JP6878141B2 - 光学素子および光学機器 - Google Patents

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Description

本発明は、非光学有効面に遮光膜を備えた光学素子および該光学素子を有する光学機器に関する。
光学機器、たとえばカメラにおいては、光学素子としてレンズが用いられている。そのようなレンズに入射した光の大部分は反対側の面から出射して有効光束(結像光束)となるが、ごく一部の光がレンズの外周端面(コバ面)で内面反射をしてしまい、これが有害光となって画質の低下をもたらすことがある。
このため、レンズを多数組み合わせてなるカメラなどの光学機器においては、内面反射によって画質の低下をもたらさないように、レンズのコバ面に反射を防止するための遮光膜が設けられている。
コバ面は、必ずしも光軸方向に平行となる面だけで構成されているわけではなく、光軸方向に垂直となる面との組み合わせで構成されて段差を形成している場合もあり、このように段差を形成している形状は段付き形状と言われている。
段付き形状には、段角部に丸みを持たせたR面取り部が設けられる場合もある。そのようなR面取り部が設けられた段付き形状のコバ面を有するレンズは、光軸を含む平面で切ったときの断面において、コバ面を表す線がR面取り部に相当する曲線と平坦部に相当する線分との組み合わせで構成されている。
一般に、コバ面は研削加工で所望の形状に形成され、その上に設けられる遮光膜は熱硬化型の遮光塗料をコバ面に塗布して焼成することで形成される。
コバ面上に設けられた遮光膜は、遮光性能や反射防止性能が優れるだけでなく、高温、高湿環境下における耐久性や、レンズが鏡筒に組み込まれる際の位置精度についても、一定の保障がされる必要がある。
特許文献1は、鏡筒の弾性率を小さくする(柔軟性を高める)ことで、レンズの外形に鏡筒の内形を倣わせて鏡筒にレンズを組み込むことにより位置精度を高めることを開示している。また、特許文献2は、遮光膜(内面反射防止層)の母剤を弾性接着剤として柔軟性を高めることで、膜の剥離を防止することを開示している。
特開平6−235853号公報 特開2007−183444号公報
特許文献1は、鏡筒をレンズ外形に倣わせて位置精度を保障しようとするものであるから、遮光膜の弾性率はある程度高くなければならない。しかしながら、熱硬化型の遮光塗料を用いて遮光膜を形成した場合、焼成後室温に戻した際に遮光膜は収縮するが、レンズはほとんど収縮しない。このため、遮光膜には膜の歪み量と膜の弾性率の積に相当する引っ張り応力が内在し、膜の弾性率(剛性)を高めると膜割れが発生し易くなるという問題がある。この問題は、膜形成後に熱履歴を与えた場合においても同様である。
特許文献2は、遮光膜の弾性率を調整するものであるから、熱履歴による膜割れを抑制しつつ、鏡筒との位置精度を保障するように、膜の弾性率(剛性)を調整することもできる。しかしながら、高温高湿環境下特有の膜割れは抑制できない。この問題について以下に説明する。
段付き形状のコバ面は、それを構成する複数の面がそれぞれ当該硝材の研削加工により形成されており、このため、特に面と面との境界付近において硝材の表面に微小なクラックが多数発生していることが多い。これは加工方向を変える際に、境界付近に加工応力が集中するためである。このことは、段角部にR面取り部が形成されている場合であっても変わらない。
一方、遮光膜は樹脂系材料であるため、高温高湿下においては、水蒸気が膜内を容易に透過し、このため、境界付近で硝材の表面に発生した微小なクラック内に水蒸気が侵入して蓄積する。このとき、温度上昇に伴う水蒸気の膨張や、硝材の水による応力腐食の影響で、硝材表面のクラックが拡がろうとする。そして、膜形成時に発生した膜内の残留引っ張り応力に、硝材側のクラックが拡がろうとする力が付加されることで、膜の許容応力を超えて膜割れが発生すると考えられる。
特に、表面がR面取りされた凹側段角部を含む段付き形状に形成されている場合には、遮光膜を形成する際に遮光塗料がR面取り部に溜まり易く、R面取り部の遮光膜には膜形成時の熱履歴により大きな引っ張り応力が残留する。したがって、R面取り部と隣接する平坦部との境界付近では、一旦膜割れが発生すると、それが狭い範囲であっても、それを起点にして、R面取り部にある膜の大きな引っ張り応力の影響で、膜が広範囲に割れてしまい、遮光性能や反射防止性能が不十分となってしまうおそれがある。
本発明は、このような背景技術における問題に鑑みてなされたものであり、高温高湿環境においても段付き形状のコバ面に形成された遮光膜の膜割れが抑制された、信頼性の高い光学素子を提供することを目的とする。
本発明の一つの局面は、光学有効面と非光学有効面とを有し、該非光学有効面の上に遮光膜が形成された光学素子であって、前記非光学有効面が凹側段角部を有し、該凹側段角部を横切り、その凹側段角部の稜線に対して垂直な平面で前記光学素子を切ったときの断面において、該凹側段角部の表面に相当する線が、2つの線分が円弧状の曲線を介して滑らかに接続する形状を有し、該2つの線分が90度以上140度以下の角度をなし、該円弧状の曲線が0.5mm以上4mm以下の曲率半径を有し、前記2つの線分のそれぞれについて、前記曲線との境界をなす端をその線分の内端、反対側の端をその線分の外端とするとき、前記遮光膜が、前記断面において、前記2つの線分の少なくとも一方の上で、内端から外端に向かって膜厚が連続的または段階的に厚くなった後、連続的または段階的に薄くなる隆起を有するように、前記非光学有効面の前記凹側段角部上に形成され、前記隆起の頂点における前記遮光膜の膜厚と前記内端における該遮光膜の膜厚との差をTとし、前記内端から前記頂点までの水平距離をDとするとき、T/Dが0.02〜0.10の範囲にあることを特徴とする光学素子を提供し、これにより先に述べた課題を解決しようとするものである。
