JP2008039028A - 動力伝達機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】付勢部材を機構内に収容配置して体格の大型化を抑制した構成であっても作動性の悪化を防止することができる動力伝達機構を提供する。
【解決手段】電磁スプリングクラッチ60において、回転軸16の軸方向に沿って同一周面上に位置するハブ65の周面67s、及びロータ61の周面61sには、アーマチャプレート78がロータ61に吸着された状態ではハブ65とロータ61を連結するスプリングクラッチ71が巻装されている。ハブ65内には回転軸16のアーマチャプレート78側の端部と該アーマチャプレート78との間に位置し、アーマチャプレート78をロータ61から離反する方向へ付勢するコイルバネ74が収容されている。
【選択図】図3
【解決手段】電磁スプリングクラッチ60において、回転軸16の軸方向に沿って同一周面上に位置するハブ65の周面67s、及びロータ61の周面61sには、アーマチャプレート78がロータ61に吸着された状態ではハブ65とロータ61を連結するスプリングクラッチ71が巻装されている。ハブ65内には回転軸16のアーマチャプレート78側の端部と該アーマチャプレート78との間に位置し、アーマチャプレート78をロータ61から離反する方向へ付勢するコイルバネ74が収容されている。
【選択図】図3
Description
本発明は、外部駆動源からの動力を回転軸へ伝達可能とする動力伝達機構に関する。
例えば、車両空調装置の冷媒圧縮機においては、車両エンジンからの動力を冷媒圧縮機の回転軸へ伝達するために、図5に示すような動力伝達機構100を備えたものが存在する(例えば特許文献1参照。)。すなわち、冷媒圧縮機においてハウジング101の外側には、車両エンジン(図示せず)から動力が入力されるロータ102が、ベアリング103を介して回転可能に支持されている。前記ロータ102内には電磁コイル104が収容されている。
また、冷媒圧縮機の回転軸106において機外側の一端部には、円盤状のアーマチャ107がスプライン嵌合され、アーマチャ107は回転軸106の軸方向に移動可能に取り付けられている。すなわち、回転軸106の一端部にはスプライン106aが形成され、アーマチャ107にはスプライン孔107aが形成されている。また、動力伝達機構100には、ロータ102に吸引されたアーマチャ107を該ロータ102から離反する方向へ付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)108が設けられている。この圧縮コイルばね108は、動力伝達機構100の体格の大型化を抑制するために、回転軸106の周囲に装着され、動力伝達機構100の機内側からアーマチャ107をロータ102から離反する方向へ押圧している。
そして、上記動力伝達機構100によって冷媒圧縮機の回転軸に車両エンジンからの動力を伝達するには、前記電磁コイル104に通電し、電磁コイル104を励磁させる。すると、アーマチャ107は、ロータ102からの電磁力によりロータ102側へ吸引され、圧縮コイルばね108の付勢力に抗して回転軸106の軸方向に沿ってロータ102側へ移動する。よって、アーマチャ107がロータ102に連結されることで、車両エンジンからの動力はロータ102からアーマチャ107へ伝達され、さらにはアーマチャ107を介して回転軸106に伝達されるようになっている。
一方、電磁コイル104を消磁させることによってアーマチャ107のロータ102側への吸引が解除される。すると、圧縮コイルばね108の復帰力によってアーマチャ107はロータ102から離反する方向へ移動される。よって、車両エンジンからの動力はロータ102からアーマチャ107へ伝達されないようになっている。
実開昭59−107339号公報
上記動力伝達機構100においては、アーマチャ107を回転軸106の軸方向へ移動させ、アーマチャ107をロータ102に対して接離可能とするために、アーマチャ107はスプライン嵌合によって回転軸106に連結されている。そして、圧縮コイルばね108の復帰力によってアーマチャ107をロータ102から離反する方向へスムーズに移動させるために、アーマチャ107のスプライン孔107aと、回転軸106のスプライン106aとの間のクリアランスを大きく取っている。この場合、アーマチャ107の回転軸106に対するがたつきが発生しやすく、該がたつきによってスプライン孔107aとスプライン106aとが摩耗する等して動力伝達機構100の作動性が悪化してしまう。
