JP2008031551A - アルミニウムめっき層および金属部材並びにその製造方法 - Google Patents

アルミニウムめっき層および金属部材並びにその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】陽極酸化する前のめっき膜が十分に硬く、取り扱い中に傷付きにくい電気アルミニウムめっき膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウムの含有率が97wt.%以下でビッカース硬さが300以上であるアルミニウムめっき膜である。めっき膜中に酸素、炭素、硫黄および塩素が不純物として含まれることによりめっき膜の硬度が増す。めっき膜中の不純物濃度は電流密度、めっき温度、液組成などにより設定することができる。
【選択図】図15

Description

本発明は、電気アルミニウムめっき法により作製する硬いアルミニウムめっき膜およびその製造方法に関する。
電気アルミニウムめっき方法は、めっき液やめっき膜に環境および人体に影響を与える重金属を含まないことから環境意識の高まりに応え得るめっき方法の一つとして知られている。アルミニウムによって形成された被膜の表面は陽極酸化することにより耐摩耗性、耐食性、着色性等に優れた被膜となるため実用化に向けて多くの研究がなされている。アルミニウムめっき膜を形成する方法としては、溶融めっきが一般的に知られている。溶融アルミニウムめっきは、700℃近い高温でアルミニウムを溶融させ、その中に試料を浸漬することで被膜を得る方法である。そのため、容易に被膜を得ることができるが、膜厚のコントロールが困難であり、ピンホールやボイドが発生しやすいという欠点がある。また、例えばマグネシウム素材の融点は648.8℃であり、アルミニウムの溶湯の中では溶解するためめっきが不可能である。
これに対して電気アルミニウムめっきでは、電気量により膜厚を制御することができ、200℃以下の低温でめっきすることが可能である。アルミニウム電析の標準電極電位が−1.71Vであり水素発生の電位よりも卑であるため、水溶液からのめっきは非常に困難である。従って、電気アルミニウムめっきは、非水溶媒や溶融塩からのめっきに限定される。
非水有機溶媒浴としては1956年にZieglerとLehmkuhlによるトルエン系溶媒のめっき浴が報告され、Sigal Process(商品名)として実用化されている。このめっき浴の主成分は、トリエチルアルミニウム−フッ化ナトリウム−トルエンであるが、溶質のトリエチルアルミニウムは禁水性および自然発火性が非常に強いため、防爆型のめっき装置が必要になる。また、めっき後の洗浄、洗浄液等の廃棄も容易ではなく、それらに関する検討も必要である。
他の非水溶媒系めっき浴としては1952年にBrennerらによって報告された塩化アルミニウム−水素化リチウムアルミニウム−ジエチルエーテル浴(Hydride型めっき浴)がよく知られている。また、液安定性を改善したテトラヒドロフラン溶媒を用いためっき浴も報告され実用化もされている。ところが、添加物として使用する水素化リチウムアルミニウムや水素化リチウムが非常に活性な物質であり、爆発の危険性を伴うため現在は使用されていない。
一方、溶融塩めっきは様々な合金系のものが報告されているが、実用化レベルまで至ったものはマンガン-アルミニウム合金めっきを除いて他にない。ここで使用するめっき液は、主に塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムからなり、少量の塩化マンガンが加えられている。この溶融塩めっきでは、主に塩化物を含有する試薬を使用するため、長期間の使用により装置が腐食する。アルキルピリジニウムハロゲン化物、四級アンモニウムハロゲン化物、アルキルイミダゾリウムハロゲン化物、オニウムハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物を100℃前後の温度で溶融し、通電してめっき膜が得られたとの報告もある(特願平7-11888等)。ところが、試薬が非常に高価であり、建浴工程が複雑であることから、実用には不向きである。
