JP6061477B2 - 光学部材および光学部材の製造方法 - Google Patents
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Description
プラスチックレンズは、従来のガラスレンズと比較して、軽量、かつ加工性に優れ、さらに、比較的衝撃に対しても優れた強度を発揮するという長所を有する。一方、硬度が低いことに起因してガラスレンズよりも耐摩擦性および耐候性に劣る。
さらに、プラスチックレンズをメガネレンズに適用する場合、ハードコート層上に反射防止層が形成されることが一般的であるが、反射防止層とハードコート層との屈折率差が大き過ぎると干渉縞が発生するため、ハードコート層の構成材料としても高屈折率のものが求められている。
より具体的には、有機ケイ素化合物またはその加水分解物と、金属酸化物(複合酸化物ゾル)とを含有するハードコート材料を用意し、このハードコート材料をプラスチックレンズ上に供給した後、加熱することでゲル化させてハードコート層を得るゾル・ゲル法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、このようなゾル・ゲル法を用いてメガネレンズにハードコート層を形成した場合、通常、メガネレンズが湾曲面で構成されていることに起因して、メガネレンズの端部において、ハードコート層が厚膜化し、その結果、この端部において、ハードコート層にクラックが生じるという問題がある。
本発明の光学部材は、
湾曲面を有するレンズ基材と、
前記光学部材の光軸方向から見た平面視において、該レンズ基材の縁部を覆うように形成された多孔質の中間層と、
前記平面視において、前記レンズ基材および前記中間層を覆うように形成されたハードコート層と、を有し、
前記ハードコート層は、前記平面視において、前記ハードコート層の縁部に形成され、かつ、前記ハードコート層の中央部よりも膜厚が厚い厚膜部を備えており、
前記中間層の膜厚の最大値をA[μm]とし、前記厚膜部における膜厚の最大値をB[μm]としたとき、A/Bが3%以上、20%以下となる関係を満足することを特徴とする。
これにより、ハードコート層を、クラックを生じることなく形成することができる。
本発明の光学部材では、前記平面視において、前記中間層は、幅が0.1mm以上、15mm以下であることが好ましい。
これにより、例えば光学部材をメガネレンズに使用した場合に、玉型加工される範囲(フィニッシュトレンズ)の外側に中間層を形成でき、かつ、中間層としての機能を発揮させることができる。これにより、ハードコート層に、クラックを生じることなく、形成できる。
これにより、前記A/B×100の関係を前記範囲内に設定されたものとすることができる。
本発明の光学部材では、前記ハードコート層の中央部における膜厚が1.5μm以上50.0μm以下であることが好ましい。
これにより、レンズ基材およびハードコート層と中間層との密着性を向上させることができる。
これにより、目的とする膜厚のハードコート層がクラックを生じることなく形成されている光学部材とすることができる。
本発明の光学部材では、前記レンズ基材は、湾曲凸面と湾曲凹面とを有し、前記湾曲凸面に、前記中間層と、前記ハードコート層とが設けられていることが好ましい。
これにより、ハードコート層は、優れた強度を有するものとなる。
湾曲面を有するレンズ基材の、前記光学部材の光軸方向から見た平面視において、前記レンズ基材の縁部を覆うように、多孔質の中間層を形成することと、
前記平面視において、前記レンズ基材および前記中間層を覆うように、前記平面視において、縁部に形成され、かつ、中央部よりも膜厚が厚い厚膜部を備えるハードコート層を形成することを含み、
前記ハードコート層を形成することは、前記中間層の膜厚の最大値をA[μm]とし、前記厚膜部における膜厚の最大値をB[μm]としたとき、A/Bが3%以上、20%以下となる関係を満足するように、前記ハードコート層を形成することを特徴とする。
これにより、目的とする膜厚のハードコート層がクラックを生じることなく形成されている光学部材を製造することができる。
なお、以下では、本発明の光学部材を、メガネに装着されるメガネレンズに適用した場合を一例に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の光学部材をメガネレンズに適用した第1実施形態を示す図((a)平面図、(b)図1(a)中に示すA−A線断面図)、図2は、膜強度および引張応力と膜厚との関係を示すグラフである。なお、以下では、図1(b)中の、メガネレンズの物体側(メガネレンズの装用時において、相対的に視認する物体に近い側)を「上」と言い、メガネレンズの眼球側(メガネレンズの装用時において、相対的に眼球に近い側)を「下」と言う。また、図1中では、説明の便宜上、メガネレンズを構成する部材の大きさおよび厚さ等を誇張して模式的に図示しており、各部材の大きさおよび厚さ等は実際とは大きく異なる。
