JP2008037152A - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】強制用途による車速制限中に一時的に車速制限を解除してドライバーの利便性及び安全性を向上させる。
【解決手段】本発明における車両の駆動力制御装置は、車速及びアクセルペダル踏み込み量に基づいて車両の目標加速度を演算する目標加速度演算手段(21)と、車速が所定の制限車速を超えないように目標加速度に基づいて制限目標加速度を演算する制限目標加速度演算手段(22)と、制限目標加速度に基づいて車両の駆動力を演算する駆動力演算手段(23)とを備え、制限目標加速度演算手段(22)は、車速を所定の制限車速に制限しているときであって、アクセルペダル踏み込み量が増大したとき、車速が制限車速を超えるように制限目標加速度を演算し、その後車速が制限車速まで再度低下するように制限目標加速度を演算する。
【選択図】図3

Description

本発明は、車両の駆動力制御装置に関するものである。
車両の速度を制限する装置が知られており、このような装置は用途に応じて主に2つに分類される。1つはドライバーが任意に車速の制限値を設定することで、制限車速を超えないように走行することが可能となる補助的な用途であり(以下、「補助用途」という)、もう1つは法令に従って国、市町村及び道路管理者などが対象車両の速度を強制的に制限する用途(以下「強制用途」という)である。
上記のような車速制限装置を搭載する車速制限車両と搭載していない非制限車両とが道路に混在する状況では、ドライバーにとって不便な状況や危険な状況が想定される。例えば、高速道路において車速制限車両の車速が80km/hに制限されている場合であって、車速制限車両の前方に車速制限車両より少しだけ遅い車両がいる場合、追い越しに時間が掛かり不便である。また、高速道路(特に追越車線)では80km/hを超える高速車両が走行しているが、このような高速車両が頻繁に走行している車線(例えば追越車線)に追い越しや合流または危険回避等のために車線変更する場合には車速制限車両が非制限車両から追突される可能性がある。なお、このような状況は一般道であっても同様である。
そこで、ドライバーの意思により一時的に車速を制限値以上に上げることができる機能(以下「オーバーライド機能」という)を有する車速制限装置が知られている。特許文献1には、任意に変更可能な制限車速と法令により強制される制限車速とのうち、小さい方で車速を制限する装置において、手動スイッチ、またはアクセルの2回踏込みによって補助用途による車速制限を解除し、強制用途による制限車速まで加速する点が開示されている。
特開2003−227365公報
しかし、上記従来の技術では補助用途による車速制限を解除することはできるが、強制用途による車速制限を解除することはできないので、前述のように追い越しの際に不便であり、また追い越しや合流の際に追突される可能性がある。
ここで、補助用途による車速制限の解除と同様に強制用途による車速制限を解除することが考えられるが、解除状態を維持したまま走行できるので車速制限装置の効果が失われる。
本発明は、強制用途による車速制限中に一時的に車速制限を解除してドライバーの利便性及び安全性を向上させることを目的とする。
本発明の車両の駆動力制御装置は、車速及びアクセルペダル踏み込み量に基づいて車両の目標加速度を演算する目標加速度演算手段と、車速が所定の制限車速を超えないように目標加速度に基づいて制限目標加速度を演算する制限目標加速度演算手段と、制限目標加速度に基づいて車両の駆動力を演算する駆動力演算手段とを備え、制限目標加速度演算手段は、車速を所定の制限車速に制限しているときであって、アクセルペダル踏み込み量が増大したとき、車速が制限車速を超えるように制限目標加速度を演算し、その後車速が制限車速まで再度低下するように制限目標加速度を演算する。
本発明によれば、車速が所定の制限車速に制限されていても追い越しなどのためにアクセルペダルを踏み込むことによって車速が一時的に制限車速を超えるので、制限車速で走行中に前方の車両を追い越す場合などに迅速な追い越しが可能となってドライバーの利便性及び安全性を向上させることができる。
以下では図面等を参照して本発明の実施の形態について詳しく説明する。図1は本実施形態における車両の駆動力制御装置を示すシステム構成図である。
