JP2009235462A - 溶融塩浴、溶融塩浴の製造方法およびタングステン析出物 - Google Patents

溶融塩浴、溶融塩浴の製造方法およびタングステン析出物 Download PDF

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Abstract

【課題】タングステンが析出する基材への熱による悪影響を抑制することができ、タングステンの析出速度に優れ、タングステン析出物の表面を平滑にすることができる溶融塩浴、その溶融塩浴の製造方法およびその溶融塩浴を用いて得られるタングステン析出物を提供する。
【解決手段】Li原子100原子に対して、25原子以上400原子以下のNa原子と、25原子以上185原子以下のK原子とを含み、Li原子とNa原子とK原子との総原子数100原子に対して、10原子以上40原子以下のW原子と、40原子以上160原子以下のO原子と、20原子以上80原子以下のCl原子とを含む溶融塩浴、その溶融塩浴の製造方法およびその溶融塩浴を用いて得られたタングステン析出物である。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶融塩浴、溶融塩浴の製造方法およびタングステン析出物に関し、特に、タングステンが析出する基材への熱による悪影響を抑制することができ、タングステンの析出速度に優れ、タングステン析出物の表面を平滑にすることができる溶融塩浴、その溶融塩浴の製造方法およびその溶融塩浴を用いて得られるタングステン析出物に関する。
従来より、電鋳による金属製品の製造や基材のコーテイングを行なう場合に、電解により金属を浴中から析出させる技術が利用されている。特に、近年、情報通信、医療、バイオまたは自動車などの様々な分野において、小型、高機能および省エネルギ性に優れた微細な金属製品の製造を可能とするMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が注目されており、電解によって金属を析出させる技術を利用してMEMSに適用される微細な金属製品を製造したり、微細な金属製品の表面をコーティングすることが考えられている。
また、金属のなかでもタングステンは耐熱性および耐腐食性に優れているため、タングステンを用いて上記の微細な金属製品を製造または微細な金属製品の表面をコーティングした場合には、耐熱性および耐久性に優れた微細な金属製品の製造および微細な金属製品の表面のコーティングなどが可能となる。
しかしながら、タングステンは水よりもイオン化傾向が大きい金属であることから、タングステンを含む水溶液を用いた電解では水の電解が優先して発生する。したがって、タングステンを含む水溶液を用いた電解によりタングステンを析出させることは困難であり、過去に報告例もない。
一方、非特許文献1には、750℃〜800℃のKF−LiF−NaF溶融塩浴を用いた電解によりタングステンを析出できることが示唆されている。
また、非特許文献2には、850℃のKF−B23−WO3溶融塩浴を用いた電解によりタングステンを析出できることが記載されている。
また、非特許文献3には、タングステン化合物を含むZnBr2−NaBr溶融塩浴およびZnCl2−NaCl溶融塩浴を350℃〜450℃で電解することによってタングステンを析出できることが記載されている。
また、非特許文献4には、タングステン化合物を含むZnCl2−NaCl−KCl−KF溶融塩浴を250℃で電解することによってタングステンを析出できることが記載されている。
G.W.Mellors and S.Senderoff, "Electrodeposition of Coherent Deposits of Refractory Metals", JOURNAL OF THE ELECTROCHEMICAL SOCIETY, Vol.112, No.3, March 1965, pp.266−272 香山滉一郎, 「バナジウム、モリブデンおよびタングステンの溶融塩電解」, 溶融および高温化学, Vol.43, No.1, 2000, pp.38-63 Akira Katagiri, "Electrodeposition of Tungsten in ZnBr2−NaBr and ZnCl2−NaCl Melts", J.Electrochem. Soc., Vol.138, No.3, March 1991, pp.767−773 Hironori Nakajima et al., "Electrodeposition of Refractory Metals in Molten Salts at 250℃"
しかしながら、非特許文献1および非特許文献2に記載された方法においては、電解時の溶融塩浴の温度を上記のように750℃という高温にする必要があるため、タングステンが析出する基材への熱による悪影響が避けられないという問題があった。
また、非特許文献1および非特許文献2に記載された方法においては、溶融塩浴中に含まれるフッ化物が上記のような高温では腐食性が高くなるため、耐腐食性に優れた高価な装置を用いる必要があるという問題もあった。
さらに、非特許文献1に記載された溶融塩浴はLiFおよびNaFを主成分として高濃度で含み、水に難溶であるため、電解により析出したタングステン析出物と溶融塩浴とを水を用いて分離することができず、タングステン析出物の分離が困難であるという問題もあった。