レンズ基材6は、本実施形態では、プラスチックで構成される母材2と、平面視において母材2を覆うように形成されたプライマー層3とを有している。
この母材2は、図1に示すように、平面視で、真円状をなしており、その上面21が湾曲凸面で構成され、下面22が湾曲凹面で構成されており、これら上面21および下面22により光が透過する透過面を構成する。なお、母材2は真円状でなくてもよい。
プライマー層3は、母材2とハードコート層4との間に積層され、母材2とハードコート層4との密着性を確保し、かつ、母材2の耐衝撃性を向上させる機能を有する。
金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、Tiの酸化物が挙げられ、かかる酸化物のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、金属酸化物は、金属酸化物の微粒子からなるゾルであってもよい。
なお、このプライマー層3は、母材2とハードコート層4との組み合わせによっては省略することができる。すなわち、レンズ基材6を、母材2により単独で構成してもよい。
ハードコート層4は、平面視においてレンズ基材6(プライマー層3)と中間層5とを覆うように設けられ、母材2の耐摩擦性および耐候性を向上させる機能を有する。
有機ケイ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、一般式(1):(R1)nSi(X1)4−n(一般式(1)中、R1は重合可能な官能基を有する炭素数が2以上の有機基、X1は加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)で表わされるものが用いられる。これにより、有機ケイ素化合物同士が官能基R1を介して架橋(連結)するので、ハードコート層4は、優れた耐摩擦性および耐候性を発揮できる。
また、ハードコート層4に含まれる金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、Al、Ti、Sb、Zr、Si、Ce、Fe、In、Sn等の金属の酸化物が挙げられ、かかる酸化物のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に、TiO2、ZrO2、CeO2、ZnO2、SnO2およびITO(インジウム−スズ複合酸化物)が好ましい。これらの金属酸化物がハードコート層4に含まれることにより、ハードコート層4の屈折率をより高く設定することができるようになるため、高屈折率の母材2を用いた際にも、干渉縞の発生が抑制されたメガネレンズを実現することが可能となる。
かかる構成のハードコート層4を備えるメガネレンズ1において、レンズ基材6(プライマー層3)の縁部に中間層(ダム層)5を設けることで、ハードコート層4の縁部におけるクラックの発生を的確に抑制または防止することができる。かかる効果が発現される理由については後に詳述する。
中間層5は、本実施形態においては粒状体を含有する。
粒状体は、樹脂材料または金属酸化物材料で構成されるものの何れであってもよいが、樹脂材料で構成されることが好ましい。これにより、ハードコート層4の端部においてクラックが発生することをより的確に抑制または防止することができるようになる。
かかる構成の中間層5において、中間層5の頂部の高さとハードコート層4の縁部(厚膜部)における頂部の高さとの関係、さらには中間層5に含まれる粒状体の平均粒径を規定することで、ハードコート層4にクラックが発生するのを的確に抑制または防止することができるが、この点に関しては、後述するメガネレンズ1の製造方法において詳述する。
また、ハードコート層4上には、さらに図示しない反射防止層が形成されていてもよい。
なお、このような反射防止層は、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法およびスパッタリング法等を用いて形成することができる。
さらに、反射防止層上には図示しない撥水性の防汚層を形成してもよい。
このような防汚層は、例えば、反射防止層上に、フッ素を含有する有機ケイ素化合物で構成される単分子膜を形成することにより得ることができる。
また、防汚層は、例えば、フッ素を含有する有機ケイ素化合物を溶媒に溶解した防汚層形成用材料を調製し、その後、この防汚層形成用材料を反射防止層上に塗布法を用いて塗布した後、乾燥することにより得ることができる。塗布法としては、例えば、インクジェット法、ディッピング法、スピンコート法等が挙げられる。
防汚層の平均厚さは、特に限定されないが、0.001〜0.5μmであるのが好ましく、0.001〜0.03μmであるのがより好ましい。
以上のようなメガネレンズ1は、例えば、次のようにして製造することができる。
このプライマー層3の形成は、例えば、プライマー層3の構成材料を溶媒に、溶解させたプライマー層形成材料を調製し、その後、このプライマー層形成材料を母材2上に塗布法を用いて塗布した後、乾燥することにより行うことができる。
