請求項1に記載の発明は、貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、前記貯蔵室の前面開口部を閉塞する扉と、前記貯蔵室内に設けられた食品を収納する収納容器と、前記収納容器内を冷却する冷却部と、前記収納容器内の水分を回収する水回収手段と、前記水回収手段によって回収した水を前記収納容器内にミスト状に噴霧するミスト噴霧手段とからなり、前記水回収手段は、前記貯蔵室天面に取り付けられ、前記冷却部と、枠と、前記枠と一体に形成されたドレン部とから構成され、前記冷却部は前記貯蔵室背面に向けてある一定の角度で傾斜が設けられており、前記冷却部の傾斜下端近傍に前記ドレン部を配置し前記ミスト噴霧手段に水を供給し、前記収納容器の背面側壁は、その上端が前記収納容器の上端外周よりも一段低い位置にあり、前記収納容器の開口部は前記貯蔵室天面、前記貯蔵室背面によって囲まれており、前記貯蔵室内で略密閉に区画されるとともに、前記貯蔵室背面の内部には、冷却器と送風ファンが備えられており、前記貯蔵室背面の上部には吐出口と吸込口が設けられ、前記冷却器からの冷気を前記冷却部の背面に供給して前記冷却部を冷却するものであり、冷却部による直接冷却にて収納容器外からの間接冷却に比べて速い冷却スピードを実現でき、ミスト噴霧による加湿を実現しつつ、略密閉構造により収納容器外への不必要な結露を防止することができる。また、結露を防止することにより前記水回収手段の水回収効率を高めることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記貯蔵室天面、及び前記貯蔵室背面から収納容器の開口部外周を覆うようにリブを延伸させたものであり、収納容器の密閉性をさらに向上させ、収納容器外の結露の防止を狙うと同時に、保鮮性をさらに向上させることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記貯蔵室内に光を照射する照射手段を備え、前記収納容器内に収納された食品に前記照射手段によって光を照射しつつ、前記ミスト噴霧手段によって前記収納容器内にミスト状に水を噴霧するものであり、野菜類の葉の表面にある気孔を開き、そこにミスト状の水を噴霧することにより水分の含有量を向上させることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、ミスト噴霧手段に超音波方式を用いたものであり、粒子径数μmの微細なミストを発生させることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、ミスト噴霧手段に静電霧化方式を用いたものであり、粒子径数nmから数μmの微細なミストを発生させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の側面断面図である。図2は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面断面図である。
図1、図2において、冷蔵庫本体1は貯蔵室15、16、17を有しており、その前面開口部はそれぞれ開放可能な扉18、19、20にて外気の流入が無いように閉塞されている。
扉19には左右一対で貯蔵室16内に延伸された板状のスライドレール21が設けられており、この上に収納容器22が載置されている。扉19はこのスライドレール21の可動可能な方向に沿って水平方向に引き出して開閉され、それに伴い収納容器22も可動して引き出される。
収納容器22の背面側壁23は、その上端が収納容器22の上端外周よりも一段低い位置にあり、その外周には略U字形状のフランジ24が一体に形成されている。また、収納容器22の上端部とフランジ24は、それぞれ貯蔵室天面25と貯蔵室背面26に対して、扉19の開閉に支障のない程度の隙間を保ちながら近接して配置されている。
貯蔵室天面25からは左右一対のリブ27が延伸されており、収納容器22の側壁上部を覆うように配置されている。また、貯蔵室背面26からも略U字形状のリブ28が延伸されており、フランジ24を覆うように配置されている。このリブ27、28は貯蔵室16と収納容器22の空気の移動に際し抵抗として働き、収納容器22内の水分を含んだ空気が貯蔵室16内に漏れ出すことを防ぐ役目を果たす。
このように、収納容器22の開口部は貯蔵室天面25、貯蔵室背面26、リブ27、リブ28によって囲まれており、貯蔵室16内で略密閉に区画されることになる。
水回収手段29は、この収納容器22、貯蔵室天面25、貯蔵室背面26で略密閉に区画された空間中に配置され、本実施の形態の場合では貯蔵室天面25に取り付けられている。さらに、水回収手段29は、冷却部30と、枠31と、枠31と一体に形成されたドレン部32とから構成されている。この時、冷却部30は貯蔵室背面26に向けてある一定の角度で傾斜が設けられており、冷却部30の傾斜下端近傍にドレン部32が配置されている。
貯蔵室背面26の内部には、冷却器33と送風ファン34が備えられており、貯蔵室背面26の上部には吐出口35と吸込口36が設けられている。なお、吐出口35と吸込口36はその左右が入れ替わっても良い。
水回収手段29のドレン部32と収納容器22のフランジ24の間にはミスト噴霧手段36が配置されており、本実施の形態の場合では貯蔵室背面26に取り付けられている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
冷却器33で冷やされた空気は、送風ファン34により吐出口35から冷却部30、枠31、貯蔵室天面25、貯蔵室背面26にて区画される空間中に吐出される。この時、冷却部30と枠31、及び枠31と貯蔵室天面25と貯蔵室背面26は、それぞれ気密にシールされており、吐出口35からの冷気が直接収納容器22内に漏れ出すことはない。吐出された冷気は吸込口36から再び冷却器に返される。
冷却部30は金属製の薄板、例えばアルミのような熱伝導性の良好な材質でできており、吐出口35からの冷気によって冷やされる。冷却部30は収納容器22内に露出しており、冷却部30が冷やされることにより、収納容器22内の食品を冷却保存することができる。
収納容器22内部に収納された食品からは、投入時からの時間経過に伴い水分が蒸散する。この時、収納容器22内部では冷却部30が最も温度が低く、露点温度以下になっているため、蒸散した水分は冷却部30にて結露することになる。結露した水は冷却部30の傾斜に沿って自重で移動し、最終的にドレン部32に集められる。冷却部30には結露水の移動を促進する目的で撥水性の塗料を塗布したり、あるいは撥水加工を施せばより蒸散水回収の効率を上げることができる。
