本発明の収納庫は、区画された貯蔵室を有する箱体と、液体を噴霧する噴霧部とを有する水補給装置とを備え、水補給装置によって、貯蔵室の内部に収納された食品の内部に強制的に水分を補給するものである。食品の水分含有量を向上させることにより、冷蔵庫の貯蔵室に収納されている食品の水分含有量を向上させることが出来る。
また、本発明の冷蔵庫は、貯蔵室内が光を照射する照射部を備え、貯蔵室内に収納された食品に、照射部によって光を照射した上で、水補給装置によって貯蔵室の内部に収納された食品の内部に強制的に水分を補給するものである。食品の水分含有量を向上させることにより、発生したミストは光照射によって開孔した野菜や果物等の食品の表面の気孔から、食品の内部に浸透することとなり、食品内に水を補給するための気孔の開孔面積をより大きくし、積極的に水分を補給することが出来る。
また、本発明の冷蔵庫は、噴霧部が粒子径0.003〜20μmのミストを発生するものである。これによって、発生したミストは食品表面組織の間隙や光を照射することによって拡大した野菜表面の気孔や間隙を通過することが出来るので、光照射を行わない場合と比較して、より大きい粒子径を用いても、食品の内部に円滑に浸透することができ、食品中の水分含有量を向上することが出来る。
また、本発明の冷蔵庫は、貯蔵室内に収納された食品が青果物であることにより、発生したミストは光照射によって開孔した青果物表面の気孔から、青果物の内部に浸透することとなり、青果物内に水を補給するための開孔面積をより大きくし、より水分不足によって品質が劣化しやすい青果物内に積極的に水分を補給することが出来る。
また、本発明の冷蔵庫は、噴霧部は、静電霧化方式や超音波霧化装置によってミストを生成する。
また、本発明の冷蔵庫は、機能性成分を、貯留水に溶解または分散させたものをミストにして噴霧することが出来る。機能成分の噴霧により、野菜等の栄養成分含有量を向上することが出来る。また、機能成分を抗酸化剤とすることで、酸化され栄養価や品質低下要因となる種々の栄養成分の酸化を防止することが出来る。また、オゾン水や酸性水あるいはアルカリ水などの機能水を噴霧しても良い。野菜や果物表面の微細な孔に機能水ミストが入り込むと、微細な孔の内部の汚れや農薬等の有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることが出来る。
なお、本発明における冷蔵庫は、家庭用冷蔵庫、業務用冷蔵庫、食品保存庫、保管コンテナ、冷蔵冷蔵庫、保冷車、輸送コンテナ、を含む。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって、本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における収納庫の側断面図である。図2は本発明の実施の形態1における水補給装置の側断面図である。図3は本発明の実施の形態1における水補給装置の平面断面図である。
実施の形態1において、冷蔵のための収納庫70は、貯蔵室71、貯水タンク72を有し、貯水タンク72は、水を供給する給水経路73を有する。貯蔵室71の上部天面には水補給装置74が備えられている。実施の形態1における収納庫は、輸送コンテナであって、輸送に使用するものである。水補給装置74は、水を貯留する貯水部である貯水槽75と、噴霧部76と、噴霧部76によって発生したミストを貯蔵室71内に送風する送風部77から構成されている。また、噴霧部76は貯水槽75の内部に位置し、水を超音波方式で霧化する超音波素子80と、所定粒径以下のミストのみを透過する金属メッシュ81とを具備している。また、貯留水84は、給水経路73から供給され、貯水槽75内に貯留されている。また、貯蔵室71の一角には、庫内の温度を検知する温度センサー85が備えられている。なお、貯蔵室内には、機能成分を放出するための機能成分補給部78を備えることも出来る。機能成分補給部78はセル状のフィルタ79aにマイクロカプセル化したビタミンC誘導体顆粒79bを担持させたものである。
以上のように構成された収納庫のミスト生成装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、貯水タンク72内に貯留された水が給水経路73を経由して、貯水槽75内に供給され,貯留水84として貯留される。次に水供給装置の運転が開始される。まず、貯留水84は噴霧部76に含まれる超音波素子80によって霧化される。霧化されたミストのうち、所定粒子径以下の微細ミストのみが金属メッシュ81から噴霧される。その結果、貯水槽75内は、所定粒子径以下の水粒子を含むミストが充満した状態となる。貯水槽75内の微細ミストは送風部77によって貯蔵室71内にミストとなって噴霧される。微細ミストは貯蔵室71内に貯蔵された、気孔が開孔した状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔から組織内に侵入する。それにより、水分が蒸散して、萎んだ状態の野菜の細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキットした状態に復帰する。
尚、ミストとは、細かく分裂し超微粒子状態となった水のことを言い、その粒子径は目に見える数μmから目には見えない数nmまで含まれ、性質は液体の性質を持っている。
以上のように、本実施の形態では、野菜室内に保存中の野菜に対し、ミスト噴霧装置にて細胞間隙を通過できる微細ミストを適量噴霧することにより、ミストが野菜内部に侵入することとなり、野菜の水分含有量を向上し、野菜のみずみずしさを保持することが出来る。
現在、野菜や果物は収穫後に市場やスーパー等へ輸送されるが、輸送には長時間が必要となる。貯蔵室内に保存されている野菜や果物は、輸送時の蒸散によって、萎れることが多い。また、貯蔵室内には青果物である野菜の中でも緑の菜っ葉ものや果物等も保存されているが、これらの青果物は輸送中の蒸散によってより萎れやすい。従って、輸送に使用される輸送コンテナを本実施の形態1の収納庫とすることにより、貯蔵室に貯蔵された食品の輸送中の水分蒸散を防止することが出来て、新鮮な状態で食品を輸送することが出来る。さらに、従来は、萎れが気にならない状態で到着できる場所までしか野菜等を輸送することができなかったが、輸送に使用される輸送コンテナを本実施の形態の収納庫にすることにより、長時間の輸送が可能となり、従来よりも遠方まで輸送することが出来るため、輸送費の削減が可能となる。
また、本実施の形態では、通常の水を噴霧したが、噴霧する水をオゾン水や酸性水あるいはアルカリ水などの機能水を噴霧することも出来る。これらの機能水を噴霧することにより、野菜や果物表面の微細な孔に機能水ミストが入り込んで、微細な孔の内部の汚れや農薬等の有害物質を浮き上がらせることが出来て、それらの除去効果を高めることが出来る。また、野菜表面に付着する農薬等の有害物質の酸・アルカリ分解効果を高めることが出来る。また、庫内に付着する汚れや庫内臭気の除去及び、酸・アルカリ分解効果も高めることが出来る。
また、本実施の形態では、噴霧部に超音波素子とフィルタを用いたが、静電霧化方式を用いてミストに静電付加することも出来る。マイナスの電荷を負荷された微細ミストは、プラスに帯電した庫内壁面や野菜、果物表面等に付着し、庫内壁面や野菜や果物表面の微細な孔にミストが入り込む。その結果、野菜の水分含有量復元効果を向上するとともに、微細な孔の内部の汚れや有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることが出来る。
なお、本実施の形態の貯蔵室に、貯蔵室を冷却する冷却装置を備えることにより、温度帯を調節することが可能となり、夏場などの高温時は冷蔵温度帯で使用することが出来る。
また、貯蔵室が湿度90%以上の高湿であれば、貯蔵室に貯蔵されている食品の劣化スピードを遅くさせることが出来るので、ミストによる水分補給効率を向上させることが出来る。
なお、本実施の形態に、貯蔵室に保存されている食品を照射する照射部を備えることも出来る。照射部により、貯蔵室に保存されている食品の気孔を開孔させることが出来る、貯蔵室に保存されている食品の内部へミストを浸入させることが出来るので、水分や機能成分を補給することが出来る。
なお、本実施の形態では、超音波素子80と金属メッシュ81を用いていることでミストの粒子径を調整している。さらに、金属メッシュ81に対向して金属板82を設け、金属メッシュ81と金属板82に高電圧を印加する高電圧電源83を具備してもよい。金属メッシュ81と金属板82との間に高電圧を印加することによって、ミストの粒子径をより細粒化することで、ミストの粒子径を調整することも可能である。この場合には、ミストの細粒化と共にミスト粒子には静電付加することも可能である。
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における収納庫の側断面図である。図5は本発明の実施の形態2における水補給装置の側断面図である。図6は本発明の実施の形態2における水補給装置の平面断面図である。実施の形態2において、実施の形態1と同一部、同一部材は同一番号で示す場合がある。
実施の形態2において、収納庫90は、貯蔵室91、貯水タンク72を備え、貯水タンク72は、水を供給する給水経路73を備える。貯蔵室91の上部天面には水補給装置74が備えられている。実施の形態2では、保管コンテナを収納庫とし、収穫後の食品の保管に使用するのに用いる。貯蔵室91の天面に設けられる水補給装置74は、水を貯留する貯水部である貯水槽75と、噴霧部76と、噴霧部76によって発生したミストを貯蔵室91内に送風する送風部77とを有する。また、噴霧部76は貯水槽75の内部に位置し、水を超音波方式で霧化する超音波素子80と、所定粒径以下のミストのみを透過する金属メッシュ81と、金属メッシュ81に対向する金属板82を具備している。また、貯留水84は給水経路73を通じて供給され、貯水槽75内に貯留されている。また、貯蔵室91の一角には、庫内の温度を検知する温度センサー85が備えられている。なお、貯蔵室内には、機能成分を放出するための機能成分補給部78を備えることも出来る。機能成分補給部78はセル状のフィルタ79aにマイクロカプセル化したビタミンC誘導体顆粒79bを担持させたものである。
以上のように構成された収納庫のミスト生成装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、貯水タンク72内に貯留された水が給水経路73を経由して、貯水槽75内に供給され,貯留水84として貯留される。次に水供給装置の運転が開始される。まず、貯留水84は噴霧部76である超音波素子80によって霧化されたミストとなる。所定粒子径以下の微細ミストのみが金属メッシュ81から噴霧され、貯水槽75内は所定粒子径以下の水粒子からなるミストが充満した状態となる。貯水槽75内の微細ミストは送風部77によって貯蔵室91内にミストとなって噴霧される。
なお、貯蔵室91内に光照射部を設けても良い。保存中の野菜に対し、光照射部によって、光を照射し、且つ、ミスト噴霧装置にて気孔を通過出来るサイズの微細ミストを適量噴霧することが出来る。光照射により、開孔した野菜表面の気孔から、ミストが野菜内部に侵入することが出来るため、野菜の水分含有量を向上させ、野菜のみずみずしさを保持することが出来る。
貯蔵室内に保存されている野菜や果物は、保管中での蒸散によって、栄養成分の低下や萎れることが多い。また、貯蔵室内には青果物である野菜の中でも緑の菜っ葉ものや果物等も保管されており、これらの青果物保管中の蒸散によってより萎れやすい。従って、収穫後の食品の保管に使用される保管コンテナを本実施の形態2の収納庫にすることにより、貯蔵室に貯蔵された食品の保管中の水分蒸散を防止することが出来て、新鮮な状態で食品を保管することが出来る。
また、本実施の形態では、通常の水を噴霧したが、噴霧する水をオゾン水や酸性水あるいはアルカリ水などの機能水を噴霧することも出来る。機能水を噴霧することにより、野菜や果物表面の微細な孔に機能水ミストが入り込むこととなり、微細な孔の内部の汚れや農薬等の有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることが出来る。また、野菜表面の農薬等の有害物質の酸・アルカリ分解効果を高めることが出来る。また、庫内に付着する汚れや庫内臭気の除去及び、酸・アルカリ分解効果も高めることが出来る。
また、本実施の形態では、噴霧部が、超音波素子とフィルタを備える構成としたが、静電霧化方式を用いて、ミストに静電付加することにより、マイナスの電荷を負荷された微細ミストを供給しても良い。マイナスの電荷を負荷された微細ミストが、プラスに帯電した庫内壁面や野菜、果物表面等に付着し、庫内壁面や野菜や果物表面の微細な孔にミストが入り込む。その結果、野菜の水分含有量復元効果を向上させるとともに、微細な孔の内部の汚れや有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることが出来る。
なお、本実施の形態の貯蔵室に、貯蔵室を冷却する冷却装置を備えることにより、温度帯を調節することが可能となり、夏場などの高温時は冷蔵温度帯で使用することが出来る。
すなわち、本実施の形態2は、収納庫が保管コンテナであり、保管コンテナの貯蔵室に保存されている食品の内部へミストを浸入させることが出来るので、保管中の野菜や果実等の水分や機能成分を効率的に補給することが出来る。
なお、本実施の形態では、超音波素子80と金属メッシュ81を用いていることでミストの粒子径を調整しているが、金属メッシュ81に対向して金属板82を設け、金属メッシュ81と金属板82に高電圧を印加する高電圧電源83と、金属メッシュ81と金属板82との間に高電圧を印加することによって、ミストの粒子径をより細粒化することで、ミストの粒子径を調整することも可能である。この場合には、ミストの細粒化と共にミスト粒子には静電付加することも可能である。
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3における冷蔵庫の側断面図である。図8は本発明の実施の形態3における水補給装置の側断面図である。図9は本発明の実施の形態3における水補給装置の平面断面図である。図10Aは本発明の実施の形態3のミスト噴霧中光を照射したものにおけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミストの粒子径に対する特性図である。図10Bは本発明の実施の形態3のミスト噴霧中、光照射なしで実験したものにおけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミストの粒子径に対する特性図である。図11は本発明の実施の形態3におけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミスト噴霧量に対する特性及び、ミスト噴霧量に対する野菜の外観官能評価値を示した図である。
実施の形態3において、冷蔵庫100は仕切り板116によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に仕切られており、野菜室114は間接冷却により湿度約90%R.H以上(食品収納時)で、4〜6℃に冷却されている。冷蔵室112の背面には、製氷用貯水タンク119が備えられ、製氷用貯水タンク119からは給水経路120が、製氷室(図示せず)と野菜室114とに導かれて、水を供給している。野菜室114の上部天面には水補給装置121が備えられている。水補給装置121は、水を貯留する貯留水保持部である貯水槽122と、噴霧部123と、噴霧部123によって発生したミストを野菜室114内に送風する送風部129を有する。また、水補給装置121の外部一画には照射部130が備えられている。また、噴霧部123は、貯水槽122の内部に位置して水を超音波方式で霧化する超音波素子125と、所定粒径以下のミストのみを透過する金属メッシュ126を具備している。また、貯水槽122内の貯留水124は、給水経路120を介して供給され、貯水槽122内に貯留されている。また、野菜室114の一角には、庫内の温度を検知する温度センサー133が備えられている。
以上のように構成された冷蔵庫のミスト生成装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、製氷用貯水タンク119内に貯留された水が給水経路120を経由して、貯水槽122内に供給され,貯留水124として貯留される。次に温度センサー133が庫内温度を5℃以上であると検知した場合、照射部130が点灯し、野菜室114内に保存されている野菜や果物に光が照射される。照射部130は、たとえば青色LEDなどで、中心波長が470nmの青色光を含む光を照射する。この時照射される青色光の光量子は約1μmol・m−2・s−1の微弱な光で十分である。微弱な青色光が野菜や果物に照射されると、表皮表面に存在する気孔が、青色光の光刺激によって、開孔する。
一方、野菜室内に保存されている野菜や果物の中には、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態のものが含まれている。
また、野菜室内には青果物である野菜の中でも緑の葉菜や果物等も保存されており、これらの青果物は蒸散あるいは保存中の蒸散によってより萎れやすいものである。
次に水補給装置121の運転が開始される。まず、貯留水124は噴霧部123に含まれる超音波素子125によって水を霧化する。霧化されたミストのうち、野菜の気孔開孔部の直径よりも小さく設定された所定粒子径以下の微細ミストのみが金属メッシュ126から噴霧されると、貯水槽122内は、野菜の気孔開孔部の直径よりも小さい粒子径のミストが充満した状態となる。貯水槽122内の微細ミストは送風部129によって野菜室114内にミストとなって噴霧される。噴霧された微細ミストは、野菜室114内で気孔が開孔した状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔を介して組織内に浸透する。その結果、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、野菜や果物はシャキッとした状態に復帰する。
図10A及び10Bは、やや萎れかけた野菜における、水分含有量の復元効果のミストの粒子径に対する特性を示した図である。萎れかけ野菜の再現方法としては以下の方法を用いた。
店頭での購入状態に対して、重量が約10%減少するまで所定時間放置したものを、萎れかけ野菜とした。野菜は収穫時から約15%重量減少すれば、見かけが悪くなり、また、細胞組織も元に戻らない。収穫時の野菜に対して、流通の段階での重量減少は5%程度である。5%程度の水分減少であれば、使用者は官能的に見て見かけ上の問題がないものと判断する。しかし、10%程度の重量減少が生じると、使用者は官能的に見て、外観上、萎れかけた野菜と感じるようになる。以上のことから、店頭での購入状態に対して、重量が約10%減少した状態を初期値と定めた。
以下、実験方法を説明する。
上記の処理をした野菜を70リットルの野菜室(約6℃)に保存し、種々の粒子径のミストを約24時間噴霧した。その後、取り出して重量測定を行い、重量が初期に対し、どれくらい復元したかを評価した。
図10Aは、ミスト噴霧中に光(青色LED)を1μmol・m−2・s−1の強度で照射した実験の結果である。一方、図10Bは、光照射なしでミスト噴霧した実験の結果である。
この実験では、官能的な評価により水分含有量復元率が50%以上のものが「食べられる」と判定し、70%以上は「十分においしく食べられる」と判定した。
図10Aより、光照射をした場合、野菜の水分含有量の復元効果は噴霧するミスト粒子径に依存し、一定の最適粒子径範囲が観察された。最適粒子径は野菜の水分含有量の復元効果が50%以上となる0.005〜20μmの範囲であった。
噴霧する粒子径が20μm以上と大きい場合、水粒子が大きすぎて、ミストが均一に噴霧できなかった。これは、ミスト径が比較的大きいとその自重ですぐに容器の底面に落下してしまうためミストの拡散性が十分に得られないからだと考えられる。また、気孔径は最大20μm程度と考えられ、それ以上のミストでは、水粒子が大きすぎて、野菜の内部まで入り込みにくいものと考えられる。