前記がたつきを抑えるために、アーマチャ107のスプライン孔107aと、回転軸106のスプライン106aとの間のクリアランスを小さくすると、アーマチャ107がロータ102に対して接離する方向へスムーズに移動せず、動力伝達機構100による動力伝達及びその解除がスムーズに行われなくなって作動性が悪化してしまう。
本発明は、付勢部材を機構内に収容配置して体格の大型化を抑制した構成であっても作動性の悪化を防止することができる動力伝達機構を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転機械の回転軸と一体回転する第1回転体と、回転機械のハウジングに回転可能に支持されるとともに前記第1回転体と同軸に位置し外部駆動源からの動力が入力される第2回転体とを連結し、前記外部駆動源からの動力を回転軸へ伝達可能とする動力伝達機構であって、前記第1回転体よりも機構外側には、回転軸の軸方向に沿って移動可能であり、前記第2回転体内の電磁コイルへの通電によって第2回転体に吸着されるアーマチャプレートが連結され、前記回転軸の軸方向に沿って同一周面上に位置する前記第1回転体の周面、及び前記第2回転体の周面には、前記アーマチャプレートが第2回転体に吸着された状態で第1回転体と第2回転体を連結するスプリングクラッチが巻装され、前記第1回転体内には前記回転軸のアーマチャプレート側の端部と該アーマチャプレートとの間に位置し、アーマチャプレートを第2回転体から離反する方向へ付勢する付勢部材が収容されていることを要旨とする。
この構成によれば、第2回転体に対して接離させるアーマチャプレートを、第1回転体とは独立して回転軸の軸方向に沿って移動可能に設け、アーマチャプレートを第2回転体から離反する方向への付勢は付勢部材によって可能としている。付勢部材は、第1回転体内に収容されており、動力伝達機構の機構内に収容配置されている。このため、動力伝達機構の体格の大型化が抑制されている。そして、動力伝達機構において、第2回転体に入力された動力はアーマチャプレートを介して第1回転体に伝達される。このため、第2回転体からの動力伝達を行うために第1回転体を回転軸の軸方向へ移動させる必要がなく、第1回転体と回転軸との間には軸方向への移動を可能とする連結手段を設ける必要がなくなる。したがって、前記連結手段を設けることにより回転軸に動力を直接伝達する第1回転体が、回転軸に対してがたついたりすることを無くすことができ、動力伝達機構の作動性が悪化してしまうことを防止することができる。
また、前記付勢部材における前記アーマチャプレート側の端部は、アーマチャプレートの中央部に固定されていてもよい。この構成によれば、アーマチャプレートは付勢部材によって付勢された状態では、回転軸の軸方向に対して傾くことなく支持されている。よって、アーマチャプレートが第2回転体側に移動した際には、該アーマチャプレートを第2回転体に確実に吸着させることができ、動力伝達機構の作動性を正確なものとすることができる。
本発明によれば、付勢部材を機構内に収容配置して体格の大型化を抑制した構成であっても作動性の悪化を防止することができる。
以下、本発明の動力伝達機構を、車両空調装置の冷媒圧縮機に用いられる電磁スプリングクラッチに具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。なお、以下の説明において冷媒圧縮機10の「前」「後」は、図1に示す矢印Yの方向を前後方向とする。
図1に示すように、回転機械としての冷媒圧縮機10のハウジングは、シリンダブロック11と、その前端に接合固定されたフロントハウジング12と、シリンダブロック11の後端に接合固定されたリヤハウジング14とから構成されている。また、前記シリンダブロック11とリヤハウジング14との間には、シリンダブロック11側からリヤハウジング14側に向けて、吸入弁形成プレート36、バルブプレート13、吐出弁形成プレート28及びリテーナ33が介在されている。
