JP3770025B2 - 無段変速機を備えた車両の加速度制御装置 - Google Patents

無段変速機を備えた車両の加速度制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無段変速機を備えた車両の加速度を制御する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクセルペダルの踏み込み量に応じた目標加速度を設定するとともに、車速を微分して車両の加速度を推定し、加速度推定値が目標加速度に一致するようにフィードバック制御し、変速したり道路勾配や積載荷重が変化してもアクセルペダルの踏み込み量に応じた一定の加速度が得られるようにした加速度制御装置が知られている(例えば、特開平06−017684号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車速検出値にバンドパスフィルター処理を施し、車速検出値の低周波数成分を微分して加速度推定値を求めるとともに、車速検出値の高周波数成分をカットして計測ノイズを削除することが考えられる。
【0004】
しかし、バンドパスフィルターから出力される加速度推定値をフィードバックして加速度制御を行うと、実際の車両加速度に対する位相遅れや必要な周波数帯の情報が欠落するために、加速度フィードバック制御系の安定性が低下して目標加速度への追従性が悪くなるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、加速度フィードバック制御系の安定性と目標追従性を向上させることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1) 一実施の形態の構成を示す図13に対応づけて請求項1の発明を説明すると、
求項1の発明は、車速を検出する車速検出手段と、車両の目標加速度を設定する目標加速度設定手段と、車速Vwを入力とし車両の加速度推定値αwfを出力とするバンドパスフィルター23の伝達関数を状態ベクトル表現に変換したバンドパスフィルターモデル23と、車両モデル22とを結合して拡大系プラントモデル21を形成し、目標加速度αw*に対して加速度推定値αwfをフィードバックするとともに、バンドパスフィルター23の動的特性を表す内部状態変数xf1、xf2を加速度補償器へフィードバックする加速度フィードバック制御系を構築し、加速度推定値αwfを目標加速度αw*に一致させるための無段変速機の目標変速比Ip*と入力側回転部材の目標入力トルクTp*とを演算する演算手段と、無段変速機の入力側回転部材の目標入力トルクTp*にしたがってエンジントルクを制御するエンジントルク制御手段と、無段変速機の目標変速比Ip*にしたがって無段変速機を制御する変速比制御手段とを備える。
(2) 一実施の形態の構成を示す図6に対応づけて請求項2の発明を説明すると、請求項2に発明は、無段変速機の入力側回転部材の目標入力トルクTp*に応じた入力側回転部材の目標回転速度ωp*を設定する目標回転速度設定手段と、無段変速機の入力側回転部材の回転速度ωpを検出する回転速度検出手段と、無段変速機の入力側回転部材の目標回転速度ωp*と回転速度検出値ωpとの偏差の積分値Zを演算する回転速度偏差積分手段25,26とを備え、演算手段によって、回転速度偏差積分手段から得られる回転速度偏差積分モデル24〜26とバンドパスフィルターモデル23と車両モデル22とを結合して拡大系プラントモデル21を形成し、加速度推定値αwfとバンドパスフィルター23の内部状態変数xf1、xf2のフィードバックに加え、無段変速機の入力側回転部材の回転速度偏差積分値Zをフィードバックするようにしたものである。
【0007】
上述した課題を解決するための手段の項では、説明を分かりやすくするために一実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が一実施の形態に限定されるものではない。
【0008】
【発明の効果】