一方、0.005μm以下の超微粒子では粒子が非常に小さいため、開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できない。以上の要因により、0.005μm以下の場合にも復元効果が十分得られなかったものと考えられる。
また、野菜の水分含有量復元効果が70%以上となる範囲は0.008〜10μmの範囲であった。このように、実験の結果によると1μm以上では、粒子径が細かいほうが噴霧の均一性が向上し、また噴霧距離、空気中の滞在時間が延びる。従って、1μm以上では、粒子径が細かいほど野菜表面に付着する確率が高くなり、水分含有量復元率が向上することがわかった。また、10μm以下では、より活発にミスト粒子の気孔から浸透がより活発に行われ、野菜の水分含有量復元効果が70%以上という大きな効果が得られた。また、ミスト径が小さく0.008μm程度でも野菜の水分含有量復元効果が70%以上となることから、この程度のミスト径を確保すれば、ミストと開孔状態の気孔との接触頻度が比較的保たれると考えられる。
さらに、野菜の水分含有量復元効果が80%以上とより高くなる最適粒子径は0.01〜1μmの範囲であった。ここで、粒子径が1μm以下であると粒子が気孔の内部に浸透するに十分の大きさとなる為、0.01〜1μmの範囲内では気孔径によって野菜の水分含有量復元効果が変わらなくなると考えられる。
一方、図10Bは光照射をしない場合の実験結果であり、水分含有量復元率の50%以上となる粒子径は、光照射時の粒子径よりも小さく、約0.005〜0.5μmであった。
粒子径の上限が0.5μmと小さくなった理由は、光照射による気孔の開孔がないことにより、野菜の表面組織の間隙や比較的閉じた状態の気孔などを介する以外に、水が野菜内部に浸透できないものと考えられる。すなわち、復元するに際し、微細な隙間からしか水粒子が浸透できないためであると考えられる。
なお、水分含有量復元率の50%以上となる範囲の下限の粒子径は0.005μmであり、光照射をした場合と同じであった。0.005μm以下の超微子では、粒子が非常に小さいため、開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できないためと考えられる。
また、野菜の水分含有量復元効果が80%と高くなるのは0.01μm付近のみであり、野菜の水分含有量復元効果が70%以上となる最適粒子径は0.008〜0.05μmの範囲であった。このように、実験の結果によると0.05μmより小さくなると気孔径が小さくなるにつれて、よりミスト粒子の気孔から浸透がより活発に行われる一方、0.01μmをピークとして、それより気孔径が小さくなるにつれて野菜の水分含有量復元効果はより小さくなることがわかった。よって水分含有量復元効果は光を照射した場合の方が幅広い粒子径で高い水分復元率を得られることが判明した。
ただし、本実施の形態のように霧化部を超音波霧化方式とした場合には、ミストの粒子径を小さくするに従って、高周波数の振動エネルギーを用いて水滴を細粒化する必要があるので、高周波数になればなるほど、振動回数が多くなり超音波霧化方式の耐久年数が短くなる傾向がある。よって、図10Aの実験結果および図10Bの実験結果ともに、粒子径の下限値は0.005μm程度としたが、冷蔵庫に適用する場合には0.5μm以上の粒子径の範囲内で超音波霧化方式を用いることで、平均使用年数が10年程度といった家電製品の中でも特に長期間の耐久性を要求される冷蔵庫においても、十分な耐久性が得られるので、超音波霧化方式による水分含有量の向上の信頼性をより高めることが可能となる。
次に図11は本発明の実施の形態3で説明した萎れかけた野菜に対する水分含有量の復元効果とミスト噴霧量の関係及び、野菜の外観官能評価値とミスト噴霧量の関係を示した図である。萎れかけ野菜の再現方法及び実験方法は図10A,10Bの実験とほぼ同一である。但し、本実験では、1μmの粒子径の場合に、光照射あり、光照射なしの2パターンの実験を行い、光照射なしについては、さらに、0.01μmの粒子径のミストを用いた実験を行った。また、本実験は70リットルの野菜室において行った為、以下の噴霧量はすべて70リットル当たりの噴霧量を示す。
図11より、光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲は0.05〜10g/h(1リットル当たり=0.0007〜0.14g/h・l)の範囲であった。
ミストの噴霧量が少なすぎると、野菜が気孔から外部へ放出する水分量を下回ってしまい、野菜内部への水分供給を行うことができなくなる。また、ミストと開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できにくくなると考えられる。
実験では、このような噴霧量の下限値が0.05g/hであることがわかった。
一方、ミストの噴霧量が多すぎると、野菜内部の水分含有許容量を超えてしまい、野菜内部に取り込まれない水分は野菜の外部に付着してしまい、この水分によって野菜表面の一部から水腐れが生じてしまい、野菜が痛んでしまう現象が発生する。
このような野菜表面に余分な水分が付着し、野菜が水腐れ等の品質劣化を起こす範囲は10g/h以上であり、実験としては不適であった。よって、10g/h(1リットル当たり=0.15g/h・l)以上の実験結果については、野菜の品質劣化によって採用できない為、省略する。
光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は、0.1〜10g/h(1リットル当たり=0.0015〜0.14g/h・l)であった。このようにミストの噴霧量の下限値が0.1g/h程度以上に多くなると、開孔状態の気孔との接触頻度が十分に多くなり、野菜内部へのミストの浸透が活発に行われると考えられる。
光照射なしの場合については、粒子径1μmの噴霧では、野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲はなく、すべての噴霧量で10%未満の水分含有量復元率である。粒子径が0.01μmの噴霧では、0.05〜7g/h(1リットル当たり=0.0007〜0.1g/h・l)の範囲であり、さらに野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は0.1〜1g/h(1リットル当たり=0.0015〜0.014g/h・l)の範囲であった。これは、上記のような光照射ありの場合と比較して、ミスト噴霧量の下限値についてはほぼ同等であるが、上限値が異なる結果となった。図のように、光照射なしの場合については、気孔が十分に開いていない為、粒子径が十分に小さくないと野菜の内部に水分が浸透しないと考えられる。
以上のように、本実施の形態では、野菜室内に保存中の野菜に対し、照射部を用いて光を照射し、且つ、ミスト噴霧装置にて気孔を通過出来るミストを適量噴霧している。その結果、光照射により開孔した野菜表面の気孔から、適量かつ適当な粒子径のミストが野菜内部に浸透し、野菜の水分含有量を向上、野菜のみずみずしさを保持・向上させることが出来る。
また、本実施の形態では、0.1〜100μmol・m−2・s−1の青色光を照射した。微弱な光照射によって、光合成活動を低く抑えた上で、気孔開孔率を高くすることが可能となる。また、ある程度の生態活動を促し、野菜の光合成による水分消費を極力抑え、開孔した、気孔から水分を野菜内部に効率よく供給することが出来る。加えて、光量を抑えることにより消費電力を低減し、省エネ効果を得ることが出来る。
また、本実施の形態では、水道水などの通常の水を噴霧したが、オゾン水や酸性水あるいはアルカリ水などの機能水を噴霧してよい。野菜や果物表面の微細な孔に機能水ミストが入り込むことにより、微細な孔の内部の汚れや農薬等の有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることが出来る。また、野菜表面の農薬等の有害物質の酸・アルカリ分解効果を高めることが出来る。また、庫内に付着する汚れや庫内臭気の除去及び、酸・アルカリ分解効果も高めることが出来る。
なお、本実施の形態では、超音波素子125と金属メッシュ126を用いていることでミストの粒子径を調整しているが、金属メッシュ126に対向して金属板127を設けてもよい。金属メッシュ126と金属板127間に、高電圧電源128を用いて高電圧を印加することによって、ミストの粒子径をより細粒化することで、ミストの粒子径を調整することも可能である。この場合には、ミストの細粒化と共にミスト粒子には静電付加することも可能である。
また、本実施の形態では、貯水槽への水供給部としては、製氷用貯水タンクから水経路を利用して貯水槽へ水を送水するため、専用のタンクを備えなくても噴霧部に水を供給することができ、内容積に影響しないので、庫内の食品収納量を減少させることなくミストの噴霧装置を備えることが出来る。
なお、本実施の形態においては、貯留水保持部を貯水槽とし、外部から供給された貯留水が保持されるものとしたが、貯留水保持部は、保水装置としての吸湿剤(例えば、シリカゲル、ゼオライト、活性炭等の多孔質材料等)を用いて、貯蔵室内の空気内に含まれている水分を抽出して保持するものでもよい。また、冷蔵庫の除霜水や庫内の結露水等を用いて、使用者が外部から貯留水を供給することなく貯留水を確保出来るものであれば、外部からの水分の補給の手間がかからず使い勝手をより向上させた冷蔵庫を提供することが出来る。
なお、本実施の形態では、貯蔵室内の収納物として野菜などの青果物について説明した。さらに、水分を供給することにより品質が向上する収納物として、例えば、果物や0℃近辺で保存している鮮魚や肉類でも本実施の形態の冷蔵庫を用いることで乾燥を防ぐことが出来る。
なお、本実施の形態のように振動エネルギーによってミストを生成するタイプの霧化装置は、水粒子に電気分解等の分解を行わないので、水の成分を変えずにミスト化出来る場合がある。このように、振動エネルギーの与え方によって水の成分をそのままミスト化するような装置にした場合には、例えばアルカリイオン水やマイナスイオン水等の純粋な水と比較してなんらかの成分を付加した機能水を用いても、その成分をそのままミスト化することが可能となり、使用者のニーズに応じた任意の水をミストとして供給することが出来る。
(実施の形態4)
図12は本発明の実施の形態4における冷蔵庫の側断面図である。図13は本発明の実施の形態4における水補給装置の側断面図である。図14は、図13における水補給装置のA−A線断面図である。図15は本発明の実施の形態4におけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミストの粒子径に対する特性を示した図である。実施の形態3と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
実施の形態4において、冷蔵庫100は仕切り板116によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に仕切られている。野菜室114は湿度約90%R.H以上(食品収納時)、4〜6℃に冷却されている。野菜室114の上部天面には水補給装置121が備えられている。水補給装置121は、水を保持する貯留水保持部である貯水槽122と、噴霧部123と、噴霧部123によって発生したミストを野菜室114内に送風する送風部129とから構成されている。また、噴霧部123は、貯水槽122の内部に位置し、貯水槽122に貯留された貯留水124にその一端を浸漬するよう位置し、他端に霧化先端部132を形成した毛細管供給構造体136と、貯水槽122の一画に設置し、貯水槽122内の貯留水に負の高電圧を印加する陰極134と、貯水槽の一画に位置し、陰極134に対向するよう位置した陽極135と、陰極134に高電圧を印加する高電圧電源128とから構成されている。
以上のように構成された冷蔵庫の水補給装置121について、以下その動作、作用を説明する。
まず、貯留水保持部である貯水槽122内に水が貯留される。次に貯水槽122内の陰極134に負の高電圧を印加すると、霧化先端部132と陽極135との間に存在する電界によって霧化先端部132から複数の液糸が引き出され、さらには帯電した液滴に分散されてミストとなる。また、静電霧化の際、放電が行われるため、ミスト発生時には同時に微量のオゾンが発生し、ミストと即座に混合して、低濃度のオゾンミストとなる。この低濃度オゾンミストは送風部129によって、野菜室114内に噴霧される。噴霧されたミストは、静電付加されているため、野菜室114内でプラスに帯電する野菜や果物の表面および庫内壁面に電気的に付着し、野菜や果物の表皮細胞の間隙から組織内部に浸透する。その結果、水分が蒸散して萎んだ細胞内に再び水が供給され、細胞の膨圧によって、萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。さらに、壁面の微細な孔に浸透し、孔内部の汚れや有害物質を浮き上がらせオゾン酸化分解によって分解除去する。
図15は本発明の実施の形態4におけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミストの粒子径に対する特性を示した図である。萎れかけ野菜の再現方法及び基本的な実験方法は図10A,10Bで説明したのと同様の方法を用いた。
図15より、光照射ありの場合に、粒子径に拘わらず、相対的に水分含有量の復元率が高くなっているのは、静電霧化方式によってミストが帯電しているため、野菜表面への付着率が高くなったためと考えられる。
光照射なしの場合、野菜の水分含有量復元効果が50%以上となる範囲は0.003〜0.8μmの範囲であった。これは、気孔が開いていない状態では粒子径が0.8μm以上の時、粒子径が大きいために、細胞間隙から内部への浸透が活発に行われなくなり、野菜の水分含有量復元率が下がったためと考えられる。また、粒子径が0.003μm以下では、ミストとしての寿命が短くなり、野菜表面まで到達せずに、消滅してしまうため、野菜の水分含有量復元率も低くなると考えられる。
野菜の水分含有量復元効果が70%以上となる至適範囲は0.005〜0.5μmの範囲であった。上限下限の理由は図10Bと同様に考えられる。図10Bの超音波霧化方式よりも、本実施の形態のように静電霧化方式を用いるほうが、ミストが電荷をもつため、野菜への付着率が上がる。よって、実施の形態4のほうが、野菜の水分含有量復元効果が現れるミストの粒子径の範囲が、上限、下限ともに拡大することがわかった。
一方、光照射ありの場合は、図10Aと同様に考えられ、さらに、電荷を持つ分だけ効果が増加する。
以上のように本実施の形態は、貯水槽内の水を静電霧化方式にて、ミストに静電付加するものである。マイナスの電荷を負荷された微細ミストが、プラスに帯電した野菜や果物に電気的に付着し、野菜や果物表面の細胞間隙より組織内部にミストが浸透することとなり、野菜の水分含有量を向上し、野菜のみずみずしさを保持することが出来る。
また、本実施の形態では、静電霧化方式にて、ミストに静電付加することにより、マイナスの電荷を負荷された微細ミストが、プラスに帯電した庫内壁面に付着し、庫内壁面の微細な孔にミストが入り込むこととなり、微細な孔の内部の汚れを浮き上がらせ除去効果を高めることが出来る。また、野菜表面の有害物質の除去効果も高めることが出来る。
また、本実施の形態では静電霧化方式にて、オゾンを含むミストを野菜室内に噴霧することにより、野菜の表面や切り口面を除菌して、細菌やカビによる、組織間隙や導管のつまりを抑制することとなり、より野菜の水分含有量を向上し、野菜のみずみずしさを保持することが出来る。
また、本実施の形態では静電霧化方式にて、オゾンを含むミストを野菜室内に噴霧することにより、庫内壁面の付着臭あるいは庫内臭をオゾンミストによって酸化分解することとなり、野菜室内の脱臭を行うことが出来る。
また、本実施の形態では静電霧化方式にて、微量のオゾンが発生することによりその近辺の貯水槽や水経路なども抗菌、殺菌出来る。
また、本実施の形態では野菜室に水補給装置を設けたが、冷蔵室、低温室、切替室に水補給装置を設けることによって、野菜や果物と同様に、保存中の肉や魚、加工食品、冷やご飯、パン等についても保湿性を向上することが出来る。
(実施の形態5)
図16は本発明の実施の形態5における噴霧量と粒子径に対する効果を示した図である。図17は本発明の実施の形態5における野菜の気孔部の顕微鏡観察結果を示す図である。実施の形態3と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
図16により、本実施の形態3および4によるミストの粒子径と噴霧量との相関関係をまとめると、ミストの粒子径および噴霧量によって冷蔵庫の庫内におけるミストによる作用や効果が異なってくることがわかる。
図16は、70リットルの野菜室を5℃の雰囲気温度に保った上で、ミストの粒子径と噴霧量を変化させて冷蔵庫内部における野菜の蘇生効果、野菜に付着している農薬等の有害物質の除去効果、冷蔵庫の壁面に付着する汚れの防汚効果のそれぞれの効果が現れる範囲を示したものである。
まず、野菜蘇生について説明する。
図16に示すように、野菜の水分含有量を高めることを目的に噴霧するミストの粒子径は、野菜の表面にあり呼吸と水分の調節を行っている気孔が最大に開いた状態での径以下でないと、ミストが野菜の内部に物理的に浸透しにくい。また、実験の結果によると、光照射なしの場合では細胞間隙幅以下の粒子径において、水分含有量の復元率が高くなり、ミスト粒子の細胞間隙からの浸透がより活発に行われ野菜の水分含有量の復元効果が大きいことがわかった。
また、逆にミスト径が小さくなりすぎると、今度はミストと気孔との接触頻度が少なくなり、水分含有量の復元率が低下し、蘇生率が低くなる。
一方、ミストの噴霧量は、貯蔵室内の相対湿度を野菜内部の湿度と平衡状態に保つことが出来る量以上噴霧する必要があり、一方で、噴霧量の上限は野菜の水腐れなど品質劣化を生じない量以下とする必要がある。
また、ミストに静電付加すると、野菜との電位差が生じ、ミストの野菜付着率が高くなるため、同一粒子径の場合には、静電付加したミストを用いることで、ミスト噴霧量が少なくても水分含有量の復元率が上昇し、蘇生率が高くなることがわかった。
次に野菜表面に付着した、農薬等の有害物質の除去について説明する。
本実験にあたっては、(1)一般的な野菜の農薬であるマラチオンを野菜表面に付着させミスト雰囲気の中に12時間置いたものと、(2)同量のマラチオンを野菜表面に付着させ12時間ミスト雰囲気でない通常の野菜室に置いたものとを実験試料として用いた。試料1及び2を、夫々、笊に入れて10秒間流水洗浄を行い、マラチオンの除去率がミスト雰囲気でない通常の野菜室に置いたものに比べて50%以上のものを至適範囲とした。
実験によると、農薬除去効果の高いミスト粒子径は野菜の凹凸以下で、且つ拡散性のある微細粒子であった。また逆に径が小さくなりすぎると、農薬との接触頻度が少なくなり、除去率が低くなる。
一方、ミストの噴霧量は、野菜の蘇生と同様、静電付加したミストでは野菜との接触頻度が高まるため少量の噴霧量で農薬除去効果がある。また、野菜の蘇生のように野菜の内部までミストを供給する必要はなく、ミストの供給は野菜表面に限られるため、必要な噴霧量も野菜蘇生より少なくてよい。除去効果は噴霧量よりもミスト中のオゾンやOHラジカル等の分解能力を有する物質の量、もしくは個数に左右される。ミストを静電霧化方式にて発生させた場合では、ミスト中のラジカル個数で考えれば、ミストが微細になるほどラジカル個数やミストの表面積が増え、農薬の分子に接触する確率が増え、農薬除去効果も高くなる。
次に冷蔵庫庫内の防汚効果について説明する。
ミストを用いて行う冷蔵庫庫内の防汚とは、冷蔵庫の庫内の壁面に水粒子が満遍なく付着し、庫内の壁面に直接汚れ物質が付着することを防ぐことである。このように汚れ物質が水粒子を介して庫内の壁面に付着している場合には、例えば庫内壁面を拭くだけで、簡単に汚れを落とすことができ、冷蔵庫内の掃除が非常に簡単となる。
防汚効果の確認は、各粒子径と噴霧量のミストを充満させた70リットル野菜室内において、一般的な冷蔵庫内の樹脂であるABS樹脂に汚れ物質を吹きつけた後、一定時間後に汚れをふき取った際に、汚れ物質が残らない範囲を至適範囲とした。
