JP4023065B2 - 反射防止部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚性を有する反射防止部材に関するものである。さらに詳しくは防汚剤を速やかに定着させる構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レンズ等の反射防止膜付き光学部材では、汗、指紋等による汚れが付着しやすく、一度付着した汚れを除去することは困難であった。これらの問題を解決する手段として、フルオロアルキルシラン等の薄膜を用いた防汚層あるいは撥水層が提案されている。
【0003】
特開平5−215905号公報にあるように真空蒸着法を用いて形成するフルオロアルキルシラザンや、特開平6−122778号公報にあるようにプラズマCVD法を用いて形成するフルオロアルキルシランや、特開平8−209118号公報にあるようにフッ素化合物とオルガノポリシロキサンの混合物などの撥水層の場合には、材料自体の強力な反応性あるいはプラズマのアシスト作用に起因する高い定着性により、材料本来の撥水性能を発現させることができた。
【0004】
しかし、防汚性能に関する要求が高まり、表面滑り性のよい防汚材料や特開平9−61605号公報にあるようにエーテル結合を有する柔軟な分子構造を持つフッ素化合物を用いた防汚層が開発されると、材料自体の防汚性能は格段に向上したが同時にその低い反応性が災いして定着性が低くなり、指紋拭き取り性などで材料本来の防汚性能を発現できなかった。
【0005】
エーテル結合に代表されるように材料自体が柔軟な分子構造をもつことが、防汚性能を発現させるうえで本質的役割を担っており、末端の官能基の反応性が高すぎると3次元的な架橋が発生し、柔軟な構造すなわち防汚性を阻害することがわかってきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記防汚性能に優れる防汚剤は浸透性にすぐれ、反応性が若干弱いことから定着性に劣り、下地材料に染み込んでしまう等の現象が発生して材料本来の防汚性能が発現しない欠点があった。
【0007】
本発明は上記の欠点を鑑み、指紋拭き取り性等の防汚性能に優れた反射防止部材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明としては基材上の少なくとも片面に、ハードコート層と、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した反射防止層と中間層と防汚層をこの順に積層した反射防止部材において、前記高屈折率層が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、ITOから選択された材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法のいずれかを用いて成膜したものであり、且つ、前記低屈折率層が、酸化ケイ素、弗化マグネシウム、弗化カルシウム、弗化バリウムから選択された材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法のいずれかを用いて成膜したものであり、且つ、
反射防止層における最上層の低屈折率層と防汚層の中間に設けられる前記中間層が、Ti、Al、酸化チタン、酸化アルミから選択される材料を蒸着法あるいはスパッタ法により成膜したものであり、且つ、前記防汚層が、パーフルオロポリエーテル基と末端に加水分解基を含有する有機シラン化合物を真空蒸着法により成膜したものであることを特徴とする反射防止膜とした。
【0011】
上記中間層が防汚剤の浸透を防ぎバリアー層の役目を果たし、あるいは末端の官能基の反応を促進する触媒的効果を発揮することにより、防汚剤の定着性をあげることで防汚性能を向上させる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
基材の片面に、ハードコート層、反射防止層、防汚層を積層した場合を図1に示す。
【0013】
基材1はプラスチック、ガラスからなるディスプレー用部材あるいはメガネレンズや、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセチルセルロース等のフィルム基材が目的・用途により適宜選択される。
【0014】
ハードコート層2としてはアクリル系やシリコン系の樹脂材料を用いる。紫外線硬化や熱硬化法を用いて3〜20μmの厚さに塗工する。このハードコート層に平均粒径0.01〜3μmの透明な粒子を分散させて、アンチグレアと呼ばれる光拡散性の処理を施すこともできる。
【0015】
反射防止層3の高屈折率材料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、ITO等があげられるが、屈折率n=1.80以上のものであれば特に限定されるものではない。
【0016】
反射防止層3の低屈折率材料としては、酸化珪素、弗化マグネシウム、弗化カルシウム、弗化バリウム等あげられるが、屈折率n=1.60以下のものであれば特に限定されるものではない。
【0017】
これらの材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いて成膜する。各層の厚さは光学膜厚で10〜200nmである。
【0018】
中間層4は金属膜としては、Ti、Alが、セラミックス膜としては酸化チタン、酸化アルミニウムがあげられる。
【0019】