一方、非特許文献3に記載された方法においては、350℃〜450℃で電解を行なうことができるものの、この温度範囲ではZnCl2の揮発性が高くなるため、溶融塩浴の管理が困難であり、工業的な利用が困難であるという問題があった。また、非特許文献3に記載された方法においては、得られるタングステン析出物の表面が粗くなってタングステン析出物の表面の平滑性が十分ではないという問題もあった。
また、非特許文献4に記載された方法においては、タングステンイオン源となるタングステン化合物の溶融塩浴中の溶解量が少ないため、電解時における電流密度に限界があり、タングステンの析出速度が遅くなるという問題があった。
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、タングステンが析出する基材への熱による悪影響を抑制することができ、タングステンの析出速度に優れ、タングステン析出物の表面を平滑にすることができる溶融塩浴、その溶融塩浴の製造方法およびその溶融塩浴を用いて得られるタングステン析出物を提供することにある。
本発明は、リチウム(Li)原子と、ナトリウム(Na)原子と、カリウム(K)原子と、タングステン(W)原子と、酸素(O)原子と、塩素(Cl)原子とを含み、ナトリウム原子はリチウム原子100原子に対して25原子以上400原子以下の割合で含まれており、カリウム原子はリチウム原子100原子に対して25原子以上185原子以下の割合で含まれており、タングステン原子は、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して10原子以上40原子以下の割合で含まれており、酸素原子は、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して40原子以上160原子以下の割合で含まれており、塩素原子は、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して20原子以上80原子以下の割合で含まれている溶融塩浴である。
また、本発明の溶融塩浴は、フッ素原子をさらに含むことが好ましい。
また、本発明の溶融塩浴において、フッ素原子は、タングステン原子100原子に対して5原子以上165原子以下の割合で含まれていることが好ましい。
また、本発明の溶融塩浴は、タングステン酸リチウム(Li2WO4)と、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4)と、タングステン酸カリウム(K2WO4)と、アルカリ金属の塩化物とを混合することにより作製されてもよい。ここで、アルカリ金属の塩化物は、塩化リチウム、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムからなる群から選択された少なくとも1種であってもよい。
また、本発明の溶融塩浴において、タングステン酸ナトリウムはタングステン酸リチウム100物質量に対して24物質量以上400物質量以下の割合で混合され、タングステン酸カリウムはタングステン酸リチウム100物質量に対して5物質量以上184物質量以下の割合で混合され、アルカリ金属の塩化物はタングステン酸リチウム100物質量に対して115物質量以上1770物質量以下の割合で混合されて作製されたことが好ましい。なお、アルカリ金属の塩化物が2種以上から構成される場合には、上記のアルカリ金属の塩化物の物質量はその2種以上のアルカリ金属の塩化物の物質量の合計とされる。
また、本発明は、上記のいずれかの溶融塩浴を製造する方法であって、タングステン酸リチウムと、タングステン酸ナトリウムと、タングステン酸カリウムと、アルカリ金属の塩化物とを混合して混合物を作製する工程と、混合物を加熱して溶融させる工程とを含み、アルカリ金属の塩化物は、塩化リチウム、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムからなる群から選択された少なくとも1種である溶融塩浴の製造方法である。
ここで、本発明の溶融塩浴の製造方法において、タングステン酸ナトリウムはタングステン酸リチウム100物質量に対して24物質量以上400物質量以下の割合で混合され、タングステン酸カリウムはタングステン酸リチウム100物質量に対して5物質量以上184物質量以下の割合で混合され、アルカリ金属の塩化物はタングステン酸リチウム100物質量に対して115物質量以上1770物質量以下の割合で混合されて上記のいずれかの溶融塩浴が作製されてもよい。なお、アルカリ金属の塩化物が2種以上から構成される場合には、上記のアルカリ金属の塩化物の物質量はその2種以上のアルカリ金属の塩化物の物質量の合計とされる。
また、本発明は、上記のいずれかの溶融塩浴および上記のいずれかの溶融塩浴の製造方法により製造された溶融塩浴の少なくとも一方を電解することにより析出したタングステン析出物である。
ここで、本発明のタングステン析出物は、5体積%以上のβ−タングステンを含むことが好ましい。
本発明によれば、タングステンが析出する基材への熱による悪影響を抑制することができ、タングステンの析出速度に優れ、タングステン析出物の表面を平滑にすることができる溶融塩浴、その溶融塩浴の製造方法およびその溶融塩浴を用いて得られるタングステン析出物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<溶融塩浴の構成>
