JP3982129B2 - 車両用加速度制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンなどの走行駆動源や有段あるいは無段変速機を制御して、自動車の加速度をその目標値に追従させる車両用加速度制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクセルペダルの踏み込み量に応じた目標加速度を設定するとともに、車速を微分して車両の実加速度を求め、実加速度が目標加速度に一致するようにフィードバック制御し、変速したり道路勾配や積載荷重が変化しても常に一定の加速度が得られるようにした車両用加速度制御装置が知られている(例えば、特開平06−017684号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の車両用加速度制御装置では、例えば平坦路から登坂路へ、あるいは平坦路から降坂路へ道路勾配が変化しても加速度が変化せず、登坂路や降坂路にさしかかった時の道路環境の変化が感じられず、かえって違和感があるという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、車両の加速度を目標値に追従させながら道路環境の変化を体感させて運転感覚を向上させることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
一実施の形態の目標加速度補正ルーチンを示す図4に対応付けて本発明を説明すると、
(1) 請求項1の発明は、車両の前後加速度が目標前後加速度に一致するようにフィードバック制御する車両用加速度制御装置に適用され、道路勾配抵抗を推定する推定手段(S61)と、登坂路を走行する場合は道路勾配抵抗推定値に応じて目標前後加速度を低減し、降坂路を走行する場合は道路勾配抵抗推定値に応じて目標前後加速度を増加する補正手段(S62〜S63)とを備え、これにより上記目的を達成する。
(2) 請求項2の車両用加速度制御装置は、推定手段によって、車両前後加速度と車両重量とを積算して加速力を演算し、現在のエンジントルクに基づいて演算した車両駆動力から加速力を減算して全走行抵抗を求め、全走行抵抗から平坦路走行抵抗を減算して勾配抵抗を推定するようにしたものである。
【0006】
上述した課題を解決するための手段の項では、説明を分かりやすくするために一実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が一実施の形態に限定されるものではない。
【0007】
【発明の効果】
(1) 請求項1の発明によれば、登坂路では負荷が重くなるのでその分だけ減速し、降坂路では負荷が軽くなるのでその分だけ加速する、というごく自然な体感を乗員に与えることができ、車両の加速度をその目標値に追従させながら道路環境の変化に対する運転感覚を向上させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は一実施の形態の構成を示す図である。
一実施の形態の車両のパワートレインはエンジン1、ロックアップクラッチ付きトルクコンバーター2および無段変速機(CVT)3から構成される。エンジン1は、電子制御式スロットルバルブアクチュエーター(不図示)による吸入空気量制御と、インジェクター(不図示)による燃料噴射制御と、点火装置(不図示)による点火時期制御とにより、エンジントルクが制御される。ロックアップクラッチ付きトルクコンバーター2のロックアップクラッチは、極低速域でのみ開放して停車と発進とを可能にし、さらに振動をダンピングする。一方、中高速域ではロックアップクラッチを締結して伝達効率を向上させる。
【0009】
無段変速機3は、ベルトを張るプライマリープーリーとセカンダリープーリーの有効半径を油圧機構(不図示)で調節して変速比を可変にする。なお、無段変速機3はベルト式に限定されず、例えばトロイダル式でもよい。また、無段変速機の代わりに有段変速機を用いたパワートレインに対しても本発明を適用することができる。
【0010】
加減速度コントローラー4、エンジントルクコントローラー5およびCVT&クラッチコントローラー6はそれぞれ、マイクロコンピューターとROM、RAM、A/Dコンバーター、各種タイマーなどの周辺回路や、通信回路、各種アクチュエーターの駆動回路などを備え、互いに高速通信線14を介して通信を行う。
【0011】