(1) 請求項1の発明によれば、車速を入力とし車両の加速度推定値を出力とするバンドパスフィルターの伝達関数を状態ベクトル表現に変換したバンドパスフィルターモデルと、車両モデルとを結合して拡大系プラントモデルを形成し、目標加速度に対して加速度推定値をフィードバックするとともに、バンドパスフィルターの動的特性を表す内部状態変数を加速度補償器へ状態フィードバックする加速度フィードバック制御系を構築し、加速度推定値を目標加速度に一致させるための無段変速機の目標変速比と入力側回転部材の目標入力トルクとを演算するようにしたので、バンドパスフィルターの特性を加減速制御用フィードバック補償器の設計に直接、反映でき、加速度フィードバック制御系の安定性と目標追従性を向上させることができる。
(2) 請求項2の発明によれば、無段変速機の入力側回転部材の回転速度偏差を積分するモデルと、バンドパスフィルターモデルと、車両モデルとを結合して拡大系プラントモデルを形成し、加速度推定値とバンドパスフィルターの内部状態変数のフィードバックに加え、無段変速機の入力側回転部材の回転速度偏差積分値をフィードバックするようにしたので、エンジントルクTeとエンジン回転速度ωeのゲインka(=ωe/Te)を、加減速制御用フィードバック補償器の設計に直接、反映でき、無段変速機の入力側回転部材の回転速度を安定させることができる。そして、加速度フィードバック制御系の安定性と目標追従性をさらに向上させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は一実施の形態の構成を示す図である。
一実施の形態の車両のパワートレインはエンジン1、ロックアップクラッチ付きトルクコンバーター2および無段変速機(CVT)3から構成される。エンジン1は、電子制御式スロットルバルブアクチュエーター(不図示)による吸入空気量制御と、インジェクター(不図示)による燃料噴射制御と、点火装置(不図示)による点火時期制御とにより、エンジントルクが制御される。
【0010】
ロックアップクラッチ付きトルクコンバーター2のロックアップクラッチは、極低速域でのみ開放して停車と発進とを可能にし、さらに振動をダンピングする。一方、中高速域ではロックアップクラッチを締結して伝達効率を向上させる。無段変速機3は、ベルトを張るプライマリープーリーとセカンダリープーリーの有効半径を油圧機構(不図示)で調節して変速比を可変にする。なお、無段変速機3はベルト式に限定されず、例えばトロイダル式でもよい。
【0011】
加減速度コントローラー4、エンジントルクコントローラー5およびCVT&クラッチコントローラー6はそれぞれ、マイクロコンピューターとROM、RAM、A/Dコンバーター、各種タイマーなどの周辺回路や、通信回路、各種アクチュエーターの駆動回路などを備え、互いに高速通信線13を介して通信を行う。
【0012】
加減速度コントローラー4は、車速検出値にバンドパスフィルター処理を施して車両の加速度を推定し、加速度推定値をフィードバックして加速度フィードバック制御を行う。加減速度コントローラー4には、アクセルペダルの踏み込み量(以下、アクセル開度と呼ぶ)Apoを検出するアクセルセンサー7と、駆動輪14の周速(以下、車輪速と呼ぶ)Vwを検出するための車輪速センサー8とが接続される。
【0013】
エンジントルクコントローラー5は、吸入空気量制御、燃料噴射制御および点火時期制御によりエンジン1のトルクを制御する。エンジントルクコントローラー5には、エンジン1の回転速度ωeを検出するためのクランク角センサー9が接続される。CVT&クラッチコントローラー6は、油圧機構(不図示)を制御して無段変速機3の変速比を制御する。CVT&クラッチコントローラー6には無段変速機3のプライマリープーリーの回転速度ωpを検出するためのプライマリー速度センサー1と、セカンダリープーリーの回転速度ωsを検出するためのセカンダリー速度センサー1とが接続される。
【0014】
図2は、一実施の形態の加速度制御プログラムを示すフローチャートである。このフローチャートにより、一実施の形態の動作を説明する。