ドレン部32に集められた結露水は、ドレン部32の下部に配置されたミスト噴霧手段37に送られる。ミスト噴霧手段37にミスト噴霧動作を行うに十分な結露水が溜まったと判断されると、ミスト噴霧手段37が動作し、収納容器22内にミスト粒子を噴霧する。この時噴霧されるミストの粒子径は、例えば0.005μm〜20μm程度であり非常に微細なものである。なお、ミスト噴霧手段37には、例えば超音波により水を微粒子化して噴霧するもの、静電霧化方式によるもの、ポンプ方式で噴霧するもの等を用いれば良い。また、結露水の量を検知するためには、電気的に水量を検知できる水位センサーや、小型のフロートスイッチ等が考えられる。
このようにして食品からの水分の蒸散−結露−ミスト噴霧のサイクルを繰り返す訳であるが、従来の冷蔵庫と比べると、略密閉の収納容器22内でサイクルが繰り返されるため、余分な水分が収納容器外に漏れ出すことが少なく、貯蔵室16の底面等のユーザーが視認しにくい場所に結露することを防ぐことができる。
また、単純に収納容器22に密閉用の蓋を設けた場合を考えてみるが、この場合は、収納容器22内の湿度を維持するという効果は望めるものの、蓋による冷却スピードの低下は防ぐことができない。そこで本実施の形態では、略密閉の空間内に冷却部を配置し、集めた結露水を再噴霧することで湿度維持と冷却スピード確保を両立しているものである。
以上のように、本実施の形態においては、貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、貯蔵室の前面開口部を閉塞する扉と、貯蔵室内に設けられた食品を収納する収納容器と、収納容器内を冷却する冷却部と、収納容器内の水分を回収する水回収手段と、水回収手段によって回収した水を収納容器内にミスト状に噴霧するミスト噴霧手段を設け、収納容器を貯蔵室天面と貯蔵室背面にて略密閉される空間内に冷却部を配置することにより、収納容器外からの間接冷却に比べて速い冷却スピードを確保することができる。また、略密閉される空間内にミスト噴霧することにより、収納容器内の加湿を行い食品の鮮度を向上させることができる。
また、本実施の形態では、貯蔵室天面、及び貯蔵室背面から延伸させたリブを設け、収納容器の開口部外周を覆うように配置したため、収納容器内から貯蔵室内へ空気が漏れ出しにくくなり、貯蔵室内への不必要な結露を防ぐことができる。
また、不必要な結露を防止することにより水回収手段の水回収効率を高めることができる。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の側面断面図である。図4は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の正面断面図である。
図3、図4において、水回収手段29は冷却部30とドレン部32で構成されており、貯蔵室背面26に取り付けられている。
貯蔵室背面26の内部には冷却器33と送風ファン34が備えられており、冷却風路(詳細図示せず)を介して冷蔵庫全体に冷気を循環させている。ここで、貯蔵室背面26の内、冷却部30が取り付けられている面は断熱壁厚が薄くなっており、冷却部30を背面から冷やしている。これにより、収納容器22内を冷却しているものである。
実施の形態1と同様に、収納された食品から蒸散した水分は冷却部30の表面に結露し、垂直方向に自重で落下していく。落下した結露水はドレン部32にて集められ、ミスト噴霧手段37に送られる。
本構成をとり、冷却部30より積極的に冷却すれば、早い冷却スピードを保ったまま収納容器22内部を加湿することができる。この場合、実施の形態1と比べて収納容器22の容積をより大きくとることができる。
その他の構成、動作、作用は実施の形態1と同様であるため、説明は省略する。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の側面断面図である。図6は、本発明の実施の形態3において、ミスト噴霧中、光を照射したものにおけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミストの粒子径に対する特性図である。図7は、本発明の実施の形態3において、ミスト噴霧中、光の照射なしで実験したものにおけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミスト粒子径に対する特性図である。図8は、本発明の実施の形態3において、やや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミスト噴霧量に対する特性及び、ミスト噴霧量に対する野菜の外観官能評価値を示した図である。
図5において、照射手段38は枠31の一部に取り付けられており、収納容器22に収納された食品の上部から光を照射するように配置される。照射手段38は、ケース39とLED40とカバー41で構成される。この時カバー41は、少なくとも光が透過できる程度の透明度を供えている。その他の構成については実施の形態1と同様であるので説明は省略する。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
収納容器22内部に収納された食品からは、投入時からの時間経過に伴い水分が蒸散する。この時、収納容器22内部では冷却部30が最も温度が低く、露点温度以下になっているため、蒸散した水分は冷却部30にて結露することになる。結露した水は冷却部30の傾斜に沿って自重で移動し、最終的にドレン部32に集められる。ドレン部32に集められた結露水は、ドレン部32の下部に配置されたミスト噴霧手段37に送られる。ミスト噴霧手段37にミスト噴霧動作を行うに十分な結露水が溜まったと判断されると、ミスト噴霧手段37が動作し、収納容器22内にミスト粒子を噴霧する。
ミスト噴霧中にはLED40が点灯し、収納容器22内に収納されている食品に光が照射される。このLED40は中心波長が470nmの青色光を含む光を照射する。この時照射される青色光の光量子は約1μmol/m2/sの微弱な光で十分である。微弱な青色光が野菜や果物に照射されると、表皮表面に存在する気孔が青色光の光刺激によって開口する。
一方、野菜室内に保存されている野菜や果物の中には、通常、購入帰路時での蒸散、あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態のものが含まれている。
また、野菜室内には青果物である野菜の中でも緑の葉野菜や果物等も保存されており、これらの青果物は蒸散あるいは保存中の蒸散によってより萎れやすいものである。
ミスト噴霧手段37によって噴霧されたミスト粒子は、収納容器22内で気孔が開口した状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔を介して組織内に浸透する。その結果、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、野菜や果物はシャキッとした状態に復帰する。
