JP6614660B2 - 多孔質ニッケルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質ニッケルの製造方法に関する。
近年、燃料電池の普及により水素の製造が盛んに行われている。水素の製造には,水蒸気改質法が用いられている。その際,メタンなどと水蒸気を混合させ、ニッケル触媒を用いて水素を発生させる。ニッケル触媒には表面積を確保するために多孔質化が求められている。
多孔質ニッケルは、周知のものとしてラネーニッケルがある。ラネーニッケルは、ニッケルとアルミニウムの合金を作製後、アルミニウムを強アルカリ溶液で溶かすことで、ニッケルを多孔質化している(たとえば特許文献1)。この方法は、アルカリとアルミニウムの反応で発生する水素がニッケルに吸着してしまい、取扱いが難しい。
近年、このような強アルカリを用いることなく、ニッケルを多孔質化する研究が行われている。Ni−Y金属間化合物薄膜を形成させた電極に、アノード方向への電位走査を施すことで、薄膜の金属間化合物相を短時間のうちに他の相に変化させ得ることが報告されている。この方法では、LiCl−KClの溶融塩中にイットリウム(Y)を溶解させたうえで、溶融塩中に、作用極として平板状多結晶ニッケル、対極にグラッシーカーボン、参照極に銀/塩化銀電極を入れて、まず、ニッケルにイットリウムの薄膜層20μmを4時間ほどかけて形成している。その後、アノード方向への電位走査によって、ニッケルとイットリウムからなる薄膜層部分からイットリウムを溶解させることで、薄膜層部分を多孔質化している(非特許文献1)。
特開平1−242148号公報の第1頁右下欄「(従来の技術)」の欄
立岩健二、多田正行、伊藤靖彦「Ni−Y金属間化合物薄膜の相制御および多孔質化」、表面技術、Vol.46,No.7,1995,p.672−673
非特許文献1のように溶融塩を用いた方法は、ラネーニッケルの製法のような強アルカリを用いていないため、強アルカリに起因した問題は発生しない。しかしながら、ニッケルの基板に20μmのニッケル−イットリウム薄膜層を形成するために4時間ほど時間がかかっている。また、非特許文献1によれば、ニッケル−イットリウム薄膜層はNiYであるとされている。このため、Niに対してレアアースと云われているイットリウムの使用量が多い。これらのことから溶融塩を用いた従来の多孔質ニッケルの製造方法では、製造コストが高くなる。
そこで本発明の目的は、溶融塩を用いた多孔質ニッケルの製造方法において、製造コストを低減することのできる多孔質ニッケルの製造方法を提供することである。
本発明は下記の手段により達成される。
(1)塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびアルミニウムを含むアルミニウム含有溶融塩を準備する溶融塩準備段階と、
前記アルミニウム含有溶融塩中に浸漬したニッケル基材に、アルミニウムが電析する電位を印加してニッケルアルミナイド合金層を形成するアルミニウム電析段階と、
前記ニッケルアルミナイド合金層を形成した前記ニッケル基材に、アルミニウムを溶解し、かつニッケルを溶解しない電位を印加して、前記ニッケルアルミナイド合金層からアルミニウムを溶解させて多孔質層を形成するアルミニウム溶解段階と、
を有する、多孔質ニッケルの製造方法。
(2)前記アルミニウム電析段階は、前記アルミニウム含有溶融塩中に参照極および対極を浸漬し、前記ニッケル基材をカソードとしたとき、前記参照極に対するカソード電位が−1.8V〜−1.2Vとなるようにし、
前記アルミニウム溶解段階は、前記アルミニウム含有溶融塩中に参照極および対極を浸漬し、前記ニッケルアルミナイド合金層が形成された前記ニッケル基材をアノードとしたとき、前記参照極に対するアノード電位が−1.25V〜−0.3Vとなるようにする、上記(1)に記載の多孔質ニッケルの製造方法。
(3)前記溶融塩準備段階は、アルミニウム源としてフッ化アルミニウムを用いて、前記アルミニウム含有溶融塩の全量に対し前記フッ化アルミニウムの濃度を1〜5mol%にする、上記(2)に記載の多孔質ニッケルの製造方法。
(4)前記溶融塩準備段階は、前記アルミニウム含有溶融塩に、さらにイットリウム、ジルコニウム、およびハフニウムのうち少なくともいずれか一つの元素を含む、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の多孔質ニッケルの製造方法。
(5)前記溶融塩準備段階は、前記イットリウム、ジルコニウム、ハフニウムのうち少なくともいずれか一つの元素源として、フッ化イットリウム、フッ化ジルコニウム、およびフッ化ハフニウムからなる群から選択されたいずれか一つのフッ化金属を用いて、前記アルミニウム含有溶融塩の全量に対し前記いずれか一つのフッ化金属の濃度を0.01〜0.2mol%にする、上記(4)記載の多孔質ニッケルの製造方法。
本発明によれば、アルミニウム電析段階でニッケル基材の表面にアルミニウムを電析させることでニッケルアルミナイド合金層を形成し、アルミニウム溶融段階でニッケルアルミナイド合金層からアルミニウムを溶解させることで多孔質層を形成した。このようにアルミニウムを使用したことで溶融塩を用いた従来の多孔質ニッケルの製造方法よりも製造コストを低減することができる。
