JP2008032990A - レンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】防汚層の蒸着ムラを抑制できるレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】レンズ基材上に直にまたは少なくとも1つの層を挟んで、複数層であって、且つ最表層がSiO層である反射防止層を形成する工程と、反射防止層の表面に蒸着により防汚層を形成する工程とを有する。反射防止層を形成する工程は、蒸着速度Vdが下記(1)式を満たすように最表層を蒸着により成膜する工程を含む。
2.0nm/秒≦Vd≦4.2nm/秒 (1)
【選択図】図3

Description

本発明は、眼鏡レンズなどのレンズを製造する方法に関するものである。
眼鏡レンズなどのレンズ製品には、通常、光の反射を抑制し、光の透過性を高めるために、レンズ基材上に直にまたは少なくとも1つの層を挟んで反射防止層が設けられている。さらに、この反射防止層の表面には、撥水性を備えた防汚層が設けられている。この防汚層は、ユーザが使用する際に付着する手垢、指紋、汗または化粧料などによる汚れを防ぎ、あるいは汚れを拭き取り易くするために設けられている。
特開平9−258003号公報 特開2004−145283号公報
マイナス強度レンズの凹面では、防汚層の蒸着ムラが発生しやすい。防汚層の蒸着ムラが発生すると、特に凹面の外周部において防汚性能が低下する。防汚層の蒸着ムラは、油性インク(油性マーカー)で線を引くと、インクがはじかれずに、はっきりと線が引けることから確認できる。眼鏡レンズなどのレンズ製品では、マイナス強度レンズの凹面における防汚層の性能改善が求められている。
本発明の一態様は、レンズ基材上に直にまたは少なくとも1つの層を挟んで、複数層であって最表層がSiO層である反射防止層を形成する工程と、反射防止層の表面に蒸着により防汚層を形成する工程とを有するレンズの製造方法である。このレンズの製造方法の反射防止層を形成する工程は、蒸着速度Vdが下記(1)式を満たすように最表層であるSiO層を蒸着により成膜する工程を含む。
2.0nm/秒≦Vd≦4.2nm/秒 (1)
反射防止層の最表層の成膜条件を制御することにより、凹面の外周部を含むレンズ面の全体において、反射防止層の最表層の上に形成される防汚層の防汚性能の低下を抑止できることが分かった。すなわち、蒸着速度Vdが2.0nm/秒未満の場合、凹面の外周部において、反射防止層の表面に蒸着された防汚層の防汚性能を確保できず、油性インク(油性マーカー)で線が引けてしまう現象が見られてしまう。一方、蒸着速度Vdが4.2nm/秒を越える速度は、蒸着装置の上限であり、レンズの間で、反射防止層の最表層の膜厚のばらつきが大きくなる。本願で述べる蒸着速度Vd(成膜速度)とは、1秒間に積層される層の膜厚(nm)のことである。
また、このレンズの製造方法によれば、レンズ面の任意の点上の接線と光軸とのなす角度が58度(°)以下となるレンズ面を有するレンズ基材を用いても、凹面外周部を含むレンズ面の全体において、防汚性能の低下を抑止できる。すなわち、このレンズの製造方法は、レンズ面の任意の点上の接線と光軸とのなす角度が58°以下となるレンズ面を有するレンズ基材上に、直にまたは少なくとも1つの層を挟んで、反射防止層と防汚層とを形成する場合に好適である。
防汚層を形成するための組成物の一例は、下記一般式(A)で表される含フッ素シラン化合物と、含フッ素有機化合物から成る溶剤とを含むものである。また、防汚層を形成するための組成物は、下記一般式(A)で表される含フッ素シラン化合物と、含フッ素有機
化合物から成る溶剤と、含フッ素有機化合物から成る溶剤と相溶性を備え、含フッ素有機化合物から成る溶剤を除く有機化合物から成る溶剤とを含むものであってもよい。
Figure 2008032990
ただし、上記一般式(A)中のRfは、パーフルオロアルキル基を表す。Zは、フッ素またはトリフルオロメチル基を表す。a、b、c、d、eは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表し、a+b+c+d+eは、少なくとも1以上であり、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。Yは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xは、水素、臭素またはヨウ素を表す。Rは、水酸基または加水分解可能な置換基を表す。Rは、水素または1価の炭化水素基を表す。uは、0、1または2を表す。vは、1、2または3を表す。wは、1以上の整数を表す。
上記一般式(A)で表される式中のRfとしては、通常、有機含フッ素ポリマーを構成するパーフルオロアルキル基であれば、特に限定されず、例えば、炭素数1〜16の直鎖状または分岐状のものを挙げることができる。好ましくは、CF−、C−、C−である。
上記一般式(A)中のa、b、c、d、eは、含フッ素シラン化合物の主骨格を構成するパーフルオロポリエーテル鎖の繰り返し単位数を表し、0または1以上の整数であり、a+b+c+d+eが1以上であれば特に限定されないが、それぞれ独立して、0〜200が好ましい。さらに、含フッ素シラン化合物の分子量を考慮すれば、より好ましくは、それぞれ独立して、0〜50である。a+b+c+d+eは、好ましくは、1〜100である。
また、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、上記一般式(A)中においては、この順に記載したが、通常のパーフルオロポリエーテル鎖の構成によって、これらの各繰り返し単位の結合順序は、この順に限定されるものではない。
