JP2008050623A - 薄膜形成用原料及び薄膜の製造方法 - Google Patents

薄膜形成用原料及び薄膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】亜鉛を含有する薄膜の製造に好適な原料及びこれを用いた化学気相成長法による薄膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】水酸基を有さない有機溶剤1000mlに対して、必須成分として、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物0.1〜1モルを溶解させた溶液からなる薄膜形成用原料、及び該薄膜形成用原料を気化させて得たビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物を含有する蒸気を基体上に導入し、これを分解及び/又は化学反応させて基体上に亜鉛原子を含有する薄膜を形成する薄膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、亜鉛を含有する薄膜形成用原料に関し、より詳しくは、有機溶剤1000mlに対して、必須成分として、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物0.1〜1モルを溶解させた溶液からなる薄膜形成用原料及びこれを用いた薄膜の製造方法に関する。
亜鉛を含有する薄膜は、光学特性、電気特性、触媒活性等の様々な特性を有しており、電子部品や光学部品の部材として用いられている。
上記の薄膜の製造法としては、火焔堆積法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD法、化学気相成長法等が挙げられるが、組成制御性、段差被覆性に優れること、量産化に適すること、ハイブリッド集積が可能である等多くの長所を有しているので、ALD(Atomic Layer Deposition)法を含む化学気相成長(以下、単にCVDと記載することもある)法が最適な製造プロセスである。
CVDにおいては、プレカーサとして安定性、安全性の面からβ−ジケトン錯体が多く検討されている。例えば、特許文献1〜3には、揮発しやすい固体プレカーサであるビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛を用いたCVDが開示されている。特許文献3には、ビス(ペンタン−2,4−ジオン)亜鉛は、水和物と非水和物(無水和物)があり、薄膜作成においては、結晶性と再現性の見地から1水和物が好ましいことが開示されている。また、特許文献4には、炭化水素またはアルコールを溶媒とした溶液をCVD原料とする技術が開示されており、炭化水素溶媒としてヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナンが例示されており、アルコールとして、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールが例示されており、プレカーサとして、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛が例示されているが、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛溶液について具体的な記載はない。非特許文献1には、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛のジエチレングリコールモノメチルエーテル溶液を原料としたCVDが開示されている。また、特許文献5には、25℃で液体のビス(β−ジケトナト)亜鉛であるビス(オクタン−2,4−ジオナト)亜鉛、ビス(2,2−ジメチル−6−エチルデカン−3,5−ジオナト)亜鉛が開示されている。
ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛は、融点が無水和物で130℃程度、1水和物で137℃程度の高融点の固体であり、CVD等の気化工程が必要なプロセスにおいては、昇華による揮発を利用すると揮発量の不足、揮発量の経時変化等の原料ガス供給性に問題がある。溶液CVD等やMOD法等の溶液を用いるプロセスにおいては、使用に適する濃度で、溶液原料中に固相の存在しない溶液を得られない問題がある。脂肪族炭化水素系溶剤は、充分な溶解性を与えない場合があり、アルコール系溶剤は、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛とアルコールの水酸基との反応により、プレカーサが変質する問題がある。特許文献5に開示されている液体のビス(β−ジケトナト)亜鉛は、溶解性も充分であるのでこれらの問題を回避することができるが、プレカーサ自身の揮発性においては必ずしも満足できるものではなかった。
特公平6−64738号公報(特に、[請求項9]) 特開2003−236376号公報(特に、[実施例]) 特開2003−31846号公報(特に、段落[0015]、[0016]) 特開2005−298874号公報(特に、[請求項1]、段落[0012]) 特開2005−350423号公報(特に、[請求項1]〜[請求項6]) NREL/SR-520-3179 December 2001 (特に、3頁)
本発明の目的は、亜鉛を含有する薄膜の製造に好適な原料及びこれを用いた化学気相成長法による薄膜の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の有機溶剤を溶媒として用いたビス(ペンタン−2,4−ジオン)亜鉛無水和物の溶液が、高濃度で良好な安定性を示すことを知見し本発明に到達した。