なお、プライマー層3の構成材料が溶媒に溶解しない場合は、前記構成材料を分散させたプライマー層形成材料とすることができる。
また、プライマー層3の形成に用いられる塗布法をとしては、インクジェット法、ディッピング法、スピンコート法およびスプレー法等が挙げられる。
この中間層5の形成は、例えば、前述した樹脂材料で構成される粒状体を分散媒に分散させた中間層形成材料を調製し、その後、この中間層形成材料をプライマー層3の縁部に対して選択的に塗布法を用いて塗布(供給)した後、乾燥することにより行うことができる。
粒状体を分散させる分散媒としては、前記工程[A]で説明した溶媒と同様のものを用いることができる。
なお、中間層5の形成に用いられる塗布法をとしては、例えば、インクジェット法、ディッピング法およびスプレー法等が挙げられる。
このハードコート層4の形成は、例えば、一般式(1):(R1)nSi(X1)4−n(一般式(1)中、R1は重合可能な官能基を有する炭素数が2以上の有機基、X1は、加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)で表わされる有機ケイ素化合物を溶媒に溶解させたハードコート層形成材料(ゾル)を用いて、例えば、次のようにして行うことができる。
前記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物としては、例えば、重合可能な官能基としてアミノ基を有するものが挙げられ、具体的には、下記一般式(1A)で表わされるものが挙げられる。
(一般式(1A)中、R2はアミノ基を有する1価の炭素数2以上の炭化水素基、X1は加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)
なお、前記一般式(1A)において、nは1または2の整数を示し、R2が複数ある場合(n=2)には複数のR2は互いに同一でも異なっていてもよく、複数のX1は互いに同一でも異なっていてもよい。
さらに、前記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物としては、例えば、重合可能な官能基としてイソシアネート基を有するものが挙げられ、具体的には、下記一般式(1B)で表わされるものが挙げられる。
(一般式(1B)中、R3はイソシアネート基を有する1価の炭素数2以上の炭化水素基、X1は加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)
また、一般式(1B)において、nは1または2の整数を示し、R3が複数ある場合(n=2)には複数のR3はたがいに同一でも異なっていてもよく、複数のX1は互いに同一でも異なっていてもよい。
さらに、前記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物としては、例えば、重合可能な官能基としてエポキシ基を有するものが挙げられ、具体的には、下記一般式(1C)で表わされるものが挙げられる。
(一般式(1C)中、R4はエポキシ基を有する1価の炭素数2以上の炭化水素基、X1は加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)
なお、前記一般式(1C)において、nは1または2の整数を示し、R4が複数ある場合(n=2)には複数のR4は互いに同一でも異なっていてもよく、複数のX1は互いに同一でも異なっていてもよい。
硬化触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、乳酸等の有機酸が挙げられる。
さらに、ハードコート層形成材料の加熱は、第1の加熱温度で加熱した後、第2の加熱温度で加熱するのが好ましい。
第1の加熱温度による加熱時間は、1〜10分程度に設定され、より好ましくは5〜10分程度に設定される。
また、第2の加熱温度は、好ましくは110〜130℃程度に設定され、より好ましくは120±5℃程度に設定される。
さらに、加熱する際の雰囲気は、特に限定されないが、酸素含有雰囲気下または窒素ガスのような不活性ガス雰囲気下とされる。
上記のような条件で加熱することにより、加水分解・重縮合反応をより適切に進行させることができるため、優れた膜強度を有するハードコート層4を形成することができる。
すなわち、図2(b)に示すように、膜厚が厚いほど、ハードコート層4に含まれる縮合可能な分子が多いので、縮合量(膜全体として収縮する量)が多くなる。そのため、膜強度および引張応力の双方共に、層中における縮合量が多くなること、すなわち膜厚が厚くなるに伴って、その値が大きくなるが、ある膜厚の範囲以下(図2(b)における引張応力の曲線と膜強度の曲線との交点における縮合量以下の領域)では、膜強度の方が引張応力と比較して大きくなっている。しかしながら、ある膜厚の範囲を超える(図2(b)における引張応力の曲線と膜強度の曲線との交点よりも縮合量が大きい領域)と、この関係が逆転し、引張応力の方が膜強度よりも大きくなる。そのため、形成するハードコート層4の膜厚が一定の範囲を超えて大きくなると、ハードコート層4にクラックが生じることが判っている。