本発明の溶融塩浴は、リチウム原子と、ナトリウム原子と、カリウム原子と、タングステン原子と、酸素原子と、塩素原子とを含んでいる。ここで、ナトリウム原子は、本発明の溶融塩浴中に、リチウム原子100原子に対して25原子以上400原子以下の割合で含まれている。また、カリウム原子は、本発明の溶融塩浴中に、リチウム原子100原子に対して25原子以上185原子以下の割合で含まれている。また、タングステン原子は、本発明の溶融塩浴中に、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して10原子以上40原子以下の割合で含まれている。また、酸素原子は、本発明の溶融塩浴中に、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して40原子以上160原子以下の割合で含まれている。さらに、塩素原子は、本発明の溶融塩浴中に、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して20原子以上80原子以下の割合で含まれている。
本発明の溶融塩浴中において、ナトリウム原子がリチウム原子100原子に対して25原子以上400原子以下の割合で含まれておらず、かつカリウム原子がリチウム原子100原子に対して25原子以上185原子以下の割合で含まれていない場合には、溶融塩浴の融点が上昇して、タングステンが析出する基材への熱による悪影響が大きくなるため、タングステン析出用の溶融塩浴に適さなくなる。
また、本発明の溶融塩浴中において、タングステン原子の含有量が、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して40原子を超える場合には、溶融塩浴の融点が上昇して、溶融塩浴の粘度が増大するため、タングステンが析出する基材へのタングステンイオンの供給が抑制されて、表面が平滑なタングステン析出物が得られなくなる。また、この場合には、未溶解塩が溶融塩浴中を浮遊して、タングステン析出物に取り込まれるなどの不具合の原因となるため、タングステン析出用の溶融塩浴に適さなくなる。
また、本発明の溶融塩浴中において、タングステン原子の含有量が、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して10原子未満である場合には、溶融塩浴中におけるタングステンの濃度が少ないためにタングステンが析出する基材へのタングステンイオンの供給が十分に行なわれず、タングステン析出物がデンドライト状になりやすいため、タングステン析出用の溶融塩浴に適さなくなる。
また、本発明の溶融塩浴中において、酸素原子の含有量がリチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して160原子を超える場合には、溶融塩浴の粘度が高くなりすぎるため、基材の表面へのタングステンイオンの供給が遅くなる。これにより、デンドライト状のタングステン析出物が得られやすくなり、タングステン析出物中に酸素原子が取り込まれやすくなって、タングステン析出物中における酸素の含有量が増大して不純物が増加するため、タングステン析出用の溶融塩浴に適さなくなる。
また、本発明の溶融塩浴中において、酸素原子の含有量がリチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して40原子未満である場合には、タングステンの配位状態が変わり、タングステン析出物の表面の平滑性が悪化するため、タングステン析出用の溶融塩浴に適さなくなる。
また、本発明の溶融塩浴中において、塩素原子の含有量がリチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して80原子を超える場合には、タングステンの配位状態が変わり、タングステン析出物の表面の平滑性が悪化するため、タングステン析出用の溶融塩浴に適さなくなる。
また、本発明の溶融塩浴中において、塩素原子の含有量がリチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して20原子未満である場合には、溶融塩浴の粘度が増大して、基材へのタングステンイオンの供給が抑制され、表面の平滑なタングステン析出物が得られなくなるため、タングステン析出用の溶融塩浴に適さなくなる。
本発明の溶融塩浴中において、ナトリウム原子は、リチウム原子100原子に対して70原子以上85原子以下の割合で含まれていることが好ましい。本発明の溶融塩浴中におけるナトリウム原子の含有量がリチウム原子100原子に対して70原子以上85原子以下の範囲内にある場合には表面の平滑性の高いタングステン析出物が得られる傾向にある。
また、本発明の溶融塩浴中において、カリウム原子は、リチウム原子100原子に対して40原子以上50原子以下の割合で含まれていることが好ましい。本発明の溶融塩浴中におけるカリウム原子の含有量がリチウム原子100原子に対して40原子以上50原子以下の範囲内にある場合には本発明の溶融塩浴の融点の上昇を抑えることができるため、表面の平滑性の高いタングステン析出物が得られる傾向にある。
また、本発明の溶融塩浴中において、タングステン原子は、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して20原子以上30原子以下の割合で含まれていることが好ましい。本発明の溶融塩浴中におけるタングステン原子の含有量がリチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して20原子以上30原子以下である場合に比較的低い温度域で電解することができる傾向にある。また、電析時の温度が同一である場合でも、他の溶融塩浴と比べて溶融塩浴の粘度が低くなるため、基材へのタングステンイオンの供給が早くなり、タングステンを電析するための電流密度の範囲が広がる傾向にある。