実施形態に係る多孔質ニッケルの製造方法を示す流れ図である。 実施形態に係る多孔質ニッケルの製造方法に伴うニッケル基材の状態を説明するための概略断面図である。 Al電析段階およびAl溶解段階を行うための装置構成を説明するための概略図である。 Al電析後の各試料のSEM観察結果を示す図面代用写真である。 カソード電位−1.5Vによる定電位電析における時間経過と電流密度の関係を示すグラフである。 Al溶解後の各試料のSEM観察結果を示す図面代用写真である。 アノード電位を変化させてAl溶解を行ったときのアノード電位と電流密度の関係を示すグラフである。 深さ方向の組成分布を説明する説明図である。 アノード電位を変化させてAl溶解を行ったときのアノード電位と電流密度の関係を示すグラフである。 Al溶解時の時間経過と電流密度の関係を示すグラフである。 Al溶解後の試料のSEM観察結果を示す図面代用写真である。 深さ方向の組成分布を説明する説明図である。 Al電析における単位面積当たりの質量増加量とYF濃度の関係を示すグラフである。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面における各部材の大きさや比率は説明の都合上誇張されており、実際の大きさや比率とは異なることがある。
図1は、実施形態に係る多孔質ニッケルの製造方法を示す流れ図である。また、図2は、実施形態に係る多孔質ニッケルの製造方法に伴うニッケル基材の状態を説明するための概略断面図である。
<溶融塩準備段階>
多孔質ニッケルの製造方法は、まずAl含有NaCl−KCl溶融塩を準備する(S1)。これには、塩化ナトリウム(NaCl)および塩化カリウム(KCl)とともに、アルミニウム(Al)源としてフッ化アルミニウム(AlF)を用意する。これらをそれぞれ所定量坩堝などの耐熱容器に入れて加熱することでAl含有NaCl−KCl溶融塩を得る。なお、この溶融塩準備段階は、NaCl−KClを加熱して溶融塩を用意し、この溶融塩中にフッ化アルミニウム(AlF)を溶解させてもよい。
NaClは融点800℃、KClは融点776℃である。またNaCl−KCl混合塩(混合モル比1:1)は融点660℃である。したがって、溶融塩を準備する際には、NaCl−KClを等モル量とすることで、融点が低くなり溶解させやすくなる。これらの融点から、溶融塩の温度はたとえば、660℃〜950℃程度とすればよい。なお、ニッケル(Ni)の融点は1455℃、アルミニウム(Al)の融点は660℃である。このため溶融塩の温度が660℃〜950℃であれば、Alは溶けるがNiが溶けることはない。また、後述するニッケルアルミナイド合金層を形成するNiAlの融点は1638℃である。したがって溶融塩の温度がこの範囲であれば形成されたニッケルアルミナイド合金層がそのまま溶けてしまうこともない。
この溶融塩中のAlFの濃度は、後述するAl電析段階においてNiとAlとの合金が形成される濃度であればよく、特に限定されない。たとえば溶融塩の全量(100mol%)に対して、1mol%〜5mol%もあれば十分である。好ましくは後述する実施例から3.5mol%である。
この溶融塩準備段階では溶融塩中に、さらにイットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、およびハフニウム(Hf)のうち少なくともいずれか一つのレアアース(元素)を添加してもよい。これらの元素源としては、たとえば、フッ化イットリウム(YF)、フッ化ジルコニウム(ZrF)、およびフッ化ハフニウム(HfF)からなる群から選択されたいずれか一つのフッ化金属を使用する。これらを添加する際はNaCl、KCl、およびAlFと共にこれらフッ化金属を耐熱容器に入れて加熱、溶解すればよい。
これらフッ化金属の濃度は溶融塩の全量(100mol%)に対してフッ化金属を、たとえば0.01〜0.2mol%とする。フッ化金属の濃度をこのような範囲とする理由は、下限については、後述する実施例からレアアースを全く入れなくても多孔質化は可能である。したがって、レアアースを添加する場合の下限は0mol%を超えて添加すればよい。ただ、あまりにも少ないと多孔質化を促進する効果が期待できないため、0.01mol%程度としたものである。一方、上限は、レアアースを多く添加するとAlの電析が抑制されるため、後述する実施例から0.2mol%以下とすることが好ましい。
このようにレアアースを添加した場合でも、その濃度は低くてよい。これは従来技術(非特許文献1)のように、NiとYからなるような合金の作製を目的としていないためである。
<Al電析段階>
次に、このAl含有NaCl−KCl溶融塩(レアアースを含む場合も含む。以下同様)中に浸漬したNi基材にカソード電位を印加して、Ni基材にAlを電析させる(S2)。
このAl電析段階は、あらかじめ溶融塩準備段階において、図2(a)に示す多孔質化するNi基材101を、加熱前に作用極としてセットしておく。同様に参照極と対極もセットしておく。このときNi基材101を含む各電極は、加熱により溶融塩となった後に、溶融塩に浸漬する位置にセットする。なお、これに代えて、加熱により溶融塩となってからNi基材を含めて各電極を溶融塩に浸漬するようにしてもよい。
作用極(Ni基材101でありここではカソードとなる)、対極(ここではアノードとなる)、および参照極は電源制御装置(ポテンショスタット)に接続する。
Al電析段階における溶融塩の温度は、溶融塩を準備したときと同じでよく、たとえば660℃〜950℃である。