上記一般式(A)中のYは、上記炭素数1〜4のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができ、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Xが臭素またはヨウ素である場合には、上記一般式(A)で表される含フッ素シラン化合物は、ラジカル反応性が高くなるので、化学結合により他の化合物と結合させるのには好都合である。
上記一般式(A)中のuは、パーフルオロポリエーテル鎖を構成する炭素とこれに結合
するケイ素との間に存在するアルキレン基の炭素数を表し、0、1または2であるが、より好ましくは、0である。
上記一般式(A)中のvは、ケイ素に結合する置換基Rの結合数を表し、1、2または3である。置換基Rが結合していない部分には、当該ケイ素にRが結合する。
上記Rが加水分解可能な置換基である場合、加水分解可能な置換基としては特に限定されず、好ましいものとしては、例えば、ハロゲン、−OR11、−OCOR11、−OC(R11)=C(R12、−ON=C(R11、−ON=CR13等を挙げることができる。ただし、R11は、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、R12は、水素または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、R13は、炭素数3〜6の2価の脂肪族炭化水素基を表す。より好ましくは、塩素、−OCH、−OCである。
上記Rは、水素または1価の炭化水素基を表す。上記1価の炭化水素基としては特に限定されず、好ましいものとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。上記1価の炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
上記一般式(A)中のwは、1以上の整数を表し、特に上限はないが、1〜10の整数であることが好ましい。上記一般式(A)で表される含フッ素シラン化合物の分子量は、5×10〜1×10が好ましい。5×10未満では、防汚性能に関する効果を発揮し難く、1×10を超えると加工性に乏しくなる。より好ましくは、1×10〜1×10である。
さらに、含フッ素有機化合物から成る溶剤としては特に限定されず、例えば、以下のようなものが挙げられる。パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3―ジメチルシクロヘキサン、HCFC225(CFCFCHClとCClFCFCHClFとの混合物)等。
また、含フッ素有機化合物から成る溶剤と相溶性を有する有機溶剤は、含フッ素有機化合物から成る溶剤と互いに相溶性があることが必要である。これらの間に相溶性がない場合、混合後に放置した際に相分離を起こす恐れがあるためである。
さらに、含フッ素有機化合物から成る溶剤と相溶性を有する有機溶剤は、特に限定されず、例えば、以下のようなものが挙げられる。アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、フッ素を除くハロゲン化炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類以外の炭化水素類等。また、アルコール類としては特に限定されず、例えば、以下のようなものが挙げられる。炭素数1〜8の一価のアルコール、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等。なかでも、入手容易で含フッ素シラン化合物を溶解するのに好適であることから、炭素数1〜4の一価のアルコールが好ましく、より好ましくは、イソプロパノールである。また、ケトン類としては、特に限定されず、例えば、以下のようなものが挙げられる。アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等。エーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等を挙げることができる。エステル類としては、特に限定されず、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等を挙げることができる。フッ素を除くハロゲン化炭化水素類としては、特に限定されず、例えば、以下のようなものが挙げられる。ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエレン、ブロモベンゼン等。
ハロゲン化炭化水素類以外の炭化水素類等としては、特に限定されず、例えば、以下の
ようなものが挙げられる。ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等。
防汚層を形成する組成物の他の例は、下記一般式(B)で表されるパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの加水分解縮合物と、フッ素有機化合物から成る溶剤とを含んでいるものである。
Figure 2008032990
ただし、上記の一般式(B)中のRfは、式:−(C2k)O−(式中、kは1〜6の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基であり、Rは独立に炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは独立に加水分解性基またはハロゲンであり、sは独立に0〜2の整数であり、tは独立に1〜5の整数であり、hおよびiは独立に2または3である。
ここで、Rf基は、上記のとおり、式:−(C2kO)−(式中、kは1〜6、好ましくは1〜4の整数である)で表わされる単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造からなる2価の基である。なお、一般式(B)中のsが各々0である場合、一般式(B)中の酸素原子に結合するRf基の末端は、酸素原子ではない。