また、本発明の溶融塩浴中において、酸素原子は、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して80原子以上120原子以下の割合で含まれていることが好ましい。本発明の溶融塩浴中における酸素原子の含有量がリチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して80原子以上120原子以下の範囲内にある場合には溶融塩浴の粘度が低く、タングステンの配位状態が電解に好適であり、タングステンを析出するための電流密度の範囲が広がる傾向にある。
本発明の溶融塩浴中において、塩素原子は、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して40原子以上60原子以下の割合で含まれていることが好ましい。本発明の溶融塩浴中における塩素原子の含有量がリチウム原子100原子に対して40原子以上60原子以下の範囲内にある場合には溶融塩浴の粘度が低く、タングステンの配位状態が電解に好適であり、タングステンを析出するための電流密度の範囲が広がる傾向にある。
また、本発明の溶融塩浴は、上記の原子に加えて、さらにフッ素原子を含んでいることが好ましい。ここで、本発明の溶融塩浴中において、フッ素原子は、タングステン原子100原子に対して5原子以上165原子以下の割合で含まれていることがより好ましく、タングステン原子100原子に対して10原子以上20原子以下の割合で含まれていることがさらに好ましい。
本発明の溶融塩浴がフッ素原子を含む場合には、本発明の溶融塩浴を電解して析出したタングステン析出物の表面の平滑性が向上する傾向にある。なかでも、本発明の溶融塩浴中におけるフッ素原子の含有量がリチウム原子100原子に対して5原子以上165原子以下である場合、特にタングステン原子100原子に対して10原子以上20原子以下である場合には、本発明の溶融塩浴を電解して析出したタングステン析出物の表面の平滑性がさらに向上する傾向にある。
なお、上記のリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、タングステン原子、酸素原子、塩素原子およびフッ素原子の溶融塩浴中における形態は特に限定されず、たとえばイオンとして存在したり、錯体を構成した状態で存在していてもよい。また、本発明の溶融塩浴を構成する酸素原子以外の原子は、本発明の溶融塩浴を水に溶解させた試料についてICP分光分析(inductively coupled plasma spectrometry)を行なうことによって検出することができる。
また、本発明の溶融塩浴中の酸素原子は、本発明の溶融塩浴について不活性ガス融解赤外吸収法を用いることによって確認することができる。ここで、不活性ガス融解赤外吸収法は、たとえば以下のようにして行なうことができる。
まず、ヘリウムガス雰囲気中においてカーボン坩堝に本発明の溶融塩浴を収容した後に、カーボン坩堝を加熱することによって本発明の溶融塩浴中から酸素を生じさせる。すると、この酸素がカーボン坩堝の炭素と反応して一酸化炭素や二酸化炭素を生成する。次に、生成した一酸化炭素や二酸化炭素を含む雰囲気中に赤外線を照射する。最後に、雰囲気中の一酸化炭素や二酸化炭素が吸収することによって生じた赤外線の減衰量を調査することによって本発明の溶融塩浴中の酸素の存在および含有量を確認することができる。
<溶融塩浴の作製>
本発明の溶融塩浴は、たとえば、タングステン酸リチウムと、タングステン酸ナトリウムと、タングステン酸カリウムと、アルカリ金属の塩化物とを混合することにより作製することができる。
ここで、アルカリ金属の塩化物は、塩化リチウム、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
そして、タングステン酸リチウムと、タングステン酸ナトリウムと、タングステン酸カリウムと、アルカリ金属の塩化物とを混合して混合物を作製し、その混合物を加熱して溶融させることにより、本発明の溶融塩浴を製造することができる。
なお、タングステン酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウムおよびアルカリ金属の塩化物がそれぞれ固体ではなく融液の状態にある場合には、タングステン酸リチウムの融液、タングステン酸ナトリウムの融液、タングステン酸カリウムの融液およびアルカリ金属の塩化物の融液を混合するだけで本発明の溶融塩浴を製造することができる。
また、本発明の溶融塩浴は、たとえば、タングステン酸リチウム100物質量に対してタングステン酸ナトリウムを24物質量以上400物質量以下混合し、タングステン酸カリウムを5物質量以上184物質量以下混合することにより作製することができる。また、アルカリ金属の塩化物は、たとえば、タングステン酸リチウム100物質量に対して115物質量以上1770物質量以下の割合で混合することができる。
また、本発明の溶融塩浴中にフッ素原子を含有させる場合には、上記の成分に、たとえば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウムおよびフッ化カリウムからなる群から選択された少なくとも1種のアルカリ金属のフッ化物を混合することにより作製することができる。
<溶融塩浴の電解>