そして、Ni基材101をカソードとして参照極との間に電位を印加する。これによりNi基材101上にAlを電析させ、図2(b)に示すように、ニッケルアルミナイド合金層(以下NiAl層という)102を形成する。
Alの電析には、カソード電位をAlの還元電位域である−1.8V〜−1.2Vの範囲(カソード−参照極間電位)とすることが好ましい。その理由は、このようなカソード電位の範囲においてカソードとアノードとの間に電流が流れて、Alの電析が起こるからである。Alの電析時間は、Alイオン(Al)の濃度によって異なる。また電析により形成したいNiAl層102の厚さによっても異なるので一概には言えないが、カソード電位をたとえば後述する実施例から、−1.5Vとした場合、電析時間は、定電位電析の場合、1.5ks〜3.6ks程度(ただし1ks=1000秒。以下同じ)で、10〜100μm程度の厚さのNiAl層102を形成することができる。なお、この時間はあまり長くしても、電析反応自体が飽和してしまう(カソード分極電流が流れなくなる)。このためAl電析時間は3.6ks以上としてもあまり意味はない。
Al電析段階は不活性ガス雰囲気(たとえばアルゴンガスを流す)で行うことが好ましい。これは溶融塩が水分を吸収しないようにするためである。
なお、実施例においては、Al含有NaCl−KCl溶融塩中の参照極を0Vとすれば、Ni基材101側が−1.8V〜−1.2Vとなるようにして、Ni基材101と対極との間に電流を流すように制御することになる。
これらのアノード電位および電析時間は、レアアースを添加した場合も同じでよい。
<Al溶解段階>
次に、NiAl層を形成したNi基材に、Alを溶解しかつNiを溶解しないアノード電位を印加して、NiAl層からAl(レアアースがある場合はそれを含めて)を溶解させて多孔質層を形成する(S3)。
このAl溶解段階は、NaCl−KCl溶融塩の中に浸漬したNiAl層付Ni基材101aをアノードとして、参照極との間に電位を印加する。このとき印加する電位はAlを溶解し、かつNiを溶解しない電位とするのである。これによりNiAl層102からAlを溶解させる。これにより、図2(c)に示すように、NiAl層102(合金)からAl成分が抜けてAlの抜けた部分が孔になったNiの多孔質層103が出来上がる。
Al溶解段階における溶融塩の温度も、溶融塩を準備したとき、およびAl電析段階と同じでよく、たとえば660℃〜950℃である。
このAl溶解段階において印加するアノード電位は、後述する実施例から−1.25V〜−0.3Vとする。−0.3Vを超えて印加すると、Niも溶解してしまうので多孔質化できなくなる。一方、−1.25V未満としても、Alの溶解は起きないので、それ以下にする意味がない。また、このAlを溶解するための時間は、たとえば1.0ks〜3.6ksであることが好ましい。
なお、実施例においては、NaCl−KCl溶融塩中の参照極を0Vとすれば、NiAl層付Ni基材101a側が−1.25V〜−0.3Vとなるように、NiAl層付Ni基材101aと対極との間に電流を流すように制御することになる。
これらのアノード電位および溶解時間は、レアアースを添加した場合も同じでよい。
Al溶解段階においても、不活性ガス雰囲気(たとえばアルゴンガスを流す)で行うことが好ましい。これは溶融塩が水分を吸収しないようにするためである。
このAl溶解段階は、Al電析段階から連続して行ってもよい。連続して行う場合は、Al電析段階中はNi基材側がカソードとなるようにし、Al溶解段階中はアノードとなるように制御すればよい。また連続して行う場合は、溶融塩中にAlが残っている状態でもよい。また、連続して行う場合、溶融塩の温度は各段階を通して同じでよい。
もちろん、Al溶解段階は、Al電析段階とは別に行ってもよい。別に行う場合、溶融塩は等モル量のNaCl−KCl(NaCl:KCl=1モル:1モル)を使用すればよい。ただし、Alの溶解に伴ってNaCl−KCl溶融塩中にAl成分が溶け出してくる。このため初めからNaCl−KCl溶融塩中にAl成分を含んでいても差し支えない。これは上述したようにNiAl層102からAlを溶解させる条件はアノード電位の範囲で決まり、溶融塩中のAl濃度には依存しないためである。別々に行う場合、溶融塩の温度は各段階で異なっていてもよいし、同じでもよい。Al電解段階と別に行う場合は、NaCl、KClを耐熱容器に入れて加熱前からNiAl層を形成したNi基材を含めて各電極をセットするようにしてもよい。このとき各電極は、溶融塩となった後に溶融塩に浸漬する位置にセットする。また、加熱により溶融塩となってから、NiAl層を形成したNi基材を含めて各電極を溶融塩に浸漬するようにしてもよい。
以上のようにして、ニッケル基材上に多孔質層が出来上がるので、溶融塩中から取り出し、冷却後、十分に洗浄する。
次に、装置構成について説明する。
図3は、Al電析段階およびAl溶解段階を行うための装置構成を説明するための概略図である。なお、ここで説明する装置(電析溶解装置)はあくまでもAlの電析および溶解を行うための一例であり、本発明を実施するために必要な装置構成がこのような装置構成に限定されるものではない。
電析溶解装置200は、電気炉201内に石英管202が備えられている。石英管202内にはアルミナ坩堝203が備えられている。アルミナ坩堝203内に溶融塩100が収納される。溶融塩100には、参照極211(R.E.)、対極212(C.E.)、作用極213(W.E.)、および温度センサー214が浸漬される。