図6、図7は、やや萎れかけた野菜における、水分含有量の復元効果のミストの粒子径に対する特性を示した図である。萎れかけの野菜の再現方法としては以下の方法を用いた。
店頭での購入状態に対して、重量が約10%減少するまで所定時間放置したものを萎れかけ野菜とした。野菜は収穫時から約15%重量減少すれば見かけが悪くなり、また、細胞組織も元に戻らない。収穫時の野菜に対して、流通の段階での重量減少は5%程度である。5%程度の水分減少であれば、使用者は官能的に見て見かけ上の問題はないものと判断する。しかし、10%程度の重量減少が生じると、使用者は官能的に見て、外観上、萎れた野菜と感じるようになる。以上のことから、店頭での購入状態に対して、重量が約10%減少した状態を初期値と定めた。
以下、実験方法を説明する。
上記の処理をした野菜を70リットルの野菜室(約6℃)に保存し、種々の粒子径のミストを約24時間噴霧した。その後、取り出して重量測定を行い、重量が初期に対し、どれくらい復元したかを評価した。
図6は、ミスト噴霧中に光(青色LED)を1μmol/m2/sの強度で照射した実験の結果である。一方、図7は、光照射なしでミスト噴霧した実験の結果である。
この実験では、官能的な評価により水分含有量復元率が50%以上のものが「食べられる」と判定し、70%以上は「十分においしく食べられる」と判定した。
図6より、光照射をした場合、野菜の水分含有量の復元効果は噴霧するミスト粒子径に依存し、一定の最適粒子径範囲が観察された。最適粒子径は野菜の水分含有量の復元効果が50%以上となる0.005〜20μmの範囲であった。
噴霧する粒子径が20μm以上と大きい場合、水粒子が大きすぎて、ミストが均一に噴霧できなかった。これは、ミスト径が比較的大きいとその自重ですぐに容器の底面に落下してしまうためミストの拡散性が十分に得られないからだと考えられる。また、気孔径は最大20μm程度と考えられ、それ以上のミストでは、水粒子が大きすぎて、野菜の内部まで入り込みにくいものと考えられる。
一方、0.005μm以下の超微粒子では粒子が非常に小さいため、開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できない。以上の要因により、0.005μm以下の場合に復元効果が十分得られなかったものと考えられる。
また、野菜の水分含有量復元効果が70%以上となる範囲は0.008〜10μmの範囲であった。このように、実験の結果によると1μm以上では、粒子径が細かい方が噴霧の均一性が向上し、また噴霧距離、空気中の滞在時間が延びる。従って、1μm以上では、粒子径が細かいほど野菜表面に付着する確率が高くなり、水分含有量復元率が向上することがわかった。また、10μm以下では、より活発にミスト粒子の気孔から浸透がより活発に行われ、野菜の水分含有量復元効果が70%以上という大きな効果が得られた。また、ミスト径が小さく0.008μm程度でも野菜の水分含有量復元効果が70%以上となることから、この程度のミスト径を確保すれば、ミストと開孔状態の気孔との接触頻度が比較的保たれると考えられる。
さらに、野菜の水分含有量復元効果が80%以上とより高くなる最適粒子径は0.01〜1μmの範囲であった。ここで、粒子径が1μm以下であると粒子が気孔の内部に浸透するに十分の大きさとなる為、0.01〜1μmの範囲内では気孔径によって野菜の水分含有量復元効果が変わらなくなると考えられる。
一方、図7は光照射をしない場合の実験結果であり、水分含有量復元率の50%以上となる粒子径は、光照射時の粒子径よりも小さく、約0.005〜0.5μmであった。
粒子径の上限が0.5μmと小さくなった理由は、光照射による気孔の開孔がないことにより、野菜の表面組織の間隙や比較的閉じた状態の気孔などを介する以外に、水が野菜内部に浸透できないものと考えられる。すなわち、復元するに際し、微細な隙間からしか水粒子が浸透できないためであると考えられる。
なお、水分含有量復元率の50%以上となる範囲の下限の粒子径は0.005μmであり、光照射をした場合と同じであった。0.005μm以下のミスト粒子では、粒子径が非常に小さいため、開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できないためと考えられる。
また、野菜の水分含有量復元効果が80%と高くなるのは0.01μm付近のみであり、野菜の水分含有量復元効果が70%以上となる最適粒子径は0.008〜0.05μmの範囲であった。このように、実験の結果によると0.05μmより小さくなると気孔径が小さくなるにつれて、よりミスト粒子の気孔から浸透がより活発に行われる一方、0.01μmをピークとして、それより気孔径が小さくなるにつれて野菜の水分含有量復元効果はより小さくなることがわかった。よって水分含有量復元効果は光を照射した場合の方が幅広い粒子径で高い水分復元率を得られることが判明した。
次に図8は本発明の実施の形態3で説明した萎れかけた野菜に対する水分含有量の復元効果とミスト噴霧量の関係及び、野菜の外観官能評価値とミスト噴霧量の関係を示した図である。萎れかけ野菜の再現方法及び実験方法は図6、図7の実験とほぼ同一である。但し、本実験では、1μmの粒子径の場合に、光照射あり、光照射なしの2パターンの実験を行い、光照射なしについては、さらに、0.01μmの粒子径のミストを用いた実験を行った。また、本実験は70リットルの野菜室において行った為、以下の噴霧量はすべて70リットル当たりの噴霧量を示す。
図8より、光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲は0.05〜10g/h(収納容器1リットル当たり=0.0007〜0.14g/h・l)の範囲であった。
ミストの噴霧量が少なすぎると、野菜が気孔から外部へ放出する水分量を下回ってしまい、野菜内部への水分供給を行うことができなくなる。また、ミストと開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できにくくなると考えられる。
実験では、このような噴霧量の下限値が0.05g/hであることがわかった。
一方、ミストの噴霧量が多すぎると、野菜内部の水分含有許容量を超えてしまい、野菜内部に取り込まれない水分は野菜の外部に付着してしまい、この水分によって野菜表面の一部から水腐れが生じてしまい、野菜が痛んでしまう現象が発生する。
このような野菜表面に余分な水分が付着し、野菜が水腐れ等の品質劣化を起こす範囲は10g/h以上であり、実験としては不適であった。よって、10g/h(収納容器1リットル当たり=0.15g/h・l)以上の実験結果については、野菜の品質劣化によって採用できない為、省略する。
光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は、0.1〜10g/h(収納容器1リットル当たり=0.0015〜0.14g/h・l)であった。このようにミストの噴霧量の下限値が0.1g/h程度以上に多くなると、開孔状態の気孔との接触頻度が十分に多くなり、野菜内部へのミストの浸透が活発に行われると考えられる。