このRf基としては、例えば、下記一般式で示されるものが挙げられる。ただし、Rf基は、下記例示に限定されるものではない。
−CFCFO(CFCFCFO)CFCF−(式中、jは1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の整数である。)
−CF(OC−(OCF−(式中、pおよびqは、それぞれ、1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の整数であり、かつp+qの和は、10〜100、好ましくは20〜90、より好ましくは40〜80の整数であり、この式中の繰り返し単位の(OC)、および(OCF)の配列はランダムである。)
上記の一般式(B)中のXが加水分解性基である場合としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基またはアリロキシ基、イソプロペノキシ等のアルケニルオキシ基またはアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基またはジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロペンノキシム基、シクロヘキサノキシム基等のケトオキシム基またはN−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基またはN−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基またはN,N−ジメチルアミノオキシ基、N,N−ジエチルアミノオキシ基等のアミノオキシ基。
また、Xがハロゲン原子である場合としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等。これらの中でも、Xとしては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基および塩素原子が好適である。
上記の一般式(B)中のRは、炭素原子数1〜8、好ましくは1〜3の一価の炭化水
素基であり、例えば、以下のようなものが挙げられる。メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基またはシクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基またはフェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基またはベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基またはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基。これらの中でもメチル基が好適である。
上記の一般式(B)中のsは0〜2の整数であり、好ましくは1である。また、tは1〜5の整数であり、3であることが好ましい。hおよびiは各々2または3であり、加水分解及び縮合反応性および被膜の密着性の観点から3であることが好ましい。また、上記のパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの分子量は、特に制限されないが、安定性、取扱い易さ等の点から、数平均分子量で500〜20000、好ましくは1000〜10000のものが適当である。
防汚層を形成するための組成物に含めることが可能な溶剤としては、含フッ素有機化合物から成る溶剤で、例えば、以下のようなものが挙げられる。パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン等のフッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤で、1,3−ジ(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤でメチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のフッ素変性エーテル系溶剤でパーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン等のフッ素変性アルキルアミン系溶剤で石油ベンジン。含フッ素有機化合物からなる溶剤は、これらのうちの1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらのなかでも、変性シランの溶解性、塗布対象面の濡れ性等の点で、フッ素変性された溶剤が好ましく、特に、1,3−ジ(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、あるいはパーフルオロトリブチルアミンが好ましい。
また、防汚層を形成するための組成物(塗布剤)には、必要に応じて、加水分解性の官能基またはハロゲン原子の加水分解反応を促進するため、触媒を添加してもよい。触媒としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫等の有機錫化合物、テトラn−ブチルチタネート等のチタン含有有機化合物、酢酸、メタンスルホン酸等の有機酸、硫酸等の無機酸。触媒は、これらのうちの1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの中でも、特に、酢酸、テトラn−ブチルチタネート、あるいはジラウリン酸ジブチル錫が好ましい。触媒を添加する場合、その添加量は特に制限されず、触媒としての有効量であればよいが、通常、変性シラン100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部の範囲とされる。