シリンダブロック11とフロントハウジング12との間には、制御圧室15が区画形成されているとともに、シリンダブロック11とフロントハウジング12には前記制御圧室15を貫通するように回転軸16が回転可能に支持されている。前記フロントハウジング12の前端部には、回転軸16の前側を取り囲むようにして支持筒部12aが形成されている。回転軸16の一端部(前端部)は、動力伝達機構としての電磁スプリングクラッチ60を介して外部駆動源としての車両のエンジンEに作動連結されている。
前記回転軸16は、前側がラジアルベアリング18によってフロントハウジング12に回転可能に支持されている。フロントハウジング12において、回転軸16の前側の周面と、該周面に対向するフロントハウジング12の内周面との間には軸シール室20が形成されている。そして、軸シール室20内には、前記回転軸16の周面と軸シール室20の周面との間をシールする軸シール部材21が設けられている。回転軸16の後側は、シリンダブロック11に形成された軸孔11b内に挿通されているとともに、ラジアルベアリング19によって軸孔11bに回転可能に支持されている。
前記制御圧室15内において、回転軸16には回転支持体22が固着されており、回転支持体22は回転軸16と一体回転可能に固定されている。この回転支持体22とフロントハウジング12の内壁面との間にはスラストベアリング23が設けられている。また、制御圧室15内には斜板24が収容されている。斜板24の中央には、挿通孔24aが穿設されており、該挿通孔24aに回転軸16が挿通されている。回転支持体22と斜板24との間には、ヒンジ機構25が介在されている。斜板24は、ヒンジ機構25を介した回転支持体22との間でのヒンジ連結、及び挿通孔24aを介した回転軸16の支持により、回転軸16及び回転支持体22と同期回転可能であるとともに、回転軸16の中心軸Lに沿った軸方向へのスライド移動を伴いながら回転軸16に対して傾角を変更可能とされている。
シリンダブロック11には、回転軸16の周りに複数(図1では1つのシリンダボア26のみ図示)のシリンダボア26が等角度間隔で前後方向に貫通形成されている。シリンダボア26には、片頭型のピストン27が前後方向へ移動可能に収容されている。シリンダボア26の前後開口は、バルブプレート13及びピストン27によって閉塞されており、このシリンダボア26内にはピストン27の前後方向への移動に応じて容積変化する圧縮室37が区画されている。ピストン27は、一対のシュー29を介して斜板24の外周部に係留されている。
リヤハウジング14には、前記バルブプレート13に面して吸入室30と吐出室31が区画形成されている。詳細には、リヤハウジング14の中央部には、前記吸入室30が設けられ、該吸入室30の外周側には前記吐出室31が設けられている。前記バルブプレート13には、各シリンダボア26と対向する位置において、バルブプレート13の径方向内寄りに吸入ポート32が形成され、バルブプレート13の径方向外寄りに吐出ポート34がそれぞれ形成されている。
前記吸入弁形成プレート36には前記吸入ポート32と対応する位置に該吸入ポート32を開閉する吸入弁36aが形成されている。また、前記吸入弁形成プレート36には、前記吐出ポート34に対応する位置に吐出孔36bが形成されている。前記吐出弁形成プレート28には吐出ポート34と対応する位置に該吐出ポート34を開閉する吐出弁28aが形成されている。また、前記吐出弁形成プレート28には、前記吸入ポート32に対応する位置に吸入孔28bが形成されている。吐出弁28aはリテーナ33によって開放位置が規制されるようになっている。リヤハウジング14には、電磁弁からなる容量制御弁52が組み付けられている。
そして、ピストン27の移動に伴い吸入孔28b及び吸入ポート32を通過し、吸入弁36aを押し退けて吸入室30から前記圧縮室37へ吸入された冷媒ガスは、ピストン27の移動により圧縮室37で圧縮される。圧縮室37から吐出孔36b及び吐出ポート34を通過し、吐出弁28aを押し退けて吐出室31へ吐出された高圧の冷媒ガスは、外部冷媒回路(図示せず)へと導出される。該外部冷媒回路からの戻りガスは吸入室30へ吸入されるようになっており、本実施形態の冷媒圧縮機10は、外部冷媒回路とで冷媒循環回路を構成している。そして、シリンダブロック11(シリンダボア26)、回転軸16、回転支持体22、斜板24、ヒンジ機構25、ピストン27及びシュー29によって、冷媒圧縮機10における圧縮機構が構成され、該圧縮機構は回転軸16の回転に基づいて駆動される。