加減速度コントローラー4のマイクロコンピューターは、所定の時間間隔、例えば10msecごとにこの制御プログラムを実行する。ステップ1において、アクセルセンサー7からアクセル開度Apoを読み込む。
【0015】
ステップ2では、車輪速センサー8からのパルス信号を計測してタイヤの有効半径Rに対する駆動輪14の車輪速Vwを検出する。この実施の形態では、駆動輪14の車輪速Vwが車速に等しいとする。続くステップ3で、CVT&クラッチコントローラー6から高速通信線13を介して無段変速機3のプライマリープーリーの回転速度ωp、セカンダリープーリーの回転速度ωsおよび変速比Ip(=ωp/ωs)を読み込むとともに、エンジントルクコントローラー5から高速通信線13を介してエンジン1の回転速度ωeを読み込む。
【0016】
ステップ4において、アクセル開度Apoと車輪速Vwとに基づいて駆動輪14の目標加速度αw*を演算する。この実施の形態では、駆動輪14の目標加速度αw*が車両の目標加速度に等しいとする。具体的には、図3に示すようなアクセル開度Apoと車輪速Vwに対する目標加速度αw*のマップを設定しておき、検出したアクセル開度Apoと車輪速Vwに対する目標加速度αw*を表引き演算する。なお、目標加速度αw*の設定方法はこの実施の形態の設定方法に限定されず、例えばアクセル開度Apoのみに応じて目標加速度αw*を設定するようにしてもよい。
【0017】
ステップ5では、車輪速Vwにバンドパスフィルター処理を施して加速度推定値αwfを演算する。以下、加速度推定値αwfの演算方法を説明する。
【0018】
まず、車輪速Vwを入力とし加速度推定値αwfを出力とする連続時間系の伝達関数Gbp(s)を次のように記述する。
【数1】
Figure 0003770025
数式1において、sはラプラス演算子、ωnは固有角周波数、ζnは減衰率であり、ωnとζnは車輪速検出値Vwに含まれるノイズレベルに応じて決定する。
【0019】
次に、この伝達関数Gbp(s)を状態ベクトルによる表現に変換すると、図4に示すブロック線図で表され、状態変数ベクトルXfを用いた状態方程式と出力方程式は次のように記述される。
【数2】
d(Xf)/dt=Af・Xf+Bf・Vw,
αwf=Cf・Xf+Df・Vw ・・・(2)
数式2において、Af、Bf、Cf、Dfは固有角周波数ωnや減衰率ζnから決まる定数行列である。状態変数ベクトルXfはバンドパスフィルターの特性を表す変数であり、この実施の形態ではバンドパスフィルターを数式1に示す二次式の伝達関数としているので、状態変数ベクトルXfは2個の要素xf1、xf2を有している。
【0020】
バンドパスフィルターの出力である加速度推定値αwf以外に、バンドパスフィルターの内部状態変数ベクトルXfを算出する場合に、加速度制御用状態フィードバック補償器の設計を連続時間系で行うため、連続時間系の状態方程式と出力方程式の形で演算を行う。積分演算をオイラー積分とすると、上記数式2の状態方程式と出力方程式を、実際にマイクロコンピューターのソフトウエアで実行可能な差分方程式として次のように表すことができる。
【数3】
Xf(k)=Xf(k-1)+Tsmp{Af・Xf(k-1)+Bf・Vw(k)},
αwf(k)=Cf・Xf(k)+Df・Vw(k) ・・・(3)
数式3において、Tsmpはサンプリング周期であり、この実施の形態では10msecである。また、(k)は現在値、(k−n)はnサンプリング前の値を示す。この数式3を実行して加速度推定値αwfを求める。
【0021】
ステップ6では、目標エンジントルクTe*から実際のエンジントルクTeまでを簡易な一次遅れモデルとし、目標エンジントルクTe*に対するエンジントルクTeを推定する。まず、目標エンジントルクTe*からエンジントルクTeまでの連続時間系の伝達関数Gengを次のように記述する。
【数4】
Figure 0003770025
数式4において、Tengは時定数である。
【0022】
数式4をタスティン近似などで離散化し、実際にマイクロコンピューターのソフトウエアで実行可能な差分方程式を求めて実行する。