本発明の一実施形態にかかるレンズの製造方法は、レンズ基材上に直にまたは少なくとも1つの層を挟んで、複数層であって最表層がSiO層である反射防止層を形成する工程と、反射防止層の表面に防汚層を形成する工程とを有するレンズの製造方法である。このレンズの製造方法において、反射防止層を形成する工程は、蒸着速度Vdが下記(1)式を満たすように最表層を蒸着により成膜する工程を含む。
2.0nm/秒≦Vd≦4.2nm/秒 (1)
従来、複数層の反射防止層を形成する工程では、蒸着速度Vdが2.0nm/秒未満、殆どのケースでは蒸着速度が1.0nm前後あるいはそれ以下となるように、最表層を蒸着により成膜していた。しかしながら、眼鏡レンズの凹面外周部において防汚性能が低下するという現象が見られることがあった。防汚性能の低下は、防汚層の撥水性により弾か
れてしまうはずの油性インク(油性マーカー)で線が引けてしまう現象として顕著に現れる。本願発明者は、このような防汚層の防汚性能の低下は、防汚層の蒸着ムラであると考え、その発生原因の1つは、反射防止層の最表層の凹凸であると考えた。
すなわち、反射防止層の上に形成される防汚層に蒸着ムラが生じ、所定の厚みが確保できないことが防汚性能の低下になると考えた。この現象は、レンズ凹面の外周部(周縁部)の、蒸着面が傾いている部分で見られ、特に、補正強度の大きいレンズである程、防汚性能の低下が見られる傾きは大きい。このため、傾斜したワークの上に蒸着を行うことと同じような状態が防汚性能の低下の要因である可能性が高い。傾斜したワークでは、傾斜角が大きくなる程、蒸着物質の入射量に対して揮発性ガスの入射量が相対的に増加するため、膜厚が減少する傾向があるからである。
また、反射防止層の最表層を蒸着する際、蒸着物質の入射量に対して揮発性ガスの入射量が相対的に増加すると、膜厚が減少するだけでなく、反射防止層の最表層が緻密に形成されにくくなるという傾向がある。したがって、眼鏡レンズの凹面の傾斜角度が大きな部分では、反射防止層の最表層の内部に空隙が多くなり、結果として、反射防止層の表面の凹凸が大きくなると考えられる。反射防止層の表面の凹凸が大きくなると、比表面積が増大する。このため、防汚層の膜厚が減少し、その傾向は特に、レンズ凹面の周縁部において大きい。したがって、レンズの凹面の周縁部のレンズ表面から後退した部分に形成された防汚層は、防汚性能を十分に発揮することができない場合があると考えられる。
この実施形態では、反射防止層の最表層の蒸着速度Vdを2.0nm/秒以上に増加させることにより、揮発性ガスの入射量を相対的に減少させている。すなわち、蒸着速度Vdを上げることにより、蒸着中の層に対する揮発性ガスの入射量を相対的に減少させ、傾斜した部分に成膜された層においても蒸着中の揮発性ガスの入射量を減らすようにしている。この製造方法により、傾斜した部分に成膜される層に対する揮発性ガスの入射量を、従来の平面あるいは傾斜角度の緩やかな部分に成膜される層と同等あるいはそれに近い値に抑制することが可能となり、反射防止層の表面の凹凸の発生を抑制できる。その結果、凹面の周辺のように傾いた部分であっても反射防止層の少なくとも最表面の層を緻密に成膜することができ、反射防止層の表面の比表面積を減少できる。これにより、レンズ凹面の周縁部における防汚層の膜厚の減少を抑制でき、防汚性能の低下を抑制できる。
本発明の製造方法は、反射防止層の最表層(SiO層)に加えて、それ以外の層の蒸着速度Vdを2.0nm/秒以上に上げることを含む。しかしながら、反射防止層の最表層(SiO層)以外の層の蒸着速度Vdを上げても、防汚性能の低下抑制に与える効果は小さかった。例えば、高屈折率層であるZrO層やTiO層の蒸着速度Vdを上げても効果はほとんどなかった。これは、SiO層が非晶質であるのに対し、ZrO層やTiO層が結晶質であるためであることが1つの要因だと考えられる。また、反射防止層の最表層以外のSiO層の蒸着速度Vdを上げても効果はほとんどなかった。防汚性能の低下の抑制には、防汚層と接する、反射防止層の最表層であるSiO層の蒸着速度を上げることが最も効果的であった。
反射防止層の最表層であるSiO層の蒸着速度Vdを上げ過ぎると、蒸着時間が短くなる。このため、蒸着装置の機構、例えば、蒸着のためにレンズをセットする支持装置(ドーム)の回転速度との兼ね合いなどに起因し、レンズ間において、反射防止層の最表層の膜厚のばらつきが大きくなる場合がある。レンズ間における反射防止層の最表層の膜厚のばらつきを抑制しつつ、しかも、防汚性能の低下を抑制するためには、反射防止層の最表層の蒸着速度Vdは、2.0nm/秒以上、4.2nm/秒以下であることが好ましいことを、本願発明者は見出した。
なお、反射防止層の最表層であるSiO層の蒸着速度Vdを上げることによる、反射防止層および防汚層の耐久性への影響はなかった。ただし、反射防止層の最表層であるSiO層の蒸着速度を上げると、屈折率が若干増加する場合がある。この場合、反射防止層の最表層であるSiO層の膜厚を微調整してもよい。
以下では、眼鏡用のプラスチックレンズを製造する工程の一部分を例に説明する。図1に、レンズ基材の表面をコーティングする成膜装置(蒸着装置)の概略構成を示してある。成膜装置50は、支持装置80が内部を通過可能な3つのチャンバー101、102および103を備えている。これらのチャンバー101〜103は連結され、支持装置80がレンズ基材40を保持した状態で通過可能である。また、各々のチャンバー101〜103は相互に密封できるようになっており、各チャンバー101〜103の内圧を真空生成装置52、53および54によりそれぞれ制御できるようになっている。
支持装置80は、上方に凸に湾曲したドームと称される支持部分81を備えており、ドーム81は中心82の回りに一定速度で回転できるようになっている。ドーム81の上面には、複数のレンズ(ワーク)40をセットすることが可能である。ドーム81に複数のワーク40をセットした状態で支持装置80を成膜装置50のチャンバー101〜103に入れ、ドーム81を所定の速度で回転させながらワーク40の表面に所定の物質を蒸着することにより成膜する。