光照射なしの場合については、粒子径1μmの噴霧では、野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲はなく、すべての噴霧量で10%未満の水分含有量復元率である。粒子径が0.01μmの噴霧では、0.05〜7g/h(1リットル当たり=0.0007〜0.1g/h・l)の範囲であり、さらに野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は0.1〜0.5g/h(1リットル当たり=0.0015〜0.007g/h・l)の範囲であった。これは、上記のような光照射ありの場合と比較して、ミスト噴霧量の下限値についてはほぼ同等であるが、上限値が異なる結果となった。図のように、光照射なしの場合については、気孔が十分に開いていない為、粒子径が十分に小さくないと野菜の内部に水分が浸透しないと考えられる。
以上のように、本実施の形態では、野菜室内に保存中の野菜に対し、照射手段を用いて光を照射し、且つ、ミスト噴霧装置にて気孔を通過できるミストを適量噴霧している。その結果、光照射により開孔した野菜表面の気孔から、適量かつ適当な粒子径のミストが野菜内部に浸透し、野菜の水分含有量を向上、野菜のみずみずしさを保持・向上させることができる。
また、本実施の形態では、0.1〜100μmol/m2/sの青色光を照射した。微弱な光照射によって、光合成活動を低く抑えた上で、気孔開孔率を高くすることが可能となる。また、ある程度の生態活動を促し、野菜の光合成による水分消費を極力抑え、開孔した、気孔から水分を野菜内部に効率よく供給することができる。加えて、光量を抑えることにより消費電力を低減し、省エネ効果を得ることが出来る。
なお、本実施の形態では、貯蔵室内の収納物として野菜などの青果物について説明した。さらに、水分を供給することにより品質が向上する収納物として、例えば、果物や0℃近辺で保存している鮮魚や肉類でも本実施の形態の冷蔵庫を用いることで乾燥を防ぐことができる。
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4における冷蔵庫の側面断面図である。
図9において、照射手段38は貯蔵室天面25に取り付けられており、収納容器22に収納された食品の上部から光を照射するように配置される。照射手段38は、ケース39とLED40とカバー41で構成される。この時カバー41は、少なくとも光が透過できる程度の透明度を備えている。その他の構成については実施の形態2と同様であるので説明は省略する。
また、動作、作用も実施の形態3と同様であるので、説明は省略する。
以上のように、本実施の形態では、野菜室内に保存中の野菜に対し、照射手段を用いて光を照射し、且つ、ミスト噴霧装置にて気孔を通過できるミストを適量噴霧している。その結果、光照射により開孔した野菜表面の気孔から、適量かつ適当な粒子径のミストが野菜内部に浸透し、野菜の水分含有量を向上、野菜のみずみずしさを保持・向上させることができる。
また、本実施の形態では、0.1〜100μmol/m2/sの青色光を照射した。微弱な光照射によって、光合成活動を低く抑えた上で、気孔開孔率を高くすることが可能となる。また、ある程度の生態活動を促し、野菜の光合成による水分消費を極力抑え、開孔した、気孔から水分を野菜内部に効率よく供給することができる。加えて、光量を抑えることにより消費電力を低減し、省エネ効果を得ることが出来る。
(実施の形態5)
図10は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫の側面断面図である。図11は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の縦断面図である。図12は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の正面図である。図13、は本発明の実施の形態5における冷蔵庫の超音波霧化装置の縦断面図である。図14は、本発明の実施の形態5における機能ブロック図である。図15は、本発明の実施の形態5における制御フロー図である。
図10において、冷蔵庫本体1は断熱性を有する仕切り板42によって、上から冷蔵室43、切替室44、野菜室45、冷凍室46に区画されている。野菜室45は収納容器22が設置され、その空間の中に食品を収納し、湿度約80〜90%RH以上(食品収納時)、4〜6℃に冷却されている。野菜室45の背面には風路47と野菜室45を区画するための庫内仕切り48が備えられている。庫内仕切り48には、超音波霧化装置49を含む水補給装置50が備えられている。さらに、野菜室天面の仕切り板42には、特定の波長を選択した光を照射する照射手段51と庫内全体に光を拡散させるための拡散板52が備えられている。
図11において、庫内仕切り48と冷蔵庫外壁53との間には風路47を備える。風路47は、例えば冷却器(蒸発器)54で生成された冷気を各貯蔵室に搬送し、もしくは各貯蔵室から熱交換された空気を冷却器54へ搬送するために設けられている。ここで、庫内仕切り48には超音波霧化装置49が組み込まれている。庫内仕切り48は主に発泡スチロールなどの断熱材で構成されており、その壁厚は30mm程度であるが、貯留水保持部55の背面については、壁厚は5mmから10mmで構成されている。貯留水保持部55の中には、水収集板56が庫内側に設置されている。水収集板56の一面には例えば、ニクロム線で構成された加熱ヒータなどの加熱手段57が当接し、庫内側にはBOXファンなどの送風手段58と循環風路59を構成するためのカバー部材60が設置されている。
図12において、カバー部材60には循環風路59に関する第1の循環風路開口部61と第2の循環風路開口部62が設けられている。さらに、水収集板56には、水収集板56表面の温度を検知するための水収集板温度検知手段63が設置されている。また、切替室44の横には製氷室74が配置される。
図13において、超音波霧化装置49はホーン64と圧電素子65で構成される。ホーン64は切削加工等により略円錐状に加工され、ホーン64の圧電素子65側にホーン64と一体的にフランジ部66が形成されている。またホーン64と圧電素子65とは接着固定されて、圧電素子65で発生する振動をホーン先端で最大振幅となるよう増幅されるように構成されている。また、超音波霧化装置49はフランジ部66を取り付け位置とし、冷蔵庫やその取り付け部材の接続部67に取り付けられている。
ホーン64は熱伝導性の高い材質としており、例えばアルミニウム、チタン、ステンレス等の金属が挙げられる。特に、軽量で、熱伝導性が高く、超音波伝達時の振幅の増幅性能の点からするとアルミニウムを主成分とするもの選択することが好ましい。また、長寿命化のためにはステンレスを主成分とするものを選択することが望ましい。
