JP5092044B2 - ルウの製造方法 - Google Patents

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本発明は、ホワイトルウやブラウンルウ、更にはカレールウやシチュールウ等のルウの製造に使用するルウ用乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチおよびその製造方法、更には当該ルウ用乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチを原料とするルウの製造方法に関するものである。
従来よりルウ用の乾燥小麦粉については公知であり、ルウの製造過程で使用されている。たとえば、粉末状ホワイトソース用素材の製造法では、薄力小麦粉を品温80℃以上で加熱乾燥を行って水分含量を10%以下に低減せしめ、その乾燥後の薄力小麦粉100重量部、油脂5〜80重量部および油脂100重量部につき50〜150重量の水溶性ゼラチン粉末を配合して均一に混合する方法がある(特許文献1)。
また、カレールウの製造方法では、糖質原料を加えて焙煎処理したカレーパウダーを使用すること、およびカレーパウダー、小麦粉および油脂に糖質原料を加えて焙煎処理する方法において、実施例2および実施例3では水分7.55%の乾燥小麦粉を使用することが記載されている(特許文献2)。
また、小麦粉ルウ及びこれを用いたルウの製造方法では、(1)原料を100℃〜135℃になるまで漸次品温を上昇させて混合焙煎処理する、(2)該焙煎処理の最初に油脂を用いる、(3)該焙煎処理の任意の時期に小麦粉を用いる、(4)該焙煎処理の少なくとも中期までに香辛原料を用いるか、終期に香辛原料を用いるか、あるいは両者を併せて行う小麦粉ルウの製造方法において、小麦粉としては、熱風乾燥等により水分含量が8%以下まで乾燥されたのを用いることが、加工しやすい粘度物性のカレールウ等を得る上から望ましいことが記載されている(特許文献3)。
しかしながら、乾燥小麦粉の水分含量が10%や8%では、常温長期間の保存を可能にする為にルウを所定の水分量まで加熱する時間が長くなり、その結果、加熱感の少ない風味で、色の白いルウを作成することが困難となる。また、前記乾燥小麦粉の水分含量が10%や8%では、ルウの加熱混合中の物性が硬くなり、撹拌や排出などの機械適性が悪くなる恐れがある。このことは、ルウの原料に使用されるコーンスターチについても同じことがいえる。
特開昭59−151859号公報 特開平8−116933号公報 特開平9−294569号公報
本発明は、前記問題点を解決して、加熱前のルウの水分量を低減することにより、常温長期間の保存を可能にする為にルウを所定の水分量にまで加熱する時間を短くすることができ、従来よりも加熱感の少ない風味で、色の白いルウを作成することができる。また、ルウの水分量を低減して、ルウの加熱混合時の物性を滑らかにすることができる新規な乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチを提供することを目的とするものである。また、本発明は、前記新規な乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチを原料とするルウの製造方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するための本発明は、
(1)小麦粉を水分含量が1〜4.5質量%になるまで気流乾燥又は流動層乾燥により乾燥して乾燥小麦粉を得る工程と、
油脂40〜70質量部に対して前記乾燥小麦粉30〜60質量部を用い、前記乾燥小麦粉と油脂を加熱混合して小麦粉ルウを得る工程と、
前記小麦粉ルウに粉体原料、更には必要によりペースト原料を加えて加熱混合して水分含量が1〜5質量%のルウを得る工程とを有するルウの製造方法。
(2)前記ルウを得る工程で、前記粉体原料として前記乾燥小麦粉を更に加える、(1)に記載のルウの製造方法
(3)コーンスターチを水分含量が1〜4.5質量%になるまで気流乾燥又は流動層乾燥により乾燥して乾燥コーンスターチを得る工程を更に有し、
前記ルウを得る工程で、前記粉体原料として前記乾燥コーンスターチを加える、(1)又は(2)に記載のルウの製造方法。
(4)前記ルウを得る工程で、混合物を品温70〜125℃で加熱混合する、(1)〜(3)のいずれかに記載のルウの製造方法。
本発明のルウ用乾燥小麦粉、必要により更にルウ用乾燥コーンスターチを使用することにより、ルウを所定の水分量にまで加熱する時間を短くすることができ、従来よりも加熱感の少ない風味で、色の白いルウを作製することができる。
また、水分量の少ないルウ用乾燥小麦粉、必要により更にルウ用乾燥コーンスターチを使用することによって、ルウの加熱混合時の物性を滑らかなものにすることができる。
通常、小麦粉の水分は12〜15質量%であり、コーンスターチは11〜13質量%である。本発明は、こうした小麦粉やコーンスターチの水分含量を5質量%以下、好ましくは4.5質量%以下、更に好ましくは1〜4.5質量%にまで乾燥した乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチを作製することを発明の重要な特徴としている。