このような中で、特許文献1,2ではジメチルスルホンに代表されるようなジアルキルスルホンを用いた浴でアルミニウムが電析可能であることを示している。特許文献1,2によれば、ジメチルスルホンにめっき皮膜を形成させるべき金属の無水の塩を混合した後、この混合物を110℃程度まで加熱して前記金属無水塩を溶融させてめっき浴を製造する。めっき浴中にはジメチルスルホンを配位した金属錯イオンが生成され、電気めっきを行うとカソード(被めっき物)の表面に金属錯イオンに含まれる金属が還元析出してめっき皮膜が形成される。このめっき浴中には水が存在しないので水の電気分解は生じず還元電位の低い金属のめっき皮膜を形成することができる。ジメチルスルホンは空気との接触により爆発する虞はないため安全性が高いとしている。このめっき浴に使用されているジメチルスルホンには現在のところ環境に対する規制値がなく、他の有機溶媒のような毒性も報告されていない。また、ジメチルスルホンの融点が102〜109℃であるので、溶融塩めっきの中では処理温度を比較的低く設定できるという利点がある。
特開2004−76031号公報(特許請求の範囲、図1、図2) 特開2006−161154号公報
しかし、上記従来技術により得られる電気アルミニウムめっき膜は陽極酸化する前の膜が柔らかく、被めっき物の取り扱い中に傷付きやすい等の理由から用途展開が制限されることがあった。特許文献1のめっき方法ではめっき皮膜中に不活性微粒子を均一に分散させることにより不活性微粒子の特性に基づく機能性をめっき皮膜に与えることができるとしているが、微粒子を均一に分散させることは必ずしも容易ではない。
したがって本発明の目的は、陽極酸化する前のめっき膜が十分に硬く、取り扱い中に傷付きにくい電気アルミニウムめっき膜およびその製造方法を提供することにある。
上記の課題はアルミニウムめっき膜に特定の不純物を均一に含有させることで達成することができる。
即ち、本願第一の発明はアルミニウムの含有率が97wt.%以下でビッカース硬さが300以上であることを特徴とするアルミニウムめっき膜である。不純物として酸素、炭素、硫黄および塩素を含有することにより膜を硬くすることができる。
基体に第一の発明のアルミニウムめっき層を設けることにより300Hv以上の硬さのアルミニウム膜で被覆された金属部材を得ることができる。
本願第二の発明は、アルキルスルホンにアルミニウムハロゲン化物が溶解しためっき浴に被めっき物を浸漬し、電流密度0.25〜4A/dmで通電することを特徴とするアルミニウムめっき膜の製造方法である。
本願第三の発明は、アルキルスルホンにアルミニウムハロゲン化物を溶解させて浴温度60〜140℃に保持しためっき浴に被めっき物を浸漬し、通電することを特徴とするアルミニウムめっき膜の製造方法である。
本願第四の発明は、アルキルスルホンにアルミニウムハロゲン化物が溶解しためっき浴に被めっき物を収容したバレルを浸漬し、前記めっき浴中で前記バレルを回転させながら電流密度0.25〜4A/dmで通電することを特徴とするバレルめっき法によるアルミニウムめっき膜の製造方法である。
本願第五の発明は、アルキルスルホンにアルミニウムハロゲン化物を溶解させて浴温度60〜140℃に保持しためっき浴に被めっき物を収容したバレルを浸漬し、前記めっき浴中で前記バレルを回転させながら通電することを特徴とするバレルめっき法によるアルミニウムめっき膜の製造方法である。
アルミニウム源として使用するアルミニウムハロゲン化物としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等の無水塩が使用できる。アルキルスルホンとしてはジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホンが使用できる。めっき液中のアルミニウム濃度は、ジアルキルチルスルホン10molに対して、1.5〜4.0molが好ましい。特に好ましくは2.0〜3.0molである。アルミニウム濃度が1.5molを下回るとヤケ(アルミニウムの錯イオンの不足または電子過剰により生じ、黒色を呈することの多い副反応生成物)が発生しやすくなりめっき効率が低下する。一方、アルミニウム濃度が4.0molを上回るとヤケや無めっき等の欠陥は少なくなるが、液抵抗が高くなり発熱する。処理温度は60〜140℃が好ましい。温度が60℃未満になると、粘度が高くなると共にめっき膜中への不純物取り込み量が減少し、更にイオンの供給不足のためヤケが生じやすくなる。一方、140℃を超えると、アルミニウムハロゲン化物とアルキルスルホンとによって形成される錯体の構造が変化し、密着性の悪い皮膜が生成する。電流密度は0.25〜4A/dm2が好ましい。特に好ましくは1〜4A/dm2である。電流密度が0.25A/dm2未満になるとめっき膜が生成しなくなる。一方、4A/dm2を超えると不純物取り込み量が減少すると共に、電子過剰により被膜のヤケが顕著となる。