本発明の別の局面は、光学有効面と非光学有効面とを有する透明基材を用意し、該透明基材の該非光学有効面に遮光膜を形成することにより光学素子を製造する方法であって、前記非光学有効面が凹側段角部を有し、該凹側段角部を横切り、その凹側段角部の稜線に垂直な平面で前記光学素子を切ったときの断面において、該凹側段角部の表面に相当する線が、2つの線分が円弧状の曲線を介して滑らかに接続する形状を有し、該2つの線分が90度以上140度以下の角度をなし、該円弧状の曲線が0.5mm以上4mm以下の曲率半径を有し、前記2つの線分のそれぞれについて、前記曲線との境界をなす端をその線分の内端、反対側の端をその線分の外端とするとき、前記遮光膜が、前記断面において、前記2つの線分の少なくとも一方の上で、内端から外端に向かって膜厚が連続的または段階的に厚くなった後、連続的または段階的に薄くなる隆起を有するように、前記非光学有効面の前記凹側段角部を構成する面の上に形成され、前記隆起の頂点における前記遮光膜の膜厚と前記内端における該遮光膜の膜厚との差をTとし、前記内端から前記頂点までの水平距離をDとするとき、T/Dが0.02〜0.10の範囲にあり、前記遮光膜を形成する工程が、前記非光学有効面の前記凹側段角部を含む所望の領域の全面に遮光塗料を塗布して乾燥することにより平坦な塗膜を形成する第1の工程と、該平坦な塗膜を形成した該所望の領域のうち前記隆起を設ける部位に遮光塗料を部分的に塗布して乾燥することにより隆起状の塗膜を形成し、その後、塗膜全体を焼成することにより前記隆起を有する遮光膜を形成する第2の工程からなることを特徴とする方法を提供し、これにより先に述べた課題を解決しようとするものである。
本発明のさらに別の局面は、光学有効面と非光学有効面とを有する透明基材を用意し、該透明基材の該非光学有効面に遮光膜を形成することにより光学素子を製造する方法であって、前記透明基材の前記非光学有効面が凹側段角部を有し、該凹側段角部を横切り、その凹側段角部の稜線に垂直な平面で前記光学素子を切ったときの断面において、該凹側段角部の表面に相当する線が、2つの線分が円弧状の曲線を介して滑らかに接続する形状を有し、該2つの線分が90度以上140度以下の角度をなし、該円弧状の曲線が0.5mm以上4mm以下の曲率半径を有し、前記2つの線分のそれぞれについて、前記曲線との境界をなす端をその線分の内端、反対側の端をその線分の外端とするとき、前記遮光膜が、前記断面において、前記2つの線分の少なくとも一方の上で、内端から外端に向かって膜厚が連続的または段階的に厚くなった後、連続的または段階的に薄くなる隆起を有するように、前記非光学有効面の前記凹側段角部を構成する面の上に形成され、前記隆起の頂点における前記遮光膜の膜厚と前記内端における該遮光膜の膜厚との差をTとし、前記内端から前記頂点までの水平距離をDとするとき、T/Dが0.02〜0.10の範囲にあり、前記遮光膜を形成する工程が、前記非光学有効面の前記凹側段角部を含む所望の領域の前記隆起を設ける部位に遮光塗料を部分的に塗布して乾燥することにより隆起状の塗膜を形成する第1の工程と、該隆起状の塗膜を形成した部位を含む該所望の領域の全面に遮光塗料を塗布して乾燥することにより平坦な塗膜を形成し、その後、塗膜全体を焼成することにより前記隆起を有する遮光膜を形成する第2の工程からなることを特徴とする方法を提供し、これにより先に述べた課題を解決しようとするものである。
本発明によれば、高温高湿環境においても段付き形状のコバ面に形成された遮光膜の膜割れが抑制された信頼性の高い光学素子が提供される。
本発明が適用される光学素子(レンズ)の概略断面図である。 図1のレンズのコバ面の断面の一部を示す拡大図である。 本発明の光学素子の非光学有効面に形成された遮光膜の断面形状の一部を示す拡大図である。 実施例1〜3および7〜8における遮光膜の形成手順を示す断面図である。 実施例4〜6および9〜10における遮光膜の形成手順を示す断面図である。 実施例1〜10で用いたレンズ基材の概略断面図である。 図6のレンズ基材のコバ面の断面の一部を示す拡大図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、光学有効面と非光学有効面とを有し、該非光学有効面の上に遮光膜(内面反射防止膜)が形成された各種光学素子に適用されるものである。そのような光学有効面と非光学有効面とを有する光学素子としては、レンズ、プリズム、ミラー、波長板、ビームスプリッタなどが挙げられる。ただし、以下においては、説明を簡潔にするため、そのような光学素子の代表的なものとして、レンズを例にとって説明し、他の例については必要に応じて補足する。