前記水分含量の乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチを作製するに当たっての乾燥方法は特に限定されるものではないが、例えば、気流乾燥による方法、又は流動層乾燥による方法を好ましい例として掲げることができる。これらの方法は、熱風温度熱風風速、小麦粉及び/又はコーンスターチの供給量等を調節することが比較的容易にでき、乾燥条件のコントロールが簡単である。
上記乾燥方法における乾燥条件としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記した流動層乾燥の場合は、品温70℃〜100℃で5分間〜40分間の範囲という条件を掲げることができる。あるいは気流乾燥を使用する場合は、1秒〜10秒、ないし数十秒という極めて短い時間で乾燥することができる。乾燥温度が低くなると当然のごとく乾燥時間が長くなり、その結果、生産能力の低下という問題が発生する。反対に乾燥温度が高くなると、水分が残存している部分で澱粉の糊化が起こり、部分的にダマが生じる可能性がある。
上記乾燥条件で乾燥された後の小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチの品温は100℃を超えないようにすることが、本発明の乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチを得る上で好ましい。この温度が100℃を超えてしまうとストックタンク等での一時的保存等において、乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチの乾燥が続き、当該乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチ中の分の不均一化が起こり、ダマが生じるという問題が発生する可能性がある。気流乾燥による方法、又は流動層乾燥による方法では乾燥後の品温を100℃以下にするのにも好適である。
次に、得られた乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチは、必要によりシフターによって粒度調製する。これによって、乾燥時水分が残存している部分で澱粉の糊化が起こり、ダマが生じても、ダマを除去し、均質な乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチを得ることができる。
このようにして得られた乾燥小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチは、ルウ用小麦粉及び/又は乾燥コーンスターチとしての適性に優れたものであって、例えば、加熱前のルウの水分量を低減して、常温長期間の保存を可能にする為にルウを所定の水分量まで加熱する時間を短くすることができ、従来よりも加熱感の少ない風味で、色の白いルウを作成することができる。また、ルウの水分量を低減して、ルウの加熱混合時の物性を滑らかにすることができるという点において公知の乾燥小麦粉や乾燥コーンスターチよりも優れている。
次に、本発明の乾燥小麦粉及び乾燥コーンスターチを使用したルウの製造方法について述べる。
まず、前記乾燥小麦粉と油脂を加熱混合する。例えば、油脂40〜70質量部に対して前記乾燥小麦粉30〜60質量部を用い、70〜140℃で加熱混合処理する方法を例示することができる。使用する油脂としては、動物油脂(牛脂、豚脂)、植物油脂、魚油、またそれらを硬化させた油やエステル交換した油等を例示することができる。
次に、得られた小麦粉と油脂の混合物に粉体原料、更には必要によりペースト原料を加え、加熱釜等を用いて加熱混合処理する。加熱温度としては、品温70〜125℃を例示することができる。前記粉体原料としては、前記乾燥小麦粉や乾燥コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の澱粉系原料があり、前記馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等についても、前記乾燥小麦粉や乾燥コーンスターチと同様に5質量%以下、好ましくは4.5質量%以下、更に好ましくは1〜4.5質量%にまで乾燥したものであってもよく、その方が好ましい。最終的には、前記澱粉系原料の量は、ルウに対して5〜40質量%含むことが好ましい。これにより、ルウを家庭等で調理する場合の粘度等を好適なものとすることができる。更なる粉体原料としては、食塩、砂糖、粉乳、各種香辛料、オニオンパウダー、その他粉体の調味原料等がある。なお、食塩と砂糖は、予め粉砕処理しておく方が均一混合という点から好ましい。また、前記ペースト原料としては、肉類、魚介類、野菜類、果実類等の汁液やエキス、牛乳、チーズ等の乳原料、発酵調味料等、水分を比較的多く含有したものを用いる。これらを用いることで風味の改善効果が達成される。
このようにして得られたルウを、品温が45〜65℃にまで冷却して適宜容器に充填後、冷却固化して容器入り固形ルウを得ることができる。あるいは、ドラム式フレーヤーによってフレーク状ルウとしたり、押出し式造粒によって顆粒状ルウにすることもできる。また、他の形態のルウとすることもできる。