加減速度コントローラー4は、マイクロコンピューターのソフトウエア形態により図2に示すような制御ブロック4a〜4eを備え、アクセルペダル踏み込み量(以下、アクセル開度と呼ぶ)と駆動輪の回転速度(以下、車輪速と呼ぶ)による目標加速度の設定(4a)、車輪速のバンドパスフィルター処理による加速度推定値の演算(4b)、車輪速、エンジン回転速度、スロットルバルブ開度および加速度推定値による道路勾配の推定(4c)、道路勾配推定値による目標加速度の補正(4d)、補正済み目標加速度と加速度推定値による加速度フィードバック制御(4e)などを行う。加減速度コントローラー4には、スロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサー7、アクセル開度を検出するアクセルセンサー8、駆動輪13の周速(以下、車輪速と呼ぶ)を検出するための車輪速センサー9が接続される。
【0012】
エンジントルクコントローラー5は、吸入空気量制御、燃料噴射制御および点火時期制御によりエンジン1のトルクを制御する。エンジントルクコントローラー5には、エンジン1の回転速度を検出するためのクランク角センサー10が接続される。CVT&クラッチコントローラー6は、油圧機構(不図示)を制御して無段変速機3の変速比を制御する。CVT&クラッチコントローラー6には無段変速機3のプライマリープーリーの回転速度を検出するためのプライマリー速度センサー11と、セカンダリープーリーの回転速度を検出するためのセカンダリー速度センサー12とが接続される。
【0013】
図3は、車両の加速度、エンジントルクおよび無段変速機3の変速比を制御する制御プログラムを示すフローチャートである。また、図4は目標加速度の補正ルーチンを示すフローチャートである。これらのフローチャートにより、一実施の形態の動作を説明する。
加減速度コントローラー4のマイクロコンピューターは、所定の時間間隔、例えば10msecごとにこの制御プログラムを実行する。ステップ1において、アクセルセンサー8からアクセル開度Apoを読み込む。
【0014】
ステップ2では、車輪速センサー9からのパルス信号を計測してタイヤの有効半径Rに対する駆動輪13の車輪速Vwを検出する。この実施の形態では、駆動輪13の車輪速Vwが車速に等しいとする。続くステップ3で、CVT&クラッチコントローラー6から高速通信線14を介して無段変速機3のプライマリープーリーの回転速度ωp、セカンダリープーリーの回転速度ωsおよび変速比Ip(=ωp/ωs)を読み込むとともに、エンジントルクコントローラー5から高速通信線14を介してエンジン1の回転速度ωeを読み込む。さらに、スロットルセンサー7によりスロットルバルブ開度TVOを検出する。
【0015】
ステップ4において、アクセル開度Apoと車輪速Vwとに基づいて駆動輪13の目標加速度αw*を演算する。この実施の形態では、駆動輪13の目標加速度αw*が車両の目標加速度に等しいとする。具体的には、図5に示すようなアクセル開度Apoと車輪速Vwに対する目標加速度αw*のマップを設定しておき、検出したアクセル開度Apoと車輪速Vwに対する目標加速度αw*を表引き演算する。なお、目標加速度αw*の設定方法はこの実施の形態の設定方法に限定されず、例えばアクセル開度Apoのみに応じて目標加速度αw*を設定するようにしてもよい。
【0016】
ステップ5では、車輪速Vwをバンドパスフィルター処理して加速度推定値αwfを演算する。以下、加速度推定値αwfの演算方法を説明する。
まず、車輪速Vwを入力とし加速度推定値αwfを出力とする連続時間系の伝達関数Gbp(s)を次のように記述する。
【数1】
数式1において、sはラプラス演算子、ωnは固有角周波数、ζnは減衰率であり、ωnとζnは車輪速Vwの検出値に含まれるノイズレベルに応じて決定する。
【0017】
次に、この伝達関数Gbp(s)を状態ベクトルによる表現に変換すると、図6に示すブロック線図で表され、状態変数ベクトルXfを用いた状態方程式と出力方程式は次のように記述される。
【数2】
d(Xf)/dt=Af・Xf+Bf・Vw,
αwf=Cf・Xf+Df・Vw ・・・(2)
数式2において、Af、Bf、Cf、Dfは固有角周波数ωnや減衰率ζnから決まる定数行列である。なお、状態変数ベクトルXfはバンドパスフィルターの特性を表す変数である。
【0018】
バンドパスフィルターの出力である加速度推定値αwf以外に、バンドパスフィルターの内部状態変数ベクトルXfを算出する場合に、加速度制御用状態フィードバック補償器の設計を連続時間系で行うため、連続時間系の状態方程式と出力方程式の形で演算を行う。積分演算をオイラー積分とすると、上記数式2の状態方程式と出力方程式を、実際にマイクロコンピューターのソフトウエアで実行可能な差分方程式として次のように表すことができる。
【数3】