電気炉201は電気炉制御装置220によって炉内温度が制御される。電気炉制御装置220には温度センサー214が接続されている。電気炉制御装置220は、温度センサー214からの温度検出信号により溶融塩100の温度を検知して、所望の温度となるように炉内温度を制御する。温度センサー214は、たとえば熱電対であり、溶融塩100内に熱電対が浸漬され、その温度に応じた起電力(電圧)を電気炉制御装置220に温度に応じた信号として伝達する。なお、温度センサー214は熱電対以外でもよく、たとえば赤外線温度センサーなどであってもよい。
参照極211、対極212、および作用極213は、ポテンショスタット210に接続されており、参照極作用極間の電圧、対極作用極間の電流などを制御する。参照極211は、溶融塩100中における電解反応に使用可能な公知の参照極211を使用することができる。参照極211はたとえば、セラミック製のさや管を用意し、このさや管内に、等モル量のNaCl−KClと、全量に対して10mol%となるAgClを入れて混合塩浴を作り、この混合塩浴中に銀(Ag)ロッドを浸漬したものを使用することができる。すなわち、Ag/AgCl(0.1)参照極となる。対極は、たとえば管状黒鉛等を好ましく用いることができる。そしてNi基材101は、作用極213としてポテンショスタット210と電気的導通を取るように接続されている。
石英管202は、蓋部204が取り付けられていて、蓋部204は石英管202を密閉できるようになっている。蓋部204には、開口(不図示)が設けられており、石英管202内部へ様々な部材を挿入することができるようになっている。開口は耐熱部材(不図示)により挿入物を取り囲んで蓋部204を密閉している。挿入物は、ここでは参照極211、対極212、作用極213、および温度センサー214である。石英管202にはアルゴン(Ar)を石英管202内部に導入するためのガス導入口205と、排気管206が設けられている。なお、石英管202は、溶融塩100の温度保持と不純物の混入を防ぐためのものであるので、石英管202に代えて、加熱時に内部の溶融塩100に不純物などが混入しないものであれば、石英以外の素材であっても使用可能である。
アルミナ坩堝203は、石英管202内部で溶融塩100を保持する耐熱容器である。アルミナ坩堝203についても溶融塩100中に不純物を混入させるおそれがなければ他の素材の耐熱容器であってもよい。
このような電析溶解装置200を用いて、Al電析からAl溶融までを一連の処理として実施することができる。
この電析溶解装置200を用いた各段階の操作は次のように行う。
まず、溶融塩準備段階として、アルミナ坩堝203にNaCl、KCl、AlF、および必要に応じてYF、ZrF、HfFなどのフッ化金属を必要量入れて、これを石英管202内に載置する。そして作用極213のNi基材101、参照極211、および対極212が溶融塩100をセットして蓋をする。作用極213のNi基材101、参照極211、および対極212は、溶融塩100になった後に溶融塩100中に確実に浸漬する位置にセットする。その後、Arガスを導入して石英管202内をAr雰囲気としつつ加熱する。加熱は電気炉制御装置220に溶融塩100の温度が所定の温度となるようにセットし自動制御することになる。もちろん溶融塩100の温度を監視しつつ手動により溶融塩100の温度が所望の温度となるように電気炉201を制御してもよい。
溶融塩100の温度が所望の温度に達した後、Al電析段階として、作用極213および参照極211が、上述したAl電析段階の電位となるようにポテンショスタット210により制御する。所定時間経過後、Ni基材101を引き上げて水(または塩分を溶かす溶媒)で洗浄する。
Al溶融段階は、アルミナ坩堝203に等モル量のNaClとKClを入れて、これを石英管202内に載置する。そして、NiAl層付Ni基材の作用極213、参照極211、および対極212をセットして蓋をする。NiAl層付Ni基材の作用極213、参照極211、および対極212は、溶融塩100になった後に溶融塩100中に確実に浸漬する位置にセットする。その後、Arガスを導入して石英管202内をAr雰囲気としつつ加熱する。加熱は電気炉制御装置220に溶融塩100の温度が所定の温度となるようにセットし自動制御することになる。もちろん溶融塩100の温度を監視しつつ手動により溶融塩100の温度が所望の温度となるように電気炉201を制御してもよい。溶融塩100の温度が所望の温度に達した後、Al溶融段階として、作用極213および参照極211が、上述したAl溶解段階の電位となるようにポテンショスタット210により制御する。所定時間経過後、NiAl層付Ni基材を引き上げて水(または塩分を溶かす溶媒)で洗浄する。
なお、Al電析からAl溶融までを連続して行うこともできる。連続して行う場合は、Al電析に要する時間経過後、Ni基材を引き上げることなく、作用極213(Ni基材)および参照極211が、上述したAl溶解段階の電位となるようにポテンショスタット210で制御すればよい。
上述した電析溶解装置(以下単に装置という)を用いて、上記同様の操作により以下の試験を行った。