制御開始SW1は、駆動力制御を実行するか否かを検出する。SWがオン状態の場合は、駆動力制御実行と判断する。SWがオフの場合は、駆動力制御を停止する。
ブレーキSW2は、ドライバーがブレーキを踏んでいるか否かを検出する。ブレーキを踏んでいる場合、オン状態となり、ブレーキを離している場合、オフ状態となる。
アクセル開度センサ3は、ドライバーのアクセルペダル踏込み量APOを検出する。
駆動輪速センサ4は、左右の各駆動輪毎に車輪速度を検出する。駆動力制御ECU9では左右の駆動輪速を平均化して実車速aVSPを演算する。
トランスミッションECU7は、駆動力制御ECU9に対し、実変速比aRAT10を出力する。
駆動力制御ECU9は、マイクロコンピューターとその周辺部品により構成され、制御周期(例えば10ms)毎に制御開始SW1、ブレーキSW2、アクセル開度センサ3、駆動輪速センサ4、トランスミッションECU7からの信号を取込んで、エンジンECU5、トランスミッションECU7に指令値を出力する。
駆動力制御ECU9は、図1に示すように、マイクロコンピューターのソフトウェア形態により構成される制御開始判定部10、駆動力制御部20及び駆動力配分部30を備え、スロットルバルブとトランスミッションを用いることによって車両の加速度を制御する。
エンジンECU5は、駆動力制御ECU9から出力されたエンジントルク指令値cTEをもとにスロットル開度を算出し、スロットルACTR6にスロットル開度信号を出力する。スロットルACTR6は、スロットル開度信号に従ってエンジンのスロットルバルブを制御する。トランスミッションECU7は、駆動力制御ECU9から出力されたATシフト位置指令値sftPOSをもとに変速機のシフト位置を制御する。本実施形態では有段ATを使用しているが、無段階変速が可能なCVTを使用してもよい。
次に図2のフローチャートを参照して制御開始判定部10の動作について説明する。
ステップS1では、制御開始SW1からの信号を取込んでSWがオン状態であるか、オフ状態であるかを判定する。オン状態である場合はステップS2へ進み、オフ状態である場合はステップS4へ進む。
ステップS2では、ブレーキSW2からの信号を取込んでSWがオン状態であるか、オフ状態であるかを判定する。オン状態である場合はステップS4へ進み、オフ状態である場合はステップS3へ進む。
ステップS3では制御実行フラグfSTARTを1として処理を終了する。制御実行フラグが1の場合、駆動力制御は実行される。
ステップS4では制御実行フラグfSTARTを0として処理を終了する。制御実行フラグfSTARTが0の場合、駆動力制御は停止される。ドライバーがブレーキを踏んでいる場合は、スロットル開度と変速機のシフト位置では目標加速度tAccに実加速度aACCを追従させることができないため、フラグを0として制御を停止する。
制御実行フラグfSTARTは、駆動力制御ECU9からエンジンECU5、トランスミッションECU7に出力され、エンジンECU5及びトランスミッションECU7はフラグに従って以下のように制御される。
制御実行フラグfSTARTが1の場合、エンジンECU5は駆動力制御実行状態と判定し、駆動力制御ECU9から出力されたエンジントルク指令値cTEに基づいたエンジントルクを出力するようにスロットルACTR6を制御する。制御実行フラグfSTARTが0の場合、エンジンECU5は駆動力制御停止状態と判定し、アクセル踏込み量APOに応じたエンジントルクを出力するようにスロットルACTR6を制御する。
同様に制御実行フラグfSTARTが1の場合、トランスミッションECU7は駆動力制御実行状態と判定し、駆動力制御ECU9から出力されたATシフト位置指令値sftPOSに変速機のシフト位置を設定する。制御実行フラグfSTARTが0の場合、トランスミッションECU7は駆動力制御停止状態と判定し、アクセル踏込み量APOと実車速aVSPに応じた変速機のシフト位置を設定する。
次に図1の駆動力制御部20の動作について図3のブロック図を用いて説明する。駆動力制御部20は、目標加速度マップ21(目標加速度演算手段)、車速制限部22(制限目標加速度演算手段)、駆動力変換部23(駆動力演算手段)、フィードフォワード補償部24、フィードバック補償部25から構成されアクセル踏込み量APO、実車速aVSP、制限車速limVSPからエンジントルク指令用要求駆動力demFENGとATシフト位置指令用要求駆動力demFATを算出する。