また、超音波の振動の振幅はフランジ部66で振幅の節部に、ホーン64の先端で振幅の腹部となるように、またフランジ部66とホーン64の先端の間を1/4波長で振動するように設定されている。またホーン64の長さは、発生ミストの霧化粒子径と圧電素子65の発振周波数及びホーン64の材質で決まるものである。例えば、霧化粒子径が約10μmの場合、ホーン64の材質がアルミニウムで、圧電素子65の発振周波数は約270kHzの時にホーン64の長さBは約6mmとなる。また、霧化粒子径が約15μmの場合、ホーン64の材質がアルミニウムで、圧電素子65の発振周波数は約146kHzの時にホーン64の長さBは約11mmとなる。これらの一連の理論計算値まとめを表1に記載する。
また、冷蔵庫本体1の冷凍サイクルは、圧縮機68、凝縮器、膨張弁やキャピラリチューブなどの減圧装置(図示せず)、蒸発器54、それら構成部品を連結する配管、及び冷媒などで構成される。
冷蔵庫本体1は、機械室を有しており、機械室には圧縮機68と凝縮器などが備えられている。なお、三方弁や切替弁を用いる冷凍サイクルの場合は、それらの機能部品が機械室内に配設されていてもよい。
冷凍サイクルを構成するキャピラリは、パルスモーターで駆動する冷媒の流量を自由に制御できる電子膨張弁として働く場合もある。
また、断熱箱体内には、蒸発器54が冷凍室46の背面に備えられ、減圧膨張で低温化した冷媒と庫内空気とを熱交換により冷却する役割を担っている。
また、収納容器22の上端と後端は、それぞれ仕切板42と庫内仕切48に扉の開閉に支障のない程度の隙間を保ちながら近接して配置されている。これにより、収納容器22内は略密閉の空間が構成されおり、その略密閉の空間中に水補給装置50、貯留水保持部55、照射手段51が配置されることになる。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
冷蔵庫本体1の場合、冷却器54で熱交換された冷気を攪拌ファン(図示せず)などにより冷蔵室43、切替室44、野菜室45、冷凍室46、製氷室74などに冷気を配分し、所定の温度を維持するようにON・OFF運転するものが一般的である。野菜室45は、冷気の配分や加熱部などのON・OFF運転により4℃から6℃になるように調整され、一般的には庫内温度検知部をもたないものが多い。また、野菜室45は、食品からの水分の蒸散と扉の開閉による水蒸気の侵入等により高湿である。庫内仕切り48の厚さは、ある程度の冷却能力が必要なので他の部分より薄く構成されている。ここで、水収集板56の表面温度を露点温度以下にすれば、水収集板56近傍の水蒸気は水収集板56に結露し、水滴が確実に生成される。
具体的には、(1)水収集板56に設置されている水収集板温度検知手段63により表面の温度状態を把握し、(2)制御手段69aにより送風手段58、加熱手段57をON・OFF制御もしくは電圧可変を行い、(3)水収集板56の表面温度を露点温度以下に調整し、(4)送風手段58により庫内より送られた高湿空気に含まれる水分を水収集板56に結露させる。特にここでは図示しないが庫内に庫内温度検知部や庫内湿度検知部などがあれば、あらかじめ決められた演算により厳密に露点温度が庫内環境下の変化に応じて割り出すことができる。仮に水収集板56表面で氷や霜となった場合でも、加熱手段57を用いて融解温度まで水収集板56表面温度を上昇させることが可能なので、適度に水を生成することができる。
ここで、送風手段58が運転されると野菜室45の空気の影響により水収集板56表面温度は上昇し、一方、送風手段58が停止すると表面温度は低下する。壁厚が10mm以上では、送風手段58が運転時、加熱手段57がOFFでも水収集板56表面温度は露点温度以上になり、結露量が調整できなくなる。逆に壁厚が5mm以下の場合は、常時、加熱手段57がONの状態になりエネルギー効率が悪くなる。よって、水収集板56背面の庫内仕切り30の厚みは5mmから10mmにすることにより水収集板56の表面温度を制御しながら加熱手段57のエネルギーを最小化することができる。
また、結露を促進させるためには野菜室45内の空気を循環させる必要がある。そこで、送風手段58により空気を取り込む。例えば、送風手段58により第2の循環風路開口部62より高湿の空気をとりこみ、水収集板56で結露させた後、第1の循環風路開口部61より庫内に空気を吐出し、野菜室45内の空気を循環させることにより結露を促進させる。
水収集板56表面で結露した水滴は徐々に成長し、自重によりポンプなどの動力を使わずに下方に流れ、超音波霧化装置49近傍に集まる。集まった結露水は、給水部73によりホーン64先端に供給される。
ホーン64先端に供給された水は、圧電素子65の振動により粒子径の小さいミストとして収納容器22内に噴霧される。収納容器22内には青果物である野菜の中でも緑の菜っ葉ものや果物等も保存されており、これらの青果物は蒸散よってより萎れやすい。収納容器22内に保存されている野菜や果物の中には、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態のものが含まれており、霧化されたミストによって野菜の表面が潤わされる。このとき、庫内温度検知部69が5℃以上、庫内湿度検知部70が95%以上であると検知した場合、照射手段51が点灯する。照射手段51は、例えば青色LEDや青色光のみを透過する材料で覆われたランプなどであり、微弱な青色光を照射し、野菜や果物は表皮表面に存在する気孔が、青色光の光刺激によって、通常の状態に比べ気孔の開度が大きくなり、野菜や果物が水分を吸収しやすくなる。
つまり、この時照射される青色光は野菜の気孔開度を制御するものであり、その波長は400nm〜500nmが望ましい。特に中心波長が440nmもしくは470nmの照射手段を使用したときその相対効果が高く、特に青色LEDを用いれば安価でかつ低入力で照射でき、貯蔵室内への熱影響を低減できる。
また、光の強さを表す光量子束密度は、0.1μmol・m−2・s−1〜100μmol・m−2・s−1が望まれる。特に野菜の気孔は光刺激により気孔を開閉するが、その刺激の感知する光量子束密度は0.1μmol・m−2・s−1程度あれば光刺激に反応する。また、それ以上なら気孔は開孔するが100μmol・m−2・s−1を超えると光合成が活発になり、そのため野菜表面からの蒸散が激しくなり保鮮性が損なわれる。実際には、容器内の照度分布と野菜の積み重ね等を考慮すれば、照射手段51の光量子束密度は1μmol・m−2・s−1程度に設定されることが望ましい。