本発明において「光学有効面」とは、当該面に入射した光線ないし光束に対し、屈折や反射といった何らかの光学的作用を及ぼす表面または界面をいう。典型的には、レンズの光入出射面やプリズムの内面反射面あるいはミラーの反射面などが挙げられる。これに対し「非光学有効面」とは当該光学素子における光学有効面以外の表面または界面をいう。典型的には、レンズのコバ面やプリズムの側端面あるいはミラーの外周面などが挙げられる。非光学有効面に(当該光学素子の内部または外部から)入射した光線ないし光束は、その面から反射、透過、屈折などにより出射すると、異常光ないし有害光となって当該光学素子の本来の機能を妨害する(典型的には画質を低下させる)おそれがあるため、その面で吸収されて出てこないことが好ましい。非光学有効面に設けられる遮光膜(内面反射防止膜)は、そのような異常光(有害光)の発生を抑えるためのものである。
(光学素子の構成)
本発明の光学素子について、以下にレンズを例にとって説明する。図1は、段付き形状のコバ面を有するレンズ1をその光軸Lを含む平面で切ったときの概略断面図である。図1に示すように、レンズ1は、光学有効面R1、R2を有する凹メニスカスレンズである。レンズ1の外周部は、いずれも環状に形成された非光学有効面であるコバ面a、b、c、d、eがこの順に接続し、全体として段付き形状のコバ面を構成している。各コバ面a−eのうち、コバ面aおよびdは、レンズ1の光軸Lに対して垂直な平面であり、コバ面bおよびeは、光軸Lに対して平行な円筒面である。コバ面bとコバ面dの間には、その間の凹側段角部101をR面取りするコバ面cが形成されている。図1に示すように、レンズ1を光軸Lを含む平面で切ったときの断面において、コバ面a、コバ面b、コバ面dおよびコバ面eは直線(線分)で表され、コバ面cは円弧状の曲線で表される。
なお、レンズの場合には、一般に、光軸を含む平面で切ったときの断面がコバ面に形成された段付き形状の凹側段角部の断面を的確に表すが、光学素子一般については、必ずしもそうなるとは限らない。本発明においては、凹側段角部(およびその上に形成された遮光膜)の断面形状を問題にするが、それは当該光学素子をどのような平面で切ったときの断面形状なのかというと次のとおりである。すなわち、本発明では、遮光膜が設けられる凹側段角部を横切り、その凹側段角部の稜線(R面取り部を除く凹側段角部の両側を構成する2つの面を延長したときに交差して形成される線)に対して垂直な平面で、当該光学素子を切ったときの断面における基材表面および膜表面の形状を問題にする。凹側段角部の両側を構成する2つの面が厳密には平面でなく曲面である場合は、その凹側段角部の稜線は直線にはならないので、その稜線の当該断面との交点における接線とその断面とが垂直になるように当該光学素子を切ればよい。
図1においては、コバ面aおよびdは光軸Lに対して垂直であり、コバ面bおよびeは光軸Lに対して平行であるように描かれているが、必ずしも厳密に垂直または平行である必要はなく、光軸Lに対して垂直や平行から多少ずれて傾いていてもよい。そのような場合であっても、全体として段差状に形成されていれば段付き形状と見るべきである。その場合、コバ面aおよびdは厳密には平面ではなく、コバ面bおよびeも厳密には円筒面ではないことになる(いずれも円錐面になる)が、上に述べた「平面」および「円柱面」という用語は、そのような場合をも包含する意味で用いられている。また、図1に示す断面において、コバ面cは円弧状の曲線で表されているが、ここでいう「円弧状の曲線」とは必ずしも真円の一部というわけではなく、それに近似できる曲線をも含む概念である。
加えて、コバ面a、b、dおよびeは非光学有効面なのであるから、それぞれ厳密な意味で平面や円柱面(あるいは円錐面)といった規則的な面でなくてもよく、不規則なうねり等が多少含まれていてもよい。さらにいうと、図1の断面では、コバ面a、b、c、dおよびeは直線または滑らかな曲線で表されているが、一般にこれらの非光学有効面は平滑ではなく多少の凹凸(粗さ、ざらつき)をもっていることに留意すべきである。したがって、上に述べたコバ面の形状表現においては、そのような不規則なうねり等や細かい凹凸は捨象されている(ならされている)ことに留意すべきである。
コバ面aとbおよびコバ面dとeは、それぞれ凸側段角部を形成して接続しており、凹側段角部101を構成するコバ面bとdは、その間にR面取り部を構成するコバ面cを介して滑らかに接続している。ただし、ここで「滑らかに接続」しているとは、図1に示す断面において、直角ないし鋭角をなして接続してはいないという程度の意味である。たとえばコバ面bを表す線分とコバ面cを表す円弧状の曲線(厳密にはその曲線のbとcとの接続点における接線)とがその接続点において160度程度の鈍角をなして接続しているような場合を排除するものではない。コバ面cとコバ面dとの接続についても同様である。
次に、図2を用いて、図1のレンズ1のコバ面の形状をより詳細に説明する。図2は、図1におけるコバ面b、コバ面cおよびコバ面dからなる凹側段角部101の拡大断面図である。図2において、点A1はコバ面bとコバ面cとの境界であり、点A2はコバ面aとコバ面bとの境界である。また、点B1はコバ面cとコバ面dとの境界であり、点B2はコバ面dとコバ面eとの境界である。別の見方をすれば、凹側段角部101を構成する3つのコバ面b、cおよびdに着目して、コバ面bおよびdのそれぞれにつき、コバ面cと接続する側の端を内端、反対側の端を外端ということができる。そのように定義するとき、点A1はコバ面bの内端、点A2はコバ面bの外端、点B1はコバ面dの内端、点B2はコバ面dの外端ということになる。