上記のようにして得られた本発明の溶融塩浴は、たとえば図1の模式的な構成図に示す電解槽1中に収容される。そして、電解槽1中に収容された本発明の溶融塩浴2に陽極3と陰極4とを浸漬させた後に、陽極3と陰極4との間に電流を流して本発明の溶融塩浴2の電解を行なうことによって、たとえば陰極4の表面上に本発明の溶融塩浴2中に含まれるタングステンが析出してタングステン析出物を得ることができる。
<タングステン析出物>
本発明の溶融塩浴を電解することによって析出したタングステン析出物は、従来の溶融塩浴を電解することによって析出したタングステン析出物よりも表面の平滑性が向上することに特徴がある。
タングステン析出物の表面が平滑になる原因を本発明者が鋭意検討した結果、本発明の溶融塩浴を電解することによって析出したタングステン析出物には従来の溶融塩浴を電解することによって析出したタングステン析出物よりもβ−タングステンの含有量が多く、α−タングステンの含有量が少ない傾向にあることがわかった。
ここで、本発明の溶融塩浴を電解することによって析出したタングステン析出物は、5体積%以上のβ−タングステンを含むことが好ましく、10体積%以上のβ−タングステンを含むことがより好ましい。本発明の溶融塩浴を電解することによって析出したタングステン析出物が5体積%以上のβ−タングステンを含む場合、特に10体積%以上のβ−タングステンを含む場合には、粗に成長しがちなα−タングステンの成長を抑制して、核発生を促進する効果が得られるため、タングステン析出物の表面の平滑性がさらに向上する傾向にある。
ここで、タングステン析出物中におけるβ−タングステンの含有量(体積%)はX線回折装置によりタングステン析出物の結晶構造に基づくX線回折パターンをθ−2θ法により求め、α−タングステンとβ−タングステンとのそれぞれのX線回折ピーク強度から以下の式(1)によって求めることができる。
β−タングステンの含有量(体積%)=100×(β−タングステンに対応するX線回折ピーク強度)/{(β−タングステンに対応するX線回折ピーク強度)+(α−タングステンに対応するX線回折ピーク強度)} …(1)
なお、上記の式(1)において、β−タングステンに対応するX線回折ピークは2θ=39.885°付近に存在するX線回折ピークである。また、α−タングステンに対応するX線回折ピークは2θ=40.265°付近に存在するX線回折ピークである。
上記のようにして得られたタングステン析出物は、たとえば、コンタクトプローブ、マイクロコネクタ、マイクロリレー、各種のセンサ部品、可変コンデンサ、インダクタ、アレイ若しくはアンテナなどのRFMEMS(Radio Frequency Micro Electro Mechanical System)、光MEMS用部材、インクジェットヘッド、バイオセンサ内電極またはパワーMEMS用部材(電極など)が挙げられる。
<実施例1>
実施例1の溶融塩浴が、表1の実施例1の構成原子比の欄に示される原子数比の原子から構成されるように、タングステン酸リチウム粉末、タングステン酸ナトリウム粉末、タングステン酸カリウム粉末、塩化リチウム粉末、塩化ナトリウム粉末および塩化カリウム粉末をそれぞれ所定量ずつ混合した混合物を作製し、その混合物をアルミナ製の坩堝(株式会社ニッカトー製 SSA−Sグレード B4タイプ)に投入した。
ここで、タングステン酸リチウム粉末、タングステン酸ナトリウム粉末、タングステン酸カリウム粉末、塩化リチウム粉末、塩化ナトリウム粉末および塩化カリウム粉末はそれぞれAr(アルゴン)雰囲気のグローブボックス内でそれぞれ秤量され、同じグローブボックス内にあるアルミナ製の坩堝に投入された。
次に、上記の混合物が投入されたアルミナ製の坩堝をマントルヒーターを用いて550℃に加熱して、上記の混合物を溶融させて、実施例1の溶融塩浴を作製した。
次に、上記のグローブボックス内で、1cm角の正方形の板状に切断した純ニッケル板(株式会社ニラコ製)からなる陰極および1cm幅の短冊状のタングステン板(株式会社ニラコ製)からなる陽極をそれぞれ実施例1の溶融塩浴中に浸漬させた。
ここで、上記の陽極および陰極にはそれぞれニッケル線を溶接し、それぞれのニッケル線から陽極と陰極との間に電流を供給できる構造とした。
そして、実施例1の溶融塩浴の温度を550℃に保持した状態で、陽極および陰極を揺動させながら陽極の表面1cm2当たり50mA(ミリアンペア)の電流(電流密度50mA/cm2)が流れるように上記の陽極と陰極との間に電流を30分間流した。
このような条件で実施例1の溶融塩浴の電解を行なうことにより、陰極である純ニッケル板の表面上にタングステンを析出させてタングステン析出物を形成した。
その後、タングステン析出物が形成された純ニッケル板をグローブボックス内から大気中に取り出し、タングステン析出物に付着した溶融塩を水に溶解させてタングステン析出物から分離して、タングステン析出物を乾燥させた。
そして、タングステン析出物の表面粗さ、厚みおよびβ−タングステンの含有量(体積%)を測定した。その結果を表1に示す。
上記のタングステン析出物の表面粗さは、レーザ顕微鏡(キーエンス社製の型番「VK−8500」)を用いて算術平均粗さRa(JIS B0601−1994)を求めることにより評価した。ここで、表1に示す表面粗さの欄の数値(算術平均粗さRaの値)が小さいほど、より平滑な表面を有するタングステン析出物であることを示している。
また、タングステン析出物の厚みは、エポキシ樹脂にタングステン析出物が形成された純ニッケル板を埋め込んでエポキシ樹脂にタングステン析出物とエポキシ樹脂との界面を転写し、当該界面の転写後のエポキシ樹脂の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いてタングステン析出物の表面からその界面までの距離を測定して算出した。ここで、表1に示す厚みの欄の数値が大きいほど、厚みが大きいタングステン析出物が析出したことを示している。