これにより、噴霧されたミストは野菜室45内を再び高湿にすると同時に野菜室45内に気孔開孔状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔より組織内に浸透し、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。そのとき、霧化粒子径は40.5μmから20μmが好ましい。さらに、一般的な野菜の平均的な気孔の大きさが20μm程度であるため、萎れた野菜をより復活させるためには20μm以下の粒子径でより細かいミストがより好ましい。
ホーン64は、ホーン64先端付近で振動による発熱を生じるが、ホーン64が高熱伝導性材料であるため、ホーン64への熱伝導の働きもなしている。
圧電素子65が駆動した場合、図13に示す実線Aのように各部位が振動する。ホーン64のフランジ部66側が超音波霧化装置49内を伝播する音波の節部となり、その節部にあたるホーン64のフランジ部66で、例えば庫内仕切り48と直接的または取り付け部材を介して間接的に接続して設置する。伝播する音波の節部で接続するので損失は少なくなるため、消費電力は小さくてすむ。
また、ホーン64の先端とフランジ部66との長さ(ホーン長:B)が1/4波長である構造をもてば、超音波霧化装置49の全長が短くすることができる。逆にホーン64の先端とフランジ部66の間に腹部が複数あると、振動エネルギー損失が大きくなり、振動に要する電力が大きくなる。
さらに、圧縮機68の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器にて冷蔵庫本体1の空気と熱交換して放熱するとともに凝縮液化し、キャピラリに至る。その後、キャピラリでサクションラインと熱交換しながら減圧されて蒸発器54に至る。
冷却用ファン(図示せず)の作用により、蒸発器54内の冷媒の蒸発作用により比較的低温となった冷気は冷蔵室43と冷凍室46などに流入し、それぞれの部屋の冷却が行われる。蒸発器54内で、庫内の空気と熱交換した冷媒はその後サクションラインを通り圧縮機68へと吸い込まれる。
上述した冷凍サイクルの冷媒としては、地球環境保全の観点から地球温暖化係数が小さい可燃性冷媒であるイソブタンが使用されている。
この、炭化水素であるイソブタンは空気と比較して常温、大気圧下で約2倍の比重である(2.04、300Kにおいて)。
仮に、圧縮機の停止時に蒸発器54から可燃性冷媒が漏洩した場合でも、超音波霧化装置なら静電霧化装置にあるような放電部がなく、着火源がない。そのため、冷凍サイクルを構成している部品の構成に関係なく超音波霧化装置を設置することができ、また、冷媒の種類を問わず、安全である。
次に図14の機能ブロック図を説明する。制御手段69aは、超音波霧化装置49の動作と、超音波霧化装置49に給水する水量を調整するため動作させる加熱手段57や送風手段58などと、照射手段51の動作を制御する。それらの制御のため、水収集板温度検知手段63と野菜室温度検知手段69と野菜室湿度検知手段70とドア開閉検知手段71とからの情報信号が制御手段69aに入力される。例えば、庫内温度が5℃、庫内湿度が90%、水収集板表面温度が4℃であることが検知された場合、制御手段69aは、超音波霧化装置49のON・OFF、加熱手段57の動作を決定する。この場合、制御手段69aは、水収集板表面温度を、露点温度以下に冷却する必要があるので、例えば、加熱部をOFFするか、もしくは加熱部への入力を低下させるか、冷気の温度を低下させるために圧縮機の回転数を増加させるか、もしくは送風部の回転数を低下させるように制御を行う。また、制御手段69aは、ドア開閉検知手段71により扉が閉状態であると検知されたときにのみ、超音波霧化装置49を動作させることにより、扉開閉時の外部へのミストもれを防ぐことが出来る。さらに、貯蔵されている野菜が0℃近辺の低温で気孔を開孔した場合、野菜の低温障害を促進してしまい、野菜を傷めることになる。また、15℃以上だと呼吸による野菜表面からの蒸散が盛んになり、水分量が減少しやすくなる。そこで、野菜室温度検知手段69が、例えば5℃〜15℃の範囲を検知した時にのみ、照射手段51をONすれば効率のよい鮮度の維持、水分量の向上ができる。
次に図15の制御フロー図を説明する。
ステップ1で、水収集板温度検知手段63により測定された表面温度t℃があらかじめ決められたtA℃とtB℃の範囲に検知温度がある場合、制御手段69aは、野菜の気孔制御とミスト噴霧による水分量向上が可能と判断し、ステップ2で超音波霧化装置49を運転させ、貯蔵室にミストが噴霧される。
ステップ3で、制御手段69aが超音波霧化装置49の積算運転時間TAがT1を超えると判定すると、ステップ4に進んで照射手段51を動作させる。
ステップ5で、制御手段69aが超音波霧化装置49の運転積算時間TAがT2を超えると判定すると、ステップ6に進んで、ミスト噴霧を終了し、同時に照射手段もOFFさせる。
次にステップ7で、制御手段69aが超音波霧化装置49の停止時間がT3を超えると判断すると、ステップ8に進んでよりタイマーTA、TBを初期値に戻し、再び水収集板表面温度を検知する。
以上説明したように、本実施の形態5の冷蔵庫は、断熱区画された貯蔵室を有する断熱箱体と、液体を噴霧する噴霧部として超音波霧化装置とを備える。この構成により、比較的低温である各貯蔵室へ低温冷気を搬送するため風路を利用して、風路側からの熱伝導により超音波霧化装置に水を供給するための水収集板を冷却する。水収集板を露点以下に温度調整することにより、空気中の水分を確実に生成し、給水部などにより超音波霧化装置の振動子先端に水を供給することができる。
また、本実施の形態においては、噴霧部を超音波霧化装置としたことにより水の供給が十分であれば、噴霧量は十分確保することができる。そのためON・OFF運転による噴霧量の調整が可能となり、さらに、実使用での運転時間が短縮でき、構成部品等の寿命信頼性が向上する。
また、本実施の形態においては、ミスト噴霧と併用して400nm〜500nmの波長を選択した青色光を含む照射手段により野菜室内を照射することにより、気孔の開閉を光刺激により制御できることにより、さらに野菜への水分供給が向上する。
また、本実施の形態においては、噴霧部を超音波霧化装置としたためミスト発生時にオゾンが発生することがないので、特にオゾンに対する対策を用いなくてよく、部品構成ならび制御内容が簡素化できる。
また、本実施の形態においては、超音波霧化装置に貯水槽を備えたことにより様々な機能水、たとえば酸性水、アルカリ水、またはビタミンなどを含んだ栄養水などを注入し、それを野菜室内に噴霧することができ、様々な新しい機能を野菜室に追加できる。
また、本実施の形態においては、噴霧部を超音波霧化装置としたため十分に霧化量を確保できるので野菜表面に付着する農薬やワックスなどを極めて少ない水量で浮き上がらせ除去でき、節水ができる。
また、本実施の形態においては、超音波霧化装置を用いたことにより冷凍サイクルの冷媒にイソブタンやプロパンなどの可燃性冷媒を用いた場合においても、冷凍サイクルの構成部品の配置を考慮せず超音波霧化装置を設置することができ、また、防爆対応などの特別な対応も備えなくてもよい。