冷媒圧縮機10には、吐出圧領域としての吐出室31と、前記制御圧室15とを連通させ、吐出室31の冷媒ガスを、制御ガスとして制御圧室15へ供給するための供給通路54が設けられている。この供給通路54上には前記容量制御弁52が設けられている。また、冷媒圧縮機10には、制御圧室15と吸入圧領域としての吸入室30とを連通させ、制御圧室15の冷媒ガスを制御ガスとして吸入室30へ排出させる排出通路53が設けられている。そして、吐出室31へ吐出された冷媒ガスは、前記供給通路54を通過して制御圧室15へ供給されるようになっている。また、前記容量制御弁52により、供給通路54を通過し、制御圧室15へ供給される冷媒ガス量が調節されるようになっている。
また、制御圧室15内の冷媒ガスは、排出通路53を介して吸入室30へ排出される。そして、供給通路54を介した制御圧室15への冷媒ガス供給量と排出通路53を介した制御圧室15からの冷媒ガス排出量とのバランスが制御されて制御圧室15の圧力が決定される(制御圧室15が調圧される)。制御圧室15の圧力が変更されると、ピストン27を介した制御圧室15内とシリンダボア26内との差圧が変更され、斜板24の傾角が変化する。この結果、ピストン27のストローク(冷媒圧縮機10の吐出容量)が調節される。
次に、前記電磁スプリングクラッチ60について詳細に説明する。図1及び図2に示すように、前記フロントハウジング12における支持筒部12aの外周側には、ラジアルベアリング70を介して第2回転体としてのロータ61が回転可能に支持されている。ロータ61は磁性材より筒状に形成され、エンジンEの出力軸からのベルト(図示せず)が掛けられる筒状のベルト掛け部61aと、該ベルト掛け部61aの内側に設けられた筒状の支持部61bとを一体に有している。そして、ロータ61は、前記支持部61bを以ってフロントハウジング12(支持筒部12a)にラジアルベアリング70を介して回転可能に支持されている。
ロータ61において、前記ベルト掛け部61aの内周面と、支持部61bの外周面との間には、環状の収容凹部61cが形成されている。そして、収容凹部61c内には、磁性材よりなる収容筒体63に収容された電磁コイル62が収容され、該電磁コイル62は、正逆両方向に通電の切換が可能に構成されている。また、前記電磁コイル62を収容した収容筒体63は、フロントハウジング12における支持筒部12aの外周に支持された環状の支持部64によって支持されている。
そして、支持部64による収容筒体63の支持状態では、収容凹部61cの周面(ベルト掛け部61aの内周面及び支持部61bの外周面)と、該周面に対向する収容筒体63の周面との間に僅かなクリアランスが形成されている。このため、収容筒体63、すなわち電磁コイル62は、ロータ61内(収容凹部61c内)に遊嵌状態で収容され、電磁コイル62はロータ61と一体に回転しないようになっている。
また、ロータ61内には永久磁石73が嵌入されている。永久磁石73は、前記電磁コイル62に正方向への通電がなされると正方向への磁束の流れを生じ、逆方向への通電がなされると逆方向への磁束の流れを生じさせる。ロータ61には、前記支持筒部12aよりも前側へ突出する連結筒部61dが形成され、該連結筒部61dは回転軸16の中心軸Lの軸方向へ延びる円筒状に形成されている。
図2に示すように、回転軸16の前端部には、第1回転体としてのハブ65が固定されている。ハブ65は、回転軸16の外周に装着可能とする筒状部66と、該筒状部66の前端から回転軸16の軸方向に対し、直交する方向へ延びるハブ部67とを一体に有している。前記筒状部66内には区画部68が形成され、筒状部66内を一端側(前端側)に向けて開口する第1凹部66aと、他端側(後端側)に向けて開口する第2凹部66bとに区画している。