実施例および比較例は、NaCl、KCl、AlF、およびレアアース(YFまたはZrF)が表1に示す濃度(溶融塩全体を100mol%とする)となる溶融塩を調整した。
溶融塩には、Ag/AgCl(0.1)参照極、管状黒鉛の対極、および試料となるNi基材を作用極として浸漬した(参照極および対極は全ての試験で同じである)。Ni基材は、縦10mm、横10mm、厚さ1mmとした。このNi基材を作用極となるようにポテンショスタットの配線と電気的に接続した。なお、上記のNi基材の大きさは、各試験を行うために用いた試料の大きさであって、坩堝に入る大きさであれば特に制限はない。
(試験1)
実施例1および2の溶融塩を用いてAl電析を行った。実施例1については、それぞれ別のNi基材からなる試料を用いて、カソード電位を−1.4V、−1.5V、−1.6Vとした3つの試験を行った。実施例2についてはカソード電位を−1.5Vとした。いずれもカソード電位を一定にした定電位電析である。それぞれのAl電析時間は3.6ksとした。また、Al電析中の溶融塩温度は900℃とした。
Al電析後の各試料を自動精密切断機で深さ方向に切断し、断面を研磨紙により研磨処理したサンプルについて、走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製JXA−8230、加速電圧15kV、反射電子検出)で観察した。
図4は、Al電析後の各試料のSEM観察結果を示す図面代用写真である。図4(a)は実施例1のカソード電位−1.4VによるAl電析後の断面であり、図4(b)は実施例1のカソード電位−1.5VによるAl電析後の断面であり、図4(c)は実施例1のカソード電位−1.6VによるAl電析後の断面であり、図4(d)は実施例2のカソード電位−1.5VによるAl電析後の断面である。
図4(a)に示した実施例1の溶融塩を用いてカソード電位−1.4VでAl電析した場合のNiAl層の厚さは、36.8μmであった。
図4(b)に示した実施例1の溶融塩を用いてカソード電位−1.5VでAl電析した場合のNiAl層の厚さは、88.0μmであった。
図4(c)に示した実施例1の溶融塩を用いてカソード電位−1.6VでAl電析した場合のNiAl層の厚さは、127.2μmであった。
図4(d)に示した実施例2の溶融塩を用いてカソード電位−1.5VでAl電析した場合のNiAl層の厚さは、70.2μmであった。
なお、それぞれのNiAl層の厚さは、図4(a)〜(d)の各SEM写真上のNiAl層部分の厚さを3点計測し、SEM写真上のスケールバーを基に換算した値の平均値である。
この結果から、Al電析の時間が同じ場合、カソード電位を変えることで、NiAl層の厚さを変えられることがわかる。また、実施例1のカソード電位−1.5Vと実施例2を比較すると、YFの濃度を変えてもAl電析のカソード電位、時間が同じであれば、実施例1の各カソード電位を変えた場合よりも厚さの違いは少ないことがわかる。したがって、NiAl層の制御は、YFの濃度を変えるよりも、カソード電位を変えることの方が効果的である。
また、Al電析後、表面を目視により観察したところ、できあがったNiAl層は、Ni基材のすべての面に形成されていた。このことは、Ni基材はどのような形状であっても、Ni基材を溶融塩に接触させることができればその表面を多孔質化できることを示している。
(試験2)
実施例1〜3および比較例1の溶融塩を用いて、カソード電位−1.5Vによる定電位電析における時間経過に伴う電流密度の変化を観測した。電流密度はポテンショスタットの作用極(カソード)と対極(アノード)の間に流れる電流の密度である。溶融塩温度900℃で行った。
図5は、カソード電位−1.5Vによる定電位電析における時間経過と電流密度の関係を示すグラフである。
図5から、実施例1〜3ともに、Al電析時間が1.5ks程度経過するとほとんど電流が流れなくなることがわかる。一方、比較例1のAlを含有しない溶融塩では、電流密度がほぼ0である。これは作用極(Ni基材)と対極の間でほとんど電流が流れていないということである。そもそも比較例1は、NaCl−KCl溶融塩中に電析する物質が無いから当然の結果である。この比較例1と実施例1〜3を対比すると、実施例1〜3においては1.5ks程度経過すると電流密度がほぼ0に近くなっている。したがって、1.5ks程度経過した時点からAlの電析が進行しなくなることを示している。このことからAl電析段階における電析時間は、余裕を見て1.5ksよりも長く3.6ks(1時間)も行えばよいことになる。また、工程コスト(特にタクトタイム)を低減するためには、電流密度がほとんど0近くまで落ちた1.5〜2ks程度(25〜35分程度)でやめるようにしてもよい。
(試験3)
実施例1〜3および比較例1のAl電析後、NiAl層が形成されたNi基材(NiAl層付Ni基材)の試料を用いてAl溶解を行った。
ここで用いた試料は、実施例1〜3および比較例1の溶融塩を用いて、カソード電位−1.5V、溶融塩温度900℃。時間3.6ksによる定電位電析を行って作製した。
Al溶解は、溶融塩として等モル量のNaCl−KClを用いた。溶融塩の温度は750℃、アノード電位を−0.5V一定として、時間3.6ks行った。
Al溶解後の各試料を自動精密切断機で深さ方向に切断し、断面を研磨紙により研磨処理したサンプルについて、走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製JXA−8230、加速電圧15kV、反射電子検出)で観察した。