防汚効果の高い粒子は、庫内樹脂の凹凸以下の粒子径で、且つ拡散性のある微細粒子であった。また、庫内壁面にミストが付着した際に水滴として目に見える粒子径では結露を生じ、庫食品が品質劣化を起こす可能性があるため、噴霧するミストの粒子径は壁面に付着したミストが目に見えないレベルの粒子径である必要がある。また、噴霧量は野菜蘇生や農薬除去の噴霧量よりも多く必要である。これは、防汚効果を発揮するためには、壁面に満遍なく水粒子が付着する必要があるため、多量のミストを噴霧する必要があることによる。ミストを静電霧化方式にて発生させた場合、農薬等の除去効果と同様、粒子径が小さいほど、酸化分解力の高いラジカル個数が多くなり、ミストの酸化分解能力が高くなるとともに、汚れとの接触頻度が上がり、付着する汚れの分解効果が高くなると考えられる。しかし、粒子径が小さすぎるとミストの壁面到達率が低下し、防汚効果が低くなる。
このようにミストの粒子径と噴霧量の関係によって、冷蔵庫の庫内における様々な有用な効果が得られることがわかった。これらにより、得たい効果が複数実現するようなミスト噴霧を行うことで、冷蔵庫の使い勝手をより向上させることが出来る。
(実施の形態6)
図18は本発明の実施の形態6における冷蔵庫の断面図である。図19は本発明の実施の形態6における冷蔵庫の噴霧部近傍の縦断面図である。図20は制御フロー図である。
図18において冷蔵庫221は、仕切り板222によって、上から冷蔵室223、切替室224、野菜室225、冷凍室226に区画されている。野菜室225には野菜容器228が設置される。野菜室225は、扉233、仕切り板222及び庫内仕切り230で区画された空間であり、その中に食品が保存され、湿度約80%RH以上(食品収納時)、温度4〜6℃に保持されている。野菜室225の背面には風路229と野菜室225を区画するための庫内仕切り230が備えられている。野菜室225の天面の仕切り板222には、噴霧部231を含む水補給装置232が備えられている。噴霧部231は、例えば、静電霧化装置やノズル式霧化装置、超音波霧化装置、遠心霧化装置などである。
また、冷蔵庫221は冷蔵庫を冷却するため、冷凍サイクルが、圧縮機241、凝縮器、膨張弁やキャピラリチューブなどの減圧装置(図示せず)、蒸発器242、それら構成部品を連結する配管、冷媒などを有する。
冷蔵庫221は機械室を有しており、機械室には圧縮機241と凝縮器などが備えられている。なお、三方弁や切替弁を用いる冷凍サイクルの場合は、それらの機能部品を機械室内に配設することも出来る。
冷凍サイクルを構成するキャピラリは、パルスモーターで駆動する冷媒の流量を自由に制御出来る電子膨張弁として機能する場合もある。
また、断熱箱体内には、蒸発器242が冷凍室226の背面に備えられ、減圧膨張で低温化した冷媒と庫内空気とを熱交換により冷却する役割を担っている。
図19に示すように、噴霧部231の一例である静電霧化装置304は、仕切り222に組み込まれている。静電霧化装置304は、野菜室225内にミストを噴霧する噴霧先端部304aを有している。静電霧化装置304の外郭は円柱形のホルダー305で構成されており、円柱形のホルダー305の中には印加電極306が設置され、印加電極306の周囲は保水材307で覆われ、印加電極306の球状先端まで含水状態となっている。さらに、ホルダー305の庫内側開口部にはドーナツ円盤状の対向電極308が、印加電極306の先端と一定距離を保つように取り付けられている。さらに、高電圧を発生する電圧印加部309が、マイナス極側を印加電極306、プラス極側を対向電極308とそれぞれ電気的に接続している。
また、静電霧化装置304の一部には、印加電極306の先端温度を検知するための温度検知部312が備えられており、その信号を検知し、あらかじめ決められた演算を行い、構成部品を動作させる制御部314を備えている。この制御部としては、例えば、マイコンなどを利用することが出来る。
さらに、印加電極306の先端温度を制御するために印加電極306背面に加熱部313を備えている。
ここで、仕切り板222は主に発泡スチロールなどの断熱材で構成されており、その壁厚は、30mm程度であるが、静電霧化装置304の背面の壁厚は5mmから10mmで構成されている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
冷蔵庫の場合、冷却器(蒸発器)242で熱交換された冷気を攪拌ファン(図示せず)などにより冷蔵室223、切替室224、野菜室225、冷凍室226、製氷室(図示せず)などに冷気を配分し、所定の温度を維持するようにON/OFF運転するのが一般的である。野菜室225は、冷気の配分や加熱部などのON/OFF運転により4℃から6℃になるように調整され、一般的には庫内温度検知部をもたないものが多い。また、野菜室225は、食品からの蒸散と扉開閉による水蒸気の浸透により高湿である。静電霧化装置304が設置されている仕切り板222の厚さは、印加電極306を冷却するための冷却能力が必要であり、静電霧化装置304が備えられている箇所の壁厚は他の部分より薄く構成されている。そのため、比較的低温である製氷室からの熱伝導により印加電極306を冷却することが出来る。ここで、印加電極306の先端温度を露点温度以下にすれば、印加電極306近傍の水蒸気は印加電極306に結露し、水滴が確実に生成される。
具体的には、印加電極306近傍に設置されている温度検知部312により先端温度を計測し、制御部314により加熱部313をON・OFF制御するか、もしくは電圧を変化させる。それにより、印加電極306の先端温度を露点温度以下に調整し、高湿空気に含まれる水分を印加電極306に結露させる。ここでは図示しないが庫内に庫内温度検知部や庫内湿度検知部などを設置することにより、あらかじめ決められた演算により厳密に庫内環境下の変化に応じて露点温度を割り出すことが出来る。仮に印加電極306先端が氷や霜となった場合でも、加熱部313で融解温度まで印加電極306先端温度を上昇させることが可能なので、霜や氷を融解することにより適度に水を生成することが出来る。
本実施の形態の静電霧化装置304において、印加電極306は保水材307に覆われているため、印加電極306は一定量の含水状態となる。この状態で印加電極306を負電圧側とし、対向電極308を正電圧側として、電圧印加部309によりこの電極間に高電圧(例えば4.6kV)を印加させる。このとき、例えば3mmの距離に隔てられた電極間でコロナ放電が起こり、印加電極306の水が電極先端から霧化し、目視できない1μm未満の電荷をもったナノレベルの微細ミストと、それに付随するオゾンやOHラジカルなどが発生する。
発生した微細ミストは、野菜容器228内に噴霧される。静電霧化装置304から噴霧される微細ミストは、マイナスの電荷を帯びている。一方、野菜室内には青果物である野菜が収納されており、その中には緑の菜っ葉ものや果物等も保存されている。これらの青果物は、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態で収納されていることが多い。これらの青果物は通常、プラスの電荷に帯電されており、噴霧されたマイナスの電荷を持った微細ミストは、野菜表面に集まりやすい。よって、噴霧された微細ミストは野菜室内を再び高湿にすると同時に青果物の表面に付着し、青果物からの蒸散を抑制し、保鮮性を向上させる。また、野菜や果物の細胞の隙間から組織内に浸透し、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。
また、発生した微細ミストは、オゾンやOHラジカルなどを保持しており、これらは強い酸化力を保持する。そのため、発生した微細ミストが野菜室内の脱臭や野菜表面を抗菌、殺菌することが出来ると同時に、野菜表面に付着する農薬やワックスなどの有害物質を酸化分解・除去することが出来る。
さらに、圧縮機241の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器にて冷蔵庫221の空気と熱交換して放熱するとともに凝縮液化し、キャピラリに至る。その後、キャピラリでサクションラインと熱交換しながら減圧されて蒸発器242に至る。
冷却用ファン(図示せず)の作用により、蒸発器242内の冷媒の蒸発作用により比較的低温となった冷気は冷蔵室223と冷凍室226などに流入し、それぞれの部屋の冷却が行われる。蒸発器242内で、庫内の空気と熱交換した冷媒はその後サクションラインを通り圧縮機241へと吸い込まれる。
上述した冷凍サイクルの冷媒としては、地球環境保全の観点から地球温暖化係数が小さい可燃性冷媒であるイソブタンが使用されている。
この、炭化水素であるイソブタンは空気と比較して常温、大気圧下で約2倍の比重である(2.04、300Kにおいて)。
仮に、圧縮機の停止時に冷凍システムから可燃性冷媒であるイソブタンが漏洩した場合には、空気よりも重いので、下方に漏洩することになる。このとき、冷凍室背面の仕切りより、庫内へ冷媒が漏洩する可能性がある。特に、冷媒の滞留量が多い蒸発器242から漏洩する場合には、漏洩量が多くなる可能性があるが、静電霧化装置304を具備する野菜室225は、蒸発器より上方に設置されているため、漏洩しても野菜室には漏洩することがない。
また、仮に野菜室に漏洩したとしても、冷媒は空気より重いため貯蔵室下部に滞留する。よって、静電霧化装置が貯蔵室天面に設置されているため、静電霧化装置付近が可燃濃度になることは極めて低い。
次に図20により微細ミスト噴霧に関する制御フローを説明する。
微細ミスト噴霧に際して、印加電極306先端の温度を判定する。ステップ1により印加電極温度判定モードに入ると、次にステップ2で温度検知部312の温度を判定する。検知温度Tが露点温度以下になる基準温度T1より低い場合、ステップ3に移行する。一方、検知温度が基準温度T1より高い場合は、印加電極先端は乾燥状態にあると判定し、ステップ5に移行し、空運転を含めた安全性確保のため静電霧化装置304をOFFにする。
ステップ2からステップ3に移行した時、次に、あらかじめ決められた印加電極先端が凍結もしくは着霜しない基準温度T2より温度検知部の検知温度が高い場合、印加電極先端に結露していると判定し、ミスト噴霧可能と判断して噴霧部をONし、貯蔵室内に微細ミストを噴霧する。
ステップ3で温度検知部の検知温度が基準温度T2より低いと判定された場合には、印加電極先端は凍結もしくは着霜していると判定し、ステップ6に移行する。ステップ6では、静電霧化装置304をOFFにし、加熱部313をONさせ、先端部分を加熱することにより氷や霜を融解させる。
以上のように、本実施の形態6は、断熱区画された貯蔵室を有する断熱箱体と液体を噴霧する噴霧部として静電霧化装置とを備える冷蔵庫である。比較的低温である別貯蔵室の低温冷気を冷却源とし、別の低温貯蔵室側からの熱伝導により静電霧化装置の印加電極を冷却し、印加電極先端温度が露点以下に温度調整することにより、空気中の水分を確実に印加電極先端に結露させることが出来る。
また、本実施の形態では、印加電極先端を印加電極背面の加熱部により先端温度を微調整することにより、結露の発生量を調整することが出来る。また、仮に先端に氷や霜が生成したとしても、これらを融解することより静電霧化装置を運転するときは、確実に水滴にすることができ、安全性が保たれる。
また、本実施の形態の微細ミストを静電付加させることにより確実にミストを野菜表面に付着させることにより野菜の保湿性を高め、保鮮性を向上させることが出来る。また、微細ミスト発生時、同時に発生するオゾンやOHラジカルにより脱臭、食品表面の有害物質除去、防汚などの効果を高めることが出来る。
また、本実施の形態の噴霧部は静電霧化方式によってミストを生成するものであり、高電圧等の電気エネルギーを使って水滴を分裂させ、細分化することによって微細ミストを発生させる。発生したミストは電荷を帯びている為、そのミストに野菜や果物等の付着させたい物と逆の電荷を持たすことによって、例えばプラスの電荷を持つ野菜に対してマイナスの電荷を帯びたミストを噴霧することにより、野菜や果物への付着力が向上するため、より均一に野菜表面にミストが付着するとともに、電荷を帯びていないタイプのミストと比較してミストの付着率をより向上させることが出来る。また、噴霧された微細ミストは直接、野菜容器内の食品に噴霧することができ、微細ミストと野菜の電位を利用して野菜表面に微細ミストを付着させることが出来るので、保鮮性を効率よく向上させることが出来る。
さらに、本実施の形態の補給水は、外部から供給する水道水ではなく結露水を用いる。そのためミネラル成分や不純物がなく、印加電極先端の劣化や目詰まりによる保水性の劣化を防ぐことが出来る。
さらに、本実施の形態のミストはラジカルを含んでいることにより野菜表面に付着する農薬やワックスなどを極めて少ない水量で分解・除去出来るので節水ができ、かつ低入力化が出来る。
なお、微細ミスト発生時にオゾンも発生する。静電霧化装置のON・OFF運転により、貯蔵室内のオゾン濃度を調整することが出来る。オゾン濃度を適度に調整することにより、オゾン過多による野菜の黄化などの劣化を防止し、かつ、野菜表面の殺菌、抗菌作用を高めることが出来る。
また、静電霧化装置を蒸発器より上方に配置していることから、イソブタンやプロパンなどの可燃性冷媒を用いて冷凍サイクルを構成した場合であって、かつ、冷媒が漏洩した場合も、空気より重いため冷媒が野菜室に充満することはないので安全である。
また、野菜室内においても静電霧化部を貯蔵室の上方に設置しているので、冷媒が漏洩しても、貯蔵室の下部に滞留するので着火することはない。
なお、貯蔵室内は冷媒配管等に直接面している部分がないので、冷媒が漏洩することはない。よって、可燃性冷媒に着火することはない。
(実施の形態7)
図21は本発明の実施の形態7における噴霧部近傍の縦断面図である。実施の形態6と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
図21において冷蔵庫221の仕切り板222には静電霧化装置304が備えられ、その近傍に貯水槽315と貯水槽315の中に貯留水316、また、印加電極306に向かって高湿の空気を流すための送風部317が構成されている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
貯水槽315には、水道水や結露水などが蓄えられている。ここで、静電霧化装置304により貯蔵室内に微細ミストを噴霧する時、印加電極先端近傍の雰囲気および貯蔵室を高湿度にする必要がある。理由としては、低湿の場合、露点温度が凍結点より低温になり、霧化できないためである。また、貯蔵室が低湿だと食品の表面からの蒸散が促進され保鮮性が劣化する。そこで、貯水槽315の水面に風を流すことにより貯留水316を水蒸気化させ、高湿空気を作り、送風部317により印加電極306に搬送する。搬送された高湿空気は、露点温度以下に制御された印加電極306に結露し、印加電極と対向電極間に高電圧をかけることにより電荷を持った目視できないナノレベルの微細ミストを発生させ、貯蔵室内に噴霧する。また、同等に貯蔵室を加湿され保鮮性を保つことが出来る。
以上のように、本実施の形態においては、冷蔵庫の仕切りに静電霧化装置304が備えられ、その近傍に貯水槽と送風部を備えることにより、必要に応じて印加電極や貯蔵室に高湿な空気を搬送し、貯蔵室内の保鮮性を確保した上で、さらに印加電極から発生する微細ミストによりさらに保鮮性、抗菌性を向上させることが出来る。
また、本実施の形態の印加電極を高湿にすることにより、特に、印加電極と対向電極間の空気放電が抑制させるのでオゾン濃度を低減出来る。
なお、本実施の形態では、貯水槽は仕切りに固定されているが、着脱式の貯水槽でもかまわない。これにより、手軽に水の交換、追加、清掃が容易となりより清潔志向の高い使用者のニーズにも答えることができ、冷蔵庫の使い勝手が向上する。
なお、本実施の形態では、貯水槽からの蒸発促進に送風部を用いたが加熱部などを用いてもよい。この場合、空気の温度と貯水槽の温度差が広がり、貯留水が蒸発しやすくなる。
なお、本実施の形態では、貯水槽からの蒸発促進に送風部を用いたが攪拌部などを用いてもよい。この場合、貯留水の液面が乱れることにより気化しやすくなる。
(実施の形態8)
図22は本発明の実施の形態8における冷蔵庫の水収集部近傍の縦断面図である。図25は本発明の実施の形態8における冷蔵庫の機能ブロック図である。図26は本実施の形態8の制御フロー図である。実施の形態6と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
図22において、野菜室天面の仕切り板222には、水補給装置322と、照射部323と、拡散板324が取り付けられている。水補給装置322は、静電霧化装置304と、水収集板321と、水収集板表面温度検知部327と、ヒータなどの加熱部328と、水収集板321で生成された水を受け、噴霧部に流水させるためのカバー部材329と、を含む。照射部323は、特定の波長に絞った光を庫内に照射させるためのLEDやランプなどからなる。透光性材料からなる拡散板324は、照射部323からの光を庫内全体に拡散させる。また、野菜室225の中には庫内温度検知部325と庫内湿度検知部326が備えられている。さらにここでは図示しないが、野菜室の扉開閉を検知するための扉開閉検知部を備えている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下に、その動作・作用を説明する。
まず、庫内温度検知部325と庫内湿度検知部326により野菜225の露点温度を予測することが出来る。そこで、水収集板表面の温度検知部327により表面温度を把握し、加熱部328などで水収集板表面温度を露点温度以下になるように調整する。例えば、(表1)のように水収集板表面温度を調整する。
例えば、庫内温度が5℃で庫内湿度が90%なら、露点温度は3.5℃であり、この温度以下なら水収集板321に庫内の水蒸気は結露する。結露した水は、水収集板321もしくはカバー部材329に沿って静電霧化部304に給水される。
また、例えば、庫内温度検知部325が5℃以上、庫内湿度検知部326が95%以上であると検知した場合、照射部323が点灯する。照射部323は、例えば青色LEDや青色光のみを透過する材料で覆われたランプなどである。微弱な青色光が野菜や果物に照射されると、野菜や果物の表皮表面に存在する気孔が、青色光の光刺激によって、通常の状態に比べて、大きく気孔を開孔する。
つまり、照射される青色光は野菜の気孔開度を制御するものであり、その波長は図23の青色光誘導性の気孔開孔の作用スペクトル、に示すように400nm〜500nmが望ましい。中心波長が440nmもしくは470nmの照射光を使用したときその相対効果が特に高くなる。なかでも、青色LEDを用いれば安価でかつ低入力で光照射でき、貯蔵室内への熱影響を低減することが出来る。
また、光の強さを表す光量子束密度は、0.1μmol・m−2・s−1〜100μmol・m−2・s−1が望まれる。特に野菜は光刺激によりその気孔を開閉するが、光量子束密度は0.1μmol・m−2・s−1程度あれば光刺激に反応する。また、それ以上の光量子束密度であれば気孔は開孔するが、100μmol・m−2・s−1を超えると光合成が活発になるため、野菜表面からの蒸散が激しくなり保鮮性が損なわれる。実際には、容器内の照度分布と野菜の積み重ね等を考慮すれば、照射部323の光量子束密度は1μmol・m−2・s−1程度に設定されることが望ましい。
結露水が印加電極に給水され、印加電極と対向電極間に高電圧を印加することにより発生した微細ミストは、野菜容器228内に噴霧される。噴霧されたミストは青色光によって制御された気孔開孔状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔を経て組織内に浸透する。それにより、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキットした状態に復帰する。
なお、野菜の気孔は、波長が500nm〜700nmの赤色光を含んだ光でもその気孔を開閉することが出来る。ただし、図24に示すように、赤色光の場合には、500μmol・m−2・s−1の光量子束密度にしても、青色光1μmol・m−2・s−1の効果に劣る結果であった。
次に図25の機能ブロック図を説明する。静電霧化装置304に給水する水量を調整するためと、照射部323の動作を調整するため、水収集板温度検知部327と、野菜室温度検知部325と、野菜室湿度検知部326と、扉開閉検知部330との情報信号を制御部に入力する。