上述のように、本発明によれば、陽極酸化する前の膜の硬さが十分に高く取り扱い中に傷がつき難い電気アルミニウムめっき皮膜を実現することができる。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
まず初めに本発明のアルミニウムめっき膜の特性について説明する。
[めっき装置]
使用しためっき装置の概略を図1に示す。AlCl3は吸湿性が強いため、めっき液が大気中の水分を取り込まないように注意しながら実験を行った。気密性保持のため、蓋付きのセパラブルフラスコ(2リットル)を使用し、めっき中は5L/minの乾燥窒素を流しつづけた。加熱はシリコンラバーヒータで行い、電圧調節器と温度調節器により温度を調節した。スターラーは加熱機能付を使用した。陽極には純度99.99%のアルミニウム板(70mm×70mm×2mmt)を使用した。陰極には試料となる銅板(70mm×70mm×0.2mmt)を使用した。
[めっき液の建浴]
電気アルミニウムめっき液は、ジメチルスルホン(DMSO2)を溶媒とし、無水塩化アルミニウム(III)(AlCl3)を溶質として作製した。建浴工程を図2に示す。DMSO2とAlCl3のモル比が5:1となるように秤量(DMSO2:2300g、AlCl3:650g)し、ビーカー内で混合させ、50℃、80℃で2時間の予備加熱を行った。その後、DMSO2の融点(109℃)より僅かに高い110℃まで昇温し、試薬を完全に溶解させた。陽極、陰極を設置し、1時間放置して電極の温度が安定してからめっきを開始した。
[めっき条件]
めっき温度:温度を100〜130℃
電流密度:0.25〜14A/dm
[硬さ測定]
硬さはビッカース硬さにより評価した。平滑な素材に50μm以上の厚さのめっき膜を生成して試料とした。使用した装置は微小硬度計(型式:MVK-G2、明石製作所製)である。尚、めっき膜のビッカース硬さ測定では、膜厚が薄くなると素材の硬さの影響を受けるが、めっき膜厚が圧痕の径の1.5倍以上になれば信頼できる値となると言われている(ISO6507-1)。
[結晶配向度評価]
結晶配向度評価用試料には銅板に種々の条件でめっきしたものを使用した。結晶配向度は(111)ピーク強度に対する各反射のピーク強度比及び、半価幅により評価した。尚、測定に使用した装置は理学電機製X線回折装置RINT1500である。また、X線源には基板の励起の影響をなくすためCoKα線を用いた。
[結晶粒径測定]
めっき膜の平均結晶粒径は単位長さの線分と交差する結晶粒界の数から求めた。
[不純物濃度測定]
めっき膜中の不純物濃度を測定するため、FE-SEM(型式:S-2300)によるEDX分析、及びEPMAによる分析を行った。
被膜成分分析の結果、被膜中に含まれる主な不純物元素は塩素、硫黄、炭素、酸素であった。電流密度が低下するとめっき膜中の不純物が増加し、結晶粒は微細化した。更に攪拌速度を遅くした場合にも僅かではあるが不純物濃度は低下した。めっき時間(膜厚に相当)による結晶粒径と不純物濃度の変化をSEM及びGDOESを用いて調べた結果を図3及び図4に示す。図3より、めっき膜厚を厚くすると結晶粒径が大きく変化している。一方、図4のGDOESによる深さ方向の組成分析結果では不純物濃度の変化は最表面近傍でしか認められない。従って、不純物は粒界ではなく粒内に均一に含まれていると考えられる。
電流密度の上昇はヤケ(JIS-H0400-8011)の発生を招き、高純度のめっき膜の生成には限界がある。図5は200mlビーカーを用いて攪拌速度600rpmの条件で温度と電流密度を変化させた際の不純物濃度の変化を示している。ここでは、高電流密度で発生する試料端のヤケは無視し、試料中央での不純物濃度を測定した。めっき温度を固定した場合は電流密度が高いほど不純物濃度は低くなる。一方、温度が低くなると図中の等温線は不純物濃度が低い側にシフトする。各温度におけるヤケの発生しない限界の電流密度(最大電流密度と定義)での値を●で示した。温度と最大電流密度での不純物濃度の関係を図6に示す。図には2Lビーカーにおいて800rpmの攪拌速度で同様な測定を行った結果も併せて図示した。何れの装置を用いても、低温ほどめっき膜純度が上昇することがわかる。また、ビーカーの容量によっても不純物濃度が異なることが明らかになった。表1に各条件と不純物、結晶粒径の関係を纏めた。
これまでめっき液組成は、塩化アルミニウム16.7mol%としてきた。めっき液の性質上、凝固点の正確な測定は困難であるが、約90℃で凝固する。塩化アルミニウム濃度を28.6mol%まで高くすると凝固点は低下し、60℃でもめっきは可能となる。更に濃度を高くすると凝固点は再び上昇し、更に50mol%付近で再度凝固点は低下する。図7は電流密度と不純物濃度の関係であるが、めっき液濃度が変化しても生成するめっき膜中の不純物濃度に大きな影響はない。