そして、本発明者は、さらなる検討を重ねた結果、中間層5の膜厚の最大値とハードコート層4の縁部(厚膜部)における膜厚の最大値との関係を規定することにより、前記問題点を解消し得ることを見出した。
このように本発明では、レンズ基材6とハードコート層4との間に中間層5を形成し、中間層5の厚さを規定することによって、ハードコート層4の厚膜部におけるクラックの発生が防止される。
中間層5は、レンズ基材6の端部すなわちハードコート層4の厚膜部に対応するように設けられていればよいが、本実施形態のように、その平面視形状が円環状をなしている場合、幅Cは、0.1mm以上、15mm以下であるのが好ましく、4mm以上、18mm以下であるのがより好ましい。これにより、中間層5を形成することにより得られる効果を確実に発揮させることができる。
すなわち、まず、レンズ基材6の熱膨張率と、ハードコート層4の熱膨張率との差は、一般的に大きいため、これらの間に、中間層5を設けることにより、前記熱膨張率の差を小さくできることによると推察される。
なお、本実施形態では、レンズ基材6の縁部における端部にまで中間層5が形成されている場合について説明したが、かかる構成に限定されず、前記端部では中間層5が形成されず、ハードコート層4が形成されていてもよい。なお、中間層5が形成されていない領域の幅は、例えば、1.0〜2.0mm程度に設定されることが好ましい。
次に、本発明の光学部材をメガネレンズに適用した第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の光学部材をメガネレンズに適用した第2実施形態を示す図((a)平面図、(b)図3(a)中に示すA−A線断面図)である。
以下、第2実施形態のメガネレンズ1について、前記第1実施形態のメガネレンズ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
すなわち、第2実施形態のメガネレンズ1において、図3に示すように、中間層5の形成が省略された間欠部51を有している。
なお、中間層5としての機能を発揮し得るように、平面視での中間層5における間欠部51の占有率は、好ましくは1%〜20%、より好ましくは1〜10%に設定される。これにより、中間層5としての機能を発揮させて、ハードコート層4におけるクラックの発生を的確に抑制または防止することができる。
このような第2実施形態のメガネレンズ1においても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のメガネレンズ1と同様である。
次に、本発明の光学部材をメガネレンズに適用した第3実施形態について説明する。
図4は、本発明の光学部材をメガネレンズに適用した第3実施形態を示す図((a)平面図、(b)図4(a)中に示すA−A線断面図)である。
以下、第3実施形態のメガネレンズ1について、前記第1実施形態のメガネレンズ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
すなわち、第3実施形態のメガネレンズ1では、レンズ基材6の湾曲凸面(物体側の面)ではなく、湾曲凹面(眼球側の面)に、中間層5とハードコート層4とが形成されている。
なお、このような第3実施形態のメガネレンズ1は、その製造方法において、中間層5を形成後、ハードコート層4を次のように形成する場合に、厚膜部のクラックを抑制する点で有効である。
なお、光学部材は、前記各実施形態で説明したメガネレンズに限定されず、光を透過させる各種レンズに適用することができ、例えば、テレビ、プロジェクター、コンピュータディスプレイ等が有するレンズに適用することができる。
以上、本発明の光学部材および光学部材の製造方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明では、前記第1〜第3実施形態で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。例えば、湾曲凹面と湾曲凸面の両方に中間層5を形成してもよい。
また、本発明の光学部材の製造方法では、前記実施形態の構成に限定されず、工程の順序が前後してもよい。また、任意の目的の工程が1または2以上追加されていてもよく、不要な工程を削除してもよい。
1−1.プライマー層形成材料の調製
ステンレス製容器内に、水130重量部、エチレングリコール22重量部、イソプロパノール10重量部を投入し、十分に攪拌したのち、ポリウレタン樹脂(第一工業製薬製、「SF410」、平均粒径200nm)14重量部を加え撹拌混合した。
前記1−1.で調製したプライマー層形成材料を、中間層形成材料として併用することとした。
1−3.ハードコート層形成材料の調製