エンジントルク指令用要求駆動力demFENGは、フィードフォワード補償部24の出力のエンジントルク指令用要求駆動力FF出力ffFENGに、フィードバック補償部25の出力の要求駆動力FB出力fbFを加算して算出される。また、ATシフト位置指令用要求駆動力demFATは、フィードフォワード補償部24の出力のATシフト位置指令用要求駆動力FF出力ffFATに、フィードバック補償部25の出力の要求駆動力FB出力fbFを加算して算出する。なお、各部の詳細については後述する。
目標加速度マップ21は、図4のマップを参照してアクセル踏込み量APOと実車速aVSPに基づいて目標加速度tACCを決定する。図4に示すように目標加速度tACCは、アクセル踏込み量が大きいほど大きく、車速が高いほど小さくなるように設定される。
車速制限部22は、実車速aVSPを制限車速limVSPに制限するように目標加速度tACCから制限目標加速度tACCLimFinを算出する。また、アクセル踏込み量APOによって一時的に制限車速limVSPを超えて走行可能なオーバーライド機能を有する。制限車速limVSPの設定値はドライバーが手動で設定するものであってもよいし、ナビゲーションシステムによって自動で設定されるものであってもよい。
駆動力変換部23は、車速制限部22から出力された制限目標加速度tACCLimFinに対して車両質量Mを乗算することで目標駆動力tFを算出する。
ここで、図3の車速制限部22の制御について図5を用いて詳細に説明する。車速制限部22は、目標加速度tACC、アクセル踏込み量APO、実車速aVSP、制限車速limVSPを入力値として、制限目標加速度tACCLimFinを算出する。車速制限補償器221(フィルタ)は、目標加速度tACCと加速度オフセット量offACCとを加算した値を入力値inputLimとし、適合パラメータga(フィルタの分子の定数項)、gblim(フィルタの分子の1次ゲイン)、gc(フィルタの分母の1次ゲイン)を変更することで、応答特性が変化するフィルタである。具体的な構成を以下の(1)式に示す。
なお、実際にはタスティン近似などで離散化して得られた漸化式を用いて演算する。また、本実施形態の車速制限補償器221は分母と分子がそれぞれ1次であるが、これに限定されるものではない。
gaマップ222は、図6のマップを参照して実車速aVSPと制限車速limVSPの差である速度差dVSPに基づいて適合パラメータgaを算出する。なお、図6中のVSP_Aは運転フィーリング等の評価実験によって決定する適合パラメータである。
gcマップ223は、図7のマップを参照してアクセル踏込み量APOに基づいて適合パラメータgcを算出する。なお、図7のマップは運転フィーリング等の評価実験によって車種、用途に応じてマップデータを決定する。
gbマップ224は、図8のマップを参照してアクセル踏込み量APOに基づいて適合パラメータgbを算出する。なお、図8は運転フィーリング等の評価実験によって車種、用途に応じてマップデータを決定する。
最小値選択225は、適合パラメータgb及びgcのうち小さい方の値を適合パラメータgblimとする。
加速度オフセットマップ226は、図9のマップを参照して実車速aVSPと制限車速limVSPの差である速度差dVSPに基づいて加速度オフセット量offACCを算出する。なお、図9中のVSP_B、offACC_Bは運転フィーリング等の評価実験によって決定する適合パラメータである。
最大値選択227は、車速制限補償器221の出力outputLimの下限値をゼロに制限する。
最小値選択228は、最大値選択227の出力から加速度オフセット量offACCを減算して得られる暫定制限目標加速度tACCLimと、目標加速度tACCとのうち小さい方の値を制限目標加速度tACCLimFinとする。
次に、図3のフィードフォワード補償部24の制御について図10を用いて詳細に説明する。フィードフォワード補償部24は、目標駆動力tFと実車速aVSPを入力値として、エンジントルク指令用要求駆動力FF出力ffFENGとATシフト位置指令用要求駆動力FF出力ffFATを算出する。