図7はめっき膜組成が液の濃度に因らないことを示しているが、建浴方法によるめっき膜組成のバラツキを考慮する必要がある。そこで、めっき温度と攪拌速度を一定とし、異なる数種類のめっき液から生成した膜の組成と電流密度との関係を図8に示した。白丸はFE-SEM、黒丸はEPMAによる分析結果である。多少のバラツキはあるものの、硫黄濃度、塩素濃度共に不純物濃度は電流密度に大きく依存していることがわかる。図4をみると硫黄と塩素の比率は膜厚に関係なく一定となっている。そこで、数種類の試料について分析した硫黄と塩素の関係を図9に示す。図より硫黄と塩素の比率は1.35:1.00であり硫黄は塩素の1.35倍±30%以内である。試料間でのバラツキは殆どない。ここではめっき液組成比の異なるデータを●で示したが、この比率から大きく外れてはいなかった。
[めっき膜の結晶配向測定結果]
ジメチルスルホンを溶媒としためっき液から生成しためっき膜は結晶性であることが分かっているが、その配向がめっき条件等によりどのように変化するかを調べるため、X線回折によるピーク強度比の測定を行った。膜厚を変化させたときの結果を図10に、電流密度を変化させたときの結果を図11に示す。縦軸は(111)ピーク強度との比を示している。図中の実線はアルミニウムの標準カードにおけるピーク強度比である。図10より、膜厚が厚くなると総てのピーク強度比が標準より大きくなっていることから、厚膜化により(111)配向が弱くなると考えられる。また、(311)ピーク強度比が著しく強くなっていることから、厚膜化により(311)配向が強くなると考えられる。図11の電流密度変化でにおいても総てのピークが標準値を上回っており、(111)配向が弱いことが判る。また、電流密度の増大により(220)配向が強くなり、(311)配向が弱くなる傾向にある。
[密着性評価]
各種素材上のアルミニウムめっき膜の剪断密着度試験結果を図12に示す。縦軸は素材の電気抵抗率(実測値)であるが、抵抗率が小さな素材ほど密着性が良好である。表面での抵抗が大きい素材では電子が移動し難いため、基板表面で電析するための核が形成し難いことが原因と考えられる。表2に示す碁盤目試験結果から判るようにSUS304、Fe-50at%Ni合金、Ni板の順に密着性は悪くなっており、実施例の結果とほぼ合致した。好ましい素材としては抵抗率50μΩcm以下、特に好ましくは1μΩcm以下の金属である。
[電流密度(不純物)の影響]
めっき膜中の不純物濃度と耐食性の関係を調べるため、電流密度((a) 2.0A/dm2、(b) 3.0A/dm2、(c) 4.0A/dm2)と耐食性の違いを検討した。尚、膜厚は40μmに固定した。素材にアルミニウムめっき後、表面を熱水酸化させてから塩水噴霧試験を行った。熱水酸化処理は90℃の純水に1時間浸漬して行った。図13にその結果を示す。試験開始後1500時間までは優位差は認められなかったが、2000時間で各試料において白錆が認められた。白錆の発生した面積を比較すると、被膜純度の高い高電流密度ほど多く発生した。従って、不純物の存在は塩水噴霧試験においてめっき膜の耐食性を改善すると判断した。低電流密度ほど耐食性が良好となった原因としては、低電流密度で結晶粒が小さく緻密な膜を形成したためと考えられる。
[硬さ測定]
本発明のアルミニウムめっきは電気めっきであるので、試料が平板でも面内に電流密度分布を生じる。従って、微小硬度計を用いた硬さ測定では、測定場所と対応した膜質評価が重要となる。そこで硬さの測定の際は試料断面から膜厚を実測し、測定点における局地的な電流密度を求め、測定点近傍における不純物濃度との比較を行った。図14に局所的電流密度と膜の硬さとの関係を示す。尚、ここでは電流効率を100%として計算した。電流密度が大きくなるにつれて膜の硬さは低下した。
硬さの測定点近傍における組成分析結果を図15に示す。各不純物濃度が増加するにつれて被膜硬さも増加しており、不純物によって膜が硬化していると考えられる。図5からも分かる通り電流密度やめっき液温度によってアルミニウムめっき膜の硬さを制御することが可能である。また、図15から膜硬さ300Hv以上を得るのに必要な不純物濃度は酸素1.6wt.%以上、炭素0.45wt.%以上、硫黄0.35wt.%以上、塩素0.3wt.%以上である。