Xf(k)=Xf(k-1)+Tsmp{Af・Xf(k-1)+Bf・Vw(k)},
αwf(k)=Cf・Xf(k)+Df・Vw(k) ・・・(3)
数式3において、Tsmpはサンプリング周期であり、この実施の形態では10msecである。また、(k)は現在値、(k−n)はnサンプリング前の値を示す。この数式3を実行して加速度推定値αwfを求める。
【0019】
ステップ6において、図4に示す目標加速度補正ルーチンを実行し、道路勾配抵抗推定値Fkoubaiを演算し、道路勾配抵抗推定値Fkoubaiに応じた目標加速度補正値Δαwにより目標加速度αw*を補正する。
【0020】
図4のステップ61において、予め設定したスロットル開度TVOとエンジン回転速度ωeに対するエンジントルクTeのマップから、現在のスロットル開度TVOとエンジン回転速度ωeに対するエンジントルクTeを表引き演算する。そして、無段変速機3の変速比Ipと、無段変速機3と駆動軸15との間に設置される減速機16(図1参照)のギヤ比IfをエンジントルクTeに乗じて駆動軸トルクTdとし、さらにこの駆動軸トルクTdを駆動輪13のタイヤの有効半径rで除して駆動軸力推定値Fdを得る。
【数4】
Fd=Te・Ip・If/r ・・・(4)
【0021】
次に、加速度推定値αwfに車両重量Mを乗じて車両を加速するために必要な駆動軸力Fdrealを求める。
【数5】
Fdreal=αwf・M ・・・(5)
ここで、駆動軸力推定値Fdと実駆動軸力Fdrealとの差が全走行抵抗値Fdisallに相当する。
【数6】
Fdisall=Fd−Fdreal ・・・(6)
【0022】
また、予め設定した車輪速Vwに対する平坦路走行抵抗Fdisflatのマップから、現在の車輪速Vwに対する平坦路走行抵抗値Fdisflatを表引き演算する。そして、すでに算出した全走行抵抗値Fdisallと平坦路走行抵抗値Fdisflatとの差を道路勾配抵抗値Fkoubaiとして求める。
【数7】
Fkoubai=Fdisall−Fdisflat ・・・(7)
【0023】
続くステップ62では、予め設定した道路勾配抵抗値Fkoubaiに対する目標加速度補正値Δαwのマップ(図7参照)を用いて、算出した道路勾配抵抗値Fkoubaiに対応する目標加速度補正値Δαwを表引き演算する。ステップ63では、算出した目標加速度補正値Δαwをステップ4で求めた目標加速度αw*に加算して補正する。
【0024】
目標加速度αw*を補正後、ふたたび図3の制御プログラムへリターンしてステップ7へ進む。ステップ7では、目標エンジントルクTe*から実際のエンジントルクTeまでを簡易な一次遅れモデルとし、目標エンジントルクTe*に対するエンジントルクTeを推定する。まず、目標エンジントルクTe*からエンジントルクTeまでの連続時間系の伝達関数を次のように記述する。
【数8】
数式8において、Tengは時定数である。
【0025】
数式8をタスティン近似などで離散化し、実際にマイクロコンピューターのソフトウエアで実行可能な差分方程式を求めて実行する。
【数9】
Te(k)=TEN0・Te*(k)+TEN1・Te*(k-1)+TED1・Te(k-1)・・・(9)
数式9において、TEN0、TEN1、TED1は、時定数Tengおよびサンプリング周期Tsmpから決まる定数である。なお、後述するステップ9において目標エンジントルクTe*を演算して更新するまでは、前回このプログラムを実行したときに演算した値をTe*に代入する。
【0026】
ステップ8では、予め設定したエンジン運転点拘束線マップ(図8参照)からエンジントルク推定値Teに対応するエンジン回転速度ωeを表引き演算する。エンジン運転点拘束線マップ図8において、正のトルク域ではエンジン最適燃費(効率)運転線を拘束線として用い、負のトルク域ではエンジンブレーキ特性線を拘束線として用いる。なお、エンジン最適燃費運転線はエンジン等出力線上の最も燃料消費量が少ないエンジン運転点を連ねた特性線である。また、エンジンブレーキ特性線はスロットルバルブ全閉で、且つ燃料カット時のエンジン運転点であり、このエンジンブレーキ特性線に沿って制御することにより、無段変速機3のダウンシフト時のエンジンブレーキ制御を可能にする。
【0027】
この実施の形態では、トルクコンバーター2のロックアップクラッチが締結された状態のみを考えるので、エンジン回転速度ωeは無段変速機3のプライマリープーリーの回転速度ωpに等しい。そこで、図8のマップから表引き演算して求めたエンジン回転速度ωeを目標プライマリー回転速度ωp*とする。そして、目標プライマリー回転速度ωp*と実際のプライマリープーリーの回転速度ωpとの偏差を積分した値Zを算出する。