【数5】
Te(k)=TEN0・Te*(k)+TEN1・Te*(k-1)+TED1・Te(k-1)・・・(5)
数式5において、TEN0、TEN1、TED1は、時定数Tengおよびサンプリング周期Tsmpから決まる定数である。なお、後述するステップ8において目標エンジントルクTe*を演算して更新するまでは、前回このプログラムを実行したときに演算した値をTe*に代入する。
【0023】
ステップ7では、予め設定したエンジン運転点拘束線マップ(図5参照)からエンジントルク推定値Teに対応するエンジン回転速度ωeを表引き演算する。エンジン運転点拘束線マップ図5において、正のトルク域ではエンジン最適燃費(効率)運転線を拘束線として用い、負のトルク域ではエンジンブレーキ特性線を拘束線として用いる。なお、エンジン最適燃費運転線はエンジン等出力線上の最も燃料消費量が少ないエンジン運転点を連ねた特性線である。また、エンジンブレーキ特性線はスロットルバルブ全閉で、且つ燃料カット時のエンジン運転点であり、このエンジンブレーキ特性線に沿って制御することにより、無段変速機3のダウンシフト時のエンジンブレーキ制御を可能にする。
【0024】
この実施の形態では、トルクコンバーター2のロックアップクラッチが締結された状態のみを考えるので、エンジン回転速度ωeは無段変速機3のプライマリープーリーの回転速度ωpに等しい。そこで、図5のマップから表引き演算して求めたエンジン回転速度ωeを目標プライマリー回転速度ωp*とする。そして、目標プライマリー回転速度ωp*と実際のプライマリープーリーの回転速度ωpとの偏差を積分した値Zを算出する。
【数6】
Z(k)=Z(k-1)+Tsmp{ωp*(k)−ωp(k)} ・・・(6)
【0025】
ステップ8では、加減速制御用フィードバック補償器の演算を行う。この実施の形態では、実用的な線形制御手法の一つであるモデルフォローイング制御手法を用いる。以下にその制御系設計手法を説明する。
【0026】
まず、制御系設計用のプラントモデルの導出を行う。この実施の形態では、図6に示すように、実際の車両モデル22に、上述したバンドパスフィルターモデル23と、上述した無段変速機3のプライマリープーリー回転速度の偏差積分モデル(状態変数Z)24〜26とを結合して拡大系モデルを形成し、これを制御系設計用プラントモデル21とする。なお、図7に車両モデル22の制御ブロック図を示す。
【0027】
図6において、車両モデル22(図7参照)の内部状態変数である無段変速機プライマリープーリーの入力トルクTp、無段変速機3の変速比Ipおよび車輪速Vwと、プライマリープーリーの回転速度偏差積分値Zと、バンドパスフィルター23の内部状態変数xf1、xf2を後述する加速度補償器へフィードバックする。なお、ロックアップクラッチ締結時には、無段変速機3のプライマリープーリー入力トルクTpはエンジントルクTeに等しい。また、図7において、Tineはイナーシャトルク、Mは車両質量、Rはタイヤの有効半径、Ifはファイナルギア比、T1はエンジントルク系時定数、T2は変速比系時定数、J1はエンジン1から無段変速機3のプライマリープーリーまでのイナーシャである。
【0028】
なお、無段変速機プライマリープーリーの回転速度偏差積分モデルは、図5に示すエンジン運転点拘束線特性マップ24を特定点で線形近似した次式を用いる。
【数7】
dZ/dt=ka・Tp−ωp ・・・(7)
数式7において、Tpは無段変速機3の入力トルクであり、kaは図5に示すエンジン運転点拘束線の傾き、すなわちka=ωe/Teである。
【0029】
拡大系モデルを、図8に示す状態ベクトルを用いたブロック線図で表し、連続時間系の状態方程式および出力方程式の形で次のように記述する。ただし、この実施の形態ではトルクコンバーター2のロックアップクラッチの締結状態のみを考えるので、無段変速機3の入力トルクTpはエンジントルクTeに等しいとする。
【数8】
Figure 0003770025