コバ面の形成は、ガラスや樹脂からなる透明な基材11を研削加工することによって行われる。このとき、研削加工することで用意された透明基材のコバ面bとコバ面dとのなす角度θ1が90度より小さい場合や、コバ面cの曲率半径Rが0.5mmより小さい場合は、加工時にカケが発生し易い。一方、角度θ1が140度より大きい場合や、曲率半径Rが4mmより大きい場合は、面と面との境界部の加工負荷を充分に小さくすることはできるが、その反面、レンズ設計時の制約が大きくなってしまう。以上のことから、本実施形態におけるレンズを構成する基材(レンズ基材)11の(図2の断面図に示す)凹側段角部101を構成するコバ面bとコバ面dと(を表す線分同士)がなす角度θ1は、90度から140度の間であることが好ましい。また、その凹側段角部101のR面取り部を構成するコバ面c(を表す曲線)の曲率半径Rは、0.5mm以上4mm以下の範囲であることが好ましい。
図3は、本実施形態においてコバ面b、cおよびdで構成される凹側段角部に形成された遮光膜2の断面形状を示している。図3に示すように、遮光膜2はコバ面bからコバ面cを経てコバ面dに至る凹側段角部の全体にわたって設けられている。このとき、凹側段角部を構成する面の1つであるコバ面d上の内端B1の近傍に、遮光膜2の膜厚が、内端B1から外端B2に向かって連続的または段階的に厚くなった後、連続的または段階的に薄くなる隆起21が形成されている。すなわち、遮光膜2の膜厚は、隆起21の部位の方が内端B1の上の部位より大きくなっている。なお、先に述べたように、凹側段角部のR面取り部であるコバ面cには遮光塗料が溜まり易いため、コバ面c上の遮光膜2の膜厚も、コバ面dの内端B1やコバ面bの内端A1における膜厚より大きくなっている。
光学素子(レンズ1)を製造する過程で、基材11のコバ面に遮光膜2を設ける際に当該光学素子が熱履歴を経ると、温度低下に伴って基材11に比べて熱膨張率が大きい遮光膜2には引っ張り応力がはたらき、これが膜内に残留することになる。しかしながら、図3に示されるように、コバ面d上の内端B1近傍に隆起21が設けられていると、内端B1付近の遮光膜2には隆起21からの押圧が圧縮応力としてはたらく。これにより、内端B1付近の遮光膜2に残留する引っ張り応力が打ち消されて低減することになるため、内端B1付近における膜割れを防止する効果が得られると考えられる。
このとき、内端B1における膜厚と隆起21の頂点21Aにおける膜厚の差Tと、内端B1から隆起の頂点21Aまでの水平距離Dの比T/Dが大きい程、隆起21から内端B1上にある遮光膜2にはたらく圧縮応力が大きくなると考えられる。本発明の発明者らは、T/Dが0.02〜0.10の範囲にあるとき、隆起21から内端B1上の遮光膜2に対して膜割れ防止に有効な圧縮応力が十分にはたらくことを見出した。なお、ここでいう「水平距離」とは、重力の方向にかかわらず、隆起21を設けたコバ面(図3の例ではコバ面d)に沿って測った距離のことをいう。
図3の例ではコバ面d(すなわち凹側段角部を構成する2つのコバ面のうち光軸に垂直な方の面)に隆起21が形成されているが、コバ面b(すなわち凹側段角部を構成する2つのコバ面のうち光軸に平行な方の面)に隆起を形成してもよい。あるいは、コバ面bとコバ面dの両方に隆起を形成してもよい。これらの場合もコバ面d(のみ)に隆起を形成した場合と同等あるいはそれ以上の効果が得られる。
隆起21はコバ面d上にあって、その裾の部分が内端B1にかかるか、僅かにかからない程度に内端B1から少し離れた位置に設けるのが好ましい。すなわち、水平距離Dの好ましい値は、隆起の高さTによっても異なるが、通常は100μm〜800μm程度、好ましくは200μm〜600μm程度とするのがよい。
(遮光膜の材料および形成手順)
遮光膜2は、通常、樹脂、無機微粒子および着色剤を主成分として含む遮光塗料の塗膜からなる。遮光膜2に用いる樹脂としては、エポキシ樹脂、アルキド樹脂およびアクリル樹脂から選ばれる熱硬化性樹脂を適宜選択して用いるのが好ましい。これらの中で、寸法安定性に優れるという点でエポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
無機微粒子は、遮光膜2の屈折率を調整するために用いられる。無機微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化錫などが好ましく用いられる。これらの中で、屈折率が高いという点で酸化チタンを用いることがより好ましい。
着色剤としては、染料または顔料を用いることができるが、遮光膜2に均一に分散できるという点で染料を用いることが好ましい。顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、酸化銅および酸化鉄(ベンガラ)から選ばれる少なくとも1種以上の黒色顔料が好ましく用いられる。染料としては、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、スチルベンゼン染料、ピラゾロン染料、チアゾール染料、カルボニウム染料、アジン染料などが好ましく用いられる。