前記第2凹部66bの内側には回転軸16の一端側(前端側)が挿入され、該第2凹部66bの内周面と回転軸16の前端側周面とはスプライン嵌合されている。さらに、前記第1凹部66a内に挿入されたボルト76を前記区画部68を貫通させて回転軸16の一端に螺合することにより、ハブ65は回転軸16と一体回転可能になっているとともに、スプライン嵌合によって、ハブ65の回転動力が回転軸16に伝達されるようになっている。なお、ボルト76によってハブ65は回転軸16に固定されているため、ハブ65は回転軸16の軸方向へ移動不能になっている。
ハブ65のハブ部67において、フロントハウジング12側の端面(後端面)は、連結筒部61dのハブ65側の端面(前端面)と対向している。また、ハブ部67の周面67sと連結筒部61dの周面61sとは、回転軸16の軸方向に沿って同一周面上に連続するように位置し、両周面67s,61sは同一径となっている。
前記ハブ65よりも電磁スプリングクラッチ60の機構外側には、アーマチャプレート78が連結されている。このアーマチャプレート78は、ハブ65を覆うように略円筒状に形成されたカバー69と、該カバー69に支持され、前記ロータ61と対向する位置に配設された環状のアーマチャ72とから形成されている。アーマチャプレート78のカバー69には、締結部材79を貫通可能な貫通孔69aが複数箇所に形成されている。そして、貫通孔69aを貫通した締結部材79をハブ65(ハブ部67)の前面に螺合することによって、アーマチャプレート78が、ハブ65よりも機構外側となるハブ65の前端側に連結されている。貫通孔69aと締結部材79との間にはクリアランスCLが形成され、アーマチャプレート78は、締結部材79の軸方向、すなわち回転軸16の軸方向に沿って移動可能になっている。ハブ65にアーマチャプレート78が連結された状態において、前記第1凹部66aはアーマチャプレート78(カバー69)の中央部と対向する位置にある。
前記カバー69において、ロータ61側となる後端には外方へ延びる延設部69bが設けられ、該延設部69bに前記アーマチャ72が支持されている。前記アーマチャ72は磁性材よりなる。そして、アーマチャプレート78において、カバー69がハブ65の前端側(回転軸の軸方向一端側)に対向配置されているとともに、アーマチャ72がロータ61の前端側(回転軸の軸方向一端側)に対向配置されている。アーマチャ72において、ロータ61に対向する面によりアーマチャ側摩擦面72fが形成され、ロータ61において前記アーマチャ側摩擦面72fに対向する面にロータ側摩擦面61fが形成されている。このアーマチャ側摩擦面72fとロータ側摩擦面61fとの間には一定の空隙S1が形成されている。
前記ハブ65において、筒状部66の第1凹部66aは、前記ハブ部67の周面67s及び連結筒部61dの周面61sと同心状に位置している。そして、この第1凹部66a内には、付勢部材としてのコイルバネ74が収容されている。このコイルバネ74は、一端(前端)が前記アーマチャプレート78(カバー69)の中央部に当接固定され、他端(後端)が前記区画部68に当接固定されている。すなわち、コイルバネ74は、回転軸16のアーマチャプレート78側の端部(回転軸16の軸方向一端部(前端部))よりも前側(アーマチャプレート78側)に設けられ、該回転軸16とアーマチャプレート78との間に収容配置されている。
そして、コイルバネ74は、アーマチャプレート78をロータ61から離反する方向へ付勢している。なお、前記締結部材79にカバー69が当接することにより、離反する方向へ付勢されたアーマチャプレート78のそれ以上の移動が規制されている。また、アーマチャプレート78がロータ61に向けて移動した際には、コイルバネ74は収縮するようになっている。
締結部材79によってアーマチャプレート78の移動が規制された状態では、カバー69の後面とハブ65の前面との間には一定の空隙S2が形成されている。この空隙S2は、前記アーマチャ側摩擦面72fとロータ側摩擦面61fとの間に形成される空隙S1より広くなっている。
そして、アーマチャプレート78は、電磁コイル62が正方向への通電によって励磁され、その電磁力に基づく吸引力がアーマチャ72に作用すると、アーマチャプレート78(アーマチャ72)はコイルバネ74の付勢力に抗してロータ61側へ移動するようになっている。一方、アーマチャプレート78は、電磁コイル62が逆方向への通電によって励磁されると、前記正方向へ通電した場合とは逆方向への磁束が生じ、前記正方向への磁束が打ち消されることとなり、アーマチャプレート78はコイルバネ74の復帰力によってロータ61から離反する方向へ移動するようになっている。