数式8において、入力数2、出力数1、状態数6であり、Ap、Bp、Cp、Dpは定数行列である。また、Tp*は無段変速機3の目標入力トルク、Ip*は無段変速機3の目標変速比である。さらに、xf1、xf2は、数式1に示す二次式で表したバンドパスフィルターの内部状態変数ベクトルXfの要素である。
【0030】
目標加速度αw*に対する推定加速度αwfの望ましい応答性を示す規範モデルを一次遅れとし、その伝達関数、状態方程式および出力方程式を次のように表す。
【数9】
Gm(s)=αref(s)/αw*(s)=1/(Tαw・s+1),
d(xm)/dt=Am・xm+Bm・αw*
αref=Cm・xm+Dm・αw* ・・・(9)
数式9において、Tαwは時定数である。
【0031】
以上の拡大系モデルと規範モデルに、状態フィードバックを用いたモデルフォローイング制御手法を用いて加速度フィードバック制御系を構築した場合の制御ブロック図を図9に示す。なお、図9において太線はベクトルを表し、細線はスカラーを表す。
【0032】
このような加速度フィードバック補償器を構築することによって、規範モデル加速度αrefに推定加速度αwfが定常偏差なく追従する。また同時に、状態フィードバックによってすべての状態変数が安定化される。つまり、状態変数の一つであるプライマリープーリーの回転速度偏差積分値Zも安定化されるため、結果として無段変速機3のプライマリープーリーの目標回転速度ωp*に実回転速度ωpが定常偏差なく追従する。
【0033】
図9に示す状態フィードバックゲインK(定数行列)は、拡大系プラントモデルと規範モデルをさらに結合した下記結合モデルに対して、一般的な最適レギュレーター手法などを用いて求める。ただし、規範モデル加速度αrefと推定加速度αwfの偏差積分量をXiとする。
【数10】
Figure 0003770025
【0034】
次に、実際の処理をマイクロコンピューターのソフトウエアで実行可能な差分方程式の形に表す。まず、規範モデルの演算は次の差分方程式により実行する。
【数11】
αref(k)=MAN0・αw*(k)+MAN1・αw*(k-1)+MAD1・αref(k-1)
・・・(11)
数式11において、MAN0、MAN1、MAD1は上記数式9をタスティン近似などで離散化して得られた定数である。次に、加速度の偏差積分演算は次の差分方程式により実行する。
【数12】
Xi(k)=Xi(k-1)+Tsmp{αref(k)−αwf(k)} ・・・(12)
さらに、状態フィードバック演算は次の差分方程式により実行する。
【数13】
Figure 0003770025
また、目標エンジントルクTe*の決定は、トルクコンバーター2のロックアップクラッチが締結されている状態で、
【数14】
Te*=Tp* ・・・(14)
とする。
【0035】
ステップ9において、加速度制御用モデルフォローイング補償器で演算された目標エンジントルクTe*、目標変速比Ip*に上下限リミッター処理を施し、エンジントルクコントローラー5およびCVT&クラッチコントローラー6で達成可能な値にそれぞれ制限し、最終的なエンジントルク指令値Te*および変速比指令値Ip*とする。続くステップ10では、エンジントルク指令値Te*をエンジントルクコントローラー5へ、変速比指令値Ip*をCVT&クラッチコントローラー6へそれぞれ高速通信線13を介して出力する。エンジントルクコントローラー5はエンジントルクTeが指令値Te*となるように制御し、CVT&クラッチコントローラー6は無段変速機3の変速比Ipが目標値Ip*となるように制御する。
【0036】
この実施の形態では、ステップ5で説明したように、車速Vwにバンドパスフィルター処理を施して加速度推定値αwfを演算する際に、車速Vwを入力とし加速度推定値αwfを出力とする連続時間系の伝達関数Gbp(s)(数式1)を、図4に示すような状態ベクトルによる表現に変換して、数式2に示す内部状態変数ベクトルXfを用いた状態方程式と出力方程式で表し、加速度推定値αwfを算出するだけでなく、内部状態変数ベクトルXfも併せて算出する。
【0037】