即ち、本発明は、水酸基を有さない有機溶剤1000mlに対して、必須成分として、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物0.1〜1モルを溶解させた溶液からなる薄膜形成用原料を提供することで、上記目的を達成したものである。
また、本発明は、上記薄膜形成用原料を気化させて得たビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物を含有する蒸気を基体上に導入し、これを分解及び/又は化学反応させて基体上に亜鉛原子を含有する薄膜を形成する薄膜の製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
本発明の薄膜形成用原料は、高濃度で良好な安定性を示すことから、生産性が良好な薄膜製造プロセスを与えることができる。また、揮発性が良好であるので特にCVD等の気化を伴うプロセスの原料として有用である。さらに、本発明の薄膜形成用原料により製造された薄膜は、光学特性、電気特性、触媒活性等の様々な特性を有しており、電子部品や光学部品の部材として有用である。
本発明の薄膜形成用原料は、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物を薄膜のプレカーサとし、これを必須成分として、水酸基を有さない有機溶剤に溶解させたものである。その特徴は、亜鉛プレカーサが充分量溶解しているので、生産性が良好な薄膜製造プロセスを与えること、及び揮発性が良好であるので特にCVD等の気化を伴うプロセスの原料として有効であることである。
通常、市場から入手が可能なビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛は、水和物または水和物と無水和物との混合物であり、水和物としては、1水和物が知られている。水和水の有無は、IR分析で水和水の吸収により確認することができる。このようなビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛は、各種有機溶剤への溶解を試みると、けん濁液や溶解残を生じる。けん濁や溶解残は、完全な除去が困難であり、水和物を含有するビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛から充分な濃度で固相の存在しない溶液を得ることはできなかった。
なお、本発明の必須成分であるビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物の製造方法は、特に制限を受けず、周知一般の方法を使用することができる。例えば、水を排除した非水系の環境でハロゲン化亜鉛(フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛)、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛等の無機亜鉛塩を塩基の存在下でペンタン−2,4−ジオンと反応させる方法、非水系の環境で無機亜鉛塩をペンタン−2,4−ジオナトナトリウム、ペンタン−2,4−ジオナトカリウム、ペンタン−2,4−ジオナトリチウム等のアルカリ金属錯体とを反応させる方法、非水系の環境でジメトキシ亜鉛、ジエトキシ亜鉛等のアルコキシドとペンタン−2,4−ジオンとを反応させる方法、非水系の環境でビス(エチルアミノ)亜鉛、ビス(プロピルアミノ)亜鉛等の亜鉛のアミドとペンタン−2,4−ジオンとを反応させる方法等の直接無水和物を製造する方法;水を溶媒として無機亜鉛または無機亜鉛の水和物とペンタン−2,4−ジオンを水酸化ナトリウム等のアルカリの存在下で反応させる等して得たアルカリビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛水和物の水和水を除去する方法が挙げられる。水和水を除去する方法としては、脱水剤を用いる方法、加熱と減圧により水を除く方法、これらの2つ以上を組み合わせる方法が挙げられる。水和物から水和水を除去して無水和物を得る場合、透明で安定な溶液である薄膜形成用原料を得るためには、不純物として含まれるビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛水和物は、1水和物として換算して、1モル%以下が好ましく、0.3モル%以下がより好ましい。
一般に、薄膜製造プロセスにおいて、固体プレカーサを溶解させた溶液を薄膜のプレカーサとして使用する場合には、固体プレカーサーが、溶媒に対して、充分な溶解性を有することが必要である。溶解性が低いと充分な成膜速度を得ることができなくなるとともに、溶解マージンをとることができないので、濃度変化や部分的な有機溶剤の希釈等による固体析出がおきやすくなり、成膜速度の経時変化、膜質の劣化が起こる。
従って、本発明の薄膜形成用原料は、上記溶媒として、水酸基を有さない有機溶剤を用い、該有機溶剤1000mlに対して、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物を0.1〜1モル、好ましくは0.2〜1モルの濃度としたものである。ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物が0.1モルより少ないと充分な生産性を得ることができず、1モルより多いと、溶解度上限からの溶解マージンが小さくなり、固体析出のおそれがある。
本発明の薄膜形成用原料に用いられる上記濃度を与える水酸基を有さない有機溶剤としては、ケトン系化合物、エーテル系化合物、エステル系化合物、芳香族系化合物又はシアノ基を有する炭化水素系化合物が挙げられ、これらの有機溶剤は単独で使用されてもよく、2種類以上混合して使用されてもよい。
上記ケトン系化合物としては、アセトン、エチルメチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