電磁スプリングクラッチ60において、前記ハブ65のハブ部67には、巻ばねよりなるスプリングクラッチ71の一端71aが取り付けられている(図1参照)。また、アーマチャ72には前記スプリングクラッチ71の他端71bが取り付けられている。そして、ハブ部67の周面67s及び連結筒部61dの周面61sには、両周面67s,61sを跨ぐようにスプリングクラッチ71が巻装され、該スプリングクラッチ71によってハブ部67の周面67sとロータ61の周面61sが取り囲まれている。また、スプリングクラッチ71は、連結筒部61dの周面61s及びハブ部67の周面67sと、アーマチャプレート78(カバー69)の内周面69dとの間に区画される空間に配設されている。
スプリングクラッチ71は、アーマチャ72がロータ61に吸引されていない状態では、ハブ部67の周面67s及び連結筒部61dの周面61sの外径より大径をなし、スプリングクラッチ71は両周面61s,67sから離間している。一方、図3に示すように、スプリングクラッチ71は、アーマチャ72がロータ61に吸引された状態では、ハブ部67の周面67s及び連結筒部61dの周面61sの外径より小径となり、スプリングクラッチ71は両周面61s,67sに巻き付くようになっている。
次に、上記構成の電磁スプリングクラッチ60の動作について説明する。図2に示す状態において、電磁コイル62が正方向への通電によって励磁されると、その電磁力に基づく吸引力がアーマチャ72に作用される。すると、図3に示すように、アーマチャプレート78(アーマチャ72)は、コイルバネ74の付勢力に抗してロータ61側へ吸引される(移動する)。すなわち、アーマチャプレート78は、回転軸16の軸方向に沿って前記空隙S1分だけロータ61側へ移動する。そして、アーマチャ側摩擦面72fがロータ側摩擦面61fに吸引され、アーマチャ側摩擦面72fがロータ側摩擦面61fに吸着する。すると、ロータ61とアーマチャ72とが吸着(連結)され、アーマチャプレート78を介してロータ61とハブ65とが連結される。
ここで、スプリングクラッチ71の他端71bはアーマチャ72に取り付けられているため、アーマチャ72のロータ61側への移動に伴いスプリングクラッチ71は捻られ、縮径する。すると、スプリングクラッチ71が、ハブ65の周面67s及びロータ61の周面61sを巻締め、該スプリングクラッチ71によってハブ部67と連結筒部61d、すなわちハブ65とロータ61とが連結される。その結果、ロータ61とハブ65は、電磁コイル62の電磁力に基づく吸引力と、スプリングクラッチ71による巻締め力とによって強固に連結される。
また、ロータ61とアーマチャ72の連結状態では、該ロータ61とアーマチャ72との間には、永久磁石73から正方向へ流れる磁束路が生じており、該磁束路によってアーマチャ72がロータ61に吸着され、ロータ側摩擦面61fとアーマチャ側摩擦面72fとの間の摩擦力によりロータ61とアーマチャ72の吸着状態が維持される。そして、この吸着状態が維持されることによって、スプリングクラッチ71が引っ張られた状態、すなわち、スプリングクラッチ71がハブ部67の周面67s及び連結筒部61dの周面61sを巻締めた状態が維持される。そして、電磁コイル62の正方向への通電を遮断した後は、永久磁石73による吸引と、スプリングクラッチ71による巻締めとによって電磁スプリングクラッチ60の連結状態が維持され、電磁スプリングクラッチ60によって、エンジンEから回転軸16への動力伝達が可能となる。
一方、電磁コイル62が逆方向への通電によって励磁されると、前記正方向へ通電した場合とは逆方向への磁束が生じ、前記正方向への磁束が打ち消されることとなり、アーマチャプレート78(アーマチャ72)はコイルバネ74の復帰力によって、回転軸16の軸方向に沿ってロータ61のロータ側摩擦面61fから離反する方向へ移動する。その結果、電磁スプリングクラッチ60は非連結状態となり、ロータ61及びアーマチャ72間の連結、すなわち、ロータ61とハブ65との連結が解除され、エンジンEから回転軸16への動力伝達は不可能となる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電磁スプリングクラッチ60において、アーマチャプレート78をロータ61から離反する方向へ付勢するコイルバネ74は、ハブ65内に収容されるとともに、回転軸16のアーマチャプレート78側の端部(前端部)と該アーマチャプレート78との間に配置されている。このため、コイルバネ74は、電磁スプリングクラッチ60の機構内に収容されており電磁スプリングクラッチ60の体格の大型化が抑制されている。