位相補償器Ga(s)241は、制御対象の加速度応答を規範応答モデルGre(s)に一致させるように目標駆動力に対して位相補償を施し、エンジントルク指令用要求駆動力FF出力ffFENGを演算する。位相補償器Ga(s)241の伝達特性は、規範応答モデルGre(s)に制御対象のエンジントルク応答特性Ge(s)の逆系をかけた式で表される。本実施形態では、規範応答モデルGre(s)及びエンジントルク応答特性Ge(s)ともに一次の伝達関数を用いており、位相補償器Ga(s)241は、以下の(2)式に示すとおりである。
ここで、Treは規範応答モデルの時定数、Teはエンジン特性の時定数である。なお、実際にはタスティン近似などで離散化して得られた漸化式を用いて演算する。
規範応答モデル時定数マップ242は、実車速aVSPを入力として規範応答モデルGre(s)の時定数Treを決定する。時定数Treは例えば図11のマップを参照して実車速aVSPに基づいて演算される。なお、図11のマップを使用した場合、実車速aVSPがVSP1以下の場合は進み補償となり、VSP1以上の場合には遅れ補償となる。
規範応答モデルGre(s)の時定数Treは、前述の方法以外にも運転環境やドライバー特性などにより決定する方法等がある。
要求駆動力切替SW243は、位相補償器Ga(s)241が進み補償となる場合と、遅れ補償となる場合とで、シフト位置を決定する要求駆動力を切替選択する。位相補償器Ga(s)241が遅れ補償となる場合には、ATシフト位置指令用要求駆動力FF出力ffFATを要求駆動力FF出力ffFとし、位相補償器Ga(s)241が進み補償となる場合には、ATシフト位置指令用要求駆動力FF出力ffFATを目標駆動力tFとする。
なお本実施形態では、位相補償器Ga(s)241が進み補償となる場合に目標駆動力tFを要求駆動力切替SW243の入力(Bポート)としているが、必要に応じて規範応答モデルGre(s)や、その他の遅れ特性を有する補償器により、目標駆動力tFを補正した出力を要求駆動力切替SW243の入力(Bポート)としてもよい。
次に、図3のフィードバック補償部25の制御について図12を用いて詳細に説明する。フィードバック補償部25は、制限目標加速度tACCLimFin、実車速aVSPを入力値として、要求駆動力FB出力fbFを算出する。
エンジンモデルGb(s)251は、規範応答モデルGre(s)の制御対象と同じ無駄時間Tdが設定された無駄時間処理により構成される。またフィードフォワード補償部24の規範応答モデルGre(s)と同様に、規範応答モデル時定数マップ254の出力に応じてエンジンモデルGb(s)251の特性は変化する。
加速度変換部252では、実車速aVSPに対し近似微分処理を施し、実加速度aACCを演算する。実加速度aACCは、例えば以下の(3)式に示すような1次のハイパスフィルタGhpf(s)を用いて演算する。
ただし、Taはハイパスフィルタ時定数である。
フィードバック補償器253は、エンジンモデルGb(s)251の出力と実加速度aACCの偏差を入力とし、実加速度aACCが制限目標加速度tACCLimFinに一致するよう要求駆動力FB出力fbFを算出する。要求駆動力FB出力fbFにより、制御対象のモデル化誤差、路面勾配や走行抵抗などの各種外乱の影響を抑える。フィードバック補償器は、図12に示すような比例ゲインKp、積分ゲインKI、微分ゲインKDからなるPID補償器を用いる。
次に、図1の駆動力配分部の制御について図13を用いて詳細に説明する。駆動力配分部30では、実車速aVSP、実変速比aRATIO、エンジントルク指令用要求駆動力demFENG、ATシフト位置指令用要求駆動力demFATを入力として、ATシフト位置指令値shtPOSとエンジントルク指令値cTEを算出する。
ATシフト位置指令値マップ31は、図14を参照して実車速aVSPとATシフト位置指令用要求駆動力demFATからATシフト位置指令値sftPOSを決定する。
エンジントルク指令値算出部32は、エンジントルク指令用要求駆動力demFENG及び実変速比aRATIOにより、以下の(4)式に従ってエンジントルク指令値cTEを算出する。
ここで、rTIREはタイヤ有効半径、Gfは最終減速比である。
駆動力配分部30にて算出されたATシフト位置指令値sftPOSは、図1に示すようにトランスミッションECUへ出力される。エンジントルク指令値cTEはエンジンECUへ出力される。