図6は、Al溶解後の各試料のSEM観察結果を示す図面代用写真である。図6(a)は実施例1のAl溶解後の断面であり、図6(b)は実施例2のAl溶解後の断面であり、図6(c)は実施例3のAl溶解後の断面であり、図6(d)は比較例1のAl溶解後の断面である。
実施例1と2を比較すると、YFの濃度が高い方が孔が多いことがわかる。また、実施例3はYを添加していないものであるが多孔質化していることがわかる。一方、NiAl層が形成されていない比較例1は、Al溶解の操作を行ったとしても多孔質層はできていないことがわかる。
これらのことから、Al電析段階は、Alを入れただけのNaCl−KCl溶融塩であっても、Alを溶解して多孔質層を形成できることがわかる。そして、Yを添加すれば、多孔質化が促進される(孔が多くなる)。Yの量を多くすることでさらに多孔質化が促進される。
(試験4)
次に、実施例1〜3および比較例1から作製したNiAl層付Ni基材を用いて、アノード電位を変化させてAl溶解を行い、分極電流を観測した。ここで用いた試料は、試験3同様に、実施例1〜3および比較例1の溶融塩を用いて、カソード電位−1.5V、溶融塩温度900℃。時間3.6ksによる定電位電析を行って作製した。
Al溶解は、溶融塩として等モル量のNaCl−KClを用いた。溶融塩の温度は750℃で行った。
図7は、アノード電位を変化させてAl溶解を行ったときのアノード電位と電流密度の関係を示すグラフである。電流密度はポテンショスタットの作用極(アノード)と対極(カソード)の間に流れる電流の密度である。
図7から、比較例1のNiAl層のないものでは、アノード電位が−0.4Vを超えると電流密度が上昇している。このことからアノード電位を−0.4Vを超えて印加すると、Niが溶け出すことがわかる。逆に言えばアノード電位が−0.4V以下であればNiが溶け出すことはないのである。
一方、実施例1〜3は、NiAl層がある試料である。これらにおいては、アノード電位が−1.25V以上で電流密度が上昇している。このことからアノード電位を−1.25V以上印加すると、Alが溶け出すことがわかる。
これらのことから、アノード電位が−1.25V以上、−0.4V以下であれば、Alは溶け出すが、Niは溶け出さないことがわかる。したがって、Al溶解段階におけるアノード電位は−1.25V〜−0.4Vにすることで、Alを溶解させかつNiを溶解させないことができる。確実にAlを溶解し、Niを溶解させないアノード電位としては、−1.25V以上、−0.5V以下とすることが好ましい。
(試験5)
次に、実施例4および5の溶融塩を用いてAl電析を行った。いずれもカソード電位は−1.5Vの定電位電析である。Al電析時間は3.6ks、溶融塩温度は900℃とした。
Al電析後の各試料を自動精密切断機で深さ方向に切断し、断面を研磨紙により研磨処理したサンプルについて、走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製JXA−8230、加速電圧15kV、反射電子検出)で観察した。また、この試料をエネルギー分散X線分光(EDS)により深さ方向にライン分析を行い組成分布を算出した。
図8は、深さ方向の組成分布を説明する説明図であり、SEM観察結果の写真と共に組成分布のグラフを示した図である。図8(a)は実施例4のAl電析後の断面を示しており、図8(b)は実施例5のAl電析後の断面を示している。
図8から、Al電析によりできあがったNiAl層の組成が、ZrFの濃度によって異なることがわかる。実施例4はZrFの濃度が0.05mol%である。組成分析の結果、この場合のNiAl層の組成はNiAlであった。実施例5はZrFの濃度が0.1mol%である。組成分析の結果、この場合のNiAl層の組成はNiAlであった。
一方、NiAl層中に含まれるZrは、図8からわかるように、実施例4および5ともに極めて少ない。この結果は、Zrを添加しても、カソード電位−1.5Vにおいては、Alの方がZrよりも電析しやすいため、NiAl層中にほとんど取り込まれなかったものである。
このことからレアアースは、Al電析段階において、Alと共にNi基材表面に電析されるものではあるが、取り込まれた量は極わずかである。したがって、レアアースの添加量はごく微量でよいことがわかる。
(試験6)
次に、実施例5および比較例1の溶融塩で作製したNiAl層付Ni基材を用いて、アノード電位を変化させてAl溶解を行い、分極電流を観測した。NiAl層付Ni基材の作製(Al電析段階)は試験5と同様に、カソード電位−1.5V、溶融塩温度900℃、時間3.6ksで行った。
Al溶解は、等モル量のNaCl−KCl溶融塩、溶融塩温度750℃で、アノード電位を変化させて行った。
図9は、アノード電位を変化させてAl溶解を行ったときのアノード電位と電流密度の関係を示すグラフである。電流密度はポテンショスタットの作用極(アノード)と対極(カソード)の間に流れる電流の密度である。
図9から、比較例1のNiAl層のない試料では、アノード電位が−0.3Vを超えると電流密度が上昇している。このことからアノード電位を−0.3Vを超えて印加すると、Niが溶け出すことがわかる。逆に言えばアノード電位が−0.3V以下であればNiが溶け出すことはないのである。