(1)電磁スプリングクラッチ60において、アーマチャプレート78をロータ61から離反する方向へ付勢するコイルバネ74は、ハブ65内に収容されるとともに、回転軸16のアーマチャプレート78側の端部(前端部)と該アーマチャプレート78との間に配置されている。このため、コイルバネ74は、電磁スプリングクラッチ60の機構内に収容されており電磁スプリングクラッチ60の体格の大型化が抑制されている。
(2)電磁スプリングクラッチ60において、アーマチャプレート78をハブ65とは独立して回転軸16の軸方向へ移動可能に設け、該アーマチャプレート78をコイルバネ74によってロータ61から離反する方向へ付勢する構成とした。そして、ロータ61に入力された回転動力は、アーマチャプレート78を介してハブ65に伝達される。このため、回転軸16に回転動力を直接伝達するハブ65を、回転軸16に対してその軸方向へ移動させる必要がなくなり、ハブ65と回転軸16との間に軸方向への移動を可能とするクリアランス(連結手段)を設ける必要がなくなる。よって、回転軸16とハブ65との間に大きなクリアランスを形成する必要がなく、該クリアランスの存在によってハブ65が回転軸16に対してがたついたり、ハブ65が回転軸16に対してスムーズに移動しなくなって電磁スプリングクラッチ60の作動性が悪化するということを防止することができる。
(3)電磁スプリングクラッチ60は、スプリングクラッチ71を備えるため、該スプリングクラッチ71を巻き付かせる周面61s,67sが必要となる。そして、コイルバネ74は、周面61s,67sと同心状をなす第1凹部66a内に収容されている。よって、スプリングクラッチ71を備えた電磁スプリングクラッチ60の内側にコイルバネ74を設けた構成としても、その体格が大型化することがない。
(4)コイルバネ74は、アーマチャプレート78の中央部をその一端で押圧し、アーマチャプレート78をロータ61から離反する方向へ付勢している。このため、アーマチャプレート78はコイルバネ74に付勢された状態では、回転軸16の軸方向に対して傾くことなく支持されている。よって、アーマチャプレート78の傾きによってアーマチャ側摩擦面72fがロータ側摩擦面61fに対して傾いてしまうことが防止される。したがって、アーマチャ72をロータ61に確実に吸着させることができ、電磁スプリングクラッチ60の作動性を正確なものとすることができる。
(5)電磁コイル62の正方向への通電の遮断後は、永久磁石73からの磁束路によってアーマチャ72とロータ61が連結されているとともに、スプリングクラッチ71によってロータ61とハブ65が連結された状態で動力伝達が行われる。したがって、電磁スプリングクラッチ60においては、例えば、電磁コイル62への通電の遮断後は、永久磁石73から生じる磁束路だけでロータ61とアーマチャ72が連結される場合に比して、電磁スプリングクラッチ60による連結力を大きくすることができる。よって、電磁スプリングクラッチ60によってエンジンEから回転軸16へ伝達可能とする動力を大きくすることができる。その結果として、電磁コイル62への通電遮断後に伝達可能な動力を大きくするために、永久磁石73を大型化して磁束路の磁束密度を高くしたり、ロータ側摩擦面61fとアーマチャ側摩擦面72fとを大きくして摩擦力を大きくしたりする必要がない。よって、電磁スプリングクラッチ60の体格を大型化することなく伝達可能な動力を大きくすることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図4に示すように、電磁スプリングクラッチ60において、ロータ61内の永久磁石73を省略してもよい。
○ 図4に示すように、電磁スプリングクラッチ60において、ロータ61内の永久磁石73を省略してもよい。