上記エーテル系化合物としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。
上記エステル系化合物としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル、酢酸第3ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸第3アミル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸第2ブチル、プロピオン酸第3ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸第3アミル、プロピオン酸フェニル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、オキソブタン酸メチル、オキソブタン酸エチル、γ−ラクトン、δ−ラクトン等が挙げられる。
上記芳香族系化合物としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン、クメン、イソブチルベンゼン、シメン、テトラリン、アニソールが挙げられる。
上記シアノ基を有する炭化水素系化合物としては、1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等が挙げられる。
上記水酸基を有しない有機溶剤としては、好ましい濃度範囲を与える溶解性とコストの見地から、エーテル系化合物、エステル系化合物又は芳香族系化合物がより好ましい。また、水酸基を有さない有機溶剤の大気圧下での沸点が60〜180℃であるものがより好ましい。
本発明の薄膜形成用原料は、製造する薄膜の組成により、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物以外の薄膜プレカーサを含有してもよく、その使用量は所望の薄膜組成によって設定される。
例えば、多成分の元素を含有する薄膜をCVDにより製造する場合、多成分の薄膜プレカーサを各成分独立で気化、供給する方法(以下、シングルソース法と記載することもある)と、多成分の薄膜プレカーサを予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、カクテルソース法と記載することもある)があり、カクテルソースの場合に本発明の薄膜形成用原料は、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水物と他の薄膜プレカーサとの混合溶液となる。
上記場合において使用される亜鉛無水物以外の薄膜プレカーサとしては、特に制限を受けず、CVD用原料に用いられている周知一般のプレカーサを用いることができる。
上記プレカーサとしては、アルコール化合物及び/又はグリコール化合物及び/又はβ−ジケトン及び/又はシクロペンタジエン化合物、有機アミン化合物等の一種類又は二種類以上の有機配位化合物と金属との化合物、アルキル金属化合物、アリール金属化合物等が挙げられる。また、プレカーサの金属種としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、珪素、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムが挙げられる。
上記有機配位子として用いられるアルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、第3ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第3アミルアルコール等のアルキルアルコール類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−メトキシ−1−メチルエタノール、2−メトキシ−1,1−ジメチルエタノール、2−エトキシ−1,1−ジメチルエタノール、2−イソプロポキシ−1,1−ジメチルエタノール、2−ブトキシ−1,1−ジメチルエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)−1,1−ジメチルエタノール、2−プロポキシ−1,1−ジエチルエタノール、2−第2ブトキシ−1,1−ジエチルエタノール、3−メトキシ−1,1−ジメチルプロパノール等のエーテルアルコール類;本発明のアルコキシド化合物を与えるジアルキルアミノアルコールが挙げられる。
上記有機配位子として用いられるグリコール化合物としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオールが挙げられる。
上記有機配位子として用いられるβ−ジケトン化合物としては、アセチルアセトン、ヘキサン−2,4−ジオン、5−メチルヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、2−メチルヘプタン−3,5−ジオン、5−メチルヘプタン−2,4−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,2−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,2,6−トリメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、2,2,6−トリメチルオクタン−3,5−ジオン、2,6−ジメチルオクタン−3,5−ジオン、2,9−ジメチルノナン−4,6−ジオン2−メチル−6−エチルデカン−3,5−ジオン、2,2−ジメチル−6−エチルデカン−3,5−ジオン等のアルキル置換β−ジケトン類;1,1,1−トリフルオロペンタン−2,4−ジオン、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジオン、1,3−ジパーフルオロヘキシルプロパン−1,3−ジオン等のフッ素置換アルキルβ−ジケトン類;1,1,5,5−テトラメチル−1−メトキシヘキサン−2,4−ジオン、2,2,6,6−テトラメチル−1−メトキシヘプタン−3,5−ジオン、2,2,6,6−テトラメチル−1−(2−メトキシエトキシ)ヘプタン−3,5−ジオン等のエーテル置換β−ジケトン類が挙げられる。