【数10】
Z(k)=Z(k-1)+Tsmp{ωp*(k)−ωp(k)} ・・・(10)
【0028】
ステップ9では、加減速制御用フィードバック補償器の演算を行う。この実施の形態では、実用的な線形制御手法の一つであるモデルフォローイング制御手法を用いる。以下にその制御系設計手法を説明する。
【0029】
まず、制御系設計用のプラントモデルの導出を行う。この実施の形態では、実際のパワートレインモデルに対して、上述したバンドパスフィルターモデルと、上述したエンジン運転点拘束条件に関する偏差積分モデル(状態変数Z)を結合した拡大系モデルを制御系設計用プラントモデルとする。なお、エンジン運転点拘束条件に関する偏差積分モデルは、非線形マップを特定点で線形近似した次式を用いる。
【数11】
dZ/dt=ka・Tp−ωp ・・・(11)
数式11において、Tpは無段変速機3の入力トルクであり、kaは図8に示すエンジン運転点拘束線の傾き、すなわちka=ωe/Teである。
【0030】
拡大系モデルを、図9に示す状態ベクトルを用いたブロック線図で表し、連続時間系の状態方程式および出力方程式の形で次のように記述する。ただし、この実施の形態ではトルクコンバーター2のロックアップクラッチの締結状態のみを考えるので、無段変速機3の入力トルクTpはエンジントルクTeに等しいとする。
【数12】
数式12において、入力数2、出力数1、状態数6であり、Ap、Bp、Cp、Dpは定数行列である。また、Tp*は無段変速機3の目標入力トルク、Ip*は無段変速機3の目標変速比、xf1、xf2は数式1に示す二次式で表したバンドパスフィルターの内部状態変数Xfの要素である。
【0031】
目標加速度αw*に対する推定加速度αwfの望ましい応答性を示す規範モデルを一次遅れとし、その伝達関数、状態方程式および出力方程式を次のように表す。
【数13】
Gm(s)=αref(s)/αw*(s)=1/(Tαw・s+1),
d(xm)/dt=Am・xm+Bm・αw*,
αref=Cm・xm+Dm・αw* ・・・(13)
数式13において、Tαwは時定数である。
【0032】
以上の拡大系モデルと規範モデルに、状態フィードバックを用いたモデルフォローイング制御手法を用いて加速度フィードバック制御系を構成した場合の制御ブロック線図を図10に示す。なお、図10において太線はベクトルを表し、細線はスカラーを表す。
このような加速度フィードバック補償器を構成することによって、規範モデル加速度αrefに推定加速度αwfが定常偏差なく追従する。また同時に、状態フィードバックによってすべての状態変数が安定化される。つまり、状態変数の一つであるプライマリープーリーの回転速度偏差積分量Zも安定化されるため、結果として無段変速機3のプライマリープーリーの目標回転速度ωp*に実回転速度ωpが定常偏差なく追従する。
【0033】
図10に示される状態フィードバックゲインK(定数行列)は、拡大系プラントモデルと規範モデルをさらに結合した下記結合モデルに対して、一般的な最適レギュレーター手法などを用いて求める。ただし、規範モデル加速度αrefと推定加速度αwfの偏差積分量をXiとする。
【数14】
【0034】
次に、実際の処理をマイクロコンピューターのソフトウエアで実行可能な差分方程式の形に表す。まず、規範モデルの演算は次の差分方程式により実行する。
【数15】
αref(k)=MAN0・αw*(k)+MAN1・αw*(k-1)+MAD1・αref(k-1)・・・(15)
数式15において、MAN0、MAN1、MAD1は上記数式13をタスティン近似などで離散化して得られた定数である。次に、加速度の偏差積分演算は次の差分方程式により実行する。
【数16】
Xi(k)=Xi(k-1)+Tsmp{αref(k)−αwf(k)} ・・・(16)
さらに、状態フィードバック演算は次の差分方程式により実行する。
【数17】
また、目標エンジントルクTe*の決定は、トルクコンバーター2のロックアップクラッチが締結されている状態で、
【数18】
Te*=Tp* ・・・(18)
とする。
【0035】
ステップ10において、加速度制御用モデルフォローイング補償器で演算された目標エンジントルクTe*、目標変速比Ip*に上下限リミッター処理を施し、エンジントルクコントローラー5およびCVT&クラッチコントローラー6で達成可能な値にそれぞれ制限し、最終的なエンジントルク指令値Te*および変速比指令値Ip*とする。続くステップ11では、エンジントルク指令値Te*をエンジントルクコントローラー5へ、変速比指令値Ip*をCVT&クラッチコントローラー6へそれぞれ高速通信線14を介して出力する。エンジントルクコントローラー5はエンジントルクTeが指令値Te*となるように制御し、CVT&クラッチコントローラー6は無段変速機3の変速比Ipが指令値Ip*となるように制御する。