チャンバー101は、エントランスまたはゲートチャンバーであり、外部から支持装置80を導入した後、一定時間、一定の圧力以下にチャンバー101の内部を保持することにより、脱ガスを行う。チャンバー101には、ルーツポンプ52a、ロータリーポンプ52b、およびクライオポンプ52cを備えた真空生成装置52が設けられている。
チャンバー102は、反射防止層(AR層)10を成膜する第2のチャンバーである。このため、このチャンバー102の内部には、AR層蒸着源55aおよび55b、これらに対応する2つの電子銃56、および蒸着量を調整する開閉可能な2つのシャッター57が設けられている。AR層10は、二酸化ケイ素を主成分とする薄膜と、他の部材の薄膜、たとえば、TiO2、Nb23、Ta25、ZrO2の1つまたは複数が積層された構造が採用される。このため、少なくとも2つの膜蒸着源55aおよび55bが用意されている。チャンバー102は、ルーツポンプ53a、ロータリーポンプ53b、およびクライオポンプ53cを備えた真空生成装置53により適当な圧力に保持される。
また、チャンバー102にはプラズマ処理を行うための、高周波プラズマ発生装置が設置されている。高周波プラズマ発生装置は、チャンバー内に設置されたRFコイル60と、チャンバー102外でこれに接続されるマッチングボックス61と、高周波発信器62とから構成されている。プラズマ処理時に導入されるガスは、オートプレッシャーコントロールで所定の圧力になるように、マスフローコントローラによって流量が制御される。
チャンバー103は、防汚層を形成するチャンバーである。そのため、チャンバー内部には、防汚層蒸着源59と、加熱ヒータ(ハロゲンランプ)68と、補正板67とが設置されている。補正板67は、固定式であり開度を調整することにより、支持装置80に向かって放出される蒸着量を調整できるようになっている。チャンバー103は、ルーツポンプ54a、ロータリーポンプ54b、およびターボ分子ポンプ54cを備えた真空生成装置54により適当な圧力に保持される。
この成膜装置50において、レンズ基材40に反射防止層および防汚層を形成するためには、以下のようにする。レンズ基材40がセットされた支持装置80をチャンバー101に導入し、脱ガスする。プラスチックレンズの場合は、プラスチック基材41に予めハ
ードコート層42が形成されたレンズ基材(ワーク)40が支持装置80のドーム81にセットされる。ガラスレンズの場合は、ハードコート層が形成されてないガラス基材がレンズ基材(ワーク)40として支持装置80のドーム81にセットされる。
次に、支持装置80はチャンバー102に導かれ、ワーク40の表面に反射防止層(AR層)10が成膜される。この過程では、複数の薄膜が積層され、最上層は、二酸化ケイ素(SiO)を主成分とする薄膜が形成される。高周波プラズマは、およそ10-3Paから103Paで発生可能であるが、1×10-2Paから1×10-1Paが好適である。
高周波プラズマの周波数は、13.56MHzが通常用いられる。
続いて、支持装置80は、チャンバー103に導かれ、膜蒸着源59を加熱ヒータ68で加熱することで、ワーク40の表面に防汚層30が形成される。
防汚層30が成膜された後、チャンバー103は徐々に大気圧に戻され、ワーク40が支持装置80ごと取り出される。
その後、ワーク40は表裏反転して再度、支持装置80のドーム81にセットされ、上述と同様な工程で処理を行う。これによって、ワーク40の両面に、反射防止層10と防汚層30が形成された製品49が得られる。
以下に、レンズ(本例では眼鏡用のプラスチックレンズ)49の製造方法の実施例および比較例を説明する。図2(a)および(b)に、眼鏡用のプラスチックレンズの積層構造を模式的に示してある。図3に、実施例1〜4および比較例1〜8について、基材、反射防止層、防汚層、蒸着速度Vd、レンズ度数、凹面の曲率半径、レンズ面の任意の点上の接線と光軸とのなす角度、防汚層の蒸着ムラについて纏めて示してある。
(実施例1)
ワーク40として、プラスチックレンズ基材41(セイコーエプソン株式会社製:セイコースーパーソブリン(SSV))の上にハードコート層42が形成された眼鏡用プラスチックレンズを用意した。プラスチック基材41は、レンズ度数が−12D(ディオプター)、凹面の曲率半径が52.96mm、ワーク40の直径は72mmであり、レンズ面(凹面)の周縁部の接線と光軸とのなす角度(小さい方の角度)が48度である。
このワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とZrO2の層を交互に蒸着し、図2(a)で示すような5層構造からなる反射防止層10を形成した。すなわち、この反射防止層10の第1層11はSiO2層、第2層12はZrO2層、第3層13はSiO2層、第4層14はZrO2層、第5層(最上層)15はSiO2層である。最上層15は、蒸着速度(成膜速度)Vd
が2.1nm/秒となるように成膜した。
その後、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。蒸着源59としては、信越化学工業株式会社製のパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの加水分解縮合物(製品名KY−130)を用いた。これは、下記の一般式(B)で表される組成物を含有している。
Figure 2008032990
一般式(B)において、Rfは、式:−(C2k)O−(前記式中、kは1〜6