例えば、庫内温度が5℃、庫内湿度が90%、水収集板表面温度が4℃であることを検知した場合、制御部314により、静電霧化装置304の動作を行い、また加熱部328の動作を停止させる。つまり、この場合、水収集板表面温度は、露点温度以下に冷却する必要があり、例えば、加熱部をOFFもしくは入力低下するか、もしくは冷気の温度を低下させる制御を行う。また、扉開閉検知部330が扉閉と検知したときのみ静電霧化装置304を動作させることにより、扉開閉時の外部へのミストもれを防ぐことが出来る。さらに、貯蔵されている野菜が0℃近辺の低温で気孔を開孔した場合には、野菜の低温障害を促進してしまい、野菜を傷めることになる。また、15℃以上だと呼吸による野菜表面からの蒸散が盛んになり、水分量が減少しやすくなる。そこで、野菜室温度検知部325が、例えば2℃〜15℃の範囲を検知した時にのみ照射部323をONするようにすれば、効率的に鮮度維持、水分量向上が出来る。
次に図26の制御フロー図を説明する。
ステップ11では、水収集板表面温度検知部327が表面温度t℃を測定する。表面温度t℃があらかじめ決められたtA℃とtB℃の範囲にある場合には、制御部314は、野菜の気孔制御とミスト噴霧による水分量向上が可能と判断する。
ステップ12では、制御部314は、静電霧化装置304を運転させ、貯蔵室に微細ミストを噴霧させる。
次のステップ13では、静電霧化装置304の積算運転時間TAがT1を越えているか否かが判定され、超えている場合には、ステップ14に進み、照射部323を動作させる。
ステップ15では、静電霧化装置304の運転積算時間TAがT2を超えているか否かが判定され、超える場合には、ステップ16に進んで、ミスト噴霧を終了させ、同時に照射部もOFFさせる。
次にステップ17で、静電霧化装置304の積算停止時間TBが、T3を超えているか否かが判定され、超えている場合にはステップ18に進んで、タイマーTA、TBを初期値に戻し、再び水収集板表面温度を検知する。
以上のように、本実施の形態8の冷蔵庫は、野菜室内に保存中の野菜に対し、照射部によって、特定の波長を選択した光を照射し、且つミスト噴霧装置にて気孔を通過出来る微細ミストを適量噴霧する。これにより、開孔した野菜表面の気孔より、ミストが野菜内部に浸透することとなり、野菜の水分含有量を向上し、野菜のみずみずしさを保持することが出来る。
また、本実施の形態の仕切りに照射部と水補給装置を取り付けることにより、組み立て効率が向上し、また電源回路などの配線を簡易に出来る。
また、本実施の形態では、0.1〜100μmol・m−2・s−1の青色光を照射することにより、微弱な光照射によって、光合成活動を低く、一方で、気孔開孔率を高くすることが出来る。その結果、野菜の光合成による水分消費を極力抑え、開孔した、気孔から水分を野菜内部に効率よく供給することが出来る。また、青色光を含む400nm〜500nmの波長を選択することにより、光量子束密度を抑えることができ、またLEDなども適用可能となり省エネ効果や低価格化にも繋げることが出来る。
また、野菜室温度検知部や野菜室湿度検知部、扉開閉検知部を設けたことにより、さらに効率よく、結露水収集、ミストの噴霧が可能となる。
なお、照射部を青色光としたが、紫外線でもかまわない。この場合、噴霧されるミストを殺菌するとともに食品表面も殺菌でき、食品の安全性を高めることが出来る。
(実施の形態9)
図27は、本発明の実施の形態9における冷蔵庫の断面図である。図28は、本発明の実施の形態9における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の縦断面図である。図29は、本発明の実施の形態9における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の正面図である。図30、は本発明の実施の形態9における冷蔵庫の超音波霧化装置の縦断面図である。図31は、本発明の実施の形態9における機能ブロック図である。図32は、本発明の実施の形態9における制御フロー図である。実施の形態6と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
図27において、冷蔵庫221は断熱性を有する仕切り板222によって、上から冷蔵室223、切替室224、野菜室225、冷凍室226に区画されている。野菜室225は野菜容器228が設置され、その空間の中に食品を収納し、湿度約90%RH以上(食品収納時)、4〜6℃に冷却されている。野菜室225の背面には風路229と野菜室225を区画するための庫内仕切り230が備えられている。庫内仕切り230には、超音波霧化装置401を含む水補給装置322が備えられている。さらに、野菜室天面の仕切り板222には、特定の波長を選択した光を照射する照射部323と庫内全体に光を拡散させるための拡散板324が備えられている。
図28において、庫内仕切り230と冷蔵庫外壁402との間には風路229を備える。風路229は、例えば冷却器(蒸発器)242で生成された冷気を各貯蔵室に搬送し、もしくは各貯蔵室から熱交換された空気を冷却器242へ搬送するために設けられている。ここで、庫内仕切り230には超音波霧化装置401が組み込まれている。庫内仕切り230は主に発泡スチロールなどの断熱材で構成されており、その壁厚は30mm程度であるが、貯留水保持部404の背面については、壁厚は5mmから10mmで構成されている。貯留水保持部404の中には、水収集板321が庫内側に設置されている。水収集板321の一面には例えば、ニクロム線で構成された加熱ヒータなどの加熱部328が当接し、庫内側にはBOXファンなどの送風部317と循環風路407を構成するためのカバー部材406が設置されている。
図29において、カバー部材406には循環風路407に関する第1の循環風路開口部408と第2の循環風路開口部409が設けられている。さらに、水収集板321には、水収集板321表面の温度を検知するための温度検知部327が設置されている。
図30において、超音波霧化装置401はホーン410と圧電素子411で構成される。ホーン410は切削加工等により略円錐状に加工され、ホーン410の圧電素子411側にホーン410と一体的にフランジ部412が形成されている。またホーン410と圧電素子411とは接着固定されて、圧電素子411で発生する振動をホーン先端で最大振幅となるよう増幅されるように構成されている。また、超音波霧化装置401はフランジ部412を取り付け位置とし、冷蔵庫やその取り付け部材の接続部405に取り付けられている。
ホーン410は熱伝導性の高い材質としており、例えばアルミニウム、チタン、ステンレス等の金属が挙げられる。特に、軽量で、熱伝導性が高く、超音波伝達時の振幅の増幅性能の点からするとアルミニウムを主成分とするもの選択することが好ましい。また、長寿命化のためにはステンレスを主成分とするものを選択することが望ましい。
また、超音波の振動の振幅はフランジ部412で振幅の節部に、ホーン410の先端で振幅の腹部となるように、またフランジ部412とホーン410の先端の間を1/4波長で振動するように設定されている。またホーン410の長さは、発生ミストの霧化粒子径と圧電素子411の発振周波数及びホーン410の材質で決まるものである。例えば、霧化粒子径が約10μmの場合、ホーン410の材質がアルミニウムで、圧電素子411の発振周波数は約270kHzの時にホーン410の長さBは約6mmとなる。また、霧化粒子径が約15μmの場合、ホーン410の材質がアルミニウムで、圧電素子411の発振周波数は約146kHzの時にホーン410の長さBは約11mmとなる。これらの一連の理論計算値まとめを(表2)に記載する。
また、冷蔵庫221の冷凍サイクルは、圧縮機241、凝縮器、膨張弁やキャピラリチューブなどの減圧装置(図示せず)、蒸発器242、それら構成部品を連結する配管、及び冷媒などで構成される。
冷蔵庫221は、機械室を有しており、機械室には圧縮機241と凝縮器などが備えられている。なお、三方弁や切替弁を用いる冷凍サイクルの場合は、それらの機能部品が機械室内に配設されていてもよい。
冷凍サイクルを構成するキャピラリは、パルスモーターで駆動する冷媒の流量を自由に制御出来る電子膨張弁として働く場合もある。
また、断熱箱体内には、蒸発器242が冷凍室226の背面に備えられ、減圧膨張で低温化した冷媒と庫内空気とを熱交換により冷却する役割を担っている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
冷蔵庫221の場合、冷却器242で熱交換された冷気を攪拌ファン(図示せず)などにより冷蔵室223、切替室224、野菜室225、冷凍室226、製氷室(図示せず)などに冷気を配分し、所定の温度を維持するようにON・OFF運転するものが一般的である。野菜室225は、冷気の配分や加熱部などのON・OFF運転により4℃から6℃になるように調整され、一般的には庫内温度検知部をもたないものが多い。また、野菜室225は、食品からの水分の蒸散と扉の開閉による水蒸気の侵入等により高湿である。庫内仕切り230の厚さは、ある程度の冷却能力が必要なので他の部分より薄く構成されている。ここで、水収集板321の表面温度を露点温度以下にすれば、水収集板321近傍の水蒸気は水収集板321に結露し、水滴が確実に生成される。
具体的には、(1)水収集板321に設置されている温度検知部327により表面の温度状態を把握し、(2)制御部314により送風部317、加熱部328をON・OFF制御もしくは電圧可変を行い、(3)水収集板321の表面温度を露点温度以下に調整し、(4)送風部317により庫内より送られた高湿空気に含まれる水分を水収集板321に結露させる。特にここでは図示しないが庫内に庫内温度検知部や庫内湿度検知部などがあれば、あらかじめ決められた演算により厳密に露点温度が庫内環境下の変化に応じて割り出すことが出来る。仮に水収集板321表面で氷や霜となった場合でも、加熱部328を用いて融解温度まで水収集板321表面温度を上昇させることが可能なので、適度に水を生成することが出来る。
ここで、送風部317が運転されると野菜室225の空気の影響により水収集板321表面温度は上昇し、一方、送風部317が停止すると表面温度は低下する。壁厚が10mm以上では、送風部317が運転時、加熱部328がOFFでも水収集板321表面温度は露点温度以上になり、結露量が調整できなくなる。逆に壁厚が5mm以下の場合は、常時、加熱部328がONの状態になりエネルギー効率が悪くなる。よって、水収集板321背面の庫内仕切り30の厚みは5mmから10mmにすることにより水収集板321の表面温度を制御しながら加熱部328のエネルギーを最小化することが出来る。
また、結露を促進させるためには野菜室225内の空気を循環させる必要がある。そこで、送風部317により空気を取り込む。例えば、送風部317により第2の循環風路開口部409より高湿の空気をとりこみ、水収集板321で結露させた後、第1の循環風路開口部408より庫内に空気を吐出し、野菜室225内の空気を循環させることにより結露を促進させる。
水収集板321表面で結露した水滴は徐々に成長し、自重によりポンプなどの動力を使わずに下方に流れ、超音波霧化装置401近傍に集まる。集まった結露水は、給水部403によりホーン410先端に供給される。
ホーン410先端に供給された水は、超音波振動子411の振動により粒子径の小さいミストとして野菜容器228内に噴霧される。野菜室225内には青果物である野菜の中でも緑の菜っ葉ものや果物等も保存されており、これらの青果物は蒸散よってより萎れやすい。野菜室225内に保存されている野菜や果物の中には、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態のものが含まれており、霧化されたミストによって野菜の表面が潤わされる。このとき、庫内温度検知部325が5℃以上、庫内湿度検知部326が95%以上であると検知した場合、照射部323が点灯する。照射部323は、例えば青色LEDや青色光のみを透過する材料で覆われたランプなどであり、微弱な青色光を照射し、野菜や果物は表皮表面に存在する気孔が、青色光の光刺激によって、通常の状態に比べ気孔の開度が大きくなり、野菜や果物が水分を吸収しやすくなる。
つまり、この時照射される青色光は野菜の気孔開度を制御するものであり、その波長は400nm〜500nmが望ましい。特に中心波長が440nmもしくは470nmの照射部を使用したときその相対効果が高く、特に青色LEDを用いれば安価でかつ低入力で照射でき、貯蔵室内への熱影響を低減出来る。
また、光の強さを表す光量子束密度は、0.1μmol・m−2・s−1〜100μmol・m−2・s−1が望まれる。特に野菜の気孔は光刺激により気孔を開閉するが、その刺激の感知する光量子束密度は0.1μmol・m−2・s−1程度あれば光刺激に反応する。また、それ以上なら気孔は開孔するが100μmol・m−2・s−1を超えると光合成が活発になり、そのため野菜表面からの蒸散が激しくなり保鮮性が損なわれる。実際には、容器内の照度分布と野菜の積み重ね等を考慮すれば、照射部323の光量子束密度は1μmol・m−2・s−1程度に設定されることが望ましい。
これにより、噴霧されたミストは野菜室225内を再び高湿にすると同時に野菜室225内に気孔開孔状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔より組織内に浸透し、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。そのとき、霧化粒子径は4μmから20μmが好ましい。さらに、一般的な野菜の平均的な気孔の大きさが20μm程度であるため、萎れた野菜をより復活させるためには20μm以下の粒子径でより細かいミストがより好ましい。
ホーン410は、ホーン410先端付近で振動による発熱を生じるが、ホーン410が高熱伝導性材料であるため、ホーン全体410への熱伝導の働きもなしている。
圧電素子411が駆動した場合、図30に示す実線Aのように各部位が振動する。ホーン410のフランジ部412側が超音波霧化装置401内を伝播する音波の節部となり、その節部にあたるホーン410のフランジ部412で、例えば庫内仕切り230と直接的または取り付け部材を介して間接的に接続して設置する。伝播する音波の節部で接続するので損失は少なくなるため、消費電力は小さくてすむ。
また、ホーン410の先端とフランジ部412との長さ(ホーン長:B)が1/4波長である構造をもてば、超音波霧化装置401の全長が短くすることが出来る。逆にホーン410の先端とフランジ部412の間に腹部が複数あると、振動エネルギー損失が大きくなり、振動に要する電力が大きくなる。
さらに、圧縮機241の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器にて冷蔵庫221の空気と熱交換して放熱するとともに凝縮液化し、キャピラリに至る。その後、キャピラリでサクションラインと熱交換しながら減圧されて蒸発器242に至る。
冷却用ファン(図示せず)の作用により、蒸発器242内の冷媒の蒸発作用により比較的低温となった冷気は冷蔵室223と冷凍室226などに流入し、それぞれの部屋の冷却が行われる。蒸発器242内で、庫内の空気と熱交換した冷媒はその後サクションラインを通り圧縮機241へと吸い込まれる。
上述した冷凍サイクルの冷媒としては、地球環境保全の観点から地球温暖化係数が小さい可燃性冷媒であるイソブタンが使用されている。
この、炭化水素であるイソブタンは空気と比較して常温、大気圧下で約2倍の比重である(2.04、300Kにおいて)。
仮に、圧縮機の停止時に蒸発器242から可燃性冷媒が漏洩した場合でも、超音波霧化装置なら静電霧化装置にあるような放電部がなく、着火源がない。そのため、冷凍サイクルを構成している部品の構成に関係なく超音波霧化装置を設置することができ、また、冷媒の種類を問わず、安全である。
次に図31の機能ブロック図を説明する。制御部314は、超音波霧化装置401の動作と、超音波霧化装置401に給水する水量を調整するため動作させる加熱部328や送風部317などと、照射部323の動作を制御する。それらの制御のため、水収集板温度検知部327と野菜室温度検知部325と野菜室湿度検知部326と扉開閉検知部330とからの情報信号が制御部314に入力される。例えば、庫内温度が5℃、庫内湿度が90%、水収集板表面温度が4℃であることが検知された場合、制御部314は、超音波霧化装置401のON・OFF、加熱部328の動作を決定する。この場合、制御部314は、水収集板表面温度を、露点温度以下に冷却する必要があるので、例えば、加熱部をOFFするか、もしくは加熱部への入力を低下させるか、冷気の温度を低下させるために圧縮機の回転数を増加させるか、もしくは送風部の回転数を低下させるように制御を行う。また、制御部314は、扉開閉検知部330により扉が閉状態であると検知されたときにのみ、超音波霧化装置401を動作させることにより、扉開閉時の外部へのミストもれを防ぐことが出来る。さらに、貯蔵されている野菜が0℃近辺の低温で気孔を開孔した場合、野菜の低温障害を促進してしまい、野菜を傷めることになる。また、15℃以上だと呼吸による野菜表面からの蒸散が盛んになり、水分量が減少しやすくなる。そこで、野菜室温度検知部325が、例えば5℃〜15℃の範囲を検知した時にのみ、照射部324をONすれば効率のよい鮮度の維持、水分量の向上が出来る。
次に図32の制御フロー図を説明する。
ステップ21で、水収集板表面温度検知部327により測定された表面温度t℃があらかじめ決められたtA℃とtB℃の範囲に検知温度がある場合、制御部314は、野菜の気孔制御とミスト噴霧による水分量向上が可能と判断し、ステップ22で超音波霧化装置401を運転させ、貯蔵室にミストが噴霧される。
ステップ23で、制御部314が超音波霧化装置401の積算運転時間TAがT1を超えると判定すると、ステップ24に進んで照射部323を動作させる。
ステップ25で、制御部314が超音波霧化装置401の運転積算時間TAがT2を超えると判定すると、ステップ26に進んで、ミスト噴霧を終了し、同時に照射部もOFFさせる。
次にステップ27で、制御部314が超音波霧化装置401の停止時間がT3を超えると判断すると、ステップ28に進んでよりタイマーTA、TBを初期値に戻し、再び水収集板表面温度を検知する。
以上説明したように、本実施の形態9の冷蔵庫は、断熱区画された貯蔵室を有する断熱箱体と、液体を噴霧する噴霧部として超音波霧化装置とを備える。この構成により、比較的低温である各貯蔵室へ低温冷気を搬送するため風路を利用して、風路側からの熱伝導により超音波霧化装置に水を供給するための水収集板を冷却する。水収集板を露点以下に温度調整することにより、空気中の水分を確実に生成し、給水部などにより超音波霧化装置の振動子先端に水を供給することが出来る。
また、本実施の形態においては、噴霧部を超音波霧化装置としたことにより水の供給が十分であれば、噴霧量は十分確保することが出来る。そのためON・OFF運転による噴霧量の調整が可能となり、さらに、実使用での運転時間が短縮でき、構成部品等の寿命信頼性が向上する。
また、本実施の形態においては、ミスト噴霧と併用して400nm〜500nmの波長を選択した青色光を含む照射部により野菜室内を照射することにより、気孔の開閉を光刺激により制御出来ることにより、さらに野菜への水分供給が向上する。
また、本実施の形態においては、噴霧部を超音波霧化装置としたためミスト発生時にオゾンが発生することがないので、特にオゾンに対する対策を用いなくてよく、部品構成ならび制御内容が簡素化出来る。
また、本実施の形態においては、超音波霧化装置に貯水槽を備えたことにより様々な機能水、たとえば酸性水、アルカリ水、またはビタミンなどを含んだ栄養水などを注入し、それを野菜室内に噴霧することができ、様々な新しい機能を野菜室に追加出来る。
また、本実施の形態においては、噴霧部を超音波霧化装置としたため十分に霧化量を確保出来るので野菜表面に付着する農薬やワックスなどを極めて少ない水量で浮き上がらせ除去でき、節水が出来る。
また、本実施の形態においては、超音波霧化装置を用いたことにより冷凍サイクルの冷媒にイソブタンやプロパンなどの可燃性冷媒を用いた場合においても、冷凍サイクルの構成部品の配置を考慮せず超音波霧化装置を設置することができ、また、防爆対応などの特別な対応も備えなくてもよい。