次に本実施形態の作用について図15〜図34のブロック図及びタイムチャートを参照して説明する。以下に示すブロック図は本実施形態の特徴部分を抜き出して説明するものである。また、目標加速度tACCを「通常加速指令」として、制限目標加速度tACCLimFinを「制限加速指令」として説明する。
本実施形態では、図15に示すように運転者のアクセル操作に基づいて演算される目標加速度tACCにフィルタ処理を行い、フィルタの出力を制限目標加速度tACCLimFinとする。また、図16に示すようにフィルタの分子と分母の次数を1次とする。これらは車速制限部22の車速制限補償器Glim(s)221に相当するものである。
図17は図15、図16に示す制御による作用を示すタイムチャートである。車両が制限車速limVSP以下で走行中、時刻t1においてアクセル開度が増大し、加速指令が通常時と同様に増大し、車速が増大していく。時刻t2において、車速aVSPが制限車速limVSPに到達すると加速指令は制限されてゼロとなり、車速は一定となる。この状態で時刻t3においてドライバーがさらにアクセルペダルを踏み増すと、車速制限中であるが一時的に加速指令を増大させ車速aVSPが制限車速limVSPを超えて加速する。
また本実施形態では、図18に示すように実車速aVSPが制限車速limVSP以上であるときフィルタの分子の定数項をゼロとする。この制御は車速制限部22のgaマップ222における制御に相当する。フィルタの分子の定数項をゼロとすることでフィルタはハイパスフィルタとなり、入力信号の定常成分を除去した信号が出力される。ハイパスフィルタは入力信号の近似微分値を出力信号とするフィルタであり、入力信号が変化しない場合には出力信号がゼロに収束する。
図19は図18に示す制御による作用を示すタイムチャートである。車両が制限車速limVSP以下で走行中、時刻t1においてアクセル開度が増大し、加速指令が通常時と同様に増大し、車速aVSPが増大していく。時刻t2において、車速aVSPが制限車速limVSPに到達すると加速指令は制限されてゼロとなり、車速aVSPは一定となる。さらに、フィルタの分子の定数項がゼロとなる。この状態で時刻t3においてドライバーがさらにアクセルペダルを踏み増すと、車速制限中であるが一時的に加速指令を増大させ車速aVSPが制限車速limVSPを超えて加速する。加速指令はその後アクセル開度が変化しなければゼロに収束する。
さらに本実施形態では、図20に示すように実車速aVSPが制限車速limVSP以上であるとき、フィルタの分子の1次ゲインGbを分母の1次ゲインGc以下に設定する。この制御は車速制限部22の最小値選択225における制御に相当する。
図21は図20に示す制御による作用を示すタイムチャートである。車速aVSPが制限されて制限車速limVSPで走行中、時刻t1においてアクセル開度が増大すると加速指令が増大するが、フィルタの分子のゲインGbを分母のゲインGc以下に設定しているので、最大でも通常加速指令を超えることはない。これにより、車速も通常時以上になることはない。
さらに本実施形態では、図22に示すようにフィルタの分母の1次ゲインGcをアクセル開度APOに応じて変化させる。この制御は車速制限部22のgcマップ223における制御に相当する。ゲインGcはフィルタの時定数Treに相当し、フィルタの入力信号がステップ状に変化したときに、フィルタの出力信号が一旦増加した後ゼロに収束するまでの時間を調整することができる。
図23は図22に示す制御による作用を示すタイムチャートである。車速aVSPが制限されて制限車速limVSPで走行中、時刻t1においてアクセル開度が増大すると制限加速指令が増大した後、徐々にゼロに収束する。このとき、時刻t1においてドライバーがアクセルペダルを踏み増す前の時点でのアクセル開度が高いほど、ゲインGcが大きく設定されるので制限加速指令がゼロに収束するまでに要する時間が長くなり、車速が高くなる。
さらに本実施形態では、図24に示すようにフィルタの出力値の上限及び下限を制限する。この制御は車速制限部22の最大値選択227及び最小値選択228における制御に相当する。フィルタの入力値は各種センサの出力に基づいて演算されるが、センサの電気信号に電気ノイズなどの外乱が生じた場合、フィルタの出力値が極めて大きな値となり車両が急加速したり、極めて小さな値となり車両が急減速したりする場合がある。そこで、フィルタの出力値の上限及び下限を制限することで出力値を所望の範囲内に制限する。