の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基であり、Rは独立に炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは独立に加水分解性基またはハロゲンであり、sは独立に0〜2の整数であり、tは独立に1〜5の整数であり、hおよびiは独立に2または3である。
KY−130を、含フッ素有機化合物から成る溶剤(フッ素系溶剤、住友スリーエム株式会社製:ノベックHFE−7200)に希釈して固形分濃度3%溶液を調製し、これを多孔質セラミックス製のペレットに1g含浸させ乾燥させたものを蒸着源59としてチャンバー103にセットした。
成膜中は、ハロゲンランプを加熱ヒータ68として使用し、蒸着源59のペレットを600℃に加熱して、フッ素含有有機ケイ素化合物(パーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの加水分解縮合物)を蒸発させた。蒸着時間は3分である。防汚層形成後、支持装置80をチャンバーから取り出し、レンズを反転して支持装置80にセットし直し、再び上記と同様の処理を行うことによって、レンズ両面に防汚層を形成した。その後、ワーク40を取り出し、60℃,80%RHに設定した高温高湿槽に投入して2時間保持し、フッ素含有有機ケイ素化合物とレンズ表面との反応を進行させた。
(実施例2)
実施例1と同様のワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とZrO2の層を交互に蒸着し、図2(a)で示すような5層構造からなる反射防止層10を形成した。最上層15は、蒸着速度(成膜速度)Vdが2.1nm/秒となるように成膜した。
その後、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。蒸着源59としては、ダイキン工業株式会社製の含フッ素シラン化合物(フッ素含有有機ケイ素化合物、オプツールDSX)を用いた。これは、下記の一般式(A)で表される組成物を含有している。
Figure 2008032990
一般式(A)において、Rfは、パーフルオロアルキル基を表す。Zは、フッ素またはトリフルオロメチル基を表す。a、b、c、d、eは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表し、a+b+c+d+eは、少なくとも1以上であり、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。Yは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xは、水素、臭素またはヨウ素を表す。Rは、水酸基または加水分解可能な置換基を表す。Rは、水素または1価の炭化水酸基を表す
。uは、0、1または2を表す。vは、1、2または3を表す。wは、1以上の整数を表す。
オプツールDSXを、含フッ素有機化合物から成る溶剤(フッ素系溶剤、ダイキン工業株式会社製:デムナムソルベント)に希釈して固形分濃度3%溶液を調製し、これを多孔質セラミックス製のペレットに1g含浸させ乾燥させたものを蒸着源59としてチャンバー103にセットした。
成膜中は、ハロゲンランプを加熱ヒータ68として使用し、蒸着源59のペレットを630℃に加熱して、フッ素含有有機ケイ素化合物(含フッ素シラン化合物)を蒸発させた。蒸着時間は3分である。防汚層形成後、支持装置80をチャンバーから取り出し、レンズを反転して支持装置80にセットし直し、再び上記と同様の処理を行うことによって、レンズ両面に防汚層を形成した。その後、ワーク40を取り出し、60℃,80%RHに設定した高温高湿槽に投入して2時間保持し、フッ素含有有機ケイ素化合物とレンズ表面との反応を進行させた。
(実施例3)
実施例1と同様のワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とTiO2の層を交互に蒸着し、図2(b)で示すような7層構造からなる反射防止層20を形成した。すなわち、この反射防止層20の第1層21はSiO2層、第2層22はTiO2層、第3層23はSiO2層、第4層2
4はTiO2層、第5層25はSiO2層、第6層26はTiO2層、第7層(最上層)2
7はSiO2層である。5層目のSiO2層25は、蒸着速度(成膜速度)Vdが3.2nm/秒となるように成膜した。7層目(最上層)のSiO2層27は、蒸着速度(成膜速
度)3.7nm/秒で成膜した。その後、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。防汚層30は、第1の実施例と同様に形成した。
(実施例4)
実施例1と同様のワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とTiO2の層を交互に蒸着し、図2(b)で示すような7層構造からなる反射防止層20を形成した。この反射防止層20の最上層27は、SiO2層である。5層目のSiO2層25は、蒸着速度(成膜速度)Vdが2.7nm/秒となるように成膜した。7層目(最上層)のSiO2層27は、蒸着速度(成膜
速度)Vdが3.3nm/秒となるように成膜した。その後、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。防汚層30は、第2の実施例と同様に形成した。
(比較例1)
実施例1と同様のワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とZrO2の層を交互に蒸着し、図2(a)で示すような5層構造からなる反射防止層10を形成した。最上層15は、蒸着速度(成膜速度)Vdが0.8nm/秒となるように成膜した。その後、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。防汚層30は、第1の実施例と同様に形成した。
(比較例2)