また、ステップ8で説明したように、加速度制御系を構成する際に、バンドパスフィルターの出力すなわち加速度推定値αwfをフィードバックするだけでなく、図6に示すようにバンドパスフィルター23も制御系設計用プラントモデル21に組み込み、バンドパスフィルター23の内部状態変数Xf1,Xf2もフィードバックする構成とした。
【0038】
これにより、バンドパスフィルターの特性を加減速制御用フィードバック補償器の設計に直接、反映できるので、加速度フィードバック制御系の安定性と目標追従性を向上させることができる。
【0039】
また、この実施の形態では、ステップ7、8で説明したように、バンドパスフィルターの内部状態変数xf1、xf2のフィードバックに加え、プライマリープーリーの目標回転速度ωp*とプライマリープーリーの回転速度検出値ωpとの偏差積分値Zを、新たな状態変数として制御系設計用プラントモデルに組み込んだ。
【0040】
これにより、エンジントルクTeとエンジン回転速度ωeのゲインka(=ωe/Te)を、加減速制御用フィードバック補償器の設計に直接、反映できるので、無段変速機プライマリープーリーの回転速度を安定させることができ、加速度フィードバック制御系の安定性と目標追従性を向上させることができる。
【0041】
図10は、図11に示すバンドパスフィルターの出力(加速度推定値)αwfをフィードバックするだけの加速度フィードバック制御系のシュミレーション結果を示す図である。また、図12は、図6に示す一実施の形態の加速度フィードバック制御系のシュミレーション結果を示す図である。
バンドパスフィルターの出力(加速度推定値)αwfをフィードバックするだけの加速度制御系では、図10から明らかなように制御結果の加速度αwf、プライマリープーリーの回転速度ωp、エンジントルクTp(=Te)が振動的である。これに対し一実施の形態の加速度フィードバック制御系では、図12に示すように制御結果の加速度αwf、プライマリー回転速度ωp、エンジントルクTp(=Te)が安定してそれぞれの目標値αw*、ωp*、Tp*へ追従している。
【0042】
上述した一実施の形態では、図6に示すように、バンドパスフィルターとプライマリープーリー回転速度の偏差積分値Zを制御系設計用プラントモデルに組み込み、バンドパスフィルターの内部状態変数Xf1,Xf2とプライマリープーリー回転速度の偏差積分値Zとをフィードバックする例を示したが、図13に示すように、バンドパスフィルターのみを制御系設計用プラントモデルに組み込み、バンドパスフィルターの内部状態変数Xf1,Xf2のみをフィードバックする加速度制御系としてもよい。
【0043】
図14は、図13に示すバンドパスフィルターのみを制御系設計用プラントモデルに組み込み、バンドパスフィルターの内部状態変数Xf1,Xf2のみをフィードバックする加速度フィードバック制御系のシュミレーション結果を示す。
上述した一実施の形態のシュミレーション結果(図12)と比較すると、プライマリープーリー回転速度の偏差積分値Zをフィードバックしていないために、プライマリープーリーの回転速度ωpが振動的である。
【0044】
以上の実施の形態の構成において、車輪速センサー8が車速検出手段を、アクセルセンサー7、車輪速センサー8および加減速度コントローラー4が目標加速度設定手段を、加減速度コントローラー4が演算手段、目標回転速度設定手段および回転速度偏差積分手段を、無段変速機3のプライマリープーリーが入力側回転部材を、エンジントルクコントローラー5がエンジントルク制御手段を、CVT&クラッチコントローラー6が変速比制御手段を、プライマリー速度センサー11が回転速度検出手段をそれぞれ構成する。
【0045】
なお、上述した一実施の形態ではベルト式無段変速機を例に上げて説明したが、トロイダル式無段変速機に対しても本発明を適用することができる。その場合は、トロイダル式無段変速機の入力ディスクが上述した入力側回転部材に相当する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】 一実施の形態の加速度制御プログラムを示すフローチャートである。