○ 付勢部材を、アーマチャプレート78に固着された磁石と、第1凹部66a内に収容された磁石とから構成し、両磁石を同極を対向させて配置してもよい。
○ 永久磁石73において、磁束の流れを生じさせる向きを反転させ、電磁コイル62への逆方向への通電によってアーマチャ72をロータ61に吸引させて電磁スプリングクラッチ60を連結状態とし、正方向への通電によってアーマチャ72をロータ61から離間させて電磁スプリングクラッチ60を非連結状態とする構成としてもよい。
○ 永久磁石73において、磁束の流れを生じさせる向きを反転させ、電磁コイル62への逆方向への通電によってアーマチャ72をロータ61に吸引させて電磁スプリングクラッチ60を連結状態とし、正方向への通電によってアーマチャ72をロータ61から離間させて電磁スプリングクラッチ60を非連結状態とする構成としてもよい。
○ 冷媒圧縮機10を、片頭型のピストン27に圧縮動作を行なわせる片側式の圧縮機ではなく、制御圧室15を挟んで前後両側に設けられたシリンダボア26において両頭型のピストンに圧縮動作を行なわせる両側式の圧縮機としてもよい。
○ 冷媒圧縮機10を、斜板24が回転軸16と一体回転する構成に代えて、回転支持体22が回転軸16に対して相対回転可能に支持されて揺動するタイプ、例えば、揺動(ワッブル)式圧縮機としてもよい。
○ 冷媒圧縮機10は、ピストン27のストロークを変更不可能な固定容量タイプであってもよい。
○ 回転機械として、ピストン27が往復動を行うピストン式の冷媒圧縮機10に具体化したが、電磁スプリングクラッチ60によって外部駆動源から動力が伝達される回転機械であれば、どのようなものに適用してもよい。
○ 回転機械として、ピストン27が往復動を行うピストン式の冷媒圧縮機10に具体化したが、電磁スプリングクラッチ60によって外部駆動源から動力が伝達される回転機械であれば、どのようなものに適用してもよい。
○ 第2回転体として、ロータ61以外にも、スプロケットやギヤ等を適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)回転軸を有するとともに該回転軸に外部駆動源から動力を伝達するための動力伝達機構を備えた回転機械において、前記動力伝達機構として、請求項1又は請求項2に記載の動力伝達機構を設けた回転機械。
(2)前記回転軸の回転に基づいて駆動される圧縮機構を有する技術的思想(1)に記載の回転機械。
E…外部駆動源としてのエンジン、10…回転機械としての冷媒圧縮機、11…ハウジングを構成するシリンダブロック、12…ハウジングを構成するフロントハウジング、14…ハウジングを構成するリヤハウジング、16…回転軸、60…動力伝達機構としての電磁スプリングクラッチ、61…第2回転体としてのロータ、61s…第2回転体の周面、62…電磁コイル、65…第1回転体としてのハブ、67s…第1回転体の周面、71…スプリングクラッチ、74…付勢部材としてのコイルバネ、78…アーマチャプレート。
Claims (2)
- 回転機械の回転軸と一体回転する第1回転体と、回転機械のハウジングに回転可能に支持されるとともに前記第1回転体と同軸に位置し外部駆動源からの動力が入力される第2回転体とを連結し、前記外部駆動源からの動力を回転軸へ伝達可能とする動力伝達機構であって、
前記第1回転体よりも機構外側には、回転軸の軸方向に沿って移動可能であり、前記第2回転体内の電磁コイルへの通電によって第2回転体に吸着されるアーマチャプレートが連結され、前記回転軸の軸方向に沿って同一周面上に位置する前記第1回転体の周面、及び前記第2回転体の周面には、前記アーマチャプレートが第2回転体に吸着された状態で第1回転体と第2回転体を連結するスプリングクラッチが巻装され、前記第1回転体内には前記回転軸のアーマチャプレート側の端部と該アーマチャプレートとの間に位置し、アーマチャプレートを第2回転体から離反する方向へ付勢する付勢部材が収容されている動力伝達機構。 - 前記付勢部材における前記アーマチャプレート側の端部は、アーマチャプレートの中央部に固定されている請求項1に記載の動力伝達機構。
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