ワーク40として、プラスチック基材41(セイコーエプソン株式会社製:セイコースーパーソブリン(SSV))の上にハードコート層42が形成された眼鏡用プラスチックレンズを用意した。このプラスチック基材41は、レンズ度数が−11D(ディオプター)、凹面の曲率半径が57.57mm、レンズ半径が72mm、レンズ面(凹面)の周縁
部の接線と光軸とのなす角度が52度となるものを選択した。
このワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とZrO2の層を交互に蒸着し、図2(a)で示すような5層構造からなる反射防止層10を形成した。最上層15は、蒸着速度(成膜速度)Vdが0.8nm/秒となるように成膜した。その後、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。防汚層30は、第1の実施例と同様に形成した。
(比較例3)
ワーク40として、プラスチック基材41(セイコーエプソン株式会社製:セイコースーパーソブリン(SSV))の上にハードコート層42が形成された眼鏡用プラスチックレンズを用意した。このプラスチック基材41は、レンズ度数が−10D(ディオプター)、凹面の曲率半径が63.05mm、レンズ半径が72mm、レンズ面(凹面)の周縁部の接線と光軸とのなす角度が55度となるものを選択した。
このワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とZrO2の層を交互に蒸着し、図2(a)で示すような5層構造からなる反射防止層10を形成した。最上層15は、蒸着速度(成膜速度)Vdが0.7nm/秒となるように成膜した。その後、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。防汚層30は、第1の実施例と同様に形成した。
(比較例4)
レンズ基材40として、プラスチック基材41(セイコーエプソン株式会社製:セイコースーパーソブリン(SSV))の上にハードコート層42が形成された眼鏡用プラスチックレンズを用意した。このプラスチック基材41は、レンズ度数が−9D(ディオプター)、凹面の曲率半径が69.69mm、レンズ半径が、レンズ面(凹面)の周縁部の接線と光軸とのなす角度が58度となるものを選択した。
このワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とZrO2の層を交互に蒸着し、図2(a)で示すような5層構造からなる反射防止層10を形成した。最上層15は、蒸着速度(成膜速度)Vdが0.8nm/秒となるように成膜した。その後、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。防汚層30は、第1の実施例と同様に形成した。
(比較例5)
レンズ基材40として、プラスチック基材41(セイコーエプソン株式会社製:セイコースーパーソブリン(SSV))の上にハードコート層42が形成された眼鏡用プラスチックレンズを用意した。このプラスチック基材41は、レンズ度数が−8D(ディオプター)、凹面の曲率半径が75.66mm、レンズ半径が、レンズ面(凹面)の周縁部の接線と光軸とのなす角度が61度となるものを選択した。
このワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とZrO2の層を交互に蒸着し、図2(a)で示すような5層構造からなる反射防止層10を形成した。最上層15は、蒸着速度(成膜速度)Vdが0.8nm/秒となるように成膜した。その後、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。防汚層30は、第1の実施例と同様に形成した。
(比較例6)
実施例1と同様のワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とZrO2の層を交互に蒸着し、図2(a)で
示すような5層構造からなる反射防止層10を形成した。最上層15は、蒸着速度(成膜速度)Vdが0.7nm/秒となるように成膜した。その後、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。防汚層30は、第2の実施例と同様に形成した。
(比較例7)
実施例1と同様のワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とTiO2の層を交互に蒸着し、図2(b)で示すような7層構造からなる反射防止層20を形成した。5層目のSiO2層25は、蒸
着速度(成膜速度)Vdが1.4nm/秒となるように成膜した。7層目(最上層)のSiO2層27は、蒸着速度Vdが(成膜速度)1.8nm/秒となるように成膜した。そ
の後、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。防汚層30は、第1の実施例と同様に形成した。
(比較例8)
実施例1と同様のワーク40を支持装置80にセットし、チャンバー101で脱ガスした後、チャンバー102において、SiO2とTiO2の層を交互に蒸着し、図2(b)で示すような7層構造からなる反射防止層20を形成した。5層目のSiO2層25は、蒸
着速度(成膜速度)Vdが1.3nm/秒となるように成膜した。7層目(最上層)のSiO2層27は、蒸着速度(成膜速度)が1.9nm/秒となるように成膜した。その後
、チャンバー103に支持装置80を移動して防汚層30を形成した。防汚層30は、第2の実施例と同様に形成した。
(防汚層の蒸着ムラの評価方法)
得られた各レンズ(眼鏡用のプラスチックレンズ)49の凹面に、黒色油性マーカー(「ハイマッキーケア」ゼブラ株式会社製)により直線を引き、防汚層の蒸着ムラを目視にて評価した。「○」は、インクがはじかれて点状になり、インクが引ける領域が発生しなかったことを示し、「×」は、インクがはじかれず、インクが引ける領域が発生したことを示している。