また、タングステン析出物中におけるβ−タングステンの含有量(体積%)はX線回折装置によりタングステン析出物の結晶構造に基づくX線回折パターンをθ−2θ法により求め、α−タングステンとβ−タングステンとのそれぞれのX線回折ピーク強度の比率から体積比率を算出したものである。ここで、β−タングステンの含有量(体積%)は、上記の式(1)により算出した。
ここで、表1に示すβ−タングステン(体積%)の欄の数値が大きいほど、β−タングステンの含有量が多いことを示している。
<実施例2〜5および比較例1〜2>
表1の実施例2〜5および比較例1〜2のそれぞれの構成原子比の欄に示される原子数比の原子から溶融塩浴が構成されるようにしたこと以外は実施例1と同様にして実施例2〜5および比較例1〜2のそれぞれの溶融塩浴を作製した。
そして、実施例2〜5および比較例1〜2のそれぞれの溶融塩浴の温度を表1の条件の温度(℃)の欄に示す温度に保持した状態で、陽極および陰極を揺動させながら実施例2〜5および比較例1〜2のそれぞれの溶融塩浴に表1の条件の電流密度(mA/cm2)の欄に示す電流密度でそれぞれ電流が流れるように上記の陽極と陰極との間に電流を30分間流した。
このような条件で実施例2〜5および比較例1〜2のそれぞれの溶融塩浴の電解を行なうことにより、陰極である純ニッケル板の表面上にタングステンを析出させて、タングステン析出物を形成した。
その後、実施例1と同様にして、タングステン析出物の表面粗さ、厚みおよびβ−タングステンの含有量(体積%)を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2009235462
なお、比較例1の溶融塩浴から析出したタングステン析出物はその大半がタングステン析出物に付着した溶融塩を水に溶解させたときに基材から脱落した。
また、比較例2の溶融塩浴から析出したタングステン析出物はタングステン析出物に付着した溶融塩を水に溶解させたときに基材から脱落したため、タングステン析出物の表面粗さ、厚みおよびβ−タングステンの含有量(体積%)については測定しなかった。
<実施例6>
表2の実施例6の構成原子比の欄に示される原子数比の原子から溶融塩浴が構成されるようにしたこと以外は実施例1と同様にして実施例6の溶融塩浴を作製した。
そして、実施例6の溶融塩浴の温度を表2の条件の温度(℃)の欄に示す温度に保持した状態で、陽極および陰極を揺動させながら実施例6の溶融塩浴に表2の条件の電流密度(mA/cm2)の欄に示す電流密度でそれぞれ電流が流れるように上記の陽極と陰極との間に電流を30分間流した。
このような条件で実施例6の溶融塩浴の電解を行なうことにより、陰極である純ニッケル板の表面上にタングステンを析出させて、タングステン析出物を形成した。
その後、実施例1と同様にして、タングステン析出物の表面粗さ、厚みおよびβ−タングステンの含有量(体積%)を測定した。その結果を表2に示す。
<実施例7〜9および比較例3〜4>
表2の実施例7〜9および比較例3〜4のそれぞれの構成原子比の欄に示される原子数比の原子から溶融塩浴が構成されるようにしたこと以外は実施例6と同様にして実施例7〜9および比較例3〜4のそれぞれの溶融塩浴を作製した。
そして、実施例7〜9および比較例3〜4のそれぞれの溶融塩浴の温度を表2の条件の温度(℃)の欄に示す温度に保持した状態で、陽極および陰極を揺動させながら実施例7〜9および比較例3〜4のそれぞれの溶融塩浴に表2の条件の電流密度(mA/cm2)の欄に示す電流密度でそれぞれ電流が流れるように上記の陽極と陰極との間に電流を30分間流した。
このような条件で実施例7〜9および比較例3〜4のそれぞれの溶融塩浴の電解を行なうことにより、陰極である純ニッケル板の表面上にタングステンを析出させて、タングステン析出物を形成した。
その後、実施例6と同様にして、タングステン析出物の表面粗さ、厚みおよびβ−タングステンの含有量(体積%)を測定した。その結果を表2に示す。
なお、比較例3〜4の溶融塩浴から析出したタングステン析出物はタングステン析出物に付着した溶融塩を水に溶解させたときに基材から脱落したため、タングステン析出物の表面粗さ、厚みおよびβ−タングステンの含有量(体積%)については測定しなかった。
Figure 2009235462
<実施例10>
表3の実施例10の構成原子比の欄に示される原子数比の原子から溶融塩浴が構成されるようにしたこと以外は実施例1と同様にして実施例10の溶融塩浴を作製した。
そして、実施例10の溶融塩浴の温度を表3の条件の温度(℃)の欄に示す温度に保持した状態で、陽極および陰極を揺動させながら実施例10の溶融塩浴に表3の条件の電流密度(mA/cm2)の欄に示す電流密度でそれぞれ電流が流れるように上記の陽極と陰極との間に電流を30分間流した。
このような条件で実施例10の溶融塩浴の電解を行なうことにより、陰極である純ニッケル板の表面上にタングステンを析出させて、タングステン析出物を形成した。
その後、実施例1と同様にして、タングステン析出物の表面粗さ、厚みおよびβ−タングステンの含有量(体積%)を測定した。その結果を表3に示す。
<実施例11〜13および比較例5〜6>
表3の実施例11〜13および比較例5〜6のそれぞれの構成原子比の欄に示される原子数比の原子から溶融塩浴が構成されるようにしたこと以外は実施例10と同様にして実施例11〜13および比較例5〜6のそれぞれの溶融塩浴を作製した。