上記有機配位子として用いられるシクロペンタジエン化合物としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、プロピルシクロペンタジエン、イソプロピルシクロペンタジエン、ブチルシクロペンタジエン、第2ブチルシクロペンタジエン、イソブチルシクロペンタジエン、第3ブチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、テトラメチルシクロペンタジエン等が挙げられ、有機配位子として用いられる有機アミン化合物としては、る。メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、第2ブチルアミン、ダイサンブチルアミン、イソブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、プロピルメチルアミン、イソプロピルメチルアミン等が挙げられ、アルキル金属化合物のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル、ペンチル、第3ペンチル、イソペンチル等が挙げられ、アリール金属のアリール基としては、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル等が挙げられる。
本発明の薄膜形成用原料は、これを構成するプレカーサ成分以外の不純物金属元素分、不純物塩素等の不純物ハロゲン、不純物有機分を極力含まないようにする。不純物金属元素分は元素毎では100ppb以下が好ましく、10ppb以下がより好ましい。総量では1ppm以下が好ましく、100ppb以下がより好ましい。不純物ハロゲン分は100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下が更に好ましい。不純物有機分は総量で500ppm以下が好ましく、50ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましい。また、CVD原料として用いる場合には、水分はビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛の水和物によるCVD原料中のパーティクルやCVD法によるパーティクル発生の原因となるので、予めできる限り水分を取り除いたほうがよい。水分量は100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下がさらに好ましい。
また、本発明の薄膜形成用原料は、製造される薄膜のパーティクル汚染を低減又は防止するために、液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定において、0.3μmより大きい粒子の数が100個以下であることが好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に1000個以下であることがより好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に1000個以下であることが100個以下が更に好ましい。
本発明の薄膜の製造方法とは、本発明の薄膜形成用原料、及び必要に応じて用いられる他のプレカーサを気化させた蒸気、並びに必要に応じて用いられる反応性ガスを基板上に導入し、次いで、プレカーサを基板上で分解及び/又は化学反応させて薄膜を基板上に成長、堆積させるCVD法によるものである。原料の輸送供給方法、堆積方法、製造条件、製造装置等については、特に制限を受けるものではなく、周知一般の条件、方法を用いることができる。
上記必要に応じて用いられる反応性ガスとしては、例えば、酸化性のものとしては酸素、オゾン、二酸化窒素、一酸化窒素、水蒸気、過酸化水素、ギ酸、酢酸、無水酢酸等が挙げられ、還元性のものとしては水素が挙げられ、また、窒化物を製造するものとしては、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキレンジアミン等の有機アミン化合物、ヒドラジン、アンモニア等が挙げられ、硫化物を製造するものとしては、硫化水素が挙げられる。
また、上記堆積方法としては、原料ガス又は原料ガスと反応性ガスを熱のみにより反応させ薄膜を堆積させる熱CVD,熱とプラズマを使用するプラズマCVD、熱と光を使用する光CVD、熱、光及びプラズマを使用する光プラズマCVD、CVDの堆積反応を素過程に分け、分子レベルで段階的に堆積を行うALD(Atomic Layer Deposition)が挙げられる。
また、上記製造条件としては、反応温度(基板温度)、反応圧力、堆積速度等が挙げられる。反応温度については、本発明に係る前記の化合物が充分に反応する温度である160℃以上が好ましく250℃〜800℃がより好ましい。また、反応圧力は、大気圧〜10Paが好ましく、大気圧〜500Paがより好ましい。堆積方法と反応圧力の組み合わせは任意であり、減圧熱CVD、減圧プラズマCVD、減圧光CVD、減圧光プラズマCVD、大気圧熱CVD、大気圧プラズマCVD、大気圧光CVD、大気圧光プラズマCVDが挙げられる。堆積速度は、原料の供給条件(気化温度、気化圧力)、反応温度、反応圧力によりコントロールすることが出来る。堆積速度は、大きいと得られる薄膜の特性が悪化する場合があり、小さいと生産性に問題を生じる場合があるので、0.5〜5000nm/分が好ましく、1〜1000nm/分がより好ましい。また、ALDの場合は、所望の膜厚が得られるようにサイクルの回数でコントロールされる。