一方、実施例5は、NiAl層がある試料である。この実施例5では、アノード電位が−1.25V以上で電流密度が上昇している。このことからアノード電位を−1.25V以上印加すると、Alが溶け出すことがわかる。
これらのことから、アノード電位が−1.25V以上、−0.3V以下であれば、Alは溶け出すが、Niは溶け出さないことがわかる。したがって、Al溶解段階におけるアノード電位は−1.25V〜−0.3Vにすることで、Alを溶解させかつNiを溶解させないことができる。確実にAlを溶解し、Niを溶解させないアノード電位としては、−1.25V以上、−0.5V以下とすることが好ましい。
(試験7)
次に、実施例5の溶融塩から作製したNiAl層付Ni基材を用いて、Al溶解を行い時間経過に伴う電流密度の変化を観測した。電流密度はポテンショスタットの作用極(アノード)と対極(カソード)の間に流れる電流の密度である。なお、NiAl層付Ni基材の作製(Al電析段階)は試験5と同様に、カソード電位−1.5V、900℃、3.6ksで行った。Al溶解は、等モル量のNaCl−KCl溶融塩、溶融塩温度750℃、アノード電位−0.3V一定で行った。
図10は、Al溶解時の時間経過と電流密度の関係を示すグラフである。
図10から、Al溶解時間が1.5ks程度経過するとほとんど電流が流れなくなることがわかる。したがって、Zrを添加した場合においても、1.5ks程度経過した時点からAlの溶解が進行しなくなることを示している。このことからAl溶解段階における溶解時間は、余裕を見て1.5ksよりも長く3.6ks(1時間)も行えばよいことになる。また、工程コスト(特にタクトタイム)を低減するためには、電流密度がほとんど0近くまで落ちた1.5〜2ks程度(25〜35分程度)でやめるようにしてもよい。
(試験8)
次に、実施例5の溶融塩から作製したNiAl層付Ni基材を用いて、Al溶解を行い多孔質層を形成した。なお、NiAl層付Ni基材の作製(Al電析段階)は試験5と同様に、カソード電位−1.5V、溶融塩温度900℃、時間3.6ksで行った。Al溶解は、等モル量のNaCl−KCl溶融塩、溶融塩温度750℃、アノード電位−0.3V一定で、時間3.6ks行った。
Al溶解後の試料を自動精密切断機で深さ方向に切断し、断面を研磨紙により研磨処理したサンプルについて、走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製JXA−8230、加速電圧15kV、反射電子検出)で観察した。
図11は、Al溶解後の試料のSEM観察結果を示す図面代用写真である。
図11に示すように、多孔質層が形成されていることがわかる。また、この試料をエネルギー分散X線分光(EDS)により組成を分析した。測定点は、図11に示したように、おおむね多孔質層の深さ方向中間部分である。
分析の結果、Ni99.9原子%、Al0.1原子%、Zr0原子%であった。この結果から、Al溶解段階を行った後、出来上がった多孔質層部分には、Al成分がごくわずかに残っているだけであり、Zrはまったく検出されないことがわかる。このことから、NiAl層を形成するAl電析時にZrなどのレアアースを添加した場合は、Al溶解段階においてAlと共にNiAl層に含まれていたZrは完全に溶けだしたことがわかる。
(試験9)
次に、実施例6の溶融塩を用いてAl電解を行ってNiAl層付Ni基材を製作した。すなわち、等モル量のNaCl−KClに、Al3.5mol%、およびHf0.1mol%を含む溶融塩を用いてAl電析を行った。Al電析は、溶融塩温度900℃、アノード電位−1.5V一定、時間3.6ksによる定電位電析である。
Al電析後の試料を自動精密切断機で深さ方向に切断し、断面を研磨紙により研磨処理したサンプルについて、走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製JXA−8230、加速電圧15kV、反射電子検出)で観察した。また、この試料をエネルギー分散X線分光(EDS)により深さ方向にライン分析を行い組成分布を算出した。
図12は、深さ方向の組成分布を説明する説明図であり、SEM観察結果の写真と共に組成分布のグラフを示した図である。
図12から、HfFを添加しても、Al電析によりNiAl層が出来上がることがわかる。組成分析の結果、この場合のNiAl層の組成はNiAlであった。また、NiAl層中に含まれるHfは、図12からわかるように、極めて少ない。
この結果は、YやZrを添加した場合とほとんど違いがないことがわかる。したがって、Hfを添加した場合でも、Al溶解段階としてYやZrを添加した場合と同様のアノード電位を印加することで、多孔質層を形成できることがわかる。
(試験10)
次に、YFの濃度を変えてAl電析を行い、Al電析の前後での質量増加量を計測した。
YFの濃度の順に、実施例3(YF濃度0mol%)、実施例1(YF濃度0.05mol%)、実施例2(YF濃度0.1mol%)、実施例7(YF濃度0.2mol%)、実施例8(YF濃度0.3mol%)のそれぞれの溶融塩を用いた。AlF濃度はいずれも3.5mol%である。Al電析は、いずれも900℃、アノード電位−1.5V一定、時間3.6ksによる定電位電析である。
質量増加量は、Al電析の前後で質量を測定し、Al電析後の質量からAl電析前の質量を引いて、Ni基材の表面積で割った値である単位面積当たりの質量増加量ΔW(g/m)として求めた。