これらの材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いて成膜する。ただし、反射防止機能を阻害しないよう、層の厚さは光学膜厚で10nm以下である必要がある。
【0020】
防汚層5はパーフルオロポリエーテル基を含有する平均分子量1000〜10000の有機シラン化合物からなる防汚剤が使用される。
【0021】
特に、Rf −(OC36n −O−(CF2m −(CH2l −O−(CH2s −Si(R)3 (但し、Rf は炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、特にCF3 −、C25 −、C37 −が好ましい。
【0022】
Rは加水分解基であり、−Cl、−Br、−I、−OR1 、−OOCR1 、−OC(R1 )C=C(R22 、−ON=C(R12 、−ON=CR3 、−N(R22 、−R2 NOCR1 等が好ましい。
【0023】
1 はアルキル基等の炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、またはフェニル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、R2 は水素原子またはアルキル基等の炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、R3 はアルキリデン基等の炭素数3〜6の二価の脂肪族炭化水素基である。
【0024】
上記の有機シラン化合物中の加水分解基は、1種類のみならず、2種類以上の混合系として用いることも可能である。特に、−OCH3 、−OC25 、−OOCCH3 、−NH2 が好ましい。また、nは1〜50の整数、mは0〜3の整数、Iは0〜3の整数、sは0〜6の整数、ただし、6≧m+l>0である。)(以下化合物1と称する)またはその重合体が好適である。
【0025】
作業環境や、膜厚の制御の点から、防汚層形成時には希釈溶媒を用いないPVD法によることが好ましく、特に真空蒸着法によることが好ましい。形状膜厚で5〜10nm程度成膜する。
【0026】
【実施例】
次に本発明を、具体例をあげて詳細に説明する。
【0027】
(実施例1)
透明プラスチックフィルム基材1のトリアセチルセルロース80μm上に、ハードコート層2として多官能性アクリル樹脂を紫外線照射硬化法により形成した後、反射防止層3の高屈折率層としてTiO2 を低屈折率層としてSiO2 を真空蒸着法により交互に積層し、中間層4として各種金属をDCマグネトロンスパッタリング法を用いて2nm成膜した。更に防汚層5として、化合物1であるパーフルオロポリエーテル基を含有する有機シラン化合物を真空蒸着法により10nm程度成膜した。
【0028】
これらの反射防止部材の防汚性能を下表に示す。接触角測定は協和界面科学(株)製CA−X型接触角計を用いた。指紋拭き取り性は、指紋の付着のしづらさと市販のティッシュペーパーを用いて拭き取りの容易さを相対比較した。
概して接触角は高く、優れた指紋拭き取り性を示した。
【0029】
(実施例2)
実施例1と同様の反射防止積層体に、中間層4として各種酸化物を真空蒸着法を用いて2nm成膜した。更に防汚層5として、化合物1のパーフルオロポリエーテル基を含有する有機シラン化合物を真空蒸着法により10nm程度成膜した。
【0030】
これらの反射防止部材の防汚性能を下表に示す。概して接触角は高く、優れた指紋拭き取り性を示した。
【0031】
(比較例3)
実施例1と同様の反射防止積層体に、防汚層5として、化合物1のパーフルオロポリエーテル基を含有する有機シラン化合物を真空蒸着法により10nm程度成膜した。
【0032】
これらの反射防止部材の防汚性能を下表に示す。概して接触角は低く、指紋拭き取り性も若干劣った。
【0033】
【表1】
Figure 0004023065
【0034】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明の構成によれば、指紋拭き取り性等の防汚性能に優れた反射防止部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 ハードコート層
3 反射防止層
4 中間層
5 防汚層

Claims (1)

  1. 基材上の少なくとも片面に、ハードコート層と、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した反射防止層と中間層と防汚層をこの順に積層した反射防止部材において、
    前記高屈折率層が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、ITOから選択された材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法のいずれかを用いて成膜したものであり、且つ、
    前記低屈折率層が、酸化ケイ素、弗化マグネシウム、弗化カルシウム、弗化バリウムから選択された材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法のいずれかを用いて成膜したものであり、且つ、
    反射防止層における最上層の低屈折率層と防汚層の中間に設けられる前記中間層が、Ti、Al、酸化チタン、酸化アルミから選択される材料を蒸着法あるいはスパッタ法により成膜したものであり、且つ、
    前記防汚層が、パーフルオロポリエーテル基と末端に加水分解基を含有する有機シラン化合物を真空蒸着法により成膜したものであることを特徴とする反射防止膜。
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