そして、実施例11〜13および比較例5〜6のそれぞれの溶融塩浴の温度を表3の条件の温度(℃)の欄に示す温度に保持した状態で、陽極および陰極を揺動させながら実施例11〜13および比較例5〜6のそれぞれの溶融塩浴に表3の条件の電流密度(mA/cm2)の欄に示す電流密度でそれぞれ電流が流れるように上記の陽極と陰極との間に電流を30分間流した。
このような条件で実施例11〜13および比較例5〜6のそれぞれの溶融塩浴の電解を行なうことにより、陰極である純ニッケル板の表面上にタングステンを析出させて、タングステン析出物を形成した。
その後、実施例10と同様にして、タングステン析出物の表面粗さ、厚みおよびβ−タングステンの含有量(体積%)を測定した。その結果を表3に示す。
なお、比較例5の溶融塩浴から析出したタングステン析出物はその一部がタングステン析出物に付着した溶融塩を水に溶解させたときに基材から脱落した。
また、比較例6の溶融塩浴を用いて析出したタングステン析出物はタングステン析出物に付着した溶融塩を水に溶解させたときに基材から脱落したため、タングステン析出物の表面粗さ、厚みおよびβ−タングステンの含有量(体積%)については測定しなかった。
Figure 2009235462
<実施例14>
表4の実施例14の構成原子比の欄に示される原子数比の原子から溶融塩浴が構成されるようにしたこと以外は実施例1と同様にして実施例14の溶融塩浴を作製した。
そして、実施例14の溶融塩浴の温度を表4の条件の温度(℃)の欄に示す温度に保持した状態で、陽極および陰極を揺動させながら実施例14の溶融塩浴に表4の条件の電流密度(mA/cm2)の欄に示す電流密度でそれぞれ電流が流れるように上記の陽極と陰極との間に電流を30分間流した。
このような条件で実施例14の溶融塩浴の電解を行なうことにより、陰極である純ニッケル板の表面上にタングステンを析出させて、タングステン析出物を形成した。
その後、実施例1と同様にして、タングステン析出物の表面粗さ、厚みおよびβ−タングステンの含有量(体積%)を測定した。その結果を表4に示す。
<実施例15〜18>
表4の実施例15〜18のそれぞれの構成原子比の欄に示される原子数比の原子から溶融塩浴が構成されるようにしたこと以外は実施例14と同様にして実施例15〜18のそれぞれの溶融塩浴を作製した。
そして、実施例15〜18のそれぞれの溶融塩浴の温度を表4の条件の温度(℃)の欄に示す温度に保持した状態で、陽極および陰極を揺動させながら実施例15〜18のそれぞれの溶融塩浴に表4の条件の電流密度(mA/cm2)の欄に示す電流密度でそれぞれ電流が流れるように上記の陽極と陰極との間に電流を30分間流した。
このような条件で実施例15〜18のそれぞれの溶融塩浴の電解を行なうことにより、陰極である純ニッケル板の表面上にタングステンを析出させて、タングステン析出物を形成した。
その後、実施例14と同様にして、タングステン析出物の表面粗さ、厚みおよびβ−タングステンの含有量(体積%)を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2009235462
<評価>
表1に示すように、ナトリウム原子がリチウム原子100原子に対して25原子以上400原子以下の範囲内で含まれている実施例1〜5の溶融塩浴を用いた場合にはナトリウム原子がその範囲内で含まれていない比較例1〜2の溶融塩浴を用いた場合と比べて基材への密着性に優れ、かつ平滑な表面を有するタングステン析出物が得られた。
また、表1に示すように、ナトリウム原子がリチウム原子100原子に対して70原子以上85原子以下の範囲内で含まれている実施例1、4および5の溶融塩浴を用いた場合には、ナトリウム原子がその範囲内で含まれていない実施例2〜3の溶融塩浴を用いた場合と比べて平滑な表面を有するタングステン析出物が得られた。
表2に示すように、カリウム原子がリチウム原子100原子に対して25原子以上185原子以下の範囲内で含まれている実施例6〜9の溶融塩浴を用いた場合にはカリウム原子がその範囲内で含まれていない比較例3〜4の溶融塩浴を用いた場合と比べて基材への密着性に優れたタングステン析出物が得られた。
また、表2に示すように、カリウム原子がリチウム原子100原子に対して40原子以上50原子以下の範囲内で含まれている実施例8〜9の溶融塩浴を用いた場合には、カリウム原子がその範囲内で含まれていない実施例6〜7の溶融塩浴を用いた場合と比べてより平滑な表面を有するタングステン析出物が得られた。
表3に示すように、リチウム原子とナトリウム原子とカリウム原子との総原子数100原子に対して、タングステン原子が10原子以上40原子以下の割合で含まれており、酸素原子が40原子以上160原子以下の割合で含まれており、塩素原子が20原子以上80原子以下の割合で含まれている実施例10〜13の溶融塩浴を用いた場合には、タングステン原子、酸素原子および塩素原子がその範囲内で含まれていない比較例5〜6の溶融塩浴を用いた場合と比べて基材への密着性が高く、かつ表面の平滑性の高いタングステン析出物が得られた。
表4に示すように、フッ素原子がタングステン原子100原子に対して5原子以上165原子以下の範囲内で含まれている実施例14〜17の溶融塩浴はフッ素原子がその範囲内で含まれていない実施例18の溶融塩浴と比べてタングステン析出物の表面の平滑性を向上することができた。
また、表4に示すように、フッ素原子がタングステン原子100原子に対して10原子以上20原子以下の範囲内で含まれている実施例16〜17の溶融塩浴は、フッ素原子がその範囲内で含まれていない実施例14〜15の溶融塩浴と比べてタングステン析出物の表面の平滑性をより向上することができた。