さらに本実施形態では、図25に示すようにフィルタの出力の下限値をゼロに設定する。この制御は車速制限部22の最大値選択227における制御に相当する。
図26は図25に示す制御による作用を示すタイムチャートである。車速aVSPが制限されて制限車速limVSPで走行中、時刻t1においてアクセル開度が増大すると制限加速指令が増大した後、徐々にゼロに収束していく。時刻t2においてドライバーがアクセルペダルを急激に戻すと制限加速指令が急激に低下するが、フィルタの出力の下限値をゼロに設定しているので、マイナス出力となることはない。これにより車両が急激に減速することはない。
さらに本実施形態では、図27に示すように実車速aVSPと制限車速limVSPとの差に応じたオフセット量をフィルタの出力値から減算することで制限加速指令値を演算する。この制御は車速制限部22の加速度オフセットマップ226の出力値を最大値選択227の出力値から減算する制御に相当する。
図28は図27に示す制御による作用を示すタイムチャートである。車両が制限車速limVSP以下で走行中、時刻t1においてアクセル開度が増大し、加速指令が通常時と同様に増大し、車速aVSPが増大していく。時刻t2において、車速aVSPが制限車速limVSPに到達すると加速指令は制限されてゼロとなり、車速aVSPは一定となる。さらに、フィルタの分子の定数項Gaがゼロとなる。この状態で時刻t3においてドライバーがさらにアクセルペダルを踏み増すと、車速制限中であるが一時的に加速指令を増大させ車速aVSPが制限車速limVSPを超えて加速する。このとき、車速aVSPが上昇して車速aVSPと制限車速limVSPとの差が大きくなるほどオフセット量が増大するので、加速指令値がマイナス側にオフセットされ、これにより時刻t4において車速aVSPが制限車速limVSPまで低下する。車速aVSPが制限車速limVSPまで低下することでオフセット量がゼロとなり加速指令値がゼロとなる。
さらに本実施形態では、図29に示すように実車速aVSPと制限車速limVSPとの差に応じたオフセット量をフィルタの入力値に加算して制限加速指令値を演算する。この制御は車速制限部22の加速度オフセットマップ226の出力値を車速制限補償器Glim(s)221の入力値に加算する制御に相当する。
図30は図29に示す制御による作用を示すタイムチャートである。車速aVSPが制限されて制限車速limVSPで走行中、時刻t1においてアクセル開度が増大すると制限加速指令が増大した後、徐々にゼロに収束していく。このとき制限加速指令のピーク値は通常時の加速指令値と同一となる。
さらに本実施形態では、図31に示すように通常時の加速指令値と制限加速指令値とのうち小さい方を加速指令値とする。この制御は車速制限部22の最小値選択228における制御に相当する。
図32は図31に示す制御による作用を示すタイムチャートである。車速aVSPが制限されて制限車速limVSPで走行中、時刻t1においてアクセル開度が増大すると制限加速指令が増大した後、徐々に低下していく。時刻t2においてドライバーがアクセルペダルを急激に戻すと通常時の加速指令が制限加速指令より小さくなるので、加速指令を通常時の加速指令に切り換える。これにより、車速aVSPは通常走行時と同様に減速していく。
以上のように本実施形態では、車速aVSPが制限車速limVSPに制限されていても追い越しなどのためにアクセルペダルを踏み込むことによって車速aVSPが一時的に制限車速limVSPを超えるので、制限車速limVSPで走行中に前方の車両を追い越す場合などに迅速な追い越しが可能となってドライバーの利便性及び安全性を向上させることができる。
また、フィルタの伝達特性を運転状況に応じて変化させることで、実車速aVSPが制限車速limVSPより小さいときはドライバーの要求に応じて車両を加速させ、実車速aVSPが制限車速limVSPより大きいときはドライバーの要求に応じて一時的に車両が加速するように制御することができる。
さらに、実車速aVSPが制限車速limVSPに制限されている状態からドライバーのアクセル踏み込みによりアクセル開度APOが増加すると、制限加速指令は一時的に増加し、その後フィルタの入力値である通常加速指令の変化がないので出力値である制限加速指令はゼロに収束する。これにより、一時的に車速aVSPが制限車速limVSPを超えた後、ドライバーが操作することなく車速aVSPを制限車速limVSPまで低下させることができる。