小麦粉の乾燥は、流動層乾燥にて行った。熱風温度110℃、熱風風速0.3m/秒、開度60%、乾燥時間20分間の条件下にて水分が4質量%の乾燥小麦粉を得た。乾燥小麦粉は目開き770μmのシフターにて篩って使用した。
コーンスターチの乾燥は、流動層乾燥にて行った。熱風温度110℃、熱風風速0.25m/秒、開度100%、乾燥時間15分間の条件下にて水分が4質量%の乾燥コーンスターチを得た。乾燥コーンスターチは目開き770μmのシフターにて篩って使用した。
油(精製牛脂、精製豚脂)14質量部に対し水分が4質量%の乾燥小麦粉16質量部を加え120℃まで40分間加熱混合して小麦ルウを得た。
上記小麦ルウ30質量部に対し、油(精製牛脂、精製豚脂)20質量部、ペースト原料(チーズ、生クリーム、オニオンペースト、香料)5質量部、粉体調味原料として、粉乳、オニオンパウダー、酵母エキス、調味料の混合物20質量部、水分が4質量%の乾燥小麦粉4質量部、水分が6質量%の乾燥コーンスターチ6質量部、塩7質量部、砂糖8質量部を攪拌しながら順番に加え、品温80℃まで加熱混合し、その後、水分量が3.4質量%になるまで品温80℃で加熱混合してルウを得た。得られたルウを60℃にまで冷却して合成樹脂製の成形容器に充填後、冷凍庫で冷却固化させて容器入り固形ルウを得た。得られた固形ルウを風味、色調、物性で評価し、その結果を表1に示す。
なお、水分量は常圧105℃加熱16時間乾燥法、風味は官能評価、色調は色差計(日本電色工業製SZ−Σ90)、物性は加熱混合攪拌機に備え付けてある攪拌負荷測定器を用いて測定した。上記官能評価による風味および色差計による色調は、前記固形ルウ54gを湯300gに溶解し、加熱沸騰させたもので評価および測定した。上記色調の欄に記載のLは明度を表わす指標で、値が大きい程明るい色、値が小さい程くらい色となる。aLは色度を表わす指標で、+aが赤方向、−aが緑方向を表わす。bLは色度を表わす指標で、+bが黄方向、−bが青方向を表わす。
(比較例1)
乾燥小麦粉水分量が8質量%を使用すること以外は、実施例3に従って行った。また、水分量、風味、色調、物性の測定は実施例3に記載の方法で行った。結果を表1に示す。
Figure 0005092044
表1の結果から明らかなように、実施例3は比較例1と比べて、加熱感が少なく、色の白いホワイトルウが得られた。また、加熱混合中のルウ物性もなめらかで、機械適性も良いものであった。
水分量が8質量%の乾燥小麦粉と水分量が4質量%の乾燥コーンスターチを使用すること以外は、実施例3に従って行った。結果を表2に示す。
Figure 0005092044
表2の結果から明らかなように、実施例4は比較例1と比べて、加熱感が若干少なく、色も若干白いホワイトルウが得られた。また、加熱混合中のルウ物性も若干なめらかで、機械適性も良いものであった。
水分量が4質量%の乾燥コーンスターチを使用すること以外は、実施例3に従って行った。結果を表3に示す。
Figure 0005092044
表3の結果から明らかなように、実施例5は比較例1、実施例3、4と比べて、加熱感が最も少なく、色も最も白いホワイトルウが得られた。また、加熱混合中のルウ物性もなめらかで、機械適性も良いものであった
本発明のルウ用乾燥小麦粉やルウ用乾燥コーンスターチを使用することにより、従来よりも加熱感の少ない風味で、色の白いルウを作製することができ、また、ルウの加熱混合時の物性を滑らかなものにすることができることから、目新しいルウを提供することができる。

Claims (5)

  1. 小麦粉を水分含量が1〜4.5質量%になるまで気流乾燥又は流動層乾燥により乾燥された後の品温が100℃を超えない条件で乾燥して乾燥小麦粉を得る工程と、
    油脂40〜70質量部に対して前記乾燥小麦粉30〜60質量部を用い、前記乾燥小麦粉と油脂を加熱混合して小麦粉ルウを得る工程と、
    前記小麦粉ルウに粉体原料、更には必要によりペースト原料を加えて加熱混合して水分含量が1〜5質量%のルウを得る工程とを有するルウの製造方法。
  2. 前記ルウを得る工程で、前記粉体原料として前記乾燥小麦粉を更に加える、請求項1に記載のルウの製造方法。
  3. コーンスターチを水分含量が1〜4.5質量%になるまで気流乾燥又は流動層乾燥により乾燥された後の品温が100℃を超えない条件で乾燥して乾燥コーンスターチを得る工程を更に有し、前記ルウを得る工程で、前記粉体原料として前記乾燥コーンスターチを加える、請求項1又は2に記載のルウの製造方法。
  4. 前記ルウを得る工程で、混合物を品温70〜125℃で加熱混合する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のルウの製造方法。
  5. 上記乾燥小麦粉又は乾燥コーンスターチの乾燥条件が、流動層乾燥では品温70〜100℃で5分間〜40分間の範囲であり、気流乾燥では1秒〜10秒の範囲であることを特徴とする請求項1又は3に記載のルウの製造方法。
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