また、本発明の薄膜の製造方法においては、薄膜堆積の後に、より良好な電気特性を得るためにアニール処理を行ってもよく、段差埋め込みが必要な場合には、リフロー工程を設けてもよい。この場合の温度は、500〜1200℃であり、600〜800℃が好ましい。
本発明の薄膜形成用原料を用いた本発明の薄膜の製造方法により製造される薄膜は、他の成分のプレカーサ、反応性ガス及び製造条件を適宜選択することにより、金属、合金、硫化物、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス、ガラス等の所望の種類の薄膜とすることができる。製造される薄膜の種類としては、例えば、亜鉛、ZnSe、酸化亜鉛、硫化亜鉛、亜鉛−インジウム複合酸化物、リチウム添加酸化亜鉛、亜鉛添加フェライト、鉛−亜鉛複合酸化物、鉛−亜鉛−ニオブ複合酸化物、ビスマス−亜鉛−ニオブ複合酸化物、バリウム−亜鉛−タンタル複合酸化物、錫−亜鉛複合酸化物が挙げられ、これらの薄膜の用途としては、例えば、透明導電体、発光体、蛍光体、光触媒、磁性体、導電体、高誘電体、強誘電体、圧電体、マイクロ波誘電体、光導波路、光増幅器、光スイッチ、電磁波シールド、ソーラセル等が挙げられる。
以下、製造例、評価例及び実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
[製造例]ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物の製造
市販のビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛(関東化学社製)について、加熱と減圧による昇華精製操作による水和水の除去を行い、130℃、30Paのフラクションから収率60%でビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物を得た。得られた結晶について、IR、1H−NMR、炭素と水素の元素分析及びTG−DTAを測定し、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物であることを同定した。
・IR測定
ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物のIRチャートを[図1]に示し、水和水除去前の市販品のビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛のIRチャートを[図2]に示す。水和水除去前のビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛のIRチャートには、3324cm-1に頂点を有する水和水由来の吸収が確認できるが、水和水除去後のビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物の結晶には、この吸収が存在しないことが確認された。
1H−NMR測定(1重量%の重ベンゼン溶液)
0.28ppm付近に検出されるビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛水和物の水和水のピークは未検出であった。
・元素分析
得られたビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物の炭素含有量は、45.5質量%(理論値:45.56質量%)、水素含有量は、5.3質量%(理論値:5.35質量%)であり、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物の理論値と一致している。なお、市販品のビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛の炭素含有量は、42.4質量%であり、水素含有量は、5.9質量%であった。1水和物の理論値は、炭素42.65質量%であり、水素5.73質量%であるので、上記のIR測定の結果とあわせて、市販品は1水和物と同定できる。
・TG−DTA(Ar100ml/min、10℃/min昇温、サンプル量;得られた無水和物9.495mg、市販品7.354mg)
得られたビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物は、1段階の揮発による重量減少を示し、市販品は、100℃までの水和水の脱離由来の重量減少と、揮発による重量減少の2段階の重量減少を示すことが確認された。
[評価例1]揮発性の評価
上記製造例で得られたビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物、ビス(オクタン−2,4−ジオナト)亜鉛、ビス(2,2−ジメチル−6−エチルデカン−3,5−ジオナト)亜鉛について、Ar100ml/min、10℃/min昇温の条件でのTG測定による質量50%減少温度を測定した。上記条件におけるTG測定による質量50%減少温度は、それぞれ、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物(試料9.495mgで測定)が202℃であり、ビス(オクタン−2,4−ジオナト)亜鉛(試料10.561mgで測定)が245℃であり、ビス(2,2−ジメチル−6−エチルデカン−3,5−ジオナト)亜鉛(試料9.282mgで測定)が263℃であった。
[評価例2]溶解性の評価