また、可燃性冷媒を用いた冷蔵庫の場合、ミスト発生部に放電が起こらないため、防爆対応を不必要となり、より簡素に安価に構成することができる。
また、本実施の形態においては、水収集板を貯蔵室内に備えたことにより加熱部や送風部により結露量を調整できると同時に、水収集板の温度を可変にすることにより庫内湿度も調整できる。
また、本実施の形態の冷蔵庫は、略円錐状に形成されたホーンと、圧電素子とを備え、ホーンの一端面に圧電素子を接着して一体化している超音波霧化装置を貯蔵室内に配置している。この構成により、小型化され、かつ低入力の超音波霧化装置を冷蔵庫に適用できるため、設置の制約が少なく、設計に自由度を持たせることができる。また、低入力であるため消費電力を低減することができるとともに、制御手段69aを搭載する制御基板を小型・低コスト化することができる。
また、超音波霧化装置自体の発熱量が抑制できるので、貯蔵室内の温度上昇を抑制できる。また特に欠水が生じた場合の異常発熱を抑制することができるので、超音波霧化装置の寿命が長期化し、信頼性が向上する。さらに冷蔵庫という低温雰囲気下で使用するため、発熱が抑制され、超音波霧化装置自体も長寿命化できる。
また、給水部を設けたことにより、効率的にかつ安定してホーン先端に水分を供給するので、超音波霧化装置から常時安定して噴霧され、貯蔵室空間を高湿に維持することができる。また、安定してホーン先端に水分を供給することで、ホーン先端での欠水を防止できるので、超音波霧化装置の寿命が長期化し、信頼性が向上する。
また、給水部は、貯留水保持部近傍に設けられていることにより、貯留水保持部から給水部によりホーン先端に水分が補給されるため、効率よく貯蔵室空間に噴霧でき、貯蔵室空間を高湿に維持することができる。また、貯留水保持部と給水部が近傍に位置しているので、貯留水保持部からホーン先端までの水分経路の構成をコンパクト化、簡素化でき、設計自由度が向上する。
また、貯留水保持部は、水収集部として貯蔵室内の空気中水分を結露させる部を有する。結露水を給水部によりホーン先端に供給することにより、結露部により生じた結露水を貯留水保持部に集水する。供給部を介してホーン先端に集水された結露水を常時安定して供給できるため、効率よく貯蔵空間にミストを噴霧でき、貯蔵室空間を高湿に維持することができる。
また、ホーンは、高熱伝導性の材質であることより、ホーン先端部で発熱をホーン全体に拡散し、かつ貯蔵空間が低温環境であるため、超音波霧化装置自体の温度上昇が抑制できるので、長寿命化し信頼性が向上する。
また、霧化粒子径を40.5μmから20μmにすることにより、食品の内部に強制的に水分を供給できるため、食品の水分含有量を向上することができる。
また、ホーン先端部を振動の腹部近傍に、ホーンの圧電素子接着面側に形成したフランジ部を振動の節部近傍にするとともに、フランジ部と直接的または間接的に冷蔵庫本体とを接続することにより、振動の振幅が大きい腹部、すなわちホーン先端部でホーン先端に補給された水分を効率よく霧化させることができる加えて、振動の節部、すなわちホーンに形成したフランジ部では振幅が小さいため、直接的または間接的に接続した接続部から冷蔵庫への振動伝達を低減することができる。
また、超音波霧化装置は、ホーン先端とフランジ部との長さを1/4波長モードで振動する構造を有することにより、霧化面となるホーンの先端と接続部となるホーンに形成したフランジ部との間に腹部と節部が1つで複数存在しない。その結果、ホーンの小型化が可能であり、エネルギーの分散や減衰が低減されるため、効率の向上が可能となる。また、小型化できるので、設置制約が少なく、設計に自由度を持たせることができ、貯蔵空間を大きくすることができる。
また、ホーンの長さを1mmから20mmとすることにより、ホーンが小さくなるため、冷蔵庫設計に自由度を持たせることができ、貯蔵空間を大きくすることができる。
また、超音波霧化装置周辺にカバー部材を設けることにより、使用者等が直接触れることができなくなるため、安全性の向上が可能とすることができる。
本実施の形態5において、超音波霧化装置を略円錐状に形成されたホーンを使用したもので説明したが、略円錐状の形状でなく、先端での振動の振幅を増幅させる形状であれば同様の効果が得られる。例えば、圧電素子側から先端に向け先細り形状として、先端部において略長方形形状にすることも可能である。このことによりミストを噴霧させる面積が円形状に比べて大きくなるので、噴霧範囲が拡大され拡散性が向上する。
また、収納容器22の上端と後端が、それぞれ仕切板42と庫内仕切48に扉の開閉に支障のない程度の隙間を保ちながら近接して配置されており、収納容器22内は略密閉に保たれるため、収納容器22外に高湿の空気が漏れることを極力抑えることができ、不要な部位への結露を防止することができる。さらには、低温に制御された水収集板56により、単純な密閉構造に比べて冷却スピードを向上させることができる。また、結露を防止することにより水回収手段の水回収効率を高めることができる。
(実施の形態6)
図16は本発明の実施の形態6における冷蔵庫の水収集部近傍の縦断面図である。図17は本発明の実施の形態6における青色光誘導性の気孔開口の作用スペクトルを示すグラフである。図18は本発明の実施の形態6における野菜の気孔開度の時間特性を示すグラフである。図19は本発明の実施の形態6における冷蔵庫の機能ブロック図である。図20は本実施の形態6の制御フロー図である。
図16において、野菜室天面の仕切り板42には、水補給装置50と、照射手段51と、拡散板52が取り付けられている。水補給装置50は、静電霧化装置72と水収集板56と水収集板温度検知手段63とヒータなどの加熱部57と水収集板56で生成された水を受け、噴霧部に流水させるためのカバー部材73とを含む。照射手段51は、特定の波長に絞った光を庫内に照射させるためのLEDやランプなどからなる。透光性材料からなる拡散板52は、照射手段51からの光を庫内全体に拡散させる。また、野菜室45の中には野菜室温度検知手段69と野菜室湿度検知手段70が備えられている。さらにここでは図示しないが、野菜室の扉開閉を検知するためのドア開閉検知手段を備えている。
また、収納容器22の上端と後端は、それぞれ仕切板42と庫内仕切48に扉の開閉に支障のない程度の隙間を保ちながら近接して配置されている。これにより、収納容器22内は略密閉の空間が構成されおり、その略密閉空間の中に水補給装置50と、静電霧化装置72と、照射手段51が配置されることになる。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下に、その動作・作用を説明する。