図16はめっき膜/素材界面からの距離と硬さの関係を示したものである。めっき膜が厚くなると不純物濃度は変化せず、結晶粒径は大きくなり、(311)結晶配向が強くなることは既に述べた通りであるが、図16によれば膜厚により膜の硬さに変化は認められない。従って、配向、及び結晶粒径の変化は硬さに影響しないと考えられる。
図17は主な金属材料との硬さデータの比較であるが、本発明のめっき膜では不純物が少ない条件においても生成する膜は300Hv以上の硬さを示した。アルミニウムの陽極酸化膜の硬さは250〜600Hvであるが、本発明のめっき膜は陽極酸化前の状態で既に陽極酸化膜並みの硬さを有している。
図18にアルミニウムめっき膜の純度と硬さの関係を示した。約97wt.%以下の純度のときビッカース硬さ300以上を得ることができる。これまで示した通り不純物の含有量は電流密度やめっき液温度によって制御することができる。不純物の含有率が3wt.%以上となるようにめっき条件を設定することで硬いめっき膜を析出させることができるので、バレルめっき等の耐傷性が求められるめっき方式にも本発明のアルミニウムめっき膜は有効である。
大量な被めっき物へのコーティングにバレル式処理が使用されることは良く知られている。しかし、従来のアルミニウムコーティング膜は柔らかく、回転中に被めっき物同士が衝突して被膜に傷が付き易い。それに比べて本発明のアルミニウムめっき膜は非常に硬く、バレルめっきに適用することができる。図19にその装置の概略を示す。めっき槽12にめっき液11を満たしバレル13を浸漬する。通液孔15と回転軸16を備えたバレル13中には多数の被めっき物14が装入される。アノード(図示せず)はめっき液に浸漬されカソード(図示せず)はバレル内に設けられる。めっき条件を設定し通電しながらバレルを回転させる。被めっき物14は互いに衝突しながらアルミニウムめっき膜が形成される。被めっき物を小さくしたりバレル回転速度を小さくするなどの対策を行うまでもなく、本発明のアルミニウムめっき膜は硬いため傷がつきにくい。図20に生成しためっき膜外観と断面写真を示す。9mmφ×5mmtの希土類磁石にめっきした結果であるが、治具後等は無く均一なめっき膜が生成している。
本発明は、めっき直後の状態で十分に硬く、取り扱い中に傷がつき難い電気アルミニウムめっき膜およびその製造方法に利用することができる。
Alめっき実験装置の概略図 アルミニウムめっき液の建浴工程 めっき膜厚と表面の結晶粒径の関係 アルミニウムめっき膜のGDOES結果 電流密度、めっき温度と不純物濃度の関係 最大電流密度における不純物濃度と温度の関係 めっき液組成、電流密度と不純物濃度の関係 不純物濃度と電流密度の関係 めっき膜中の塩素と硫黄の比率 めっき膜の結晶配向度と膜厚の関係 めっき膜の結晶配向度と電流密度の関係 各素材に対するアルミニウムめっき膜の密着性 電流密度と耐食性の関係 電流密度とアルミニウムめっき膜の硬さの関係 不純物濃度とアルミニウムめっき膜の硬さの関係 アルミニウムめっき膜の厚さと硬さの関係 本発明のアルミニウムめっき膜と各種材料との硬さの比較 アルミニウムめっき膜の純度と硬さの関係。 バレルめっき装置の概略図。 バレルめっきにより生成しためっき膜外観及び断面写真。

Claims (7)

  1. アルミニウムの含有率が97wt.%以下でビッカース硬さが300以上であることを特徴とするアルミニウムめっき膜。
  2. 酸素、炭素、硫黄および塩素を含む請求項1に記載のアルミニウムめっき膜。
  3. 基体に請求項1または2に記載のアルミニウムめっき膜を設けたことを特徴とする金属部材。
  4. アルキルスルホンにアルミニウムハロゲン化物が溶解しためっき浴に被めっき物を浸漬し、電流密度0.25〜4A/dmで通電することを特徴とするアルミニウムめっき膜の製造方法。
  5. アルキルスルホンにアルミニウムハロゲン化物を溶解させて浴温度60〜140℃に保持しためっき浴に被めっき物を浸漬し、通電することを特徴とするアルミニウムめっき膜の製造方法。
  6. アルキルスルホンにアルミニウムハロゲン化物が溶解しためっき浴に被めっき物を収容したバレルを浸漬し、前記めっき浴中で前記バレルを回転させながら電流密度0.25〜4A/dmで通電することを特徴とするバレルめっき法によるアルミニウムめっき膜の製造方法。
  7. アルキルスルホンにアルミニウムハロゲン化物を溶解させて浴温度60〜140℃に保持しためっき浴に被めっき物を収容したバレルを浸漬し、前記めっき浴中で前記バレルを回転させながら通電することを特徴とするバレルめっき法によるアルミニウムめっき膜の製造方法。
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