上記製造例で得たビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物および水和水除去前のビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛について、水酸基を有さない有機溶剤である、イソブチルメチルケトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、及びトルエン、並びに水酸基を有する有機溶剤であるジエチレングリコールモノメチルエーテルに対する溶解性を評価した。評価は、有機溶剤1000mlに対する亜鉛錯体の含有量を0.1、0.2、0.3、0.5、0.7、1.0モルとなるように混合し、密栓をして24時間静置後、固相の有無を目視で確認する方法により行った。固相の存在しない透明な溶液を保持した1000mlに対する濃度配合量を表1に示す。なお、0.1モル溶解しないものは<0.1と表示し、1モル溶解したものは>1と表示した。
Figure 2008050623
表1より、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物は、各種有機溶剤に対し、充分な溶解性を示し、固相を含有せずに充分な濃度の溶液を与えることが確認された。これに対して、水和物を含有する市販品のビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛は、0.1モルにおいても溶液中に微粉状の溶解残が存在することが確認できた。なお、この溶解残を収集しIRを測定した結果、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛の1水和物であると同定した。
[評価例3]
上記評価例2で調製したビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物溶液について、各種有機溶剤における最も濃度の大きい溶液について、Ar100ml/min、10℃/min昇温の条件でのTG−DTA測定を行った。ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物を、水酸基を有する有機溶媒であるジエチレングリコールモノメチルエーテル1000mlに対し、0.7モルの割合で混合した組成物についての結果を図3に示す。図3によると、271.8℃で7.22%の残分が確認された。水酸基を有さない有機溶剤を使用した溶液には、このような反応生成物の存在を示唆する揮発残渣は確認できず、有機溶媒とビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛の揮発による重量現象のみが観察された。これらのことから、ジエチレングリコールモノエチルエーテルの水酸基がビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物と反応し、揮発性の乏しい反応生成物を与えることが確認された。
上記評価例1〜3より、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物と水酸基を有さない有機溶剤との組成物、特に該有機溶剤がエーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族系溶剤である組成物は、充分な濃度で安定した溶液を与え、CVD用原料として好適であることが確認された。
[実施例]酸化亜鉛薄膜の製造
図4に示すCVD装置を用いて、シリコンウエハ上に以下の条件で、上記製造例で得たビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛0.5molを1000mlのテトラヒドロフランに溶解した溶液を薄膜形成用原料として、酸化亜鉛薄膜を製造した。製造した薄膜について、膜厚及び組成の測定を蛍光X線で同定した。
(製造条件)
気化室温度:140℃、原料流量:0.5sccm、酸素ガス流量:500sccm、反応圧力:1000Pa、反応時間:20分、基板温度:450℃、キャリアガス:アルゴン500sccm
(結果)
膜厚;240nm、組成;酸化亜鉛
図1は、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物のIRチャートを示す。 図2は、市販品のビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛のIRチャートを示す。 図3は、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物と水酸基を有する有機溶剤であるジエチレングリコールモノメチルエーテルとの組成物のTG−DTA測定の結果を示す。 図4は、実施例において用いた、本発明の薄膜の製造方法に用いられるCVD装置の一例を示す概要図である。

Claims (4)

  1. 水酸基を有さない有機溶剤1000mlに対して、必須成分として、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物0.1〜1モルを溶解させた溶液からなる薄膜形成用原料。
  2. 上記水酸基を有さない有機溶剤が、エーテル化合物、エステル化合物又は芳香族化合物から選ばれる請求項1記載の薄膜形成用原料。
  3. 上記水酸基を有さない有機溶剤の大気圧下での沸点が、60〜180℃である請求項1又は2記載の薄膜形成用原料。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜形成用原料を気化させて得たビス(ペンタン−2,4−ジオナト)亜鉛無水和物を含有する蒸気を基体上に導入し、これを分解及び/又は化学反応させて基体上に亜鉛原子を含有する薄膜を形成する薄膜の製造方法。


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