光学素子を製造するための遮光塗料としては、GT−7II、GT−20(商品名、キヤノン化成社製)等の樹脂、染料および各種微粒子を主成分とする塗料が好ましく用いられる。もっとも、使用する光学素子に対して、光学特性や屈折率、膜耐久性等の遮光膜として必要な特性が満たされれば、これに限定されるものではない。なお、必要に応じて遮光塗料を溶媒で希釈等行ってもよい。
非光学有効面(コバ面)への遮光塗料の塗布は、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、インクジェット法などを用いて直接行ってもよいし、刷毛塗りや、スポンジコート法、ロールコート法などにより他の媒体を介して行ってもよい。
遮光膜2に隆起21を形成する手順について、図4および図5を用いて説明する。第1の方法は、図4(a)に示すように、非光学有効面(コバ面)の所望の領域(ここでは全面)に遮光塗料を塗布して平坦な塗膜を形成し、乾燥および焼成を行った後、図4(b)に示すように、隆起を設ける部位Fに部分的に遮光塗料を塗布して隆起状の塗膜を形成し、乾燥および焼成を(それまでに形成した塗膜全体に対して)行うものである。
第2の方法は、図4(a)に示すように、非光学有効面(コバ面)の全面に遮光塗料を塗布して平坦な塗膜を形成し、乾燥を行った後、焼成を省略して、図4(b)に示すように、部分的に隆起を設ける部位Fに遮光塗料を塗布して隆起状の塗膜を形成し、乾燥および焼成を行うものである。
第3の方法は、図5(a)に示すように、非光学有効面(コバ面)の隆起を設ける部位Fのみに遮光塗料を塗布して隆起状の塗膜を形成し、乾燥および焼成を行った後、図5(b)に示すように、全面に遮光塗料を塗布して平坦な塗膜を形成し、乾燥および焼成を行うものである。
第4の方法は、図5(a)に示すように、非光学有効面(コバ面)の隆起を設ける部位Fのみに遮光塗料を塗布して隆起状の塗膜を形成し、乾燥を行った後、焼成を省略して、図5(b)に示すように、全面に遮光塗料を塗布して平坦な塗膜を形成し、乾燥および焼成を行うものである。
図4および図5は、光軸Lに垂直な(垂直に近い方の)コバ面d上に隆起を設ける場合を示しているが、光軸Lに平行な(平行に近い方の)コバ面b上に隆起を設ける場合や、コバ面bおよびdの両方に隆起を設ける場合であっても、原理的には同様であって、上に述べた4種の手順がある点についても同様である。
以下、本発明の実施例(および比較例)として、段付き形状のコバ面を有する基材(レンズ基材)に遮光膜を形成して光学素子(レンズ)を実際に製造し、形成した遮光膜に膜割れが発生するかどうかを評価した具体例を挙げる。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能であることはいうまでもない。
(レンズ基材)
以下の実施例および比較例において用いたレンズ基材の断面形状を図6に示す。図6に示すレンズ基材11は凹面である光学有効面R1と凸面である光学有効面R2をもつ凹メニスカスレンズである。光学有効面R1の曲率半径は45.0mmであり、光学有効面R2の曲率半径は80mmである。光学有効面R1の外径φ1は36.0mm、光学有効面R2の外径φ2は60mmであり、光学有効面R1の外側の非光学有効面であるコバ面aの外径φ3は46.0mmである。
コバ面aとコバ面dは光軸Lに垂直な平面であり、コバ面bは光軸Lに対して回転対称な円筒面または円錐面(図6では円錐面だが)であり、コバ面eは光軸Lに対して回転対称で平行な円筒面である。コバ面aとコバ面bとで凸側段角部を形成し、コバ面bとコバ面dとで凹側段角部102を形成し、コバ面dとコバ面eとで凸側段角部を形成している。コバ面bとコバ面dの間には、凹側段角部102のR面取り部であるコバ面cが存在する。コバ面a−e全体の光軸Lに平行な方向の長さ(レンズ基材11の外周部の厚み)Y1は10.0mmであり、光軸Lに垂直な面であるコバ面aとコバ面dとの距離Y2は5.0mmである。
図7は、図6のレンズ基材11の凹側段角部102のR面取り部であるコバ面c近傍の拡大断面図である。コバ面bとコバ面dのなす角度(挟角)θ2は90度、110度または140度(図7では90度だが)であり、コバ面cの曲率半径Rは0.5mmまたは4mmである。
なお、各実施(比較)例で用いたレンズ基材は、SiO以外にLaを多く含む高屈折率系の硝材を用い、コバ面を研削加工で形成することにより製造されたものである。
(実施例1)
コバ面bとコバ面dとがなす角度(挟角)θ2が90度であり、コバ面cの曲率半径Rが0.5mmであるレンズ基材11を用い、光学有効面R2側を塗布装置の吸着回転シャフトに吸着させて回転させながら、コバ面全体に遮光塗料をスポンジコート法により塗布した。このとき、遮光材料としてGT−20(キヤノン化成社製)を用い、材料調合後30分程度経過した遮光塗料を用いた。コバ面全体が黒色を呈し十分に厚膜化した後に、1時間自然乾燥させ、次いで80℃で2時間焼成を行った。
次に、コバ面d上の内端B1(図7参照)から光軸Lと垂直方向に400μm程度離れた位置にディスペンサーのノズル中心を配置し、レンズ基材11を回転させながら遮光塗料を吐出量10nlで連続吐出させて1周塗布を行った。その後、乾燥、焼成をして本実施例の光学素子(隆起を有する遮光膜を設けたレンズ)を形成した。