(評価結果)
実施例のように製造した各レンズ(眼鏡用のプラスチックレンズ)49の凹面は、いずれもレンズの全面、すなわち、傾斜角度の大きなレンズの周縁部においても、インクが弾かれており、傾斜角度の大きな部分においても十分な防汚性能が得られることが分かった。したがって、実施例の各ワークに成膜された防汚層には、蒸着ムラが無い、あるいは周縁部の傾斜角度の大きな部分においても防汚性能に大きな影響を与えるような蒸着ムラが見られないことがわかった。
これに対し、比較例のように製造した場合、まず、レンズ面(凹面)の周縁部の接線と光軸とのなす角度が58度以上である場合には、レンズの全面、すなわち、周縁部も含めて十分な防汚性能が得られており、防汚性能に影響を与えるような防汚層の蒸着ムラが見られないと考えられる。一方、周縁部の接線と光軸とのなす角度が58度未満となるようなプラスチック基材41を用いた場合、レンズ面(凹面)、特に周縁部において防汚性能の低下が見られ、防汚性能に影響を与える程度の防汚層の蒸着ムラが生じていることが分かる。
これより、実施例に記載したように、反射防止層の最表層(最上層)のSiO2層の蒸
着速度Vdを2.0nm/秒以上にする製造方法を用いることにより、反射防止層の最表層の上に形成される防汚層の蒸着ムラが抑制され、防汚性能の低下が抑止できることがわかった。一方、蒸着速度Vdが4.2nm/秒を越えると、最表層(最上層)のSiO2
層の膜厚のばらつきを所定の範囲に収めるために必要とされる支持装置80のドーム81の回転数が確保できず、反射防止層の最表層の膜厚のばらつきが大きくなる。また、実施例に記載したような製造方法は、レンズ面の任意の点上の接線と光軸とのなす角度が58度以下、例えば48度以下となるレンズ面を有するレンズ基材を用いても、レンズ面(凹面)に防汚層の蒸着ムラを抑制できることがわかった。
なお、本願発明は、眼鏡レンズあるいはその他のレンズに限らない。例えば、画像表示装置のパネル、プリズム、光ファイバー、情報記録媒体の光学系、光学フィルタなど、多種多様なものが含まれる。特に、近年、光学製品は平面的な形態のものに限られないものが含まれつつあり、本発明は、曲面あるいは斜面を含む種々の形態の光学製品に適用できるものである。
真空蒸着装置の概略図。 (a)および(b)は、眼鏡用のプラスチックレンズの積層構造を模式的に示す図。 実施例1〜4および比較例1〜8について、基材、反射防止層、防汚層、蒸着速度、レンズ度数、凹面の曲率半径、レンズ面の任意の点上の接線と光軸とのなす角度、防汚層の蒸着ムラについて纏めて示した図。
符号の説明
10 反射防止層、 15、27 最表層
30 防汚層、 40 レンズ基材、 49 光学製品

Claims (4)

  1. レンズ基材上に直にまたは少なくとも1つの層を挟んで、複数層であって、且つ最表層がSiO層である反射防止層を形成する工程と、
    前記反射防止層の表面に蒸着により防汚層を形成する工程とを有するレンズの製造方法であって、
    前記反射防止層を形成する工程は、蒸着速度Vdが下記(1)式を満たすように前記最表層であるSiO層を蒸着により成膜する工程を含む、レンズの製造方法。
    2.0nm/秒≦Vd≦4.2nm/秒 (1)
  2. 請求項1において、前記レンズ基材は、前記レンズ基材のレンズ面上の任意の点における接線と光軸とのなす最小角度が58°以下となる凹面を有する、レンズの製造方法。
  3. 請求項1または2において、前記防汚層を形成するための組成物は、下記一般式(A)で表される含フッ素シラン化合物と、含フッ素有機化合物から成る溶剤とを含む、レンズの製造方法。
    Figure 2008032990
    ただし、式中、Rfは、パーフルオロアルキル基を表す。Zは、フッ素またはトリフルオロメチル基を表す。a、b、c、d、eは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表し、a+b+c+d+eは、少なくとも1以上であり、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。Yは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xは、水素、臭素またはヨウ素を表す。Rは、水酸基または加水分解可能な置換基を表す。Rは、水素または1価の炭化水酸基を表す。uは、0、1または2を表す。vは、1、2または3を表す。wは、1以上の整数を表す。
  4. 請求項1または2において、前記防汚層を形成するための組成物は、下記一般式(B)で表されるパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの加水分解縮合物と、含フッ素有機化合物から成る溶剤とを含む、レンズの製造方法。
    Figure 2008032990
    ただし、式中、Rfは、式:−(C2k)O−(前記式中、kは1〜6の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエー
    テル構造を有する2価の基であり、Rは独立に炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは独立に加水分解性基またはハロゲンであり、sは独立に0〜2の整数であり、tは独立に1〜5の整数であり、hおよびiは独立に2または3である。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013241569A (ja) * 2012-04-27 2013-12-05 Daikin Industries Ltd パーフルオロポリエーテル基含有シラザン化合物

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