まず、野菜室温度検知手段69と野菜室湿度検知手段70により野菜室45の露点温度を予測することができる。そこで、水収集板表面の水収集板温度検知手段63により表面温度を把握し、加熱部57などで水収集板表面温度を露点温度以下になるように調整する。例えば、表2のように水収集板表面温度を調整する。
例えば、庫内温度が5℃で庫内湿度が90%なら、露点温度は3.5℃であり、この温度以下なら水収集板56に庫内の水蒸気は結露する。結露した水は、水収集板56もしくはカバー部材73に沿って静電霧化装置72に給水される。
また、例えば、野菜室温度検知手段69が5℃以上、野菜室湿度検知手段70が95%以上であると検知した場合、照射手段51が点灯する。照射手段51は、例えば青色LEDや青色光のみを透過する材料で覆われたランプなどである。微弱な青色光が野菜や果物に照射されると、野菜や果物の表皮表面に存在する気孔が、青色光の光刺激によって、通常の状態に比べて、大きく気孔を開孔する。
つまり、照射される青色光は野菜の気孔開度を制御するものであり、その波長は図17の青色光誘導性の気孔開孔の作用スペクトル、に示すように400nm〜500nmが望ましい。中心波長が440nmもしくは470nmの照射光を使用したときその相対効果が特に高くなる。なかでも、青色LEDを用いれば安価でかつ低入力で光照射でき、貯蔵室内への熱影響を低減することができる。
また、光の強さを表す光量子束密度は、0.1μmol・m−2・s−1〜100μmol・m−2・s−1が望まれる。特に野菜は光刺激によりその気孔を開閉するが、光量子束密度は0.1μmol・m−2・s−1程度あれば光刺激に反応する。また、それ以上の光量子束密度であれば気孔は開孔するが、100μmol・m−2・s−1を超えると光合成が活発になるため、野菜表面からの蒸散が激しくなり保鮮性が損なわれる。実際には、容器内の照度分布と野菜の積み重ね等を考慮すれば、照射手段51の光量子束密度は1μmol・m−2・s−1程度に設定されることが望ましい。
結露水が印加電極に給水され、印加電極と対向電極間に高電圧を印加することにより発生した微細ミストは、収納容器22内に噴霧される。噴霧されたミストは青色光によって制御された気孔開孔状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔を経て組織内に浸透する。それにより、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキットした状態に復帰する。
なお、野菜の気孔は、波長が500nm〜700nmの赤色光を含んだ光でもその気孔を開閉することができる。ただし、図18に示すように、赤色光の場合には、500μmol・m−2・s−1の光量子束密度にしても、青色光1μmol・m−2・s−1の効果に劣る結果であった。
次に図19の機能ブロック図を説明する。静電霧化装置72に給水する水量を調整するためと、照射手段51の動作を調整するため、水収集板温度検知手段63と、野菜室温度検知手段69と、野菜室湿度検知手段70と、ドア開閉検知手段71との情報信号を制御手段69aに入力する。
例えば、庫内温度が5℃、庫内湿度が90%、水収集板表面温度が4℃であることを検知した場合、制御手段69aにより、静電霧化装置72の動作を行い、また加熱部57の動作を停止する。つまり、この場合、水収集板表面温度は、露点温度以下に冷却する必要があり、例えば、加熱部をOFFもしくは入力低下するか、もしくは冷気の温度を低下させる制御を行う。また、ドア開閉検知手段71が扉閉と検知したときのみ静電霧化装置72を動作させることにより、扉開閉時の外部へのミストもれを防ぐことが出来る。さらに、貯蔵されている野菜が0℃近辺の低温で気孔を開孔した場合には、野菜の低温障害を促進してしまい、野菜を傷めることになる。また、15℃以上だと呼吸による野菜表面からの蒸散が盛んになり、水分量が減少しやすくなる。そこで、野菜室温度検知手段69が、例えば2℃〜15℃の範囲を検知した時にのみ照射手段51をONするようにすれば、効率的に鮮度維持、水分量向上ができる。
次に図20の制御フロー図を説明する。
ステップ1では、水収集板温度検知手段63が表面温度t℃を測定する。表面温度t℃があらかじめ決められたtA℃とtB℃の範囲にある場合には、制御手段69aは、野菜の気孔制御とミスト噴霧による水分量向上が可能と判断する。
ステップ2では、制御手段69aは、静電霧化装置72を運転させ、貯蔵室に微細ミストを噴霧させる。
次のステップ3では、静電霧化装置72の積算運転時間TAがT1を越えているか否かが判定され、超えている場合には、ステップ4に進み、照射手段51を動作させる。
ステップ5では、静電霧化装置72の運転積算時間TAがT2を超えているか否かが判定され、超える場合には、ステップ6に進んで、ミスト噴霧を終了させ、同時に照射手段もOFFさせる。
次にステップ7で、静電霧化装置72の積算停止時間TBが、T3を超えているか否かが判定され、超えている場合にはステップ8に進んで、タイマーTA、TBを初期値に戻し、再び水収集板表面温度を検知する。
以上のように、本実施の形態6の冷蔵庫は、野菜室内に保存中の野菜に対し、照射手段によって、特定の波長を選択した光を照射し、且つミスト噴霧装置にて気孔を通過できる微細ミストを適量噴霧する。これにより、開孔した野菜表面の気孔より、ミストが野菜内部に浸透することとなり、野菜の水分含有量を向上し、野菜のみずみずしさを保持することができる。
また、本実施の形態の仕切りに照射手段と水補給装置を取り付けることにより、組み立て効率が向上し、また電源回路などの配線を簡易にできる。
また、本実施の形態では、0.1〜100μmol/m2/sの青色光を照射することにより、微弱な光照射によって、光合成活動を低く、一方で、気孔開孔率を高くすることが出来る。その結果、野菜の光合成による水分消費を極力抑え、開孔した、気孔から水分を野菜内部に効率よく供給することができる。また、青色光を含む400nm〜500nmの波長を選択することにより、光量子束密度を抑えることができ、またLEDなども適用可能となり省エネ効果や低価格化にも繋げることができる。
また、野菜室温度検知手段や野菜室湿度検知手段、ドア開閉検知手段を設けたことにより、さらに効率よく、結露水収集、ミストの噴霧が可能となる。
なお、照射手段を青色光としたが、紫外線でもかまわない。この場合、噴霧されるミストを殺菌するとともに食品表面も殺菌でき、食品の安全性を高めることができる。
また、収納容器22の上端と後端が、それぞれ仕切板42と庫内仕切48に扉の開閉に支障のない程度の隙間を保ちながら近接して配置されており、収納容器22内は略密閉に保たれるため、収納容器22外に高湿の空気が漏れることを極力抑えることができ、不要な部位への結露を防止することができる。さらには、低温に制御された水収集板56により、単純な密閉構造に比べて冷却スピードを向上させることができる。
また、結露を防止することにより水回収手段の水回収効率を高めることができる。