また、可燃性冷媒を用いた冷蔵庫の場合、ミスト発生部に放電が起こらないため、防爆対応を不必要となり、より簡素に安価に構成することが出来る。
また、本実施の形態においては、水収集板を貯蔵室内に備えたことにより加熱部や送風部により結露量を調整出来ると同時に、水収集板の温度を可変にすることにより庫内湿度も調整出来る。
また、本実施の形態の冷蔵庫は、略円錐状に形成されたホーンと、圧電素子とを備え、ホーンの一端面に圧電素子を接着して一体化している超音波霧化装置を貯蔵室内に配置している。この構成により、小型化され、かつ低入力の超音波霧化装置を冷蔵庫に適用出来るため、設置の制約が少なく、設計に自由度を持たせることが出来る。また、低入力であるため消費電力を低減することが出来るとともに、制御部314を搭載する制御基板を小型・低コスト化することが出来る。
また、超音波霧化装置自体の発熱量が抑制出来るので、貯蔵室内の温度上昇を抑制出来る。また特に欠水が生じた場合の異常発熱を抑制することが出来るので、超音波霧化装置の寿命が長期化し、信頼性が向上する。さらに冷蔵庫という低温雰囲気下で使用するため、発熱が抑制され、超音波霧化装置自体も長寿命化出来る。
また、給水部を設けたことにより、効率的にかつ安定してホーン先端に水分を供給するので、超音波霧化装置から常時安定して噴霧され、貯蔵室空間を高湿に維持することが出来る。また、安定してホーン先端に水分を供給することで、ホーン先端での欠水を防止出来るので、超音波霧化装置の寿命が長期化し、信頼性が向上する。
また、給水部は、貯留水保持部近傍に設けられていることにより、貯留水保持部から給水部によりホーン先端に水分が補給されるため、効率よく貯蔵室空間に噴霧でき、貯蔵室空間を高湿に維持することが出来る。また、貯留水保持部と給水部が近傍に位置しているので、貯留水保持部からホーン先端までの水分経路の構成をコンパクト化、簡素化でき、設計自由度が向上する。
また、貯留水保持部は、水収集部として貯蔵室内の空気中水分を結露させる部を有する。結露水を給水部によりホーン先端に供給することにより、結露部により生じた結露水を貯留水保持部に集水する。供給部を介してホーン先端に集水された結露水を常時安定して供給出来るため、効率よく貯蔵空間にミストを噴霧でき、貯蔵室空間を高湿に維持することが出来る。
また、ホーンは、高熱伝導性の材質であることより、ホーン先端部で発熱をホーン全体に拡散し、かつ貯蔵空間が低温環境であるため、超音波霧化装置自体の温度上昇が抑制出来るので、長寿命化し信頼性が向上する。
また、霧化粒子径を0.5μmから20μmにすることにより、食品の内部に強制的に水分を供給出来るため、食品の水分含有量を向上することが出来る。
また、ホーン先端部を振動の腹部近傍に、ホーンの圧電素子接着面側に形成したフランジ部を振動の節部近傍にするとともに、フランジ部と直接的または間接的に冷蔵庫本体とを接続することにより、振動の振幅が大きい腹部、すなわちホーン先端部でホーン先端に補給された水分を効率よく霧化させることが出来る加えて、振動の節部、すなわちホーンに形成したフランジ部では振幅が小さいため、直接的または間接的に接続した接続部から冷蔵庫への振動伝達を低減することが出来る。
また、超音波霧化装置は、ホーン先端とフランジ部との長さを1/4波長モードで振動する構造を有することにより、霧化面となるホーンの先端と接続部となるホーンに形成したフランジ部との間に腹部と節部が1つで複数存在しない。その結果、ホーンの小型化が可能であり、エネルギーの分散や減衰が低減されるため、効率の向上が可能となる。また、小型化出来るので、設置制約が少なく、設計に自由度を持たせることができ、貯蔵空間を大きくすることが出来る。
また、ホーンの長さを1mmから20mmとすることにより、ホーンが小さくなるため、冷蔵庫設計に自由度を持たせることができ、貯蔵空間を大きくすることが出来る。
また、超音波霧化装置周辺にカバー部材を設けることにより、使用者等が直接触れることができなくなるため、安全性の向上が可能とすることが出来る。
本実施の形態9において、超音波霧化装置を略円錐状に形成されたホーンを使用したもので説明したが、略円錐状の形状でなく、先端での振動の振幅を増幅させる形状であれば同様の効果が得られる。例えば、圧電素子側から先端に向け先細り形状として、先端部において略長方形形状にすることも可能である。このことによりミストを噴霧させる面積が円形状に比べて大きくなるので、噴霧範囲が拡大され拡散性が向上する。
(実施の形態10)
図33は、本発明の実施の形態10における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の縦断面図である。図34は、本発明の実施の形態10における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の正面図である。実施の形態6と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
実施の形態10において、冷蔵庫221は断熱性を有する仕切り板222によって、区画されている。野菜室225には野菜容器228が設置され、その空間の中に食品を収納し、湿度約90%RH以上(食品収納時)、4〜6℃に冷却されている。野菜室225の背面には風路229と野菜室225を区画するための庫内仕切り230が備えられている。冷蔵庫221の左側面部の外壁402には超音波霧化装置401が備えられている。
庫内仕切り230と冷蔵庫外壁402との間には風路229があり、例えば冷却器242で生成された冷気を各貯蔵室に搬送する、もしくは各貯蔵室から熱交換された空気を冷却器へ搬送するために設けられている。ここで、冷蔵庫221の左側面部の外壁及び野菜室225の天面、すなわち断熱性を有する仕切り板222には超音波霧化装置401が設置されている。断熱性を有する仕切り板222は主に発泡スチロールなどの断熱材で構成されている。
野菜室225の上方には切替室224があり、切替室224には切替室容器がある。切替室224は冷却方法としては、例えば奥面の一部に冷気の吐出口413と吸込み口414があり、この冷気量の調整と加熱部(図示しない)の動作により温度調節されている。超音波霧化装置401の奥上方には水収集板321があり超音波霧化装置401に水が流れるように傾斜をつけたカバー部材406が備えられている。水収集板321の裏面は周囲の断熱材より薄い壁厚になっている。また、水収集板321にはカバー部材406により風路が構成され、その一部に送風部317が備えられている。
さらに、野菜室225天面にあるカバー部材406には、特定の波長を選択した光を照射する照射部323と庫内全体に光を拡散させるための拡散板324が備えられている。
切替室224は冷凍温度帯から冷蔵温度帯で使われている。例えば、冷凍室温度の設定のとき、吐出口413から冷気が流れ庫内温度は約−20℃になる。薄壁化された仕切り板222の上面(切替室側)は−20℃付近の温度であるため、野菜室225上面は切替室からの熱伝導により冷却される。本実施の形態10では、水収集板321の背面に加熱部328と表面温度の検知部を有し、これらにより表面温度を露点温度以下に制御し、水収集板321に野菜からの蒸散や扉開閉により浸透した庫内水蒸気を結露させ水を生成する。
水収集板321から滴下した水はカバー部材406に受け止められ、傾斜したカバー部材406に沿って貯留水保持部404に設けた貯水槽315に集水される。したがって、給水部403は、十分に水を含んでおり、この状態で超音波霧化装置401よりミストを発生し、野菜室225に噴霧される。これにより噴霧されたミストは野菜室225内を再び高湿にする。同時に、波長が400nm〜500nmの範囲に選択された照射部により野菜容器228内を照射することにより、野菜室225内に保存された野菜の気孔が開孔状態になる。気孔が開孔した状態で、ミストが野菜や果物の表面に付着し、気孔から組織内にミストが浸透する。その結果、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。
また、送風部317を用いて、水収集板321に結露する量を制御することが出来る。
以上のように、本実施の形態10においては、野菜室の天面の仕切りに取り付けられている水収集板と、切替室で生成された低温冷気を冷却源とし、野菜室天面の仕切りの切替室側からの熱伝導により水収集板を冷却する。加熱部や送風部を用いて、水収集板の表面温度を露点以下に温度調整することで、空気中の水分を水収集板に確実に結露させることが出来る。結露させて収集した水を、貯留水保持部に設けた貯水槽に集水し、給水部により超音波霧化装置に水分を供給する。野菜室の左側面上方からミストを野菜容器に確実に噴霧することができ、野菜表面にミストを付着させることにより野菜の保湿性を高め、保鮮性を向上させることが出来る。
また、貯水槽315は貯留水保持部404に対して着脱自在に設置されている。従って、野菜室内に収納されている野菜量が少ない場合や冷蔵庫の運転開始直後の比較的湿度の低い状態の時に、あらかじめ貯水槽で水を補給出来るのでより安定して保湿性を向上することが出来る。
また、超音波霧化装置、貯水槽は扉側にあることにより取り外しやすく、メンテナンスがしやすい。
また本実施の形態10において、貯水槽と結露方式の組み合わせで説明したが、ミストを噴霧するのに十分な貯留水を確保出来る場合、貯水槽をなくすことも可能である。これにより、貯蔵室の有効容積を増やすことが出来る。
なお、本実施の形態10では野菜室の冷却源として切替室としたが、冷凍室や製氷室などを冷却源にしてもかまわない。これにより温度が一定になるため制御部が簡略される。
(実施の形態11)
図35は、本発明の実施の形態11における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の縦断面図である。実施の形態6と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
実施の形態11における冷蔵庫は、野菜室天面の仕切り板222に設置されている超音波霧化装置401と、水を貯留する貯留水保持部404である貯水槽315と、発生したミストを野菜室225内に送風する送風部317を有している。
超音波霧化装置401は、貯水槽315に隣接し、水を霧化するため圧電素子411と所定粒径以下のミストのみを透過する金属メッシュ415を具備している。また、貯水槽315内の貯留水は仕切り板222に設置されている水収集板321により生成された結露水を、給水部を兼ねたカバー部材406により貯水槽315に給水する。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
まず、仕切り板222に設置された水収集板321が冷気の熱伝導により冷却され、野菜室内の水蒸気が水収集板321に結露する。次に、結露した水は、水集板321または、カバー部材406より超音波霧化装置401内にある貯水槽315に給水される。貯水槽に保持された水は、圧電素子411の振動により、貯水槽内の液面が振動・分裂し霧状のミストが発生する。発生したミストは金属メッシュ415によりさらに細粒径化され、送風部317により庫内に噴霧する。
以上のように、本実施の形態9においては噴霧部を超音波振動子とすることにより比較的多量の霧化が可能となり、噴霧部のON・OFFにより霧化量を調整することが可能となる。
また、本実施の形態11においては、超音波霧化装置を用いているため発振周波数を可変させれば、粒子径を可変でき、また電圧を変えることで霧化量を調整出来る。
(実施の形態12)
図36は本発明の実施の形態12における噴霧部近傍の縦断面図である。
実施の形態6と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
図36において、冷蔵庫221の仕切り板222には冷蔵庫の扉側(図の左側)から庫内仕切り奥面に向けて、貯水槽315と、噴霧部である静電霧化装置304が備えられている。貯留水316は貯水槽315に貯留されている。静電霧化装置304の周辺には食品や人が触れないように孔の開いたカバー部材501が構成されている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
貯水槽315は、人が着脱しやすいように野菜室の扉側前面に設置され、噴霧部に供給する為の貯留水316を蓄えている。この貯留水316を噴霧部である静電霧化装置304へ給水するために、給水部331と給水経路332が備えられる。給水部331は、例えば、ギアポンプや圧電ポンプ、キャピラリなどであり、静電霧化装置304の印加電極先端やその周囲の保水材に水を給水する。ここで、給水量は野菜室に噴霧される量とほぼ等しくする。例えば、制御部314が、野菜室への噴霧が必要と判断すると、まず、給水部331を動作させ、給水経路を利用して印加電極先端に給水する。ここで、印加電極306は先端に水があることを確認し、印加電極と対向電極間に高電圧をかけ、微細ミストを発生させて、貯蔵室内に噴霧する。
また、静電霧化装置304は天面部の仕切り板222に設けられた凹部222aに埋め込みされ、かつ、貯蔵室の天面奥部に設置し、カバー部材501を周囲に設置することにより、安全を保持している。このとき、引き出し式の扉によって前後に可動する野菜容器228の動作に影響を与えないよう、たとえば、カバー部材501の底面部501aは、貯水槽の底面315aよりも高い位置に備えるように構成する。
また、野菜容器228内には青果物である野菜が収納されており、その中で緑の菜っ葉ものや果物等も保存されており、これらの青果物は、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態で収納されていることが多い。これらの青果物は通常、プラスの電荷に帯電されており、噴霧されたマイナスの電荷を持った微細ミストは、野菜表面に集まりやすい状態になる。よって、噴霧された微細ミストは野菜室内を再び高湿にすると同時に青果物の表面に付着し、青果物の蒸散を抑制し、保鮮性を向上させる。また、野菜や果物の細胞の隙間から組織内に浸透し、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。
また、静電霧化方式で微細ミストを生成することにより、微細ミスト発生時と同時に微量のオゾンが発生し、ミストと即座に混合して、低濃度のオゾンミストとなる。また、ミストに静電付加することにより、ミスト中の水分子をラジカル化し、OHラジカルを生成する。これによりミスとは、オゾンの酸化力に加え、OHラジカルの酸化力を保持することになる。静電付加されたミストは、帯電している野菜や果物の表面および庫内壁面に電気的に付着し、野菜や果物の表面の微細な凹部にまで侵入し、残留農薬やワックスなどの有害物質を微細ミストの内圧エネルギーによって、浮き上がらせる。さらに、オゾンやOHラジカルの酸化分解作用によって、酸化分解除去するか、あるいは電気的に野菜や果物表面の微細な凹部にまで進入し、残留農薬やワックスと化学反応し、残留農薬やワックスの親水性を高め、ミスト中に取り込み分解除去するという効果も奏することが出来る。
以上のように、本実施の形態の冷蔵庫においては、野菜容器228の天面に位置する仕切り板222に、貯水槽315が扉側すなわち使用者からみて前面側に備えられている。そのため、特に貯水槽315が着脱式のものである場合には、水の交換、追加、清掃が容易となり使い勝手が向上する。また、静電霧化装置304を貯水槽315よりも奥側に備えることで、使用者が噴霧部の特に噴霧先端部304aに触れるのを防止し、安全性をより高めることが出来る。また、噴霧部である静電霧化装置304の下端の噴霧先端部304aを、貯水槽よりも奥側でかつ貯水槽の下端面である底面よりも高い位置に備えているので、使用者から噴霧装置が見えにくい。従って、貯蔵室内の美観を損なうことなく貯蔵室に噴霧装置を備えることが出来る。さらに、使用者が静電霧化装置304により触れにくくなる為に、使用者の安全性を高めることが出来るとともに、噴霧部への食品や人の接触に外力の付加による信頼性の低下を防ぐことが出来る。
また、噴霧部の庫内への出っ張りを抑える為に、静電霧化装置304は天面部の仕切り板222に設けられた凹部222aに埋め込まれている。これによって、より庫内容積を減少させることなく、食品の収納に影響を与えない上で、貯蔵室内に噴霧部を設けることが可能となる。
さらに、噴霧部である静電霧化装置304がカバー部材501を備えることで、食品や人が接触することをより一層防止することが出来る。
また、噴霧部にカバー部材501を備えた場合においても、本実施の形態では、カバー部材501の下端部501aは、貯水槽の下端部である底面315aより上に配置しており、これによって庫内容積の減少を防いだ上でより、噴霧部を備えた貯蔵室の美観および安全性を向上させることが出来る。
なお、本実施の形態では貯水槽315を着脱式のものとしたが、貯水槽315が着脱式ではなく、固定式であって、例えば水道水、もしくは冷蔵庫内の水分を利用して生成した貯留水等を自動で供給するタイプの噴霧部である場合にも、本実施の構成の発明概念が適用出来る。つまり、静電霧化装置を貯水槽よりも奥側に備えることで、使用者が噴霧部に触れるのを防止し、安全性をより高めることが出来る。さらに、貯水槽よりも奥側でかつ貯水槽の下端面である底面よりも上部に備えられていることで、使用者から噴霧装置が見えにくい為に、貯蔵室内の美観を損なうことなく貯蔵室に噴霧装置を備えることが出来る。さらに、より使用者が噴霧部に触れにくくなる為に、使用者の安全性を高めるとともに、噴霧部への食品や人の接触に外力の付加による信頼性の低下を防ぐことが出来るという同様の効果を奏する。
なお、本実施の形態では噴霧部を静電霧化装置304としたが、超音波霧化装置等の別方式の噴霧部であってもよい。貯水槽315と噴霧部との配置関係による冷蔵庫の使用者の使い勝手および安全性向上に関する上記の効果は同様に得られるので、他方式の噴霧部を用いた場合でも、同様の効果を奏する。
本実施の形態では、静電霧化装置304によって、印加電極から発生する微細ミストにより保鮮性が向上するのと同時に、発生する微量オゾンやOHラジカルなどを利用して野菜表面などに付着しているワックスや農薬を酸化分解反応により無害化させることが出来る。
また、本実施の形態では、印加電極をより高湿な状態にすることにより、特に、印加電極と対向電極間の空気放電が抑制させるのでオゾン濃度を低減でき、家庭用の冷蔵庫等に適用した場合でも、使用者の安全性を確保することが出来る。
また、本実施の形態では、静電霧化装置304を仕切り板222に設けられた凹部222aに埋め込んでいることで、他の部分より断熱材の厚みが薄くなっているため、先端の冷却が必要な印加電極を効率的に冷却することが可能である。
また、本実施の形態では、給水部の動作後、噴霧装置を駆動し、印加電極と対向電極間に高電圧をかけるため、空気放電によるオゾンの発生を抑制出来ると同時にミストを安全に発生出来る。
なお、本実施の形態では噴霧部を静電霧化装置304としたが、特に噴霧先端部が乾燥すると、噴霧装置がヒートアップする為に信頼性の低下が懸念される超音波霧化装置を噴霧部として用いることも出来る。給水部の動作後に噴霧装置を駆動することで、噴霧先端部の乾燥を防ぐことができ、噴霧装置の信頼性を向上させることが出来る。
(実施の形態13)
図37は本発明の実施の形態13における冷蔵庫の水収集部近傍の正面図である。図38は図37における冷蔵庫の水収集部近傍A−A断面での縦断面図である。実施の形態6と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
実施の形態13において、野菜室225には、野菜や果物を貯蔵するため野菜容器511が収納される。冷蔵庫外郭には野菜容器511を保持、または扉開閉時に容器も可動出来るようにレール部材512が構成されている。また、これとは別に、野菜室225内には、野菜容器511を第1区画とすると、第1区画とは仕切られた第2区画に特定容器513が収納される。また、光透過性のある素材からなる透明で一部に孔の開いた蓋514は、その特定容器513を野菜室の扉閉時にのみほぼ密閉している。また、野菜容器は、特定容器513を保持するための保持部515を有している。保持部515は、特定容器に備えられた突起部516を保持し、かつ、引き出しの際の、レールの役割を担う。