さらに、フィルタの分子の1次ゲインGbを分母の1次ゲインGc以下に設定することで、オーバーライド時のアクセル開度APOに対する加速指令値の立ち上がりを車速制限のない通常時以下に抑制することができる。
さらに、ドライバーがアクセルペダルを踏み増す前の時点におけるアクセル開度APOに応じてゲインGcを変化させるので、制限加速指令がゼロに収束するまでに要する時間を調整でき、オーバーライド時の加速の伸びを調整することができる。
さらに、フィルタの出力値の上限及び下限を制限することで出力値を所望の範囲内に制限することができ車両の急加速及び急減速を防止することができる。
さらに、フィルタの出力の下限値をゼロに設定するので、オーバーライド時にドライバーが急激にアクセルペダルを戻しても車両が急減速することを防止できる。
さらに、オーバーライド時に車速aVSPが上昇して制限車速limVSPとの差が大きくなるに従ってオフセット量が増大し加速指令値が低下していくので、車速aVSPが一旦制限車速limVSPを超えた後、再度制限車速limVSPまで低下させることができる。また、オフセット量を調整することでオーバーライド後の減速感を調整することができる。
さらに、オーバーライド時にオフセット量をフィルタの入力側に加算するので、オーバーライド時の制限加速指令のピーク値がオフセット量によって変化することを防止して、オーバーライド時の加速特性と減速特性とをそれぞれ独立に設定することができる。
さらに、通常時の加速指令値と制限加速指令値とのうち小さい方を加速指令値とするので、オーバーライド時にドライバーがアクセルペダルを急激に戻したとき、通常の車両と同等の減速特性を実現することができる。
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、図33に示すように実車速aVSPが制限車速limVSPより低い場合、フィルタ処理を行うことなく制限加速指令値を通常時の加速指令値に設定してもよい。
図34は図33に示す制御による作用を示すタイムチャートである。車両が制限車速limVSP以下で走行中、時刻t1においてアクセル開度が増大し、加速指令が通常時と同様に増大し、車速aVSPが増大していく。時刻t2において、車速aVSPが制限車速limVSPに到達すると加速指令は制限されてゼロとなり、車速aVSPは一定となる。さらに、フィルタの分子の定数項Gaがゼロとなる。この状態で時刻t3においてドライバーがさらにアクセルペダルを踏み増すと、車速制限中であるが一時的に加速指令を増大させ車速aVSPが制限車速limVSPを超えて加速する。加速指令はその後アクセル開度が変化しなければゼロに収束する。これにより、実車速aVSPが制限車速limVSPより低い場合には通常の車両と同等の加速特性を実現することができる。
また、本実施形態では加速度を加速指令とする加速度制御装置に本発明を適用して説明したが、アクセル開度、スロットル開度及び燃料噴射量のようなパラメータを加速指令とする制御装置でも同様の効果を得ることができる。
本実施形態における車両の駆動力制御装置を示すシステム構成図である。 制御開始判定部の制御を示すフローチャートである。 駆動力制御部の制御を示すブロック図である。 実車速aVSP、アクセル踏み込み量APO及び目標加速度tACCの関係を示すマップである。 車速制限部の制御を示すブロック図である。 速度差dVSPと適合パラメータgaとの関係を示すマップである。 アクセル踏み込み量APOと適合パラメータgcとの関係を示すマップである。 アクセル踏み込み量APOと適合パラメータgbとの関係を示すマップである。 速度差dVSPと加速度オフセット量offACCとの関係を示すマップである。 フィードフォワード補償部の制御を示すブロック図である。 車速aVSPと時定数Treとの関係を示すマップである。 フィードバック補償部の制御を示すブロック図である。 駆動力配分部の制御を示すブロック図である。 実車速aVSPとATシフト位置指令用要求駆動力demFATとの関係を示すマップである。 車速制限部の特徴について説明するブロック図である。 車速制限部の特徴について説明するブロック図である。 図15、図16に示す制御による作用について説明するタイムチャートである。 車速制限部の特徴について説明するブロック図である。 