンガムで粘度をつけた液体調味料(試験例2)は、鰹節粉末が均一に分散していて、液体調味料としては良好であった。しかしながら、イワシに少し生臭みがあり、あまり好ましくないとの官能評価であった。
一方、鰹節粉末を入れて低ゼリー強度寒天で粘度を付与した液体調味料で煮たイワシ(試験例3)は、だしが効いて美味しいという評価を得たが、調味液に十分な粘性が得られず、鰹節粉末の沈殿が生じ、液体調味料としてあまり好ましくなかった。液体調味料としてはあまり好ましくなかった。
さらに、鰹節粉末を入れて低ゼリー強度寒天とキサンタンガムとを併用した液体調味料で煮たイワシ(試験例4)では、だしが効いて美味しいという評価とともに、液体調味料も滑らかで、かつ鰹節粉末も均一に維持され良好であった。
この結果、液体調味料の性状が商品として問題ない状態に保ちつつ、生臭みのマスキング効果を発揮するためには、寒天(特に低ゼリー強度寒天)とキサンタンガムなどの増粘剤との併用が好ましいことがわかった。
(実施例2)
(1)液体調味料の作製
(1)液体調味料の作製
表2の処方の全原料を用意した。まず、キサンタンガムをあらかじめ一部の砂糖に分散し、水(約200mL)に徐々に添加攪拌し、溶解、増粘させた。その後、他の原料(低ゼリー強度寒天以外)を投入溶解し、均一に混合した。また、低ゼリー強度寒天(伊那食品工業株式会社の「ウルトラ寒天UX−30S」)はダマにならない様に均一に分散した後、残りの水を投入して、全原料が均一になるよう十分に混合し、最後に80℃以上の攪拌加熱し、完全に溶解した。
なお、本実施例におけるだし液は、沸騰したお湯1Lの中に、荒本節粗砕品100gと宗田節粗砕品100gとを投入し、20分間ホールドした後、だし液中より節を取り除いた物を用いた。また、本実施例における鰹節粉末として、32メッシュ(目開き約475μm)パス品を用いた。
(2)鯖の煮付けの作製
(2)鯖の煮付けの作製
上記5種類の液体調味料はそれぞれ3倍に希釈した。一方、真鯖を3枚におろし、前記3倍希釈液を鯖1重量に対し、1.5重量の割合で加え、鍋で加熱調理した。加熱時には、軽い落し蓋をして、沸騰後、中火で約10分間加熱した。その後、火を止めて自然放冷し、鯖が室温に戻ったものをサンプルとした。
(3)液体調味料の性状と鯖の煮付けの官能評価
(3)液体調味料の性状と鯖の煮付けの官能評価
上記(1)において作製した液体調味料について、液の性状(鰹節粉末の分離、液の均一性)を評価した。また、上記(2)において作製した鯖の煮付けについて、香り(生臭み)・味を評価した。
液体調味料の性状評価としては、鰹節粉末の均一分散性と、液体調味料の均一性とを絶対評価することとした。この場合、鰹節粉末が均一に分散しており、液体調味料も均一な物性であり、商品として問題なし(○)、若干鰹節粉末が沈殿し、あるいは液体調味料の一部がゲル化した状態であり、商品としてあまり好ましくない(△)、鰹節粉末が底に完全に分離している、あるいは液体調味料がゲル化しており、商品として好ましくない(×)、の3段階で評価した。
鯖の煮付けの香り(生臭み)・味の評価としては、絶対評価として、生臭くなく、かつお節のだしが効いて非常に美味しく好ましい(◎)、生臭みは気にならず好ましい(○)、少し生臭みがありあまり好ましくない(△)、大変生臭く好ましくない(×)、の4段階で評価した。その結果を表2に示す。
表2からわかるように、低ゲル強度寒天とキサンタンガムとの配合比(質量比)が1対0.1の試験区Aでは、液体調味料の均一性(部分的寒天のゲル化)に関して問題があり、商品として好ましくなかった。これに対して、試験区B,C,D,Eでは、液体調味料の性状について特に問題はなかった。
一方、鯖の生臭みの評価においては、低ゼリー強度寒天とキサンタンガムとの配合比(質量比)が1対0.1〜1.8(試験区A,B,C,D)では、生臭みがマスキングできるという、良好な評価が得られた。これに対し、1対2.6(試験区E)では、生臭みが残ってしまい、よい評価が得られなかった。
この結果からすると、低ゼリー強度寒天と、寒天を除く増粘剤(ガム類、澱粉類、ペクチン、ゼラチン等)との配合比を、1対0.3〜1.8とすることがよいことがわかった。そして、このような配合比であれば、液体調味料の性状(鰹節粉末の分散性、液体調味料の均一性)を良好に保ちつつ、魚の生臭みのマスキング効果を発揮することがわかった。
(結論)
実施例1,2において示したように、本発明の液体調味料を用いれば、酸化防止剤や多量の酒類などを添加しなくても加熱調理時に魚や肉などの動物性素材の臭みを十分に低減することができ、しかもだし風味の効いた美味しい煮物を調理することができる。また、本発明の液体調味料は、固形分として添加している魚節の均一分散性及び安定性にも優れており、商品として好適な性状を備えたものとなっている。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)低ゼリー強度寒天と、ガム類、澱粉類、ペクチン及びゼラチンの中から選択される少なくとも1種または2種以上の増粘剤と、500μm以下の魚節粉末とを含有する液体調味料。
(2)寒天と、寒天を除く増粘剤と、醤油と、糖分と、だし液と、500μm以下の魚節粉末とを含有することを特徴とする液体調味料。
(3)配合量が質量比で0.1重量%〜0.5重量%である低ゼリー強度寒天と、配合量が質量比で0.1重量%〜0.3重量%であるガム類と、配合量が質量比で0.2重量%〜1.0重量%である500μm以下の魚節粉末とを含有することを特徴とする液体調味料。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1項において、煮物調理用であることを特徴とする液体調味料。
Claims (6)
- 寒天と、500μm以下の魚節粉末とを含有することを特徴とする液体調味料。
- 前記寒天が低ゼリー強度寒天であることを特徴とする請求項1に記載の液体調味料。
- 1.5質量%寒天溶液を調製して20℃で15時間放置して凝固させたゲルについて、その表面1cm2当たりで20秒間耐えうる最大重量をもってゼリー強度と定義した場合、前記低ゼリー強度寒天のゼリー強度の測定値が、10g/cm2〜250g/cm2であることを特徴とする請求項2に記載の液体調味料。
- 寒天を除く増粘剤をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体調味料。
- 寒天と、寒天を除く増粘剤との質量比が、1:0.3〜1.8であることを特徴とする請求項4に記載の液体調味料。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体調味料を添加して動物性素材を加熱調理することにより、前記動物性素材の臭みをマスキングして低減することを特徴とする、動物性素材調理時の臭み低減方法。
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2006
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