ステンレス製容器内に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、「TSL8350」)46重量部、0.05N−HCl42重量部を投入し、十分に撹拌した後、SiO2ゾル(日揮触媒化成製 固形分20%)86重量部、シリコーン系界面活性剤(東レダウコーニング製 「L7604」)を300ppm、Fe系触媒0.2重量部、Al系触媒0.8重量部を加え十分に撹拌した後、固形分が25%となるようにMeOHを混合・撹拌し、ハードコート層形成材料を得た。
(実施例1)
[1] まず、母材として、屈折率1.67の眼鏡用のプラスチックレンズ基材(セイコーエプソン社製、「セイコースーパーソブリン(SSV)」)を用意し、濡れ性向上のために低圧水銀ランプ(UV)を30秒間照射した。
中間層の形成を省略し、形成するプライマー層の膜厚を表1に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、比較例1〜4の積層体(メガネレンズ)を得た。
(比較例5〜7)
中間層の形成を省略し、プライマー層形成材料に含まれるポリウレタン樹脂の種類を表1に示すように変更し、さらに、形成するプライマー層の膜厚を表1に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、比較例5〜7の積層体(メガネレンズ)を得た。
表1における平均粒径は、プライマー層形成材料における樹脂の平均粒径である。
3.1 積層体のクラックの有無に関する評価
実施例および各比較例で得られた積層体について、目視によりクラックの有無を観察し、それぞれ、以下の基準にしたがって評価した。
<クラックの有無の評価基準>
○:目視観察においてクラックが認められない
×:目視観察においてクラックが認められる
実施例および各比較例で得られた積層体について、それぞれ防傷性の評価を行った。ボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール(株)製)で9.8N(1kgf)の荷重をかけた状態で10往復表面を摩擦し、1cm×3cmの範囲内に傷ついた程度を目視で次の5段階に分けて評価した。
a:傷が発生していない。
b:1〜5本の傷が発生している。
c:6〜20本の傷が発生している
d:21本以上の傷が発生している。
e:レンズ表面全体に傷が発生している。
これらの結果を、表1に示す。表1において、A/Bは、実施例においては中間層の膜厚Aを用いて計算した。各比較例については中間層の膜厚Aに代えてプライマー層の膜厚A’を用いて計算した。
これに対して、各比較例では、中間層の形成を省略して、母材の全面に形成されたプライマー層に中間層としての機能を担わせた。
Claims (7)
- 光学部材であって、
湾曲面を有するレンズ基材と、
前記光学部材の光軸方向から見た平面視において、該レンズ基材の縁部を覆うように形成された多孔質の中間層と、
前記平面視において、前記レンズ基材および前記中間層を覆うように形成されたハードコート層と、を有し、
前記平面視において、前記中間層は、幅が0.1mm以上、15mm以下であり、
前記ハードコート層は、前記平面視において、前記ハードコート層の縁部に形成され、かつ、前記ハードコート層の中央部よりも膜厚が厚い厚膜部を備えており、
前記中間層の膜厚の最大値をA[μm]とし、前記厚膜部における膜厚の最大値をB[μm]としたとき、A/Bが3%以上、20%以下となる関係を満足する、
ことを特徴とする光学部材。 - 前記中間層は、前記レンズ基材の縁部の全体を覆うように形成されている請求項1に記載の光学部材。
- 前記中間層の膜厚の最大値が0.1μm以上、10.0μm以下である請求項1または2に記載の光学部材。
- 前記ハードコート層の中央部における膜厚が1.5μm以上50.0μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学部材。
- 前記中間層は、樹脂材料で構成される粒状体を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学部材。
- 前記レンズ基材は、湾曲凸面と湾曲凹面とを有し、前記湾曲凸面に、前記中間層と、前記ハードコート層とが設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学部材。
- 光学部材の製造方法であって、
湾曲面を有するレンズ基材の、前記光学部材の光軸方向から見た平面視において、前記レンズ基材の縁部を覆うように、多孔質の中間層を形成することと、
前記平面視において、前記レンズ基材および前記中間層を覆うように、前記平面視において、縁部に形成され、かつ、中央部よりも膜厚が厚い厚膜部を備えるハードコート層を形成することとを含み、
前記平面視において、前記中間層は、幅が0.1mm以上、15mm以下であり、
前記ハードコート層を形成することは、前記中間層の膜厚の最大値をA[μm]とし、前記厚膜部における膜厚の最大値をB[μm]としたとき、A/Bが3%以上、20%以下となる関係を満足するように、前記ハードコート層を形成することを特徴とする光学部材の製造方法。
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