以上の手順で作製した光学素子について、コバ面cの中央部およびコバ面dの内端B1における遮光膜2の膜厚、隆起21の高さT、ならびに内端B1から隆起の頂点21Aまでの水平距離D(図3参照)を、光学素子の割断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより測定した。
また、作成した光学素子を160℃で2時間熱処理した後に室温に戻し、膜割れが無いことを確認した後、高温高湿炉に投入し、500時間後に取り出した。取り出した光学素子について、光学有効面R2側からコバ面cおよびコバ面dを光学顕微鏡で確認し、長さ50μm以上で白く線状に見えた箇所は膜割れの発生有りとした。測定および評価の結果は表1に示すとおりである。
(実施例2)
コバ面bとコバ面dとがなす角度(挟角)θ2が110度であるレンズ基材を用いた点を除き、実施例1と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表1に示すとおりである。
(実施例3)
コバ面bとコバ面dとがなす角度(挟角)θ2が140度であるレンズ基材を用いた点を除き、実施例1と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表1に示すとおりである。
(実施例4)
コバ面cの曲率半径Rが4.0mmであるレンズ基材を用いた点と、遮光塗料による隆起の形成とコバ面全体への遮光膜の形成との順序を逆転させた点を除き、実施例1と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
遮光膜2の形成手順は、具体的には次のとおりである。まず、コバ面d上の内端B1(図7参照)から光軸Lと垂直方向に400μm程度離れた位置にディスペンサーのノズル中心を配置し、レンズ基材11を回転させながら遮光塗料の1周塗布を行った後、乾燥、焼成をして隆起を形成した。次に、上記隆起を形成したレンズ基材11の光学有効面R2側を塗布装置の吸着回転シャフトに吸着させて回転させながら、コバ面全体に遮光塗料をスポンジコート法により塗布した。そして、コバ面全体が黒色を呈し十分に厚膜化した後に、1時間自然乾燥させ、80℃で2時間焼成を行うことにより本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製した。測定および評価の結果は表1に示すとおりである。
(実施例5)
コバ面bとコバ面dとがなす角度(挟角)θ2が110度であるレンズ基材を用いた点を除き、実施例4と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表1に示すとおりである。
(実施例6)
コバ面bとコバ面dとがなす角度(挟角)θ2が140度であるレンズ基材を用いた点を除き、実施例4と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表1に示すとおりである。
(比較例1)
ディスペンサーによる遮光塗料の1周塗布を行わなかった点を除き、実施例1と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表1に示すとおりである。
(比較例2)
ディスペンサーによる遮光塗料の1周塗布を行わなかった点を除き、実施例3と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表1に示すとおりである。
(比較例3)
ディスペンサーによる遮光塗料の1周塗布を行わなかった点を除き、実施例4と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表1に示すとおりである。
(比較例4)
ディスペンサーによる遮光塗料の1周塗布を行わなかった点を除き、実施例6と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表1に示すとおりである。
Figure 0006878141
(実施例7)
コバ面全体に遮光膜を形成する工程において、80℃で2時間焼成を行うことを省略した点を除き、実施例1と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表2に示すとおりである。
(実施例8)
ディスペンサーによる遮光塗料の1周塗布の際に、材料調合後4時間程度経過した遮光塗料を用いた点を除き、実施例1と同様のレンズ基材を用い、実施例1と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表2に示すとおりである。
(比較例5)
コバ面全体に遮光膜を形成する工程において、1時間自然乾燥させ、80℃で2時間焼成を行う代わりに、10分程度乾燥させるだけとした点を除き、実施例1と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表2に示すとおりである。
(比較例6)
ディスペンサーによる遮光塗料の1周塗布の際に、材料調合後6時間程度経過した遮光塗料を用いた点を除き、実施例1と同様のレンズ基材を用い、実施例1と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表2に示すとおりである。
Figure 0006878141