さらに仕切り板222には、特定波長を特定容器内に照射するための照射部323と、容器内を均一に照射し、かつ、光源をカバーするための拡散板324が備えられる。
図38に示すように、特定容器513内には、着脱可能な貯水槽315が扉側前面にあり、照射部323は、特定容器上方の投影面に設置され、容器内を透明な蓋514を通して照射している。奥側上方には噴霧部である静電霧化装置304が仕切り部に取り付けられている。さらに、静電霧化装置近辺の特定容器の蓋514は静電霧化装置の外形寸法より若干大きめの孔517が設けられている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
野菜室に収納される食品は、近年、多岐にわたる。例えば、ペットボトルのような高湿を必要としない飲料品も収納され、その用途は千差万別である。野菜の中にも、ほうれん草などの葉野菜は、比較的、低温高湿を好むが、しいたけなどは高湿度を好まない。また、ジャガイモなどの穀物は、10℃前後を好む。よって、本実施の形態では、特定容器513を野菜容器内に設けることで、保存野菜に応じた空間環境を提供する。また、この特定容器513は、空間が特定容器513と蓋514でほぼ閉じられた空間になっている。この特定容器513の前面に設置された貯水槽315の水の蒸発により、特定容器内は高湿になっており、そのため、ほうれん草などの葉野菜の保存に適した空間になっている。
この特定容器513の蓋514は、野菜室225の扉開閉で可動する。扉閉時には、特定容器をほぼ密閉している。また扉開時には、特定容器513から外れ、本体側に保持されるので、扉を開けた状態では特定容器513の上面は開口されている。
この高湿化された特定容器513の内部空間の上部には、噴霧部のひとつである静電霧化装置304の少なくとも噴霧先端部304aが設けられている。
このように、特定容器513内に設けられた噴霧先端部304aは、野菜が収納されている特定容器513に対して直接的にミスト粒子を噴霧することができ、噴霧先端部304aと野菜との距離をより縮めることが出来る。例えば特定容器513外でミストを噴霧してから特定容器513内へ送り込む場合と比較して、ミスト粒子の気化を防ぐとともに、浮遊状態における流速を高めることが出来るので、野菜表面へのミストの付着率をより高めることが出来る。
また、この噴霧先端部304aは特定容器513内に設けられるとともに、貯水槽315は噴霧部である静電霧化装置304が備えられている区画とは別の区画に備えられている。貯水槽315槽を噴霧部と離れた別の区画に設けることにより、噴霧部の配置位置に影響されず、貯水槽315内への水の補給や貯水槽315内の清掃が容易となるような任意の位置に貯水槽315を備えることが出来るので、使用者の使い勝手を向上させることが出来る。
なお、こういった噴霧装置と貯水槽315との配置関係によって、使用者の使い勝手を向上させる効果は、噴霧部が本実施の形態のような静電霧化装置304でなく、例えば超音波霧化装置やその他の霧化方式を用いても、同様に得られるものである。
また、このように同じ貯蔵室である野菜室の内部で、ミストを噴霧する区画である特定容器513と、ミスト噴霧を行わない野菜容器511とを備えることで、保存野菜に応じた空間環境を提供することが出来る。使用者は用途に応じて野菜室の機能を使用することが出来るので、冷蔵庫の使い勝手および保存性を大きく向上させることが出来る。
また、照射部323をミストが噴霧されることで高湿度となる特定容器513の外部に備えることによって、照射部323の周辺が高湿度になることを防ぎ、照射部323への結露による信頼性の低下を防ぐことが出来る。
本実施の形態では、照射部323を特定容器513の上部に備え、照射部323と特定容器513との間に位置する蓋514を透光性のある透明な材質で形成している。なお、照射部323は特定容器の側面部や底面部にあっても良い。その場合には、少なくとも照射部323に対して対面する位置にある特定容器513の素材を透光性のある透明な材質で形成することで、照射部323を特定容器513の上部に備えなくとも、特定容器513内の野菜に光照射を行うことが出来る。
また、本実施の形態の噴霧装置である静電霧化装置304は、背面からの冷却により印加電極306先端は露点温度以下に制御され、そのため水滴が生じている。ここで印加電極と対向電極間に高電圧をかけることにより電荷をもった目視できないナノレベルの微細ミストが発生し、特定容器513内に噴霧される。よって、特定容器513内が加湿され、保鮮性が向上すると同時に微細ミストが野菜に付着する。特定容器513の外部の仕切りに設けられた照射部323は、400nm〜500nmの波長を含んだ青色光を照射する。
例えば、照射部323を青色LEDにし、特定容器513内に保存された野菜に透明な蓋514を通して光照射すると、特定容器513内の野菜は、光刺激により生態活動が促され、気孔が開孔する。表面についたミストもしくは水滴を、開孔した気孔を通じて吸収することにより野菜の水分含有量および重量が増加し、野菜のみずみずしさを維持することが出来る。
また、照射部323が紫外線領域を含む波長を有するLEDを設けた場合には、噴霧されるミストを殺菌するとともに食品表面も殺菌でき、食品の安全性を高めることが出来る。これは、特定容器513内の壁面や野菜表面に付着している微生物の増殖機能を不活性化することで、食品の微生物によって生じる変色や腐敗臭、貯蔵品表面のネト発生を遅らせることが可能となり、特定容器513内部の衛生性が保たれる為である。さらに、光源として、LEDを設けたことで発熱量が小さく、切替室内の温度上昇を防ぐことができ、食品の保存性を安定させることが出来る。
また、特定容器513内は噴霧部を動作させずに、照射部323のみを動作させることも可能である。例えば、きのこ類や魚類には、骨や歯の成長に欠かせないビタミンとしてよく知られているビタミンDの前駆物質を多く含むものがある。それらの食品等を保存する場合には紫外線が照射されることで分子が励起され、ビタミンDへと変換される。よって、紫外光を含む光源を貯蔵室内に設けることで、貯蔵室内の特定の食品、例えば、しらすぼしは保存前と比較してビタミンD含有量を高めることが可能となる。つまり、保存される食品は野菜に限られず、上記のような熟成を目的として食品を保存することで、熟成機能を持つ空間として特定容器513を利用することも可能である。
また、静電霧化方式で発生した微細ミストは、発生時に電荷をもつと同時に微量のオゾンとOHラジカルなどを発生することにより、オゾンの酸化力に加え、OHラジカルの酸化力を保持する。従って、野菜や果物表面の微細な凹部まで浸透し、残留農薬やワックスなどの有害物質を微細ミストの内圧エネルギーによって、浮き上がらせ、さらに、オゾン等の酸化分解作用によって、酸化分解除去する。また、上記のミストは、電気的に野菜や果物表面の微細な凹部にまで進入し、残留農薬やワックスと化学反応し、残留農薬やワックスの親水性を高め、ミスト中に取り込み分解除去することも可能である。
以上のように、本実施の形態においては、野菜室内に特定容器513とその空間を略密閉するための蓋514を備え、特定容器内の前面に貯水槽を備え、奥面上方に静電霧化装置を備えたことにより、高湿下が好まれる野菜に対してのみ加湿より保鮮性を向上させることができ、野菜室内部で、野菜の種類によって最適な保存環境を提供することが出来る。
また、特定容器513の上部の照射部323によって、特定の波長を選択した光を照射し、且つミスト噴霧装置にて気孔を通過出来る微細ミストを適量噴霧することにより、さらに特定容器513内の保存環境の幅が広がり、使用者のニーズおよび保存野菜に応じた空間環境を提供することが出来る。
また、本実施の形態では、特定容器513の前面に貯水槽が備えられているため、水の補給、水の交換、追加、清掃が容易など使い勝手がよい。
また、本実施の形態では、静電霧化装置304は人が触りにくい奥面上方に設置されているため、安全である。
また、本実施の形態では、照射部323は特定容器513の外に設置されているためその設置環境は比較的低湿であり、結露による配線不良などを起こす可能が低くなり、品質が向上する。
また、本実施の形態では、特定容器513の蓋514は、透明な材質で構成されていることにより照射部の発する光を容器内に通すことが出来る。
また、本実施の形態では、特定容器をほぼ密閉空間にしたことにより冷凍サイクルの冷媒にイソブタンやプロパンなどの可燃性冷媒を用いた場合に、万が一、冷媒が漏洩した場合おいても、特定容器内がほぼ密閉されているため可燃濃度に到達することがないので安全である。
また、本実施の形態のように静電霧化装置304を上部に配置した場合には、特に空気より比重の重い可燃性冷媒を用いた場合に万が一冷媒が漏洩した場合でも、漏洩したイソブタンは下部に滞留するので、さらに空気より比重の重い可燃性冷媒を用いた場合の安全性を向上させることが出来る。
(実施の形態14)
図39は本発明の実施の形態14における噴霧部近傍の縦断面図である。実施の形態6と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
実施の形態14において、冷蔵庫の扉側から庫内仕切り奥面に向けて、貯水槽315、超音波霧化装置401が備えられている。貯水槽315の底面は傾斜しており、奥面底部には、給水調整部524が構成されている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
貯水槽315は人が着脱しやすいように野菜室の扉側前面に設置され、水道水や結露水などの貯留水316が蓄えられている。ここで貯水槽315は冷蔵庫奥面に向けて、底面が傾斜しており、注水された水は、奥側がいちばん深くなるように構成されている。また、この奥側底面には、給水調整部524、例えば、開閉弁などが備えられおり、開の時のみ噴霧部である超音波霧化装置401のミスト発生部に給水される。
以上のように、本実施の形態においては、貯水槽315が扉側、超音波霧化装置401を貯水槽315より奥側に備えたことにより使い勝手が向上する。
また、本実施の形態では、貯水槽の底面を噴霧部側に傾斜させることにより、貯水槽315の水を効率よく使うことが出来る。
また、本実施の形態では、給水調整部を備えたことにより噴霧部に対して適切な水量を供給することが出来る。
なお、本実施の形態では、貯水槽は仕切りに固定されているが、着脱式の貯水槽でもかまわない。これにより、手軽に水の交換、追加、清掃が容易となり使い勝手が向上する。
(実施の形態15)
図40は本発明の実施の形態15における冷蔵庫の側断面図である。
実施の形態3と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある(図7〜9参照)。
実施の形態15において、冷蔵庫100は仕切り板116によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に仕切られており、野菜室114は湿度約90%R.H以上(食品収納時)、4〜6℃に冷却されている。冷蔵室112の背面には、製氷用貯水タンク119が備えられ、製氷用貯水タンク119からは水給水経路120が製氷室(図示せず)と野菜室114とに導かれ水を供給している。野菜室114の上部天面には水補給装置121が備えられている。水補給装置121は、水を貯留する貯留水保持部である貯水槽122と、噴霧部124と、噴霧部123によって発生したミストを野菜室114内に拡散する拡散部である送風ファン129とから構成されている。また、噴霧部123は貯水槽122の内部に位置し、水を超音波方式で霧化する超音波素子125と所定粒径以下のミストのみを透過する金属メッシュ126を具備している。また、貯水槽122内の貯留水124水は、給水経路120から供給され、貯水槽122内に貯留されている。
以上のように構成された冷蔵庫のミスト生成装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、製氷用貯水タンク119内に貯留された水が給水経路120を経由して、貯水槽122内に供給され,貯留水124として貯留される。
次に水補給装置121の運転が開始される。まず、貯留水124は噴霧部123である超音波素子125によって霧化されたミストのうち、予め設定された所定粒子径以下の微細ミストのみが金属メッシュ126から噴霧される。貯水槽122内の微細ミストは送風ファン129によって野菜室114内にミストとなって噴霧される。
以上のように、本実施の形態では、貯水槽への水供給部としては、製氷用貯水タンクから水経路を利用して貯水槽へ水を送水するため、専用のタンクを備えなくても噴霧部に水を供給することができる。野菜室と別の貯蔵室に貯水槽を備えている為、野菜室の内容積に影響しないので食品収納量に影響しない。また、使用者が外部から貯留水を供給する必要のあるタンクが製氷用とミスト噴霧用とを一つのタンクで兼用できる。ミスト用の貯水槽を別タンクで備える場合と比べて、使用者の貯留水の供給の手間を省くことができ、また貯水槽の水切れとなる可能性を低くすることが可能となる。
なお、本実施の形態においては、貯留水保持部を貯水槽とし、外部から供給された貯留水が保持されるものとした。必ずしも貯留水を外部から供給しなくても、何らかの方法で貯蔵室内の空気内に含まれている水分を抽出して保持するものでもよい。例えば、冷蔵庫の除霜水や庫内の結露水等を用いて、使用者が外部から貯留水を供給することなく貯留水を確保できるものであれば、外部からの水分の補給の手間がかからず使い勝手をより向上させた冷蔵庫を提供することができる。
また、本実施の形態では、貯水槽への水給水経路は1つの経路で貯水槽から吸い上げ、その後、給水経路を分岐させて、製氷室と野菜室との両室に送水するため、部品点数の少ない、簡単な構成で両室に給水することができる。
尚、本実施の形態では、貯水槽を製氷用貯水タンクと兼用し、これらのタンクからの水給水経路は1つの経路で、途中で分岐させて製氷室と野菜室の両室に送水するとしたが、貯水槽を製氷用貯水タンクと兼用した上で、製氷室用、野菜室用にそれぞれ独立した給水経路を備えてもよい。その場合には、それぞれの必要応じたタイミングで随時水補給を行うことが可能となる。例えば両室同時に給水が必要な時にでも任意に水を供給することができる。さらに使用者が外部から貯留水を供給する必要のあるタンクが製氷用とミスト噴霧用で一つとなることにより、ミスト用の貯水槽を別タンクで備える場合と比べて、使用者の貯留水の供給の手間を省くことができ、また貯水槽の水切れとなる可能性を低くすることが可能となる。
また、本実施の形態では、ミスト噴霧装置を野菜室天面の奥側に配置することで、製氷用貯水タンクと兼用して貯水槽を設ける場合でも、冷蔵庫の奥側で給水経路を構成することができる。例えば、給水経路を取り外して洗浄が可能とする場合でも、給水経路が短く、略垂直状といった簡単な経路とすることができ、給水経路を簡略に構成できるので、洗浄が行いやすく、衛生性の高い給水経路を備えることができる。また、ミスト噴霧装置を野菜室天面の奥側に配置することで、噴霧装置と庫内収納食品との接触を防ぐことができる。噴霧先端部の汚れ付着を防止でき、噴霧先端部の噴霧能力の長寿命化を図ることができ、また安易に人が触れられないため、使用者の安全性を向上させることができる。
なお、ミスト噴霧装置の野菜室内露出部にケースを設けることで、さらに汚れ付着防止、安全性を向上することができる。
(実施の形態16)
図41は、本発明の実施の形態16における冷蔵庫の側面断面図である。図42は、実施の形態16における冷蔵庫の正面断面図である。図43は、図42におけるA−A断面を示す要部断面図である。図44は、図42におけるB−B断面を示す要部断面図である。図45は噴霧されるミストの粒子径分布割合を示すグラフである。
実施の形態16において、冷蔵庫502本体の断熱箱体503は貯蔵室518、519、520を有しており、その前面開口部は夫々開閉可能な扉521、522、523にて外気の流入が無いように閉塞されている。
貯蔵室518内部の背面及び底面には循環ダクト524が設けられており、断熱箱体503との間に循環風路525を形成している。この循環風路525内において、貯蔵室518の背面にあたる部分にはミストを噴霧する噴霧部526が設けられており、さらに噴霧部526の上方には拡散部527が配置されている。また、循環ダクトの垂直面上部には複数の吐出口528が設けられており、さらに底面には複数の吸入口529が設けられている。
これらの循環風路525と、循環風路525を構成する循環ダクト524と、循環ダクト524に設けられた吐出口528及び吸入口529と、拡散部527によりミスト循環部530が構成されている。また、ミストの粒子径を選択する選択部531は、拡散部527と噴霧部526により構成されている。ミスト循環部530および選択部531は、図41の破線で囲まれた部分である。
噴霧部526の下方には、循環風路525から断熱箱体503外へ余剰な水を排出するドレン532が設けられている。
貯蔵室518の天面と循環ダクト524の底部には、温度センサー533、534がそれぞれ設けられている。
扉521には左右二対で貯蔵室518内に延伸された板状のスライドレール535が設けられており、食品収納容器536が載置されている。このスライドレール535により、扉521は水平方向に引き出して開閉される。吐出口528は食品収納容器536の外縁部よりも高い位置にあり、ミストが必ず食品収納容器536に入るようになっている。また、食品収納容器536の底面には複数の通気口537が設けられている。
循環ダクト524の底部には貯蔵室518の下部を加温するヒータ538が設けられている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
貯蔵室518の上下には、貯蔵室518よりも低い温度帯に設定された貯蔵室519、520が配置されており、貯蔵室518はこれらの貯蔵室519、520により自然に冷却されている。
扉521を手前方向水平に引き出し、食品収納容器536に食品を入れた後扉521を閉めると、扉開放検知部(図示せず)により閉扉状態を検知し、噴霧部526がミストの噴霧を開始する。噴霧されたミストは、噴霧部526の上方に配置された拡散部527により上方に向かって上昇し、吐出口528を通り貯蔵室518内に拡散噴霧される。
噴霧部526には、例えば超音波により水を微粒子化して噴霧するものを用いればよく、噴霧されるミストの粒子径は図45に示すように分布する。貯蔵室518内に万遍なくミストを拡散しようとする場合には、その一つの方策として、貯蔵室518内でのミストの滞空時間をなるべく長時間にし、空気の循環による拡散が確実に行われるようにすることが考えられる。ミストが貯蔵室518内に留まる時間を延ばそうとする場合、その粒子径は比較的小さいものである必要がある。図45においては、例えば得たい効果に応じた所定の粒子径X以下の水粒子を取り出して拡散噴霧すればよい。
噴霧部526により噴霧されたミストは、粒子径がX以上のものはその自重により下方に落下していき、比較的軽量な粒子径X以下のものが拡散部527により上昇していくこととなる。これにより、一定の直径以下のミスト粒子を選択的に取り出すことが可能になる。なお、狙いとする粒子径Xは自由に設定することができ、噴霧部526の運転度合い、拡散部527の運転度合い、噴霧部526と拡散部527との距離等に応じて、調整することが可能である。この運転度合いとは、例えば噴霧部526に超音波発生器を用いた場合の振動周波数や、拡散部527に送風ファンを用いた場合のファン回転数のことを指す。また、下方に落下した粒子径X以上のミストはドレン532から貯蔵室518外に排出される。
吐出口528は食品収納容器536よりも上方にあるため、貯蔵室518内に噴霧されたミストは食品収納容器536の上方、すなわち収納された食品の上方から降り注ぐことになる。噴霧されたミストは、食品収納容器536と食品の間隙、あるいは食品と食品の間隙を下方に落下していく。この時、複数の吐出口528の端部間距離は、食品収納容器536の横幅と同等程度の寸法に設定されており、横方向へのミスト濃度の分布バラツキを抑えることが出来る。