【0036】
図11は、この実施の形態による加速度制御結果を示すタイムチャートである。
車両が平坦路から登坂路(T1〜T4)を走行し、続いて降坂路(T5〜T8)を走行した場合に、従来の加速度フィードバック制御では、初期状態の加速度αwを一定に保ちながら登坂路と降坂路を走行する。この時、乗員は視覚的に登坂路と降坂路を認識できるものの、走行環境の変化が車両から伝わってこない。つまり、登坂路では負荷が重くなるのでその分だけ減速し、降坂路では負荷が軽くなるのでその分だけ加速する、というごく自然な体感がまったくなく、かえって違和感を感じる。
【0037】
この実施の形態では、道路勾配抵抗推定値Fkoubaiにより登坂路と降坂路を判定し、加速度フィードバック制御系に入力される目標加速度αw*を補正する。つまり、登坂路と判定した場合には、図7に示す目標加速度補正マップにより目標加速度αw*のマイナス補正を行い、目標加速度αw*を低減してわざと減速し、登坂路にさしかかったことを乗員に体感させる。また、降坂路と判定した場合には、目標加速度補正マップにより目標加速度αw*のプラス補正を行い、目標加速度αw*を増加してわざと加速し、降坂路にさしかかったことを乗員に体感させる。これにより、車両の加速度を目標値に追従させながら道路環境の変化を体感させて運転感覚を向上させることができる。
【0038】
ただし、登坂路および降坂路における目標加速度αw*の補正量Δαwには、従来の加速度フィードバック制御における乗員の要求駆動力の実現を損なわないように、最適な運転感覚が得られる程度の値を設定する必要がある。
【0039】
以上の実施の形態の構成において、加減速度コントローラー4の道路勾配推定ブロック4cが推定手段を、加減速度コントローラー4の目標加速度補正ブロック4bが補正手段をそれぞれ構成する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】 加減速度コントローラーの制御ブロック図である。
【図3】 車両の加速度、エンジントルクおよび変速機の変速比を制御する制御プログラムを示すフローチャートである。
【図4】 目標加速度の補正ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】 目標加速度を設定するためのマップ例を示す図である。
【図6】 車輪速を入力とし加速度推定値を出力とする連続時間系の伝達関数を状態ベクトルにより表現したブロック線図である。
【図7】 道路勾配抵抗値に対する目標加速度補正値のマップ例を示す図である。
【図8】 エンジン回転速度に対するエンジントルクの特性曲線を示す図である。
【図9】 制御系設計用拡大モデルを状態ベクトルにより表現したブロック線図である。
【図10】 モデルフォローイング制御手法を用いた加速度フィードバック制御系を示す制御ブロック図である。
【図11】 一実施の形態の加速度制御結果を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
2 ロックアップクラッチ付きトルクコンバーター
3 無段変速機
4 加減速度コントローラー
5 エンジントルクコントローラー
6 CVT&クラッチコントローラー
7 スロットルセンサー
8 アクセルセンサー
9 車輪速センサー
10 クランク角センサー
11 プライマリー速度センサー
12 セカンダリー速度センサー
13 駆動輪
14 高速通信線
15 駆動軸
16 減速機
Claims (2)
- 車両の前後加速度が目標前後加速度に一致するようにフィードバック制御する車両用加速度制御装置において、
道路勾配抵抗を推定する推定手段と、
登坂路を走行する場合は道路勾配抵抗推定値に応じて目標前後加速度を低減し、降坂路を走行する場合は道路勾配抵抗推定値に応じて目標前後加速度を増加する補正手段とを備えることを特徴とする車両用加速度制御装置。 - 請求項1に記載の車両用加速度制御装置において、
前記推定手段は、車両前後加速度と車両重量とを積算して加速力を演算し、現在のエンジントルクに基づいて演算した車両駆動力から前記加速力を減算して全走行抵抗を求め、全走行抵抗から平坦路走行抵抗を減算して勾配抵抗を推定することを特徴とする車両用加速度制御装置。
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