(実施例9)
遮光塗料による隆起の形成とコバ面全体への遮光膜の形成との順序を逆転させ、かつ、隆起の形成の際に、ディスペンサーのノズル中心位置と用いる遮光塗料の調合後の経過時間を変更し、コバ面全体への遮光膜の形成の際に、スポンジコート法ではなくディスペンサーを用いた点を除き、実施例1と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
遮光膜の形成手順は、具体的には次のとおりである。まず、コバ面d上の内端B1(図7参照)から光軸Lと垂直方向に200μm程度離れた位置にディスペンサーのノズル中心を配置し、レンズ基材11を回転させながら吐出量10nlで遮光塗料を連続吐出させて1周塗布を行った。このとき、遮光材料としてGT−20(キヤノン化成社製)を用いて材料調合後4時間程度経過した遮光塗料を用いた。その後、材料調合後30分程度経過した遮光塗料を用いて、レンズ基材11を回転させながらディスペンサーより吐出量10nlで連続吐出させ、1周毎にディスペンサーをずらしてコバ面全面に塗布した。コバ面全体が黒色を呈し十分に厚膜化した後に、1時間自然乾燥させ、80℃で2時間焼成を行った。測定および評価の結果は表3に示すとおりである。
(実施例10)
隆起の形成の際に、コバ面d上の内端B1(図7参照)から光軸Lと垂直方向に(200μmではなく)600μm程度離れた位置にディスペンサーのノズル中心を配置し、レンズ基材11を回転させながら吐出量10nlで遮光塗料を連続吐出させて(1周塗布ではなく)2周塗布を行った点と、コバ面全体への遮光膜の形成の際に、遮光塗料の塗布を(ディスペンサーを用いるのではなく)スポンジコート法で行った点を除き、実施例9と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表3示すとおりである。
(比較例7)
遮光塗料による隆起の形成の際に、材料調合後(4時間程度ではなく)2時間程度経過した遮光塗料を用いた点と、コバ面d上の内端B1(図7参照)から光軸Lと垂直方向へ100μm程度離れた位置にディスペンサーのノズル中心を配置した点を除き、実施例9と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表3に示すとおりである。
(比較例8)
遮光塗料による隆起の形成の際に、材料調合後(4時間程度ではなく)6時間程度経過した遮光塗料を用いた点と、コバ面d上の内端B1(図7参照)から光軸Lと垂直方向へ800μm程度離れた位置にディスペンサーのノズル中心を配置し、レンズ基材11を回転させながら吐出量10nlで遮光塗料を連続吐出させて(2周塗布ではなく)3周塗布を行った点を除き、実施例10と同様にして本実施例の光学素子(遮光膜を設けたレンズ)を作製し、実施例1と同様に評価を行った。測定および評価の結果は表3に示すとおりである。
Figure 0006878141
(実施例および比較例の評価)
表1より、コバ面bとコバ面dの挟角θ2が90度以上140度以下、コバ面cの曲率半径Rが0.5mm以上4mm以下であるとき、凹側段角部102の上に設けられた遮光膜がコバ面dの内端近傍に隆起21を有することで、遮光膜の膜割れが抑制できることがわかる。
また、表1−3より、隆起の高さTと内端B1から隆起の頂点21Aまでの水平距離Dの比T/Dは、0.02〜0.10の範囲にあることが好ましいこともわかる。
さらに、表3より、内端B1から隆起の頂点21Aまでの水平距離Dが100μm〜800μmの範囲を外れることは好ましくなく、概ね200μm〜600μmの範囲にあることが好ましいこともわかる。
なお、コバ面c上の最大膜厚(コバ面cの中央部における遮光膜の膜厚)およびコバ面dの内端B1における(遮光膜の)膜厚は、それぞれ、前者が19〜33μm、後者が3〜6μmの範囲で変動している。これは、同じように塗布を行っても、それらの膜厚はかなり変動することを参考までに示したものである。これから、割れの発生の有無に関係するのは隆起の高さTと内端から隆起頂部までの水平距離Dの比T/Dであり、膜厚自体ではないことがわかる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。たとえば、本発明の光学素子はレンズには限定されず、プリズム、ミラー、波長板、ビームスプリッタなどであってもよい。
本発明の光学素子は、カメラ、顕微鏡、プロジェクタ等の各種光学機器に用いることができる。
1 光学素子
2 遮光膜
11 基材
21 隆起
21A 隆起の頂点
101 凹側段角部
102 凹側段角部
a コバ面
b コバ面
c コバ面bとコバ面dの間のR面取り部を構成するコバ面
d コバ面
e コバ面
A1 コバ面bとコバ面cの境界(コバ面bの内端)
A2 コバ面aとコバ面bの境界(コバ面bの外端)
B1 コバ面dとコバ面cの境界(コバ面dの内端)
B2 コバ面dとコバ面eの境界(コバ面dの外端)
F 遮光膜に隆起を形成する部位
L 光軸
R1 レンズの光学有効面
R2 レンズの光学有効面

Claims (9)

  1. 光学有効面と非光学有効面とを有し、該非光学有効面の上に遮光膜が形成された光学素子であって、