図13は、Al電析における単位面積当たりの質量増加量ΔWとYF濃度の関係を示すグラフである。
図13のグラフから、Yを添加しない場合が、最も質量が増加していることがわかる。そしてYFの濃度が増えると質量の増加量が少なくなって行く。この結果は、試験2における、図4(b)の実施例1のカソード電位−1.5Vと、図4(d)の実施例2のカソード電位−1.5Vとの比較で、YFの濃度の高い方がNiAl層の厚さが薄いことと一致する。
図13のグラフから、YFの濃度が0.2mol%を超えると、YFを添加しない場合と比較して、質量増加量が半分以下にまで低下していることがわかる。このことは、YFの濃度をあまり多くするとAlの電析が抑制されることを示している。このため、レアアースを添加する際のレアアース濃度は0.2mol%以下とすることが好ましいものとなる。
以上説明した本実施形態および実施例によれば以下の効果を奏する。
Al電析段階でNi基材の表面にAlを電析させることでニッケルアルミナイド合金層を形成し、Al溶融段階ではニッケルアルミナイド合金層からAlを溶解させることで、Niの多孔質層を形成した。これにより、強アルカリを用いることなく多孔質ニッケルを製作することができる。したがって、強アルカリを用いていないので出来上がった多孔質ニッケルは水素の吸着がないので扱いやすい。また、高温で作製しているため、出来上がった多孔質ニッケルは高温で安定している。さらに酸、アルカリを用いていないので廃液の問題がない。さらにAl電析では、基材となるNiの形状を様々に変化させれば、どのような形状でも電析が可能であるので、複雑な形状の多孔質ニッケルの作製も可能になる。
そして、Alを電析しているため、高価なレアアースを多量に使う必要がない。使用したとしてもごく微量でよい。このため従来技術(非特許文献1)と比較して材料費が安い。また溶融塩もNaCl−KClであるので材料費が安い。さらに実施例を見ればわかるように、Al電析段階が長くても3.6ks、Al溶解段階も同様に長くても3.6ksであるので、製造時間も非特許文献1と比較して短い。しかも電析で得られたNiAl層は100μmに近い厚さも可能であるため、多孔質層の厚さもそれに近い厚さとなる。このことから製造コスト全体の低減が可能になる。
以上本発明を適用した実施形態および実施例について説明したが、本発明は上述した実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明は特許請求の範囲に記載された技術思想に基づいてさまざまな形態として実施可能であり、それらもまた本発明の範疇である。
100 溶融塩、
101 Ni基材、
101a NiAl層付Ni基材、
102 NiAl層、
103 多孔質層、
200 電析溶解装置、
201 電気炉、
202 石英管、
203 アルミナ坩堝、
204 蓋部、
206 排気管、
210 ポテンショスタット、
211 参照極、
212 対極、
213 作用極、
214 温度センサー、
220 電気炉制御装置。

Claims (5)

  1. 塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびアルミニウムを含むアルミニウム含有溶融塩を準備する溶融塩準備段階と、
    前記アルミニウム含有溶融塩中に浸漬したニッケル基材に、アルミニウムが電析する電位を印加してニッケルアルミナイド合金層を形成するアルミニウム電析段階と、
    前記ニッケルアルミナイド合金層を形成した前記ニッケル基材に、アルミニウムを溶解し、かつニッケルを溶解しない電位を印加して、前記ニッケルアルミナイド合金層からアルミニウムを溶解させて多孔質層を形成するアルミニウム溶解段階と、
    を有する、多孔質ニッケルの製造方法。
  2. 前記アルミニウム電析段階は、前記アルミニウム含有溶融塩中に参照極および対極を浸漬し、前記ニッケル基材をカソードとしたとき、前記参照極に対するカソード電位が−1.8V〜−1.2Vとなるようにし、
    前記アルミニウム溶解段階は、前記アルミニウム含有溶融塩中に参照極および対極を浸漬し、前記ニッケルアルミナイド合金層が形成された前記ニッケル基材をアノードとしたとき、前記参照極に対するアノード電位が−1.25V〜−0.3Vとなるようにする、請求項1に記載の多孔質ニッケルの製造方法。
  3. 前記溶融塩準備段階は、アルミニウム源としてフッ化アルミニウムを用いて、前記アルミニウム含有溶融塩の全量に対し前記フッ化アルミニウムの濃度を1〜5mol%にする、請求項1または2に記載の多孔質ニッケルの製造方法。
  4. 前記溶融塩準備段階は、前記アルミニウム含有溶融塩に、さらにイットリウム、ジルコニウム、およびハフニウムのうち少なくともいずれか一つの元素を含む、請求項1〜3のいずれか一つに記載の多孔質ニッケルの製造方法。
  5. 前記溶融塩準備段階は、前記イットリウム、ジルコニウム、ハフニウムのうち少なくともいずれか一つの元素源として、フッ化イットリウム、フッ化ジルコニウム、およびフッ化ハフニウムからなる群から選択されたいずれか一つのフッ化金属を用いて、前記アルミニウム含有溶融塩の全量に対し前記いずれか一つのフッ化金属の濃度を0.01〜0.2mol%にする、請求項4記載の多孔質ニッケルの製造方法。
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