食品収納容器536の底面には複数の通気口537が設けられており、食品収納容器536内のミストはこの通気口537から貯蔵室518の下部へ抜けていく。従って、食品収納容器536内にミストが停留することはなく、底部に水が溜まってしまうことはない。なお、本実施の形態では、底面に通気口537を設けたが、底面のみならず食品収納容器536の側壁面に設けてもよい。
通気口537を通過したミストは、吸入口529より循環風路525内に戻り、その一部は拡散部527によって再び貯蔵室518内に噴霧される。また、一部は大きな水滴となり、ドレン532から貯蔵室518外に排出される。この排水を効率良く行うため、図41に示すように循環風路525の下部はドレン532に向けて傾斜を設けている。なお、循環ダクト524の吸入口529と食品収納容器536の通気口537は略同一位置に開口していれば循環の抵抗が少なく効率がよい。
なお、食品収納容器536内のミスト分布を最適化し、最も均一にする部としては、拡散部527の運転度合いの調整や、吐出口528、通気口537、吸入口529の位置及び面積の調整にて行うとよい。
なお、噴霧部526には水を連続的に供給する必要があるが、これには給水タンクを設けて定期的に水を補充する方法や、貯蔵室内の水分を結露回収する水回収構造をとるとよい。さらには、給水タンクと水回収構造を併用して用いてもよい。
夜間などで扉521の開閉がない場合は湿度の低下度合いは緩やかであり、ミストの噴霧を一定時間停止しても差支えない。例えば、扉開放検知部(図示せず)は、扉閉から一定時間経過したことを検知する。その検知信号を受信すると、制御部(図示しない)は、噴霧部526の運転と拡散部527の運転を停止させる。同時に、循環ダクト524に設けられたヒータ538が通電され、貯蔵室518の下部が加温される。ヒータ538の加温制御は、貯蔵室518天面に設けられた温度センサー533と、循環ダクト524底部に設けられた温度センサー534の温度差がある一定値になるように制御される。これらのことにより、貯蔵室518の上部と下部に温度差が付き、空気の自然対流が促進される。なお、ヒータ538は広範囲に略均一に発熱するヒータであればよく、線状ヒータやシート状ヒータが考えられる。また、温度差を設ける部はヒータに限定されるものではなく、貯蔵室519の温度を貯蔵室520よりも低く制御してもよい。
以上のように、本実施の形態の冷蔵庫は、断熱区画された貯蔵室を有する断熱箱体と、貯蔵室内に設けられたミストを噴霧する噴霧部と、噴霧されたミストを拡散させる拡散部を備える。噴霧されたミストは拡散部によって貯蔵室内に拡散噴霧され、貯蔵室内のミスト濃度は均一化する。その結果、食品の周囲に効率よくミストを供給することができ、ミストの噴霧量を最小限に抑えることが出来る。よって結露を防ぐことができ、かつ食品の鮮度保持も同時に行うことが出来る。
また、本実施の形態では、貯蔵室内にミスト循環部を設けたことにより、さらにミストを貯蔵室内の隅々まで供給することが出来るようになり、ミストの噴霧量を低減することが出来る。
また、本実施の形態では、ミスト循環部を循環風路と、循環風路を構成する循環ダクトと、循環ダクトに設けられた吐出口及び吸入口と、拡散部とから構成したことにより、ミスト循環量と分布の調整が容易になり、よりミストの噴霧量を低減することが出来る。
また、本実施の形態では、吐出口の位置を貯蔵室内に収納された食品よりも高い位置に設定することにより、常に食品の上方からミストを噴霧することが可能となり、食品の量にかかわらず食品全体にミストを供給することが出来る。
また、本実施の形態では、吸入口の位置を貯蔵室内に収納された食品よりも下方に設けたものであり、収納容器底部まで確実にミストを供給することが出来る。
また、本実施の形態では、噴霧部により噴霧されたミストの内、一定の直径以下の粒子を選択する選択部を備えたものであり、噴霧されたミストは微小粒子であるが故に貯蔵室内に長時間留まり、かつ分散し、食品に確実にミストを供給することが出来る。
また、本実施の形態では、選択部として、拡散部の下方に噴霧部を設けたものであり、噴霧されたミストの内、一定の直径以下の軽い粒子を選択的に取り出し噴霧することが出来る。
また、本実施の形態では、貯蔵室の上部と下部に温度差を設けたものであり、貯蔵室内空気の自然対流を促進させ、噴霧されたミストが貯蔵室内に拡散しやすくなる。また、同時に噴霧部、拡散部の一時停止が可能となり、デバイスの信頼性を向上させることが出来る。
(実施の形態17)
図46は本発明の実施の形態17における冷蔵庫の側断面図である。図47は本発明の実施の形態17における水補給装置の側断面図である。図48は本発明の実施の形態17における水補給装置の平面断面図である。
実施の形態17において、冷蔵庫100は仕切り板116によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に仕切られており、野菜室114は、湿度約90%R.H以上(食品収納時)、4〜6℃に冷却されている。冷蔵室112の背面には、製氷用貯水タンク119が備えられ、製氷用貯水タンク119からは給水経路120が製氷室(図示せず)と野菜室114とに導かれ水を供給している。野菜室114の上部天面には水補給装置121が備えられている。水補給装置121は、野菜室114の天面に設けられ、水を貯留する貯水部である貯水槽122と、噴霧部123と、噴霧部123によって発生したミストを野菜室114内に送風する送風部129を有する。そして、送風部129の吹出し側に機能成分を放出する機能成分補給部131が備えられる。そして、水補給装置121と機能成分補給部131とでミスト噴霧部が構成されている。
機能成分補給部131はセル状のフィルタ131aにマイクロカプセル化した機能成分顆粒(ビタミンC誘導体顆粒)131bを担持させたものである。また、ビタミンC誘導体顆粒131bは、ビタミンCを化学修飾し、安定性が高く、食品中でビタミンCに変化する。また、水補給装置121の外部一画には照射部130が備えられている。噴霧部123は貯水槽122の内部に設けられる。噴霧部123は、水を超音波方式で霧化する超音波素子125と、所定粒径以下のミストのみを透過する金属メッシュ126を具備している。また、貯水槽122内の貯留水124水は給水経路120から供給され、貯水槽122内に貯留されている。また、野菜室114の一角には、庫内の温度を検知する温度センサー133が備えられている。
以上のように構成された冷蔵庫のミスト噴霧装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、製氷用貯水タンク119内に貯留された水が、給水経路120を経由して、貯水槽122内に供給され,貯留水124として貯留される。次に温度センサー133が庫内温度を5℃以上であると検知した場合、照射部130が点灯し、野菜室114内に保存されている野菜や果物に光が照射される。照射部130は、中心波長が470nmの青色光を含む光を照射する、たとえば青色LEDなどを用いることが出来る。この時、照射される青色光の光量子は約1μmol・m−2・s−1の微弱な光で十分である。微弱な青色光を照射された野菜や果物は表皮表面に存在する気孔が、青色光の光刺激によって、開孔する。
一方、野菜室内に保存されている野菜や果物の中には、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態のものが含まれている。
また、野菜室内には青果物である野菜の中でも緑の菜っ葉ものや果物等も保存されており、これらの青果物は蒸散あるいは保存中の蒸散によってより萎れやすいものである。
次に水供給装置の運転が開始される。貯留水124が噴霧部123に含まれる超音波素子125によって霧化されたミストのうち、所定粒子径以下の微細ミストのみが金属メッシュ126から噴霧されて、貯水槽122内は水粒子径が所定粒子以下のミストが充満した状態となる。貯水槽122内の微細ミストは、送風部129によって野菜室114内にミストとなって噴霧される。同時に、ビタミンC誘導体顆粒131bがフィルタ131aより放出されミストに溶け込みビタミンC誘導体含有ミストとなる。ビタミンC誘導体含有微細ミストは、野菜室114内に気孔開孔状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔より組織内に侵入し、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキットした状態に復帰する。また、細胞内に供給されたビタミンC誘導体は細胞内でビタミンCに変化する。
尚、ミストとは、細かく分裂し超微粒子状態となった水のことを言い、その粒子径は目に見える数μmから目には見えない数nmのまで含まれ、性質は液体の性質を持っている。
図49A,Bは本発明の実施の形態17におけるやや萎れかけたホウレンソウの水分含有量及びビタミンC量のミストの水粒子径に対する特性を示す。
萎れかけ野菜の再現方法としては以下の方法を用いた。
ホウレンソウを、購入店頭状態から約10%水分減少するまで、所定時間放置したものを、萎れかけ野菜とした。これは、野菜は収穫時から約15%重量が減少すれば、見かけ上も悪く、また、細胞組織も戻らない。野菜が収穫されてから、流通の段階で重量減少は5%程度とし、値を決めている。
実験方法としては、上記作成野菜を野菜室(約6℃)に保存後、各粒子径にてミストを約24時間噴霧させたもので、評価した。尚、水分含有量の復元率は、取りだした野菜の重量測定を行い、重量が初期に対し、どれくらい復元したかを算出したものである。一方、ビタミンCの含有量は初期に対するビタミンC量の変化を算出したものである。図49Aは、ミスト噴霧中に光(青色LED)を1μmol/m2/sの強度で照射したもので、図49Bは、光照射なしで実験したものである。
図49Aは光照射下での実験である。野菜の水分含有量の復元効果は、噴霧するミストの水粒子径依存性があり、至適粒子径は0.005〜20μmの範囲であった。これは噴霧する水粒子径が20μm以上と大きい粒子の場合、野菜の気孔開口部の最大径は20〜25μm程度であるため、水粒子が大きすぎて、野菜の内部まで入り込みにくいためと思われる。また、粒子径が20μm以上では粒子が重すぎ、噴霧してもすぐに自重で落下し、空中に漂えないため、野菜にまでミストが到達しないと考えられる。一方、0.005μm以下の微細粒子では粒子が非常に小さいため、開口状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸入できない。また、0.005μm以下の水粒子では、電荷を帯びていないと気化しやすく、野菜表面に接触する確率は低くなる。
一方、光非照射の場合、光照射による気孔の開孔がない。従って、図49Bが示すように、野菜表面組織の間隙より水が野菜内部に進入することで、復元すると考えられる。そのため、水分含有量復元率の比較的高い水粒子径は光照射時のそれよりも小さく、約0.005〜0.5μmであった。以上の実験結果から、光照射した場合の方が水分含有量復元効果の高いことが判明した。
また、ミストに溶け込んだ状態のビタミンC誘導体も、水粒子径と密接な関係がある。水粒子径が0.005〜20μmではビタミンC量が初期より増加し、0.005μm以下及び20μm以上ではビタミンC量は減少していた。水粒子径が0.005μm以下の超微粒子では先に述べた理由で、野菜の気孔からの侵入が難しいことから、ビタミンC誘導体も野菜の内部には、ほとんど到達しておらず、ビタミンCの生成も促進されず、結果的にはビタミンC量が減少してしまった。また、水粒子径が20μm以上では、一般に、気孔の短径が10μm〜15μmである気孔からの進入が物理的に難しい。従って、ミストが野菜内部まで到達せず、ビタミンC誘導体も野菜の内部には、ほとんど到達しておらず、ビタミンCの生成も促進されず、結果的にはビタミンC量が減少してしまった。また、一部のミストは野菜の葉に到達するが、粒子径が大きいことから、野菜の内部にまで侵入できず、野菜表面に留まり、野菜の水腐れ要因となった。
ビタミンC量が増加したミスト粒子径1〜20μmでは、ビタミンC誘導体含有ミストが気孔より、葉の内部に侵入し、葉内部にて、ビタミンC誘導体がビタミンCとなり、結果的に、通常の状態よりビタミンC含有量が増加した。
図50は本発明の実施の形態17におけるやや萎れかけた野菜の水分含有量の復元効果のミストの噴霧量に対する特性、及び、噴霧量に対する野菜の外観官能評価値を示す図である。萎れかけ野菜の再現方法及び実験方法は図49A、49Bの実験と同一である。
本実験では、上記最適ミスト径を確認した実験と同様に、光照射ありの場合で、光照射なしの2パターン行い、いずれの場合も、最適粒子径の範囲に含まれている1μmの径のミストを用いた。また、本実験は70リットルの野菜室において行った為、以下の噴霧量はすべて70リットル当たりの噴霧量である。
図50より、光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲は0.05〜10g/h(1リットル当たり=0.0007〜0.14g/h・l)の範囲であった。
ミストの噴霧量が少なすぎると、野菜が気孔から外部へ放出する水分量を下回ってしまい、野菜内部への水分供給を行うことができなくなる。また、ミストと開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が侵入できにくくなると考えられる。
実験では、このような噴霧量の下限値が0.05g/hであることがわかった。
ただし、ミストの噴霧量が多すぎると、野菜内部の水分含有許容量を超えてしまい、野菜内部に取り込まれない水分は野菜の外部に付着してしまい、この水分によって野菜表面からの水腐れが生じてしまい、野菜が痛んでしまう現象が発生する。
このような菜表面に余分な水分が付着し、野菜が水腐れ等の品質劣化を起こす範囲が10g/h以上であったため不適であった。よって、10g/h(1リットル当たり=0.15g/h・l)以上の実験結果については、野菜の品質劣化によって採用できない為、省略する。
また、光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は、0.1〜10g/h(1リットル当たり=0.0015〜0.14g/h・l)であった。このようにミストの噴霧量の下限値が0.1g/h程度まで多くなると開口状態の気孔との接触頻度が十分に多くなり、野菜内部へのミストの侵入が活発に行われると考えられる。
また、光照射なしの場合については、粒子径1μmの噴霧では、野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲はなく、すべての噴霧量で10%未満の水分含有量復元率である。粒子径が0.01μmの噴霧では、0.05〜7g/h(1リットル当たり=0.0007〜0.1g/h・l)の範囲であり、さらに野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は0.1〜1g/h(1リットル当たり=0.0015〜0.014g/h・l)の範囲であった。これは、上記のような光照射ありの場合と比較して、ミスト噴霧量の下限値についてはほぼ同等であるが、上限値が異なる結果となった。図のように、光照射なしの場合については、気孔が十分に開いていない為、野菜の内部へ十分に水分がとりこめないと考えられる。
以上のように、本実施の形態では、野菜室内に保存中の野菜に対し、光照射部によって、光を照射し、且つミスト噴霧装置にて気孔を通過出来る微細ミストを適量噴霧することにより、開口した野菜表面の気孔より、ミストが野菜内部に侵入することとなり、野菜の水分含有量を向上し、野菜のみずみずしさを保持することが出来る。
また、本実施の形態では、0.1〜100μmol・m−2・s−1の青色光を照射している。このように微弱な光照射によって、光合成活動を低く、気孔開孔率を高くすることが出来る。その結果、野菜の光合成による水分消費を極力抑え、開口した、気孔から水分を野菜内部に効率よく供給することが出来るとともに、省エネ効果にも繋げることが出来る。
また、本実施の形態では、機能性成分を、マイクロカブセル化したビタミンC誘導体顆粒としたが、液状にし、貯留水に溶解または分散させたものをミストにして噴霧しても、同様の効果が得られる。
また、本実施の形態では、機能成分をビタミンC誘導体としたが、例えば、ビタミンA、ビタミンA前駆体、カロチン、ビタミンCなど、種々の栄養成分とすることで、ビタミンC以外の栄養成分含有量も向上することが出来る。また、種々の栄養成分を複数混合することで、複数の栄養成分含有量を同時に向上することが出来る。また、機能成分を抗酸化剤とすることで、酸化され栄養価や品質低下要因となる種々の栄養成分の酸化を防止することが出来る。
また、本実施の形態では、水道水などの通常の水を噴霧したが、噴霧する水をオゾン水や酸性水あるいはアルカリ水などの機能水を噴霧しても良い。野菜や果物表面の微細な孔に機能水ミストが入り込むと、微細な孔の内部の汚れや農薬等の有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることが出来る。さらに、野菜表面の農薬等の有害物質の酸・アルカリ分解効果を高めることが出来る。また、庫内に付着する汚れや庫内臭気の除去及び、酸・アルカリ分解効果も高めることが出来る。
なお、本実施の形態では、超音波素子125と金属メッシュ126を用いていることでミストの粒子径を調整しているが、金属メッシュ126に対向して金属板127を設け、金属メッシュ126と金属板127との間に高電圧を印加することによって、ミストの粒子径をより細粒化することで、ミストの粒子径を調整することも可能である。この場合には、ミストの細粒化と共にミスト粒子には静電付加することも可能である。
また、静電霧化方式を用いて、ミストに静電付加してもよい。マイナスの電荷を負荷された微細ミストが、プラスに帯電した庫内壁面や野菜、果物表面等に付着し、庫内壁面や野菜や果物表面の微細な孔にミストが入り込むと、野菜の水分含有量復元効果を向上するとともに、微細な孔の内部の汚れや有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることが出来る。
また、本実施の形態では、貯水槽への水供給部が、製氷用貯水タンクから水経路を利用して貯水槽へ水を送水する。専用のタンクを備えなくても噴霧部に水を供給することができ、内容積に影響しないので食品収納量に影響しない。
なお、本実施の形態においては、貯留水保持部を貯水槽とし、外部から供給された貯留水が保持される。これに対し、貯留水保持部は保水装置としての吸湿剤(例えば、シリカゲル、ゼオライト、活性炭等の多孔質材料等)を用いて、貯蔵室内の空気内に含まれている水分を抽出して保持するものでもよい。また、冷蔵庫の除霜水等を用いて、使用者が外部から貯留水を供給することなく貯留水を確保出来るものであれば、外部からの水分の補給の手間がかからず使い勝手をより向上させた冷蔵庫を提供することが出来る。
なお、本実施の形態では、貯蔵室内の収納物として野菜などの青果物としたが、水分を供給することにより品質が向上する例えば、果物や0℃近辺で保存している鮮魚や肉類でも乾燥を防ぐことが出来る。
(実施の形態18)
図51は本発明の実施の形態18における冷蔵庫の側断面図である。図52は本発明の実施の形態18における水補給装置の側断面図である。図53は図52における水補給装置のA−A線断面図である。図54は本発明の実施の形態18におけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミストの水粒子径に対する特性を示す図である。
実施の形態18において、実施の形態17と同一部、同一部材は同一番号で示している。
実施の形態18において、冷蔵庫100は仕切り板116によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に仕切られており、野菜室114は湿度約90%R.H以上(食品収納時)、4〜6℃に冷却されている。野菜室114の上部天面には水補給装置121が備えられている。水補給装置121は:野菜室114の天面に設けられ、水を貯留する貯水槽122と;噴霧部123と、噴霧部123によって発生したミストを野菜室114内に送風する送風部129と;送風部129の吐出側に設けた、機能成分を放出する機能成分補給部131と;から構成されている。また、噴霧部123は、貯水槽122の内部に設けられる。噴霧部123は:貯水槽122に貯留された貯留水124にその一端を浸漬するように配置され、他端を、貯水槽122内に霧化先端部132を形成した毛細管供給構造体136と;貯水槽122の一画に設置し、貯水槽122内の貯留水に負の高電圧を印加する陰極134と;貯水槽の一画に位置し、陰極134に対向するよう位置した陽極135と;陰極134と陽極135間に高電圧を印加する高電圧電源128と;から構成されている。