【図3】 目標加減速度を設定するためのマップ例を示す図である。
【図4】 車輪速を入力とし加速度推定値を出力とする連続時間系の伝達関数を状態ベクトルにより表現したブロック図である。
【図5】 エンジン運転点拘束線マップを示す図である。
【図6】 一実施の形態のプラントモデルを示すブロック図である。
【図7】 車両モデルを示すブロック図である。
【図8】 一実施の形態の制御系設計用拡大モデルを状態ベクトルにより表現したブロック図である。
【図9】 一実施の形態のモデルフォローイング制御手法を用いた加速度フィードバック制御系を示すブロック図である。
【図10】 バンドパスフィルターの出力(加速度推定値)αwfをフィードバックするだけの加速度フィードバック制御系のシュミレーション結果を示す図である。
【図11】 バンドパスフィルターの出力(加速度推定値)αwfをフィードバックするだけの加速度フィードバック制御系を示すブロック図である。
【図12】 一実施の形態の加速度フィードバック制御系のシュミレーション結果を示す図である。
【図13】 バンドパスフィルターのみを制御系設計用プラントモデルに組み込み、バンドパスフィルターの内部状態変数のみをフィードバックした加速度フィードバック制御系を示す図である。
【図14】 図13に示す加速度フィードバックのシュミレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 ロックアップクラッチ付きトルクコンバーター
3 無段変速機
4 加減速度コントローラー
5 エンジントルクコントローラー
6 CVT&クラッチコントローラー
7 アクセルセンサー
8 車輪速センサー
9 クランク角センサー
11 プライマリー速度センサー
12 セカンダリー速度センサー
13 高速通信線
14 駆動輪
21 プラントモデル
22 車両モデル
23 バンドパスフィルター
24 エンジン運転点拘束線特性マップ
25 減算器
26 積分器

Claims (2)

  1. 車速を検出する車速検出手段と、
    車両の目標加速度を設定する目標加速度設定手段と、
    車速を入力とし車両の加速度推定値を出力とするバンドパスフィルターの伝達関数を状態ベクトル表現に変換したバンドパスフィルターモデルと、車両モデルとを結合して拡大系プラントモデルを形成し、目標加速度に対して加速度推定値をフィードバックするとともに、バンドパスフィルターの動的特性を表す内部状態変数を加速度補償器へ状態フィードバックする加速度フィードバック制御系を構築し、加速度推定値を目標加速度に一致させるための無段変速機の目標変速比と入力側回転部材の目標入力トルクとを演算する演算手段と、
    無段変速機の入力側回転部材の目標入力トルクにしたがってエンジントルクを制御するエンジントルク制御手段と、
    無段変速機の目標変速比にしたがって無段変速機を制御する変速比制御手段とを備えることを特徴とする無段変速機を備えた車両の加速度制御装置。
  2. 請求項1に記載の無段変速機を備えた車両の加速度制御装置において、
    無段変速機の入力側回転部材の目標入力トルクに応じた入力側回転部材の目標回転速度を設定する目標回転速度設定手段と、
    無段変速機の入力側回転部材の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
    無段変速機の入力側回転部材の目標回転速度と回転速度検出値との偏差の積分値を演算する回転速度偏差積分手段とを備え
    前記演算手段は、前記回転速度偏差積分手段から得られる回転速度偏差積分モデルと前記バンドパスフィルターモデルと前記車両モデルとを結合して拡大系プラントモデルを形成し、加速度推定値とバンドパスフィルターの内部状態変数のフィードバックに加え、無段変速機の入力側回転部材の回転速度偏差積分値をフィードバックすることを特徴とする無段変速機を備えた車両の加速度制御装置。
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