    前記非光学有効面が凹側段角部を有し、該凹側段角部を横切り、その凹側段角部の稜線に垂直な平面で前記光学素子を切ったときの断面において、該凹側段角部の表面に相当する線が、2つの線分が円弧状の曲線を介して滑らかに接続する形状を有し、該2つの線分が90度以上140度以下の角度をなし、該円弧状の曲線が0.5mm以上4mm以下の曲率半径を有し、
    前記2つの線分のそれぞれについて、前記曲線との境界をなす端をその線分の内端、反対側の端をその線分の外端とするとき、前記遮光膜が、前記断面において、前記2つの線分の少なくとも一方の上で、内端から外端に向かって膜厚が連続的または段階的に厚くなった後、連続的または段階的に薄くなる隆起を有するように、前記非光学有効面の前記凹側段角部を構成する面の上に形成され、前記隆起の頂点における前記遮光膜の膜厚と前記内端における該遮光膜の膜厚との差をTとし、前記内端から前記頂点までの水平距離をDとするとき、T/Dが0.02〜0.10の範囲にあることを特徴とする光学素子。
  2. 前記Dが100μm〜800μmの範囲にある、請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記Dが200μm〜600μmの範囲にある、請求項2に記載の光学素子。
  4. 前記光学素子がレンズであり、前記隆起が前記2つの線分のうち光軸に対して垂直に近い方の線分に相当する前記凹側段角部の表面の上に形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学素子。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の光学素子を含む光学機器。
  6. 光学有効面と非光学有効面とを有する透明基材を用意し、該透明基材の該非光学有効面に遮光膜を形成することにより光学素子を製造する方法であって、
    前記非光学有効面が凹側段角部を有し、該凹側段角部を横切り、その凹側段角部の稜線に垂直な平面で前記光学素子を切ったときの断面において、該凹側段角部の表面に相当する線が、2つの線分が円弧状の曲線を介して滑らかに接続する形状を有し、該2つの線分が90度以上140度以下の角度をなし、該円弧状の曲線が0.5mm以上4mm以下の曲率半径を有し、
    前記2つの線分のそれぞれについて、前記曲線との境界をなす端をその線分の内端、反対側の端をその線分の外端とするとき、前記遮光膜が、前記断面において、前記2つの線分の少なくとも一方の上で、内端から外端に向かって膜厚が連続的または段階的に厚くなった後、連続的または段階的に薄くなる隆起を有するように、前記非光学有効面の前記凹側段角部を構成する面の上に形成され、前記隆起の頂点における前記遮光膜の膜厚と前記内端における該遮光膜の膜厚との差をTとし、前記内端から前記頂点までの水平距離をDとするとき、T/Dが0.02〜0.10の範囲にあり、
    前記遮光膜を形成する工程が、前記非光学有効面の前記凹側段角部を含む所望の領域の全面に遮光塗料を塗布して乾燥することにより平坦な塗膜を形成する第1の工程と、該平坦な塗膜を形成した該所望の領域のうち前記隆起を設ける部位に遮光塗料を部分的に塗布して乾燥することにより隆起状の塗膜を形成し、その後、塗膜全体を焼成することにより前記隆起を有する遮光膜を形成する第2の工程からなることを特徴とする方法。
  7. 前記第1の工程が、遮光塗料を塗布して乾燥することにより形成した前記平坦な塗膜を焼成することを含む請求項6に記載の方法。
  8. 光学有効面と非光学有効面とを有する透明基材を用意し、該透明基材の該非光学有効面に遮光膜を形成することにより光学素子を製造する方法であって、
    前記透明基材の前記非光学有効面が凹側段角部を有し、該凹側段角部を横切り、その凹側段角部の稜線に垂直な平面で前記光学素子を切ったときの断面において、該凹側段角部の表面に相当する線が、2つの線分が円弧状の曲線を介して滑らかに接続する形状を有し、該2つの線分が90度以上140度以下の角度をなし、該円弧状の曲線が0.5mm以上4mm以下の曲率半径を有し、
    前記2つの線分のそれぞれについて、前記曲線との境界をなす端をその線分の内端、反対側の端をその線分の外端とするとき、前記遮光膜が、前記断面において、前記2つの線分の少なくとも一方の上で、内端から外端に向かって膜厚が連続的または段階的に厚くなった後、連続的または段階的に薄くなる隆起を有するように、前記非光学有効面の前記凹側段角部を構成する面の上に形成され、前記隆起の頂点における前記遮光膜の膜厚と前記内端における該遮光膜の膜厚との差をTとし、前記内端から前記頂点までの水平距離をDとするとき、T/Dが0.02〜0.10の範囲にあり、
    前記遮光膜を形成する工程が、前記非光学有効面の前記凹側段角部を含む所望の領域の前記隆起を設ける部位に遮光塗料を部分的に塗布して乾燥することにより隆起状の塗膜を形成する第1の工程と、該隆起状の塗膜を形成した部位を含む該所望の領域の全面に遮光塗料を塗布して乾燥することにより平坦な塗膜を形成し、その後、塗膜全体を焼成することにより前記隆起を有する遮光膜を形成する第2の工程からなることを特徴とする方法。
  9. 前記第1の工程が、遮光塗料を塗布して乾燥することにより形成した前記隆起状の塗膜を焼成することを含む請求項8に記載の方法。
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