図18に示す制御による作用について説明するタイムチャートである。 車速制限部の特徴について説明するブロック図である。 図20に示す制御による作用について説明するタイムチャートである。 車速制限部の特徴について説明するブロック図である。 図22に示す制御による作用について説明するタイムチャートである。 車速制限部の特徴について説明するブロック図である。 車速制限部の特徴について説明するブロック図である。 図25に示す制御による作用について説明するタイムチャートである。 車速制限部の特徴について説明するブロック図である。 図27に示す制御による作用について説明するタイムチャートである。 車速制限部の特徴について説明するブロック図である。 図29に示す制御による作用について説明するタイムチャートである。 車速制限部の特徴について説明するブロック図である。 図31に示す制御による作用について説明するタイムチャートである。 車速制限部の特徴について説明するブロック図である。 図33に示す制御による作用について説明するタイムチャートである。
符号の説明
3 アクセル開度センサ
4 駆動輪速センサ
9 駆動力制御ECU
20 駆動力制御部
21 目標加速度マップ(目標加速度演算手段)
22 車速制限部(制限目標加速度演算手段)
23 駆動力変換部(駆動力演算手段)
221 車速制限補償器

Claims (12)

  1. 車速及びアクセルペダル踏み込み量に基づいて車両の目標加速度を演算する目標加速度演算手段と、
    車速が所定の制限車速を超えないように前記目標加速度に基づいて制限目標加速度を演算する制限目標加速度演算手段と、
    前記制限目標加速度に基づいて前記車両の駆動力を演算する駆動力演算手段と、
    を備え、
    前記制限目標加速度演算手段は、車速を前記所定の制限車速に制限しているときであって、前記アクセルペダル踏み込み量が増大したとき、車速が前記制限車速を超えるように前記制限目標加速度を演算し、その後車速が前記制限車速まで再度低下するように前記制限目標加速度を演算することを特徴とする車両の駆動力制御装置。
  2. 前記制限目標加速度演算手段は、前記目標加速度を入力値としてフィルタ処理を施すことで得られる出力値を前記制限目標加速度とすることを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。
  3. 前記フィルタの分母及び分子の次数は1次であることを特徴とする請求項2に記載の車両の駆動力制御装置。
  4. 車速が前記制限車速以上であるとき、前記フィルタの分子の定数項はゼロに設定されることを特徴とする請求項3に記載の車両の駆動力制御装置。
  5. 車速が前記制限車速以上であるとき、前記フィルタの分子の1次ゲインを分母の1次ゲイン以下に設定することを特徴とする請求項4に記載の車両の駆動力制御装置。
  6. 前記フィルタの分母の1次ゲインは前記アクセルペダル踏み込み量が大きいほど大きく設定されることを特徴とする請求項5に記載の車両の駆動力制御装置。
  7. 前記フィルタの出力値を所定の範囲内に制限することを特徴とする請求項2から6までのいずれか1項に記載の車両の駆動力制御装置。
  8. 前記フィルタの出力値の下限値をゼロに設定することを特徴とする請求項7に記載の車両の駆動力制御装置。
  9. 前記制限目標加速度演算手段は、車速が前記制限車速より大きくなるほど大きく設定されるオフセット量を、前記フィルタの出力値から減算することで前記制限目標加速度を演算することを特徴とする請求項2から8までのいずれか1項に記載の車両の駆動力制御装置。
  10. 前記オフセット量を前記フィルタの入力値に加算することを特徴とする請求項9に記載の車両の駆動力制御装置。
  11. 前記制限目標加速度演算手段は、演算された前記制限目標加速度と前記目標加速度とのうち、小さい方を前記制限目標加速度とすることを特徴とする請求項2から10までのいずれか1項に記載の車両の駆動力制御装置。
  12. 前記制限目標加速度演算手段は、車速が前記制限車速より低いとき、前記目標加速度を前記制限目標加速度とすることを特徴とする請求項2から10までのいずれか1項に記載の車両の駆動力制御装置。
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