以上のように構成された冷蔵庫のミスト噴霧装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、貯水槽122内に水が貯留される。この際の貯留水124として除霜水を用いる。貯水槽122内の陰極134に負の高電圧を印加すると、霧化先端部132と陽極135との間に電界が加えられ、霧化先端部132から複数の液糸が引き出され、さらには帯電した液滴に分散されてミストとなる。また、静電霧化の際、放電が行われるため、ミスト発生時には同時に微量のオゾンが発生し、ミストと即座に混合して、低濃度のオゾンミストとなる。この低濃度オゾンミストは、送風部129によって、野菜室114内に噴霧される。同時に機能成分顆粒(例えば、ビタミンC誘導体顆粒)131bがフィルタ131aより放出され、ミストに溶け込みビタミンC誘導体含有ミストとなる。噴霧されたビタミンC誘導体含有微細ミストは、静電付加されているため、野菜室114内でプラスに帯電する野菜や果物の表面および庫内壁面に電気的に付着し、野菜や果物の表皮細胞の間隙から内部組織に侵入する。それにより、水分が蒸散して萎んだ細胞内に再び水が供給され、細胞の膨圧によって、萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。同時に細胞内に供給されたビタミンC誘導体(栄養成分誘導体の一例)は細胞内でビタミンCに変化する。
一部のミストは、壁面の微細な孔に侵入し、孔内部の汚れや有害物質を浮き上がらせ、それらをオゾン酸化分解によって分解除去する。
図54は、本発明の実施の形態18におけるやや萎れかけたホウレンソウの水分含有量及びビタミンC量のミストの粒子径に対する特性を示した図である。萎れかけ野菜の再現方法及び基本的な実験方法は図49A,Bと同様の方法を用いた。
光照射有りの場合には、図54Aより、粒子径に関わらず、相対的に水分含有量復元率及びビタミンC含有量が高くなっている。これは、静電霧化方式によってミストの野菜表面への付着率が高くなったためと考えられる。
光照射なしの場合、図54Bより、野菜の水分含有量復元効果が50%以上となる範囲は0.003〜0.8μmの範囲であった。これは、気孔が開いていない状態では粒子径が0.8μm以上の時、粒子径が大きいために、細胞間隙から内部への侵入が活発に行われなくなり、野菜の水分含有量復元率が下がったと考えられる。また、粒子径が0.003μm以下では、ミストとしての寿命が短くなり、野菜表面まで到達せずに、消滅してしまうため、野菜の水分含有量復元率も低くなると考えられる。
また、野菜の水分含有量復元効果が70%以上となる至適範囲は0.005〜0.5μmの範囲であった。上限下限の理由は図49Bの場合と同様であると考えられるが、超音波霧化方式を用いた実施の形態17における図49Bよりも、本実施の形態19のように静電霧化方式を用いるほうが、ミストに電荷をもつため、野菜への付着率が上がる。よって、野菜の水分含有量復元効果が現れるミストの粒子径の範囲を上限、下限ともに拡大するがわかった。
一方、光照射ありの場合の図54Aは、図49Aと同様に考えられ、さらに電荷を持つ分だけ効果が増加する。
以上のように本実施の形態では、貯水槽内の水を静電霧化方式にて、ミストに静電付加することにより、マイナスの電荷を負荷された栄養成分誘導体(例えば、ビタミンC誘導体など)の含有微細ミストが、プラスに帯電した野菜や果物に電気的に付着し、野菜や果物表面の細胞間隙より組織内部にビタミンC誘導体含有ミストが侵入する。それにより、野菜の水分含有量及びビタミンC含有量が向上し、野菜のみずみずしさと栄養価を高く保持することが出来る。
また、本実施の形態では、静電霧化方式にてミストを発生させた場合、ミスト発生と同時にオゾンやOHラジカルなどが発生する。これらが野菜に対して刺激となり、生態防御反応からビタミンCが生成され、初期に対してビタミンC含有量を向上し、栄養価の高い野菜を提供出来る。
また、本実施の形態では、静電霧化方式にて、ミストに静電付加する。それにより、マイナスの電荷を負荷された微細ミストが、プラスに帯電した庫内壁面に付着し、庫内壁面の微細な孔にミストが入り込むこととなり、微細な孔の内部の汚れを浮き上がらせ除去効果を高めることが出来る。また、野菜表面の有害物質の除去効果も高めることが出来る。
また、本実施の形態では静電霧化方式にて、オゾンを含むミストを野菜室内に噴霧することにより、野菜の表面や切り口面を除菌して、細菌やカビによる、組織間隙や導管のつまりを抑制することとなり、より野菜の水分含有量を向上し、野菜のみずみずしさを保持することが出来る。
また、本実施の形態では静電霧化方式にて、オゾンを含むミストを野菜室内に噴霧することにより、庫内壁面の付着臭あるいは庫内臭をオゾンミストによって酸化分解することとなり、野菜室内の脱臭を行うことが出来る。
また、本実施の形態では静電霧化方式にて、微量のオゾンが発生することによりその近辺の貯水槽や水経路なども抗菌、殺菌出来る。
また、本実施の形態では野菜室に水供給部を設けたが、冷蔵室、低温室、切替室に水供給部を設けることによって、野菜や果物と同様に、保存中の肉や魚、加工食品、冷やご飯、パン等にも保湿性及び栄養価を向上することが出来る。
(実施の形態19)
図55は、本発明の実施の形態19における噴霧量と粒子径に対する効果を示した図である。
図55により、本実施の形態17および18によるミストの粒子径と噴霧量との相関関係をまとめると、ミストの粒子径および噴霧量によって冷蔵庫の庫内におけるミストによる作用や効果が異なってくることがわかる。
図55は、70リットルの野菜室を5℃の雰囲気温度に保った上で、ミストの粒子径と噴霧量を変化させて、(1)冷蔵庫内部における野菜の蘇生(栄養成分添加)効果、(2)野菜に付着している農薬等の有害物質の除去効果、(3)冷蔵庫の壁面に付着する汚れの防汚効果の、それぞれの効果が現れる範囲を示したものである。
まず、野菜蘇生について説明する。
図55に示すように、野菜の水分含有量を高めることを目的に噴霧するミストの粒子径は野菜の表面にあり水分の調節を行っている気孔が最大に開いた状態での気孔径以下でないと、ミストが野菜の内部に物理的に入りこむことができない。また、実験の結果によると、光照射なしの場合では細胞間隙幅以下の粒子径においては、水分含有量復元率が高くなり、ミスト粒子の細胞間隙からの侵入がより活発に行われ野菜の水分含有量復元効果が大きいことがわかった。
また、逆にミスト径が小さくなりすぎると、今度はミストと気孔との接触頻度が少なくなり、蘇生率が低くなる。
一方、ミストの噴霧量は貯蔵室内の相対湿度を野菜内部の湿度と平衡状態に保てる量以上噴霧する必要があり、噴霧量の上限は野菜の水腐れなど品質劣化を生じない量以下とする必要がある。
また、ミストに静電付加すると、野菜との電位差が生じ、ミストの野菜付着率が高くなるので、同一粒子径の場合、静電付加したミストの方が噴霧量が少なくても蘇生率が高くなることがわかった。
次に野菜表面の農薬等の有害物質の除去について説明する。
本実験にあたっては、一般的な野菜の農薬であるマラチオンを野菜表面に付着させオゾンミスト雰囲気の中に12時間置いたものと、同量のマラチオンを野菜表面に付着させ12時間ミスト雰囲気でない通常の野菜室に置いたものとを試料として用いた。それぞれの試料を、笊に入れて10秒間流水洗浄を行い、マラチオンの除去率が、ミスト雰囲気でない通常の野菜室に置いたものに比べて50%以上のものを至適範囲とした。
実験によると、農薬除去効果の高いミスト粒子径は野菜の凹凸サイズ以下で、且つ拡散性のある微細粒子であった。また逆に粒子径が小さくなりすぎると、農薬との接触頻度が少なくなり、除去率が低くなる。
一方、ミストの噴霧量は、野菜の蘇生と同様、静電付加したミストでは野菜との接触頻度が高まるため少量の噴霧量で除去効果がある。また、野菜の蘇生のように野菜の内部までミストを供給する必要はなく、ミストの供給は野菜表面に限られるため、必要な噴霧量も野菜蘇生より少なくてよい。また同一量噴霧した場合、粒子径による農薬除去効果の差はない。除去効果は噴霧量よりもミスト中のオゾンやOHラジカル等の分解能力を有する物質の量に左右される。ミストを静電霧化方式にて発生させた場合では、ミスト中のラジカル個数で考えれば、ミストが微細になるほどラジカル個数は増え、農薬除去効果も高くなる。
次に、冷蔵庫庫内の防汚効果について説明する。
ミストを用いて行う冷蔵庫庫内の防汚とは、冷蔵庫の庫内の壁面に水粒子が満遍なく付着し、庫内の壁面に直接汚れ物質が付着することを防ぐことである。このように汚れ物質が水粒子を介して庫内の壁面に付着している場合には、例えば庫内壁面を拭くだけで、簡単に汚れを落とすことができ、冷蔵庫内の掃除が非常に簡単となる。
防汚効果の確認にあたっては、各粒子径と噴霧量のミストを充満させた70リットル野菜室内において、一般的な冷蔵庫内の樹脂であるABS樹脂に汚れ物質を吹きつけた後、一定時間後に汚れをふき取った際に、汚れ物質が残らない範囲を至適範囲とした。
防汚効果の高い粒子径は、庫内樹脂の凹凸サイズ以下で、且つ拡散性のある微細粒子であった。また、庫内壁面にミストが付着した際に水滴として目に見える粒子径では結露を生じ、庫食品が品質劣化を起こす可能性がある。従って、噴霧するミストの粒子径は壁面に付着したミストが目に見えないレベルの水滴となる粒子径である必要がある。また、通常、噴霧量は野菜蘇生や農薬除去の噴霧量よりも多く必要である。これは、防汚効果を発揮するためには、壁面に満遍なく水粒子が付着する必要があるため、多量のミストを噴霧する必要があるためである。ミストを静電霧化方式にて発生させた場合、農薬等の除去効果と同様、粒子径が小さいほど、酸化分解力の高いラジカル個数が多くなり、ミストの酸化分解能力が高くなるとともに、汚れとの接触頻度が上がり、付着する汚れの分解効果が高くなると考えられる。しかし、粒子径が小さすぎるとミストの壁面到達率が低下し、防汚効果が低くなる。
このようにミストの粒子径と噴霧量の関係によって、冷蔵庫の庫内における様々な有用な効果が得られることがわかった。これらにより、得たい効果が複数実現するようなミスト噴霧を行うことで、冷蔵庫の使い勝手をより向上させることが出来る。
(実施の形態20)
図56は本発明の実施の形態20における冷蔵庫の野菜室の側断面図である。図57は本発明の実施の形態20におけるミスト噴霧装置の要部拡大図である。図58は本発明の実施の形態20におけるオゾン水ミストの農薬除去性能を示す図である。実施の形態20において、実施の形態17、18と同一部、同一部材は同一番号で示している。
実施の形態20において、冷蔵庫100の内部には間接冷却によって冷却される野菜室114が備えられ、野菜室114の上部背面にミスト噴霧装置275が備えられている。ミスト噴霧装置275は、オゾン水270を貯水する貯水槽122と、オゾン水をエジェクター方式で噴霧する噴霧ノズル276とを備え、貯水槽122上部にはオゾン水供給口272が具備されている。高電圧方式でオゾンを発生するオゾン発生体273は野菜室114の近傍に設けられ、オゾン水経路271に連結されている。オゾン水経路271には給水タンク(図示せず)より配管された水供給経路281が設けられている。また、ミスト噴霧装置275の噴霧ノズル276の先端近傍には高電圧を印加するための環状の電極291と電源292が設けられている。
以上のように構成された冷蔵庫のミスト噴霧装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、オゾン発生体273によってオゾンガスが生成される。生成されたオゾンガスは給水タンク(図示せず)から給水され、水供給経路281より供給された水と混合されオゾン水となって、オゾン水経路271を経て、オゾン水供給口272より貯水槽122内に供給され貯水される。貯水槽122内のオゾン水は、噴霧ノズル276により、野菜室114内にミストとなって噴霧される。その際、噴霧ノズル276の先端近傍に設けられた環状の電極291に対して、電源292から高電圧が印加され、噴霧ノズル276より噴霧されたオゾン水ミストに静電付加がなされる。
図58は、本発明の実施の形態20におけるトマト付着農薬のオゾン水ミストによる除去効果を示したものである。
その実験方法を説明する。マラチオンを3〜5ppm濃度となるようミニトマトに付着させる。マラチオンが付着したミニトマトを野菜室に保存し、オゾン水ミストを20分間隔で10秒間噴霧する間欠噴霧にて、12時間噴霧する。その後、ミニトマトに残留するマラチオン濃度をガスクロマトグラフィーにて測定し、除去率を算出した。尚、比較試料としては、同様にマラチオンを付着したミニトマトをミスト噴霧装置なしの野菜室にて保存したものを用いた。実験の結果、比較品R1の除去率が20%であるのに対し、ミスト噴霧した実施品S1では除去率が40%で約2倍の除去効果であった。
以上のように、本実施の形態では野菜室近傍でオゾンと水とを混合して生成したオゾン水をミスト噴霧装置にて野菜室内に静電付加されたミストを噴霧することにより、庫内に噴霧した微細ミストが庫内壁面と野菜や果物表面に均一に付着され、庫内壁面や野菜や果物表面の微細な孔にミストが入り込むこととなり、微細な孔の内部の汚れや有害物質を浮き上がらせ、汚れや有害物質の除去効果を高めることが出来る。また、野菜表面の有害物質の酸化分解効果を高めるとともに、野菜の保湿性も向上させることが出来る。
また、オゾンミストに静電付加することにより、オゾンミスト中の水分子をラジカル化し、OHラジカルを生成することとなり、オゾンの酸化力に加え、OHラジカルの酸化力によって、除菌や脱臭及び有害物質分解性能を高めることが出来る。
尚、本発明では、オゾン水経路271で水とオゾンを混合してオゾン水を生成するとした。これに対し、ミスト噴霧装置275の近傍にオゾン発生体を設けてオゾンを発生させ、ミスト噴霧装置275の噴霧ノズル276内で水と混合してオゾン水ミストとして噴霧する構成でも、同様の効果が得られる。
尚、本発明では、水を給水タンク(図示せず)より給水するとしたが、冷蔵庫のドレン水を利用し、貯水槽122内にドレン水を給水する構成とすれば、給水タンクに水を入れる手間を省くことが出来る。
(実施の形態21)
図59は本発明の実施の形態21における冷蔵庫のミスト噴霧装置の要部拡大図である。尚、実施の形態21において、実施の形態20と同一部、同一部材は同一番号で示している。
ミスト噴霧装置275は、野菜室114の上部背面に備えられている。ミスト噴霧装置275はオゾン水を貯水する貯水槽122とオゾン水270をエジェクター方式で噴霧する噴霧ノズル276とを備え、貯水槽122上部には給水タンク(図示せず)より給水された水を貯水槽122内に供給する水供給口282が具備されている。高電圧方式でオゾンを発生するオゾン発生体273は貯水槽内の一画に設けられている。
また、ミスト噴霧装置275の噴霧ノズル276の先端近傍には高電圧を印加するための環状の電極291と電源292が設けられている。
以上のように構成された冷蔵庫のミスト噴霧装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、水が給水タンク(図示せず)から給水され、水供給口282より貯水槽122内に供給され、貯留される。次にオゾン発生体273に高電圧が印加され、放電によって水中溶存酸素が電子との衝突により酸素原子に解離される。そして、酸素原子は溶存酸素分子と結合してオゾンが発生するとともに、水分子と反応してOHラジカルを同時に生成する。発生したオゾンは貯留水に溶存し、オゾン水を生成する。貯水槽122内のオゾン水は噴霧ノズル276より野菜室114内にミストとなって噴霧される。その際、噴霧ノズル276の先端近傍に設けられた環状の電極291に対して電源292より高電圧が印加され、噴霧ノズル276より噴霧されたオゾン水ミストは静電付加がなされる。
以上のように本実施の形態では、放電方式でオゾンを発生するオゾン発生部を貯水槽内の貯留水中に浸漬することにより、貯水槽内の貯留水中の溶存酸素を解離して、オゾンとOHラジカルを発生する。原料酸素が水中溶存酸素のため、オゾン生成量は空中放電に比べ、はるかに少なく、発生したオゾンは貯留水中に溶存した状態となる。すなわち、特殊な材料を必要としない簡便な構造で、人体に安全な低濃度のオゾンとオゾンよりも酸化力の強いOHラジカルを含むオゾン水を生成し、噴霧することが出来る。
(実施の形態22)
図60は、本発明の実施の形態22における冷蔵庫のミスト噴霧装置の要部拡大図である。尚、実施の形態22において、実施の形態20、21と同一部、同一部材は同一番号で示している。
実施の形態22において、野菜室の上部背面にミスト噴霧装置275が備えられている。ミスト噴霧装置275は水を酸性水とアルカリ水に電解する電解槽293と、電解によって生成された酸性水をエジェクター方式で噴霧する噴霧ノズル276を有する。さらに、電解槽293は酸性水を生成する陽極電極側槽293Aと、アルカリ水を生成する陰極電極側槽293Bの2槽で構成されている。噴霧ノズル276は酸性水の生成される陽極電極側槽293A側に備えられている。電解槽上部には水供給口282が具備されている。
電解槽293内には隔壁294を介して対向して陽極電極板295、陰極電極板296を配置し、直流電源297より直流電流が供給される。
また、ミスト噴霧装置275の噴霧ノズル276の先端近傍には高電圧を印加するための環状の電極291と電源292が設けられている。
以上のように構成された冷蔵庫のミスト噴霧装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、電解槽293内に水供給口282より水が供給され、貯留される。次に陽極電極板295と陰極電極板296に直流電源297より直流電流が供給されることにより、陽極電極板295側にPh1〜7の酸性水270Cが生成され、陰極電極板296側にはアルカリ水270Dが生成される。陽極側電解槽293A内の酸性水270Cは噴霧ノズル276より野菜室114内にミストとなって噴霧される。その際、噴霧ノズル276の先端近傍に設けられた環状の電極291に対して電源292より高電圧が印加され、噴霧ノズル276より噴霧された酸性水は静電付加がなされる。
以上のように、本実施の形態では、電解槽内の貯留水を電気分解して酸性水を生成し、静電付加して野菜室内に酸性水ミストを噴霧することにより、無臭で、かつ酸性水の微生物増殖抑制作用と、ラジカル化した水分子の酸化分解力を併せ持つミストを噴霧することとなり、除菌効果を高めることが出来る。
(実施の形態23)
図61は本実施の形態23における冷蔵庫のミスト噴霧装置の要部拡大図である。尚、実施の形態23において、実施の形態20、21と同一部、同一部材は同一番号で示している。
実施の形態23において、ミスト噴霧装置275は、オゾン水や酸性水といった機能水あるいは水を貯留する貯水槽122と、貯留水を供給する貯留水供給部298と、貯水槽122内にその一端を位置し、他端を野菜室114内に噴霧先端部299を形成した毛細管供給構造体300と、貯水槽122の一画に設置し、貯水槽122内の貯留水に高電圧を印加する電極301と;から構成されている。
以上のように構成された冷蔵庫のミスト噴霧装置について、以下その動作、作用を説明する。
貯留水供給部298から、貯水槽122内に機能水あるいは通常の水が供給され貯留される。次に貯水槽122内の電極301に高電圧を印加すると、噴霧先端部299と周囲部(図示せず)との間に存在する電界によって噴霧先端部299から複数の液糸が引き出され、さらには帯電した液滴に分散されてミストとなり野菜室114内に噴霧される。
以上のように本実施の形態では、貯水槽内の貯留水に直接高電圧を印加して、静電付加した貯留水を噴霧することにより、ミストの静電付加率が増加し、ミストの微細化と食品表面への付着率を向上することが出来る。
また、機能水の微細化によるミストの大気中での滞空時間が長くなることにより、機能水微細ミストの庫内浮遊菌や庫内拡散臭気物質との接触機会が増加し、除菌、脱臭性能を高めることが出来る。