また、表1〜表4に示すように、上記の実施例1〜18の溶融塩浴を用いた場合には550℃で電解が可能であったため、基材である純ニッケル板への熱による影響も抑制できることが確認された。
また、表1〜表4に示すように、上記の実施例1〜18の溶融塩浴を用いた場合には30分間という短時間の電解で11.3μm〜14.2μmの厚みのタングステン析出物が得られていることから、タングステン析出物の析出速度にも優れることが確認された。
なお、表1〜表4における構成原子比の欄の数値は、リチウム原子の含有量を100原子としたときの各原子の含有量が原子数で表わされている。
また、表2〜表4についても、表面粗さの欄の数値(算術平均粗さRaの値)が小さいほど、より平滑な表面を有するタングステン析出物であることを示している。
また、表2〜表4についても、厚みの欄の数値が大きいほど、厚みが大きいタングステン析出物が析出したことを示している。
また、表2〜表4についても、β−タングステン(体積%)の欄の数値が大きいほど、β−タングステンの含有量が多いことを示している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、タングステンが析出する基材への熱による悪影響を抑制することができ、タングステンの析出速度に優れ、タングステン析出物の表面を平滑にすることができる溶融塩浴、その溶融塩浴の製造方法およびその溶融塩浴を用いて得られるタングステン析出物を提供することができる。
本発明の溶融塩浴を電解してタングステンを析出させる装置の一例の模式的な構成図である。
符号の説明
1 電解槽、2 溶融塩浴、3 陽極、4 陰極。

Claims (9)

  1. リチウム原子と、ナトリウム原子と、カリウム原子と、タングステン原子と、酸素原子と、塩素原子とを含み、
    前記ナトリウム原子は、前記リチウム原子100原子に対して25原子以上400原子以下の割合で含まれており、
    前記カリウム原子は、前記リチウム原子100原子に対して25原子以上185原子以下の割合で含まれており、
    前記タングステン原子は、前記リチウム原子と前記ナトリウム原子と前記カリウム原子との総原子数100原子に対して10原子以上40原子以下の割合で含まれており、
    前記酸素原子は、前記リチウム原子と前記ナトリウム原子と前記カリウム原子との総原子数100原子に対して40原子以上160原子以下の割合で含まれており、
    前記塩素原子は、前記リチウム原子と前記ナトリウム原子と前記カリウム原子との総原子数100原子に対して20原子以上80原子以下の割合で含まれている、溶融塩浴。
  2. フッ素原子をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の溶融塩浴。
  3. 前記フッ素原子は、前記タングステン原子100原子に対して5原子以上165原子以下の割合で含まれていることを特徴とする、請求項2に記載の溶融塩浴。
  4. タングステン酸リチウムと、タングステン酸ナトリウムと、タングステン酸カリウムと、アルカリ金属の塩化物とを混合することにより作製され、
    前記アルカリ金属の塩化物は、塩化リチウム、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の溶融塩浴。
  5. 前記タングステン酸ナトリウムは、前記タングステン酸リチウム100物質量に対して24物質量以上400物質量以下の割合で混合され、
    前記タングステン酸カリウムは、前記タングステン酸リチウム100物質量に対して5物質量以上184物質量以下の割合で混合され、
    前記アルカリ金属の塩化物は、前記タングステン酸リチウム100物質量に対して115物質量以上1770物質量以下の割合で混合されて作製されたことを特徴とする、請求項4に記載の溶融塩浴。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の溶融塩浴を製造する方法であって、
    タングステン酸リチウムと、タングステン酸ナトリウムと、タングステン酸カリウムと、アルカリ金属の塩化物とを混合して混合物を作製する工程と、
    前記混合物を加熱して溶融させる工程と、を含み、
    前記アルカリ金属の塩化物は、塩化リチウム、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、溶融塩浴の製造方法。
  7. 前記タングステン酸ナトリウムは、前記タングステン酸リチウム100物質量に対して24物質量以上400物質量以下の割合で混合され、
    前記タングステン酸カリウムは、前記タングステン酸リチウム100物質量に対して5物質量以上184物質量以下の割合で混合され、
    前記アルカリ金属の塩化物は、前記タングステン酸リチウム100物質量に対して115物質量以上1770物質量以下の割合で混合されて作製されることを特徴とする、請求項6に記載の溶融塩浴の製造方法。
  8. 請求項1から5のいずれかに記載の溶融塩浴および請求項6または7に記載の溶融塩浴の製造方法により製造された溶融塩浴の少なくとも一方を電解することにより析出した、タングステン析出物。
  9. 5体積%以上のβ−タングステンを含むことを特徴とする、請求項8に記載のタングステン析出物。
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